有極型SAWフィルタ
【課題】付加インピーダンスを用いて減衰極を形成し、SAWフィルタの周波数特性を高性能化し得る有極型SAWフィルタを提供する。
【解決手段】二端子対回路のSAW共振器を用いた共振器形SAWフィルタと二端子対回路のインピーダンスの直列接続により構成される有極型SAWフィルタであって、前記二端子対回路のインピーダンスにより減衰極を形成し、急峻な周波数特性を有するとともに、前記二端子対回路のインピーダンスZ4AP にインダクタL40とキャパシタC40を用いるようにしたものである。
【解決手段】二端子対回路のSAW共振器を用いた共振器形SAWフィルタと二端子対回路のインピーダンスの直列接続により構成される有極型SAWフィルタであって、前記二端子対回路のインピーダンスにより減衰極を形成し、急峻な周波数特性を有するとともに、前記二端子対回路のインピーダンスZ4AP にインダクタL40とキャパシタC40を用いるようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振器形SAW(表面弾性波)フィルタと付加インピーダンスにより構成された有極型SAWフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
SAWフィルタはLSIと同様に、量産性に優れていることから、民生機器や通信機器などに広範囲に用いられている。特に、小形、かつ軽量であるという特徴から、ポケットベル、携帯電話等の移動体通信において、高周波フィルタとして多用されている。
【0003】
ところで、移動体通信に用いられるSAWフィルタは、低挿入損失で急峻な周波数特性が要求される。この場合、図4に示すように、直列素子10,11,12、並列素子20,21にSAW共振子を用いた帯域通過型フィルタ構成となっている。なお、図4において、1,2は端子、Eは接地端子である。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近の携帯電話等の移動体通信機器の高性能化に伴い、SAWフィルタの一層の低挿入損失化が要求されている。この要求に対して、上記した図4に示される梯子型フィルタが主に用いられているが、この種の梯子型SAWフィルタは、用いる圧電基板の特性に依存しているのが現状である。具体的には通過帯域の帯域幅、挿入損失、通過帯域と減衰域の特性の急峻さ、及び減衰帯域の減衰量に圧電基板の特性が関係している。
【0005】
また、梯子型SAWフィルタにおいて、用いるSAW共振器の共振周波数(直列共振周波数)、反共振周波数(並列共振周波数)、通過帯域、減衰帯域またはその逆を利用するものでは、通過帯域と減衰帯域の配置もしくは間隔が制限される問題がある。
【0006】
したがって、通過帯域と減衰帯域の間隔が狭く、しかも通過帯域において低損失を得ることは難しいといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を除去し、付加インピーダンスを用いて減衰極を形成し、SAWフィルタの周波数特性を高性能化し得る有極型SAWフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕二端子対回路のSAW共振器を用いた共振器形SAWフィルタと二端子対回路のインピーダンスの直列接続により構成される有極型SAWフィルタであって、前記二端子対回路のインピーダンスにより減衰極を形成し、急峻な周波数特性を有するとともに、前記二端子対回路のインピーダンスにインダクタとキャパシタを用いるようにしたものである。
【0009】
〔2〕上記〔1〕記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタは、インダクタとキャパシタの並列共振回路を構成するようにしたものである。
【0010】
〔3〕上記〔1〕記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタは、インダクタとキャパシタの並列共振回路と、インダクタの直列回路を構成するようにしたものである。
【0011】
〔4〕上記〔1〕記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタは、インダクタとキャパシタの直列共振回路と、キャパシタの並列回路を用いるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、共振器形SAWフィルタの周波数特性を、付加インピーダンスを設けることにより、減衰極を形成し、高性能低挿入損失の有極型SAWフィルタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の有極型SAWフィルタは、二端子対回路のSAW共振器を用いた共振器形SAWフィルタと二端子対回路のインピーダンスの直列接続により構成される有極型SAWフィルタであって、前記二端子対回路のインピーダンスにより減衰極を形成し、急峻な周波数特性を有するとともに、前記二端子対回路のインピーダンスにインダクタとキャパシタを用いる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明にかかる有極型SAWフィルタの構成図、図2はその有極型SAWフィルタの集中定数回路図である。前記図4と同じ部分については、同じ符号を付してそれらの説明は省略する。
【0016】
図1に示すように、二つの二端子対回路(梯子型SAWフィルタ)200,(インピーダンスZA 3)201を直列に接続することにより、通過帯域と減衰帯域の間隔が狭く、特性が急峻で、しかも通過帯域において低挿入損失を得ることができる高性能梯子型SAWフィルタを実現するものである。
【0017】
すなわち、一つの二端子対回路として梯子型SAWフィルタ200を有し、もう一つの二端子対回路201をインダクタのみで構成する。
【0018】
ここで、本発明の有極型SAWフィルタの動作について図3に示す回路を用いて説明する。
【0019】
