説明

有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法

【課題】開口部への導電性材料の良好な配置を実現し、画素開口率を拡大した高品質な有機EL装置の製造方法を提供する。
【解決手段】有機機能層を有する複数の発光素子70が基板上に配置され、発光素子70が、基板上に設けられた有機絶縁層16の開口部16Aを介して、開口部16Aの底面の導通部22と接続され、開口部16Aが発光素子70の有効表示領域と重なる有機EL装置の製造方法であって、開口部16Aに撥液処理を施す工程と、液滴吐出法を用いて開口部16Aに導電性材料を含む機能液L1を塗布し、開口部16A内に導電ポスト20を形成する工程と、導電ポスト20を覆って、導電ポスト20から発光層40Bへの正孔の注入を促進する正孔注入層40Aを形成する工程と、を備え、正孔注入層40Aは、導電ポスト20と正孔注入層40Aの周縁部との電位差から求める電圧降下率が、予め定めた許容値よりも小さくなるように抵抗値を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化等に伴い、消費電力が少なく軽量化された平面表示装置のニーズが高まっている。この様な平面表示装置の一つとして、発光層や正孔輸送層等の有機機能層を有する有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」)素子を発光させて表示を行う有機EL装置が提案されている。
【0003】
有機EL装置の駆動方式に、駆動素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)を用いるアクティブマトリクス駆動方式を採用する場合、絶縁層を介して有機EL素子とTFTとを積層して形成することが多い。
【0004】
例えば、有機EL素子を配置する面の平坦性を確保するため、駆動素子を覆うように酸化シリコン膜などの平坦化層(絶縁層)を形成するが、平坦化層は数μmの厚みであることが多い。アクティブマトリクス駆動方式では、平坦化層に設けられるコンタクトホール(開口部)を介して有機EL素子と駆動素子とを電気的に接続することが多いが、平坦化層の厚みのために、該開口部内に形成する電極で開口部を完全に埋没させることは難しい。そのため、開口部は有機EL素子の形成には不向きな領域な凹部として残存する。
【0005】
例えば特許文献1,2に示すように、有機EL素子が配置される表示画素と平面的に重なる領域にこのような凹部が配置されると、次のような問題が生じる。すなわち、有機EL素子は形成材料に低分子材料を用いるか、又は高分子材料を用いるかに関わらず、薄膜の有機機能層を形成する必要があるが、凹部の存在により形成される薄膜の膜厚が不均一となる。そのため、表示画素での有機EL素子の発光が不均一となり表示ムラが生じる。
【0006】
通常、この課題を解決するために、表示画素の周囲を囲んで配置される隔壁と凹部とを平面的に重ねて配置し、凹部が表示画素と重ならない配置とすることが多い。しかし、この構成では、開口部を完全に覆って表示画素に重ならないようにする十分な大きさ・広さの隔壁が必要となってくる。隔壁が配置された領域は非発光領域であるため、画素開口率が低下し、高精細化による有機EL装置の品質向上の障害となる。
【0007】
この課題を解決するため、特許文献3では、開口部を表示画素と重ねて配置して画素開口率を広げる構成とし、ITOを用いた画素電極が形成された開口部には導電性高分子を埋め込んで、凹部を埋没させることとしている。開口部に形成された画素電極上への導電性高分子の配置には、液滴吐出法の1つであるインクジェット法を用いることが提案されている。
【特許文献1】特開2003−186420号公報
【特許文献2】特開2005−235790号公報
【特許文献3】特開2004−152595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液滴吐出法(インクジェット法)は、パターニングにマスクが不要、高解像度の塗りわけが可能、インクの損失が少ない、大面積の塗布が容易、といった様々な利点を備えた塗布方法である。この特長を活かし、有機EL装置の製造においては、例えばフルカラー表示を行うための微細なRGBパターンのような微細なパターンに塗り分けて形成する工程に利用され、高精細で高品質な有機EL装置とすることを実現している。
【0009】
液滴吐出法を用いた液滴の塗布においては、吐出される液状体の配置箇所を区画するため液状体を塗布する領域の周囲に隔壁を設ける。隔壁を設けることで位置精度が向上する上に、塗布された機能液が他の領域に塗布される機能液と混ざり合うことを抑制することができる。特許文献3では、開口部がこの隔壁の役割を果たしている。
【0010】
