説明

有害廃棄物の処理方法及びその装置

【課題】被処理物を十分に加熱分解出来、処理後の容積を処理前と比べて、減容させることが出来る、有害廃棄物の処理方法及びその装置を提供する。
【解決手段】耐熱性セラミックスから成る溶融炉2を床から浮かせて立設し、溶融炉2の上下の開口部に開閉自在な上蓋4及び下蓋5を設け、溶融炉2、上蓋4の何れかに吸引口7を設け、溶融炉2の周囲に発熱体を設け、上蓋4の裏面に落下自在な重量の、発熱した落し蓋を吊るして設け、被処理物を溶融炉2内に入れて、溶融炉2内を吸引口7から吸引して減圧し、溶融炉2内を発熱体によって加熱し、発熱した落し蓋を落下させて被処理物に接触させ、被処理物を溶融炉2内で溶融減容させ、溶融炉2内の気体を吸引口7から吸引して消臭滅菌装置に通して外部へ排気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、事業所等から廃出される有害廃棄物、特に、病院や診療所等から出される廃棄注射針やその他医療廃棄物等に含まれている感染性の有る有害廃棄物、いわゆる特別管理廃棄物を真空減圧状態で、加熱処理して一般廃棄物にする、有害廃棄物の処理方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄注射針やその他医療廃棄物等に含まれている感染性有害廃棄物質、いわゆる特別管理廃棄物の滅菌方法は、「厚生労働省生衛発第956号」により滅菌率10−6(バチルス菌)、滅菌温度135度以上、常圧、処理時間55分で行うことが決められている。この様な感染性有害廃棄物を処理するための装置としては、各種のものがあり、既存の有害物質除去装置のうち、油加熱方法及び有害物質を含む被処理物を高温で焼成する高温気化溶融炉装置や電気プラズマ溶融炉装置が、安全で確実に有害物質を除去でき、さらに、周辺機器にも優れた装置を装備している事が広く知られている。このことから、被処理物を高温で焼成する高温気化溶融炉装置が、焼却炉メーカーや自治体及び最終処理業者に関心が寄せられている。
【0003】
この様な従来の有害物質除去装置、油加熱方法、高温気化溶融炉装置及び電気プラズマ溶融炉装置では、何れも有酸素状態で被処理物を加熱するため、処理中に大量の二酸化炭素を発生させて、当該二酸化炭素を外部に放出するという欠点があった。
【0004】
この様な中、二酸化炭素を発生させない有害物質除去装置として、本願発明者が発明した特公平7−34902号「遠赤外線分解装置」(特許第2038214号)がある。この遠赤外線分解装置は、被処理物を収容するスペースを有するるつぼを、支持部以外のるつぼの外周との間に間隙を有するように炉本体内に支持して設け、当該るつぼの開口部を炉本体の開口部の内側に位置させ、当該るつぼの開口部及び炉本体の開口部を同時に塞ぐ開閉蓋を設け、前記開閉蓋を閉めて前記るつぼ内を真空状態にし、かつ被処理物を焼却する際に発生する気体をるつぼ内から導出する吸引管を設け、前記炉本体のるつぼ外周との間隙でるつぼを加熱する加熱装置を設け、当該間隙に通じる排気筒を炉本体から突出させ、前記るつぼを遠赤外線を発生する熱伝導率の高い素材により形成したというものである。
【0005】
また、同様に特許第3266591号「断続流動式熱分解装置」がある。この断続流動式熱分解装置は、枠体の両側で、回転炉の両側を回転自在に支持し、この回転炉の中心部の軸方向に筒状のるつぼを設け、このるつぼは前記被処理物を収容する中空部の内周に軸方向に螺旋溝が設けられ、このるつぼの開口両端部は前記枠体に支持された注入口部及び排出口部により塞がれ、前記回転炉内に、るつぼ内部を加熱する電熱式の加熱装置を設け、前記注入口部内及び排出口部内には夫々二重の遮断装置を設け、前記排出口部には、るつぼ内を真空状態にし、かつ被処理物を分解する際に発生する気体をるつぼ内から導出する吸引管を設け、前記回転炉を回転させる駆動装置を設けたものである。
【特許文献1】特公平7−34902号公報
【特許文献2】特許第3266591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの遠赤外線分解装置及び断続流動式熱分解装置では、るつぼの外側から加熱するのみであって、当該るつぼ内に投入された被処理物の、いわゆる内側の芯にまで熱が十分に通らず、そのため、被処理物を十分に加熱分解出来ないことがあった。