図3は図2に示す本発明にかかる有極型SAWフィルタの集中定数回路を二等分した回路図である。図2および図3において、13〜18,22,23はSAW共振器の等価回路、ZA 4はインピーダンスである。
【0020】
ここで、L0 =0の場合、及びL0 ≠0の場合について考察する。
【0021】
(A)L0 =0の場合、図3に示す回路において、端子(6,7,8)を開放した場合の端子5と、接地端子Eからの入力インピーダンスZ30、及び端子(6,7,8)を短絡した場合の端子5と接地端子Eからの入力インピーダンスZ3sを求めると、次に示す式(1)、式(2)で与えられる。
【0022】
Z3O=Z1 +Z3 …(1)
Z3s=Z1 +Z2 ×Z3 /(Z2 +Z3 ) …(2)
ここで
Z1 =(1+S2 LS1CS1)/(SCS10 +SCS1+S3 LS1CS1CS10 )
Z2 =(1+S2 LS2CS2)/(SCS20 +SCS2+S3 LS2CS2CS20 )
Z3 =(1+S2 LS3CS3)/(SCS30 +SCS3+S3 LS3CS3CS30 )
S=jω, ω=2πf …(3)
また、図3に示す回路の周波数特性α(ω)は上記式(1)、式(2)を用いて以下の式(4)のようになる。
【0023】
α(ω)=20.0×Log[ABS〔(1+Z3O)(1+Z3S)/
(Z3O−Z3S)〕](dB) …(4)
ここで、ABS〔 〕は〔 〕内の絶対値を表す。
【0024】
すなわち、L0 =0の場合の図1に示す有極型SAWフィルタの周波数特性は上記式(4)より判る。周波数特性上の減衰極は、上記式(3)より次の場合である。
【0025】
1. Z3O=∞ または、Z3S=∞
2. Z3O=Zss=0
3. Z3O=Z3S …(5)
このZ1 ,Z2 ,Z3 がSAW共振子の場合、上記式(3)より上記式(5)の条件は決まる。
【0026】
(B)L0 ≠0の場合
ここで、図1において、上記式(1)、式(2)において、上記式(1)のみ以下の式(6)のようになる。
【0027】
Z3O(L0 )=Z1 +Z3 +SL0 …(6)
上記式(2)、式(6)より、上記式(5)の条件を満足するように、L0 を決める。
【0028】
本発明は、L0 を付加し、広範囲に亘って、式(5)〔Z3O(L0 )≒Z3s〕の関係を満足するようにして、周波数特性上において、減衰極を形成し、低挿入損失で、しかも、急峻な特性を有する有極型SAWフィルタを実現するものである。
【0029】
以下、本発明の参考例及び実施例につい説明する。
【0030】
まず、参考例〔1〕について説明する。
【0031】
ここで、参考例〔1〕の有極型SAWフィルタを用いたCDMA用Tx−フィルタについて説明する。
【0032】
このCDMA用Tx−フィルタは、図4に示すようにCDMA用Tx−フィルタの回路構成である。つまり、4段構成共振器型SAWフィルタ(直列腕SAW共振器:Rs110、Rs211、Rs312、並列腕SAW共振器:RP120、RP221)である。
【0033】
図4において、直列腕のSAW共振器の基本構成は(対数120対、交差長120μm)、並列腕のSAW共振器の基本構成は(対数60対、交差長90μm)である。
【0034】
図5は図4に示したフィルタの集中定数等価回路図、図6は本発明のCDMA用Tx−フィルタの周波数特性と従来のCDMA用Tx−フィルタの周波数特性を示す図、図7は従来のCDMA用Tx−フィルタの開放、短絡インピーダンス特性図、図8は本発明のCDMA用Tx−フィルタの開放、短絡インピーダンス特性図であり、図7及び図8において、横軸に周波数(Hz)、縦軸にインピーダンス(Ω)を示しており、曲線aは短絡インピーダンスを、曲線bは開放インピーダンスをそれぞれ示している。
【0035】
図7に示す従来のフィルタおいては、注目する帯域(869〜894MHz)において、短絡インピーダンスと開放インピーダンスが等しくないが、本発明の場合は、L0 =4(nH)を付加することにより、短絡インピーダンスと開放インピーダンスが近似的に等しくなり、減衰量が要求規格を満足する。
【0036】
また、図9(表)はCDMA用Tx−フィルタの周波数特性及びインピーダンス特性を示す図である。
【0037】
図6において、横軸に周波数(Hz)、縦軸に減衰量(dB)を表しており、aは従来の回路構成の周波数特性を、bは本発明の回路構成の周波数特性をそれぞれ示している。なお、ここで、本発明の回路構成においては、回路構成付加インピーダンスはインダクタで構成し、そのインダクタンス値Lは、L0 =4(nH)とした場合、従来の回路構成においては、インダクタンス値LはL=0としている。
【0038】
図6から明らかなように、824MHzから849MHzまでは減衰量1.5dB以下であり、869MHzから894MHzまでは減衰量3.5MHz以上であり、通過帯域と減衰帯域の間隔が狭く、特性が急峻であることがわかる。
【0039】
なお、従来技術と本発明の比較において、注目周波数点として、889、895、901MHzについては図9(表)に示した。
【0040】
図6及び図9から明らかなように、従来の場合(L0 =0の場合)は、823MHzで1.65dB、849MHzで1.15dB、869MHzで46.9dB、895MHzで25.7dBであり、本発明の場合(L0 =4nHの場合)は、823MHzで1.13dB、849MHzで1.19dB、869MHzで46.0dB、895MHzで38.8dBである。
【0041】
インピーダンス特性に関しては、図7乃至図9から明らかなように、従来の場合(L0 =0の場合)は、889MHzにおいて、短絡(Z3s)で−j2.61、開放(Z30)で−j3.35、895MHzにおいて、短絡で−j2.28、開放で−j3.00、901MHzにおいて、短絡で−j2.12、開放で−j2.84であり、本発明の場合(L0 =4nHの場合)は、889MHzにおいて、短絡で−j2.61、開放で−j2.91、895MHzにおいて、短絡で−j2.28、開放で−j2.55、901MHzにおいて、短絡で−j2.12、開放で−j2.39である。