しかしながら、パターニングを確実なものとするためには、周囲に設けられる隔壁は液状体に対して撥液性を示し、液状体を塗布する底面の領域は親液性を示すという、親液撥液のパターンを形成する必要がある。特許文献3では、画素電極上に導電性高分子を配置しているが、通常ITOで形成される画素電極上は親液性となっている。親液性の画素電極上に塗布される導電性高分子は、良好な塗り分けが出来ないため凹部の外にも塗れ広がりやすく、確実な凹部の埋没が困難であることが容易に予想される。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、開口部への導電性材料の良好な配置を実現し、画素開口率を拡大した高品質な有機EL装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の有機EL装置の製造方法は、一対の電極に挟持された、発光層を含む有機機能層を有する複数の発光素子が基板上に配置され、前記発光素子が、前記基板上に設けられた有機絶縁層が有する開口部を介して、前記開口部の底面に露出する導通部と接続され、前記開口部が前記発光素子の有効表示領域と平面的に重なって配置される有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、少なくとも前記開口部の内部に撥液処理を施す工程と、液滴吐出法を用いて、前記開口部に導電性材料が溶媒に溶解または分散した機能液を塗布し、前記開口部内に前記導通部と接続する導電ポストを形成する工程と、前記導電ポストを覆って前記発光素子の形成領域に、前記導電ポストから前記発光層への正孔の注入を促進する正孔注入層を形成する工程と、を備え、前記正孔注入層は、前記導電ポストの上端における電位と、前記正孔注入層の周縁部における電位との差から求められる電圧降下率が、予め定めた許容電圧降下率よりも小さくなるように電気抵抗を制御することを特徴とする。
【0013】
この方法によれば、有機絶縁層が有する開口部は、側壁に電極や無機膜などの無機物が配置されず有機絶縁層が側壁に露出するため、側壁を良好に撥液処理を行うことができ、液滴吐出法を用いて選択的に開口部内に機能液を塗布して導電ポストを形成することができる。更に、発光素子の有効表示領域と平面的に重なって配置される開口部の内部が導電性材料で形成する導電ポストにより埋没するため、有機絶縁層の表面に開口部の形状に対応する凹部が形成されなくなる。加えて、導電ポスト上に形成される正孔注入層を、面方向の抵抗値を制御して所定の許容電圧降下率よりも小さい電圧降下率に留めることで、支障ない発光が得られる発光素子とすることができる。これらのことから、開口部を発光素子の有効表示領域と平面的に重ねた配置としても、開口部の上部に形成される有機機能層に膜厚ムラが生じず、且つ良好な発光を維持することができるため、画素開口率を上げた良好な有機EL装置を製造することができる。
【0014】
本発明においては、前記撥液処理を施す工程に先立って、前記基板を親液処理する工程を備えることが望ましい。
この方法によれば、開口部底部に露出する金属導電部を親液化することができる。そのため、開口部内部に導電性材料を含む機能液を良好に配置することができ、確実な塗りわけが可能となる。
【0015】
本発明においては、前記撥液処理を施す工程に先立って、前記有機絶縁層上に、前記開口部を露出する無機絶縁層を形成する工程と、前記発光素子の形成領域の周囲を囲み、有機材料を用いて画素隔壁を形成する工程を備え、前記撥液処理を施す工程では、前記基板の上面全面に撥液処理を行い、前記正孔注入層を形成する工程では、前記正孔注入層の形成材料が溶媒に溶解または分散した機能液を塗布することが望ましい。
この方法によれば、撥液処理工程を行うことで開口部内と画素隔壁とを同時に撥液処理することができ、形成される親撥液性を利用して正孔注入層の形成材料を含む機能液を良好に塗布することができる。そのため撥液処理の工程を共通化し、工程の簡略化が可能となる。
【0016】
本発明においては、前記導電性材料は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルフォン酸(PSS)との混合物であって、前記導電インクに含まれる前記溶媒は、水および水と混合することで前記導電性材料の抵抗値を下げる性質を有する有機物の混合溶媒であり、前記混合溶媒の混合比を変更して前記導電性材料の抵抗値を制御することが望ましい。
水に対して良好な親和性を備えるPEDOT/PSSは、溶媒として水を用いることが一般的である。しかし水のみを溶媒に用いるよりも、水とアルコール類などのプロトン性極性溶媒との混合溶媒を用いた場合に、形成されるPEDOT/PSSの高分子層の抵抗値が下がり、導電しやすくなるという性質があることが報告されている(例えば、Chem.Mater.,18(18),4354−4360,2006)。そのため、この方法によれば、容易に低い抵抗値を備えた正孔注入層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、図1〜図6を参照しながら、本発明の実施形態に係る有機EL装置の製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。また、本実施形態では、有機EL装置の製造に液滴吐出法の一例であるインクジェット法を用いているため、まずインクジェット法について概要を説明した後に、本実施形態の有機EL装置の説明へと移る。
【0018】
