説明

有害廃棄物処理方法及び有害廃棄物処理装置

【課題】有害廃棄物を飛散なく安全、確実に処理し、装置が簡単で、大量処理可能な有害廃棄物処理方法と装置の提供を課題とする。
【解決手段】有害廃棄物を容器に密閉して容器密閉廃棄物P0とする容器密閉装置40と、有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮してブロックP1とする筒状部を有する圧縮装置20と、熱分解部52と溶融部54を有する竪型ガス化溶融炉50と、ブロックP1を加熱する加熱炉30とを備え、熱分解部52は容器密閉廃棄物P0とブロックP1を熱分解・ガス化し、溶融部54はブロックの熱分解・ガス化後の不燃物を溶融し排出し、圧縮装置20は、容器密閉廃棄物P0、他の廃棄物を供給するホッパ部11が筒状部21と連通して設けられ、筒状部21内には、ホッパ部11よりも前方位置で開閉自在の圧縮支持盤23と、ホッパ部11よりも後方から前進して圧縮支持盤23との間で他の廃棄物を圧縮してブロックとする圧縮手段22を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害廃棄物の周囲への飛散などを回避して安全に無害化処理するための廃棄物処理方法および廃棄物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、廃棄物処理場の不足が顕著化しており、産業廃棄物あるいは一般廃棄物の多くは、発生したままの姿で、あるいは何らかの事前処理の上、焼却処理し減容化した後に、埋立などの最終処分が行われる場合が多い。上記した焼却処理の方法として種々の方法が挙げられるが、近年、焼却場における発生ガス中のダイオキシン類など有害物質の管理が問題となっており、廃棄物を発生したままで処理すると、焼却のための炉内の高温酸化雰囲気にもちこまれることで発生してしまう有害物としてのダイオキシン類を炉内の高温雰囲気で分解することで、ダイオキシン類が炉外に排出されてしまうことがないようにすることが可能な処理方法が求められている。このような高温処理が可能な廃棄物処理方法として、特許文献1〜3に開示された廃棄物処理方法(従来技術1という)が挙げられる。この従来技術1のうち特許文献2,3に開示されているプロセスは、かかる処理を高速で行うために、廃棄物を圧縮成形して圧縮ブロックを形成して減容化した後、この圧縮ブロックを乾燥し、ガス化溶融炉に装入して、熱分解・ガス化し不燃分を溶融して、燃料ガスおよびスラグ、金属を得る廃棄物処理プロセスである。この廃棄物処理方法は、種々の形態で発生する産業廃棄物、一般廃棄物を圧縮機で回分的に圧縮成型して処理するため、汎用性の高い方法であると考えられる。
【0003】
一方、PCB汚染物、アスベスト汚染物、ダイオキシン汚染物、感染性医療廃棄物などが焼却処理場までの輸送中に飛散させることが許されない有害廃棄物を処理する場合、合成樹脂製の密閉容器などに密閉して、密閉容器のまま輸送され焼却処理が行われている。このような密閉容器に収納された廃棄物(容器密閉廃棄物という)を上記した従来技術1の廃棄物処理方法を用いて他の廃棄物と同様に圧縮してから処理しようとすると、容器密閉廃棄物を圧縮する際に密閉容器が破壊され、内部の有害廃棄物が漏出し圧縮装置内部を汚染させてしまうという問題が生じる。そこで、容器密閉廃棄物を従来技術1の廃棄物処理方法を用いて処理することができる改良技術として、特許文献4に開示された廃棄物処理方法(従来技術2という)が開発されている。
【0004】
従来技術2は、特許文献4に開示されているように、有害物質を含まない廃棄物を投入口から圧縮装置内に投入した後に、回分的に加圧、圧縮して圧縮ブロックとする工程と、得られた圧縮ブロックを上記圧縮装置が接続されているトンネル式加熱炉内に装入し乾燥した後、該圧縮ブロックを、ガス化溶融炉に装入して、熱分解・ガス化し、不燃分を溶融することとしている。かかる廃棄物処理方法において、特許文献4では、有害廃棄物を容器に密閉した容器密閉廃棄物を、上記廃棄物とは別個に、トンネル式加熱炉内に直接装入する装入装置が設けられていて、廃棄物の圧縮ブロックと共に上記容器密閉廃棄物をガス化溶融炉内に装入している。このような廃棄物処理方法により容器密閉廃棄物は圧縮されたり破壊されることがないため、圧縮装置内を汚染することなく、熱分解・ガス化及び溶融処理されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−26626号公報
