説明

有効な糖質の量が低下した果実ジュース及びピューレ

果実ジュース、ピューレ、及び他の食品が、健康食品市場向けに提供される。果実製品中の有効な糖質の一部が、非消化性ポリマーへ転換され、それによりエネルギー含量を低下させ、同時に、ジュース中で安定な生成物中にプレバイオティックな成分を形成することにより、栄養価を増大させる。果実中の天然糖質以外の全ての成分を保存することを可能にする、ジュース及びピューレの製造方法がさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効な糖質の量が低下したこと、及び非消化性炭水化物、特にプレバイオティックポリマーの形成が原因でエネルギー含量が低下した果実ジュース及びピューレであって、炭水化物以外の全ての果実成分が、本質的にその自然の量のまま維持される果実ジュース及びピューレを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満症は、公衆の重大な健康問題であり、様々な基準を適用すると、米国の成人の約3分の2は、過体重である恐れがある。いくつかの例として2型糖尿病及び心血管疾患を含めた、過体重を伴う健康問題は、米国において1年当たり50万件近い死亡の原因とされ、過体重に関連する費用は、1000億ドルを超える恐れがある。過体重の治療は、数百種類の食事レジメンを含み、消費者は、減量製品及びサービスに年間約300億ドル投資する。日々のカロリー摂取量を低下させることは苦痛を伴い、当然のことながら、最も単純で最も安価な方法は、エネルギー含量が最も感じにくい食品中のエネルギー含量を低下させることであると思われ、その良い例は、果実ジュースなどの飲料である。問題となっている食品が大量に消費される場合、少量のエネルギー削減でさえ、相当な効果を有することができ、最も良い例は、やはり、人気のある飲料である。
【0003】
果実ジュースは、世界中で何年にもわたって、最も人気のある飲料の中でのその位置を守り続けてきており、家庭で消費されたジュースの75%はオレンジジュースである。年間の生産量が約6000万トンであるオレンジは、世界中で生産されている全ての果実の4分の1近くのシェアを持っている。長年、濃縮ジュースエキスが使用されていたが、過去数年間は、低炭水化物及び低カロリー飲食物の人気が高まっているため、並びに、いわゆる健康及び自然食品への需要が成長しているため、その売り上げが下落してきた。オレンジ濃縮物は、例えば、圧搾したジュースより5倍濃縮されており、その保存をより経済的にするが、健康志向の消費者は、しばしば、濃縮還元タイプではない(NFC)ジュース、及び非希釈ジュースを好む。莫大で広範囲にわたるジュースの消費を考えると、NFCジュースを含めたジュースのエネルギー含量を低下させることは非常に有用であろうが、そのような削減は小さいものである。
【0004】
いくつかの糖類は、生化学的エネルギーを有しているが、ヒトの消化管で消化することができず、おそらく食品の官能的性質に関与するにもかかわらず、有効エネルギーに関与しない。フルクタンとも呼ばれるフルクトースオリゴマー又はポリマーは、そのような糖類の中に属し、さらに、フルクタンは、ビフィズス菌及び乳酸桿菌などの有益な細菌を支援するプレバイオティック作用物質としても認識されている。フルクタンは、植物、酵母菌、菌類及び細菌中の様々なフルクトシルトランスフェラーゼによって生成し、通常、主にβ(2→1)グリコシド結合を含むイヌリン、及び、隣接するフルクトース単位の間に主にβ(2→6)グリコシド結合を含むレバンへ分割される。ヒトの飲食物に対するフルクタンの潜在能力は、例えば、低カロリーのフルクタンベース甘味料のスクロースからの酵素調製物、及び低カロリー加糖食品生産におけるその使用について記載するUS4681771で認識された。US6808703は、腸へ送達されるべき微生物を提供し、微生物は、腸で可消化糖類を不消化糖類へ転換するものであり、それにより肥満症及び糖尿病を治療する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ジュース又はピューレ中の代謝的に有効な炭水化物の含量を削減することを含む、果実ジュース及び果実ピューレを製造する方法を提供することが、本発明の一目的である。
【0006】
有効な糖質は低下しているが、他の成分はその自然な濃度のままであるジュース又はピューレを提供することが、本発明の別の目的である。
【0007】
果実ジュース又はピューレのカロリー含量を低下させ、その一方で、前記ジュース又はピューレの栄養価を、それらの中にプレバイオティック成分を形成することによって向上させるための方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0008】
本発明の他の目的及び利点は、説明が進むにつれて明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、果実中の天然糖類の代謝有効性より低い代謝有効性を有する少なくとも1種の多糖類を含有する果実製品に関し、前記果実製品は、果実ジュース又は果実ピューレ、或いは、圧搾又は破砕を含むプロセスによって果実全体又は皮をむいた果実から得られる他の製品を含み得る。本発明による製品は、それらが製造される原材料と比較すると、低糖の含量が低下しており、多糖類の含量が多い。「破砕」という用語は、本明細書で使用する場合、果実の可食部から液体、ペースト、或いは任意の濃度又は粗さの懸濁液をもたらす、任意の崩壊手順を含むものと意図している。前記圧搾又は破砕は、本発明の果実製品が製造される果実原材料をもたらし、前記原材料は、ジュース、懸濁した果肉、マッシュ、スラリー、又はピューレの稠度を有し得る。本発明の好ましい態様では、前記果実製品は、それが製造される果実原材料と同じ稠度を有する。別の態様では、製造手順は、水分を添加又は除去するステップを含み、稠度を変化させる。飲料として使用するための果実製品は、ジュースと呼び、一方、他の全ての製品は、簡略化するために、ピューレと呼ぶ。代謝有効性が低下した前記糖類は、前記原材料中で、天然のジュース糖質から、酵素プロセスを介してin situで形成され、添加されない。本発明の前記果実製品は代謝有効性が低下した糖類を、少なくとも10g/lの濃度で含有することが好ましい。(1種又は複数の)糖類及び(1種又は複数の)炭水化物及び(1種又は複数の)糖質という用語は、全体を通して互換的に使用する。
【0010】
本発明は、果実中の天然糖質より低い代謝有効性を示す無添加多糖類を含有する果実ジュース又はピューレを提供し、該多糖類は、少なくとも10g/lの濃度である。多糖類という用語は、本明細書で使用する場合、別段の定めのない限り、分子中に10個より多い単糖単位を含む糖類を含むものと意図している。好ましい実施形態では、本発明による果実ジュース又はピューレ中の天然成分の濃度は、炭水化物及びおそらく水以外は、前記果実から得たばかりの元来の生ジュース又はピューレ中と同じであり、前記無添加糖類の前記代謝有効性は、前記生ジュース又はピューレ中に元来存在する炭水化物と比較して低下しており、前記元来の生ジュース又はピューレは、圧搾又は破砕によって前記果実から得られる。本発明の好ましい製品では、炭水化物以外の全ての天然成分の量は、前記果実から得たばかりの元来の生ジュース又はピューレ中と同じであり、前記無添加糖類の前記代謝有効性は、前記生ジュース又はピューレ中に元来存在する炭水化物と比較して低下しており、前記元来の生ジュース又はピューレは、圧搾又は破砕によって前記果実から得られる。