【0042】
したがって、本発明の場合(L0 =4nHの場合)は、従来の場合(L0 =0の場合)に比して、通過帯域において低挿入損失であることがわかる。
【0043】
また、上記したように、図8及び図9(表)に従来の回路構成の開放(Z30)、短絡(Z3s)インピーダンスが表わされており、この図のCDMA用Tx−フィルタの減衰帯域(869.0〜894.0)MHzに注目すると、Z30≠Z3sである。
【0044】
図9では、本発明において、L0 =4(nH)の場合で、Z30(L0 )≒Zssである。
【0045】
この発明の周波数特性は、図6における曲線(b)から明らかなように、従来例を示す図6における曲線(a)に比較して大幅に改善されて、要求規格を満足することがわかる。
【0046】
図6及び図9からわかるように、周波数特性の通過帯域では従来技術とほとんど変化なく、減衰帯域の895MHzにおいては、13.1dB改善されることがわかる。
【0047】
上記したように、本発明のCDMA用Tx−フィルタによれば、共振器形SAWフィルタの周波数特性は、付加インダクタ1個を設けることにより、減衰極を形成し、高性能低挿入損失の有極型SAWフィルタを得ることができる。
【0048】
次に、図10は本発明の参考例の圧電基板のチップ100内の一構成図である。
【0049】
入力端及び出力端は101,102である。三つの直列腕SAW共振器をRS150,RS251,RS352、二つの並列腕SAW共振器をRP160,RP261に示し、直列腕SAW共振器間の接続部を80,81で、また直列腕SAW共振器と並列腕SAW共振器間の接続部を82,83、接地点を70,71,72,73,74,75,76,77で示す。なお、70〜77は具体的にはボンディングパッドであり、ワイヤボンディングにより接地されている。
【0050】
ここでは、図1の本発明のZA 部は図10の接地点76として示されている。
【0051】
すなわち、二つの並列腕SAW共振器RP160,RP261の接地点76の共通点を設定し、ワイヤボンディングパッド77を設ける。この二つの並列腕SAW共振器RP160,RP261の接地点の共通点は、二つの並列腕SAW共振器RP160,RP261の背中合せ接続構成とし、二つの並列腕SAW共振器RP160,RP261の接地点76の間の距離を最短になるように設定した。ワイヤボンディングパッド77とチップ外のワイヤボンディングパッド間をワイヤボンディング線により接続する。
【0052】
このように、参考例〔1〕は、ワイヤボンディング線をインダクタとして用いたものである。
【0053】
次に、参考例〔2〕について説明する。
【0054】
図11は本発明の参考例〔2〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【0055】
この図に示すように、直列腕SAW共振器:Rs130,Rs231、並列腕SAW共振器:RP132、RP233と、この並列腕SAW共振器:RP132,RP233に直列に接続されるインピーダンスZA 34で構成されている。
【0056】
次に、参考例〔3〕について説明する。
【0057】
図12は本発明の参考例〔3〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【0058】
この図に示すように、直列腕SAW共振器:Rs135と、並列腕SAW共振器:RP136,RP237と、この並列腕SAW共振器:RP136,RP237に直列に接続されるインピーダンスZA 38で構成されている。
【0059】
このように、参考例〔2〕、〔3〕では、図11及び図12に示したように、参考例〔1〕と同じ考えにより、付加インピーダンスとしてインダクタを用いることにより、周波数特性の低挿入損失で、しかも、急峻な特性が得られる有極型SAWフィルタを得ることができる。いずれも従来の共振器型SAWフィルタでは得られない高性能特性が得られる。
【0060】
次に、実施例〔1〕について説明する。
【0061】
図13は本発明の実施例〔1〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【0062】
この図に示すように、直列腕SAW共振器:Rs130,Rs131と、並列腕SAW共振器:RP132,RP233と、この並列腕SAW共振器:RP132,RP233に直列に接続されるインピーダンスZ4AP 39で構成されている。
【0063】
この実施例では、インピーダンスZ4AP 39はインダクタL40のみでなく、キャパシタC40の並列共振回路の場合である。
【0064】
すなわち、インダクタL40とキャパシタC40との並列共振回路のインピーダンスZ4AP は式(7)で与えられる。
【0065】
Z4AP =jωL40/(1−ω2 L40C40) …(7)
インダクタL0 が所要のL値が得られない場合、注目される帯域に限定すれば、等価Legは式(8)に示すように見なすことができるので、キャパシタC40を付加して、この等価インピーダンスLegにより、急峻な特性を有する有極型SAWフィルタを実現することができる。
【0066】
Leg=L40/(1−ω2 L40C40) …(8)
この場合、式(6)は式(9)のようになる。
【0067】
Z3O(L40)=Z1 +Z3 +SL40/(1−ω2 L40C40) …(9)
したがって、
Z3O(L40)≒Z3S …(10)
を満足する帯域がある。有限周波数に減衰極を作ることができる。
【0068】
次に、実施例〔2〕について説明する。
【0069】
図14は本発明の実施例〔2〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【0070】
この図に示すように、直列腕SAW共振器:Rs130,Rs131と、並列腕SAW共振器:RP132,RP233と、この並列腕SAW共振器:RP132,RP233に直列に接続されるインピーダンスZ5AP 40で構成されている。