【特許文献2】特開平6−79252号公報
【特許文献3】特開平7−323270号公報
【特許文献4】特開平11−218313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術2による廃棄物処理方法では、有害廃棄物を容器に密閉した容器密閉廃棄物を破壊させることなく炉内へ供給して、廃棄物の圧縮ブロックと共に、熱分解・ガス化及び溶融処理することができる。しかしながら、容器密閉廃棄物を廃棄物とは別個にトンネル式加熱炉内に直接装入する装入装置を設けることが必要であり、その装入装置はトンネル式加熱炉からのガス漏洩を防止するために二重のシール弁を設け、不活性ガスでシールする必要があるなど装入装置が煩雑な構成になるという問題がある。
【0007】
また、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を使用していないとする電気機器等であっても、数mg/kgから数十mg/kg程度の微量なPCBに汚染された絶縁油を含むものが存在することが平成14年7月に確認された。その電気機器等の量は、電気機器が約120万台、OFケーブルが1,400kmに上るとの推計があり、このような微量PCB汚染廃電気機器等(微量のPCBによって汚染された絶縁油及びそれが使用された電気機器やOFケーブルに係るものが廃棄物となったものをいう)が大量に存在することが明らかになっており、これらの処理について、技術的に安全、確実で、かつ廃棄物の特性をふまえ、大量を効率的に処理する方策が求められている。従来技術2による廃棄物処理方法では、トンネル式加熱炉内壁と圧縮ブロックとの間の空間に容器密閉廃棄物を落下装入するようにしているため、この空間自体を大きく確保できなく、この空間よりも大きい容器密閉廃棄物が落下されるとこの空間に収まらないこと、そしてこの空間に収まった寸法の容器密閉廃棄物の場合であっても、その空間内にも圧縮ブロックと容器密閉廃棄物との間に隙間が残ってしまい空間を有効に使えず、容器密閉廃棄物を大量に処理することは困難であるという問題がある。
【0008】
このような事情に鑑み、本発明は、上記した従来技術の問題点を解決し、有害廃棄物を周囲への飛散の虞れなく安全、かつ確実に処理することを確保しつつ、煩雑な装置が不要であり、大量に処理することが可能な有害廃棄物処理方法および有害廃棄物処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上述の課題は、有害廃棄物処理の方法に関しては、次の第一及び第二発明により、そしてこの方法に用いられる装置に関しては第三及び第四発明によりそれぞれ解決される。
【0010】
ここで、本発明において、有害廃棄物とは、ポリ塩化ビフェニル(PCB)汚染物、アスベスト汚染物、ダイオキシン汚染物、感染性医療廃棄物等をいう。
【0011】
<第一発明>
有害廃棄物を竪型ガス化溶融炉により無害化処理する有害廃棄物処理方法において、
有害廃棄物を容器に密閉して容器密閉廃棄物を形成する容器密閉工程と、
有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮装置の圧縮空間で圧縮成形してブロックを成形する圧縮工程と、
ブロックと容器密閉廃棄物とを一体として竪型ガス化溶融炉へ向け前方に送る送り工程と、
送られてきたブロックと容器密閉廃棄物とを竪型ガス化溶融炉で熱分解・ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化溶融工程とを備え、
送り工程は、圧縮装置の筒状部へ供給された容器密閉廃棄物の前方に位置するブロックに対して該容器密閉廃棄物を、その後方に位置するブロックで前方に押し出すことにより、該容器密閉廃棄物を前後のブロックで挟持した状態で一体的に前方へ送ることを特徴とする有害廃棄物処理方法。
【0012】
第一発明において、上記容器密閉工程は、容器に有害廃棄物と共に固定炭素を含む廃棄物又は固体燃料を装入し密閉することとしても良い。
【0013】
さらに、第一発明では、上記固定炭素を含む廃棄物又は固体燃料に含まれる固定炭素量を、有害廃棄物の灰分の10重量%以上とするように固定炭素を含む廃棄物又は固体燃料を装入することが好ましい。
【0014】
なお、本発明において、固定炭素とは、揮発せず固体の状態のまま燃焼する炭素をいう。また、固体燃料としては石炭、コークス、木炭が挙げられる。
【0015】
<第二発明>