【0011】
代謝有効性が低下した前記糖類は、圧搾したての生ジュース中に存在する1種又は複数の天然糖類から、本発明のジュース中でin situで作られる。代謝有効性が低下した前記糖類は、破砕したてのピューレ中に存在する1種又は複数の天然糖類から、本発明のピューレ中でin situで作られる。代謝有効性が低下した前記糖類は、グリコシルトランスフェラーゼ活性、又は、糖類の再構築を可能にする他の活性を示す、炭水化物リガーゼ、グリコシルヒドロラーゼなどの酵素の存在下でin situで作られる。本発明のジュース又はピューレは、添加糖類を少しも含まないことが好ましい。しかし、該ジュース又はピューレは、現実に許容可能な工業生産のpH、温度及び時間内の所望の糖質転換率を達成するのに十分な量で添加酵素を含む。代謝有効性が低下した前記糖類は、フルクタンでよく、前記酵素は、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を示す酵素でよい。本発明の好ましい実施形態では、果実製品は、ポリフルクタンを含有する。好ましいグリコシルトランスフェラーゼは、少なくとも10個の単糖単位の糖類を生成し、さらにより好ましくは、数百個以上の単糖単位からなる多糖類を生成する。本発明による好ましい方法では、該酵素の少なくとも90%は、多糖類の形成後に非活性化され、保存の間、継続する反応はほとんどない。保存の間、多糖類加水分解は発生しないものである。前記ポリフルクタンは、レバン型のものであることが好ましい。少なくとも10g/lのフルクタン濃度、及び最大8g/lのスクロース濃度が達成されることが好ましい。フルクタンという用語は、本明細書で使用する場合、オリゴフルクタン及びポリフルクタンを含む。オリゴフルクタンという用語は、2〜10個のフルクトース単位を含む糖鎖を含むものと意図しており、ポリフルクタンという用語は、別段の定めのない限り、10個より多いフルクトース単位を含む糖鎖を含む。本発明の好ましい実施形態は、主にβ(2→6)グリコシド結合によって連結された、数百又は数千個のフルクトース単位からなるポリフルクタンに関する。前記ジュース製品及び前記生ジュースは、本質的に同じ総糖類含量を有し、圧搾したてのジュース中の天然の他の成分を、本質的に同じ含量で有することが好ましい。前記ジュースは、NFCジュースでもよい。前記果実ジュースは、10g/l以上、好ましくは20g/l以上のフルクタンを含有する前記生ジュースと比較すると、代謝的に有効な糖質の量が低下している。本発明によるジュースは、プレバイオティックな飲食物において有用である。本発明による果実ピューレは、好ましい実施形態では、フルクタンを含有する前記生ピューレと比較すると、代謝的に有効な糖質の量が低下した果実ピューレであり、プレバイオティックな飲食物において有用である。
【0012】
本発明は、出発生ジュース又はピューレを、エネルギー含量が低下したジュース製品又はピューレ製品へ転換する方法に関する。代謝的に有効な体積エネルギーが低下したジュース又はピューレは、簡潔に記載するために、それぞれ、低エルグのジュース又はピューレとも呼ぶ。本発明の方法によって製造されるジュース又はピューレは、該ジュース又はピューレ製品中の全ての糖質の総計が、生ジュース又はピューレ中と本質的にほぼ同じであるにもかかわらず、代謝的に有効な糖質が少ない結果、エネルギー含量の低下を示す。本発明は、代謝有効性が低下した多糖類を、少なくとも10g/lの濃度で含有する果実ジュース又はピューレを製造する方法であって、i)単糖類及び二糖類(低糖)を含有する生果実ジュース又はピューレを用意するステップと、ii)前記低糖を、低糖の少なくとも一部を前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素と接触させるステップとを含む方法に関する。一実施形態では、該方法は、代謝有効性が低下した糖類を、少なくとも10g/l、好ましくは少なくとも20g/lの濃度で含有するジュースを製造するために提供され、i)単糖類及び二糖類(低糖)を含有する生果実ジュース又はピューレを用意するステップと、ii)前記生ジュース又はピューレ中に、前記低糖の少なくとも一部を前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素を導入するステップとを含む。前記多糖類は、少なくとも20kDaの分子量を有し得る。代謝有効性が低下した前記糖類は、前記方法の一実施形態では、フルクタン、主にポリフルクタン、本質的にレバンでよく、前記酵素は、例えば、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を示してよい。本発明の一実施形態では、低エルグの果実ジュース又はピューレを製造する方法は、i)単糖類及び二糖類(低糖)を含有する生果実ジュースを用意するステップと、ii)前記生ジュース又はピューレ中に、前記低糖の少なくとも一部を、前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素を導入するステップとを含み、それにより該ジュース又はピューレの有効カロリー値は低下し、前記低エルグの果実ジュース又はピューレが得られる。低エルグの果実ジュース又はピューレを製造する前記方法は、スクロースを含有する生果実ジュース中に、前記スクロースの一部を1種又は複数のフルクタンへ転換できる酵素を導入するステップを含み、それにより、該ジュース又はピューレ中のスクロース濃度を、8g/l以下、好ましくは2g/l未満に低下させる。本発明による方法で製造される前記ジュース又はピューレは、前記生ジュース又はピューレと比較すると、それぞれ代謝的に有効な糖質の量の低下を示す。本発明の好ましい方法では、前記ジュース又はピューレは、(1種又は複数の)フルクタンを、少なくとも10g/lの濃度で含有し、前記生ジュース又はピューレと比較するとエネルギー含量の低下を示す。一実施形態では、本発明の低エルグの果実ジュースを製造する方法は、i)生果実ジュースを用意するステップと、ii)前記生ジュースを、スクロース濃度を8g/l以下へ低下させるのに十分な時間ゆっくり撹拌しながら、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素と接触させるステップと、iii)フルクタンを含有する前記ジュースを、85〜125℃の温度で、該ジュースを低温殺菌し、前記酵素の少なくとも95%の活性を非活性化するのに十分な時間加熱するステップとを含み、それにより、(1種又は複数の)フルクタンを含有し、前記生ジュースと比較すると代謝的に有効な糖質及び代謝的に有効なエネルギーの含量が低下したジュースを得る。