【0071】
この実施例ではインピーダンスZ5AP 40がインダクタL50とキャパシタC50の並列共振回路と、インダクタL51の直列回路で構成されている。
【0072】
この場合のインピーダンスZ5AP は式(11)で与えられる。
【0073】
Z5AP =jω〔L51+L50/(1−ω2 L50C50)〕 …(11)
この場合も同様に式(6)は式(12)のようになる。
【0074】
Z30(L50,L51)
=Z1 +Z3 +S〔L51+L50/(1−ω2 L50C50)〕 …(12)
インダクタL0 が所要のL値が得られない場合、注目される帯域に限定すれば、等価Legは式(13)に示すように見なすことができるので、このインダクタLegで急峻な特性を有する有極型SAWフィルタを実現することができる。 Leg=L51+L50/(1−ω2 L50C50) …(13)
この場合も同様に、Z30(L50,L51)≒Z3Sを満足する帯域があり、有限周波数に減衰極を作ることができる。
【0075】
次に、実施例〔3〕について説明する。
【0076】
図15は本発明の実施例〔3〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【0077】
この図に示すように、直列腕SAW共振器:Rs130,Rs131と、並列腕SAW共振器:RP132,RP233と、この並列腕SAW共振器:RP132,RP233に直列に接続されるインピーダンスZ6AP 41で構成されている。
【0078】
この実施例ではインピーダンスZ6AP 41がインダクタL60とキャパシタC60の直列共振回路と、キャパシタC61の並列共振回路で構成されている。
【0079】
この場合のインピーダンスY6AP は式(14)で与えられる。
【0080】
インダクタL0 が所要のL値が得られない場合、注目される帯域に限定すれば、本発明の急峻な特性を有する有極型SAWフィルタを実現することができる。
【0081】
上記実施例〔1〕、実施例〔2〕と同様に、Z30(L50,L51)≒Z3Sを満足する帯域がある。したがって、急峻な特性を有する有極型SAWフィルタを実現することができる。
【0082】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の有極型SAWフィルタは、民生機器や通信機器などに広範囲に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明にかかる示す有極型SAWフィルタの構成図である。
【図2】本発明にかかる有極型SAWフィルタの集中定数回路図である。
【図3】図2に示す本発明の有極型SAWフィルタの集中定数回路を二等分した回路図である。
【図4】梯子型SAWフィルタの構成図である。
【図5】図4に示したフィルタの集中定数等価回路図である。
【図6】本発明のCDMA用Tx−フィルタの周波数特性と従来のCDMA用Tx−フィルタの周波数特性を示す図である。
【図7】従来のCDMA用Tx−フィルタの開放、短絡インピーダンス特性図である。
【図8】本発明の参考例を示すCDMA用Tx−フィルタの開放、短絡インピーダンス特性図である。
【図9】CDMA用Tx−フィルタの周波数特性及びインピーダンス特性を示す図である。
【図10】本発明の参考例を示す圧電基板のチップ内の一構成図である。
【図11】本発明の参考例〔2〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【図12】本発明の参考例〔3〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【図13】本発明の実施例〔1〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【図14】本発明の実施例〔2〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【図15】本発明の実施例〔3〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【符号の説明】
【0085】
1,2,5,6,7,8 端子
3,4,34,38,39,40,41 インピーダンス
10,11,12,30,31,35,50,51,52 直列腕SAW共振器
13〜18,22,23 SAW共振器の等価回路
20,21,32,33,36,37,60,61 並列腕SAW共振器
70,71,72,73,74,75,76,77 接地点(ボンディングパッド)
80,81 直列腕SAW共振器間の接続部
82,83 直列腕SAW共振器と並列腕SAW共振器間の接続部
100 圧電基板のチップ
101,102 入力端及び出力端
200,201 二端子対回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振器形SAW(表面弾性波)フィルタと付加インピーダンスにより構成された有極型SAWフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
SAWフィルタはLSIと同様に、量産性に優れていることから、民生機器や通信機器などに広範囲に用いられている。特に、小形、かつ軽量であるという特徴から、ポケットベル、携帯電話等の移動体通信において、高周波フィルタとして多用されている。
【0003】
ところで、移動体通信に用いられるSAWフィルタは、低挿入損失で急峻な周波数特性が要求される。この場合、図4に示すように、直列素子10,11,12、並列素子20,21にSAW共振子を用いた帯域通過型フィルタ構成となっている。なお、図4において、1,2は端子、Eは接地端子である。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近の携帯電話等の移動体通信機器の高性能化に伴い、SAWフィルタの一層の低挿入損失化が要求されている。この要求に対して、上記した図4に示される梯子型フィルタが主に用いられているが、この種の梯子型SAWフィルタは、用いる圧電基板の特性に依存しているのが現状である。具体的には通過帯域の帯域幅、挿入損失、通過帯域と減衰域の特性の急峻さ、及び減衰帯域の減衰量に圧電基板の特性が関係している。
