説明

有意な流出阻害を示さない、親油性薬物を可溶化するビタミンETPGS分子を含む医薬製剤及びこのような医薬製剤の使用

親油性薬物のバイオアベイラビリティーを増加させるための、より詳細には、流出阻害を引き起こさないか又は所望の流出阻害度をもたらすバイオエンハンサーを用いて親油性化合物を可溶化するための化合物及び組成物が開示される。このような組成物の製造方法及び使用方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件は、2004年9月30日に出願された米国仮特許出願第60/614,891号及び2005年6月16日に出願された米国仮特許出願第60/691,102号について優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、親油性薬物のバイオアベイラビリティーを増加させること、より詳細には、所望の流出阻害度(degree of efflux inhibition)を達成するバイオエンハンサーを用いて親油性薬物を可溶化することに関する。
【背景技術】
【0003】
経口投与又は非経口投与によって高ビタミンE活性を有する水溶性分子を提供するために、水溶性ビタミンE活性のある、コハク酸トコフェリルのようなトコフェリル酸のポリエチレングリコールエステルが開発された。例としては、コハク酸d−α−トコフェリルポリエチレングリコール(TPGS)として知られる、α−トコフェロールのポリエチレングリコール酸スクシネートが挙げられる。特許文献1は、ポリエチレングリコールが400、1000の平均分子量並びに600〜6000の範囲で変化する平均分子量を有するTPGS分子を開示している。
【0004】
ポリエチレングリコール鎖が約1000の分子量(MW)を有するTPGS分子(TPGS 1000;Eastman Chemical Comapny,Kingsport,Tennesseeから入手可能)は、種々の薬物のバイオアベイラビリティーを向上させるために経口医薬用として現在使用されている。TPGS 1000は両親媒性を有するため、TPGS 1000の医薬製剤中への混和は、一部の疎水性薬物を可溶化することによって経口アベイラビリティーを向上させる。TPGS 1000はまた、1種又はそれ以上のトランスポータータンパク質(その一例は、細胞流出ポンプとして働く酵素であるP−糖タンパク質(P−gp)である)に影響を及ぼすと考えられている。従って、TPGS 1000は、一部の薬物の流出に影響を及ぼすことによって経口バイオアベイラビリティーの向上に役立つことができる。
【0005】
流出阻害は一部の薬物の経口アベイラビリティーを増加させるが、場合によっては、流出阻害を回避するか又は流出阻害が起こる程度を制御することも望ましい。例えば、医薬製剤中の流出阻害剤の投与には、その流出阻害剤が他の併用薬又は食物由来物質の経口アベイラビリティー(吸収、代謝、分布又はクリアランス)に影響を与える否かを調べるための追加の試験が必要な場合がある。流出阻害度の制御はまた、多数の流出物質を考慮する必要がある場合に望ましい可能性がある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第2,680,749号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
親油性薬物のバイオアベイラビリティーを向上させると同時に、流出阻害を完全に防ぐか又は目的とする流出阻害度を達成する溶解度向上TPGS分子を含む医薬製剤を提供できれば、当業界において進歩となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、TPGSの流出阻害作用が、分子のポリエチレングリコール(PEG)部分の分子量によって異なるという予期せぬ発見に基づく。いくつかの実施態様において、200〜6,000原子質量単位(atomic mass unit)(amu)のPEG分子量範囲では、流出阻害は約750〜約2500の間で極限に達することがわかった。この実施態様における曲線適合は、約1,300のPEG MWで最大流出阻害効果を示す。
【0009】
いくつかの実施態様において、約600以下のPEG分子量を有するTPGS分子が、親油性薬物と併用の併用時に、有意な流出阻害を示すことなく、有意な可溶化効果を示す。いくつかの実施態様においては、少なくとも約3400のPEG分子量を有するTPGS分子が、親油性薬物との併用時に、有意な流出阻害を示さずに、有意な可溶化効果を示す。流出阻害特性を示さない有用な可溶化剤を提供する特性により、目的とする程度の流出阻害と同時に可溶化効果を得るか、又は可溶化効果を示すが流出阻害をそれほど有さない製品を得るという選択が配合者に可能になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、TPGSの分子構造を示す(n=分子のPEG部分に存在するエチレングリコールモノマーの数)。TPGS名称中の数値は、製造に用いたPEGの分子量を示す。従って、TPGS 1000は、平均分子量1000のPEG側鎖を含む。これは、18amuを減じてから44で割ることによって、鎖中のエチレングリコールモノマーの数に変換できる。従って、平均分子量1000のPEG MWは、約22.3個のエチレングリコールモノマーの縮合生成物であり、nは約22であることを意味する。
【0011】
図2は、PEG鎖長への阻害効果の依存度を示す。相対的分泌輸送減少及び相対的吸収輸送増加のワイブル回帰(平均±SD,n=18)(F(x)=1−exp[−(x/b)c],0<x)はそれぞれ、約0.94及び約0.91のr2値を有する。これらの計算値を用いて、最大吸収及び分泌RHO輸送に関する予測最適PEG鎖長はそれぞれ、1581(±209)及び1182(±476)Daにある。
【0012】
図3は、ビタミンE TPGSの存在下におけるRhodamine 123に対するCaco−2単層の透過係数(側底側(basolateral)から頂端側(apical)に向かう方向と頂端側から側底側に向かう方向の両方)が、ビタミンE TPGSのPEG部分の分子量に依存することを示す。x軸上の「Rho 123」は、負の対照としてのRhodamine 123単独を意味する。他のデータ点については、x軸はPEGの分子量を示す。「3400」は実際には、図のために端数を切り上げた、PEG MW 3350に関するデータである。y軸は、各方向における透過係数を示す。濃色の棒は、頂端側から側底側に向かう方向を示し、淡色の棒は側底側から頂端側に向かう方向を示す。棒の高さは平均値(平均±SD、n=18)を示し、棒の頂部から伸びる垂線は標準偏差を示す。*を付けた棒は、負の対照と有意差があり(p<0.05)、**を付けた棒は非常に有意差がある(P<0.001)。データは、阻害プロトコールを用いて測定した。これらのデータの部分は、例2〜10のデータの一部を反映する。
【0013】
図4は、PEG鎖が種々の分子量を有するビタミンE TPGSの存在下におけるRhodamine 123のCaco−2単層透過度(頂端側から側底側に向かう方向のみ)を示す。x軸上の「Rho 123」は、負の対照としてのRhodamine 123のみを意味する。他のデータ点に関しては、x軸はPEGの分子量を示す。「3400」は実際には、図のために端数を切り上げた、PEG MW 3350に関するデータである。y軸は、透過係数を示す。棒の高さは平均値(平均±SD,n=18)を示し、棒の頂部から伸びる垂線は標準偏差を示す。*を付けた棒は、負の対照と有意差があり(p<0.05)、**を付けた棒は非常に有意差がある(P<0.001)。データは、阻害プロトコールを用いて測定した。これらのデータの部分は、例2〜10のデータの一部を反映する。
【0014】
定義
本明細書全体にわたって使用する用語「親油性化合物」は、水への溶解度が「難溶性」範囲又はそれ以下である化合物を意味するものとする。(当業者ならば、「水に難溶性」の化合物に関して、化合物1gを溶解させるのに必要な水の量が約30mLから始まり約100mLで終わる範囲であることがわかるであろう。水に「難溶性」よりも低い溶解度を有する化合物は、化合物を溶解させるのにこれより大きい容量の水を必要とするであろう。)
用語「TPGS」、「TPGS化合物」又は「TPGS類似体」は、図1によって示される任意の化合物を指すものとする。
【0015】
本明細書全体にわたって使用する、「化合物を『「効果的に可溶化する』」又は「このような化合物に対する『可溶化効果』を有する」は、その化合物の水への溶解度を少なくとも約2倍増加させる(即ち、化合物1gを溶解させるのに必要な水の量を少なくとも約1/2減少させる)効果を有することを意味する。
【0016】
本明細書全体にわたって使用する用語「医薬用化合物」は、血流への又は標的細胞、組織若しくは器官中への吸収を引き起こすのに有効な条件下でヒト又は動物に投与された場合に、治療効果又は予防効果を引き起こす任意の物質を意味する。医薬の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:麻酔薬、睡眠薬、鎮静薬及び睡眠導入薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬、抗狭心症薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗糖尿病薬、止瀉薬、抗痙攣薬、抗痛風薬、抗ヒスタミン薬、鎮痒薬、催吐薬、制吐薬、鎮痙薬、食欲抑制薬、神経作動性物質、神経伝達物質アゴニスト、アンタゴニスト、受容体遮断薬及び再取り込み修飾薬、βアドレナリン遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、ジスルファリム(disulfarim)及びジスルファリウム様薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、解熱薬、興奮薬、抗コリンエステラーゼ薬、副交感神経興奮薬、ホルモン、抗凝血薬、抗血栓薬(antithrombotics)、血栓溶解薬、免疫グロブリン、免疫抑制薬、ホルモンアゴニスト/アンタゴニスト、抗菌薬、抗悪性腫瘍薬(antineoplastics)、制酸薬、消化薬、緩下薬、瀉下薬、防腐薬、利尿薬、殺菌薬、殺真菌薬(fungicide)、外部寄生虫撲滅薬、駆虫薬、重金属、重金属アンタゴニスト、キレート化薬、気体及び蒸気、アルカロイド、塩、イオン、オータコイド、ジギタリス、強心配糖体、抗不整脈薬、抗高血圧薬、血管拡張薬、血管収縮薬、抗ムスカリン薬、神経節興奮薬、神経節遮断薬、神経筋遮断薬、アドレナリン作動性神経阻害薬、抗酸化薬、ビタミン類、化粧品、抗炎症薬、創部ケア製品、抗血栓形成薬(antithrombogenic agnets)、抗腫瘍薬(antitumoral agent)、抗血管新生薬、麻酔薬、抗原薬、創傷治癒薬、植物エキス、成長因子、エモリエント、ヒューメクタント、拒絶反応/拒絶反応抑制薬、殺精子薬、コンディショナー、抗細菌薬、抗真菌薬(antifungal agent)、抗ウイルス薬、抗生物質、精神安定薬、コレステロール降下薬、鎮咳薬、ヒスタミン遮断薬並びにモノアミンオキシダーゼ阻害薬。