本発明の好ましい実施形態では、前記生ジュース又はピューレは、濃縮又は希釈ステップなしで得られる。本発明の一態様では、本発明の方法における前記低エルグのジュースは、NFCジュースでよく、前記ピューレは、希釈又は濃縮ステップなしで処理されたピューレでよい。本発明の他の態様では、本発明の方法における前記低エルグのジュースは、希釈ジュース、濃縮ジュース、及び還元ジュースから選択されてよく、前記ピューレは、濃縮ピューレ、又は還元ピューレ、並びに他の方法で処理された非希釈及び非濃縮ピューレでよい。本発明の一実施形態では、本発明による方法は、i)低糖を含有する濃縮ジュース又は濃縮ピューレを用意するステップと、前記ジュース又はピューレ濃縮物中に、前記低糖の少なくとも一部を前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素を導入するステップと、転換後に該濃縮物を希釈するステップとを含む。前記希釈は、生ジュース又はピューレの元来の水含量に戻されるように実施されることが好ましい。本発明の重要な実施形態では、低糖を多糖類へ転換する前記酵素は、生ジュース又はピューレへ添加される。本発明の他の実施形態では、低糖を多糖類へ転換する前記酵素は、濃縮又は希釈されたジュース又はピューレへ添加される。本発明のさらに他の実施形態では、前記方法は、酵素的に処理されたジュース又はピューレの希釈又は濃縮ステップをさらに含む。前記生ジュースは、有利には、圧搾したてのジュースでよい。該ジュースの総糖類含量は、本発明の方法において本質的に不変のままであり、前記生ジュース中の天然の他の成分の量は、本質的に不変のままである。低エルグのジュースの有効エネルギー含量は、前記生ジュースのエネルギー含量と比較すると、本発明の方法において15〜40%低下し得る。本発明の方法でジュースを製造するための前記果実は、例えば、オレンジ、リンゴ、パイナップル、イチゴ、及び他の果実、及びそれらの混合物から選択され得る。本発明の方法で果実ピューレを製造するための前記果実は、例えば、リンゴ、ナシ、パイナップル、モモ、アンズ、マンゴー、バナナ、イチゴ、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0013】
本発明の方法において炭水化物の転換に役立つ前記酵素は、天然酵素、組換え型又は変性された改変酵素から選択され得る。当業者は、必要な温度及び酵素濃度が選択されるように、使用される酵素の、既知の、又は特定された特性に従って、所望の糖質濃度を達成可能にすると見込まれる条件下で酵素を用いるであろう。例えば、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を示す酵素が添加され、そのインキュベーションは、スクロース濃度を8g/l以下へ低下させるのに十分な時間、約0〜約55℃の温度、約3〜約7のpH範囲を含み得るが、最終反応条件は、異なるpH、温度及び糖質濃度下での酵素活性、酵素安定性、ジュース安定性、並びに酵素特性及び微生物学的評価を伴う他の要因、並びに官能的要件を考慮に入れる。
【0014】
したがって、前記方法は、糖分子の酵素的変換を含むが、総炭水化物量は、本質的に不変のままである。使用される果実中に自然に発生し、前記生ジュース又はピューレへ移動する他の成分も、本質的に影響されないままである。本発明による果実ジュース又はピューレの有効エネルギー含量は、少なくとも10%、好ましくは25%より多く低下し得る。前記酵素は、天然酵素、組換え型酵素、改善された安定性を有する変性酵素又は所望の特性を有する改変された組換え型酵素でもよい。スクロースをフルクタンへ転換する酵素は、遊離酵素又は固定化酵素でよい。ザイモモナス・モビリス・レバンスクラーゼ(Zymomonas mobilis levansucrase)は、本発明の方法にとって驚くほど好都合であることが見出された。本発明による果実ジュース又はピューレは、代謝的に無効な多糖類を含有し、無効な多糖類の総量は、安定であり、通常の処理及び保存条件下で変化せず、この文脈における安定という用語の意味は、本明細書で説明したとおりであり、保存の間に、前記多糖類の構造に特定の変化が発生し得るが、そのような変化は、前記代謝有効性に影響しないであろう。本発明の好ましい実施形態では、有効性が低い多糖類は、通常の処理及び保存条件下で、少なくとも1年は安定である。
【0015】
本発明は、少なくとも10g/l、好ましくは少なくとも20g/lの濃度でフルクタンを含有し、一方で、8g/l以下、好ましくは2g/l未満へ削減された、低下したスクロース濃度を有する、健康食品市場向けの果実製品を対象としている。本発明による製品は、生果実ジュース又はピューレから、任意の濃縮又は希釈ステップを用いずに調製することができ、或いは、濃縮物及び他の果実製品から調製することができる。本発明は、一態様では、希釈又は濃縮された製品、すなわちジュース及びピューレを提供する。
【0016】
本発明は、一態様では、添加酵素によって低糖から形成される多糖類を含有する果実ジュース又はピューレから選択される食品を対象としており、前記多糖類は、ヒトの消化管でサッカロースより低い代謝有効性を有し、前記食品中のその濃度は、少なくとも10g/lである。前記食品は、ジュース、ピューレ、シロップ、ジャム、及びコンフィチュールから選択され得る。該ジュースは、例えば、脱イオン濃縮果実ジュースでよい。本発明は、代謝有効性が低下した多糖類を、少なくとも10g/lの濃度で含有する前記食品を製造する方法であって、i)単糖類及び二糖類(低糖)を含有する原材料を用意するステップと、ii)前記低糖を、低糖の少なくとも一部を前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素と接触させるステップとを含む方法を対象としている。前記果実原材料は、例えば、生の、又は処理されたジュース又はピューレ、或いは低糖の他の原料を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
今では、果実ジュース、例えば、パイナップル又はオレンジジュースが、全炭水化物の初期質量を本質的に削減することなく、及び前記果実ジュース中の天然成分の質量を変化させることなく、その代謝的に有効なエネルギーを低下させるように処理され得ることが見出された。当然のことながら、水でジュースを希釈すると、体積当たりの有効エネルギーは低下するであろうが、そのような処理は、当技術分野で用いられることもあるが、その飲料の官能的性質を悪変させ、有用な果実成分をほとんど供給しない。本発明による方法は、水分活性、総炭水化物濃度、酸、塩、及びビタミンが実質的に変化していないジュースを提供し得る。合計すると総計が本質的に不変であっても、本発明による方法では、該ジュースの炭水化物は、該ジュースの有効エネルギーの低下につながる、分子再配列を経験する。前記再配列の手段は、可消化炭水化物の一部を、消化しにくい又は非消化性の炭水化物へ転換できる酵素である。具体的には、本発明の方法は、二糖類などの可消化糖質の一部を、ヒトの消化管で消化しにくい、より高い多糖類へ酵素的に転換するステップを含む。