【0005】
また、梯子型SAWフィルタにおいて、用いるSAW共振器の共振周波数(直列共振周波数)、反共振周波数(並列共振周波数)、通過帯域、減衰帯域またはその逆を利用するものでは、通過帯域と減衰帯域の配置もしくは間隔が制限される問題がある。
【0006】
したがって、通過帯域と減衰帯域の間隔が狭く、しかも通過帯域において低損失を得ることは難しいといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を除去し、付加インピーダンスを用いて減衰極を形成し、SAWフィルタの周波数特性を高性能化し得る有極型SAWフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕二端子対回路のSAW共振器を用いた共振器形SAWフィルタと二端子対回路のインピーダンスの直列接続により構成される有極型SAWフィルタであって、前記二端子対回路のインピーダンスにより減衰極を形成し、急峻な周波数特性を有するとともに、前記二端子対回路のインピーダンスにインダクタとキャパシタを用いるようにしたものである。
【0009】
〔2〕上記〔1〕記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタは、インダクタとキャパシタの並列共振回路を構成するようにしたものである。
【0010】
〔3〕上記〔1〕記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタは、インダクタとキャパシタの並列共振回路と、インダクタの直列回路を構成するようにしたものである。
【0011】
〔4〕上記〔1〕記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタは、インダクタとキャパシタの直列共振回路と、キャパシタの並列回路を用いるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、共振器形SAWフィルタの周波数特性を、付加インピーダンスを設けることにより、減衰極を形成し、高性能低挿入損失の有極型SAWフィルタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の有極型SAWフィルタは、二端子対回路のSAW共振器を用いた共振器形SAWフィルタと二端子対回路のインピーダンスの直列接続により構成される有極型SAWフィルタであって、前記二端子対回路のインピーダンスにより減衰極を形成し、急峻な周波数特性を有するとともに、前記二端子対回路のインピーダンスにインダクタとキャパシタを用いる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明にかかる有極型SAWフィルタの構成図、図2はその有極型SAWフィルタの集中定数回路図である。前記図4と同じ部分については、同じ符号を付してそれらの説明は省略する。
【0016】
図1に示すように、二つの二端子対回路(梯子型SAWフィルタ)200,(インピーダンスZA 3)201を直列に接続することにより、通過帯域と減衰帯域の間隔が狭く、特性が急峻で、しかも通過帯域において低挿入損失を得ることができる高性能梯子型SAWフィルタを実現するものである。
【0017】
すなわち、一つの二端子対回路として梯子型SAWフィルタ200を有し、もう一つの二端子対回路201をインダクタのみで構成する。
【0018】
ここで、本発明の有極型SAWフィルタの動作について図3に示す回路を用いて説明する。
【0019】
図3は図2に示す本発明にかかる有極型SAWフィルタの集中定数回路を二等分した回路図である。図2および図3において、13〜18,22,23はSAW共振器の等価回路、ZA 4はインピーダンスである。
【0020】
ここで、L0 =0の場合、及びL0 ≠0の場合について考察する。
【0021】
(A)L0 =0の場合、図3に示す回路において、端子(6,7,8)を開放した場合の端子5と、接地端子Eからの入力インピーダンスZ30、及び端子(6,7,8)を短絡した場合の端子5と接地端子Eからの入力インピーダンスZ3sを求めると、次に示す式(1)、式(2)で与えられる。
【0022】
Z3O=Z1 +Z3 …(1)
Z3s=Z1 +Z2 ×Z3 /(Z2 +Z3 ) …(2)
ここで
Z1 =(1+S2 LS1CS1)/(SCS10 +SCS1+S3 LS1CS1CS10 )
Z2 =(1+S2 LS2CS2)/(SCS20 +SCS2+S3 LS2CS2CS20 )
Z3 =(1+S2 LS3CS3)/(SCS30 +SCS3+S3 LS3CS3CS30 )
S=jω, ω=2πf …(3)
また、図3に示す回路の周波数特性α(ω)は上記式(1)、式(2)を用いて以下の式(4)のようになる。
【0023】
α(ω)=20.0×Log[ABS〔(1+Z3O)(1+Z3S)/
(Z3O−Z3S)〕](dB) …(4)
ここで、ABS〔 〕は〔 〕内の絶対値を表す。
【0024】
すなわち、L0 =0の場合の図1に示す有極型SAWフィルタの周波数特性は上記式(4)より判る。周波数特性上の減衰極は、上記式(3)より次の場合である。
【0025】
1. Z3O=∞ または、Z3S=∞
2. Z3O=Zss=0
3. Z3O=Z3S …(5)
このZ1 ,Z2 ,Z3 がSAW共振子の場合、上記式(3)より上記式(5)の条件は決まる。
【0026】
(B)L0 ≠0の場合
ここで、図1において、上記式(1)、式(2)において、上記式(1)のみ以下の式(6)のようになる。
【0027】
Z3O(L0 )=Z1 +Z3 +SL0 …(6)