図1は、インクジェット法に用いる装置(液滴吐出装置)が備える液滴吐出ヘッド301の断面図である。液滴吐出ヘッド301は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドである。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド301の下面に一方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルからは、液状体の液滴Lが吐出される。本実施形態の液状体は、導電性材料を含む機能液L1であり、有機機能層の形成材料を含む機能液L2、L3である。本実施形態で吐出する液状体の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0019】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド301には電気機械変換式の吐出技術を採用したものを用いる。本方式では、液状体を収容する液体室321に隣接してピエゾ素子322が設置されている。液体室321には、液状体を収容する材料タンクを含む液状体供給系323を介して液状体が供給される。ピエゾ素子322は駆動回路324に接続されており、この駆動回路324を介してピエゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させることにより、液体室321が変形して内圧が高まり、ノズル325から液状体の液滴Lが吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み量を制御し、液状体の吐出量を制御する。
【0020】
なお、インクジェット法の吐出技術としては、上記の電気機械変換式の他に、帯電制御方式、加圧振動方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などのものが挙げられ、これらのいずれの方式も好適に用いることができる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。加圧振動方式は、材料に例えば30kg/cm程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものである。電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料をノズルから吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてノズル先端から材料を引き出すものである。この他にも、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式のものがあり、いずれも適用可能である。
【0021】
次に、本実施形態の有機EL装置1の具体的な態様を、図2から図6を参照して説明する。ここでは、まず図2および図3を用いて有機EL装置1の構成を説明した後に、図4および図5を用いて製造方法を説明する。その後に図6で変形例の説明を行う。
【0022】
図2は、本実施形態の有機EL装置1の配線構造を示す模式図である。この有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とからなる配線構成を有し、走査線101と信号線102との各交点付近にサブ画素Xを形成したものである。
【0023】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路105が接続されている。
【0024】
さらに、サブ画素Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から共有される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む陽極(画素電極)20と、該画素電極20と共通電極60との間に挟み込まれた発光層40が設けられている。
【0025】
この有機EL装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して、電源線103から画素電極20に電流が流れ、さらに発光部40を介して共通電極60に電流が流れる。発光部40は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0026】
図3には、有機EL装置1が備えるサブ画素X周辺の拡大図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−Aにおける矢視断面図を示す。
【0027】
図3(a)に示すように、サブ画素Xの近傍には水平方向に延在する走査線101と、垂直方向に延在する給電線103と、同じく垂直方向に延在し一部垂直方向枝分かれ部を有する信号線102と、が配置されている。更に、走査線101と信号線102と給電線103とに3方向を囲まれた領域にはサブ画素Xが配置されている。しかし本発明の有機EL装置1の特徴として、サブ画素Xは、通常存在するような少なくともサブ画素Xの全面を覆ってサブ画素Xと重なる画素電極は備えない構成となっている。
【0028】