【0017】
本明細書全体を通して使用する用語「医薬用親油性化合物」は、医薬用化合物でもある親油性化合物を意味する。医薬用親油性化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない。イトラコナゾール(itraconazole)、アステミゾール(astemizole)、サキナビル(saquinavir)、アンプレナビル(amprenavir)、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、ドキソルビシン(doxorubicin)、イブプロフェン(ibuprofen)、ポサコナゾール(posaconazole)、タクロリムス(tacrolimus)、ダナゾール(danazol)、エストロゲン、ロピナビル(lopinavir)、タモキシフェン(tamoxifen)、ネビラピン(nevirapine)、エファビレンツ(efavirenz)、デラビリジン(delaviridine)、ネルフィナビル(nelfinavir)、ラロキシフェン(raloxifene)、エリスロマイシン(erythromycin)、カルバマゼピン(carbamazepine)、ケトコナゾール(ketoconazole)、インディナビル(indinavir)、プロゲステロン、リトナビル(ritonavir)など。
【0018】
本明細書全体を通して使用する用語「医薬有効量の医薬用親油性化合物」は、投与時に目的とする医薬、予防又は治療効果を示すその化合物の量を意味するものとする。
【0019】
本明細書全体を通して使用する、「投与した1種又はそれ以上の化合物の『バイオアベイラビリティーの増加』又は『増加したバイオアベイラビリティー』」は、TPGS類似体の投与効果に関して、TPGS類似体が、TPGS類似体を用いない投与に比較して、1種又はそれ以上の標的体液(systemic fluids)、器官、組織又は細胞に到達する、投与した化合物の用量の部分を増加させることを意味するものとする。バイオアベイラビリティーの増加は、細胞流出、細胞流入又はクリアランスに対して望ましい効果を有する任意のメカニズムを含むものとする。「クリアランス」は、細胞、血液、血漿、組織又は器官からの1種又はそれ以上の化合物の任意の型の放出を含む(例えば、腸クリアランス、肝クリアランス、腎クリアランス及び肺クリアランスはそれぞれ、血液からの化合物の放出を表す)。クリアランスは、腎排泄及び流入及び流出メカニズムを含む全ての他の方法による放出の観察される差によって表すことができる(例えば、胃腸クリアランス、排泄クリアランス、胆管クリアランス及び腸肝循環、代謝クリアランス)。体液の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:血液;脳脊髄液;リンパ液;並びに全ての他の組織液(このような液に浸された組織、例えば、脳、1種若しくはそれ以上の内臓器官の組織、結合組織、筋肉、脂肪又は皮膚内の1種若しくはそれ以上の組織中の増加量を含む)。いくつかの実施態様においては、血液中のどこにおいても測定可能な増加の場合のように、増加は全身的である。いくつかの実施態様においては、投与近くの部位においてのみ増加が測定される局所投与を含む一部の実施態様と同様に、増加はより局部的である。任意の信頼性の高い手段によって測定可能な、液又は組織に到達する投与量の部分の増加はこの定義の範囲内であり、これは、投与後の経時的な総全身薬物濃度を測定することによって確認される増加を含むが、これに限定するものではない。いくつかの実施態様において、濃度は、組織又は液自体を測定することによって、又はその一部分を測定することによって算出される(例えば、限定するものではないが、血液の場合には血清又は血漿)。いくつかの実施態様においては、尿中の、排出された、代謝された且つ/又は未代謝の化合物に関する増加は、尿中の化合物又は化合物の代謝産物のレベルを測定することによって割り出すが、これは全身濃度の増加を反映するであろう。いくつかの実施態様においては、化合物のバイオアベイラビリティーの増加は、濃度曲線下面積(AUC)の増加と定義する。AUCは、質量−時間/容量の単位で表される、経時的な全身化合物濃度の積算尺度であり、化合物の投与時間(時間0)から無限大(体内に残る化合物が測定できない場合)まで測定される。監視物質に関する情報は、当業者には知られており、また、M.Rowland及びT.N.Tozer,Clinical Pharmacokinetics Concepts and Applications(third Ed.,1995),Lippincott Willams and Wilkins,Philadelphiaのような参考文献に記載されている。
【0020】
本明細書全体を通して使用する「Papp」は、本明細書中に記載した阻害プロトコールにおいて定義した見掛け透過係数を意味する。用語PaapBAは、本明細書中に記載した阻害プロトコールを用いて測定した側底側から頂端側に向かう方向における透過係数を意味する。用語PappABは、本明細書中に記載した阻害プロトコールを用いて測定した頂端側から側底側に向かう方向における透過係数を意味する。
【0021】
本明細書全体を通して使用する用語「流出阻害剤用の化合物」は、本明細書において記載した阻害プロトコールを用いて測定した場合に、化合物の不存在下で観測されたPaapBAの約50%以下までPaapBAを低下させる化合物を意味するものとする。従って、「流出阻害剤用でない化合物」は、阻害プロトコールを用いて測定した場合に、PaapBAを低下させないか又は化合物の不存在下で観測されたPaapBAの50%超の量までPaapBAを低下させる化合物を意味するものとする。いくつかの実施態様において、化合物は、任意のメカニズムによって、本明細書中に記載した阻害プロトコールを用いて示されるような、細胞から腸中又は器官(脳、肝臓、腎臓など)中への薬物及び他の物質の流出を低下させる化合物である。このメカニズムとしては、酵素又はトランスポータータンパク質、例えば、P−糖タンパク質(P−gp)、乳癌抵抗性関連タンパク質(BCRP)、多剤抵抗性タンパク質(MRP)、シトクロムP450、UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ及びスルホトランスフェラーゼなどの作用が挙げられるが、これらに限定するものではない。いくつかの実施態様において、化合物は、前に定義したバイオアベイラビリティーの増加を引き起こすものである。
【0022】
本明細書全体を通して使用する用語「分子量」(略語MWを含む)は、単一分子に関しては、その分子の分子量を意味するものとする。異なる分子量を有するポリマー分子を含む多分散製剤に関しては、分子量は、重量平均分子量(Mw)を意味するものとする。
【0023】
TPGS及びTPGS組成物
本発明は、TPGS及びTPGSを含む組成物を含む。TPGSは、選択された分子量を有するか又は選択された分子量範囲内のPEGを含む。分子量は、目的とする流出阻害度を有するか又は流出阻害のないTPGSを提供するように選択する。いくつかの実施態様においては、ポリエチレングリコールの分子量は約900又はそれ以下である。いくつかの実施態様においては、ポリエチレングリコールの分子量は約800又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約700又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約600又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約500又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約400又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約300又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約200又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約1500又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約1600又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約1700又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約1800又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約1900又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約2000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約2100又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約2200又