有害廃棄物を竪型ガス化溶融炉により無害化処理する有害廃棄物処理方法において、
有害廃棄物を合成樹脂により密閉固化し樹脂密閉廃棄物を形成する樹脂密閉工程と、
有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮装置の圧縮空間で圧縮成形してブロックを成形する圧縮工程と、
ブロックと樹脂密閉廃棄物とを一体として竪型ガス化溶融炉へ向け前方に送る送り工程と、
送られてきたブロックと樹脂密閉廃棄物とを竪型ガス化溶融炉で熱分解・ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化溶融工程とを備え、
送り工程は、圧縮装置の筒状部へ供給された樹脂密閉廃棄物の前方に位置するブロックに対して該樹脂密閉廃棄物を、その後方に位置するブロックで前方に押し出すことにより、該樹脂密閉廃棄物を前後のブロックで挟持した状態で一体的に前方へ送ることを特徴とする有害廃棄物処理方法。
【0016】
<第三発明>
有害廃棄物を無害化処理する有害廃棄物処理装置において、
有害廃棄物を容器に密閉して容器密閉廃棄物を形成する容器密閉装置と、
有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮成形してブロックを成形するための圧縮空間として筒状部が形成された圧縮装置と、
容器密閉廃棄物とブロックとを熱分解・ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出する竪型ガス化溶融炉と、
上記圧縮装置の筒状部から竪型ガス化溶融炉へのブロックの前進移動を可能とする空間を有していて該空間内のブロックを加熱する加熱炉とを備え、
上記圧縮装置は、容器密閉廃棄物、有害物質を含まない他の廃棄物の供給を受けるホッパ部がその下部で筒状部と連通可能に設けられ、筒状部内には、ホッパ部よりも竪型ガス化溶融炉へ向け前方位置で筒上部下流側開口を開閉自在に設けられた圧縮支持盤と、上記ホッパ部よりも後方から前方に駆動されて閉位置の圧縮支持盤との間で他の廃棄物を圧縮して押し固めてブロックを成形する圧縮手段とが設けられていることを特徴とする有害廃棄物処理装置。
【0017】
<第四発明>
有害廃棄物を無害化処理する有害廃棄物処理装置において、
有害廃棄物を合成樹脂により密閉固化し樹脂密閉廃棄物を形成する樹脂密閉装置と、
有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮成形してブロックを成形するための圧縮空間として筒状部が形成された圧縮装置と、
樹脂密閉廃棄物とブロックとを熱分解・ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出する竪型ガス化溶融炉と、
上記圧縮装置の筒状部から竪型ガス化溶融炉へのブロックの前進移動を可能とする空間を有していて該空間内のブロックを加熱する加熱炉とを備え、
上記圧縮装置は、樹脂密閉廃棄物、有害物質を含まない他の廃棄物の供給を受けるホッパ部がその下部で筒状部と連通可能に設けられ、筒状部内には、ホッパ部よりも竪型ガス化溶融炉へ向け前方位置で筒上部下流側開口を開閉自在に設けられた圧縮支持盤と、上記ホッパ部よりも後方から前方に駆動されて閉位置の圧縮支持盤との間で他の廃棄物を圧縮して押し固めてブロックを成形する圧縮手段とが設けられていることを特徴とする有害廃棄物処理装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように、有害廃棄物を容器に密閉するか、合成樹脂により密閉固化して、有害物質を含まない他の廃棄物のブロックと共に一体としてガス化溶融炉へ供給して、これを、ガス化溶融炉により熱分解するため、容器や樹脂固化物が破損することがないので、有害廃棄物を周囲への飛散の虞れなく安全かつ確実に処理することを確保しつつ、煩雑な装置が不要であると共に、筒状部内を無駄なく圧縮空間として有効に用いて大量に処理することが可能な、有害廃棄物処理方法および有害廃棄物処理装置を提供することができる。特に、容器に密閉された容器密閉廃棄物あるいは合成樹脂により密閉固化された樹脂密閉廃棄物を受け入れる筒状体の空間は、高さ方向では、筒状体の上内面と下内面の距離としての全高さを利用可能とし、そして前後方向では、二つのブロック間の間隔であるため自在に定まり、十分な大きさが確保できる。したがって、容器密閉廃棄物あるいは樹脂密閉廃棄物は、筒状体内部空間の大きさ以下なら、いかなる大きさであっても上記空間内に受け入れられるという効果をももたらす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る有害廃棄物の処理装置の概要構成図である。