【0007】
そこで、この発明は、これらのことに鑑み、被処理物を十分に加熱分解出来、被処理物の処理後の容積を処理前と比べて、格段に減容させることが出来る、有害廃棄物の処理方法及びその装置を提供して前記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、耐熱性セラミックスから成る溶融炉を床から浮かせて立設し、当該溶融炉の上下の開口部に開閉自在な上蓋及び下蓋を設け、当該溶融炉、上蓋又は下蓋の何れかに、当該溶融炉内の気体を吸引する吸引口を設け、また、溶融炉の周囲に発熱体を設け、前記上蓋の裏面に、落下自在な一定重量を有する、熱した落し蓋を吊るして設け、被処理物を当該溶融炉内に入れて、当該溶融炉内を前記吸引口から吸引して真空状態に減圧し、当該溶融炉内を前記発熱体によって加熱し、前記熱した落し蓋を落下させて前記被処理物に接触させ、被処理物を当該溶融炉内で溶融減容させ、当該溶融炉内の気体を前記吸引口から吸気して別途設けた消臭滅菌装置に通して外部へ排気させる、有害廃棄物の処理方法とした。
【0009】
請求項2の発明は、耐熱性セラミックスから成る溶融炉を床から浮かせて立設し、当該溶融炉の上下の開口部に開閉自在な上蓋及び下蓋を設け、当該溶融炉、上蓋又は下蓋の何れかに、当該溶融炉内の気体を吸引する吸引口を設け、当該吸引口から溶融炉内を真空状態に減圧する吸引装置を設け、前記溶融炉の周囲に溶融炉内を加熱する発熱体を設け、前記上蓋の裏面に、溶融炉内の被処理物に接触自在な一定重量を有する、発熱した落し蓋を吊るして設け、別途、前記吸引口から吸引した溶融炉内の気体を処理する消臭滅菌装置を設けた有害廃棄物の処理装置とした。
【0010】
請求項3の発明は、前記溶融炉は箱体内に収容され、前記上蓋の開放状態に対応して箱体の側面に設けた上部投入口に板体扉を設け、前記下蓋の開放状態に対応して箱体の側面に設けた下部搬出口に引出し状の枠体扉を設け、前記板体扉の開閉と前記溶融炉の上蓋の開閉、及び前記枠体扉と溶融炉の下蓋の開閉とを夫々連動させる構成とした前記請求項2に記載の有害廃棄物の処理装置とした。
【0011】
請求項4の発明は、前記消臭滅菌装置を、前記箱体内に収容した前記請求項2又は3に記載の有害廃棄物の処理装置とした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び2の各発明によれば、当該溶融炉の上蓋の裏面に、落下自在な熱した落し蓋を吊るして設け、溶融炉内に入れられた被処理物を減圧状態で、外側から加熱すると共に、一定重量を有する熱した落し蓋を落下させてその自重により前記被処理物に接触するので、被処理物の、いわゆる内側の芯にまで十分に熱が通り、また、当該落し蓋の上方からの圧接により、被処理物を押し付けるので、当該被処理物を十分に溶融減容させることが出来る。これにより、処理後の被処理物の容量を処理前と比べ、格段に小さくすることが出来、その後の処分についても手間がかからないものである。また、被処理物を減圧無酸素状態で加熱し、滅菌減容するので、特別管理廃棄物を容易かつ手間をかけずに、一般廃棄物とすることが出来、従来、特別管理廃棄物として処理をしていたものを一般廃棄物として処理でき、経済的である。
【0013】
請求項3の発明によれば、前記溶融炉を箱体内に収容し、前記上蓋の開放状態に対応して箱体の側面に設けた上部投入口に板体扉を設け、前記下蓋の開放状態に対応して箱体の側面に設けた下部搬出口に引出し状の枠体扉を設け、前記板体扉の開閉と前記溶融炉の上蓋の開閉、及び前記枠体扉と溶融炉の下蓋の開閉とを夫々連動させる構成としたので、被処理物を箱体の上部投入口から箱体内に入れれば、溶融減容処理後に箱体の下部搬出口の引出し状の枠体扉から取り出すことが出来る。従って、装置自体も箱体内にコンパクトに収まり、かつ有害廃棄物を簡単に手間をかけずに処理することが出来る。
【0014】
請求項4の発明によれば、溶融炉内の気体を消臭滅菌する消臭滅菌装置を箱体内に収容したので、装置自体として、さらに、コンパクトとなり、使用し易いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