サブ画素Xの周囲には、走査線101をゲート電極として用いるスイッチング用TFT112が配置されている。スイッチング用TFT112のソース電極には、前述の信号線102の枝分かれ部の端部が接続し、ドレイン電極には配線24を介して一端側が接続された配線26が接続している。帯状の配線26は一部矩形状に突出して幅広に形成されている部分を有し、この突出部と給電線103が平面的に重なっている箇所が保持容量113を形成している。
【0029】
更に、配線26の他端側には、配線26をゲート電極として用いる駆動用TFT123が配置されている。駆動用TFT123のソース電極には給電線103が接続し、ドレイン電極には配線22が接続されており、配線22と平面的に重なる領域に全てが配置されてなる画素電極20を介してサブ画素Xが接続されている。
【0030】
図3(b)に示すように、有機EL装置1は、基板10Lと、基板10Lに埋め込まれて形成された画素電極(導電ポスト)20と、基板10L上に形成された隔壁30と、隔壁30に周囲を囲まれた領域に形成された発光部40と、隔壁30と発光部40とを覆って上面全面に形成された共通電極60と、を備えている。
【0031】
基板10Lには基板10L内に形成される配線と発光部40とを電気的に導通させるための開口部16Aが形成されており、該開口部16Aの内部に画素電極20が埋め込まれている。画素電極20と発光部40と共通電極60とで有機EL素子(発光素子)70を形成している。本実施形態の有機EL装置1は、有機EL素子70で生じる光が、共通電極60側へ射出されるトップエミッション方式を採用している。
【0032】
以下の説明においては、基板本体10の配置している側を下側、共通電極60が配置している側を上側として、各構成の上下関係、積層関係を示すこととする。以下、各構成要素について順に説明する。
【0033】
基板10Lが備える基板本体10は、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。透明基板としては、例えばガラス、石英ガラス、窒化ケイ素等の無機物や、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機高分子(樹脂)を用いることができる。また、光透過性を備えるならば、前記材料を積層または混合して形成された複合材料を用いることもできる。本実施形態では、基板本体10の材料としてガラスを用いる。
【0034】
基板本体10上には、図2に示すスイッチング用TFTや駆動用TFT等の駆動素子、及び無機物または有機物の絶縁膜などを備える素子層12が形成されている。各種配線や駆動素子はフォトリソグラフィによりパターニングした後エッチングすることにより、また、絶縁膜は蒸着法やスパッタ法など通常知られた方法により適宜形成することができる。なお、有機EL装置1はトップエミッション方式を採用しているため、素子層12は必要に応じて、基板本体10側(下側)への光の射出を防ぎ上側に光を射出するための光反射膜を備える。光反射膜は例えばアルミニウムなどの金属材料を用いて形成することができる。
【0035】
素子層12の上には、素子層12に含まれる駆動用TFTと接続される配線(導通部)22および給電線103が形成されている。これらの配線も同様に、フォトリソグラフィによりパターニングした後エッチングすることにより形成することができる。
【0036】
更に素子層12の上には、各配線を覆い且つ配線22を露出する開口部を備えた無機絶縁膜14が形成されている。無機絶縁膜14は、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)等の無機絶縁材料で形成されており、開口部の位置に対応するマスクを介したエッチング等の公知の方法で形成することができる。本実施形態では、SiOを用いて形成する。
【0037】
無機絶縁膜14の上には、同じく配線22を露出する開口部(開口部)16Aを備えた平坦化層(有機絶縁層)16が形成されている。平坦化膜16は素子層11に形成される各構成要素に起因する凹凸を解消し、有機EL素子を形成するのに適した平坦な面を実現するために設ける。平坦化層16の形成材料には、硬化性のアクリル樹脂やエポキシ樹脂等の有機絶縁材料が用いることができる。本実施形態では、アクリル樹脂を用いて約3μmの厚みで形成されている。
【0038】
開口部16Aの内部には画素電極20が埋め込まれて形成されている。画素電極20の形成材料には、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物や、金、銀、銅、白金、インジウムなどを挙げることができる。
【0039】
また、平坦化層16の上には、第1隔壁層(無機絶縁層)32が形成されている。第1隔壁層32は開口部16Aに対応する開口部を備えており、該開口部内に画素電極20が露出している。また、第1隔壁層32は、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)等の無機絶縁材料で形成されており、開口部の位置に対応するマスクを介したエッチング等の公知の方法で形成することができる。本実施形態では、SiOを用いて形成する。
【0040】