【図2】図1装置の要部について、有害廃棄物の処理方法における圧縮工程を、順を追って(A)〜(F)に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施形態に係る有害廃棄物の処理装置の構成を示す。該処理装置の具体的な構成を説明する前に、まず、該処理装置による有害廃棄物の処理の概略を説明する。
【0021】
処理装置は、有害廃棄物を飛散させることなく無害化するための装置である。該処理装置では、まず、有害廃棄物を容器に密閉し容器密閉廃棄物を作成するか、又は合成樹脂により密閉固化し樹脂密閉廃棄物を作成して密閉処理を行った後、この容器密閉廃棄物又は樹脂密閉廃棄物を、圧縮装置にて、有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮して形成されたブロックと共に、竪型ガス化溶融炉の熱分解部に供給する。該熱分解部では、酸素含有ガスが導入され、容器密閉廃棄物あるいは樹脂密閉廃棄物はブロックと共に熱分解され不燃物が溶融されて、有害廃棄物は無害化される。
【0022】
図1は、本実施形態に係るPCB汚染廃油の処理装置1の構成を示す図である。以下、図1にもとづいて処理装置1の構成について説明する。
【0023】
図1に示されているように、処理装置1には、有害廃棄物を容器に密閉し容器密閉廃棄物を作成する容器密閉装置40が設けられている。この容器密閉装置40は竪型ガス化溶融炉が設置された敷地区画に設けられてもよいし、別の場所に設けられ、密閉後の容器密閉廃棄物を処理装置の場所まで移送するようにしてもよい。
【0024】
処理装置1には、廃棄物投入装置10、圧縮装置20、トンネル式加熱炉30、竪型ガス化溶融炉50が設けられている。廃棄物投入装置10は、後述の圧縮装置20内へ上方から容器密閉廃棄物と、有害物質を含まない他の廃棄物を投入するものであり、該廃棄物投入装置10は、容器密閉廃棄物と上記他の廃棄物を受け入れるホッパ11と、該ホッパ11の底部をなし開閉自在な蓋部12とを有している。該廃棄物投入装置10は、蓋部12が開位置にあるときに圧縮装置20と連通し、容器密閉廃棄物等を圧縮装置20内に投入する。
【0025】
上記他の廃棄物とは、容器密閉廃棄物又は樹脂密閉廃棄物とは別の、有害物質を含まない一般廃棄物、有害物を含まない産業廃棄物をいい、ばらけた状態であり、クレーンなどにより廃棄物投入装置に投入される。
【0026】
上記廃棄物投入装置10の下方には、有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮して圧縮ブロックを成形し、さらには、該圧縮ブロックそして上記容器密閉廃棄物を加熱炉30へ向けて前方に押して送り出す圧縮装置20が設けられている。該圧縮装置20は、ホッパ11の下方位置で水平方向に延びる筒状部21と、該筒状部21内を前後方向(図1にて左右方向)で往復動する圧縮手段としての圧縮ヘッド22と、該ホッパ11よりも下流位置(図1にて右方側)で上下方向に往復動して筒状部21の下流側開口を開閉する板状の圧縮支持盤23とを有している。圧縮支持盤23は後述する加熱炉30の上流側開口を開閉するゲートを兼ねている。上記筒状部21は、その内壁断面が、後述する加熱炉30の内壁断面と同形かつ同一寸法で形成されている。
【0027】
上記圧縮装置20は、圧縮支持盤23が下降位置にて筒状部21の下流側開口を塞いだ閉状態で、圧縮ヘッド22が圧縮支持盤23へ向けて近づくように前方(図にて右方)へ移動することにより、該圧縮ヘッド22と圧縮支持盤23とでホッパ11から投入された他の廃棄物を圧縮して圧縮ブロックP1を成形する。該圧縮ブロックP1の成形は、回分的(バッチ的)に行われる。上記圧縮ヘッド22は、圧縮支持盤23が上昇位置にあって開状態となっているときには、圧縮ブロックP1あるいは容器密閉廃棄物を押して、上記圧縮支持盤23の位置よりも前方にまで、送り出す機能をも有している。
【0028】
