説明

有機エレクトロルミネセンス素子の効率及び寿命を改善するための界面コンディショニング

本発明の少なくとも1つの実施態様において、OLEDの1つ又はそれ以上の層(417,420)の表面が、金属ナノ粒子が隣接層間の界面に沿って配置されるように金属ナノ粒子でコンディショニングされたOLED素子(405)が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
有機発光ダイオード("OLED")ディスプレイ又は素子は、次のものから典型的に構成されている:基板上の透明アノード;正孔注入/輸送層;発光層("放出層(emissive layer)");及びカソード、ここでこれらの層の1つ又はそれ以上は性質的に有機である。順バイアスが印加される場合に、正孔はアノードから正孔注入/輸送層へ注入され、かつ電子はカソードから放出層へ注入される。ついで、双方のキャリアは反対側の電極に向かって輸送され、かつ互いに再結合することが可能になる。この再結合の位置は、再結合領域と呼ばれ、かつ再結合のために、放出層は可視光線を生じる。
【0002】
ポリマーベースの発光層内への金属ナノ粒子の導入(incorporation)が光酸化を抑制し、かつ発光安定性(luminous stability)を高めることは、公開された特許出願明細書に一部示唆されている[公開番号US 2004/0217696 A1]。さらに別の特許出願明細書は、放射過程の加速が、りん光に基づくOLEDの正孔輸送層内又は発光層内への金属ナノ粒子の導入によって達成されることを示唆している[公開番号US 2005/0035346]。放射過程の加速は、発光種と、金属ナノ粒子付近の表面プラズモン共鳴との相互作用によって達成される。非放射フェルスター型過程は、各々ナノ粒子を有機キャッピング分子中に包むことによって効率的に抑制される。上記の全てのアプローチにおいて、金属ナノ粒子は、OLEDの1つ又はそれ以上の層中にブレンドされていた。
【0003】
しかしながら、OLED内の活性領域又は他の層中への金属ナノ粒子の直接導入は、付加的な負の効果を引き起こしうる。例えば、金ナノ粒子の導入が発光ポリマー層内の3×10-5の低い体積分率ですら、強い正孔ブロッキング効果及び動作電圧の大きな増大をまねくことが証明されていた[公開番号US 2004/0217696 A1及びJong Hyeok Park他, Chem. Mater. 2004, 16, 688]。さらに、蛍光に基づく及びりん光に基づく双方のOLED中への金属ナノ粒子の導入は、おそらく放出を消滅させ、かつ素子性能を激しく悪化させるだろう。有機キャッピング分子中にナノ粒子を包むことは、三重項状態の放射過程の消滅と加速との間の最適なバランスを達成するために示唆されている[公開番号US 2005/0035346]。しかしながら、そのような条件を達成することは簡単でなく、かつ金属ナノ粒子のキャッピングは、十分知られた手順ではない。
【0004】
詳細な説明
本発明の少なくとも1つの実施態様において、OLED素子であって、OLEDの1つ又はそれ以上の層の表面が、金属ナノ粒子が隣接層間の界面に沿って配置されるように金属ナノ粒子でコンディショニングされたOLED素子が開示される。
【0005】
本発明の多様な実施態様は、高い効率を得るため及び寿命を延長するために、有機光源を設計することに向けられている。これは、OLED素子の隣接層間の少なくとも1つの界面中への少なくとも1つの金属ナノ粒子の導入によって達成されることができる。このアプローチの利点は、負の効果、例えば金属ナノ粒子をOLEDの層内(例えば発光層内)に直接ブレンドすることによって引き起こされる、動作電圧の著しい増大又はOLEDの放出特性の消滅が回避されることである。本発明はまた、有機エレクトロルミネセンス素子の寿命を、効率を改善することによってだけでなく、蛍光及びりん光に基づくOLEDにおける分解機序を引き起こしうる一重項状態及び三重項状態の寿命を減少させることによっても改善する。蛍光に基づくOLEDにおいて、寿命は、寿命の加速又は三重項状態の一部の消滅によって改善されるようである(三重項状態は、蛍光に基づくOLED中で放出しない)。りん光に基づく発光体を有するOLEDは、一重項及び三重項の双方の励起された状態からの放出を達成することができる;ゆえに、それらが高効率OLEDを生じる可能性を有する理由である。りん光に基づくOLEDの場合に、一重項励起状態及び三重項励起状態の混合物が存在するので、ナノ粒子の導入が、一重項と三重項との間の混合物の寿命を加速することによって寿命を改善すると考えられている。
【0006】
