説明

有機エレクトロルミネッセント素子およびその製造方法

【課題】均一な発光特性で安定に動作し、かつ寿命特性に優れた有機エレクトロルミネッセント素子を提供する。
【解決手段】少なくとも一組の電極と、前記電極間に形成された複数の機能層とを具備し、前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、少なくとも膜厚30nm以上の遷移金属酸化物層とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント素子およびその製造方法にかかり、特に携帯電話用のディスプレイや表示素子、各種光源などに用いられ、低輝度から光源用途等の高輝度まで幅広い輝度範囲で駆動される電界発光素子である有機エレクトロルミネッセント素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセント素子は固体蛍光性物質の電界発光現象を利用した発光デバイスであり、小型のディスプレイとして一部で実用化されている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセント素子は発光層に用いられる材料によって、いくつかのグループに分類することが出来る。代表的なもののひとつは発光層に低分子量の有機化合物を用いる低分子有機エレクトロルミネッセント素子で、主に真空蒸着を用いて作製される。そして今一つは発光層に高分子化合物を用いる高分子有機エレクトロルミネッセント素子である。
【0004】
高分子有機エレクトロルミネッセント素子は各機能層を構成する材料を溶解した溶液を用いることでスピンコート法やインクジェット法、印刷法等による成膜が可能であり、その簡便なプロセスから低コスト化や大面積化が期待できる技術として注目されている。
【0005】
典型的な高分子有機エレクトロルミネッセント素子は陽極および陰極の間に電荷注入層、発光層等の複数の機能層を積層することで作製される。以下に代表的な高分子有機エレクトロルミネッセント素子の構成およびその作製手順を説明する。
【0006】
例えば図22に示すように、まず陽極111としてのITO(インジウム錫酸化物)を成膜したガラス基板100上に電荷注入層126としてのPEDOT:PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸の混合物:以下PEDOTと記載する)薄膜をスピンコートなどによって成膜する。PEDOTは電荷注入層として事実上の標準となっている材料であり、陽極側に配置されることでホール注入層として機能する。
【0007】
PEDOT層の上に発光層112としてポリフェニレンビニレン(以下PPVと表す)およびその誘導体、またはポリフルオレンおよびそれらの誘導体がスピンコート法などによって成膜される。そしてこれら発光層上に真空蒸着によって陰極としての金属電極113が成膜され素子が完成する。
【0008】
このように高分子有機エレクトロルミネッセント素子は簡易なプロセスで作製することが出来るという優れた特徴を備えており、様々な用途への応用が期待されているが、十分に大きな発光強度を得ることが出来ない点、および長時間駆動に際しては、寿命が十分でない点が改善すべき課題となっている。
特に、露光ヘッドにおいて露光用光源として用いられる場合には、高輝度特性が求められており、一方表示装置用の光源として用いられる場合には、長寿命化が求められる。画素領域、画素面積および画素内の発光特性の制御性においても、更なる制御性の向上を求めて鋭意研究がなされている。
【0009】
高分子有機エレクトロルミネッセント素子の発光強度の低下、すなわち劣化は通電時間と素子を流れた電流の積に比例して進行するが、その詳細については未だ明らかになっておらず鋭意研究が進められているところである。
【0010】
発光強度の低下の原因については様々な推測がなされているが、PEDOTの劣化はその主なものの一つとして考えられている。PEDOTは前述したようにポリスチレンスルホン酸とポリチオフェンという二つの高分子物質の混合物であって、前者はイオン性、後者は高分子鎖に局所的な極性がある。このような電荷の異方性に起因するクーロン相互作用により両者は緩やかな結合をし、それにより優れた電荷注入特性を発揮している。
【0011】
PEDOTが優れた特性を発揮する為には両者の密な相互作用が不可欠であるが、一般に高分子物質の混合物は溶媒に対する微妙な溶解性の違いにより相分離を起こしやすいものである。これはPEDOTについても例外ではない(。相分離を生じるということは2つの高分子の緩やかな結合は比較的容易に外れてしまうということを意味しており、PEDOTが有機エレクトロルミネッセント素子中にあって駆動される際に不安定である可能性や、相分離の結果、結合に寄与しなかった成分、特にイオン性の成分が通電に伴う電場によって拡散し、他の機能層に望ましくない作用を及ぼす可能性があることを示している。このようにPEDOTは優れた電荷注入特性を持っているが、決して安定な物質であるとは言えない。
【0012】
本発明者らは種々の実験の結果から、上述したようなPEDOTに関連する懸念に対し、PEDOTに代えて、酸化モリブデンMoOを形成することにより、良好な注入特性を得ることができることを提案している(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−203340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記構造では、膜厚20nm程度のMoO膜を用いており、この上層に発光層などの機能層を形成している。
従来より、有機半導体は移動度が小さいために,100nm程度の薄膜にしないと、有機エレクトロルミネッセント素子においては、良好な発光を得ることができないとされてきた。
このような薄い発光層を用いる場合、クリーン度の高い部屋に設置された、真空チャンバーでデバイスを作成しても、微細なパーティクルが画素上に存在するとそれがすぐに欠陥となりやすいということが、量産化を阻む深刻な問題となっている。
特にITOからなる透光性電極上には、ITO自体の突起や、付着したダストなどが存在し、これが良品率を低下させる大きな要因となっている。
【0014】
さらにまた、表面にレジストの残渣が残留しこれが、非発光領域を形成することになる場合もある。
以上のように、透光性電極自体の表面平滑性の低下、透光性電極への付着物に起因する表面平滑性の低下など、さまざまな原因により、非発光領域を形成することがあり、電流密度を増大しても発光強度の増大を得ることができない領域に入る。このため、得られる輝度に限界があり、それ以上高輝度を得ることが出来ず、十分に満足できる輝度レベルに到達するのは極めて困難であり、寿命についても十分ではなかった。
このような状況の中で、特に、露光ヘッドなどにおいて露光用光源として用いられる場合には、高輝度特性が求められており、更なる高輝度化を求めて鋭意研究がなされている。
【0015】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、均一な発光特性で安定に動作し、かつ寿命特性に優れた有機エレクトロルミネッセント素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、少なくとも一組の電極と、前記電極間に形成された複数の機能層とを具備し、前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、少なくとも膜厚30nm以上の遷移金属酸化物層とを含むことを特徴とする。
【0017】
従来遷移金属酸化物のひとつであるMoOを薄く形成することにより、PEDOTよりも良好な注入特性を得ることができる点については、すでに本発明者等が前述の特許文献1で提案しているが、せいぜい20nm以下である必要があるとされていた。このような状況の中で種々の実験を行った結果、遷移金属酸化物の厚み特にMoOの膜厚は素子特性に対して非常に鈍感であり、厚膜化しても良好なホール注入特性を維持することができることを発見した。そこで本発明者らは、この遷移金属酸化物の膜厚を30nm以上としたとき、画素ショートの改善を図ることができることがわかった。この構成によれば、少なくとも膜厚30nm以上の遷移金属酸化物層を含むことにより、ITOなどの透光性電極のパターニング時にレジストが残留していたり、ITO上にパーティクルが付着したりした場合にも、膜厚30nm以上の遷移金属酸化物層を形成した上に、この上層に形成される発光機能を有した層は膜厚分布を生じることなく、均一に形成される。したがって、非発光領域を形成したりすることもなく、また画素ショートを生じたりすることもなく、均一な発光機能を有した層を形成することができ、良好な発光スペクトルを得ることができる。また、MoOのような比抵抗の小さい遷移金属酸化物を用いることにより、厚膜化しても、大きな電圧降下を生じることなく発光機能を有する層に電界を与えることができる。ここで遷移金属酸化物としては、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステンなどが適用可能であるが、酸化モリブデン(MO)はMOに限定されることなく、価数の異なるものも有効である。酸化バナジウム、酸化タングステンについても価数の異なるものも有効である。また、共蒸着により形成した複数の元素を含む酸化物も適用可能である。
【0018】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記遷移金属酸化物層が、積層方向に沿った比抵抗が、面方向に沿った比抵抗に比べて小さくなるように成膜された膜であるものを含む。
この構成により、横方向すなわち面方向の比抵抗が大きいためにクロストークを防止することができる。従って、パターニングすることなく一体的に形成してもクロストークを防ぐことが出来ることから製造が容易となる。また、遷移金属酸化物層によって少なくとも有機エレクトロルミネッセント素子形成領域となる下地全体が覆われることになり、安定で信頼性の高い構造を形成することが可能となる。縦方向すなわち積層方向に沿った比抵抗が小さいため、電圧降下が低減される。本発明者らは種々の実験の結果、遷移金属酸化物層を発光機能を有する層と電極との間に介在させたときに特性が向上することを発見した。本発明は、この点に着目してなされたものである。
【0019】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記遷移金属酸化物層は比抵抗が100000オーム/cm以上であるものを含む。
この構成により、画素毎に遷移金属酸化物層を分割形成することなく一体的に形成してもクロストークの発生もない。
【0020】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記少なくとも一組の電極のうちの少なくとも一方が、主としてインジウムスズ酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)からなるものを含む。
【0021】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記少なくとも一組の電極のうちの少なくとも一方が、透光性基板表面に形成されており、前記電極上に前記遷移金属酸化物を形成すると共にその上層に発光機能を有した層を配置したものを含む。
この構成により、基板側から光出射を行ういわゆるボトムエミッションタイプの有機エレクトロルミネッセント素子の高輝度化および長寿命化が可能となる。この遷移金属酸化物層は正孔注入層であるのが望ましい。
【0022】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記遷移金属酸化物層と前記発光機能を有した層との間にバッファ層を含む。
【0023】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記バッファ層が電子ブロック層である。
【0024】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記バッファ層は高分子化合物を含む。
【0025】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記電極と前記発光機能を有した層との間に前記画素規制層を備え、光出射領域を規定するようにしたものを含む。