【0018】
本発明の一態様では、ザイモモナス・モビリス由来のレバンスクラーゼは、果実ジュース及び果実濃縮物又はピューレを処理し、該製品中の有効な糖質及びエネルギーを削減し、高分子量のプレバイオティック炭水化物を生成するために適用される。本発明の方法を展開していくと、クローン化及び精製されたZ.モビリス・レバンスクラーゼが、自然なジュース条件下、すなわち、3.5〜6.5のpH、及び0〜15℃の温度で、有効な糖質をポリフルクタンへ効率的に転換できることが見出された。例えば、E.C.2.4.1.10として分類できるザイモモナス・モビリス・レバンスクラーゼなどのグリコシルヒドロラーゼファミリー(GH68)のレバンスクラーゼは、本発明の方法の条件下で、議論の余地があり、矛盾の多い、以前に刊行された報告(例えば、Crittenden及びDolle[Appl.Microbiol.Biotechnol.41(1994)302−8]は、トランスフルクトシル化反応の主要な生成物として1−ケストース(kestose)を報告し、一方、Song及びRhee[Biotechnology Lett.16(1994)1305−10]は、より分子量の高い生成物を見出した)と対照的な所望の結果をもたらした。本発明を展開していくと、低pH及び高塩下で自己組織化したZ.モビリス・レバンスクラーゼの独特な原線維多量体構造が、高効率重合を伴い、高分子量レバンを唯一の生成物として得ることが見出された。精製の間の原線維形成を制御することによって(1.7倍の精製、<90%の活性収率)、高収率のポリフルクタンを得ることが可能であることが見出された。自己組織化構造の存在又は非存在が、Z.モビリス・レバンスクラーゼの合成能力に影響することが示唆される。機構的要件によって制限されることを全く望まずに、ザイモモナス・モビリス・レバンスクラーゼの原線維多量体構造が、その重合活性に関与することが示唆される。幸運なことに、前記原線維構造は、多くの天然ジュースの条件下で支持されており、該酵素は、本発明の方法にとって好都合となる。レバンスクラーゼを導入することが、スクロース、フルクトース、及びグルコースの合計が減少するように、様々なジュースに影響し、ジュース体積当たりの有効エネルギーを比例的に減少させることが見出された。オレンジ、パイナップル、リンゴ、及びアンズを含めた様々なジュースにおいて、レバンスクラーゼの効果が、レバンなどの、以前は存在していなかった多糖類の形成につながったことがさらに観察された。そのような多糖類、例えば、レバンは、食品のカロリー含量に少ししか、又は全く関与しないものと知られている。実験の様々な条件下で、該ジュースのエネルギー含量は、通常15〜30%減少した。「エネルギー含量」という用語は、代謝的に有効なエネルギーに関し、当技術分野の比エネルギー含量の表に従って、該ジュース中の全ての成分の分析的に求められた濃度値から計算され得る。
【0019】
該酵素が、その下で、糖質濃度が広範囲にわたっても、オレンジ又はパイナップルジュース中でスクロースを利用し、例えば、レバン及び/又はイヌリンを生成することができ、スクロースをほぼ完全に転換する条件が見出され、例えば、生ジュース中の天然スクロースは、15℃で3〜5時間以内に転換され、温度が低下するとともにその時間は長くなった。使用されたレバンスクラーゼは、基質としてのレバンに対して分解活性を示さなかった。いずれにしろ、該酵素は、場合により低温殺菌ステップの一部であってもよい短時間加熱によって非活性化することが好ましい。該酵素は、元来のジュースpH及び許容可能な温度下で、スクロースのフルクタンへの最大限の転換を確実にする濃度で、反応混合物中で使用された。細菌、植物、酵母菌及び菌類中には、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を有し、フルクタン、すなわち、グルコース単位に少なくとも2個のフルクトース単位が結合されているオリゴ糖類及び多糖類を生成できる他の多数の酵素が存在し、オリゴ糖類及び多糖類は、ジュースの官能的性質に関与し得るにもかかわらず、可消化ではない。本発明の好ましい実施形態では、酵素は、ジュース又はピューレ中に添加され、その酵素は、天然のジュース及びピューレの酸性条件下で主にポリメラーゼ活性を示し、その好ましい例は、高収率で高分子量のポリフルクタンをもたらし、さらに、本発明の果実製品の自然な酸性条件下で長期間保存しても安定であるザイモモナス・モビリス・レバンスクラーゼである。Z.モビリス・レバンスクラーゼは、原線維多量体構造を有する場合、オリゴフルクタンのみを合成するか、又はポリマー形成を可能にしても、反応又は保存のいくつかの段階で、最終的にはポリフルクタンを分解する様々な酵素とは対照的に、低糖のポリフルクタンへの所望の転換を支援する。本発明は、健康な飲料又は食品を製造する方法を提供し、該方法は、85℃〜125℃の温度での低温殺菌又は殺菌を含む。酵素活性の少なくとも90%は、前記条件下で破壊されるものであるが、炭水化物、特にプレバイオティックポリマーの質には影響しない。しかし、多くの酵素は、不運なことに、加熱ステップのいくつかの段階で、又は長期の保存の間、特に酸性条件下で、加水分解活性を示すが、原線維多量体構造のZ.モビリス・レバンスクラーゼは示さない。
【0020】
いくつかの実験では、Gan Shmuel Food Ltd.で製造されたジュースは、本発明に従って処理され、3.5〜6の間のpH、ブリックス8〜70、43〜61%のスクロース/全糖質でのレバンスクラーゼを用いた処理を含み、スクロースをレバンへ転換する。当業者は、他のジュースを選択してもよく、存在している糖質を、可消化糖質の合計が削減されるように再配列できる他の酵素を選択してもよく、その削減は、3種の炭水化物、すなわちグルコース及びフルクトースと共にスクロースの合計が減少することによって示され、その減少は、当分野で利用可能な任意の多くの分析的方法、並びにオリゴ糖類及び多糖類の同時出現によって、容易に測定される。当業者は、前記3種の糖質の合計が削減されず、オリゴ糖類及び多糖類が出現しないスクロースの削減を観察しても、それは所望のプロセスを示すものではなく、むしろスクロース加水分解を示すことを認識している。
【0021】