上記式(2)、式(6)より、上記式(5)の条件を満足するように、L0 を決める。
【0028】
本発明は、L0 を付加し、広範囲に亘って、式(5)〔Z3O(L0 )≒Z3s〕の関係を満足するようにして、周波数特性上において、減衰極を形成し、低挿入損失で、しかも、急峻な特性を有する有極型SAWフィルタを実現するものである。
【0029】
以下、本発明の参考例及び実施例につい説明する。
【0030】
まず、参考例〔1〕について説明する。
【0031】
ここで、参考例〔1〕の有極型SAWフィルタを用いたCDMA用Tx−フィルタについて説明する。
【0032】
このCDMA用Tx−フィルタは、図4に示すようにCDMA用Tx−フィルタの回路構成である。つまり、4段構成共振器型SAWフィルタ(直列腕SAW共振器:Rs110、Rs211、Rs312、並列腕SAW共振器:RP120、RP221)である。
【0033】
図4において、直列腕のSAW共振器の基本構成は(対数120対、交差長120μm)、並列腕のSAW共振器の基本構成は(対数60対、交差長90μm)である。
【0034】
図5は図4に示したフィルタの集中定数等価回路図、図6は本発明のCDMA用Tx−フィルタの周波数特性と従来のCDMA用Tx−フィルタの周波数特性を示す図、図7は従来のCDMA用Tx−フィルタの開放、短絡インピーダンス特性図、図8は本発明のCDMA用Tx−フィルタの開放、短絡インピーダンス特性図であり、図7及び図8において、横軸に周波数(Hz)、縦軸にインピーダンス(Ω)を示しており、曲線aは短絡インピーダンスを、曲線bは開放インピーダンスをそれぞれ示している。
【0035】
図7に示す従来のフィルタおいては、注目する帯域(869〜894MHz)において、短絡インピーダンスと開放インピーダンスが等しくないが、本発明の場合は、L0 =4(nH)を付加することにより、短絡インピーダンスと開放インピーダンスが近似的に等しくなり、減衰量が要求規格を満足する。
【0036】
また、図9(表)はCDMA用Tx−フィルタの周波数特性及びインピーダンス特性を示す図である。
【0037】
図6において、横軸に周波数(Hz)、縦軸に減衰量(dB)を表しており、aは従来の回路構成の周波数特性を、bは本発明の回路構成の周波数特性をそれぞれ示している。なお、ここで、本発明の回路構成においては、回路構成付加インピーダンスはインダクタで構成し、そのインダクタンス値Lは、L0 =4(nH)とした場合、従来の回路構成においては、インダクタンス値LはL=0としている。
【0038】
図6から明らかなように、824MHzから849MHzまでは減衰量1.5dB以下であり、869MHzから894MHzまでは減衰量3.5MHz以上であり、通過帯域と減衰帯域の間隔が狭く、特性が急峻であることがわかる。
【0039】
なお、従来技術と本発明の比較において、注目周波数点として、889、895、901MHzについては図9(表)に示した。
【0040】
図6及び図9から明らかなように、従来の場合(L0 =0の場合)は、823MHzで1.65dB、849MHzで1.15dB、869MHzで46.9dB、895MHzで25.7dBであり、本発明の場合(L0 =4nHの場合)は、823MHzで1.13dB、849MHzで1.19dB、869MHzで46.0dB、895MHzで38.8dBである。
【0041】
インピーダンス特性に関しては、図7乃至図9から明らかなように、従来の場合(L0 =0の場合)は、889MHzにおいて、短絡(Z3s)で−j2.61、開放(Z30)で−j3.35、895MHzにおいて、短絡で−j2.28、開放で−j3.00、901MHzにおいて、短絡で−j2.12、開放で−j2.84であり、本発明の場合(L0 =4nHの場合)は、889MHzにおいて、短絡で−j2.61、開放で−j2.91、895MHzにおいて、短絡で−j2.28、開放で−j2.55、901MHzにおいて、短絡で−j2.12、開放で−j2.39である。
【0042】
したがって、本発明の場合(L0 =4nHの場合)は、従来の場合(L0 =0の場合)に比して、通過帯域において低挿入損失であることがわかる。
【0043】
また、上記したように、図8及び図9(表)に従来の回路構成の開放(Z30)、短絡(Z3s)インピーダンスが表わされており、この図のCDMA用Tx−フィルタの減衰帯域(869.0〜894.0)MHzに注目すると、Z30≠Z3sである。
【0044】
図9では、本発明において、L0 =4(nH)の場合で、Z30(L0 )≒Zssである。
【0045】
この発明の周波数特性は、図6における曲線(b)から明らかなように、従来例を示す図6における曲線(a)に比較して大幅に改善されて、要求規格を満足することがわかる。
【0046】
図6及び図9からわかるように、周波数特性の通過帯域では従来技術とほとんど変化なく、減衰帯域の895MHzにおいては、13.1dB改善されることがわかる。
【0047】
上記したように、本発明のCDMA用Tx−フィルタによれば、共振器形SAWフィルタの周波数特性は、付加インダクタ1個を設けることにより、減衰極を形成し、高性能低挿入損失の有極型SAWフィルタを得ることができる。
【0048】
次に、図10は本発明の参考例の圧電基板のチップ100内の一構成図である。
【0049】
入力端及び出力端は101,102である。三つの直列腕SAW共振器をRS150,RS251,RS352、二つの並列腕SAW共振器をRP160,RP261に示し、直列腕SAW共振器間の接続部を80,81で、また直列腕SAW共振器と並列腕SAW共振器間の接続部を82,83、接地点を70,71,72,73,74,75,76,77で示す。なお、70〜77は具体的にはボンディングパッドであり、ワイヤボンディングにより接地されている。
【0050】
ここでは、図1の本発明のZA 部は図10の接地点76として示されている。
【0051】