上記圧縮装置20の下流側には、該圧縮装置20の筒状部21に接続されトンネル式加熱炉30(以下、「加熱炉30」という)が水平方向に延びて設けられている。該加熱炉30は外部から加熱されており、上記圧縮装置20から供給された圧縮ブロックP1が該加熱炉30内で乾燥されるようになっている。該加熱炉30の下流側端部は、竪型ガス化溶融炉50(以下、「ガス化溶融炉50」という)の装入口51と接続されており、容器密閉廃棄物P0そして乾燥後の上記圧縮ブロックP1を該装入口51からガス化溶融炉50内へ供給可能となっている。
【0029】
ガス化溶融炉50は、上下方向に延びる鉛直部分と、該鉛直部分の下部から水平方向に延びる水平部分とを有している。上記上下方向に延びる部分は、その略下半部が熱分解部52として形成されており、略上半部がガス改質部53として形成されている。また、上記水平部分は溶融部54として形成されている。
【0030】
上記熱分解部52では、容器密閉廃棄物P0と圧縮ブロックP1が混在し堆積して廃棄物堆積層Qが形成され、該廃棄物堆積層Qの容器密閉廃棄物等が熱分解によりガス化される共に不燃分が溶融されて溶融物とされるようになっている。ガス化溶融炉50の側壁の下部には、上記廃棄物堆積層Q内に酸素含有ガスを供給する第一酸素含有ガス供給口55が設けられている。上記溶融物は、主として溶融スラグと溶融金属である。
【0031】
上記ガス改質部53では、後述するように、上記熱分解部52で廃棄物堆積層Qから発生したガスが改質されて改質ガスが生成される。ガス化溶融炉50の側壁の上部側には、ガス改質部53内に、ガス改質のための酸素含有ガスを供給する複数の第二酸素含有ガス供給口56が設けられている。
【0032】
上記溶融部54では、上記熱分解部52で生成された溶融物が加熱されて該溶融物に含まれる炭素等がガス化されて除去される。ガス化溶融炉50の水平部分の上壁には、上記溶融部54に燃料ガスを供給する燃料ガス供給口57が設けられている。また、該溶融部54には、上記溶融物を外部へ排出するための溶融物排出口58が下方へ延びて設けられている。
【0033】
ガス化溶融炉50の頂部には、該頂部に形成された改質ガス排出口59から延びガス改質部53で生成された改質ガスを炉外へ排出するためのガスダクト60が設けられている。ガスダクト60の下流側には、上記処理装置1とは別装置として形成された、上記改質ガスを冷却洗浄するための冷却洗浄水循環装置(図示せず)、改質ガス中のHCLガス等を除去するガス精製装置(図示せず)が設けられている。
【0034】
以下、上述の形態の処理装置1による有害廃棄物の処理方法について、図2をも参照しつつ説明する。
【0035】
まず、竪型ガス化溶融炉50での処理に先立ち、有害廃棄物を容器密閉装置40により容器に密閉し容器密閉廃棄物P0を形成する。容器としては、プラスチック製がガス化して燃料ガスとして回収されることが可能であるために好ましいが、最終的に不燃物は溶融するので金属製であっても良い。容器の形状としては、球状、円筒状、箱型とすることが可能である。この容器密閉装置40は竪型ガス化溶融炉50が設置された敷地区画に設けられてもよいし、別の場所に設けられ、容器密閉廃棄物P0は竪型ガス化溶融炉50の場所まで移送されるようにしてもよい。
【0036】
(1)圧縮装置20の圧縮支持盤23を下降せる閉位置にもたらし筒状部21の前方を塞いだ閉状態とし、蓋部12が開位置にあるホッパ11からの筒状部21へ、有害物質を含まないでばらけた状態の他の廃棄物を落下供給する。次に、圧縮ヘッド22を前進させて、この他の廃棄物を圧縮支持盤23との間で圧縮して圧縮ブロックP1を形成した後、上記圧縮支持盤23を上方へもち上げて開状態とし、上記圧縮ヘッド22で上記圧縮ブロックP1を該圧縮支持盤23よりも前方の位置へ送り出し、この送り出し後、圧縮ヘッド22を後退させ、再び圧縮支持盤23を閉状態にもたらし、ホッパ11から容器密閉廃棄物P0を筒状部11へ落下供給する(図2(A)参照)。
【0037】
(2)次に、圧縮支持盤23を開状態とした後に、圧縮ヘッド22を前進させて上記容器密閉廃棄物P0を前方へ押し出し、その前方に位置する圧縮ブロックP1の後面に密着する位置にもたらす(図2(B)参照)。
【0038】
(3)しかる後、圧縮ヘッド22を後退させると共に、圧縮支持盤23を閉位置とし、両者の間に、上記ホッパ11から、ばらけた状態の他の廃棄物P1’を落下投入し(図2(C)参照)、上記圧縮ヘッド22を前進させることで、上記他の廃棄物P1’を閉位置の圧縮支持盤23との間で圧縮して圧縮ブロックP1を形成する(図2(D)参照)。この図2(C)そして図2(D)で示された、他の廃棄物を圧縮して圧縮ブロックP1を形成する要領は上記(1)で示した圧縮ブロックP1の形成の場合も同じである。