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約2300又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約2400又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約2500又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約2600又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約3000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約3350又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約3500又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約4000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約4500又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約5000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約5500又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約6000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約7000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約8000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約9000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約10000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約11000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約12000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約13000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約14000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約15000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約16000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約17000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約18000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約19000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約20000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約22000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約24000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約26000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約28000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約30000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約32000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約34000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約36000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約38000又はそれ以下である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールの分子量は約41000又はそれ以下である。ポリエチレングリコールの分子量が特定範囲にある実施態様も存在し、特定範囲としては、例えば以下のものが挙げられる:50〜150、100〜200、150〜250、200〜300、250〜350、300〜400、350〜450、400〜500、450〜550、500〜600、550〜650、600〜700、650〜750、700〜800、750〜850、800〜900、850〜950、1000〜1100、1050〜1150、1100〜1200、1150〜1250、1200〜1300、1250〜1350、1300〜1400、1350〜1450、1400〜1500、1450〜1550、1500〜1600、1550〜1650、1600〜1700、1650〜1750、1700〜1800、1750〜1850、1800〜1900、1850〜1950、1900〜2000、1950〜2050、2000〜2100、2050〜2150、2100〜2200、2150〜2250、2200〜2300、2250〜2350、2300〜2400、2350〜2450、2400〜2500、2450〜2550、2500〜2600、2550〜2650、2600〜2700、2650〜2750、2700〜2800、2750〜2850、2800〜2900、2850〜2950、2900〜3000、2950〜3050、3000〜3100、3050〜3150、3100〜3200、3150〜3250、3200〜3300、3250〜3350、3300〜3400、3350〜3450、3400〜3500、3450〜3550、3500〜3600、3550〜3650、3600〜3700、3650〜3750、3700〜3800、3750〜3850、3800〜3900、3850〜3950、3900〜4000、3950〜4050、4000〜4100、4050〜4150、4100〜4200、4150〜4250、4200〜4300、4250〜4350、4300〜4400、4350〜4450、4400〜4500、4450〜4550、4500〜4600、4550〜4650、4600〜4700、4650〜4750、4700〜4800、4750〜4850、4800〜4900、4850〜4950、4900〜6000、4950〜6050、5000〜5100、5050〜5150、5100〜5200、5150〜5250、5200〜5300、5250〜5350、5300〜5400、5350〜5450、5400〜5500、5450〜5550、5500〜5600、5550〜5650、5600〜5700、5650〜5750、5700〜5800、5750〜5850、5800〜5900、5850〜5950、5900〜6000、5950〜6050、6000〜6100、6050〜6150、6100〜6200、6150〜6250、6200〜6300、6250〜6350、6300〜6400、6350〜6450、6400〜6500、6450〜6550、6500〜6600、6550〜6650、6600〜6700、6650〜6750、6700〜6800、6750〜6850、6800〜6900、6850〜6950、6900〜7000、6950〜7050、7000〜7100、7050〜7150、7100〜7200、7150〜7250、7200〜7300、7250〜7350、7300〜7400、7350〜7450、7400〜7500、7450〜7550、7500〜7600、7550〜7650、7600〜7700、7650〜7750、7700〜7800、7750〜7850、7800〜7900、7850〜7950、7900〜8000、7950〜8050、8000〜8100、8050〜8150、8100〜8200、8150〜8250、8200〜8300、8250〜8350、8300〜8400、8350〜8450、8400〜8500、8450〜8550、8500〜8600、8550〜8650、8600〜8700、8650〜8750、8700〜8800、8750〜8850、8800〜8900、8850〜8950、8900〜9000、8950〜9050、9000〜9100、9050〜9150、9100〜9200、9150〜9250、9200〜9300、9250〜9350、9300〜9400、9350〜9450、9400〜9500、9450〜9550、9500〜9600、9550〜9650、9600〜9700、9650〜9750、9700〜9800、9750〜9850、9800〜9900、9850〜9950、9900〜10000、9950〜10050、10000〜10100、10050〜10150、10100〜10200、10150〜10250、10200〜10300、10250〜10350、10300〜10400、10350〜10450、10400〜10500、10450〜10550、10500〜10600、10550〜10650、10600〜10700、10650〜10750、10700〜10800、10750〜10850、10800〜10900、10850〜10950、10900〜11000、10950〜11050、11000〜11100、11050〜11150、11100〜11200、11150〜11250、11200〜11300、11250〜11350、11300〜11400、11350〜11450、11400〜11500、11450〜11550、11500〜11600、11550〜11650、11600〜11700、11650〜11750、11700〜11800、11750〜11850、11800〜11900、11850〜11950、11900〜12000、11950〜12050、12000〜12100、12050〜12150、12100〜12200、12150〜12250、12200〜12300、12250〜12350、12300〜12400、12350〜12450、12400〜12500、12450〜12550、12500〜12600、12550〜12650、12600〜12700、12650〜12750、12700〜12800、1