耐熱性セラミックスから成る溶融炉を床から浮かせて立設し、当該溶融炉の上下の開口部に開閉自在な上蓋及び下蓋を設け、当該溶融炉、上蓋又は下蓋の何れかに、当該溶融炉内の気体を吸引する吸引口を設け、また、溶融炉の周囲に発熱体を設け、前記上蓋の裏面に、落下自在な一定重量を有する、発熱した落し蓋を吊るして設け、被処理物を当該溶融炉内に入れて、当該溶融炉内を前記吸引口から吸引して減圧し、当該溶融炉内を前記発熱体によって加熱し、前記発熱した落し蓋を落下させて前記被処理物に接触させ、被処理物を当該溶融炉内で溶融減容させ、当該溶融炉内の気体を前記吸引口から吸気して別途設けた消臭滅菌装置に通して外気へ排気させる、有害廃棄物の処理方法とした。これにより、前記被処理物を十分に溶融減容させることが出来る。
【実施例1】
【0016】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の一部省略断面左側面図である。図2は、同有害廃棄物処理装置の一部省略断面正面図である。図3は、同有害廃棄物処理装置の一部断面右側面図である。図4は、同有害廃棄物処理装置の平面図である。図5は、同有害廃棄物処理装置の溶融炉の一部省略断面正面図である。
【0017】
この発明の実施例の有害廃棄物処理装置Aは、図1、2、3及び4に示すように、縦長の直方体を立設した形態の箱体1の中を縦方向に板体を設けて二分し、左側のスペースを右側のスペースより大きく取り、この左側のスペースに耐熱性セラミックスによって形成した図5に示す円筒状の溶融炉2を立設し、当該箱体1の底面から一定長上方に持ち上げて、その下部を四方に脚部を有する枠体3によって固定し、箱体1内で支持している。前記溶融炉2の上下の開口部に円盤状の上蓋4及び下蓋5を夫々設けている。
【0018】
また、前記溶融炉2は、前記下蓋5から一定長上方へ上がった箇所で内周径を小さくすぼめて段部2aとしており、この段部2aには感知センサー10を設けている。また、溶融炉2の外周面の上下にわたって、電熱ヒーターから成る発熱体11を巻き付けて設け、その外周を断熱材13で被覆し、さらに、その外周全面を鋳物又はアルミ鋼14で覆っている。また、この溶融炉2には、炉内の圧力計2b、炉内温度計2c及びヒーター温度計2dを設けている(図9参照)。
【0019】
また、図2及び図3に示すように、この箱体1の右側のスペースには、消臭滅菌装置が収納されており、上から四段に分かれている。一番上の第一段には二つの真空ポンプ22とオゾン発生装置29を取り付けており、当該真空ポンプ22を二つ設けているのは、一方を予備としたものであり、また、二つの真空ポンプ22を交互に使用するためである。また、その下の第二段には脱気溶解槽24と抗菌セラミックス活性炭槽28を取り付けている。第三段には、脱臭槽25とオゾン分解層27を取り付けている。
【0020】
前記抗菌セラミックス活性炭槽28では、活性炭20〜50%、カオリン30〜60%、木節粘度10〜40%、葉長石1〜10%、銀0.1〜0.5%、チタン0.5〜1%を混合し、無酸素状態で10〜18時間、1,000〜1,260度で焼成して形成したセラミックス活性炭フィルターを使用しており、第四段には、オゾン散布滅菌槽26を取り付けている。また、箱体1の天井には排気ファン30が設けられている。
【0021】
図6は、この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の溶融炉の上蓋を開けた状態の一部省略断面左側面図である。図7は、同有害廃棄物処理装置の溶融炉の下蓋を開けた状態の一部省略断面左側面図である。
【0022】
上蓋4は、溶融炉2の側面に設けた、図6に示す、電動シリンダ6から成る上蓋駆動装置によって、溶融炉2の上部の開口部の端縁の一箇所を支点として開閉自在になっており、上蓋4の中央付近には、裏面まで貫通した貫通孔を二つ穿ち、吸引口7と注入口8を設けている。同様に、下蓋5は、図7に示す、電動シリンダ9から成る下蓋駆動装置によって開閉自在に設けられている。
【0023】