【0039】
(4)次に、圧縮支持盤23を開状態とし、圧縮ヘッド22によって上記圧縮ブロックP1を該圧縮支持盤23よりも前方へ送り出して、容器密閉廃棄物P0の後面に接面させ、さらに前進させることで、該容器密閉廃棄物P0をその前方に位置する圧縮ブロックP1との間で挟持するようにしてこれらを前方に送り出す。かくして、前方の圧縮ブロックP1と後方の圧縮ブロックP1との間で挟持された容器密閉廃棄物P0は、上記両圧縮ブロックP1と共に、同様にして前方へ送られる後続の圧縮ブロックそして容器密閉廃棄物により押し出されて(図2(E)参照)加熱炉30内を前進し、竪型ガス化溶融炉50まで到達して該竪型ガス化溶融炉50の熱分解部52の空間へ、次々と落下して行く。
【0040】
(5)しかる後、圧縮ヘッド22は後退し、圧縮支持盤23が閉位置にもたらされ、蓋部12が開かれたホッパ11から次の工程サイクルとして、他の廃棄物の落下供給に備え(図2(F)参照)、上記(1)〜(4)の作動を繰り返す。
【0041】
上記(1)及び(2)において、ホッパ11から容器密閉廃棄物P0を筒状部11へ落下供給した後、ばらけた状態の他の廃棄物P1’を落下投入し、容器密閉廃棄物P0とばらけた状態の他の廃棄物P1’とを前方へ押し出し、その前方に位置する圧縮ブロックP1の後面に密着する位置にもたらすようにしてもよい。このようにすると、加熱炉30内に空隙ができず、有効に利用できる。
【0042】
このような圧縮ヘッドの前進工程では、圧縮ヘッド22の前進時における圧縮ブロックP1そして容器密閉廃棄物P0に対する送り出し圧力を容器密閉廃棄物P0が破壊されない程度の圧力とするように、容器の種類、形状に応じて予め押し込み圧力の上限を調べ、圧力調整すると共に、圧縮ブロック形成のための圧力を、圧縮ブロックがその形状を容易には崩されない程度に緻密となるようにするのに十分な圧力に設定することが好ましい。
【0043】
本実施形態では、筒状部21の内壁断面が加熱炉30の内壁断面と同形かつ同一寸法で形成されているので、上記圧縮ブロックP1の断面形状は、加熱炉30の入口の内壁断面と同形、同一寸法であり、圧縮ブロックP1は加熱炉30の内壁と接触状態を保ったまま押し込まれるようになり、したがって、加熱炉30の入口で該圧縮ブロックP1により加熱炉内雰囲気をシールできる。圧縮ブロックP1は、順次新しい圧縮ブロックが押し込まれる毎に、加熱炉30内を滑りながらガス化溶融炉50の装入口51へ向けて移動する。
【0044】
既述したように、加熱炉30は外部から加熱されており、内部は昇温され、圧縮ブロックP1の移動、昇温過程において、圧縮ブロックP1中の水分が蒸発され乾燥される。そして、乾燥された圧縮ブロックP1は、容器密閉廃棄物P0を前後で挟持した状態で該容器密閉廃棄物P0と共に、ガス化溶融炉50の装入口51から該ガス化溶融炉50の熱分解部52内へ装入そして供給される。
【0045】
圧縮工程における容器密閉廃棄物P0と有害物質を含まない他の廃棄物の圧縮ブロックP1との供給比率は、圧縮ブロックP1の加熱炉30内での移動や熱分解部に供給されてからの熱分解挙動などの点から、容器密閉廃棄物P0を他の廃棄物の圧縮ブロックP1に対して20重量%以下で供給することが好ましい。
【0046】
上記のような圧縮ブロックP1を成形する圧縮工程によって、圧縮ブロックP1を緻密にして加熱炉内での移動や熱分解部への供給の際に崩れることなくブロック形状を維持することができ、圧縮ブロックP1と容器密閉廃棄物P0により廃棄物堆積層Qを形成した状態で、圧縮ブロックP1そして容器密閉廃棄物P0同士間に空隙ができてガス上昇のための流路を形成するようになり、この空隙を通して廃棄物堆積層Q内のガス流れを良好にすることができる。さらに、圧縮ブロックP1として成形された他の廃棄物に含まれる固定炭素が酸素含有ガスにより燃焼して生じる熱エネルギー量を、容器密閉廃棄物P0を熱分解するのに十分な量とすることができる。また、上述の比率が20重量%より大きく容器密閉廃棄物P0の供給量が多くなると、容器密閉廃棄物P0と、これに含まれる有害廃棄物とを熱分解するために必要な熱エネルギー量を他の廃棄物から得ることが困難になることがあるので好ましくない。
【0047】