この構成により、画素規制層の段差が十分に厚い遷移金属酸化物層によって緩和され、この上層に形成される発光機能を有した層の膜厚をより均一化することが可能となる。また遷移金属酸化物層の膜厚を本発明のように30nm以上と厚くすることにより、発光プロファイルが良好となる。ただし、遷移金属酸化物層を厚く形成する場合には、MoOのように比抵抗の余り大きくない材料を用いる必要がある。
【0026】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層が絶縁膜であるものを含む。
画素規制層としては遮光膜で構成する方法と、絶縁膜で構成する方法とがあるが、絶縁膜を用いることにより、画素ショートを防止することができる。
【0027】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層が酸化シリコン膜であるものを含む。
【0028】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層が窒化シリコン膜であるものを含む。
【0029】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層がフォトレジスト材料で構成されたものを含む。
フォトレジスト材料を用いることにより、フォトリソグラフィを用いて容易に所望の厚さの画素規制層を形成することができる。
【0030】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層表面全体を遷移金属酸化物層で被覆され、この上層に発光機能を有した層が形成されたものを含む。
この構成により遷移金属酸化物層が画素規制層上に形成され、前記光出射領域から前記画素規制層上までを覆っているため、発光機能を有した層はより平滑な表面に形成されることになり、均一な膜厚分布を得ることができ、より長寿命化を図ることが可能となる。
【0031】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記遷移金属酸化物層が前記画素規制層の下層に形成され、前記遷移金属酸化物層が光出射領域でのみ前記機能層と当接したものを含む。
この構成により、画素規制層の下地を平滑化することができ、その分画素規制層の膜厚を薄くしても、十分な絶縁性あるいは遮光性を維持することができることになり、画素規制層に起因する段差の低減を図ることが可能となる結果、発光機能を有した層の膜厚分布をより均一化することが可能となる。
【0032】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記遷移金属酸化物層が酸化モリブデン(MoO層などのMoO層)であるものを含む。
この構成により、縦方向の比抵抗の増大を招くことなく表面を平坦化、平滑化することが可能となる。
【0033】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記MoO層の膜厚は40nm以上であるものを含む。
この構成により、MoO層のような遷移金属酸化物層の場合縦方向の比抵抗が十分に小さいため、40nmと厚くしてもショートの発生を抑制することが可能となる。
【0034】
さらにまた、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層の膜厚は20nm以上100nm以下であるものを含む。
この構成により、遷移金属酸化物層を厚く形成することで、画素規制層が上層にある場合にも下層にある場合にも発光層を形成する際の下地表面としてはより平坦化、平滑化をはかることができることから、画素規制層の膜厚は、他の要因を考慮して広範囲から選択することが可能となる。
【0035】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層が少なくとも1種の高分子発光材料を含むものを含む。
【0036】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層がフルオレン環を含む高分子化合物を含むものを含む。
【0037】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層が下記一般式(I)で表されるポリフルオレンおよびその誘導体(R1、R2はそれぞれ置換基を表す)を含むことを特徴とする。
【化3】

【0038】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層がフェニレンビニレン基を含むものを含む。
【0039】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層が下記一般式(II)で表されるポリフェニレンビニレンおよびその誘導体(R3、R4はそれぞれ置換基を表す)を含むことを特徴とする。
【化4】

【0040】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記機能層は、ホール注入側に配置された電荷注入層と、バッファ層と、発光機能を有した層とを順次積層して構成されたものを含む。
ここでバッファ層としては、例えば電荷ブロック層のような機能を持たせた層を介在させるのが望ましい。またこのMoO層はホール注入層としても作用する。
【0041】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、樹木状多分岐構造をもつ少なくとも1種類の高分子物質からなる発光機能を有した層と、少なくとも1種類の無機物からなる電荷注入層とを含む。
【0042】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層は、発光性の構造単位を中心に有する樹木状多分岐高分子構造体からなる。
【0043】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層は、発光性の構造単位を中心に有する樹木状多分岐低分子構造体からなる。
【0044】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記一組の電極のうちの一方の電極である陽極は透光性基板上に形成されており、前記陽極上に形成された遷移金属酸化物層としてのMoO層と、ホール注入層と、前記発光機能を有した層と、前記ホール注入層に対向するように、前記発光機能を有した層の上に形成された電子注入層と、前記電子注入層上に配設され前記一組の電極のうち他方の電極である陰極とが順次積層形成されたものを含む。
【0045】
また、本発明では、上記有機エレクトロルミネッセント素子が二次元に配列形成され、表示装置を構成している。
【0046】
また、本発明では、上記有機エレクトロルミネッセント素子が列状に配列され発光部を構成して、露光装置を構成している。
【0047】
また、本発明では、一組の電極の一方の電極の形成された基板表面に膜厚30nm以上の遷移金属酸化物層を形成する工程と、この上に発光機能を有した層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
この構成により、遷移金属酸化物層の膜厚が大きく形成されるため、発光機能を有した層の形成に際し、表面の平坦化、平滑化をはかることができ、膜厚を均一に形成することができる。
【0048】
また、本発明では、上記有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法において、遷移金属酸化物層の形成に先立ち、画素規制層を形成する工程を含み、前記遷移金属酸化物層上に発光機能を有した層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
この構成により、画素規制層に起因する段差を、遷移金属酸化物層によってより平坦化された表面に発光機能を有した層が形成されることになり、より膜厚分布の均一な発光機能を有した層を形成することができる。
【0049】
また、本発明では、上記有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法において、遷移金属酸化物層の形成後に、画素規制層を形成する工程を含み、前記画素規制層上に発光機能を有した層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
この構成により、画素規制層が、遷移金属酸化物層によってより平坦化された表面に形成されることになり、より膜厚分布の均一な発光機能を有した層を形成することができる。
【0050】
なおここで、機能層は少なくとも1種類の高分子物質からなる発光機能を有した層と、少なくとも1種類のバッファ層と、少なくとも1種類の無機物からなる電荷注入層とを含むようにしてもよい。
この構成によれば、電荷注入層として無機物を用いることにより、発光強度が極めて大きく特性の安定な有機エレクトロルミネッセント素子を得ることができる。これは、2種類の高分子材料のクーロン相互作用による緩やかな結合が外れ易いPEDOTのように電流密度の増大に際しても、不安定となったりすることなく、安定な特性を維持することができ、発光強度を増大することができるようになったためと考えられる。また、少なくとも1種類のバッファ層を用いることで、例えば電子の陽極への抜けを防止することができ、発光に寄与することなく電流が流れるのを防止することができる。このように少なくとも1種類の無機物からなる電荷注入層を備えることで、広範囲の電流密度に亘って素子の発光強度および、発光効率を高レベルに維持することができ、また、寿命も向上する。従って、高輝度に至るまで、幅広い輝度範囲にわたって安定に動作し、かつ寿命特性に優れた有機エレクトロルミネッセント素子を実現することができる。ここで、発光層は共役系高分子であるのが望ましい。
【0051】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記発光機能を有した層がフルオレン環を含む高分子化合物を含むものを含む。ここでフルオレン環を含む高分子化合物とは、フルオレン環に所望の基が結合してポリマーを構成しているものをいう。種々の基を結合した高分子化合物が市販されているが、詳細はわからないものが多いためここでは説明を省略する。
【0052】
なお、発光機能を有した層とは、単に発光機能のみを有した層に限定されるものではなく、電荷輸送機能など、他の機能を有しているものを含むものとする。なお以下実施の形態では発光層と簡略化する。
【発明の効果】
【0053】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子によれば、リークの発生もなく、安定に動作し、かつ寿命特性に優れているため、表示用途の温和な駆動条件域から、強電界、大電流、高輝度という厳しい条件を要する露光装置などの駆動条件下に至るまで安定した電荷注入と発光効率の維持を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0055】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における画像形成装置の露光部に設けられる光ヘッドに用いられる有機エレクトロルミネッセント素子の構成を示す断面概要図である。このエレクトロルミネッセント素子は、透光性のガラス基板100上に第1の電極111としてITO層からなる陽極と第2の電極113としての陰極と、これら電極間に形成された機能層とを備え、この機能層は、有機半導体高分子層からなる発光機能を有した層すなわち発光層112と、前記電極と前記発光層112との間に遷移金属酸化物層115としての膜厚40nmのMoO層と、この上層に膜厚50nmの窒化シリコン膜からなる画素規制層114とを備えたもので、遷移金属酸化物層115としてのMoO層の膜厚を従来では考えられなかった厚さである膜厚40nmとすることにより、厚膜のMoO層によって表面の平坦化および平滑化をはかった上で、良好に発光領域の面積を規制するように構成したことを特徴とする。また、MoOのような遷移金属酸化物を成膜する際、この遷移金属酸化物層115は真空蒸着法によって成膜されるが、成膜に際し、蒸発源の組成比、チャンバー内の圧力、温度を制御し、比抵抗が、比抵抗が10MΩcm以上になるように成膜する。現在の成膜条件では蒸発源として、99.999%のMoO3を蒸発源として用いると、比抵抗が10MΩcm以上になる。これは成膜の際に、成膜条件に応じて結晶構造が変化し、その結果として比抵抗が10MΩcm以上になったものと思われる。
また、成膜条件を調整することにより、積層方向の比抵抗が面方向の比抵抗の3分の1程度となるようにすることもできる。これは成膜の際に、結晶異方性構造が生じ、その結果として積層方向の比抵抗と面方向の比抵抗の差異が生じているものと考えられる。明確には分かっていないが、このように蒸発源の純度などの条件を選ぶことにより、積層方向の比抵抗が、面方向の比抵抗の3分の1程度の遷移金属酸化物を得ることができる。