第1隔壁層32上には、画素電極20の周囲を囲んで底面に第1隔壁層32を露出する第2隔壁層(画素隔壁)34が形成されている。第2隔壁層34は、画素電極20に面する側面の断面形状が順テーパ状に形成されている。そのため、第2隔壁層34で囲まれた空間は、下部よりも上部が広く開口している。第2隔壁層34は、含フッ素樹脂や、表面がCFプラズマ処理により撥液処理された光硬化性のアクリル樹脂やポリイミド樹脂などで形成されている。
【0041】
第2隔壁層34の底面に露出した領域には、画素電極20からの正孔の注入を容易にする電荷移動層として、本発明の特徴部分である正孔注入層40Aが形成されている。正孔注入層40Aについては、後に詳述する。
【0042】
正孔注入層40Aの上には、発光層40Bが形成されている。発光層40Bの形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料を好適に用いることができる。このような材料としては、ポリフルオレン(PF)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフェニレン(PP)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン、ポリジアルキルフルオレン(PDAF)、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール(PFBT)、ポリアルキルチオフェン(PAT)や、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシランなどの各誘導体を例示することができる。また、これらの発光材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。本実施形態では、ポリフルオレン系の発光材料であるADS106RE(American Dye Source社製、商品名)を用いた。
【0043】
また、正孔注入層40Aと発光層40Bとの間に、発光層での発光効率を向上させる機能を備えたインターレイヤ層を形成することとしても良い。インターレイヤ層の形成材料には、例えばアミン系の導電性高分子を用いることができ、正孔注入層40Aや発光層40Bと同様の方法を用いて形成することができる。インターレイヤ層を設けると、正孔注入層40Aと発光層40Bとの界面での発光層の失活を防止でき、発光効率を上げ有機EL装置を長寿命化することができる。
【0044】
発光層40Bの上には、第2隔壁層34の頂面、側壁を覆って表面全面に共通電極60が形成されている。共通電極60は、ITO等の透明導電性材料を用いて形成される。または、カルシウム等の仕事関数の低い金属材料を光が透過するほどの薄膜として形成することとしても良く、更にはこれらが積層することとしても良い。
【0045】
このような有機EL装置1では、開口部16Aがサブ画素Xと平面的に重なる領域に配置おり隔壁30で覆われていないため、画素開口率を高めた高品質な有機EL装置1となっている。
【0046】
次に、正孔注入層40Aについて説明する。正孔注入層は、一般に画素電極(陽極)と発光層との間に設けられ、画素電極と発光層との最高被占軌道(Highest Occupied Molecular Orbital:HOMO)または価電帯のエネルギー準位の差や、キャリア移動度の差に起因して正孔注入が良好に行われない、いわゆる正孔注入障壁を緩和するために形成される。そのため通常の正孔注入層は、陽極から発光層への正孔注入が良好に行われるかどうか、すなわち正孔注入性が良いかどうかが求められるため、主に陽極から陰極へ向かう方向の導電性のみが問題となっていた。
【0047】
本実施形態の正孔注入層40Aでは、通常存在するような少なくともサブ画素Xの全面を覆ってサブ画素Xと重なる画素電極が存在しないため、面方向への導通を正孔注入層40Aが行う。そのため、発光を良好に行うために、正孔注入層40Aは以下のような物性を備えている。
【0048】
すなわち、良好な発光を行うためには、正孔注入層40Aにおいて画素電極20から正孔注入層40Aの周縁部にまで良好な導通を行わなければならない。正孔注入層40Aを電流が流れた際には、正孔注入層40Aが備える電気抵抗によって電圧が降下するが、少なくとも、画素電極20から正孔注入層40Aの周縁部に至るまでの電圧降下が使用に支障ない程度であれば良い。
【0049】
例えば、画素電極20の開口部16A上端部における電圧をV、任意の正孔注入層40Aの点における電圧をVとした場合、(V−V)/V×100で表される電圧降下率を求めることができる。この電圧降下率が、設計によって設定される許容電圧降下率よりも小さい正孔注入層40Aであれば、使用可能と判断できる。本実施形態の有機EL装置1を表示装置とする場合には、例えば許容電圧降下率を1%と設定しておくと、支障なく使用可能となる。
【0050】
電圧降下の値は実測しても良いが、画素形状の設計値と、成膜する正孔注入層40Aのシート抵抗値を用いてオームの法則を適用することで算出する値を用いて近似することとしても良い。正孔注入層40Aのシート抵抗値は、正孔注入層40Aの形成材料の体積抵抗値と、正孔注入相40Aの膜厚と、を変更することで制御可能である。
【0051】