効率を改善することに関して、放射放出(radiative emission)の加速が放出特性を改善すると考えられている。蛍光に基づくOLEDの効率を改善するために、この素子は、一重項から生じている放射放出を加速することができるが、これは時として難しい。りん光に基づくOLEDの場合に、放射放出は、一重項状態及び三重項状態の混合物から生じていて、ゆえに放射放出の時間尺度はより長く、かつナノ粒子は、ここで提示された本発明の例示的な一実施態様に示された通り、放射放出を加速するのに使用されることができる。
【0007】
層表面を金属ナノ粒子でコンディショニングする付加的な関連工程は、非常に容易であり、かつポリマー又は溶液処理されたOLEDだけでなく、低分子(熱により蒸発された)OLED又はハイブリッド素子構造(溶液処理された及び熱蒸発技術の双方を含む方法によって加工する)にも、適用されることができる。さらに、効率の改善は、金属ナノ粒子の付加的なキャッピングなしに得られることができる。これは、使用されることができるナノ粒子の選択を単純化するだけでなく、キャッピング層を有する金属ナノ粒子を加工する必要を取り除く。
【0008】
本発明により使用されるナノ粒子は、スペクトルの可視領域又は赤外領域内で強い吸収を有するべきである。ナノ粒子に従って、理想的には、界面となっている(interfaced)層中の有機材料の三重項励起子状態(エネルギー準位)との共鳴又は少なくともオーバーラップを有する。
【0009】
ナノ粒子の与えられるタイプについては、吸収スペクトルは、ナノ粒子のサイズを改変することによるか、又はコアを有し、その上でナノ粒子材料がシェルとして作用するナノ粒子を設計することによって所望の通り適合されることができる。例えば、金ナノ粒子は、シリカコアを用いて及びシェル上に金をめっきすることによって再設計されることができる。吸収スペクトルの共鳴は、コア及びシェルの寸法の比に部分的に依存し、かつこの比を改変することによって細かく適合されることができる。
【0010】
図1は、本発明の少なくとも1つの実施態様によるEL(エレクトロルミネッセンス)素子405の実施態様の横断面図を示す。EL素子405は、より大きなディスプレイの1つのピクセル又はサブピクセル又は非ピクセル化光源の一部を意味しうる。図1に示されているように、EL素子405は、基板408上の第一電極411を含む。本明細書及び請求の範囲内で使用される通り、"上の(on)"という用語は、層が物理的に接触している場合又は層が1つ又はそれ以上の介在層又は材料によって離れている場合を含む。第一電極411は、ピクセル化の適用のためにパターン化されていてよく、又は光源適用のためにパターン化されないままでよい。
【0011】
1つ又はそれ以上の有機材料が堆積されて、有機スタック416の1つ又はそれ以上の有機層を形成する。有機スタック416は第一電極411上にある。有機スタック416は、アノードバッファ層("ABL")417及び放出層(EML)420を含む。ABL 417は、それがアノードとして機能する場合に、第一電極411上にある。OLED素子405はまた、有機スタック416上の第二電極423を含む。本発明の少なくとも1つの実施態様によれば、少なくとも1つのナノ粒子は、OLED素子405の多様な層間の界面中に配置されることができる。そのようなナノ粒子の例は、Ag、Au、Ni、Fe、Co、Ge、Cu、Pt、Pd、Os等を含む。例えば、少なくとも1つの実施態様において、ナノ粒子は、ABL 417とEML 420との間に配置されてよい。選択的に、少なくとも1つの実施態様において、ナノ粒子は、EML 420と第二電極423との間に配置されてよい。さらに他の実施態様において、ナノ粒子は、EML 420と第二電極423との間及びABL 417とEML 420との間に配置されてよい。多様な実施態様において、ナノ粒子は、挙げた層のいずれか又は全てと、詳細に列挙されていない又は開示されていない層中との間に配置されることができる。
【0012】
図1に示された以外の層は、OLED素子405中に、例えば電荷の閉じ込め、電荷輸送/注入、電荷ブロッキング、励起子ブロッキング及び導波層が存在していてもよい。本発明によれば、少なくとも1つのナノ粒子は、これらの他の層及び/又は図1に説明された層の間の界面中に配置されることができる。
【0013】
基板408:
基板408は、その上の有機層及び金属層を支持することができるいずれの材料であってよい。基板408は、透明又は不透明であってよい(例えば、不透明基板はトップエミッション型素子において使用される)。基板408を通過することができる光の波長を修正又はフィルタリングすることによって、素子により放出された光の色を変えることができる。基板408は、ガラス、石英、ケイ素、プラスチック又はステンレス鋼から構成されていてよく;好ましくは、基板408は、薄くフレキシブルなガラスから構成されている。基板408の好ましい厚さは、使用される材料及び素子の用途に依存する。基板408は、シート又は連続フィルムの形であってよい。連続フィルムは例えば、プラスチック、金属及び金属化されたプラスチックホイルに特に適しているロールツーロール(roll-to-roll)製造プロセスに使用されることができる。前記基板は、OLED素子405がアクティブマトリックスOLED素子である場合に、操作を制御するために組み込まれたトランジスタ又は他のスイッチング素子を有していてもよい。単一基板408は、多くのピクセルを有するより大きなディスプレイ(EL素子)、例えば繰り返し加工され、かつ一部特殊なパターンに配置されるEL素子405を構成するのに典型的に使用される。
【0014】
第一電極411:
一構成において、第一電極411は、アノードとして機能する(このアノードは、正孔注入層としての役割を果たし、かつ典型的に約4.5eVより大きい仕事関数を有する材料を含んでなる導電層である)。典型的なアノード材料は、金属(例えば白金、金、パラジウム等);金属酸化物(例えば酸化鉛、酸化スズ、ITO(酸化インジウムスズ)等);グラファイト;ドープした無機半導体(例えばケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム等);及びドープした導電性ポリマー(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等)を含む。
【0015】
第一電極411は、素子内部で発生した光の波長に対して、透明、半透明又は不透明であってよい。第一電極411の厚さは、約10nm〜約1000nm、好ましくは約50nm〜約200nmであってよく、かつより好ましくは約100nmである。第一電極層411は典型的に、薄膜の堆積用の、例えば真空蒸発、スパッタリング、電子線堆積又は化学蒸着を含め、当工業界において知られたいずれの技術を用いて加工されることができる。
【0016】
ABL 417:
ABL 417は、良好な正孔伝導性を有し、かつ正孔を、第一電極411からEML 420へ(HT中間層(HT interlayer)418を経て、以下参照)効率的に注入するのに使用される。ABL 417は、ポリマー又は低分子材料から作られる。例えば、ABL 417は、第三級アミン又はカルバゾール誘導体の双方ともそれらの低分子又はそれらのポリマーの形、導電性ポリアニリン("PANI")又はPEDOT:PSS(HC StarckからBaytron Pとして入手可能なポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)("PEDOT")及びポリスチレンスルホン酸("PSS")の溶液)から作られていてよい。ABL 417は、約5nm〜約1000nmの厚さを有していてよく、かつ通常、約50〜約250nmの厚さが使用される。
【0017】
ABL 417の他の例は、いずれの低分子材料等、例えば、0.3〜3nmの好ましい厚さを有するプラズマ重合されたフルオロカーボンフィルム(CFx)、10〜50nmの好ましい厚さを有する銅フタロシアニン(CuPc)フィルムを含む。
【0018】
ABL 417は、選択的な堆積技術又は非選択的な堆積技術を用いて形成されることができる。選択的な堆積技術の例は、例えば、インクジェット印刷、フレックス印刷(flex printing)及びスクリーン印刷を含む。非選択的な堆積技術の例は、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ウェブコーティング及びスプレーコーティングを含む。正孔輸送及び/又はバッファ材料は、第一電極411上に堆積され、ついで乾燥させてフィルムにされる。乾燥したフィルムは、ABL 417になる。ABL 417の他の堆積法は、(CFx層について)プラズマ重合、真空蒸着又は(例えばCuPcのフィルムについて)気相成長法を含む。
【0019】
本発明の少なくとも1つの実施態様によれば、露出された表面、すなわちEML 420に隣接したABL 417の表面は、ナノ粒子で処理される。本発明により使用されるナノ粒子は、スペクトルの可視領域又は赤外領域内で強い吸収を有するべきである。ナノ粒子に従って、理想的には、界面となっている(interfaced)層中の有機材料の三重項励起子状態(エネルギー準位)との共鳴又は少なくともオーバーラップを有する。
【0020】