【0056】
ここでは遷移金属酸化物層115としての厚いMoO層と、陽極である第1の電極111との間にTFBからなる電子ブロック層116を形成している。また第2の電極すなわち陰極113は膜厚3nm程度のバリウム電極113aと、この上層に形成された膜厚150nmのアルミニウム電極113bとで構成される。
【0057】
この構成によれば、画素規制層の下地を平滑化することができ、その分画素規制層の膜厚を薄くしても、十分な絶縁性を維持することができることになり、画素規制層に起因する段差の低減を図ることが可能となる結果、発光機能を有した層の膜厚分布をより均一化することが可能となる。また画素の短絡を生じることもなかった。このときの発光特性を測定した結果を図2に示す。ここで横軸は位置、縦軸は発光強度である。この図から明らかなように矩形の発光スペクトルをもち良好な発光特性を示すことがわかる。ここで画素規制層は絶縁性材料ではなく遮光性材料であってもよい。また遮光性と絶縁性との両方の性質を備えたものであっても光出射領域を良好に規制することができ、画素を規定することが可能となる。
【0058】
ところで、比抵抗は、用いた遷移金属酸化物中に含まれる不純物や酸素欠陥をコントロールすることによって変化させることが出来る。例えば、MoO3を真空蒸着で成膜する場合は、蒸発源として用いるMoO3粉末の純度により変化させることが出来る。例えば、99.999%のMoO3を蒸発源として用いると、比抵抗が10MΩcm以上になるが、99.9%のMoO3を用いると、比抵抗は1MΩcmになる。
スパッタ法にて成膜する場合は、MoO3ターゲット材料の場合は同様に純度が影響し、純度が高い方が抵抗値は高くなる。また、スパッタの場合は、Mo金属をターゲット剤として用い、共存するガスを酸素にするか、窒素にするかで大きく変わる。またそれぞれの分圧を変えると膜の酸素欠陥やイオン化ポテンシャルが変わり、比抵抗もコントロールすることができる。上記の方法はMoO3に限られたものではなく他の元素、例えばタングステンやバナジウムを用いた時も同様である。
比抵抗としては、1MΩから100MΩとするのが、望ましい。1MΩに満たないと、クロストークを防止することが難しい、一方、100MΩを越えると、電圧降下の防止の両方の条件を満たすことが困難となる。
【0059】
(スピンコートによる実験)
次にこの有機エレクトロルミネッセント素子においてMoO層の膜厚による特性変化を観察すべく膜厚を変化させて試料を作成した。なおここでは発光層112の形成をスピンコートによって行った。
各試料については、透光性のガラス基板100表面にスパッタリング法によりITO膜を形成し、第1の電極111を形成した後、MoO層115を真空蒸着法により所望の膜厚となるように成膜し、高密度プラズマを用いたCVD法により窒化シリコン膜を形成し、フォトリソグラフィにより開口し画素規制層114を形成する。そして電子ブロック層116を成膜し、パターニングした後、発光層112を形成する。発光層としては高分子層をスピンコートによって形成するが、材料については後述する。
【0060】
以上のようにして、MoOの膜厚を変化させて100素子(画素)づつ作成し、10000cd/mの輝度一定の条件下で100素子の寿命測定を行い、寿命のバラツキを評価した。
この場合の寿命とは、素子に投入する電流値が初期値の4倍に到達したところまでの経過時間を寿命と定義した。
【0061】
その結果、図22に示すように第1の電極111上にPEDOT125を使用した試料R101は平均寿命が11hrであり最小値は0.5時間、最大値は18時間であった。試料R106,R110については、平均寿命がそれぞれ9時間、6時間であり最小、最大値は試料R101と同様なバラツキを示した。
一方、遷移金属酸化物層115であるMoOを下地層に用いた試料D102は、平均寿命が110hrでありそのバラツキも90hrから120hrの中に入っていた。その他の試料D103−105についても同様な結果が得られた。
【0062】
さらに100素子それぞれに対応する画素中ショートした素子の数を調べた。ショートしたかどうかは、寿命評価にかけて10分以内に発光しなくなり、電流が大きく流れた素子をショートしたと定義した。
【0063】
試料R101−D115についてのショートした画素数を計測し表に記した。
MoO3を用いた素子はPEDOTを用いた試料よりはショート数が少なく、かつ厚膜化するに従ってショートした数が少なくなることはあきらかである。また、図22に示した従来例の素子は画素規制層の厚みが高くなるとショートしやすくなるのに対し、MoOを用いた素子は良好な結果を示すことがわかる。
【0064】
【表1】

【0065】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における画像形成装置の露光部に設けられる光ヘッドの有機エレクトロルミネッセント素子の構成を示す断面概要図である。このエレクトロルミネッセント素子は、前記画素規制層114表面全体を遷移金属酸化物層115としてのMoO層で被覆され、この上層に発光機能を有した層112が形成された点で前記実施の形態1と異なる。他は前記実施の形態と同様に形成されている。
【0066】
この構成によれば、MoO層(115)が画素規制層114上に形成され、前記光出射領域となる領域から前記画素規制層114上までを覆っているため、発光機能を有した層はより平滑な表面に形成されることになり、均一な膜厚分布を得ることができ、より長寿命化を図ることが可能となる。
【0067】
このときの発光特性を測定した結果を図4に示す。ここで横軸は位置、縦軸は発光強度である。この図から明らかなように矩形の発光スペクトルをもち良好な発光特性を示すことがわかる。図2に示した実施の形態1と比較して若干発光スペクトルが急峻になっている。
【0068】
次にこの構造においてMoOの膜厚を変化させて本発明の効果を確認するための実験を行った。本実施の形態ではインクジェット法を用いた。
まず、ITO薄膜からなる第1の電極111の形成されたガラス基板あるいはITO基板上に、ポリイミドを成膜し、レジストを用いてフォトリソ工程を行い、一辺が35μmの画素規制層(バンク)をピッチ42μmにて10ドット作製した。ポリイミドのバンク厚は2μmであった。
【0069】
このようにして得られた画素規制層114を設けたITO薄膜からなる第1の電極111上にインクジェット法にてPEDOTを約70nmの厚さになるように塗布し、ベークしたあと、電子ブロック層をインクジェット法にて10nm塗布し、ベークした。引き続き高分子型赤色発光材料を同じくインクジェット法にて塗布、ベークした。更にBaとAlからなる陰極をすべてのドットに共通になるよう抵抗加熱蒸着装置で合計120nmになるように蒸着し、比較例として図22に示したような有機エレクトロルミネッセント素子を形成し試料R201とした。
【0070】
次に、同様の基板を用い、PEDOT層125に代えて、MoOを20nm、40nm、80nm、120nmと厚みを変化させて真空蒸着し、その上に同様にインクジェットを用いて電子ブロック層116、発光層112、陰極113を設け、試料D202−205とした。
得られた試料に直流電圧を負荷し、1ピクセル内の発光分布を高解像度のCCDカメラを用いて測定した。
【0071】
その結果、試料R201では、図23に示したように釣り鐘状の発光プロファイルが得られたのに対し、図6に示したようにMoOを用いた試料では矩形に近い発光プロファイルが得られた。
【0072】
PEDOTで発光プロファイルが釣り鐘型になったのは、PEDOT層、電子ブロック層、発光層にピクセル内の厚みの不均一があったため、結果的に発光効率が変化し、発光プロファイルが変化したものと思われる。一方、MoOを用いたピクセルの発光プロファイルが矩形であったのは膜厚の均一性が向上したものと思われる。
【0073】
次に、これらを初期輝度12000cd/mになるように調整して、寿命試験をかけた。その結果、試料201は、30分で半減したのに対し、MoOを用いた試料は、最大で100hrの半減期を示し厚みの依存性は小さかった。
【0074】
このことは、MoOを電子ブロック層に用いるとインクジェット法を用いた場合に、PEDOTとの差がさらに大きくなることを示している。これは、PEDOTは水分散系の溶液であり、乾燥後も表面は親水的であるのに対し、ITO表面は親水性、バンク材料はポリイミド等の親油的な表面を持っている。その結果、PEDOTをインクジェット法で作製すると液滴がバンクに接する部分がはじかれて、薄くなっておるものと考えられる。
【0075】
さらにPEDOT層の上部に有機溶媒に溶解させた(例えばキシレン、トルエン等)電子ブロック層、発光層をインクジェットノズルから吐出させると、PEDOT上には広がりにくく、バンクに接する部分は広がる等の性質のため、これらの層が均一になっていない。一方、MoO3層の表面は、PEDOT層ほど親水性でないためインクジェット法を用いても、有機溶剤に溶解させた有機層が均一に広がることが確認でき、少なくとも一方がバンクで囲まれたピクセル内の膜厚を均一にするためには非常に効果的であることがわかる。
【0076】
一方、得られた寿命評価の結果、寿命の最大値は、100hr程度であったが、MoOが薄い場合は、寿命途中でショートした素子が多く見られたのに対し、40nm、80nm、120nmの厚みの素子は、ショートした素子は皆無であった。
【0077】
この理由は、MoOが薄い場合はITO表面の微結晶による凹凸、プロセス上のダストの影響等があるのに対し、本発明の厚膜MoOを用いた場合はショートの原因となりうる表面の突起やダストをMoOが覆っており、発光特性の変化を生じさせないためだと推測される。ただし、本当の要因はまだ不明である。しかしながら実験事実から見ると厚膜のMoOを用いた試料は、信頼性が高いことは確認できた。
【0078】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における画像形成装置の露光部に設けられる光ヘッドの構成を示す断面図であり、光源としてのエレクトロルミネッセント素子110およびその周辺を示しており、光検出素子120を構成する各層の上下配置の関係が示されている。図6はその要部の上面図である。このエレクトロルミネッセント素子は、第1の電極111としての陽極と第2の電極113としての陰極と、これら電極間に形成された少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層すなわち発光層112とを備え、前記電極と前記発光機能を有した層との間に遷移金属酸化物層115としての膜厚40nmのMoO3層115と、この上層に膜厚50nmの窒化シリコン膜からなる画素規制層114とを備えたもので、遷移金属酸化物層115としてのMoO層の膜厚を従来では考えられなかった厚さである膜厚40nmとすることにより、厚膜のMoO層によって表面の平坦化および平滑化をはかった上で、良好に発光領域の面積を規制するように構成したことを特徴とする。
【0079】
なおここで画素規制層114としての窒化シリコン膜は高密度プラズマを用いた低温CVD法によって膜厚50nm程度となるように成膜される。そしてフォトリソグラフィによるレジストパターンを形成し、開口形成のためのエッチングを行うが、最初異方性エッチングを行った後、等方性エッチングを行い、エッジの滑らかなパターンを形成する。このときパターンエッジにおける下地とのなす角は3度から10度程度となるようにする。
【0080】
この光ヘッドは、図6に示すように、エレクトロルミネッセント素子110が、基板上に形成された光検出素子120を構成する薄膜トランジスタ(TFT)の上層に積層され、エレクトロルミネッセント素子110の光検出素子120側に位置する第1の電極111としての陽極が光検出素子120の光電変換部全体を覆うように形成されるため、エレクトロルミネッセント素子の第1の電極が、光検出素子の光電変換部全体に対向している。この構成により、第1の電極が光検出素子のゲート電極として有効に作用し、安定した電位であるこの第1の電極の電位によって光検出素子のチャネル特性の制御が確実となり、安定した発光特性をもつ光ヘッドを提供することが可能となる。また発光層を挟んで第1の電極に対向するように設けられる第2の電極113としての陰極が上層側に形成される。
【0081】
