説明

有機エレクトロルミネッセンス素子用材料および有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】有機EL素子の構成成分として有用な含窒素複素環誘導体を提供し、この含窒素複素環誘導体を用いることにより、低駆動電圧化、高輝度化、高発光効率化、長寿命化が達成できる有機EL素子を提供する。
【解決手段】9,9−ジフェニルフルオレン構造を有し、フェニル基の4−及び/又は4’−位に例えばピロール,カルバゾール等の含窒素複素環誘導体が、N原子で結合している有機EL素子材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平面光源や表示に使用される有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。さらに詳しくは、低駆動電圧、高輝度、高効率、長寿命、高耐熱性を示す赤色発光用有機エレクトロルミネッセンス素子と有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とがこれら両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合する際に発光するという有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、固体発光型の表示素子としての用途が有望視され、近年活発に研究開発が行われている。
【0003】
この研究は、イーストマン・コダック社のC.W.Tang氏らによりAppl.Phys.Lett.,第51巻,913頁,1987年発行に報告された有機薄膜を積層したEL素子に端を発しており、この報告では、金属キレート錯体を発光層、アミン系化合物を正孔注入層に使用することで、6〜10Vの直流電圧での輝度が数1000(cd/m2)、最大発光効率が1.5(lm/W)の緑色発光を得ている。現在、様々な研究機関で開発が進められている有機EL素子は、基本的にこのイーストマン・コダック社の構成を踏襲しているといえる。
【0004】
従来、有機EL素子に電子注入/輸送層を設けて発光効率を高めたり、駆動電圧を低くする試みがなされてきた。この場合、エキサイプレックスの形成が見られたり、高輝度の発光は得られるものの、発光寿命が短いという欠点があった。また、長時間の通電により金属電極と有機化合物層との剥離が発生したり、有機化合物層と電極が結晶化し、白濁化して発光輝度が低下するため、このような現象を防ぐ必要があった。含窒素複素環化合物を有機EL素子の構成成分として用いた例として、特許文献1にピラジン化合物、キノリン化合物、キノキサリン化合物等を用いた記載がある。しかしながら、これらの化合物は融点が低いために、有機EL素子のアモルファス薄膜層として使用しても、直ぐに結晶化が起こり、殆ど発光しなくなるなどという欠点があった。また、通電により前記した剥離が発生し、寿命が短くなるという欠点があった。
【0005】
また、ジフェニルフルオレン構造を有する化合物を用いた有機EL素子については、例えば、特開平7−145372号公報、特開平7−126226号公報が知られているが、これらは正孔輸送材料として用いた例である。
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,第51巻,913頁,1987年
【特許文献1】米国特許第5,077,142号明細書
【特許文献2】特開平7−145372号公報
【特許文献3】特開平7−126226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機EL素子の構成成分として有用な含窒素複素環誘導体を提供し、この含窒素複素環誘導体を有機化合物層の少なくとも1層に用いることにより、低駆動電圧化、高輝度化、高発光効率化、長寿命化が達成できる有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、一般式[1]で表される含窒素複素環誘導体を有機EL素子の有機化合物層の少なくとも1層に用いることにより、低駆動電圧化、高輝度化、高発光効率化、長寿命化が達成できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式[1]で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
一般式[1]
【化1】

【0009】
[式中、R1ないしR18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアミノ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表し、置換基同士で環を形成しても良い。ここで、R9ないしR18のうち少なくとも一つが、下記一般式[2]で表される置換基である。]
一般式[2]
【化2】