ナノ粒子は、性質的に金属であってよく、かつ例えば、Ag、Au、Ni、Fe、Co、Ge、Cu、Pt、Pd、Os、Ti等を含んでなっていてよく、又はそのような金属の酸化物又は化合物(例えばTiO2)であってよい。ナノ粒子は、非金属、例えば二酸化ケイ素等であってもよい。ナノ粒子の与えられるタイプについては、吸収スペクトルは、ナノ粒子のサイズを改変することによるか、又はコアを有し、その上でナノ粒子材料がシェルとして作用するナノ粒子を設計することによって所望の通り適合されることができる。例えば、金ナノ粒子は、シリカコアを用いて及びシェル上に金をめっきすることによって再設計されることができる。吸収スペクトルの共鳴は、コア及びシェルの寸法の比に部分的に依存し、かつこの比を改変することによって細かく適合されることができる。さらに、効率の改善は、金属ナノ粒子の付加的なキャッピングなしに得られることができる。これは、使用されることができるナノ粒子の選択を単純化するだけでなく、キャッピング層を有する金属ナノ粒子を加工する必要を取り除く。
【0021】
層表面を金属ナノ粒子でコンディショニングする工程は、非常に容易であり、かつポリマー又は溶液処理されたOLEDだけでなく、低分子(熱により蒸発された)OLED又はハイブリッド素子構造(溶液処理された及び熱蒸発技術の双方を含む方法によって加工する)にも、適用されることができる。ナノ粒子は、スパッタリング、蒸発、スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬等によって堆積されることができ、かつABL 417とEML 420との間の界面中に形成されるナノ粒子の超薄"層"となりうる。ナノ粒子は、サイズが0.01nm〜10nmであってよく、かつ溶液処理される(例えばABL 417の表面上へ、溶液又は懸濁液中に溶解された(例えばトルエン中に溶解された)ナノ粒子を用いてスピンコートされる)ことができる。ナノ粒子の典型的な濃度は、0.01〜10質量%の範囲内であるが、しかし50質量%の高さであってもよい。
【0022】
EML 420:
EL素子405としての有機LED(OLED)については、EML 420は、光を放出する少なくとも1つの有機材料を含有する。これらの有機発光材料は一般的に、2つのカテゴリーに分類される。OLEDの第一のカテゴリーは、ポリマー発光ダイオード又はPLEDと呼ばれ、EML 420の一部としてポリマーを使用する。前記ポリマーは、性質的に有機又は有機金属であってよい。ここで使用される通り、有機という用語は有機金属材料も含む。これらの材料中の発光は、蛍光及び/又はりん光の結果として生じうる。りん光については、EML 420は、いずれの三重項発光体化合物、例えばイリジウム錯体、ランタニド錯体、有機三重項発光体、ポルフィリン類及びオスミウム錯体を含みうる。蛍光については、EML 420は、一重項発光体、例えば有機染料、共役ポリマー、共役オリゴマー及び低分子を含みうる。
【0023】
EML 420中の発光有機ポリマーは、例えば、共役繰返し単位を有するELポリマー、特に隣接繰返し単位が共役された様式で結合されたELポリマー、例えばポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリチオフェンビニレン又はポリ−p−フェニレンビニレン又はそれらのファミリー、それらのコポリマー、誘導体又は混合物であってよい。もっと具体的に言えば、有機ポリマーは、例えば:ポリフルオレン;白色、赤色、青色、黄色又は緑色の光を放出するポリ−p−フェニレンビニレンであってよく、かつ2−又は2,5−置換されたポリ−p−フェニレンビニレン;ポリスピロポリマーである。好ましくは、これらのポリマーは、有機溶剤、例えばトルエン又はキシレン中に溶媒和され、かつ素子上へスピニングされる(スピンコートされる)が、他の堆積法も可能である。
【0024】
ポリマーに加えて、蛍光によるか又はりん光によって放出するより小さな有機分子は、EML 420に属する発光材料としての役割を果たすことができる。溶液又は懸濁液として適用される高分子材料とは異なり、低分子発光材料は、蒸発、昇華又は有機気相成長法によって好ましくは堆積される。溶液法によっても適用されることができる低分子材料も存在する。PLED材料及びより小さい有機分子の組合せは、活性電子層としての役割を果たすこともできる。例えば、PLEDは、EML 420を形成するために、有機低分子で化学的に誘導体化されることができ、又は有機低分子と単純に混合されることができる。エレクトロルミセンス低分子材料の例は、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq3)、アントラセン、ルブレン、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、トリアジン、これらのいずれの材料のいずれの金属キレート化合物及び誘導体を含む。
【0025】
光を放出する活性電子材料に加えて、EML 420は、電荷輸送することのできる材料を含んでいてよい。電荷輸送材料は、電荷キャリアを輸送できるポリマー又は低分子を含む。例えば、有機材料、例えばポリチオフェン、誘導体化されたポリチオフェン、オリゴマーポリチオフェン、誘導体化されたオリゴマーポリチオフェン、ペンタセン、トリフェニルアミン及びトリフェニルジアミン。EML 420は、半導体、例えばケイ素、ヒ化ガリウム、セレン化カドミウム又は硫化カドミウムも含みうる。