したがって、本発明は、水分活性を増大させることなく、及び総糖質濃度を本質的に低下させることなく、及び、果実ジュース中の天然の他の成分の濃度を低下させることなく、有効エネルギーが低下した果実ジュースの製造方法に関し、該成分は、飲食物に穏やかに関与し、関係する果実に応じて、塩、繊維様物質(ペクチンなど)、ビタミン(ビタミンCなど)、イオン(カルシウムなど)などを含み得る。本発明の方法は、その間に、スクロースを利用しながら消化しにくい糖質が生ジュース又はピューレ中に形成される酵素反応を含む。本発明の好ましい実施形態では、ジュースは、レバンスクラーゼなどの、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を含む酵素を用いて処理され、1種又は複数のフルクタンが形成される一方で、スクロースが消費される。本発明の好ましい方法では、反応温度は、20℃以下であり、好ましくは5と15℃の間、例えば、10度である。より低い温度は、微生物汚染、及び望ましくない化学プロセスの可能性を低下させ、レバン形成に関しては好ましいが、他方で、反応時間を長くする。最適化手順は、最終的な汚染の問題、生産効率などを考慮に入れるであろう。自然に低いpHは、ジュースをある程度保護するが、低温殺菌が望ましく、85〜125℃が可能な限り短い時間適用されることが好ましく、例えば、約90℃で1分が好ましい。本発明の方法は、2〜10のpH、4〜75のブリックス、及び10〜80%のスクロース/糖質比を有するジュース中の、代謝的に有効なエネルギーを低下させる。
【0022】
一態様では、本発明は、圧搾したての果実ジュース又は破砕したてのピューレを含めた、健康食品市場向けの果実ジュース又は果実ピューレを提供することができ、それは、94℃より高い温度を含まないことが好ましい低温殺菌ステップ以外のプロセス全体の間、5と15℃の間の温度で維持される。該プロセスで使用される任意のステップは、新鮮なジュース又はピューレ中に存在する天然成分が破壊されないように、又はその濃度が低下することが好ましく、フルクタン合成のために使用される酵素の基質として機能するスクロースを除いて、それらの濃度が他の方法で低下されないように、最適化されることが好ましい。本発明によるジュース中の可消化糖質の量は、同じ果実からの圧搾したての生ジュースと比較すると、13〜40%、例えば、15〜35%低下する。該ジュースは、少なくとも10g/l、好ましくは少なくとも20g/lのフルクタンを含有する。本発明によるプロセスの間に該ジュース又はピューレ中にポリフルクタンが形成されると、有効エネルギーの削減につながるが、ポリフルクタンは、単なるニュートラルな副生成物ではない。ポリフルクタンは、プレバイオティック多糖類、すなわち、ビフィズス菌などの、有用な腸及び結腸の微生物の成長を支援する炭水化物として認識されている。さらに、プレバイオティック多糖類は、抗癌、抗菌(病原菌に対して)、脂質低下、及びグルコール調製作用を有するものと考えられている。それらは、ミネラルの吸収率及びバランスを改善する作用を有することもでき、抗骨粗鬆症の効果を有することができる。さらに、生成するポリフルクタンは、通常のオリゴ糖類FOSとは対照的に、高酸性媒体中で安定であり、高温での低温殺菌に対して耐性がある。したがって、本発明のジュース又はピューレは、天然成分を維持し、プレバイオティックフルクタンの良好な特性を得る一方で、エネルギーが低下した、健康食品市場向けの理想的な製品である。
【0023】
一般的に言えば、本発明は、それらが製造される原材料と比較すると、低糖の含量が低下しており、非代謝性多糖類の含量が多い食品を対象としている。一態様では、前記食品は、果実ジュース及び果実ピューレ、或いは圧搾又は破砕を含むプロセスによって果実全体又は皮をむいた果実から得られる他の製品から選択される、有効な糖質の量が低下した製品である。他の態様では、前記食品は、果実全体、果実成分、又は濃縮糖質溶液を含有する、有効な糖質の量が低下した製品である。本発明による方法によって入手可能な製品としては、有効な糖質の量が低下した、ジュース、ピューレ、シロップ、ジャム、及びコンフィチュールが挙げられる。本発明の一実施形態では、代謝有効性が低下した多糖類を、少なくとも10g/lの濃度で含有する糖シロップを製造する方法は、i)低糖を含有するシロップを用意するステップと、ii)、前記低糖を、前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ、前記低糖の少なくとも一部を転換できる酵素と接触させるステップとを含む。本発明の他の実施形態では、代謝有効性が低下した多糖類を、少なくとも10g/lの濃度で含有する脱イオン濃縮果実ジュースを製造する方法は、i)低糖を含有する脱イオン濃縮果実ジュースを用意するステップと、ii)前記低糖を、前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ、前記低糖の少なくとも一部を転換できる酵素と接触させるステップとを含む。本発明のさらに他の実施形態では、代謝有効性が低下した多糖類を、少なくとも10g/lの濃度で含有するジャム又はコンフィチュールを製造する方法は、i)低糖を含有する、栄養的に許容可能な原材料を用意するステップと、ii)前記低糖を、前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ、前記低糖の少なくとも一部を転換できる酵素と接触させるステップとを含む。
【0024】
本発明については、以下の実施例でさらに記載し例示する。
【実施例】
【0025】
一般的手順
約3〜約6.5のpH、0と15℃の間の温度、及び8〜70ブリックスを含む幅広い糖質濃度、及び10〜70%のスクロース/全糖質で、有効な糖質を低下させながら、スクロースを分解してフルクタンを形成するその能力に関して、様々な酵素を試験した。
【0026】
そのプロセスを展開するときに、酵母菌及び細菌を含めた様々な微生物菌株を、検査済みジュース中の可消化糖質の一部を多糖類へ転換できるフルクトシルトランスフェラーゼの源として試験した。特定の糖質重合活性を示したいくつかの乳酸桿菌株を、ミルク及びリンゴジュースから分離した。US2004/0185537は、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を有するロイテリ菌(Lactobacillus reuteri)由来の新規なタンパク質について記載している。次に、そのような菌株を直性使用するため、又はその遺伝子を組換え型細菌のさらなる調節及び調製に使用するための、好適なフルクトシルトランスフェラーゼ酵素の良好な産生株を求めて、様々な乳酸桿菌株をスクリーニングした。良好な酵素の意図した特性としては、約3〜約6.5のpH、0と60℃の間の温度、及び8〜75ブリックスを含む広範囲の糖質濃度、及び10〜80%のスクロース/合計糖質を含む、様々なジュースの環境で作用する能力が挙げられ、許容可能な時間内で少なくとも70%又は完全なスクロースの転換をもたらすフルクタン形成作用を有するであろう。イヌリナーゼについても調査し、その1種は、イヌリンとレバンの両方を基質として用いて、3〜5のpHでリンゴジュース中にフルクタンを生成したが、所望の温度より高い温度、15℃を超えた温度でむしろ作用し、所望のヒドロラーゼ活性より高い活性を示した。
【0027】
ザイモモナス・モビリスATCC10988を、ATCCから得て、そのレバンスクラーゼ(登録番号AF081588)をクローン化した。該酵素のオリゴマー構造を、ゲル濾過及び透過型電子顕微鏡によって研究した。