正孔注入層40Aの形成材料は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルフォン酸(PSS)との混合物(PEDOT/PSS)が好ましく、中でも導電性の高いものが好適に用いられる。このような形成材料としては、例えば、体積抵抗値が0.1Ω・cmであるバイトロンP HC V4(H.C.シュタルク製、商品名)を好適に用いることができる。本実施形態では、このバイトロンP HC V4を用いて正孔注入層40Aを形成する。
【0052】
また、正孔注入層40AをPEDOT/PSSを用いて形成する場合には、正孔注入層の形成材料を溶解または分散する溶媒の種類を変えて、抵抗値、仕事関数などの電気特性を最適化することも可能である。具体的には、PEDOT/PSSの機能液の溶媒に、水と混合することで前記導電性材料の抵抗値を下げる性質を有する有機物を混ぜ、該有機物と水との混合溶媒を用いることとしても良い。
【0053】
PEDOT及びPSSはいずれもが水に分散可能であるため、両者を水単独に分散させた水分散液を用いて塗布を行うことが可能である。しかし、PEDOT/PSSには、溶媒として水単独を用いるよりも、水とプロトン性極性溶媒であるジエチレングリコール(DEG)との混合溶媒を用いた場合に、形成されるPEDOT/PSSの高分子層の抵抗値が下がり、導電しやすくなるという性質があることが報告されている(例えば、Chem.Mater.,18(18),4354−4360,2006)。
【0054】
このような傾向は、混合溶媒に含まれる有機物の種類や割合により変化するため、混合比や溶媒の種類を変えることで電気特性を最適化することができる。例えば、公知文献(森雄作、「有機エレクトロニクスの最深技術動向、レーザプリンタで作るプラスチックエレクトロニクス」、電子材料、工業調査会、2007年7月)に記載されているように、DEGのほかにも、エチレングリコール(EG)、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトールのように、DEGと同じく一分子内に複数の水酸基(−OH基)を備える有機物や、ジメチルスルホキシドのように強い溶媒和を行う極性溶媒を選択することができ、これらの有機物に適した混合比とすることでPEDOT/PSSの抵抗値を下げることが可能となる。
【0055】
次いで、図4および図5を用い、有機EL装置1の製造方法を説明する。有機EL素子は、有機機能層の形成材料に低分子材料を用いるか、又は高分子材料を用いるかによってその製造方法が異なる。低分子材料の場合には、剛直な骨格を有する分子が多く、有機溶媒に対する溶解性が低いものが多い。そのため、例えば真空蒸着法のような気相反応が用いられる。一方で、高分子材料の場合には、有機溶媒に対する溶解性が比較的高いものが多い。そのため、有機機能層の形成材料を含む液状体(機能液)を所定の位置に塗布・配置し、溶媒を蒸発させることで所望の形成材料の膜を成膜する、湿式塗布法が用いられる。本実施形態では、有機機能層の形成材料に高分子材料を用い、湿式塗布法のうちの有効な手段の1つである液滴吐出法、中でも有用なインクジェット法を用いる。なお、以下の製造方法に挙げる各処理条件は一例であり、これに限定するものではない。
【0056】
まず図4(a)に示すように、従来公知の方法を用いて基板本体10上に、素子層12、電極22、給電線103を形成し、更に、電極22を底部に露出する開口部を備える無機絶縁膜14を形成する。
【0057】
次いで図4(b)に示すように、無機絶縁膜14上に、形成材料としてアクリル樹脂を用いた平坦化層16を形成する。平坦化層16には、無機絶縁膜14の開口部と平面的に重なる位置に開口部16Aを設ける。開口部16Aは、該開口部の位置に対応するマスクを介したエッチング等の公知の方法で形成することができる。
【0058】
次いで図4(c)に示すように、平坦化層16上に、開口部16Aを露出する開口部を備えた第1隔壁層32を形成する。第1隔壁層32は開口部16Aの上端近傍にまで延在して形成される。
【0059】
次いで図4(d)に示すように、第1隔壁層32の上に樹脂材料を用いて第2隔壁層34を形成する。第2隔壁層34で囲まれる領域の底面には、開口部16Aと重なる領域を除き、平坦化層16上に形成された第1隔壁層32が略全面に配置されている。
【0060】
第2隔壁層34を形成した後に、全体をOガス下でプラズマ処理を行い、次いで、CFガス下でプラズマ処理を行う。まずOプラズマ処理により、開口部16Aの側壁、開口部16Aの底面に露出する電極22、第1隔壁層32および第2隔壁層34の表面の不純物が除去されて親液化される。次いで行われるCFプラズマ処理により、開口部16Aの側壁と第2隔壁層34の表面が撥液化される。CFプラズマ処理では有機物が撥液化されるため、樹脂材料で構成された開口部16Aの側壁と第2隔壁層34の表面とを同時に撥液化することができる。
【0061】
次いで図5(a)に示すように、開口部16A内に液滴吐出ヘッド301を用いて導電性材料を含む機能液L1を塗布し、乾燥および焼成することにより、開口部16A内に埋め込まれた画素電極20を形成する。開口部16Aの底面に露出した電極22の表面は親液処理されており、且つ、開口部16Aの側壁が撥液処理されているため、機能液L1が開口部16Aの周囲にぬれ広がらず確実な塗りわけが可能となる。