また、この光ヘッドでは、光検出素子120の素子領域を構成する多結晶シリコンの島領域121の外縁がエレクトロルミネッセント素子の光出射領域ALEの外側となるように形成されている。このように、段差を形成する結果となる光検出素子120の島領域121すなわちここでは、素子領域ARの外縁がエレクトロルミネッセント素子の光出射領域ALEの外側となるように形成し、エレクトロルミネッセント素子の光出射領域に相当する領域には段差はなく、発光層の下地は平坦面を構成しており、したがって光ヘッドの有効領域となる光出射領域では光ヘッドの発光層が均一に形成される。
【0082】
図10(a)、図10(b)では、本来画素規制層によって電荷の注入が阻止されるべき部分(すなわち本来発光してはならない部分)で発光していることがわかる。この異常な発光部分は、まさに画素規制層の真上であって(図9(a)、図9(b)を参照し、図10(a)、図10(b)と比較することで明白である)、画素規制層を介してリーク電流が流れていることを意味する。これと比較して図9(a)、図9(b)では発光領域は画素規制層によって設けられた開口と完全に一致している。
画素規制層の表面を平滑化した本実施の形態のエレクトロルミネッセント素子によれば、リーク発光もなく明暗比の大きい発光状態を形成することが可能となる。
なお、すでに述べたように、図10(a)、図10(b)に示す有機エレクトロルミネッセント素子の画素規制層の表面平均粗さは5.5nmであり、画素規制層の表面の最大山高さと、最大谷深さの絶対値の和は従来例の20.8nmである。このような条件で作成された有機エレクトロルミネッセント素子を、後に説明する露光装置のような精密機器に採用することは難しい。
露光装置によって形成される個々の画素には極めて高い均一性が要求される。このために発光領域の形状は一定に形成されなければならない。リークのような不安定な状態が発生すると、この要件を満足し得ないのである。この観点から、露光装置のようなアプリケーションにおいては、図9(a)、図9(b)に対応して、画素規制層の表面平均粗さRa≦1.0nm、画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和≦10nm程度の精度が要求される。
しかしながら、例えば照明装置のように、個々の発光領域の形状に精度を要しないようなアプリケーションにおいては、図10(a)、図10(b)に示すような発光状態であっても特に問題にはならない。この場合には画素規制層におけるリークは存在するが、リーク部分における発光輝度は小さなものであり、アプリケーションの使用目的になんら影響を与えず、かつ有機エレクトロルミネッセント素子を破壊に導くようなものでもない。この観点から、照明装置のようなアプリケーションにおいては、図9(a)、図9(b)に対応して画素規制層の表面平均粗さRa≦5.0nm、画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和≦20nm程度の精度を満たせば十分に実用に供することができる。
そしてこの中間に位置するのが、例えばディスプレイに代表される表示装置のようなアプリケーションである。表示装置では中間調(階調)の再現性が重要である。上述してきた画素規制層のリークに起因する発光の有無によって、厳密には各画素の発光輝度は変動する。しかしこの変動範囲が、表示装置の再現可能な輝度範囲(すなわちダイナミックレンジ)における1つの階調ステップ未満であれば、特に問題となることはない。通常の表示装置において、この階調ステップ数は64程度に設定される。この観点から、表示装置のようなアプリケーションにおいては、上述の露光装置と照明機器の中間である、例えば画素規制層の表面平均粗さRa≦2.0nm、画素規制層の最大山高さ:Rpと最大谷深さ:Rvの絶対値の和≦15nm程度の精度を満たせば十分に実用に供することができる。
【0083】
なお、画素規制層を所望の表面状態にするためには、窒化シリコン膜を成膜するプラズマCVD装置において例えば低温下で成膜することや、投入パワーを低く設定し、成膜速度を小さくすることや成膜時の導入ガスであるSiH4とNH3の混合比を変える具体的にはSiH4の割合を高くするなど成膜条件を調整することにより、実現可能である。また、画素規制層を成膜し、パターニングした後あるいはパターニングと同時にプラズマ処理などの表面処理を行い、表面粗さを調整することによっても、容易に実現可能である。また、前記成膜条件は各装置において各々な成膜特性を持ち高温下において成膜速度を大きくし成膜するほうがより平滑な表面状態を形成することもあり、これに限定されるものではない。また、成膜後にプラズマ処理などにより平滑化することも可能である。さらにまた、陽極と画素規制層との間に酸化モリブデンなどの無機酸化物層が形成されている場合には、表面処理を行う際に、プラズマ処理を行っても表面の劣化を生じることなく平滑化することが可能となり、画素規制層の端面も無機酸化物層表面とともに良好に平滑化される。これに対し、画素規制層の下層が高分子層の場合にはプラズマ処理によって劣化を生じる場合もある。
【0084】
なお前記実施の形態では、画素規制層として開口を有する絶縁層として窒化シリコン膜などの絶縁膜を介在させるという方法を用いているが、タングステンなどの遮光性の金属膜、あるいは遮光膜との積層体で構成してもよい。遮光性の金属膜を用いた場合には、発光領域はそのままで光出射領域を光学的に規定することになる。
【0085】
なお、画素規制層を所望の表面状態にするためには、低温下で成膜するなど成膜条件を調整することにより、実現可能である。また、画素規制層を成膜し、パターニングした後あるいはパターニングと同時にプラズマ処理などの表面処理を行い、表面粗さを調整することによっても、容易に実現可能である。
【0086】
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドは、図5に示すように、表面に平坦化のためのベースコート層101を形成したガラス基板100上に、光検出素子120と、エレクトロルミネッセント素子110とを順次積層するとともに、光検出素子120の出力に応じて、駆動電流または駆動時間を補正しつつ前記エレクトロルミネッセント素子を駆動するためのスイッチングトランジスタ130としての薄膜トランジスタと、この薄膜トランジスタに接続されたチップICとしての駆動回路(140)を搭載したものである。そして、光検出素子120はベースコート層101表面に形成された多結晶シリコン層からなる島領域ARを帯状のi層からなるチャネル領域を隔てて 所望の濃度にドープすることによりソース領域121S、ドレイン領域121Dを形成し、この上層に形成される酸化シリコン膜からなる第1の絶縁膜122、第2の絶縁膜123を貫通するようにスルーホールを介して形成された多結晶シリコン層からなるソースおよびドレイン電極125S,125Dで構成される。また、この上層に保護層124としての窒化シリコン膜を介して、エレクトロルミネッセント素子110が形成されており、陽極となるITO(インジウム錫酸化物)111、保護膜124、発光層112、陰極113の順に各層が積層形成されている。
【0087】
一方、光検出素子120を構成する各層は、駆動トランジスタとしての選択トランジスタ130と同一の製造工程で形成される。すなわちチャネル領域131Cをはさんでソース領域132S,132Dが、光検出素子の半導体島と同一工程で形成され、これにコンタクトするソース・ドレイン電極134S,134Dが積層され、ゲート電極133とで選択トランジスタとしての薄膜トランジスタを構成している。
これら各層は、CVD法による半導体薄膜の形成、フォトリソグラフィによるパターニング、不純物イオンの注入、絶縁膜の形成、など通例の半導体プロセスを経て形成される。
【0088】
ここで、ガラス基板100は無色透明なガラスの一枚板である。ガラス基板100としては、例えば透明または半透明のソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の遷移金属酸化物ガラス、無機フッ化物ガラス等の無機ガラスを用いることができる。
【0089】
その他の材料をガラス基板100として採用することも可能であり、例えば透明または半透明のポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂ポリシロキサン、ポリシラン等のポリマー材料を用いた高分子フィルム等、あるいは透明または半透明のAs23、As4010、S40Ge10等のカルコゲノイドガラス、ZnO、Nb2O、Ta25、SiO、Si34、HfO2、TiO2等の金属酸化物および窒化物等の材料、或いは発光領域から出射される光を基板を介さずに取り出す場合には、不透明のシリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体材料、或いは顔料等を含んだ前述の透明基板材料、表面に絶縁処理を施した金属材料等から適宜選択して用いることができ、複数の基板材料を積層した積層基板を用いることもできる。
【0090】
またガラス基板100などの基板の表面あるいは基板内部には、後述するようにエレクトロルミネッセント素子110を駆動するための抵抗・コンデンサ・インダクタ・ダイオード・トランジスタ等からなる回路を集積化して形成しても良い。
【0091】
さらに用途によっては特定波長のみを透過する材料、光−光変換機能をもった特定の波長の光へ変換する材料などであってもよい。また基板は絶縁性であることが望ましいが、特に限定されるものではなく、エレクトロルミネッセント素子110の駆動を妨げない範囲或いは用途によって導電性を有していても良い。
【0092】
ガラス基板100の上には、ベースコート層101が形成される。ベースコート層101は、例えばSiNから成る第1の層と、SiOから成る第2の層の2つから構成される。SiN、SiOの各層は蒸着法等によっても形成できるが、スパッタ法により形成することが望ましい。
【0093】
ベースコート層101の上には、エレクトロルミネッセント素子110の選択トランジスタ130、及び光検出素子120が同一工程で形成される多結晶シリコン層を用いて形成される。エレクトロルミネッセント素子110の駆動用回路は、抵抗・コンデンサ・インダクタ・ダイオード・トランジスタ等の回路素子から構成されるが、光ヘッドの小型化を考慮すると薄膜トランジスタを用いることが望ましい。実施の形態3において光検出素子120は、図5から明らかなように発光層112を含むエレクトロルミネッセント素子110と、光の出力面となるガラス基板100の中間に位置しており、且つ光検出素子110の素子領域Aは光出射領域ALEよりも大きい。また光出射領域ALEは、光検出素子120の内側に存在するため、光を透過しない材料を光検出素子120に用いることはできない。したがって、発光層112から出力された光を妨げないようにするため、光検出素子120には透明性を有した材料を用いる必要がある。透明性を有した光検出素子120の材料としては、例えば多結晶シリコンを選択することが望ましい。
【0094】
実施の形態3では、ベースコート層101の上に一様な半導体層を形成した後、半導体層に対してエッチング加工を施すことにより、選択トランジスタ130及び光検出素子120を同じ層から形成している。同一の金属層から島状に独立した選択トランジスタ130及び光検出素子120の金属層を一括で形成する加工は、製造工数の削減と製造コストの抑制に有利である。なお光検出素子120において、光出射領域ALEから出力される光を受ける素子領域Aは光検出素子120となる島状に構成された多結晶シリコンまたは非晶質シリコンの表面である。
【0095】
エレクトロルミネッセント素子110の発光層112に電界をかけるための選択トランジスタ130及び光検出素子120の上には、この酸化シリコン膜からなる第1の絶縁層122、第2の絶縁層123と保護層124とが、エレクトロルミネッセント素子の陽極としてのITO111との間でゲート絶縁膜として作用し、この膜厚による電圧降下によってITOの電位からの降下幅が決定される。このゲート絶縁膜3を構成する第1の絶縁層122、第2の絶縁層123と保護層124は、例えばSiO等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0096】
また、選択トランジスタ130の真上にあるゲート絶縁膜としての第1の絶縁層122の表面にはゲート電極133が形成される。ゲート電極133の材料としては、例えばCrが用いられる。ゲート電極133は、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0097】
ゲート電極133が形成された基板表面に、第2の絶縁層123が形成される。第2の絶縁層123は、これまで形成してきた積層体の全表面に渡って形成される。第2の絶縁層123は、例えばSiN等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0098】