【0028】
糖質混合物の分析
フルクトース、グルコース、スクロース、ケストース(フルクトシル−フルクトシル−グルコース)、ニストース(nistose)(フルクトシル−フルクトシル−フルクトシル−グルコース)、レバン、及びイヌリンを含む標準モデル混合物並びにジュースを、当技術分野で知られているクロマトグラフィー法によって分析した。
【0029】
その反応混合物を、酢酸エチル:メタノール:水(体積で7:2:1)を展開溶媒として用いてシリカゲル60プレート(Fluka)上で実施するTLCによっても分析した。スポットを可視化するために、乾燥TLCプレートに、「黄色の霧」(10%HSO中のモリブデン酸アンモニウム及び硝酸セリウムアンモニウム)を吹きかけた。生成したスポットを、標準物との比較によって同定した。前記レバンスクラーゼによってスクロースモデル溶液及びジュース中に形成されたフルクタン構造を、NMRによって分析し、標準レバン及びイヌリンとの比較によって同定した。形成されたレバンの平均的な分子の大きさを、ゲル濾過によって求め、通常1000kDaより大きいことを見出した。形成されたレバンの定量分析も、秤量によって実施した。
【0030】
(実施例1)
スウィーティーグレープフルーツジュース中の有効な糖質の削減を、Z.モビリス由来のレバンスクラーゼ酵素(E.C.2.4.1.10)の添加によって実施した。低温殺菌された圧搾したてのスウィーティーグレープフルーツジュースの試料を、そのまま(12.5ブリックス、pH:3.49)使用した。半分を、ジュース1000ml当たり200mgのレバンスクラーゼ(Z.モビリス由来)で補充し、残り半分を、さらに処理せずに対照として使用した。各試料を、4℃でインキュベートし、24時間撹拌(15rpm)した。実験の最後に、各試料を−20℃で凍結させ、後で分析した。糖質濃度を、HPLCピーク面積から判断し、定量分析を、TLCによって実施したところ、対照処理でフルクタンを示していなかった。フルクタンを、NMRによって分析し、レバンとして同定した。
表1
【表1】

【0031】
酵素活性は、有効な糖質の合計を低下させ、有効な糖質量の減少は、有効エネルギーの約20.5%の減少に相当する。
【0032】
(実施例2)
果実濃縮物中の有効な糖質を、Z.モビリス由来のレバンスクラーゼを添加することによって削減した。オレンジ及びパイナップル濃縮物の試料を、そのまま使用し、濃縮物1000ml当たり200mgのレバンスクラーゼで補充し、4℃でインキュベートした。試料を、示した時間での糖質測定のために採取した。同じ条件下で維持した酵素補充していない濃縮物からの試料を、対照として使用した。これらの濃縮物から還元したジュース中の糖質濃度を、HPLCピーク面積から判断し、定量分析をTLCによって実施したところ、対照処理でフルクタンを示していなかった。フルクタンを、NMRによって分析し、レバンとして同定した。
表2
【表2】


C−対照、E−酵素
【0033】
ブラジルの冷凍濃縮オレンジジュース、65.4ブリックス、pH:3.95。表2は、これらの濃縮物から作られた還元ジュース、11.2ブリックス中の糖質含量を示す。
表3
【表3】


C−対照、E−酵素補充したもの
【0034】
タイの冷凍濃縮パイナップルジュース、60.6ブリックス、pH:3.53。表3は、これらの濃縮物から作られた還元ジュース、12.5ブリックス中の糖質含量を示す。
【0035】
4℃で21日後の結果によると、該濃縮物中の約90%のスクロースが転換された。フルクトース含量がごくわずかに増加したことは、生成したフルクトースの90〜100%の間が、フルクタンへ転換されたことを示し、有効エネルギーの約31%の減少に相当する。
【0036】
(実施例3)
Z.モビリス由来のレバンスクラーゼによってオレンジジュース中に生成したフルクタンの安定性を評価した。ブラジルの濃縮オレンジジュースから還元したオレンジジュース、11.2ブリックス、pH:3.47を、そのまま使用し、ジュース1000ml当たり200mgのレバンスクラーゼで補充し、4℃で3時間インキュベートした。同じ条件下で維持した前記ジュースからの酵素補充なしの試料を、対照として使用した。各試料を、90℃で2分低温殺菌し、ガラス瓶に熱い状態で充填し、水中で冷却した。各試料を、85日間室温で維持し、有効な糖質について調査した。糖質濃度を、HPLCピーク面積から判断し、定量分析をTLCによって実施したところ、対照処理でフルクタンを示していなかった。フルクタンを、NMRによってさらに分析し、レバンとして同定した。その結果は、有効な糖質の含量が、少なくとも3カ月間にわたって室温で保存された、処理されたオレンジジュース中で変化しなかったことを確認した。
【0037】
本発明は、いくつかの特定の実施例に関して記載してきたが、多くの改良及び変法が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、具体的に記載したものとは別の方法で本発明が実現されてもよいことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無添加多糖類を少なくとも10g/lの濃度で含有する果実ジュース又はピューレである食品であって、前記多糖類が、果実中の天然糖質より低い代謝有効性を有する食品。
【請求項2】
炭水化物以外の天然成分の濃度が、前記果実から得たばかりの元来の生ジュース又はピューレ中と同じであり、前記無添加糖類の前記代謝有効性が、前記生ジュース又はピューレ中に元来存在する炭水化物と比較して低下しており、前記元来の生ジュース又はピューレが、圧搾又は破砕によって前記果実から得られる、請求項1に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項3】
代謝有効性が低い前記多糖類が、圧搾したての生ジュース中に存在する、1種又は複数の天然炭水化物からin situで作られる、請求項1に記載の果実ジュース。
【請求項4】
代謝有効性が低い前記多糖類が、破砕したてのピューレ中に存在する、1種又は複数の天然炭水化物からin situで作られる、請求項1に記載の果実ピューレ。
【請求項5】
代謝有効性が低下した前記多糖類が、酵素の存在下でin situで作られる、請求項3に記載の果実ジュース。
【請求項6】
代謝有効性が低下した前記多糖類が、酵素の存在下でin situで作られる、請求項4に記載の果実ピューレ。
【請求項7】
添加糖類を含まない、請求項1に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項8】
添加酵素を含む、請求項1に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項9】
前記多糖類が、少なくとも20kDaの分子量を有する、請求項1に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項10】