【0062】
本実施形態においては、機能液L1が含む画素電極20の形成材料には金属材料を用いる。金属材料は、例えば金、銀、銅、白金、インジウム及びITOうちのいずれか、及びこれらの酸化物であり、機能液L1はこれらの金属微粒子を分散媒に分散させた分散液である。これらの金属微粒子は、分散性を向上させるため、有機物などをコーティング剤として用い表面をコーティングして使うこともできる。
【0063】
金属微粒子の粒子径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、液滴吐出ヘッド301のノズル325に目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと、金属微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなるため、コーティング剤由来の夾雑物が残留し品質が低下する懸念が大きくなる。機能液L1の分散媒としては、上記の金属微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。
【0064】
次いで図5(b)に示すように、液滴吐出ヘッド301から、まず、正孔注入層40Aの形成材料を含む機能液L2を塗布し、乾燥および焼成することにより、所定のシート抵抗を備える正孔注入層40Aを形成する。塗布時にこれらを溶かしておく溶媒としては、水、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリノン等の極性溶媒を例示することができる。第1隔壁層32の表面は親液処理されているため機能液L2は良好に濡れ広がり、確実に正孔注入層40Aを形成することができる。また、第2隔壁層34の表面が撥液処理されているため、第2隔壁層34の頭頂部に機能液L2が留まらず、確実な塗りわけが可能となる。
【0065】
次いで発光層40Bの形成材料を含む機能液L3を塗布し、乾燥およびアニール処理して、正孔注入層40Aの上に発光層40Bを形成する。発光層40Bの形成材料を含む機能液の溶媒には、水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、2,3−ジヒドロベンゾフラン、等が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであっても良い。また、これらの溶媒にシクロヘキシルベンゼン等を適宜加えて粘度を調整しても構わない。第2隔壁層34の頭頂部は撥液処理されているため第2隔壁層34の頭頂部に機能液が留まらず、確実に塗りわけがなされる。
【0066】
これら正孔注入層40A、発光層40Bの形成においては、予め開口部16Aを画素電極20で埋没させてあるため、基板10L上には開口部16Aの形状に起因する凹部が無く、膜厚ムラの無い良好な薄膜を形成することができる。
【0067】
次いで図5(c)に示すように、真空蒸着法にて基板10Lの上面全面に共通電極60を形成する。形成される共通電極60は、補助配線50と接して導通することで全体として陰極として機能する。以上のようにして製造を行って有機EL素子70を形成し、有機EL装置1が完成する。
【0068】
以上のような構成の有機EL装置の製造方法によれば、開口部を発光素子70の有効表示領域と平面的に重ねた配置としても、開口部16Aの上部に形成される発光層40に膜厚ムラが生じず、且つ良好な発光を維持することができるため、画素開口率を上げた良好な有機EL装置1を製造することができる。
【0069】
また、本実施形態では、撥液処理前に親液処理をすることとしている。そのため、開口部16Aの底部に露出する配線22を親液化することができ、開口部16A内部に機能液L1を良好に配置し、確実な塗りわけが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、撥液処理前に無機材料を用いて第1隔壁層32を形成し、有機材料を用いて第2隔壁層34を形成している。更に、正孔注入層40Aを形成する工程では、正孔注入層40Aの形成材料を含む機能液L2を塗布することとしている。そのため、撥液処理工程を行うことで開口部16A内と第2隔壁層34とを同時に撥液処理することができ、形成される親撥液性を利用して正孔注入層40Aの形成材料を含む機能液L2を良好に塗布することができる。そのため撥液処理の工程を共通化し、工程の簡略化が可能となる。
【0071】
なお、本実施形態においては、機能液L1が含む導電性材料に金属材料を用いることとしたが、導電性高分子を用いることとしても構わない。その場合には、図6に示すように、あらかじめ配線22の表面に画素電極20を形成しておき、配線22の形成材料から導電性高分子による埋め込み部(導電ポスト)28への正孔注入を促し、良好な発光が起こるようにすることが望ましい。
【0072】
[電子機器]
次に、本発明の電子機器の実施形態について説明する。図7は、本発明の有機EL装置を用いた電子機器の一例を示す斜視図である。図7に示す携帯電話1300は、本発明の有機EL装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。これにより、本発明の有機EL装置により構成された表示品質に優れる表示部を具備した携帯電話1300を提供することができる。