上記熱分解部52内へ供給された圧縮ブロックP1と容器密閉廃棄物P0は、上述のように、廃棄物堆積層Qを形成する。該廃棄物堆積層Qでは、熱分解部52の下部に設けられた第一酸素含有ガス供給口55から該廃棄物堆積層Q中へ酸素含有ガスが供給される。この結果、廃棄物中の固定炭素などの可燃物が燃焼して、その熱エネルギーで容器密閉廃棄物P0と他の廃棄物の圧縮ブロックP1の揮発分が揮発して熱分解される。この熱分解により、容器密閉廃棄物P0中の有害廃棄物が熱分解され無害化される。また、廃棄物が熱分解されて一酸化炭素、水素、炭化水素、二酸化炭素等へのガス化が行われると共に、容器密閉廃棄物P0と他の廃棄物の圧縮ブロックP1の不燃分(金属、灰分など)が溶融して溶融物が生成される。
【0048】
また、熱分解部52の下部に接続された溶融部54では、燃料ガス供給口57から供給される燃料ガスが燃焼して生成する高温燃焼ガスで上記溶融物が加熱され、該溶融物に含まれる微量の炭素などがガス化して除去され、該溶融物は溶融物排出口58から溶融スラグ、そして溶融金属として排出される。
【0049】
本実施形態において、有害廃棄物を容器に密閉する際に、固定炭素を含む廃棄物又は固体燃料をともに装入し密閉してもよい。
【0050】
また、固定炭素を含む廃棄物又は固体燃料に含まれる固定炭素量を、有害廃棄物の灰分の10重量%以上とするように固定炭素を含む廃棄物又は固体燃料を装入することが好ましい。廃棄物又は固体燃料に含まれる固定炭素が有害廃棄物を熱分解する際の熱源となり、有害廃棄物の熱分解処理をより安定して行うことができるからである。その際、固定炭素量は、その下限を有害廃棄物の灰分の10重量%未満とすると、熱源としての発熱量が少なく有害廃棄物の熱分解処理を安定化させる効果がない。また、固定炭素量の上限は特に定めないが、むやみに高くすると容器に装入する有害廃棄物の割合が低くなり、処理能力が低下するので、40重量%程度までとすることが適当である。ここで、固体燃料としては石炭、コークス、木炭が挙げられる。
【0051】
有害廃棄物を容器に密閉する際に、固定炭素を含む廃棄物又は固体燃料をともに装入し密閉する場合には、廃棄物又は固体燃料に含まれる固定炭素が有害廃棄物を熱分解する際の熱源となるため、容器に有害廃棄物のみを装入する場合に比べて、圧縮工程における容器密閉廃棄物P0の有害物質を含まない他の廃棄物の圧縮ブロックP1に対する供給比率を高くすることができ、容器密閉廃棄物P0を他の廃棄物の圧縮ブロックP1に対して50重量%以下で供給することが好ましい。
【0052】
本発明では、有害廃棄物を容器密閉する代わりに、合成樹脂で密閉処理してもよい。例えば、有害廃棄物をそのまま、あるいはプラスチック製袋に入れたまま合成樹脂で被覆固化し密閉する。合成樹脂の種類としてはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が固定炭素が多いため好ましく、固定炭素が多いため熱分解や不燃物を溶融する際の熱原料として利用できる。
【0053】
以上のように、本発明によれば、有害廃棄物を飛散させることなく、安全、確実に無害化することができ、また、有害物質を含まない他の廃棄物で形成された圧縮ブロックで容器密閉廃棄物あるいは樹脂密閉廃棄物を挟持しながらこれらをガス化溶融炉へ送って該ガス化溶融炉で熱分解するため、大量の有害廃棄物を効率的に無害化処理することができる。さらには、容器密閉廃棄物を挟持する前後の圧縮ブロック同士間の空間は、高さ方向では筒状部内の全高さ寸法を利用できそして前後方向では自在に定まるので、きわめて大きく確保でき、投入される容器密閉廃棄物の許容される寸法を大きくでき、それだけ処理能力が向上する。
【符号の説明】
【0054】
1 有害廃棄物処理装置
11 ホッパ部
20 圧縮装置
21 筒状部
22 圧縮手段(圧縮ヘッド)
23 圧縮支持盤
40 容器密閉装置
50 ガス化溶融炉
52 熱分解部
54 溶融炉
P0 容器密閉廃棄物
P1 (圧縮)ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害廃棄物を竪型ガス化溶融炉により無害化処理する有害廃棄物処理方法において、
有害廃棄物を容器に密閉して容器密閉廃棄物を形成する容器密閉工程と、
有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮装置の圧縮空間で圧縮成形してブロックを成形する圧縮工程と、
ブロックと容器密閉廃棄物とを一体として竪型ガス化溶融炉へ向け前方に送る送り工程と、
送られてきたブロックと容器密閉廃棄物とを竪型ガス化溶融炉で熱分解・ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化溶融工程とを備え、