【0010】
[式中、R19は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表す。X1〜X3はそれぞれ独立に、窒素原子またはC−R20を表す。ここでR20は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアミノ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表し、置換基同士で環を形成しても良い。]
【0011】
また、本発明は、R9ないしR13のうち少なくとも一つ、および、R14ないしR18のうち少なくとも一つが、一般式[2]で表される置換基である上記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
【0012】
また、本発明は、陽極と陰極からなる一対の電極間に、発光層を含む少なくとも1層の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なくとも1層が、上記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0013】
また、本発明は、発光層が、上記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0014】
また、本発明は、さらに、発光層が、リン光発光材料とを含む上記有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0015】
また、本発明は、陽極と陰極からなる一対の電極間に、少なくとも、発光層と、電子注入層および/または電子輸送層とを含む有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
電子注入層および/または電子輸送層が、上記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0016】
また、本発明は、陽極と陰極からなる一対の電極間に、少なくとも、発光層と、正孔阻止層とを含む有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
正孔阻止層が、上記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、従来のものと比較して低駆動電圧、長寿命であるため、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイ、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイの光源、表示板、標識灯等へ応用が考えられ、また、高耐熱性であることから車載用途等にも展開が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、詳細にわたって本発明を説明する。一般式[1]で表される化合物において、R1ないしR18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアミノ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表し、置換基同士で環を形成しても良い。ここで、R9ないしR18のうち少なくとも一つが、一般式[2]で表される置換基である。
一般式[2]において、R19は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表す。X1〜X3はそれぞれ独立に、窒素原子またはC−R20を表す。ここでR20は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアミノ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表し、置換基同士で環を形成しても良い。
【0019】
ここで、本発明でいうハロゲン原子としては、弗素、塩素、臭素、ヨウ素があげられる。
【0020】
また、本発明でいう脂肪族炭化水素基としては炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を指し、そのようなものとしては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基があげられる。
【0021】
したがって、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基といった炭素数1〜18のアルキル基があげられる。
【0022】
また、アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−オクテニル基、1−デセニル基、1−オクタデセニル基といった炭素数2〜18のアルケニル基があげられる。
【0023】
また、アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−オクチニル基、1−デシニル基、1−オクタデシニル基といった炭素数2〜18のアルキニル基があげられる。
【0024】
また、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクタデシル基、2−ボルニル基、2−イソボルニル基、1−アダマンチル基といった炭素数3〜18のシクロアルキル基があげられる。
【0025】
また、本発明でいうアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、2−ボルニルオキシ基、2−イソボルニルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基等の炭素数1〜18のアルコキシル基があげられる。
【0026】
また、本発明でいうアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基といった炭素数1〜18のアルキルチオ基があげられる。
【0027】
また、本発明でいうアミノ基としては、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、ジピリジルアミノ基といった炭素数6〜30のアミノ基があげられる。
【0028】
また、本発明でいうアリールオキシ基としては、フェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基といった炭素数6〜30のアリールオキシ基があげられる。
【0029】
また、本発明でいうアリールチオ基としては、フェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、4−tert−ブチルフェニルチオ基といった炭素数6〜30のアリールチオ基があげられる。
【0030】
また、本発明でいう芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜30の1価の単環、縮合環、環集合芳香族炭化水素基があげられる。ここで、炭素数6〜30の単環芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、p−クメニル基、メシチル基等の炭素数6〜30の1価の単環芳香族炭化水素基があげられる。
【0031】
また、縮合環芳香族炭化水素基としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、2−アンスリル基、5−アンスリル基、1−フェナンスリル基、9−フェナンスリル基、1−アセナフチル基、2−アズレニル基、1−ピレニル基、2−トリフェニレル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、1−ペリレニル基、2−ペリレニル基、3−ペリレニル基、2−トレフェニレニル基、2−インデニル基、1−アセナフチレニル基、2−ナフタセニル基、2−ペンタセニル基等の炭素数10〜30の縮合環炭化水素基があげられる。
【0032】
また、環集合芳香族炭化水素基としては、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、テルフェニリル基、7−(2−ナフチル)−2−ナフチル基等の炭素数12〜30の環集合炭化水素基があげられる。
【0033】
また、本発明でいう1価の脂肪族複素環基としては、3−イソクロマニル基、7−クロマニル基、3−クマリニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基、2−モルホリノ基等の炭素数3〜18の1価の脂肪族複素環基があげられる。
【0034】
また、本発明でいう1価の芳香族複素環基としては、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−キノリル、5−イソキノリル基、インドール基、ベンゾイミダゾール基等の炭素数3〜30の1価の芳香族複素環基があげられる。
【0035】
これら置換基は、さらに他の置換基によって置換されていても良く、また、これら置換基同士が結合し、環を形成していても良い(ただし、水素原子は置換基とはみなさない)。また、上記置換基は一例であってこれらに限定されるものではない。
【0036】
また、より好ましい形態として、R9ないしR13のうち少なくとも一つ、および、R14ないしR18のうち少なくとも一つが、一般式[2]で表される置換基であるものが挙げられる。
【0037】
以下、表1に本発明の一般式[1]で表される化合物の代表例を示すが、本発明は、なんらこれらに限定されるものではない。
【0038】
【表1】