【0073】
上記各実施の形態の有機EL装置は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、プロジェクタ、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、テレビジョン受像機、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等々の画像表示手段として好適に用いることができる。かかる構成とすることで、表示品質が高く、信頼性に優れた表示部を備えた電子機器を提供できる。
【0074】
更には、上記各実施の形態の有機EL装置をラインヘッドとして用いることができ、該ラインヘッドを光源として備えた画像形成装置(光プリンタ)として好適に用いることができる。このようにすると、輝度ムラが無く露光不良の生じ難い光プリンタとすることができる。
【0075】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】液滴吐出装置に備わる液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図2】本実施形態に係る有機EL装置の配線構造を示す模式図である。
【図3】本実施形態に係る有機EL装置が備えるサブ画素周辺の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示す工程図である。
【図5】本発明の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示す工程図である。
【図6】本実施形態に係る有機EL装置の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の有機EL装置を備える電子機器を示す概略図である。
【符号の説明】
【0077】
1…有機エレクトロルミネッセンス装置、10…基板本体(基板)、16…平坦化層(有機絶縁層)、16A…開口部、20…画素電極(導電ポスト)、22…配線(導通部)、28…埋め込み部(導電ポスト)、32…第1隔壁層(無機絶縁層)、34…第2隔壁層(画素隔壁)、40A…正孔注入層、40B…発光層、70…発光素子、L,L1,L2,L3…機能液、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極に挟持された、発光層を含む有機機能層を有する複数の発光素子が基板上に配置され、
前記発光素子が、前記基板上に設けられた有機絶縁層が有する開口部を介して、前記開口部の底面に露出する導通部と接続され、
前記開口部が前記発光素子の有効表示領域と平面的に重なって配置される有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法であって、
少なくとも前記開口部の内部に撥液処理を施す工程と、
液滴吐出法を用いて、前記開口部に導電性材料が溶媒に溶解または分散した機能液を塗布し、前記開口部内に前記導通部と接続する導電ポストを形成する工程と、
前記導電ポストを覆って前記発光素子の形成領域に、前記導電ポストから前記発光層への正孔の注入を促進する正孔注入層を形成する工程と、を備え、
前記正孔注入層は、前記導電ポストの上端における電位と、前記正孔注入層の周縁部における電位との差から求められる電圧降下率が、予め定めた許容電圧降下率よりも小さくなるように電気抵抗を制御することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項2】
前記撥液処理を施す工程に先立って、前記基板を親液処理する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項3】
前記撥液処理を施す工程に先立って、前記有機絶縁層上に、前記開口部を露出する無機絶縁層を形成する工程と、
前記発光素子の形成領域の周囲を囲み、有機材料を用いて画素隔壁を形成する工程を備え、
前記撥液処理を施す工程では、前記基板の上面全面に撥液処理を行い、
前記正孔注入層を形成する工程では、前記正孔注入層の形成材料が溶媒に溶解または分散した機能液を塗布することを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項4】
前記導電性材料は、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物であって、前記液状体に含まれる前記溶媒は、水および水と混合することで前記導電性材料の抵抗値を下げる性質を有する有機物の混合溶媒であり、
前記混合溶媒の混合比を変更して前記導電性材料の抵抗値を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−211859(P2009−211859A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51698(P2008−51698)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】