送り工程は、圧縮装置の筒状部へ供給された容器密閉廃棄物の前方に位置するブロックに対して該容器密閉廃棄物を、その後方に位置するブロックで前方に押し出すことにより、該容器密閉廃棄物を前後のブロックで挟持した状態で一体的に前方へ送ることを特徴とする有害廃棄物処理方法。
【請求項2】
容器密閉工程は、容器に有害廃棄物とともに固定炭素を含む廃棄物又は固体燃料を装入し密閉することとする請求項1に記載の有害廃棄物処理方法。
【請求項3】
固定炭素を含む廃棄物又は固体燃料に含まれる固定炭素量を有害廃棄物の灰分の10重量%以上とするように固定炭素を含む廃棄物又は固体燃料が装入されていることとする請求項2に記載の有害廃棄物処理方法。
【請求項4】
有害廃棄物を竪型ガス化溶融炉により無害化処理する有害廃棄物処理方法において、
有害廃棄物を合成樹脂により密閉固化し樹脂密閉廃棄物を形成する樹脂密閉工程と、
有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮装置の圧縮空間で圧縮成形してブロックを成形する圧縮工程と、
ブロックと樹脂密閉廃棄物とを一体として竪型ガス化溶融炉へ向け前方に送る送り工程と、
送られてきたブロックと樹脂密閉廃棄物とを竪型ガス化溶融炉で熱分解・ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出するガス化溶融工程とを備え、
送り工程は、圧縮装置の筒状部へ供給された樹脂密閉廃棄物の前方に位置するブロックに対して該樹脂密閉廃棄物を、その後方に位置するブロックで前方に押し出すことにより、該樹脂密閉廃棄物を前後のブロックで挟持した状態で一体的に前方へ送ることを特徴とする有害廃棄物処理方法。
【請求項5】
有害廃棄物を無害化処理する有害廃棄物処理装置において、
有害廃棄物を容器に密閉して容器密閉廃棄物を形成する容器密閉装置と、
有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮成形してブロックを成形するための圧縮空間として筒状部が形成された圧縮装置と、
容器密閉廃棄物とブロックとを熱分解・ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出する竪型ガス化溶融炉と、
上記圧縮装置の筒状部から竪型ガス化溶融炉へのブロックの前進移動を可能とする空間を有していて該空間内のブロックを加熱する加熱炉とを備え、
上記圧縮装置は、容器密閉廃棄物、有害物質を含まない他の廃棄物の供給を受けるホッパ部がその下部で筒状部と連通可能に設けられ、筒状部内には、ホッパ部よりも竪型ガス化溶融炉へ向け前方位置で筒上部下流側開口を開閉自在に設けられた圧縮支持盤と、上記ホッパ部よりも後方から前方に駆動されて閉位置の圧縮支持盤との間で他の廃棄物を圧縮して押し固めてブロックを成形する圧縮手段とが設けられていることを特徴とする有害廃棄物処理装置。
【請求項6】
有害廃棄物を無害化処理する有害廃棄物処理装置において、
有害廃棄物を合成樹脂により密閉固化し樹脂密閉廃棄物を形成する樹脂密閉装置と、
有害物質を含まない他の廃棄物を圧縮成形してブロックを成形するための圧縮空間として筒状部が形成された圧縮装置と、
樹脂密閉廃棄物とブロックとを熱分解・ガス化し、熱分解残渣と不燃物を溶融し排出する竪型ガス化溶融炉と、
上記圧縮装置の筒状部から竪型ガス化溶融炉へのブロックの前進移動を可能とする空間を有していて該空間内のブロックを加熱する加熱炉とを備え、
上記圧縮装置は、樹脂密閉廃棄物、有害物質を含まない他の廃棄物の供給を受けるホッパ部がその下部で筒状部と連通可能に設けられ、筒状部内には、ホッパ部よりも竪型ガス化溶融炉へ向け前方位置で筒上部下流側開口を開閉自在に設けられた圧縮支持盤と、上記ホッパ部よりも後方から前方に駆動されて閉位置の圧縮支持盤との間で他の廃棄物を圧縮して押し固めてブロックを成形する圧縮手段とが設けられていることを特徴とする有害廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−81421(P2012−81421A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229975(P2010−229975)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】