【0039】
【表1】

【0040】
【表1】

【0041】
【表1】

【0042】
【表1】

【0043】
ところで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極間に一層または多層の有機層を形成した素子から構成されるが、ここで、一層型有機エレクトロルミネッセンス素子とは、陽極と陰極との間に発光層のみからなる素子を指す。一方、多層型有機エレクトロルミネッセンス素子とは、発光層の他に、発光層への正孔や電子の注入を容易にしたり、発光層内での正孔と電子との再結合を円滑に行わせたりすることを目的として、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子注入層などを積層させたものを指す。したがって、多層型有機エレクトロルミネッセンス素子の代表的な素子構成としては、(1)陽極/正孔注入層/発光層/陰極、(2)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極、(3)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極、(4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極、(5)陽極/正孔注入層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(7)陽極/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(8)陽極/発光層/電子注入層/陰極等の多層構成で積層した素子構成が考えられる。
【0044】
一般式[1]の化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機薄膜層形成材料として全ての層で使用可能であるが、電子を注入または輸送する能力、および、発光層内で効率的に発光が得られる様に機能する能力が高いことから、より好ましくは、電子注入層、正孔阻止層、発光層の形成材料として使用するのが良い。
【0045】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における発光層中には、発光材料に加えて、必要に応じ他の発光材料やドーピング材料のみならず、正孔注入材料や電子注入材料を二種類以上組み合わせて使用することもできる。また、正孔注入層、発光層、電子注入層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良い。
【0046】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における正孔注入・輸送材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、陽極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能の優れた化合物が挙げられる。具体的には、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料等があるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において使用できる正孔注入材料の中で、さらに効果的な正孔注入材料は、アリールアミン誘導体、フタロシアニン化合物ないしはトリフェニレン誘導体である。アリールアミン誘導体の具体例としては、トリフェニルアミン、トリトリルアミン、トリルジフェニルアミン、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ−m−トリル−4,4'−ビフェニルジアミン、N,N,N',N'−テトラ(p−トリル)−p−フェニレンジアミン、N,N,N',N'−テトラ−p−トリル−4,4'−ビフェニルジアミン、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(1−ナフチル)−4,4'−ビフェニルジアミン、N,N'−ジ(4−n−ブチルフェニル)−N,N'−ジ−p−トリル−9,10−フェナントレンジアミン、4,4',4"−トリス(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)トリフェニルアミン、1,1−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン等、もしくはこれらの芳香族三級アミン骨格を有したオリゴマーもしくはポリマー等があるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
フタロシアニン(Pc)化合物の具体例としては、H2Pc、CuPc、C oPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2SiPc、(HO)A lPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体およびナフタロシアニン誘導体等があるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
トリフェニレン誘導体の具体例としては、ヘキサメトキシトリフェニレン、ヘキサエトキシトリフェニレン、ヘキサヘキシルオキシトリフェニレン、ヘキサベンジルオキシトリフェニレン、トリメチレンジオキシトリフェニレン、トリエチレンジオキシトリフェニレンなどのヘキサアルコキシトリフェニレン類、ヘキサフェノキシトリフェニレン、ヘキサナフチルオキシトリフェニレン、ヘキサビフェニリルオキシトリフェニレン、トリフェニレンジオキシトリフェニレンなどのヘキサアリールオキシトリフェニレン類、ヘキサアセトキシトリフェニレン、ヘキサベンゾイルオキシトリフェニレンなどのヘキサアシロキシトリフェニレン類等があるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における発光層を構成する発光材料としては、上記本発明の材料を用いることが好ましい。本発明の材料を発光材料として用いる場合、本発明の材料単独でもよいし、公知の発光材料と共に用いてもよい。本発明化合物が発光層以外に用いられている場合は、発光層の発光材料について、特に制限されることはなく、従来公知の発光材料の中から任意のものを選択して用いることができる。