代謝有効性が低下した前記多糖類が、ポリフルクタンである、請求項1に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項11】
代謝有効性が低下した前記多糖類が、レバン又はイヌリンである、請求項1に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項12】
前記酵素が、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を示す、請求項5又は6に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項13】
前記酵素が、グリコシルヒドロラーゼファミリー68(GH)のレバンスクラーゼである、請求項5又は6に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項14】
前記酵素が、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)・レバンスクラーゼである、請求項13に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項15】
前記酵素が、E.C.2.4.1.10として分類される、請求項14に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項16】
前記多糖類が、ポリフルクタンであり、前記酵素が、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)・レバンスクラーゼである、請求項5又は6に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項17】
前記酵素が、3.5〜6.5のpH、及び0℃〜15℃の温度でポリフルクタンを合成する、請求項16に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項18】
ポリフルクタンを少なくとも10g/lの濃度で、及びスクロースを最大8g/lの濃度で含有する、請求項17に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項19】
前記ジュース及び前記生ジュースが、本質的に同じ総糖類含量を有する、請求項3に記載の果実ジュース。
【請求項20】
前記ピューレ及び前記生ピューレが、本質的に同じ総糖類含量を有する、請求項4に記載の果実ピューレ。
【請求項21】
NFCジュースである、請求項19に記載の果実ジュース。
【請求項22】
希釈ジュース、濃縮ジュース、及び還元ジュースからなる群から選択されるジュースである、請求項1に記載の果実ジュース。
【請求項23】
濃縮ピューレ、還元ピューレ、並びに処理された非希釈及び非濃縮ピューレからなる群から選択されるピューレである、請求項1に記載の果実ピューレ。
【請求項24】
前記生ジュースと比較すると、代謝的に有効な糖質の量が低下した、請求項21に記載のNFC果実ジュース。
【請求項25】
10g/l以上のポリフルクタンを含有し、プレバイオティックな飲食物で有用である、請求項19に記載の果実ジュース。
【請求項26】
前記生ピューレと比較すると、代謝的に有効な糖質の量が低下した果実ピューレであり、ポリフルクタンを含有し、プレバイオティックな飲食物で有用である、請求項20に記載の果実ピューレ。
【請求項27】
i)単糖類及び二糖類(低糖)を含有する生果実ジュース又はピューレを用意するステップと、
ii)前記低糖を、低糖の少なくとも一部を前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素と接触させるステップと
を含む、代謝有効性が低下した無添加多糖類を、少なくとも10g/lの濃度で含有する、果実ジュース又はピューレである食品を製造する方法。
【請求項28】
i)単糖類及び二糖類(低糖)を含有する生果実ジュース又はピューレを用意するステップと、
ii)前記生ジュース又はピューレ中に、前記低糖の少なくとも一部を前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素を導入するステップと
を含む、代謝有効性が低下した無添加多糖類を、少なくとも10g/lの濃度で含有する、果実ジュース又はピューレを製造する請求項27に記載の方法。
【請求項29】
代謝有効性が低下した前記多糖類が、ポリフルクタンであり、前記酵素が、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を示す、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記フルクトシルトランスフェラーゼ活性が、主にβ(2→6)グリコシド結合の形成を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
代謝有効性が低下した前記ポリフルクタンが、レバンである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
i)低糖を含有する生果実ジュース又はピューレを用意するステップと、
ii)前記生ジュース又はピューレ中に、前記低糖の少なくとも一部を前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素を導入するステップと
を含み、それによりジュース又はピューレの有効なカロリー値を低下させ、前記低エルグの果実ジュース又はピューレを得る、請求項27に記載の低エルグの果実ジュース又はピューレを製造する方法。
【請求項33】
スクロースを含有する生ジュース又はピューレ中に、前記スクロースの少なくとも一部を1種又は複数のフルクタンへ転換できる酵素を導入するステップを含み、それによりジュース中のスクロース濃度を8g/l以下へ低下させる、請求項32に記載の低エルグの果実ジュース又はピューレを製造する方法。
【請求項34】
前記ジュース又はピューレが、前記生ジュース又はピューレと比較すると、代謝的に有効な糖質の量の低下を示す、請求項32に記載の低エルグの果実ジュース又はピューレを製造する方法。
【請求項35】
前記ジュース又はピューレが、(1種又は複数の)フルクタンを、少なくとも10g/lの濃度で含有し、前記生ジュース又はピューレと比較すると、エネルギー含量の低下を示す、請求項32に記載の低エルグの果実ジュース又はピューレを製造する方法。
【請求項36】
i)生果実ジュースを用意するステップと、
ii)前記生ジュースを、スクロース濃度を8g/l以下へ低下させるのに十分な時間ゆっくり撹拌しながら、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素と接触させるステップと、
iii)フルクタンを含有する前記ジュースを、85〜125℃の温度で、ジュースを低温殺菌し、前記酵素の少なくとも95%の活性を非活性化するのに十分な時間加熱するステップと