前記上蓋4を開放した際、図1に示すように、当該上蓋4の裏面と、前記箱体1の略対向する位置に、被処理物投入口12を設け、ここに開閉自在な板体扉20を設けている。この板体扉20は、開放の際、略直角に倒れてやや自由端が上方に位置して傾斜するようになっている。また、前述の通り、上蓋4は電動シリンダ6によって開閉するが、上蓋4の開閉は、被処理物投入口12の板体扉20の動きに連動している。すなわち、板体扉20を開いて略直角に倒した際、この板体扉20の上面は被処理物Bの載置台20aとなり、この載置台20aに被処理物Bを載置し、その後、板体扉20を閉めようとして少し回動させると、エアサスペンション(図示省略)によって、板体扉20はスムーズに回動して閉まり、被処理物Bは自動的に溶融炉2の上部の開口部から中に投入されるようになっており、これと同時に上蓋4が連動して閉まるようになっている。
【0024】
また、下蓋5を開放した際、当該下蓋5の裏面と前記箱体1の略対向する位置に被処理物搬出口23を設けており、この被処理物搬出口23に開閉自在な枠体扉21を設けている。この枠体扉21の下端縁に沿って水平な板体を有して側面略L字型となっており、前記被処理物搬出口23から箱体1の外方へ引出し可能と成っている。この被処理物搬出口23の枠体扉21を前記下蓋5の動きと連動させて当該下蓋5が開放されると当該被処理物搬出口23の枠体扉21はエアサスペンション(図示省略)によって前方へ引出されて突出してスムーズに開放するように設けられている。
【0025】
図8は、この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の溶融炉の上蓋から吊り下げた落し蓋を示す概念図である。上蓋4の裏面は凹部を有し、当該凹部に沿って電熱ヒーター又は電磁波を発する発熱体15を設け、また、この上蓋4の裏面に、図8に示すように、耐熱性セラミックスより形成した一定厚を有する円盤状の落し蓋16をスチールワイヤー17によって溶融炉2内を上下方向に移動自在に吊架している。この落し蓋16は重錘となっている。この落し蓋16の上面形状は前記上蓋4の裏面の凹部に対応して凸部形状になっており、前記上蓋4の発熱体15に接触自在となっている。スチールワイヤー17は、上蓋4の中心部を通って外部に導出され、溶融炉2の外側に設けたウインチ(図示省略)によって、巻き取り又は引出し自在となっており、吊架の仕方は落し蓋16が不用意に回転したり、動いたりせず、常時安定した状態であるように、三点吊り又は五点吊りとなっている。この落し蓋16にも、前記上蓋4の下に位置させた際、上蓋4の吸引口7と注入口8に対向する位置に、二つの貫通孔18、19を夫々穿っている。これにより、上蓋4の下に落し蓋16を当接させた際、吸引口7と貫通孔18、注入口8と貫通孔19とが連通される。また、上蓋4の前記スチールワイヤー17を通す孔にはシール材が設けられ、上蓋4の密封状態を妨げないようになっている。
【0026】
図9は、この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の溶融炉において吸引された気体の、消臭滅菌装置における処理工程を示すチャート図である。前記各槽は、この図9に示すように、通気管31で繋がっており、溶融炉2から真空ポンプ22によって吸引された気体は、溶融炉2、脱気溶解槽24、脱臭槽25、オゾン散布滅菌槽26、オゾン分解槽27、抗菌セラミックス活性炭槽28を経て、最終的に、有害なものは全て除去され、箱体1の天井部分に設けられた排気ファン30から外部に排出される。また、前記オゾン発生装置29で発生させたオゾンは、切替弁により溶融炉2とオゾン散布滅菌槽26に夫々送られるようになっている。
【0027】
次に、この有害廃棄物処理装置Aを使用して、いわゆる特別管理廃棄物である廃棄注射針やその他医療廃棄物を処理する。まず、図1に示す溶融炉2の被処理物投入口12の、板体扉20から成る扉を開けて手前に直角に倒し、載置台20a上に、回収された被処理物Bである廃棄注射針等のかたまりを載置する。そして、板体扉20を閉めると自動的に、被処理物Bは、溶融炉2の中に投入され、底部に載置される。この板体扉20の動きに連動して、上蓋4が閉まり、溶融炉2の中は密閉状態となる。
【0028】