上記従来公知の発光材料またはドーピング材料としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ジアミン、ピラジン、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン、ジケトピロロピロール等およびそれらの誘導体があるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子のうち、リン光発光材料を含むことを特徴とする有機リン光発光素子は、励起三重項状態のエネルギーを発光に利用できるよう材料の選択と層構成の工夫が施されている。なお、本発明において、「有機リン光発光素子」とは、発光材料またはドーピング材料が励起三重項状態から直接的に光を放出する場合だけでなく、両極から注入された電荷の再結合によって生じた励起三重項状態を素子中で有効に発光に利用するような機構、過程を有するように設計された構成の素子全般を含む。
【0052】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子に使用できるリン光発光材料またはドーピング材料としては、例えば有機金属錯体がある。金属原子は通常、遷移金属であり、好ましくは周期では第5周期または第6周期、族では6族から11族、さらに好ましくは8族から10族の元素が対象となる。具体的にはイリジウムや白金などである。また、配位子としては2−フェニルピリジンや2−(2'―ベンゾチエニル)ピリジンなどがあり、これらの配位子上の炭素原子が金属と直接結合しているのが特徴である。別の例としてはポルフィリンまたはテトラアザポルフィリン環錯体などがあり、中心金属としては白金などがあげられる。
【0053】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における電子注入層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有している。本発明の有機EL素子においては、上記本発明化合物を電子注入材料として用いることが好ましい。本発明化合物が、電子注入層以外で用いられている場合は、電子注入材料について特に制限されることはなく、従来公知の電子注入材料の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0054】
上記従来公知の電子注入材料としては、金属錯体化合物または含窒素五員環誘導体があげられる。本発明に使用可能な電子注入材料の内、好ましい金属錯体化合物としては、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)クロロアルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(o−クレゾラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2、4−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2、5−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム等のガリウム錯体化合物の他、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、好ましい含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体があげられ、具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4'−tert−ブチルフェニル)−5−(4"−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5 −フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4'−tert− ブチルフェニル)−5−(4"−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4'−tert−ブチルフェニル)−5−(4"−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における正孔阻止層には、発光層を経由した正孔が電子注入層に達するのを阻止する能力を持ち、発光層で生成した励起子の電子注入層への拡散を防止する効果を兼ね備え、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が挙げられる。本発明化合物が、正孔阻止層以外で用いられている場合は、正孔阻止材料について特に制限されることはなく、従来公知の正孔阻止材料の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0057】
上記従来公知の正孔阻止材料としては、例えば、2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−トリアゾールや2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾールに代表されるアゾール(含窒素五員環)類、バソクプロインに代表されるフェナントロリン誘導体、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(4−ビフェニルオキソラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)フェノラートガリウムに代表される金属錯体などの含窒素六員環類とそれらを配位子に有する金属錯体、シラシクロブテン(シロール)誘導体等があるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極に用いられる導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等の金属およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂等があげられる。