第2の絶縁層の上には、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dが形成される。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sは光検出素子120のソース・ドレイン領域121S,121Dに接続されており、光検出素子120から出力される電気信号の伝達と光検出素子120の接地を行う。ソース電極134S及びドレイン電極134Dは、選択トランジスタ130のソース・ドレイン領域132S,132Dに接続されており、ソース電極134Sとドレイン電極134Dの間に所定の電位差を付与した状態で先述したゲート電極133に所定の電位を付与することで、選択トランジスタ130はスイッチング素子としての機能を有するようになり、発光素子としてのエレクトロルミネッセント素子110の駆動を行う回路として動作する。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dの材料としては、例えばCr等の金属が用いられる。図5に示すように、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極は第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123を貫通して光検出素子120の端部と接続されており、ソース電極134S及びドレイン電極134Dも同様に第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123を貫通して選択トランジスタ130の端部に接続されている。したがって、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dの形成に先立ち、第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123に対して、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと光検出素子120を接続するためのスルーホール、ソース電極134S及びドレイン電極134Dと選択トランジスタ130を接続するためのスルーホールを設ける必要がある。
【0099】
このスルーホールは光検出素子120の表面と選択トランジスタ130の表面、即ち光検出素子120と光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sの接触面と選択トランジスタ130とソース電極134S及びドレイン電極134Dの接触面が露出するまでの深さを持ったものであり、光検出素子120及び選択トランジスタ130の端部の真上にエッチング加工等により設けられる。エッチングにはハロゲン系のエッチングガスを用いる。フォトリソグラフィにより、開口を形成したレジストパターンで表面を被覆した状態でエッチングガスを導入し、パターニングする。(第1の絶縁膜122及び第2の絶縁層123のスルーホールを開口する。)このとき、エッチングガスには光検出素子120及び選択トランジスタ130を構成する材料と化学反応を生じないものを選択する。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと光検出素子120の接触面、ソース電極134S及びドレイン電極134Dと選択トランジスタ130の接触面を露出させる加工が終了した後、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dを形成する。ソース電極134S及びドレイン電極134Dは、センサ電極となる金属層を第2の絶縁層123の表面、先述したスルーホールの表面及び両センサ電極、光検出素子120の表面及び選択トランジスタ130の接触面の表面に一様に形成した後、この金属層に対してフォトリソグラフィにより形成したレジストパターンをマスクとしてエッチングを施し、一様の金属層を光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dに分割することにより得られる。
【0100】
光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、ソース電極134S及びドレイン電極134Dが形成された後に、保護膜124が形成される。保護膜124は、例えばSiN等から成り、蒸着法、スパッタ法等により形成される。
【0101】
保護膜124の上には、陽極111が形成される。陽極111は、例えばITO(インジウム錫酸化物)から成る。陽極111の構成材料としてはITOの他にIZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、ATO(SbをドープしたSnO2)、AZO(AlをドープしたZnO)、ZnO、SnO、In等を用いることができる。陽極111は図5のように、光検出素子120に対して真上にあたる保護膜124の表面に形成される。図5に示すように、陽極111は保護膜124を貫通してドレイン電極134Dの端部に接続されている。したがって陽極111の形成の前には、保護膜124に対して陽極111とドレイン電極134Dを接続するためのスルーホールを設ける必要がある。このスルーホールはドレイン電極134Dの表面、即ちドレイン電極134Dと陽極111との接触面が露出するまでの深さを持ったものであり、ドレイン電極134Dの端部に真上にエッチング加工等により設けられる。このエッチング加工が施された後、陽極111の層が形成される。陽極111は蒸着法等によっても形成できるがスパッタ法により形成することが望ましい。なお実施の形態3では陽極111としてITOを用いている。
【0102】
陽極111が形成された後、画素規制層としての窒化シリコン膜114が形成される。画素規制層としての窒化シリコン膜114としては絶縁性が高く、絶縁破壊に対して強く、かつ成膜性が良くパターニング性が高いものが望ましい。実施の形態3では画素規制層としての窒化シリコン膜114を構成する材料として、窒化シリコン、窒化アルミニウムを用いている。画素規制層としての窒化シリコン膜114は、後述する発光層112と陽極111との間に設けられ、光出射領域ALEの領域外にある発光層112を陽極111から絶縁し、発光層112の発光する箇所を規制している。したがって、画素規制層としての窒化シリコン膜114に重なる発光層112の領域は非発光領域となり、画素規制層としての窒化シリコン膜114に重ならない領域が光出射領域ALEとなる。画素規制層としての窒化シリコン膜114は、発光層112の光出射領域ALEが光検出素子120の素子領域Aよりも小さくなるように規制し、且つ光出射領域ALEを光検出素子120の素子領域Aの内側に配置するように構成される。
【0103】
画素規制層としての窒化シリコン膜114が形成された後、発光層112が形成される。発光層112は無機発光材料、若しくは以降詳細に説明する高分子系、あるいは低分子系の有機発光材料から形成される。発光層112を形成する無機発光材料としては、チタン・リン酸カリウム、バリウム・ホウ素酸化物、リチウム・ホウ素酸化物等を用いることができる。発光層112を構成する高分子系の有機発光材料としては、可視領域で蛍光または燐光特性を有しかつ成膜性の良いものが望ましく、例えばポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン等のポリマー発光材料等を用いることができる。また、発光層112を構成する低分子系の有機発光材料としては、Alq3やBe−ベンゾキノリノール(BeBq)の他に、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4'−ビス(5,7−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4'−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕スチルベン、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフィン、2,5−ビス(〔5−α,α−ジメチルベンジル〕−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4'−ビス(2−ベンゾオキサイゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−〔2−〔4−(5−メチル−2−ベンゾオキサイゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾオキサイゾリル、2−〔2−(4−クロロフェニル)ビニル〕ナフト〔1,2−d〕オキサゾール等のベンゾオキサゾール系、2,2'−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系、2−〔2−〔4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾイミダゾール、2−〔2−(4−カルボキシフェニル)ビニル〕ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系等の蛍光増白剤や、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ〔f〕−8−キノリノール)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノール)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、8−キノリノールリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノール)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノール)カルシウム、ポリ〔亜鉛−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリノニル)メタン〕等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピンドリジオン等の金属キレート化オキシノイド化合物や、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)2−メチルベンゼン等のスチリルベンゼン系化合物や、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ナフチル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(4−ビフェニル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ピレニル)ビニル〕ピラジン等のジスチルピラジン誘導体や、ナフタルイミド誘導体や、ペリレン誘導体や、オキサジアゾール誘導体や、アルダジン誘導体や、シクロペンタジエン誘導体や、スチリルアミン誘導体や、クマリン系誘導体や、芳香族ジメチリディン誘導体等が用いられる。さらに、アントラセン、サリチル酸塩、ピレン、コロネン等も用いられる。あるいは、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等の燐光発光材料を用いることもできる。高分子系材料、低分子系材料から成る発光層112は、材料をトルエン、キシレン等の溶媒に溶解したものをスピンコート法で層状に成形し、溶解液中の溶媒を揮発させることで得られる。
【0104】
また、発光層として、樹木状多分岐構造をもつ高分子物質あるいは低分子物質を用いるようにしてもよい。樹木状多分岐構造を持つ物質はいわゆるデンドリマと呼ばれ緑、赤、青など所望の色のりん光を発することから、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子の発光層として有効である。
例えば緑色のりん光を発するデンドリマとしては次式に示すようにイリジウムデンドリマ錯体がある。
【化5】

例えば赤色のりん光を発するデンドリマとしては次式に示すようにイリジウムデンドリマ錯体がある。
【化6】

例えば青色のりん光を発するデンドリマとしては次式に示すようにイリジウムデンドリマ錯体がある。このデンドリマは深青色の光を発するデンドリマAと青緑色の光を発するデンドリマBとの混合物で構成された錯体である。
【化7】

【0105】