続いて、上蓋4の注入口8から、オゾン発生装置29においてつくられたオゾンを10〜30数秒噴霧して溶融炉2の中を一次滅菌する。その後、オゾン発生装置29を停止して、真空ポンプ22を作動させて吸引口8を介して溶融炉2内を真空減圧すると同時に、溶融炉2の外側に設けられた発熱体11に電源を入れ、200〜400度で被処理物Bを加熱する。前記真空ポンプ22の作動は、溶融炉2内の全ての処理が終了するまで続けられ、当該処理が終了するまで溶融炉2内を常時、30〜60Kpa(好ましくは40Kpa)の真空減圧状態に維持し、また、減圧加熱処理の間に被処理物Bから発生する気体を吸引除去する。この様にして、被処理物Bを真空減圧無酸素状態で滅菌加熱する。
【0029】
さらに、被処理物Bの処理においては、上蓋4の発熱体15にも電源が入り、これらの発熱体15によって十分加熱された落し蓋16が、ウインチが作動してスチールワイヤー17が伸ばされて自重により落下し、溶融炉2底部の被処理物Bを上から落し蓋16で圧接する。そして、上方からこの被処理物Bを高温で加熱する。この落し蓋16による上方からの熱伝導により、従来、困難であった被処理物Bの内部の、いわゆる芯までの加熱溶融が可能となった。また、前記加熱溶融時は、溶融炉2内の気体は常に真空ポンプ22によって、吸引され、前記のように消臭滅菌装置の各処理槽で処理されて箱体1外に排気される。
【0030】
その後、真空減圧処理及び加熱処理が終了し、落し蓋6が溶融炉2の内側の段部2aに当接すると、感知センサー10によって、発熱体11の電源はオフとなり、真空破壊弁32の作動により外気空気(冷却空気)を上蓋2の注入口8から投入し、溶融炉2内の温度を下げる。この時、真空ポンプ22は、溶融炉2内の温度が100度になるまで作動する。
【0031】
溶融炉2内の温度が、100度より低下すると、処理が完了したことになり、真空ポンプ22の作動は停止する。被処理物Bは真空減圧状態で溶融後、冷却により固まって体積が処理前の数分の一の被処理物B´となる。この状態で、前記真空破壊弁32の開状態を保持し、溶融炉2の真空状態を解く。そこで、下蓋5が開き、当該被処理物B´は、図1に示すように、開口部から下蓋5の裏面を伝わって、前方へ突出した被処理物搬出口23の水平な枠体扉21上に転がり、搬出される。処理時間は、被処理物Bの投入から、被処理物B´の搬出まで、およそ40分であった。
【0032】
前記下蓋5が開放され、被処理物B´が搬出されると同時に、前記落し蓋16は、再度上蓋4の裏面まで、スチールワイヤー17が巻かれて引き上げられる。
【0033】
前記実施例においては、溶融炉2を円筒状としたが、角筒状でもよく、他の多角筒形状でもよい。また、落し蓋16を上蓋4に設けた発熱体15によって加熱したものとしているが、この落し蓋16の下面に発熱体を設けてもよい。さらに、抗菌セラミックス活性炭フィルターを用いているが、必ずしもこれらのものを使用する必要は無く、また、他のフィルターを使用しても良い。また、上蓋4や下蓋5の支持及び開閉させる構造については、上下駆動装置、電動シリンダ6、9等に限るものではなく、他のものでもよい。
【0034】
さらに、消臭滅菌処理装置を箱体1内に設けているが、消臭滅菌処理装置は箱体1の外に設けてもよい。また、処理中の溶融炉2の中を30〜60kpaの真空減圧状態、また、焼成温度を200〜400度などと具体的に記載しているが、被処理物やこの装置の使用状況によっては、これらのものに限らず、最適な圧力、温度等を選択すればよい。また、真空減圧状態で被処理物Bを処理しているが、この真空減圧状態とは、いわゆる真空状態を示すが、単に、減圧した状態で被処理物Bを処理する場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の一部省略断面左側面図である。
【図2】この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の一部省略断面正面図である。
【図3】この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の一部断面右側面図である。
【図4】この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の平面図である。