【0059】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極に使用される導電性材料としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが適しており、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム等およびそれらの合金があげられるが、これらに限定されるものではない。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例としてあげられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。陰極としてフッ化リチウム、フッ化マグネシウム、酸化リチウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属のフッ化物、酸化物を有機層上に1nm以下の膜厚で成膜し、その上にアルミニウム、銀などの比較的導電性の高い金属を成膜してもよい。また、これら陰極は、抵抗加熱、電子線ビーム照射、スパッタリング、イオンプレーティング、コーティングなどの業界公知の方法で作成することができる。以上述べた陽極および陰極は、必要に応じて二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0060】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子からの発光を効率よく取り出すためには、発光を取り出す面の基板の材質が充分透明であることが望ましく、具体的には素子からの発光の発光波長領域における透過率が50%以上、好ましくは90%以上であることが望ましい。これら基板は、機械的、熱的強度を有し、透明であれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラスの他、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン等の透明性ポリマーが推奨される。
【0061】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の各有機薄膜層の形成方法としては、真空蒸着、電子線ビーム照射、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法、もしくはスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれかの方法を適用することができる。各層の膜厚は特に限定されるものではないが、膜厚が厚すぎると一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要となり効率が低くなり、逆に膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生し、電界を印加しても充分な発光輝度が得にくくなる。したがって、各層の膜厚は、1nmから1μmの範囲が適しているが、10nmから0.2μmの範囲がより好ましい。
【0062】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の温度、湿度、雰囲気等に対する安定性向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、樹脂等により素子全体を被覆や封止を施したりしても良い。特に素子全体を被覆や封止する際には、光によって硬化する光硬化性樹脂が好適に使用される。
【0063】
以上述べたように、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、長寿命であるため、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイ、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイの光源、表示板、標識灯等へ応用が考えられ、また、高耐熱性であることから、車載用途等にも展開が可能であり、その工業的価値は非常に大きい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。はじめに、実施例に先立って本発明の有機EL素子用材料の合成例を述べる。
【0065】
合成例1
化合物(13)の合成方法
フラスコ中に9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン11g、ピロール3.0g、炭酸セシウム16g、ジベンジリデンアセトンパラジウム2.3g、トリ−t−ブチルホスフィン0.65g、キシレン80mlを入れて、120℃で7時間かくはんした。冷却後、メタノールに注ぎ、生じた沈殿をろ過し集めた。沈殿をシリカゲルでカラム精製をおこなった後、昇華精製した。NMR、マススペクトルによって化合物の生成を確認した。
【0066】
合成例2
化合物(28)の合成方法
フラスコ中にフラスコ中に9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン22g、2−フェニルベンゾイミダゾール19g、ヨウ化銅0.76g、1,10−フェナントロリン1.4g、炭酸セシウム29g、ジメチルホルムアミド40mlを入れて、110℃で12時間かくはんした。冷却後、反応液をろ過し、ろ液を濃縮し固体を得た。得られた個体をシリカゲルでカラム精製を行った後、昇華精製した。NMR、マススペクトルによって化合物の生成を確認した。
【0067】
以下に本発明の化合物を用いた実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。実施例においては、特に断りのない限り、混合比は全て重量比を示す。蒸着(真空蒸着)は10-6Torrの真空中で、基板加熱、冷却等の温度制御なしの条件下で行った。また、素子の発光特性評価においては、電極面積2mm×2mmの有機EL素子の特性を測定した。測定は1Vずつ上昇しながら各電圧で電流、輝度、色度を記録した。最大発光輝度および効率は各電圧ごとの測定値の最大値であり、その時の電圧は素子により異なる。
【0068】
実施例1
洗浄したITO電極付きガラス板上に、N,N'―(1―ナフチル)―N,N'―ジフェニル―1,1'―ビフェニル-4,4'―ジアミン(NPD)を真空蒸着して膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)と下記化合物(D1)を98:2の比率で共蒸着して、膜厚40nmの発光層を作成し、次いで化合物(31)を真空蒸着して膜厚30nmの電子注入層を作成した。その上に、フッ化リチウムを0.7nm、次いでアルミニウムを200nm真空蒸着することで電極を形成して、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。この素子は、直流電圧5Vでの発光輝度430(cd/m2)、最大発光輝度93600(cd/m2)の発光が得られた。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命は5100時間であった。
【0069】
【化3】