また実施の形態3では、発光層112を便宜上単一の層として記述しているが、発光層112を陽極111の側から順に正孔輸送層/電子ブロック層/上述した有機発光材料層(ともに図示せず)の三層構造としてもよいし、発光層112を陰極113の側から順に電子輸送層/有機発光材料層(ともに図示せず)の二層構造、あるいは陽極111の側から順に正孔輸送層/有機発光材料層の2層構造(ともに図示せず)、あるいは陰極113の側から順に正孔注入層/正孔輸送層/電子ブロック層/有機発光材料層/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層のごとく7層構造(ともに図示せず)としてもよい。またはより単純に発光層112が上述した有機発光材料のみからなる単層構造であってもよい。このように実施の形態3において発光層112と呼称する場合は、発光層112が正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層などの機能層を有する多層構造である場合も含んでいる。後に説明する他の実施の形態についても同様である。
【0106】
上述した機能層における正孔輸送層としては、正孔移動度が高く、透明で成膜性の良いものが望ましくTPDの他に、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物や、1,1−ビス{4−(ジ−P−トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサン、4,4',4''−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N',N'−テトラキス(P−トリル)−P−フェニレンジアミン、1−(N,N−ジ−P−トリルアミノ)ナフタレン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)−2−2'−ジメチルトリフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラフェニル−4,4'−ジアミノビフェニル、N、N'−ジフェニル−N、N'−ジ−m−トリル−4、4'−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾ−ル等の芳香族第三級アミンや、4−ジ−P−トリルアミノスチルベン、4−(ジ−P−トリルアミノ)−4'−〔4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン等のスチルベン化合物や、トリアゾール誘導体や、オキサジザゾール誘導体や、イミダゾール誘導体や、ポリアリールアルカン誘導体や、ピラゾリン誘導体や、ピラゾロン誘導体や、フェニレンジアミン誘導体や、アニールアミン誘導体や、アミノ置換カルコン誘導体や、オキサゾール誘導体や、スチリルアントラセン誘導体や、フルオレノン誘導体や、ヒドラゾン誘導体や、シラザン誘導体や、ポリシラン系アニリン系共重合体や、高分子オリゴマーや、スチリルアミン化合物や、芳香族ジメチリディン系化合物や、ポリ−3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、テトラジヘクシルフルオレニルビフェニル(TFB)あるいはポリ3−メチルチオフェン(PMeT)といったポリチオフェン誘導体等の有機材料が用いられる。また、ポリカーボネート等の高分子中に低分子の正孔輸送層用の有機材料を分散させた、高分子分散系の正孔輸送層も用いられる。またMoO、V、WO、TiO、SiO、MgO等の遷移金属酸化物を用いることもある。またこれらの正孔輸送材料は電子ブロック材料として用いることもできる。
【0107】
上述した機能層における電子輸送層としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、シロール誘導体からなるポリマー材料等、あるいは、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−(パラ−フェニルフェノレート)アルミニウム(BAlq)、バソフプロイン(BCP)等が用いられる。またこれらの電子輸送層を構成可能な材料は正孔ブロック材料として用いることもできる。
【0108】
発光層112が形成された後、陰極113が形成される。陰極113は、例えばAl等の金属を蒸着法等によって層状に形成することにより得られる。有機エレクトロルミネッセント素子110の陰極113としては仕事関数の低い金属もしくは合金、例えばAg、Al、In、Mg、Ti等の金属や、Mg−Ag合金、Mg−In合金等のMg合金や、Al−Li合金、Al−Sr合金、Al−Ba合金等のAl合金等が用いられる。あるいは、Ba、Ca、Mg、Li、Cs等の金属、あるいは、LiF、CaOといったこれら金属のフッ化物や酸化物からなる有機物層に当接する第1の電極層と、その上に形成されるAg、Al、In等の金属材料からなる第2の電極とからなる金属の積層構造を用いることもできる。
【0109】
図5に示すような実施の形態3の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドは、有機エレクトロルミネッセント素子の選択トランジスタ130側から光を出力する方式を採用しており、このような有機エレクトロルミネッセント素子の構造をボトムエミッションという。ボトムエミッション構造は、ガラス基板100の側から光を取り出すため、既に述べたように光検出素子120は透明度の高い材料、例えば多結晶シリコン(ポリシリコン)で構成される必要がある。多結晶シリコンで構成された光検出素子120は非晶質シリコン(アモルファスシリコン)で構成したものと比較して光電流の生起能力が低いという問題があるが、例えばコンデンサ(図示せず)を有機エレクトロルミネッセント素子110の近傍に設け、光検出素子120から出力された電流に基づく電荷をコンデンサに所定期間蓄積して、その後に電圧変換を行なうような処理回路を設けることで解決することができる。ボトムエミッション構造の場合は、光を取り出す側の電極(陽極)の透明化が容易なため、製造が簡単になる利点がある。
【0110】
図6は、本発明の実施の形態3における有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドの光検出素子近傍の構成を示した構成平面図である。
【0111】
図6に示すように実施の形態3の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドは、複数のエレクトロルミネッセント素子110を主走査方向(素子列の方向)に配置して構成されており、1つの発光領域(光出射領域ALE)に対して、1つの光検出素子120を対応させて配置している。このような構造とすることで、光検出素子120によって各有機エレクトロルミネッセント素子110の発光光量を独立して計測できる。即ち同時に複数の有機エレクトロルミネッセント素子110の光量を計測することが可能となり、計測時間を大幅に短縮できる。
【0112】
図6では、光検出素子120、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D、光検出素子接地電極としてのソース電極125S、光出射領域ALE、素子領域A、発光層112の陽極となるITO(インジウム錫酸化物)111、コンタクトホールH及びドレイン電極134Dの相互関係が示されている。光検出素子120は、光検出素子出力電極としてのドレイン電極125D及び光検出素子接地電極としてのソース電極125Sと接続されている。光検出素子出力電極としてのドレイン電極125Dは、光検出素子120が光の補正のために出力する電気信号を補正回路(図示せず)に伝達する電極である。この電気信号を基に、補正回路が生成するフィードバック信号が決定され、このフィードバック信号を基に光の補正に必要な処理が行われる。実施の形態3ではこのフィードバック信号に基づいて各エレクトロルミネッセント素子110の発光光量を補正するようにしており、図示しないドライバ回路によって各エレクトロルミネッセント素子110を駆動する電流値を制御している。このように実施の形態3では光検出素子120の出力に基づいて発光光量を制御しているが、フィードバック信号に基づいて各エレクトロルミネッセント素子110の駆動時間を制御する、いわゆるPWM制御を行なうように構成してもよい。
【0113】
光検出素子接地電極としてのソース電極125Sは、光検出素子120の接地を行う電極である。発光素子としてのエレクトロルミネッセント素子110の陽極であるITO(インジウム錫酸化物)111は、選択トランジスタ130のドレイン電極134Dと接続されており、エレクトロルミネッセント素子110はドレイン電極134Dを介して選択トランジスタ130で制御されている。
【0114】
図5、図6に示すように実施の形態3の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドは、島状に形成された多結晶シリコン(ポリシリコン)から構成される光検出素子120を主走査方向に列状に配置し、各有機エレクトロルミネッセント素子110においては画素規制層としての窒化シリコン膜114により光出射領域ALEが制限された発光層112の下部に光出射領域ALEよりも大きな素子領域Aを有した光検出素子120を配置したことが分かる。光出射領域ALEよりも光検出素子120の素子領域A(島状に形成された多結晶シリコンの島状部分)を大きくすることで、発光層112の局所的な層厚の変化を抑えることができ、発光層112を流れる電流の偏りを抑えることができる。したがって、均一な発光分布と寿命の向上を実現した光ヘッドを製造することができる。
【0115】
さらに、実施の形態3の光ヘッドに搭載される島状に構成された光検出素子120の素子領域Aは発光領域すなわち光出射領域ALEに比べて大きいため、発光層からの出力光を光の補正に用いる電気信号へと効率的に変換することができる。
【0116】
次に、本発明の光ヘッドで用いられる光量補正回路について説明する。光量補正回路は、図11に等価回路を示すように、チャージアンプを備えた駆動用IC150と、この駆動用IC150の入力端子に接続されるように前述したガラス基板100に集積化して形成された補正回路部Cとで構成され、この補正回路部Cは前述したスイッチングトランジスタ130と、光検出素子120と、この光検出素子に並列接続され、光検出素子の出力電流をチャージするコンデンサ140とで構成される。このコンデンサ140は図5の断面図に図示していないが、光検出素子のソース電極134S,ドレイン電極134Dにそれぞれ接続されるようにこれらと同一工程で形成された導電性膜で、第1および第2の絶縁膜122,123を挟むことによって形成されている。
【0117】
ここで光検出素子は、光検出素子は、エレクトロルミネッセント素子からの光によって多結晶シリコン層121iで光電変換が行われ、ソース領域からドレイン領域に流れる電流を光電流として取り出すことにより、光量を検出するものである。しかしながら、前述したように、エレクトロルミネッセント素子110の陽極であるITO電極111をゲート電極とし、このゲート電極の電位によって光検出素子のチャネル領域である多結晶シリコン層121iに電界がかかり、これにより、ドレイン電流Iが流れることになる。このドレイン電流Iが上記光電変換電流に付加されることになるため、ドレイン電極125Dからセンサ出力として補正回路部C(図11参照)に出力される光電変換電流は実際の光電変換電流にドレイン電流Iを加えたものとなる。このため光量検出精度が低下するという問題がある。このゲート電圧Vgとドレイン電流IDとの関係を測定した結果を図12に実線で示す。この図から明らかなように、この薄膜トランジスタのドレイン電流が0である領域すなわち、トランジスタの動作がオフとなる領域(OFF領域)で使用するのが望ましい。
【0118】
望ましくは、図12に破線で示すように、ゲート電位をマイナス方向にシフトさせるようにすることにより、薄膜トランジスタをOFF領域で使用することができ、暗電流をほとんど皆無とすることができる。
また、この光検出素子を構成する薄膜トランジスタのチャネル領域となる多結晶シリコン層121i全体がエレクトロルミネッセント素子の陽極であるITO電極で完全に覆われている状態が、ゲート電界によってチャネルを制御するのにより有効である。
本発明では、光検出素子の出力を高精度に検出することは極めて重要であるため、光検出素子を構成する薄膜トランジスタをOFF状態で検出することが重要である。