【図5】この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の溶融炉の一部省略断面正面図である。
【図6】この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の溶融炉の上蓋を開けた状態の一部省略断面左側面図である。
【図7】この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の溶融炉の下蓋を開けた状態の一部省略断面左側面図である。
【図8】この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の溶融炉の上蓋から吊り下げた落し蓋を示す概念図である。
【図9】この発明の実施例の有害廃棄物処理装置の溶融炉において吸引された気体の、消臭滅菌装置における処理工程を示すチャート図である。
【符号の説明】
【0036】
A 有害廃棄物処理装置 B 被処理物
B´ 被処理物
1 箱体 2 溶融炉
2a 段部 2b 圧力計
2c 炉内温度計 2d ヒーター温度計
3 枠体 4 上蓋
5 下蓋 6 電動シリンダ
7 吸引口 8 注入口
9 電動シリンダ 10 感知センサー
11 発熱体 12 被処理物投入口
13 断熱材 14 アルミ鋼
15 発熱体 16 落し蓋
17 スチールワイヤー 18 貫通孔
19 貫通孔 20 板体扉
20a 載置台 21 枠体扉
22 真空ポンプ 23 被処理物搬出口
24 脱気溶解槽 25 脱臭槽
26 オゾン散布滅菌槽 27 オゾン分解槽
28 抗菌セラミックス活性炭槽
29 オゾン発生装置 30 排気ファン
31 通気管 32 真空破壊弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性セラミックスから成る溶融炉を床から浮かせて立設し、当該溶融炉の上下の開口部に開閉自在な上蓋及び下蓋を設け、
当該溶融炉、上蓋又は下蓋の何れかに、当該溶融炉内の気体を吸引する吸引口を設け、また、溶融炉の周囲に発熱体を設け、前記上蓋の裏面に、落下自在な一定重量を有する、熱した落し蓋を吊るして設け、被処理物を当該溶融炉内に入れて、当該溶融炉内を前記吸引口から吸引して減圧し、当該溶融炉内を前記発熱体によって加熱し、前記熱した落し蓋を落下させて前記被処理物に接触させ、被処理物を当該溶融炉内で溶融減容させ、当該溶融炉内の気体を前記吸引口から吸引して別途設けた消臭滅菌装置に通して外部へ排気させることを特徴とする、有害廃棄物の処理方法。
【請求項2】
耐熱性セラミックスから成る溶融炉を床から浮かせて立設し、当該溶融炉の上下の開口部に開閉自在な上蓋及び下蓋を設け、
当該溶融炉、上蓋又は下蓋の何れかに、当該溶融炉内の気体を吸引する吸引口を設け、当該吸引口から溶融炉内を減圧する吸引装置を設け、前記溶融炉の周囲に溶融炉内を加熱する発熱体を設け、前記上蓋の裏面に、溶融炉内の被処理物に接触自在な一定重量を有する、発熱した落し蓋を吊るして設け、別途、前記吸引口から吸引した溶融炉内の気体を処理する消臭滅菌装置を設けたことを特徴とする、有害廃棄物の処理装置。
【請求項3】
前記溶融炉は箱体内に収容され、前記上蓋の開放状態に対応して箱体の側面に設けた上部投入口に板体扉を設け、前記下蓋の開放状態に対応して箱体の側面に設けた下部搬出口に引出し状の枠体扉を設け、
前記板体扉の開閉と前記溶融炉の上蓋の開閉、及び前記枠体扉と溶融炉の下蓋の開閉とを夫々連動させる構成としたことを特徴とする、前記請求項2に記載の有害廃棄物の処理装置。
【請求項4】
前記消臭滅菌装置を、前記箱体内に収容したことを特徴とする、前記請求項2又は3に記載の有害廃棄物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−34605(P2009−34605A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200997(P2007−200997)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(507259268)株式会社イーデェス (2)
【Fターム(参考)】