すなわち、二つの並列腕SAW共振器RP160,RP261の接地点76の共通点を設定し、ワイヤボンディングパッド77を設ける。この二つの並列腕SAW共振器RP160,RP261の接地点の共通点は、二つの並列腕SAW共振器RP160,RP261の背中合せ接続構成とし、二つの並列腕SAW共振器RP160,RP261の接地点76の間の距離を最短になるように設定した。ワイヤボンディングパッド77とチップ外のワイヤボンディングパッド間をワイヤボンディング線により接続する。
【0052】
このように、参考例〔1〕は、ワイヤボンディング線をインダクタとして用いたものである。
【0053】
次に、参考例〔2〕について説明する。
【0054】
図11は本発明の参考例〔2〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【0055】
この図に示すように、直列腕SAW共振器:Rs130,Rs231、並列腕SAW共振器:RP132、RP233と、この並列腕SAW共振器:RP132,RP233に直列に接続されるインピーダンスZA 34で構成されている。
【0056】
次に、参考例〔3〕について説明する。
【0057】
図12は本発明の参考例〔3〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【0058】
この図に示すように、直列腕SAW共振器:Rs135と、並列腕SAW共振器:RP136,RP237と、この並列腕SAW共振器:RP136,RP237に直列に接続されるインピーダンスZA 38で構成されている。
【0059】
このように、参考例〔2〕、〔3〕では、図11及び図12に示したように、参考例〔1〕と同じ考えにより、付加インピーダンスとしてインダクタを用いることにより、周波数特性の低挿入損失で、しかも、急峻な特性が得られる有極型SAWフィルタを得ることができる。いずれも従来の共振器型SAWフィルタでは得られない高性能特性が得られる。
【0060】
次に、実施例〔1〕について説明する。
【0061】
図13は本発明の実施例〔1〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【0062】
この図に示すように、直列腕SAW共振器:Rs130,Rs131と、並列腕SAW共振器:RP132,RP233と、この並列腕SAW共振器:RP132,RP233に直列に接続されるインピーダンスZ4AP 39で構成されている。
【0063】
この実施例では、インピーダンスZ4AP 39はインダクタL40のみでなく、キャパシタC40の並列共振回路の場合である。
【0064】
すなわち、インダクタL40とキャパシタC40との並列共振回路のインピーダンスZ4AP は式(7)で与えられる。
【0065】
Z4AP =jωL40/(1−ω2 L40C40) …(7)
インダクタL0 が所要のL値が得られない場合、注目される帯域に限定すれば、等価Legは式(8)に示すように見なすことができるので、キャパシタC40を付加して、この等価インピーダンスLegにより、急峻な特性を有する有極型SAWフィルタを実現することができる。
【0066】
Leg=L40/(1−ω2 L40C40) …(8)
この場合、式(6)は式(9)のようになる。
【0067】
Z3O(L40)=Z1 +Z3 +SL40/(1−ω2 L40C40) …(9)
したがって、
Z3O(L40)≒Z3S …(10)
を満足する帯域がある。有限周波数に減衰極を作ることができる。
【0068】
次に、実施例〔2〕について説明する。
【0069】
図14は本発明の実施例〔2〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【0070】
この図に示すように、直列腕SAW共振器:Rs130,Rs131と、並列腕SAW共振器:RP132,RP233と、この並列腕SAW共振器:RP132,RP233に直列に接続されるインピーダンスZ5AP 40で構成されている。
【0071】
この実施例ではインピーダンスZ5AP 40がインダクタL50とキャパシタC50の並列共振回路と、インダクタL51の直列回路で構成されている。
【0072】
この場合のインピーダンスZ5AP は式(11)で与えられる。
【0073】
Z5AP =jω〔L51+L50/(1−ω2 L50C50)〕 …(11)
この場合も同様に式(6)は式(12)のようになる。
【0074】
Z30(L50,L51)
=Z1 +Z3 +S〔L51+L50/(1−ω2 L50C50)〕 …(12)
インダクタL0 が所要のL値が得られない場合、注目される帯域に限定すれば、等価Legは式(13)に示すように見なすことができるので、このインダクタLegで急峻な特性を有する有極型SAWフィルタを実現することができる。 Leg=L51+L50/(1−ω2 L50C50) …(13)
この場合も同様に、Z30(L50,L51)≒Z3Sを満足する帯域があり、有限周波数に減衰極を作ることができる。
【0075】
次に、実施例〔3〕について説明する。
【0076】
図15は本発明の実施例〔3〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【0077】
この図に示すように、直列腕SAW共振器:Rs130,Rs131と、並列腕SAW共振器:RP132,RP233と、この並列腕SAW共振器:RP132,RP233に直列に接続されるインピーダンスZ6AP 41で構成されている。
【0078】
この実施例ではインピーダンスZ6AP 41がインダクタL60とキャパシタC60の直列共振回路と、キャパシタC61の並列共振回路で構成されている。
【0079】
この場合のインピーダンスY6AP は式(14)で与えられる。
【0080】
インダクタL0 が所要のL値が得られない場合、注目される帯域に限定すれば、本発明の急峻な特性を有する有極型SAWフィルタを実現することができる。
【0081】
上記実施例〔1〕、実施例〔2〕と同様に、Z30(L50,L51)≒Z3Sを満足する帯域がある。したがって、急峻な特性を有する有極型SAWフィルタを実現することができる。