また、この光検出素子を構成する薄膜トランジスタのチャネル領域121iとなる多結晶シリコン層全体がエレクトロルミネッセント素子の陽極であるITO電極で完全に覆われている状態が、ゲート電界によってチャネルを制御するのにより有効である。
【0119】
そしてこの光検出素子の出力は図13(a)乃至(g)にタイミングチャートを示すように選択トランジスタ130のスイッチングにより、コンデンサ140に所望の回数分の点灯時間分チャージされた電流を取り出すことにより、高精度の光量検出が可能となる。ここで図13(a)は、チャージの状態を示す図、図13(b)は、選択トランジスタの動作を示す図、図13(c)は、エレクトロルミネッセント素子の点灯タイミングを示す図、図13(d)は、容量素子140の電位を示す図、図13(e)は、オペアンプの出力電圧を示す図、図13(f)は、データの読み出し動作を示す図、図13(g)は、光量検出信号示す図、である。
なお、光検出素子の出力を高精度に検出することは極めて重要であるため、光検出素子を構成する薄膜トランジスタをOFF状態で検出することが重要である。したがって、光検出素子のゲート電位を調整することにより、所望の検出精度を得ることができる。
【0120】
まず、選択トランジスタ130がONとなり、容量素子140に初期電圧Vrefをチャージする(S1:リセットステップ)。
そして、この選択トランジスタ130がOFFとなると、容量素子140にチャージされた電荷は光検出素子120を流れる光電流により減少する(S2:点灯ステップ)。
この状態でチャージアンプ150のスイッチSWがOFFとなり、チャージアンプは測定可能な状態となる(S3:測定開始ステップ)。
そして、選択トランジスタ130がONとなり、容量素子140で失われた電荷はチャージアンプの容量素子Crefから供給される。その結果チャージアンプ150のオペアンプの出力電圧Vr0は上昇する。この期間も光検出素子の光電流は流れVr0は上昇する(S4:電荷転送ステップ)。
そして選択トランジスタ130がOFFとなり、Vr0が確定する。この電圧をADコンバータで取り込み、測光動作が終了する(S5:リードステップ)。
【0121】
なお本発明の実施の形態3の変形例として、図14に示すように、ガラス基板の裏面側にクロム薄膜からなる遮光膜104を形成し、この開口により第2の光出射領域ALE1を規定している。この第2の光出射領域ALE1を前記実施の形態3で説明した画素規定部としての窒化シリコン膜114の開口よりも小さく形成することにより、窒化シリコン膜114に起因する発光層の段差部を光出射領域から除外することができ、発光層をより均一化することが可能となる。他の構成については前記実施の形態3と同様である。
【0122】
なお、上記光ヘッドにおいて、エレクトロルミネッセント素子の第1の電極111としての陽極は、前記チャネル領域121iと同程度の幅を持つように形成するようにしてもよい。
この構成により、ゲート電界が高効率で印加される上、エレクトロルミネッセント素子の発光層そのものが平坦面上に形成されることになり、下地の段差に起因する発光層の膜厚のばらつきを回避することが可能となる。また、このときソース・ドレイン領域上は発光領域とならないため、光出射領域と発光領域をほぼ一致させることもでき、微細なライン状の光出射領域を得ることができる。従って、微細化に伴う高ピッチ化に際してもクロストークの回避が可能となる。このように副走査方向に小さい露光スポット(ライン)を得ることができるため、面積変調に基づく多値再現に有効となる。
露光ヘッドと感光体は副走査方向に相対移動しており、この相対移動に伴って、露光面積が変わる。面積変調という面だけから考えると、理想的には露光スポット形状は、副走査方向に幅を持たない一本の線であることが望ましい。ただし、この場合の発光輝度は無限大でなくてはならない。つまり、この場合は副走査方向の発光領域が小さくなるために、発光面積が小さくなり、露光条件としては、エネルギー的には厳しくなるため、高輝度化を図る必要がある。
【0123】
(実施の形態4)
次に本発明の図15は、光ヘッドに用いられる有機エレクトロルミネッセント素子をトップエミッション構造で構成した場合の断面図である。トップエミッション構造とは、ボトムエミッション構造とは逆に発光層112から出力された光を発光層112の上部にある陰極側に出力する形式のことである。図11の構成では、ガラス基板100の上に金属から成る反射層105を設け、光の出力が陰極側にされる構造になっている。
【0124】
この構造を採用した場合は、図示するように有機エレクトロルミネッセント素子110の発光層112で生起した光のうち、光検出素子120とは反対の方向に出射された光で図示しない感光体(後に説明する図17の28Y〜28Kを参照)を露光することとなる。一方、発光層112にて生起される光は露光に供する方向とは逆方向、即ち光検出素子120側にも出射されており、この光を光検出素子120で受光することとなる。
【0125】
トップエミッション構造を採用した場合、露光に供する光は光検出素子120を透過する必要がないため、光検出素子120は透明度の高い多結晶シリコンを敢えて用いる必要はなく、光電流の生起能力が高い非晶質シリコン(アモルファスシリコン)で光検出素子120を構成するとよい。
【0126】
さてトップエミッション構造を実施するためには、陰極を透明な金属材料で構成する必要があるが技術的に難しい。そこで図15のように、ごく薄いAl、Ag等の金属層(薄膜陰極)113aとITOのような透明電極113bとを積層させて陰極として用いている。金属層113aはごく薄いため、透光性が確保された陰極が実現できる。トップエミッション構造は、ボトムエミッション構造に比べて製造工数が増えるため製造コストは増加するが、発光効率の良い光ヘッドを構成することができる。
【0127】
以上詳細に光ヘッドを構成するエレクトロルミネッセント素子110および光検出素子120の構成および作用について説明した。実施の形態3では光ヘッドにおける発光素子(エレクトロルミネッセント素子)列を一列として説明したが、これを複数列に構成して発光光量を実質的に高めるように構成してもよい。
【0128】
また上述してきたエレクトロルミネッセント素子110と光検出素子120の構造については、これを2次元的に配置して表示装置に応用することももちろん可能である。
【0129】
なお本発明の実施の形態4の変形例として、図16に示すように、ガラス基板の裏面側にクロム薄膜からなる遮光膜106を形成し、この開口により第2の光出射領域ALE1を規定している。この第2の光出射領域ALE1を前記実施の形態3で説明した画素規定部としての窒化シリコン膜114の開口よりも小さく形成することにより、窒化シリコン膜114に起因する発光層の段差部を光出射領域から除外することができ、発光層をより均一化することが可能となる。他の構成については前記実施の形態3と同様である。
【0130】
(実施の形態5)
図17は本発明の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドを搭載した画像形成装置21の構成を示した図である。図17において、画像形成装置21は装置内にイエロー現像ステーション22Y、マゼンタ現像ステーション22M、シアン現像ステーション22C、ブラック現像ステーション22Kの4色分の現像ステーションを縦方向に階段状に配列し、その上方には記録紙23が収容される給紙トレイ24を配設すると共に、各現像ステーション22Y〜22Kに対応した箇所には給紙トレイ24から供給された記録紙23の搬送路となる記録紙搬送路25を上方から下方の縦方向に配置したものである。
【0131】
現像ステーション22Y〜22Kは、記録紙搬送路25の上流側から順に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成するものであり、イエロー現像ステーション22Yは感光体28Y、マゼンタ現像ステーション22Mには感光体28M、シアン現像ステーション22Cには感光体28C、ブラック現像ステーション22Kには感光体28Kが含まれ、更に各現像ステーション22Y〜22Kには図示しない現像スリーブ、帯電器等、一連の電子写真方式における現像プロセスを実現する部材が含まれている。
【0132】
更に各現像ステーション22Y〜22Kの下部には感光体28Y〜28Kの表面を露光して静電潜像を形成するための露光装置33Y、33M、33C、33Kが配置されている。なお実施の形態3で示した光ヘッドは、露光装置33Y、33M、33C、33Kに搭載されている。
【0133】
さて現像ステーション22Y〜22Kは充填された現像剤の色が異なっているが、構成は現像色に関わらず同一であるため、以降の説明を簡単にするため特に必要がある場合を除いて現像ステーション22、感光体28、露光装置33のごとく特定の色を明示せずに説明する。
【0134】
図18は本発明の実施の形態5の画像形成装置21における現像ステーション22の周辺を示す構成図である。図18において、現像ステーション22の内部にはキャリアとトナーを混合物である現像剤26が充填されている。27a、27bは現像剤26を攪拌する攪拌パドルであり、攪拌パドル27aと27bの回転によって現像剤26中のトナーはキャリアとの摩擦によって所定の電位に帯電されると共に、現像ステーション22の内部を巡回することでトナーとキャリアが十分に攪拌混合される。感光体28は図示しない駆動源によって方向D3に回転する。29は帯電器であり感光体28の表面を所定の電位に帯電する。30は現像スリーブ、31は薄層化ブレードである。現像スリーブ30は内部に複数の磁極が形成されたマグロール32を有している。薄層化ブレード31によって現像スリーブ30の表面に供給される現像剤26の層厚が規制されると共に、現像スリーブ30は図示しない駆動源によって方向D4に回転し、この回転およびマグロール32の磁極の作用によって現像剤26は現像スリーブ30の表面に供給され、後述する露光装置によって感光体28に形成された静電潜像を現像するとともに、感光体28に転写されなかった現像剤26は現像ステーション22の内部に回収される。
【0135】
33は既に説明した露光装置である。実施の形態3の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドを搭載した露光装置33を応用した画像形成装置21は、既に述べたように露光装置33が長期に渡って安定に潜像を形成できるため、製品寿命が長く、さらに実施の形態3の光ヘッドを搭載した露光装置33は所望の形状の静電潜像を長期にわたって得られるために常に高画質の画像を形成することができる。
【0136】
さて実施の形態4における露光装置33は有機エレクトロルミネッセント素子を600dpi(dot/inch)の解像度で直線状に配置したもので、帯電器29によって所定の電位に帯電した感光体28に対し、画像データに応じて選択的に有機エレクトロルミネッセント素子をON/OFFすることで、最大A4サイズの静電潜像を形成する。この静電潜像部分に現像スリーブ30の表面に供給された現像剤26のうちトナーのみが付着し、静電潜像が顕画化される。
【0137】
感光体28に対し記録紙搬送路25と対向する位置には転写ローラ36が設けられており、図示しない駆動源により方向D5に回転する。転写ローラ36には所定の転写バイアスが印加されており、感光体28上に形成されたトナー像を、記録紙搬送路25を搬送されてきた記録紙に転写する。
【0138】
以降図17に戻って説明を続ける。
【0139】
これまで説明してきたように、実施の形態4における画像形成装置21は複数の現像ステーション22Y〜22Kを縦方向に階段状に配列したタンデム型のカラー画像形成装置であり、カラーインクジェットプリンタと同等クラスのサイズを目指すものである。現像ステーション22Y〜22Kは複数のユニットが配置されるため、画像形成装置21の小型化を図るためには現像ステーション22Y〜22Kそのものの小型化と共に、現像ステーション22Y〜22Kの周辺に配置される作像プロセスに関与する部材を小さくし、現像ステーション22Y〜22Kの配置ピッチを極力小さくする必要がある。
【0140】
オフィス等においてデスクトップに画像形成装置21を設置した際のユーザの使い勝手、特に給紙時や排紙時の記録紙23へのアクセス性を考慮すると、画像形成装置21の底面から給紙口65までの高さは250mm以下にすることが望ましい。これを実現するためには画像形成装置21の全体の構成の中で現像ステーション22Y〜22K全体の高さを100mm程度に抑える必要がある。
【0141】
しかしながら既存の例えばLEDヘッドは厚みが15mm程度あり、これを現像ステーション22Y〜22K間に配置すると目標を達成することが困難である。本発明者等の検討結果によれば露光装置33の厚みを7mm以下とすると、現像ステーション22Y〜22K間の隙間に露光装置33Y〜33Kを配置しても現像ステーション全体の高さを100mm以下に抑えることが可能である。