を含み、それにより、ポリフルクタンを含有し、前記生ジュースと比較すると低下した含量の代謝的に有効な炭水化物及び代謝的に有効なエネルギーを有するジュースを得る、請求項27に記載の低エルグの果実ジュースを製造する方法。
【請求項37】
前記酵素が、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)・レバンスクラーゼであり、前記ポリフルクタンが、前記加熱するステップとその後の保存の間の両方で安定である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
i)生果実ピューレを用意するステップと、
ii)前記生ピューレを、スクロース濃度を8g/l以下へ低下させるのに十分な時間ゆっくり撹拌しながら、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素と接触させるステップと、
iii)フルクタンを含有する前記ピューレを、85〜125℃の温度で、ピューレを低温殺菌し、前記酵素の少なくとも95%の活性を非活性化するのに十分な時間加熱するステップと
を含み、それにより、ポリフルクタンを含有し、前記生ピューレと比較すると低下した含量の代謝的に有効な炭水化物及び代謝的に有効なエネルギーを有するピューレを得る、請求項27に記載の低エルグの果実ピューレを製造する方法。
【請求項39】
前記酵素が、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)・レバンスクラーゼであり、前記ポリフルクタンが、前記加熱するステップとその後の保存の間の両方で安定である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記接触させるステップが、前記生ジュース又はピューレを濃縮又は希釈するステップなしで実施される、請求項27に記載の低エルグの果実ジュース又はピューレを製造する方法。
【請求項41】
前記接触させるステップの前に、前記生ジュース又はピューレを濃縮又は希釈するステップをさらに含む、請求項27に記載の低エルグの果実ジュース又はピューレを製造する方法。
【請求項42】
代謝有効性が低下した多糖類を含有する前記果実ジュース又はピューレを濃縮又は希釈するステップをさらに含む、請求項27に記載の低エルグの果実ジュース又はピューレを製造する方法。
【請求項43】
i)低糖を含有する濃縮ジュース又は濃縮ピューレを用意するステップと、
ii)前記ジュース又はピューレ中に、前記低糖の少なくとも一部を前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素を導入するステップと、
iii)転換後に濃縮物を希釈するステップと
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項44】
前記低エルグのジュースが、NFCジュース、希釈ジュース、濃縮ジュース、及び還元ジュースからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項45】
前記生ジュースが、圧搾したてのジュースである、請求項27に記載の方法。
【請求項46】
ジュースの総糖類含量が、本質的に不変のままであり、前記生ジュース中の天然の他の成分の量が、本質的に不変のままである、請求項36に記載の果実ジュースを製造する方法。
【請求項47】
前記ジュースが、前記生ジュースのエネルギー含量より15〜40%低い有効エネルギー含量を有する、請求項36に記載の果実ジュースを製造する方法。
【請求項48】
前記果実が、オレンジ、グレープフルーツ及び他の柑橘類、リンゴ、パイナップル、イチゴ、並びに他の果実、並びにそれらの混合物から選択される、請求項36に記載の果実ジュースを製造する方法。
【請求項49】
前記酵素が、天然酵素、組換え型又は変性された改変酵素から選択される、請求項36に記載の果実ジュースを製造する方法。
【請求項50】
前記果実が、リンゴ、ナシ、パイナップル、モモ、アンズ、マンゴー、バナナ、イチゴ、及び他の果実、及びそれらの混合物から選択される、請求項38に記載の果実ピューレを製造する方法。
【請求項51】
前記酵素が、天然酵素、組換え型又は変性された改変酵素から選択される、請求項38に記載の果実ピューレを製造する方法。
【請求項52】
代謝有効性が低い前記多糖類が、通常の処理及び保存条件下で、少なくとも1年安定である、請求項1に記載の果実ジュース又はピューレ。
【請求項53】
前記無添加多糖類が、通常の処理及び保存条件下で、少なくとも1年安定である、請求項36又は38に記載の方法。
【請求項54】
添加酵素によって低糖から形成される多糖類を含有する果実ジュース及びピューレから選択される食品であって、前記多糖類が、ヒトの消化管でサッカロースより低い代謝有効性を有し、前記食品中のその濃度が、少なくとも10g/lである食品。
【請求項55】
脱イオン濃縮果実ジュースを含む、請求項54に記載の食品。
【請求項56】
添加酵素によって低糖から形成される多糖類を含有するシロップ、ジャム、及びコンフィチュールから選択される食品であって、前記多糖類が、ヒトの消化管でサッカロースより低い代謝有効性を有し、前記食品中のその濃度が、少なくとも10g/lである食品。
【請求項57】
i)単糖類及び二糖類(低糖)を含有する生ジュース又はピューレを用意するステップと、
ii)前記低糖を、低糖の少なくとも一部を、前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素と接触させるステップと
を含む、代謝有効性が低下した多糖類を少なくとも10g/lの濃度で含有する果実ジュース及びピューレから選択される、請求項56に記載の食品を製造する方法。
【請求項58】
i)単糖類及び二糖類(低糖)を含有する原材料を用意するステップと、
ii)前記低糖を、低糖の少なくとも一部を前記低糖よりヒトの消化管で消化しにくい多糖類へ転換できる酵素と接触させるステップと
を含む、代謝有効性が低下した多糖類を少なくとも10g/lの濃度で含有するシロップ、ジャム、及びコンフィチュールから選択される、請求項56に記載の食品を製造する方法。

【公表番号】特表2010−518817(P2010−518817A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549485(P2009−549485)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001425
【国際公開番号】WO2008/102336
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509178323)ガン シュムエル フーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】