2750〜12850、12800〜12900、12850〜12950、12900〜13000、12950〜13050、13000〜13100、13050〜13150、13100〜13200、13150〜13250、13200〜13300、13250〜13350、13300〜13400、13350〜13450、13400〜13500、13450〜13550、13500〜13600、13550〜13650、13600〜13700、13650〜13750、13700〜13800、13750〜13850、13800〜13900、13850〜13950、13900〜14000、13950〜14050、14000〜14100、14050〜14150、14100〜14200、14150〜14250、14200〜14300、14250〜14350、14300〜14400、14350〜14450、14400〜14500、14450〜14550、14500〜14600、14550〜14650、14600〜14700、14650〜14750、14700〜14800、14750〜14850、14800〜14900、14850〜14950、14900〜14000、15950〜15050、15000〜15100、15050〜15150、15100〜15200、15150〜15250、15200〜15300、15250〜15350、15300〜15400、15350〜15450、15400〜15500、15450〜15550、15500〜15600、15550〜15650、15600〜15700、15650〜15750、15700〜15800、15750〜15850、15800〜15900、15850〜15950、15900〜14000、16950〜16050、17000〜17100、17050〜17150、17100〜17200、17150〜17250、17200〜17300、17250〜17350、17300〜17400、17350〜17450、17400〜17500、17450〜17550、17500〜17600、17550〜17650、17600〜17700、17650〜17750、17700〜17800、17750〜17850、17800〜17900、17850〜17950、17900〜14000、17950〜18050、18000〜18100、18050〜18150、18100〜18200、18150〜18250、18200〜18300、18250〜18350、18300〜18400、18350〜18450、18400〜18500、18450〜18550、18500〜18600、18550〜18650、18600〜18700、18650〜18750、18700〜18800、18750〜18850、18800〜18900、18850〜18950、18900〜14000、18950〜19050、19000〜19100、19050〜19150、19100〜19200、19150〜19250、19200〜19300、19250〜19350、19300〜19400、19350〜19450、19400〜19500、19450〜19550、19500〜19600、19550〜19650、19600〜19700、19650〜19750、19700〜19800、19750〜19850、19800〜19900、19850〜19950、19900〜20000、19950〜20050、20000〜20100、20050〜20150、20100〜20200、20150〜20250、20200〜20300、20250〜20350、20300〜20400、20350〜20450、20400〜20500、20450〜20550、20500〜20600、20550〜20650、20600〜20700、20650〜20750、20700〜20800、20750〜20850、20800〜20900、20850〜20950、20900〜21000、20950〜21050、21000〜21100、21050〜21150、21100〜21200、21150〜21250、21200〜21300、21250〜21350、21300〜21400、21350〜21450、21400〜21500、21450〜21550、21500〜21600、21550〜21650、21600〜21700、21650〜21750、21700〜21800、21750〜21850、21800〜21900、21850〜21950、21900〜22000、21950〜22050、22000〜22100、22050〜22150、22100〜22200、22150〜22250、22200〜22300、22250〜22350、22300〜22400、22350〜22450、22400〜22500、22450〜22550、22500〜22600、22550〜22650、22600〜22700、22650〜22750、22700〜22800、22750〜22850、22800〜22900、22850〜22950、22900〜23000、22950〜23050、23000〜23100、23050〜23150、23100〜23200、23150〜23250、23200〜23300、23250〜23350、23300〜23400、23350〜23450、23400〜23500、23450〜23550、23500〜23600、23550〜23650、23600〜23700、23650〜23750、23700〜23800、23750〜23850、23800〜23900、23850〜23950、23900〜24000、23950〜24050、24000〜24100、24050〜24150、24100〜24200、24150〜24250、24200〜24300、24250〜24350、24300〜24400、24350〜24450、24400〜24500、24450〜24550、24500〜24600、24550〜24650、24600〜24700、24650〜24750、24700〜24800、24750〜24850、24800〜24900、24850〜24950、24900〜25000、24950〜25050、25000〜25100、25050〜25150、25100〜25200、25150〜25250、25200〜25300、25250〜25350、25300〜25400、25350〜25450、25400〜25500、25450〜25550、25500〜25600、25550〜25650、25600〜25700、25650〜25750、25700〜25800、25750〜25850、25800〜25900、25850〜25950、25900〜26000、25950〜26050、26000〜26100、26050〜26150、26100〜26200、26150〜26250、26200〜26300、26250〜26350、26300〜26400、26350〜26450、26400〜26500、26450〜26550、26500〜26600、26550〜26650、26600〜26700、26650〜26750、26700〜26800、26750〜26850、26800〜26900、26850〜26950、26900〜27000、26950〜27050、27000〜27100、27050〜27150、27100〜27200、27150〜27250、27200〜27300、27250〜27350、27300〜27400、27350〜27450、27400〜27500、27450〜27550、27500〜27600、27550〜27650、27600〜27700、27650〜27750、27700〜27800、27750〜27850、27800〜27900、27850〜27950、27900〜28000、27950〜28050、28000〜28100、28050〜28150、28100〜28200、28150〜28250、28200〜28300、28250〜28350、28300〜28400、28350〜28450、28400〜28500、28450〜28550、28500〜28600、28550〜28650、28600〜28700、28650〜28750、28700〜28800、28750〜28850、28800〜28900、28850〜28950、28900〜29000、28950〜29050、29000〜29100、29050〜29150、29100〜29200、29150〜29250、29200〜29300、29250〜29350、29300〜29400、29350〜29450、29400〜29500、29450〜29550、29500〜29600、29550〜29650、29600〜29700、29650〜29750、29700〜29800、29750〜29850、29800〜29900、29850〜29950、29900〜30000、29950〜30050、30000〜30100、30050〜30150、30100〜30200、30150〜30250、30200〜30300、30250〜30350、30300〜30400、30350〜30450、30400〜30500、30450〜30550、30500〜30600、30550〜30650、30600〜30700、30650〜30750、30700〜30800、30750〜30850、30800〜30900、30850〜30950、30900〜31000、30950〜31050、31000〜31100、31050〜31150、31100〜31200、31150〜31250、31