【0082】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の有極型SAWフィルタは、民生機器や通信機器などに広範囲に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明にかかる示す有極型SAWフィルタの構成図である。
【図2】本発明にかかる有極型SAWフィルタの集中定数回路図である。
【図3】図2に示す本発明の有極型SAWフィルタの集中定数回路を二等分した回路図である。
【図4】梯子型SAWフィルタの構成図である。
【図5】図4に示したフィルタの集中定数等価回路図である。
【図6】本発明のCDMA用Tx−フィルタの周波数特性と従来のCDMA用Tx−フィルタの周波数特性を示す図である。
【図7】従来のCDMA用Tx−フィルタの開放、短絡インピーダンス特性図である。
【図8】本発明の参考例を示すCDMA用Tx−フィルタの開放、短絡インピーダンス特性図である。
【図9】CDMA用Tx−フィルタの周波数特性及びインピーダンス特性を示す図である。
【図10】本発明の参考例を示す圧電基板のチップ内の一構成図である。
【図11】本発明の参考例〔2〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【図12】本発明の参考例〔3〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【図13】本発明の実施例〔1〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【図14】本発明の実施例〔2〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【図15】本発明の実施例〔3〕の有極型SAWフィルタの構成図である。
【符号の説明】
【0085】
1,2,5,6,7,8 端子
3,4,34,38,39,40,41 インピーダンス
10,11,12,30,31,35,50,51,52 直列腕SAW共振器
13〜18,22,23 SAW共振器の等価回路
20,21,32,33,36,37,60,61 並列腕SAW共振器
70,71,72,73,74,75,76,77 接地点(ボンディングパッド)
80,81 直列腕SAW共振器間の接続部
82,83 直列腕SAW共振器と並列腕SAW共振器間の接続部
100 圧電基板のチップ
101,102 入力端及び出力端
200,201 二端子対回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二端子対回路のSAW共振器を用いた共振器形SAWフィルタと二端子対回路のインピーダンスの直列接続により構成される有極型SAWフィルタであって、前記二端子対回路のインピーダンスにより減衰極を形成し、急峻な周波数特性を有するとともに、前記二端子対回路のインピーダンスにインダクタとキャパシタを用いたことを特徴とする有極型SAWフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタはインダクタとキャパシタの並列共振回路を構成したことを特徴とする有極型SAWフィルタ。
【請求項3】
請求項1記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタは、インダクタとキャパシタの並列共振回路と、インダクタの直列回路を構成したことを特徴とする有極型SAWフィルタ。
【請求項4】
請求項1記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタは、インダクタとキャパシタの直列共振回路と、キャパシタの並列回路を用いたことを特徴とする有極型SAWフィルタ。
【請求項1】
二端子対回路のSAW共振器を用いた共振器形SAWフィルタと二端子対回路のインピーダンスの直列接続により構成される有極型SAWフィルタであって、前記二端子対回路のインピーダンスにより減衰極を形成し、急峻な周波数特性を有するとともに、前記二端子対回路のインピーダンスにインダクタとキャパシタを用いたことを特徴とする有極型SAWフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタはインダクタとキャパシタの並列共振回路を構成したことを特徴とする有極型SAWフィルタ。
【請求項3】
請求項1記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタは、インダクタとキャパシタの並列共振回路と、インダクタの直列回路を構成したことを特徴とする有極型SAWフィルタ。
【請求項4】
請求項1記載の有極型SAWフィルタにおいて、前記インダクタとキャパシタは、インダクタとキャパシタの直列共振回路と、キャパシタの並列回路を用いたことを特徴とする有極型SAWフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−14377(P2006−14377A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264657(P2005−264657)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【分割の表示】特願平8−318927の分割
【原出願日】平成8年11月29日(1996.11.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【分割の表示】特願平8−318927の分割
【原出願日】平成8年11月29日(1996.11.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
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