【0026】
本発明の少なくとも1つの実施態様によれば、露出された表面、すなわち第二電極423に隣接したEML 420の表面は、ナノ粒子で処理される。本発明により使用されるナノ粒子は、スペクトルの可視領域又は赤外領域内で強い吸収を有するべきである。ナノ粒子に従って、理想的には、界面となっている(interfaced)層中の有機材料の三重項励起子状態(エネルギー準位)との共鳴又は少なくともオーバーラップを有する。
【0027】
ナノ粒子は、性質的に金属であってよく、かつ例えば、Ag、Au、Ni、Fe、Co、Ge、Cu、Pt、Pd、Os、Ti等を含んでなっていてよく、又はそのような金属の酸化物又は化合物(例えばTiO2)であってよい。ナノ粒子は、非金属、例えば二酸化ケイ素等であってもよい。ナノ粒子の与えられるタイプについては、吸収スペクトルは、ナノ粒子のサイズを改変することによるか、又はコアを有し、その上でナノ粒子材料がシェルとして作用するナノ粒子を設計することによって所望の通り適合されることができる。例えば、金ナノ粒子は、シリカコアを用いて及びシェル上に金をめっきすることによって再設計されることができる。吸収スペクトルの共鳴は、コア及びシェルの寸法の比に部分的に依存し、かつこの比を改変することによって細かく適合されることができる。さらに、効率の改善は、金属ナノ粒子の付加的なキャッピングなしに得られることができる。これは、使用されることができるナノ粒子の選択を単純化するだけでなく、キャッピング層を有する金属ナノ粒子を加工する必要を取り除く。
【0028】
層表面を金属ナノ粒子でコンディショニングする工程は、非常に容易であり、かつポリマー又は溶液処理されたOLEDだけでなく、低分子(熱により蒸発された)OLED又はハイブリッド素子構造(溶液処理された及び熱蒸発技術の双方を含む方法によって加工する)にも、適用されることができる。ナノ粒子は、スパッタリング、蒸発、スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬等によって堆積されることができ、かつEML 420と第二電極423との間の界面中に形成されるナノ粒子の超薄"層"となりうる。ナノ粒子は、サイズが0.01nm〜10nmであってよく、かつ溶液処理される(例えばEML 420の表面上へ、溶液又は懸濁液中に溶解された(例えばトルエン中に溶解された)ナノ粒子を用いてスピンコートされる)ことができる。ナノ粒子の典型的な濃度は、0.01〜10質量%の範囲内であるが、しかし50質量%の高さであってもよい。
【0029】
全ての有機層、例えばABL 417及びEML 420は、有機溶液を堆積するか又はスピンコーティング又は他の堆積技術によってインクジェット印刷されることができる。この有機溶液は、いずれの"流体"又は圧力下に流動することのできる変形しうる塊状物であってよく、かつ溶液、インク、ペースト、乳濁液、分散液等を含みうる。この液体は、堆積された滴の粘度、接触角、増粘、親和力、乾燥、希釈等に影響を及ぼすさらなる物質を含有していてもよく、又は前記物質によって補充されていてもよい。さらに、いずれか又は全ての層417及び420は、その後の層の堆積に望ましい安定性及び特定の表面特性の維持のために所望の通り架橋されてよく、又はさもなければ物理的又は化学的に硬化されていてよい。選択的に、低分子材料がポリマーの代わりに使用される場合には、ABL 417及びEML 420は、蒸発、昇華、有機気相成長によって又は他の堆積技術との組合せで堆積されることができる。
【0030】
第二電極(423)
一実施態様において、第二電極423は、電位が第一電極411及び第二電極423に適用される場合に、カソードとして機能する。この実施態様において、電位がアノードとしての役割を果たす第一電極411及びカソードとしての役割を果たす第二電極423に適用される場合に、フォトンは、活性電子層420から放出され、かつ第一電極411及び基板408を通過する。
【0031】
カソードとして機能しうる多くの材料が当該技術における知識を有する者に知られている一方で、最も好ましくは、アルミニウム、インジウム、銀、金、マグネシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化ナトリウム及びバリウム又はそれらの組合せ又はそれらの合金を含む組成物が使用される。アルミニウム、アルミニウム合金、及びマグネシウムと銀との組合せ又はそれらの合金も使用されることができる。本発明の一部の実施態様において、第二電極423は、3つの層又は多様な量のフッ化リチウム、カルシウム及びアルミニウムを組み合わせた様式中で熱的に蒸発させることによって加工される。