200〜31300、31250〜31350、31300〜31400、31350〜31450、31400〜31500、31450〜31550、31500〜31600、31550〜31650、31600〜31700、31650〜31750、31700〜31800、21750〜31850、31800〜31900、31850〜31950、31900〜32000、31950〜32050、32000〜32100、32050〜32150、32100〜32200、32150〜32250、32200〜32300、32250〜32350、32300〜32400、32350〜32450、32400〜32500、32450〜32550、32500〜32600、32550〜32650、32600〜32700、32650〜32750、32700〜32800、32750〜32850、32800〜32900、32850〜32950、32900〜33000、32950〜33050、33000〜33100、33050〜33150、33100〜33200、33150〜33250、33200〜33300、33250〜33350、33300〜33400、33350〜33450、33400〜33500、33450〜33550、33500〜33600、33550〜33650、33600〜33700、33650〜33750、33700〜33800、33750〜33850、33800〜33900、33850〜33950、33900〜34000、33950〜34050、34000〜34100、34050〜34150、34100〜34200、34150〜34250、34200〜34300、34250〜34350、34300〜34400、34350〜34450、34400〜34500、34450〜34550、34500〜34600、34550〜34650、34600〜34700、34650〜34750、34700〜34800、34750〜34850、34800〜34900、34850〜34950、34900〜35000、34950〜35050、35000〜35100、35050〜3515
0、35100〜35200、35150〜35250、35200〜35300、35250〜35350、35300〜35400、35350〜35450、35400〜35500、35450〜35550、35500〜35600、35550〜35650、35600〜35700、35650〜35750、35700〜35800、35750〜35850、35800〜35900、35850〜35950、35900〜36000、35950〜36050、36000〜36100、36050〜36150、36100〜36200、36150〜36250、36200〜36300、36250〜36350、36300〜36400、36350〜36450、36400〜36500、36450〜36550、36500〜36600、36550〜36650、36600〜36700、36650〜36750、36700〜36800、36750〜36850、36800〜36900、36850〜36950、36900〜36700、36950〜37050、37000〜37100、37050〜37150、37100〜37200、37150〜37250、37200〜37300、37250〜37350、37300〜37400、37350〜37450、37400〜37500、37450〜37550、37500〜37600、37550〜37650、37600〜37700、37650〜37750、37700〜37800、37750〜37850、37800〜37900、37850〜37950、37900〜38000、37950〜38050、38000〜38100、38050〜38150、38100〜38200、38150〜38250、38200〜38300、38250〜38350、38300〜38400、38350〜38450、38400〜38500、39450〜38550、38500〜38600、38550〜38650、38600〜38700、38650〜38750、38700〜38800、38750〜38850、38800〜38900、38850〜38950、38900〜39000、38950〜39050、39000〜39100、39050〜39150、39100〜39200、30150〜39250、39200〜39300、39250〜39350、39300〜39400、39350〜39450、39400〜39500、39450〜39550、39500〜39600、39550〜39650、39600〜39700、39650〜39750、39700〜39800、39750〜39850、39800〜39900、39850〜39950、39900〜40000、39950〜40050、40000〜40100、40050〜40150、40100〜40200、40150〜40250、40200〜40300、40250〜40350、40300〜40400、40350〜40450、40400〜40500、40450〜40550、40500〜40600、40550〜40650、40600〜40700、40650〜40750、40700〜40800、40750〜40850、40800〜40900、40850〜40950、40900〜41000、40950〜41050。前記範囲の任意の2つ又はそれ以上を合することによってPEGがより大きい範囲である実施態様も存在する。本発明は、単一PEG及び多分散した複数個のPEG分子のようなPEG分子群を含む。多分散した複数個のPEG分子を含む態様において、このような複数個に関する「分子量」はMwを意味する。
【0024】
TPGSは、水中でミセルを形成することができるので、水に親油性化合物を可溶化するのに役立つ。TPGSのような両親媒性分子に関しては、水中の臨界ミセル濃度(CMC)は、化合物がどの程度容易に水中でミセルを形成するかを示すので、化合物が親油性化合物を効果的に可溶化する能力の良好な指標である。いくつかの実施態様において、TPGSは、TPGS 1000とは異なる分子量のPEGを含むが、TPGS 1000のCMCの10倍以下のCMCを有する。CMCに関する情報は、当業者には知られており、また、P.W.Atkins,Physical Chemistry(Fourth Edition,1990),W.H.Freeman and Comapny,New Yorkのような参考文献に記載されている。いくつかの実施態様においては、TPGSは、TPGS 1000とは異なる分子量を有するPEGを含むが、TPGS 1000のCMCの5倍以下のCMCを有する。いくつかの実施態様においては、TPGSは、TPGS 1000とは異なる分子量を有するPEGを含むが、TPGS 1000のCMCの2倍以下のCMCを有する。いくつかの実施態様においては、TPGSは、TPGS 1000とは異なる分子量を有するPEGを含むが、TPGS 1000のCMCの150%以下のCMCを有する。いくつかの実施態様においては、TPGSは、TPGS 1000とは異なる分子量を有するPEGを含むが、TPGS 1000のCMCの125%以下のCMCを有する。いくつかの実施態様において、TPGSのCMCは、200〜6000の全てのPEG分子量において0.02±0.02重量%である。いくつかの実施態様において、TPGSは、TPGS 1000とは異なる分子量を有するPEGを含むが、TPGS 1000のCMCと同じCMCを有する。本発明は、本明細書中に開示した分子量範囲(及び分子量の組合せ範囲)のそれぞれにおいて前記CMCのいずれかを有する実施態様を含む。
【0025】
いくつかの実施態様において、TPGSは、本明細書中で定義した「流出阻害剤用の化合物(compound for use as an efflux inhibitor)」である。いくつかの実施態様において、TPGSは、本明細書中で定義した「流出阻害剤用でない化合物」である。TPGSが流出阻害剤用でない化合物であるいくつかの実施態様において、TPGSのPappBAは、阻害プロトコールを用いて測定した場合に、TPGSの不存在下においてはPappBAの約60%より大きい。流出阻害剤用でない化合物のいくつかの実施態様において、TPGSのPappBAは、阻害プロトコールを用いて測定した場合に、TPGSの不存在下においてはPappBAの約65%より大きい。流出阻害剤用でない化合物のいくつかの実施態様において、TPGSのPappBAは、阻害プロトコールを用いて測定した場合に、TPGSの不存在下においてはPappBAの約70%より大きい。流出阻害剤用でない化合物のいくつかの実施態様において、TPGSのPappBAは、阻害プロトコールを用いて測定した場合に、TPGSの不存在下においてはPappBAの約75%より大きい。流出阻害剤用でない化合物のいくつかの実施態様において、TPGSのPappBAは、阻害プロトコールを用いて測定した場合に、TPGSの不存在下においてはPappBAの約80%より大きい。流出阻害剤用でない化合物のいくつかの実施態様において、TPGSのPappBAは、阻害プロトコールを用いて測定した場合に、TPGSの不存在下においてはPappBAの約85%より大きい。流出阻害剤用でない化合物のいくつかの実施態様において、TPGSのPappBAは、阻害プロトコールを用いて測定した場合に、TPGSの不存在下においてはPappBAの約90%より大きい。流出阻害剤用でない化合物のいくつかの実施態様において、TPGSのPappBAは、阻害プロトコールを用いて測定した場合に、TPGSの不存在下においてはPappBAの約95%より大きい。
【0026】
本発明はまた、本発明のTPGSを含む組成物を含む。本明細書中に記載した全てのTPGS化合物及びこのような化合物の全ての組合せを含むこのような組成物の実施態様が存在する。いくつかの実施態様において、組成物は、本発明のTPGSと共に1種又はそれ以上の親油性化合物を含む。いくつかの実施態様において、親油性化合物は医薬用親油性化合物である。いくつかの実施態様において、組成物は、医薬有効量の医薬用親油性化合物を含む。いくつかの実施態様におけるTPGSは、そのCMCより高濃度で存在するので、水への親油性化合物の溶解度を増加させる。いくつかの実施態様において、TPGSは、親油性化合物を水に効果的に可溶化する化合物である。