【0070】
実施例2〜実施例7
化合物(31)の代わりに表2に示す化合物を用いる以外は、全て実施例1と同様の方法で有機EL素子を作成した。これらの素子の直流電圧5Vでの発光輝度、最大発光輝度、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命を併せて表2に示す。
【0071】
比較例1
化合物(31)の代わりにAlq3を用いる以外は、全て実施例1と同様の方法で有機EL素子を作成した。この素子の直流電圧5Vでの発光輝度、最大発光輝度、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命を併せて表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例8
洗浄したITO電極付きガラス板上に、NPDを真空蒸着して膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、下記CBPと下記化合物(D2)を93:7の比率で共蒸着して、膜厚40nmの発光層を作成し、次いで化合物(29)を真空蒸着して膜厚10nmの正孔ブロッキング層、さらにAlq3を真空蒸着して膜厚30nmの電子注入層を作成した。その上に、フッ化リチウムを0.7nm、次いでアルミニウムを200nm真空蒸着することで電極を形成して、有機燐光発光素子を得た。この素子は、直流電圧10Vでの発光輝度12500(cd/m2)、最大発光輝度95400(cd/m2)、発光効率42(cd/A)の発光が得られた。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命は4800時間であった。
【0074】
【化4】

【0075】
実施例9〜実施例12
化合物(29)の代わりに表3に示す化合物を用いる以外は、全て実施例8と同様の方法で有機燐光発光素子を作成した。これらの素子の直流電圧10Vでの発光輝度、最大発光輝度、発光効率、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命を併せて表3に示す。
【0076】
比較例2
化合物(29)の代わりに下記比較化合物Aを用いる以外は、全て実施例8と同様の方法で有機燐光発光素子を作成した。この素子の直流電圧10Vでの発光輝度、最大発光輝度、発光効率、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命を併せて表3に示す。
【0077】
【化5】

【0078】
【表3】

【0079】
実施例13
洗浄したITO電極付きガラス板上に、NPDを真空蒸着して膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、化合物(37)と化合物(D1)を98:2の比率で共蒸着して、膜厚40nmの発光層を作成し、次いでAlq3を真空蒸着して膜厚30nmの電子注入層を作成した。その上に、フッ化リチウムを0.7nm、次いでアルミニウムを200nm真空蒸着することで電極を形成して、有機燐光発光素子を得た。この素子は、直流電圧5Vでの発光輝度360(cd/m2)、最大発光輝度87600(cd/m2ときの半減寿命は4500時間であった。
【0080】
実施例14〜実施例17
化合物(37)の代わりに表4に示す化合物を用いる以外は、全て実施例1と同様の方法で有機EL素子を作成した。これらの素子の直流電圧5Vでの発光輝度、最大発光輝度、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命を併せて表4に示す。
【0081】
比較例3
化合物(37)の代わりにAlq3を用いる以外は、全て実施例1と同様の方法で有機EL素子を作成した。この素子の直流電圧5Vでの発光輝度、最大発光輝度、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命を併せて表4に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
実施例18
洗浄したITO電極付きガラス板上に、NPDを真空蒸着して膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、化合物(28)と化合物(D2)を93:7の比率で共蒸着して、膜厚40nmの発光層を作成し、次いで化合物(17)を真空蒸着して膜厚10nmの正孔ブロッキング層、さらにAlq3を真空蒸着して膜厚30nmの電子注入層を作成した。その上に、フッ化リチウムを0.7nm、次いでアルミニウムを200nm真空蒸着することで電極を形成して、有機燐光発光素子を得た。この素子は、直流電圧10Vでの発光輝度13500(cd/m2)、最大発光輝度97900(cd/m2)、発光効率46(cd/A)の発光が得られた。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命は3900時間であった。
【0084】
実施例19〜実施例22
化合物(28)の代わりに表5に示す化合物を用いる以外は、全て実施例8と同様の方法で有機燐光発光素子を作成した。これらの素子の直流電圧10Vでの発光輝度、最大発光輝度、発光効率、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命を併せて表5に示す。
【0085】
比較例4
化合物(28)の代わりに下記比較化合物Bを用いる以外は、全て実施例8と同様の方法で有機燐光発光素子を作成した。この素子の直流電圧10Vでの発光輝度、最大発光輝度、発光効率、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの半減寿命を併せて表5に示す。
【0086】
【化6】

【0087】
【表5】

【0088】
以上述べた実施例から明らかなように、本発明の含窒素複素環誘導体を有機化合物層を用いることにより、低駆動電圧化、高輝度化、高発光効率化、長寿命化が達成できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
一般式[1]
【化1】

[式中、R1ないしR18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアミノ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表し、置換基同士で環を形成しても良い。ここで、R9ないしR18のうち少なくとも一つが、下記一般式[2]で表される置換基である。]
一般式[2]
【化2】

[式中、R19は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表す。X1〜X3はそれぞれ独立に、窒素原子またはC−R20を表す。ここでR20は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、シアノ基、置換もしくは未置換のアミノ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表し、置換基同士で環を形成しても良い。]
【請求項2】
9ないしR13のうち少なくとも一つ、および、R14ないしR18のうち少なくとも一つが、一般式[2]で表される置換基である請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項3】
陽極と陰極からなる一対の電極間に、発光層を含む少なくとも1層の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、少なくとも1層が、請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
発光層が、請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
さらに、発光層が、リン光発光材料とを含む請求項4記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
陽極と陰極からなる一対の電極間に、少なくとも、発光層と、電子注入層および/または電子輸送層とを含む有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
電子注入層および/または電子輸送層が、請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
陽極と陰極からなる一対の電極間に、少なくとも、発光層と、正孔阻止層とを含む有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
正孔阻止層が、請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2007−49055(P2007−49055A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234003(P2005−234003)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】