【0032】
好ましくは、第二電極423の全厚は、約10〜約1000ナノメートル(nm)、より好ましくは約50〜約500nm及び最も好ましくは約100〜約300nmである。第一電極材料が堆積されることができる多くの方法が、当該技術における通常の知識を有する者に知られている一方で、真空蒸着法、例えば物理蒸着(PVD)が好ましい。
【0033】
しばしば、他のプロセス、例えば、膜の洗浄及び中和、マスク及びフォトレジストの追加は、カソード堆積より先んじてよい。しかしながら、これらは特に列挙されない、それというのも、これらは本発明の新規態様に特に関係しないからである。アノード線を電源に接続するための金属線を付け加えるような他の加工プロセスも望ましくありうる。他の層(示されていない)、例えばバリヤー層及び/又はゲッター層及び/又は他の封止スキームは、電子装置を保護するのに使用されることもできる。そのような他の処理工程及び層は、当工業界において十分知られており、かつここで詳細に論じない。
【0034】
図2は、本発明の少なくとも第二の実施態様によるEL素子505の実施態様の横断面図を示す。素子405及び505中の同様の番号付けした要素は、上記で与えられた通りの類似の説明を有し、かつ繰り返されない。素子505は、たいていの態様において、次のものを除き図1の素子405と同一である。素子505は、付加的なHT中間層418を含む有機スタック516を有する。
【0035】
HT中間層418:
HT中間層418の機能は、なかでも次のものである:EML 420中への正孔の注入を補助するため、アノードでの励起子消滅を減少させるため、電子輸送よりも良好な正孔輸送を提供するため、及び電子がABL 417中へ入りかつそれが分解するのをブロックするため。一部の材料は、列挙された所望の性質の1つ又は2つを有しうるが、しかし、中間層としての材料の効果は、示された数のこれらの性質を有して改善することが考えられる。正孔輸送材料の慎重な選択を通して、効率的な中間層材料が見出されることができる。HT中間層418は、1つ又はそれ以上の次の化合物、それらの誘導体、成分等から少なくとも部分的になっていてよいか又はこれらから誘導することができる正孔輸送材料から加工される:ポリフルオレン誘導体、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−secブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)及び架橋可能な形を含む誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)の非放出形、トリアリールアミン型材料(例えばトリフェニルジアミン(TPD)、α−ナフチルフェニル−ビフェニル(NPB))、チオフェン、オキセタン官能化されたポリマー及び低分子等。本発明の一部の実施態様において、HT中間層418は、架橋性正孔輸送ポリマーを用いて加工される。HT中間層418は、1つ又はそれ以上の放出成分、例えばりん光性ドーパント、ポリマー等を含んでなっていてもよい。
【0036】
HT中間層418は、選択的又は非選択的かどうかで、有機溶液を堆積させることによるか、スピンコーティングによるか、真空蒸着によるか、気相成長によるか、又は他の堆積技術によってインクジェット印刷されることができる。さらに、必要に応じて、HT中間層418は、その後の層の堆積に望ましい安定性及び特定の表面特性の維持のために所望の通り架橋されてよく、又はさもなければ物理的又は化学的に硬化されていてよい。
【0037】
本発明の少なくとも1つの実施態様によれば、露出された表面、すなわちEML 420に隣接したHT中間層418の表面は、ナノ粒子で処理される。本発明により使用されるナノ粒子は、スペクトルの可視領域又は赤外領域内で強い吸収を有するべきである。ナノ粒子に従って、理想的には、界面となっている(interfaced)層中の有機材料の三重項励起子状態(エネルギー準位)との共鳴又は少なくともオーバーラップを有する。
【0038】
ナノ粒子は、性質的に金属であってよく、かつ例えば、Ag、Au、Ni、Fe、Co、Ge、Cu、Pt、Pd、Os、Ti等を含んでなっていてよく、又はそのような金属の酸化物又は化合物(例えばTiO2)であってよい。ナノ粒子は、非金属、例えば二酸化ケイ素等であってもよい。ナノ粒子の与えられるタイプについては、吸収スペクトルは、ナノ粒子のサイズを改変することによるか、又はコアを有し、その上でナノ粒子材料がシェルとして作用するナノ粒子を設計することによって所望の通り適合されることができる。例えば、金ナノ粒子は、シリカコアを用いて及びシェル上に金をめっきすることによって再設計されることができる。吸収スペクトルの共鳴は、コア及びシェルの寸法の比に部分的に依存し、かつこの比を改変することによって細かく適合されることができる。さらに、効率の改善は、金属ナノ粒子の付加的なキャッピングなしに得られることができる。これは、使用されることができるナノ粒子の選択を単純化するだけでなく、キャッピング層を有する金属ナノ粒子を加工する必要を取り除く。