【0027】
本発明は更に、TPGS分子が全て、前に開示した単一のMW範囲内であるか又はMW範囲の任意の組合せ内又は複数のMW範囲内にある複数のTPGS分子を含む組成物を含む。
【0028】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、1種又はそれ以上の追加の望ましい成分又は化合物を含む。任意の望ましい化合物を使用する。例としては、追加の活性成分と賦形剤、希釈剤及び担体、例えば、充填剤及び増量剤(例えば、澱粉、糖類、マンニトール及び珪酸誘導体);結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース及び他のセルロース誘導体、アルギネート、ゼラチン及びポリビニルピロリドン);保湿剤(例えば、グリセロール);崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム及び炭酸水素ナトリウム);溶解遅延剤(例えば、パラフィン);再吸収促進剤(例えば、第四アンモニウム化合物);界面活性剤(例えば、セチルアルコール、グリセロールモノステアレート);吸着担体(例えば、カオリン及びベントナイト);乳化剤;保存剤;甘味料;安定剤;酸化防止剤;緩衝剤;静菌薬;着色剤;香料;矯味矯臭剤;潤沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム及びマグネシウム);固体ポリエチルグリコール;並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。担体の例としては、組成物中に使用するのに適当な任意の液体、液晶、固体又は半固体、例えば、水又は生理食塩水、ゲル、クリーム、軟膏(salve)、溶剤、希釈剤、液体軟膏基剤、軟膏剤(ointment)、ペースト、インプラント、リポソーム、ミセル、巨大ミセルなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0029】
前に詳細に記載した成分は例に過ぎないこと及び本発明の組成物を含む製剤のいくつかの実施態様は他の適当な成分及び薬剤を含むことを理解すべきである。
【0030】
本発明は更に、本発明のTPGS又は本発明のTPGSを含む任意の組成物を含むパッケージ、容器(vessel)又は任意の他の型の包装容器(container)を含む。パッケージ、容器又は包装容器は、1種又はそれ以上の親油性化合物の水への溶解度を向上又は増加させるためにTPGS又はTPGS組成物を使用する手順を含むか、ラベルとして貼り付けられるか、あるいは別の方法で貼付され、また、TPGS又はTPGS組成物が流出に対して明記した程度の効果を有するか又は別の方法で、明記した程度のバイオアベイラビリティー増加を引き起こすことを任意の方法で表示する。任意の程度の流出阻害又は他のアベイラビリティー増加を示すことができる。いくつかの実施態様において、TPGS又はTPGS組成物が流出を阻害しない、流出若しくはバイオアベイラビリティー増加に対して減少した、限られた又は有意でない阻害効果を有するという表示がなされるか、或いは別の方法で、流出阻害の欠如若しくはバイオアベイラビリティー増加の欠如又は流出阻害若しくは他のバイオアベイラビリティー増加の低下度に関する何らかの表示(例えば、流出阻害が一定レベル以下であることを明らかにする)が提供される。
【0031】
方法
本発明は更に、前述のTPGS及びTPGS組成物を使用する種々の方法を含む。目的とする結果を生じるのに効果的な前記分子及び組成物(並びにこのような分子及び組成物の組合せ)はいずれも、このような方法のそれぞれに用いることができる。
【0032】
組成物は任意の形態で任意の手段によって投与する。投与形態の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:注射剤、液剤、クリーム、ゲル、インプラント、軟膏剤、乳剤、懸濁剤、ミクロスフェア、粉末、粒子、微小粒子、ナノ粒子、リポソーム、ペースト剤、貼付剤、カプセル剤、坐剤、錠剤、経皮送達装置、噴霧剤、坐剤、エーロゾル剤、又は当業者によく知られた他の手段。いくつかの実施態様においては、組成物は他の成分と組合せる。例としては、剤皮、持続性薬剤、徐放用基質及び浸透圧ポンプ成分が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0033】
投与方法の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:経口投与(例えば、経口摂取、口腔投与及び舌下投与)、経肛門投与又は直腸投与、局所適用、エーロゾル適用、吸入、腹腔内投与、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、皮下投与、筋内投与、子宮内投与、膣内投与、体腔内投与、外科的投与(例えば、腫瘍又は体内損傷の位置において)、器官の内腔又は柔組織中への投与、及び非経口投与。
【0034】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、目的とする生理学的又は薬理学的結果を生じるであろう任意の用量範囲で物質を与えるために、ヒト又は動物に投与する。投与量は、投与する1種又は複数の物質、目的とする治療終了点、作用部位又は体液中における目的とする有効濃度、及び投与型によって異なるであろう。物質の適当な用量に関する情報は当業者には知られており、また、L.S.Goodman及びA.Gilman編,The pharmacological Basis of Therapeutics,Macmillan Publishing,New York及びKatzung,Basic & Clinical Pharmacology,Appleton & Lang,Norwalk,Conn.,(6th Ed.1995)のような参考文献に記載されている。
【0035】
本発明は更に、前記方法を含む、任意の混合又は同時投与方法を含み、この場合には方法は更に、TPGSの部分に対する流出阻害の望ましい程度(又はその欠如)を特定する工程を含む。いくつかの実施態様において、方法は、流出阻害の望ましいレベルを特定するために、流出阻害剤用の化合物であるいくつかのTPGS分子(異なるPEG分子量を有する)の中から選択することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、流出阻害の望ましいレベルを特定するために、流出阻害剤用でない化合物である2種又はそれ以上のTPGS分子(異なるPEG分子量を有する)の中から選択することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、流出阻害の望ましいレベルを特定するために、流出阻害剤用である化合物であるいくつかのTPGS分子(異なるPEG分子量を有する)及び流出阻害剤用でない化合物であるいくつかのTPGS分子の中から選択することを含む。いくつかの実施態様において、方法は、流出阻害の望ましい程度を特定するために、異なるPEG分子量を有する複数のTPGS分子の混合物又は他の組合せを選択することを含む。この方法によって、TPGSのPEG部分の1つ又は複数の分子量の操作が、流出阻害度の微調整を可能にする。
【0036】
阻害プロトコール(Caco−2単層培養プロトコール)
本明細書中で使用する用語「阻害プロトコール」は、以下の検定を指す。この検定は、消化管上皮細胞の良好なインビトロモデルであることが知られたCaco−2(C2BBe1又はHTB−37)単層を用いて実施する。以下は阻害プロトコールを説明する:継代48〜92からのCaco−2細胞、クローンC2BBe1を用いる。10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%非必須アミノ酸を補足したダルベッコ(Dulbecco)変法イーグル培地(DMEM)を含む75cm2のT−フラスコ中で約90%のコンフルエントまで増殖させる。細胞は、相対湿度〜85%及びCO2 約5%の雰囲気中で約37℃の温度において増殖させる。細胞を、Transwell(登録商標)インサート(細孔サイズ0.4μm,1.13cm2)の上に細胞約60,000個/cm2の密度で接種する。Caco−2単層を、接種の約21−25日後に用いる。経上皮電気抵抗(TEER)を測定し、バックグラウンドを差し引いてTEER>350Ω*cm2を有する単層のみを輸送の研究に用いる。
【0037】
Rhodamine 123(RHO)輸送を、吸収(頂端側から側底側,Ap→Bl)及び分泌(Bl→Ap)方向において評価する。RHO輸送実験の前に、単層を、両側で対応するTPGS類似体(約33μM)を用いて前培養した(約1時間)。続いて、t=0において、両側がTPGS類似体(約33μM)を含むように、RHOの溶液(クレブスリンガー緩衝液(KRB)(pH7.4)中約33μM)を、ドナーコンパートメントに、純HBSS(pH7.4)をレシーバコンパートメントに加える。
【0038】
単層を、オービタルシェーカーを用いて約100±20rpmで撹拌する。サンプルを、30、60、120、180、240及び300分後にレシーバコンパートメントから採取した。各サンプリング後、等容量の新鮮な輸送緩衝液(約37℃)をレシーバコンパートメントに加えた。実験は3継代にわたって行い、各方向の輸送実験は合計n=18を含んでいた。単層の完全性を確保するために、TEER値は、実験当日と実験終了時に測定した。
【0039】
流速(flux)は、レシーバコンパートメントのRHO定常状態出現速度(steady−state appearance rate)(dQ/dt;μg/s)を用いて求めた。見掛け透過度(Papp)は、下記式に従って計算した:
app=(dQ/dt)*(1/A)*(1/C0
[式中、A(cm2)は単層の公称表面積であり、C0(μg/mL)はt=0におけるドナーコンパートメント中のRHO濃度である]。
appの相対的変動(cm/s)は、下記式に従って計算した:
相対的増加/減少=|(1−Papp(TPGS)/Papp(RHO))*100|。
appBA/PappAB(流出比)は、PappBAをPappABで割った比である。Papp値の差の有意性は、一元配置分散分析(ANOVA)とそれに続くNeumann−Keuls−Student post−hoc検定によって判定した。
【実施例】
【0040】
本発明を、その好ましい実施態様に関する以下の実施例によって更に説明することができるが、これらの実施例は説明のためにのみ記載するのであって、特に断らない限り、本発明の範囲を制限することを目的としないことを理解されたい。
【0041】
例1(a)〜(n)は、親油性薬物を可溶化するTPGS 400の能力を示す。これらの例は、以下の市販製品を用いる。
【0042】
Vital NutrientsコエンザイムQ10粉末(Vital Nutrients/RHG&CO.,Inc.,Middletown,CT 06457 USA)。
【0043】
イブプロフェン,USP−25,5〜10ミクロン(DASTECH International,Inc. 10 Cutter Mill Road,Great Neck,NY 11021)。
【0044】
リポ酸(Medical Research Institute,444 DeHaro Street,Suite 209,San Francisco,CA 94107−2347)。
【0045】
ビタミンE TPGS 400(Eastman Chemical Company,Kingsport,Tennesseeから入手可能)。
【0046】
例1(a)
TPGS 400/コエンザイムQ10(90:10)
水分散型のビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を9g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、栄養補助食品であるコエンザイムQ10粉末1gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観が暗赤色であった。1週間後、サンプルは依然としてさらさらしていた。
【0047】
例1(b)
TPGS 400/コエンザイムQ10(80:20)
水分散型ビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を8g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、栄養補助食品であるコエンザイムQ10粉末2gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観が暗赤色であった。3日間後、サンプルは結晶化し始めた。
【0048】
例1(c)
TPGS 400/コエンザイムQ10(70:30)
水分散型ビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を7g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、栄養補助食品であるコエンザイムQ10粉末3gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観が暗赤色であった。3日間後、サンプルは結晶化し始めた。
【0049】
例1(d)
TPGS 400/コエンザイムQ10(60:40)
水分散型ビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を6g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、栄養補助食品であるコエンザイムQ10粉末4gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観が暗赤色であった。3日間後、サンプルは結晶化し始めた。
【0050】
例1(e)
TPGS 400/コエンザイムQ10(50:50)
水分散型ビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を5g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、栄養補助食品であるコエンザイムQ10粉末5gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観が暗赤色であった。3日間後、サンプルは結晶化し始めた。
【0051】
例1(f)
TPGS 400/コエンザイムQ10(10:90)
水分散型ビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を1g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、栄養補助食品であるコエンザイムQ10粉末9gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観が暗赤色であった。3日間後、サンプルは結晶化し始めた。
【0052】
例1(g)
水中TPGS 400/コエンザイムQ10(90:10)
Millipore水90gをパイレックス(登録商標)ビーカー中に加えた。このビーカーを加熱マントル中に入れ、水を65℃に加熱した。TPGS 400/コエンザイムQ10ブレンド(90:10)10gをオーブン中に入れ、65℃に加熱した。このブレンドを混合しながら前記水に加えた。熱源を切り、混合を続けながらサンプルを室温まで冷ました。1週間後、分散液は安定である。
【0053】
例1(h)
TPGS 400/イブプロフェン(90:10)
水分散型ビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を9g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、非ステロイド系抗炎症薬であるイブプロフェン1gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観は透明黄色であった。1週間後、サンプルは依然としてさらさらしていた。
【0054】
例1(i)
TPGS 400/イブプロフェン(80:20)
水分散型ビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を8g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、非ステロイド系抗炎症薬であるイブプロフェン2gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観は透明黄色であった。1週間後、サンプルは依然としてさらさらしていた。
【0055】
例1(j)
TPGS 400/イブプロフェン(70:30)
水分散型ビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を7g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、非ステロイド系抗炎症薬であるイブプロフェン3gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観は透明黄色であった。1週間後、サンプルは依然としてさらさらしていた。
【0056】
例1(k)
TPGS 400/イブプロフェン(60:40)
水分散型ビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を6g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、非ステロイド系抗炎症薬であるイブプロフェン4gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観は透明黄色であった。1週間後、サンプルは結晶化し始めた。
【0057】
例1(l)
TPGS 400/イブプロフェン(50:50)
水分散型ビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を5g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、非ステロイド系抗炎症薬であるイブプロフェン5gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観は透明黄色であった。1週間後、サンプルは結晶化し始めた。
【0058】
例1(m)
水中TPGS 400/イブプロフェン(90:10)
Millipore水90gをパイレックス(登録商標)ビーカー中に加えた。このビーカーを加熱マントル中に入れ、水を80℃に加熱した。TPGS 400/イブプロフェンブレンド(90:10)10gをオーブン中に入れ、80℃に加熱した。このブレンドを混合しながら前記水に加えた。熱源を切り、混合を続けながらサンプルを室温まで冷ました。1週間後に、分散液は安定である。
【0059】
例1(n)
TPGS 400/リポ酸(90:10)
水分散型のビタミンEであるEastmanビタミンE TPGS 400を9g、パイレックス(登録商標)培地ボトル中に量り入れた。次いで、栄養補助食品であるリポ酸1gをボトルに加えた。ボトルをシールしてから、オーブン中に入れた。オーブン温度は75℃に設定した。6時間後、サンプルを取り出し、ボルテクサーを用いて充分に混合した。サンプルをオーブンに戻し、18時間後にオーブンをオフにした。サンプルを室温まで冷まし、次いで取り出した。このブレンドはさらさらしていて、外観が濁った黄色であった。1週間後、サンプルは依然としてさらさらしていた。
【0060】
例2:TPGS 1000の存在下におけるCaco−2単層中Rhodamine 123流出
TPGS 1000を用いて阻害プロトコールを行った。
【0061】
【表1】

【0062】
この例は、TPGS 1000が、Caco−2単層中におけるRhodamine 123の流出輸送を効果的に阻害したことを示している。Rhodamine 123は、正常なCaco−2細胞において流出輸送によって影響されることがわかっている。