【0039】
層表面を金属ナノ粒子でコンディショニングする工程は、非常に容易であり、かつポリマー又は溶液処理されたOLEDだけでなく、低分子(熱により蒸発された)OLED又はハイブリッド素子構造(溶液処理された及び熱蒸発技術の双方を含む方法によって加工する)にも、適用されることができる。ナノ粒子は、スパッタリング、蒸発、スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬等によって堆積されることができ、かつHT中間層418とEML 420との間の界面中に形成されるナノ粒子の超薄"層"となりうる。ナノ粒子は、サイズが0.01nm〜10nmであってよく、かつ溶液処理される(例えばHT中間層418の表面上へ、溶液又は懸濁液中に溶解された(例えばトルエン中に溶解された)ナノ粒子を用いてスピンコートされる)ことができる。ナノ粒子の典型的な濃度は、0.01〜10質量%の範囲内であるが、しかし50質量%の高さであってもよい。
【0040】
図2に示されている実施態様において、ABL 417は、中間層の追加のためにEML 420にもはや隣接していていない。ゆえに、上記で与えられたABL 417の説明は、ナノ粒子を場合により導入することができる付加的な界面が、前記の通りABL 417とHT中間層418との間にある点で変更されている。ゆえにHT中間層418は、ABL 417の上記の図1の議論においてEML 420と置き換えられるべきである。
【実施例】
【0041】
一例として、本発明は、りん光に基づくOLEDが使用された。図3A−3Bは、金属ナノ粒子での表面コンディショニングの適用の有無によるりん光OLEDの素子特性を比較する。対照素子は、次の構造に基づいていた:ITOからなるアノード/PEDOT:PSS(商標名AI4083)からなるABL/EML/CsF、ついでAlからなるカソード。素子の効率を増加させるために、本発明に従って、第二の素子中で、PEDOT:PSS(すなわちABL)層の表面を金ナノ粒子でコンディショニングした。表面処理された素子中で、他の全ての層は、対照素子と同一のままであった。このEMLは、全ての素子が、N,N′−ジフェニル−N−N′−(ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4−4′−ジアミン(TPD)及び2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)で分子ドープされたホストとして非共役ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)を用いるトリス(2−4(4−トルチル)フェニルピリジン)イリジウム("Ir(mppy)3")から構成されている。研究された素子の全てについてのEMLは、質量%により与えられる濃度で61%PVK+24%PBD+9%TPD+6%Ir(mppy)3を含有する。金ナノ粒子をトルエン溶液中に溶解させ、その際に金ナノ粒子はサイズが1〜10nmである。ついで、PEDOT:PSS層の表面を、その上にトルエン中の金ナノ粒子溶液をスピンコーティングすることによってコンディショニングした。
【0042】
図3A−3Bは、金属ナノ粒子での表面コンディショニングの適用の有無によるりん光OLEDの素子特性を比較する。図3Aは、前記の双方の素子の電力効率を説明する。第二の素子、すなわち金ナノ粒子でコンディショニングされた素子の電力効率又は輝度効力(lm/Wで測定)は、対照素子よりも約30〜35%大きい。図3Bは、前記の双方の素子の輝度効率を説明する。一般的に、第二の素子、すなわち金ナノ粒子でコンディショニングされた素子の輝度効率は、Cd/Aで測定して、対照素子よりも約20〜25%大きい。素子の効率は改善し、これは、PEDOT:PSSとりん光に基づくEMLとの間の界面中への金ナノ粒子の導入によって引き起こされる放射放出の加速によると考えられ、ゆえにその際に放出特性を改善する。
【0043】
電子装置加工の技術における通常の知識を有するいかなる者も、説明、図面及び実施例から、変更及び変形とが、次の請求の範囲によって定義されるこの発明の範囲から逸脱することなく本発明の実施態様を行うことができることを認識するものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の少なくとも1つの実施態様によるEL素子405の実施態様を示す横断面図。
【図2】本発明の少なくとも第二の実施態様によるEL素子505の実施態様を示す横断面図。
【図3A】金属ナノ粒子での表面コンディショニングの適用の有無によるりん光OLEDの電力効率を比較する図。
【図3B】金属ナノ粒子での表面コンディショニングの適用の有無によるりん光OLEDの輝度効率を比較する図。
【符号の説明】
【0045】
405 EL素子、 408 基板、 411 第一電極、 416 有機スタック、 417 ABL、 418 HT中間層、 420 EML、 423 第二電極、 505 EL素子、 516 有機スタック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード層;
カソード層;及び
前記アノード層と前記カソード層との間の層のスタック、その際に前記の層のスタックは有機材料を含んでなる少なくとも1つの層を含む
を含んでなるエレクトロルミネセンス素子であって、少なくとも1つのナノ粒子が、前記の層のスタック中の層間又は前記の層のスタックと前記カソード層との間の少なくとも1つの界面中に配置されることを特徴とする、エレクトロルミネセンス素子。
【請求項2】
前記の層のスタックが、
前記アノード層上に配置されたアノードバッファ層;
放出層、前記放出層は光を放出することができる;及び
正孔輸送中間層
の少なくとも1つを含む、請求項1記載の素子。
【請求項3】
さらに、前記の層のスタック中の前記のいずれの層が、発光成分を含んでなっていてもよい、請求項2記載の素子。
【請求項4】
前記の層のスタック内のいずれかの層が、少なくとも1つのポリマー有機材料を少なくとも部分的に用いて形成される、請求項1記載の素子。
【請求項5】
前記の層のスタック内のいずれかの層が、少なくとも1つの低分子材料を少なくとも部分的に用いて形成される、請求項1記載の素子。
【請求項6】
前記放出層が共役ポリ−p−フェニレンビニレンポリマーを含んでなる、請求項2記載の素子。
【請求項7】
前記放出層が共役ポリスピロポリマーを含んでなる、請求項2記載の素子。
【請求項8】
前記放出層が共役フルオレンポリマーを含んでなる、請求項2記載の素子。
【請求項9】
前記の少なくとも1つのナノ粒子が、Ag、Au、Ni、Fe、Co、Ge、Cu、Pt、Pd、Os、Ti、Si又はそれらの化合物の少なくとも1つを含んでなる、請求項1記載の素子。
【請求項10】
前記発光成分が、りん光に基づく発光体を少なくとも1つ含んでなる、請求項3記載の素子。
【請求項11】
前記発光成分が、蛍光に基づく発光体を少なくとも1つ含んでなる、請求項3記載の素子。
【請求項12】
前記発光成分が、りん光に基づく発光体を少なくとも1つ及び蛍光に基づく発光体を少なくとも1つ含んでなる、請求項3記載の素子。
【請求項13】
前記の少なくとも1つのナノ粒子が、スパッタリング、スピンコーティング、スプレーコーティング又は熱蒸発の少なくとも1つによって配置される、請求項1記載の素子。
【請求項14】
前記の少なくとも1つのナノ粒子が、配置される際にナノ粒子の超薄層を形成する、請求項1記載の素子。
【請求項15】
前記の少なくとも1つのナノ粒子のそれぞれが、0.01〜10ナノメートルの範囲のサイズを有する、請求項1記載の素子。
【請求項16】
前記の少なくとも1つのナノ粒子が、第一材料のコア及び第二の異なる材料のシェルを含んでなる、請求項1記載の素子。
【請求項17】
第一材料がシリカである、請求項16記載の素子。
【請求項18】
前記第二材料が、Ag、Au、Ni、Fe、Co、Ge、Cu、Pt、Pd、Os、Ti、Si又はそれらの化合物の少なくとも1つを含んでなる、請求項17記載の素子。
【請求項19】
前記の少なくとも1つのナノ粒子が、前記の少なくとも1つのナノ粒子が配置される界面を定義する層のいずれか1つの中で材料の三重項励起子状態とオーバーラップする吸収スペクトルを有する、請求項1記載の素子。
【請求項20】
前記の少なくとも1つのナノ粒子が、前記の少なくとも1つのナノ粒子が配置される界面を定義する層のいずれか1つの中で材料の三重項励起子状態との共鳴を有する、請求項19記載の素子。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2009−510746(P2009−510746A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532630(P2008−532630)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008975
【国際公開番号】WO2007/039062
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】