【0063】
例3:TPGS 2000の存在下におけるCaco−2単層中Rhodamine 123流出
PEGが分子量2000であるTPGSを用いて阻害プロトコールを行った。
【0064】
【表2】

【0065】
この例は、TPGS 2000が、Caco−2単層中におけるRhodamine 123の流出輸送を効果的に阻害したことを示している。
【0066】
例4:TPGS−4000の存在下におけるCaco−2単層中Rhodamine 123流出
PEGが分子量4000であるTPGSを用いて阻害プロトコールを行った。
【0067】
【表3】

【0068】
この例は、TPGS 4000が、Caco−2単層中におけるRhodamine 123の流出輸送を効果的に阻害しないことを示している。
【0069】
例5:TPGS−200の存在下におけるCaco−2単層中Rhodamine 123流出
PEGが分子量200であるTPGSを用いて阻害プロトコールを行った。
【0070】
【表4】

【0071】
この例は、TPGS 200が、Caco−2単層中におけるRhodamine 123の流出輸送を効果的に阻害しないことを示している。
【0072】
例6:TPGS−600の存在下におけるCaco−2単層中Rhodamine 123流出
PEGが分子量600であるTPGSを用いて阻害プロトコールを行った。
【0073】
【表5】

【0074】
この例は、TPGS 600が、Caco−2単層中におけるRhodamine 123の流出輸送を効果的に阻害しないことを示している。
【0075】
例7:TPGS−3350の存在下におけるCaco−2単層中Rhodamine 123流出
PEGが分子量3350であるTPGSを用いて阻害プロトコールを行った。
【0076】
【表6】

【0077】
この例は、TPGS 3350が、Caco−2単層中におけるRhodamine 123の流出輸送を効果的に阻害しないことを示している。
【0078】
例8:TPGS−6000の存在下におけるCaco−2単層中Rhodamine 123流出
PEGが分子量6000であるTPGSを用いて阻害プロトコールを行った。
【0079】
【表7】

【0080】
この例は、TPGS 6000が、Caco−2単層中におけるRhodamine 123の流出輸送を効果的に阻害しないことを示している。
【0081】
例9:TPGS−400の存在下におけるCaco−2単層中Rhodamine 123流出
PEGが分子量400であるTPGSを用いて阻害プロトコールを行った。
【0082】
【表8】

【0083】
この例は、TPGS 400が、Caco−2単層中におけるRhodamine 123の流出輸送を効果的に阻害しないことを示している。
【0084】
例10:TPGSの臨界ミセル濃度に対するPEG鎖の分子量の効果の欠如
ポリエチレングリコール(PEG)鎖の分子量のみが異なる一連のTPGS類似体を、TPGS 1000の合成に使用したのと同様な方法によって合成した。これらの誘導体の種々の既知濃度の水溶液を製造した。これらの溶液の表面張力を測定し、TPGSの濃度に対してプロットした。これらのプロットは全て、変曲点まではTPGS濃度に関して表面張力の直線的な低下を示し、変曲点より上では表面張力はTPGS濃度の増加に伴って定常に保たれた。この変曲点における濃度を、水中における個々のTPGSの臨界ミセル濃度(CMC)と定義する。以下は、(測定CMC)対(PEG鎖の分子量)の表である。
【0085】
【表9】

【0086】
これらの例は、TPGS類似体の溶媒和力に決定的な役割を果たすCMCが、200〜6000の範囲のPEG分子量とは比較的独立しているらしいことを示している。
【0087】
本発明を、特にその好ましい実施態様に関して詳述したが、本発明の精神及び範囲内において変動及び変更が可能なことを理解されたい。図面及び明細書中においては、本発明の典型的な好ましい実施態様を開示した。特殊な用語を用いたが、それらは一般的且つ説明的な意味でのみ用い、限定を目的とするものではなく、本発明の範囲は添付した「特許請求の範囲」に記載したものである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】TPGSの分子構造を示す。
【図2】PEG鎖長への阻害効果の依存度を示す。
【図3】ビタミンE TPGSの存在下におけるRhodamine 123に対するCaco−2単層の透過係数(側底側(basolateral)から頂端側(apical)に向かう方向と頂端側から側底側に向かう方向の両方)が、ビタミンE TPGSのPEG部分の分子量に依存することを示す。
【図4】PEG鎖が種々の分子量を有するビタミンE TPGSの存在下におけるRhodamine 123のCaco−2単層透過度(頂端側から側底側に向かう方向のみ)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又はそれ以上の親油性化合物、
流出阻害剤用でない化合物である1種又はそれ以上のTPGS類似体
を含んでなる組成物。
【請求項2】
前記の1種又はそれ以上のTPGS類似体が、TPGS 1000の臨界ミセル濃度(CMC)に等しいか又はそれ以下であるが、TPGS 1000のCMCの10倍以下であるCMCを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記の1種又はそれ以上の親油性化合物が1種又はそれ以上の医薬用化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1種又はそれ以上のTPGS類似体が少なくとも約10,000の分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1種又はそれ以上のTPGS類似体が約400の分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1種又はそれ以上のTPGS類似体が約550未満の分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
1種又はそれ以上のTPGS類似体が少なくとも約2,750の分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
1種若しくはそれ以上の親油性化合物及び/又は流出阻害剤用でない1種若しくはそれ以上のTPGS類似体の、生体への同時投与を含んでなる方法。
【請求項9】
前記の1種又はそれ以上のTPGS類似体が、TPGS 1000の臨界ミセル濃度(CMC)に等しいか又はそれ以下であるが、TPGS 1000のCMCの10倍以下であるCMCを有する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記の1種又はそれ以上の親油性化合物が医薬用である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
1種又はそれ以上の親油性化合物を、流出阻害剤用でない化合物である1種又はそれ以上のTPGS類似体と合することを含んでなる方法。
【請求項12】
前記の1種又はそれ以上のTPGS類似体が、TPGS 1000の臨界ミセル濃度(CMC)に等しいか又はそれ以下であるが、TPGS 1000のCMCの10倍以下であるCMCを有する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記の1種又はそれ以上の親油性化合物が医薬用である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
1種又はそれ以上の親油性化合物を用意し、
組成物によって生じる流出阻害度を選択し、
選択された流出阻害度を前記組成物から生じさせる1種又はそれ以上のTPGS類似体を特定し、そして
前記の1種又はそれ以上のTPGS類似体と前記の1種又はそれ以上の親油性化合物を合する
ことを含んでなる組成物の製造方法。
【請求項15】
前記の1種又はそれ以上の親油性化合物が医薬用である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14に記載に方法によって製造される組成物。
【請求項17】
1種又はそれ以上の親油性化合物を用意し、
組成物によって生じる流出阻害度を選択し、
選択された流出阻害度を前記組成物から生じさせる1種又はそれ以上のTPGS類似体を特定し、そして
前記の1種又はそれ以上のTPGS類似体と前記の1種又はそれ以上の親油性化合物とを合する
ことを含んでなる、生体への投与方法。
【請求項18】
包装容器の内容物が1種又はそれ以上のTPGS類似体を含み;且つ前記容器が、1種又はそれ以上の親油性化合物の水への溶解度を向上又は増加させるために1種又はそれ以上のTPGS類似体を使用する手順を含むか、ラベルとして貼り付けされているか、あるいは別の方法で前記包装容器に貼付されており、且つTPGS又はTPGS組成物が流出に対して阻害効果を有さないか又は流出に対して低下した、限定された又は有意でない阻害効果を有することを任意の方法で表示する包装容器。
【請求項19】
1種又はそれ以上の親油性化合物を用意し、
組成物によって生じる流出阻害度を選択し、
選択された流出阻害度を前記組成物から生じさせる1種又はそれ以上のTPGS類似体を特定し、そして
前記の1種又はそれ以上のTPGS化合物と前記の1種又はそれ以上の親油性化合物を同時投与する
ことを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−514714(P2008−514714A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534708(P2007−534708)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/034587
【国際公開番号】WO2006/039268
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】