【0142】
37はトナーボトルであり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーが格納されている。トナーボトル37から各現像ステーション22Y〜22Kには、図示しないトナー搬送用のパイプが配設され、各現像ステーション22Y〜22Kにトナーを供給している。
【0143】
38は給紙ローラであり、図示しない電磁クラッチを制御することで方向D1に回転し、給紙トレイ24に装填された記録紙23を記録紙搬送路25に送り出す。
【0144】
給紙ローラ38と最上流のイエロー現像ステーション22Yの転写部位との間に位置する記録紙搬送路25には、入口側のニップ搬送手段としてレジストローラ39、ピンチローラ40対が設けられている。レジストローラ39、ピンチローラ40対は、給紙ローラ38により搬送された記録紙23を一時的に停止させ、所定のタイミングでイエロー現像ステーション22Yの方向に搬送する。この一時停止によって記録紙23の先端がレジストローラ39、ピンチローラ40対の軸方向と平行に規制され、記録紙23の斜行を防止する。
【0145】
41は記録紙通過検出センサである。記録紙通過検出センサ41は反射型センサ(フォトリフレクタ)によって構成され、反射光の有無で記録紙23の先端および後端を検出する。
【0146】
さてレジストローラ39の回転を開始すると(図示しない電磁クラッチによって動力伝達を制御し、回転ON/OFFを行う)記録紙23は記録紙搬送路25に沿ってイエロー現像ステーション22Yの方向に搬送されるが、レジストローラ39の回転開始のタイミングを起点として、各現像ステーション22Y〜22Kの近傍に配置された露光装置33Y〜33Kによる静電潜像の書き込みタイミングが独立して制御される。
【0147】
最下流のブラック現像ステーション22Kの更に下流側に位置する記録紙搬送路25には出口側のニップ搬送手段として定着器43が設けられている。定着器43は加熱ローラ44と加圧ローラ45から構成されている。加熱ローラ44は表面から近い順に、発熱ベルト、ゴムローラ、芯材(共に図示せず)から構成されている多層構造のローラである。このうち発熱ベルトは更に3層構造を有するベルトであり、表面に近い方から離型層、シリコンゴム層、基材層(共に図示せず)から構成される。離型層は厚み約20〜30マイクロメートルのフッ素樹脂からなり、加熱ローラ44に離型性を付与する。シリコンゴム層は約170マイクロメートルのシリコンゴムで構成され、加圧ローラ45に適度な弾性を与える。基材層は鉄・ニッケル・クロム等の合金である磁性材料によって構成されている。
【0148】
26は励磁コイルが内包された背面コアである。背面コア46の内部には表面が絶縁された銅製の線材(図示せず)を所定本数束ねた励磁コイルを加熱ローラ44の回転軸方向に延伸し、かつ加熱ローラ44の両端部において、加熱ローラ44の周方向に沿って周回して形成されている。励磁コイルに半共振型インバータである励磁回路(図示せず)から約30kHzの交流電流を印加すると、背面コア46と加熱ローラ44の基材層によって構成される磁路に磁束が生じる。この磁束によって加熱ローラ44の発熱ベルトの基材層に渦電流が形成され基材層が発熱する。基材層で生じた熱はシリコンゴム層を経て離型層まで伝達され、加熱ローラ44の表面が発熱する。
【0149】
47は加熱ローラ44の温度を検出するための温度センサである。温度センサ47は金属酸化物を主原料とし、高温で焼結して得られるセラミック半導体であり、温度に応じて負荷抵抗が変化することを応用して接触した対象物の温度を計測することができる。温度センサ47の出力は図示しない制御装置に入力され、制御装置は温度センサ47の出力に基づいて背面コア46内部の励磁コイルに出力する電力を制御し、加熱ローラ44の表面温度が約170゜Cとなるように制御する。
【0150】
この温度制御がなされた加熱ローラ44と加圧ローラ45によって形成されるニップ部に、トナー像が形成された記録紙23が通紙されると、記録紙23上のトナー像は加熱ローラ44と加圧ローラ45によって加熱および加圧され、トナー像が記録紙23上に定着される。
【0151】
48は記録紙後端検出センサであり、記録紙23の排出状況を監視するものである。52はトナー像検出センサである。トナー像検出センサ52は発光スペクトルの異なる複数の発光素子としてのエレクトロルミネッセント素子(共に可視光)と単一の受光素子(光検出素子)を用いた反射型センサユニットであり、記録紙23の地肌と画像形成部分とで、画像色に応じて吸収スペクトルが異なることを利用して画像濃度を検出するものである。またトナー像検出センサ52は画像濃度のみならず、画像形成位置も検出できるため、実施の形態3における画像形成装置21ではトナー像検出センサ52を画像形成装置21の幅方向に2ヶ所設け、記録紙23上に形成した画像位置ずれ量検出パターンの検出位置に基づき、画像形成タイミングを制御している。
【0152】
53は記録紙搬送ドラムである。記録紙搬送ドラム53は表面を200マイクロメートル程度の厚さのゴムで被覆した金属製ローラであり、定着後の記録紙23は記録紙搬送ドラム53に沿って方向D2に搬送される。このとき記録紙23は記録紙搬送ドラム53によって冷却されると共に、画像形成面と逆方向に曲げられて搬送される。これによって記録紙全面に高濃度の画像を形成した場合などに発生するカールを大幅に軽減することができる。その後、記録紙23は蹴り出しローラ55によって方向D6に搬送され、排紙トレイ59に排出される。
【0153】
54はフェイスダウン排紙部である。フェイスダウン排紙部54は支持部材56を中心に回動可能に構成され、フェイスダウン排紙部54を開放状態にすると、記録紙23は方向D7に排紙される。このフェイスダウン排紙部54は閉状態では記録紙搬送ドラム53と共に記録紙23の搬送をガイドするように、背面に搬送経路に沿ったリブ57が形成されている。
【0154】
58は駆動源であり、実施の形態3ではステッピングモータを採用している。駆動源58によって、給紙ローラ38、レジストローラ39、ピンチローラ40、感光体(28Y〜28K)、および転写ローラ(36Y〜36K)を含む各現像ステーション22Y〜22Kの周辺部、定着器43、記録紙搬送ドラム53、蹴り出しローラ55の駆動を行っている。
【0155】
61はコントローラであり、外部のネットワークを介して図示しないコンピュータ等からの画像データを受信し、プリント可能な画像データを展開、生成する。
【0156】
62はエンジン制御部である。エンジン制御部62は画像形成装置21のハードウェアやメカニズムを制御し、コントローラ61から転送された画像データに基づいて記録紙23にカラー画像を形成すると共に、画像形成装置21の制御全般を行っている。
【0157】
63は電源部である。電源部63は、露光装置33Y〜33K、駆動源58、コントローラ61、エンジン制御部62へ所定電圧の電力供給を行うと共に、定着器43の加熱ローラ44への電力供給を行っている。また感光体28の表面の帯電、現像スリーブ(図15における図番30を参照)に印加する現像バイアス、転写ローラ36に印加する転写バイアス等のいわゆる高圧電源系もこの電源部に含まれている。
【0158】
また電源部63には電源監視部64が含まれ、少なくともエンジン制御部62に供給される電源電圧をモニターできるようになっている。このモニター信号はエンジン制御部62おいて検出され、電源スイッチのオフや停電等の際に発生する電源電圧の低下を検出している。
【0159】
以上の説明においては本発明をカラー画像形成装置に適用した場合について説明したが、たとえばブラックなど単色の画像形成装置に適用することもできる。また、カラー画像形成装置に適用した場合、現像色はイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色に限定されるものではない。
【0160】
本発明の画像形成装置21は、発光分布が均一で、耐久性に優れた露光装置33Y〜33Kを搭載しているため、画質と耐久性に優れている。
【0161】
(実施の形態6)
次に、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた表示装置について説明する。本実施の形態の表示装置は、イオン化ポテンシャルが5.6eV程度の遷移金属酸化物層上にバッファ層としてのTFB(図示せず)を介して発光層をインクジェット法により形成するもので、図19にこのアクティブマトリックス型の表示装置の等価回路図、図20にレイアウト説明図、図21に上面説明図を示すように、各画素に駆動回路を形成したアクティブマトリックス型の表示装置を構成するものである。
【0162】
この表示装置140は、図19に等価回路図、図20にレイアウト説明図を示すように、画素を形成する有機エレクトロルミネッセント素子(エレクトロルミネッセント)110およびスイッチングトランジスタ130、光検出素子としてのカレントトランジスタ120とからなる2つのTFT(T1,T2)とコンデンサCとからなる駆動回路を上下左右に複数個配列し、左右方向に並んだ各駆動回路の第1のTFT(T1)のゲート電極を走査線143に接続して走査信号を与え、また上下方向に並んだ各駆動回路の第1のTFTのドレイン電極をデータ線に接続し、発光信号を供給するように構成されている。エレクトロルミネッセント素子(エレクトロルミネッセント)の一端には駆動用電源(図示せず)が接続され、コンデンサCの一端は接地されている。143は走査線、144は信号線、145は共通給電線、147は走査線ドライバ、148は信号線ドライバ、149は共通給電線ドライバである。
【0163】
図21はこの表示装置の上面説明図であり、駆動用の薄膜トランジスタ(図示せず)を形成したガラス基板100上に、陽極(ITO)111、イオン化ポテンシャル5.6eVの酸化モリブデン層などからなる遷移金属酸化物層115、電荷ブロック層116、発光層112、陰極113を形成して有機エレクトロルミネッセント素子を形成している。構造としては、陽極および電荷注入層は個別に形成されており、バッファ層から発光層は画素規制層114で、陰極はストライプ状に形成されている。なおこの駆動用の薄膜トランジスタは、例えばガラス基板100上に有機半導体層(高分子層)を形成しこれを、ゲート絶縁膜で被覆しこの上にゲート電極を形成すると共にゲート絶縁膜に形成したスルーホールを介してソース・ドレイン電極を形成してなるものである。そして、この上にポリイミド膜などを塗布して絶縁層(平坦層)を形成し、その上部に陽極(ITO)111、酸化モリブデン層,電子ブロック層、発光層などの有機半導体層、陰極115を形成して有機エレクトロルミネッセント素子を形成した構造を有している。なお、図21には、コンデンサや配線については省略したが、これらも同じガラス基板上に形成されている。このようなTFTと有機エレクトロルミネッセント素子からなる画素が同一基板上に複数個マトリクス状に形成されてアクティブマトリクス型の表示装置を構成している。
【0164】
製造に際しては図20に示すように、絶縁層で構成した画素規制層114によって形成された開口部153にインクジェット法により、発光層が形成される。
【0165】
すなわち、製造に際しては、ガラス基板100上に形成された走査線143、信号線144、スイッチングTFT130、画素電極111などの上に画素規制層114を形成し、その後開口部を設ける。
そしてこの上層に、全面に遷移金属酸化物層を蒸着によって形成する。
この後、インクジェット法によって必要に応じてTFBを塗布する。このTFB層は遷移金属酸化物層と同様に全面に塗布してもよいし、開口部に対応する部分だけに塗布してもよい。
そして、乾燥工程を経て、開口部に対応する位置にインクジェット法によって所望の色(RGBのいずれか)に対応する高分子有機EL材料を塗布する。
最後に、表示画素141が配置されている領域に対して図示しない陰極を形成する
【0166】
この構成によれば、高速駆動が可能で信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0167】
次にエレクトロルミネッセント素子1を2次元的に複数配置した照明装置の例を、図21を援用して説明する。2次元的に配置されたエレクトロルミネッセント素子110について、例えば全てのエレクトロルミネッセント素子1を一斉に点灯/消灯するような構成は極めて容易に実現できる。ただしこのように一斉に点灯/消灯するような構成であっても、少なくとも一方の電極(例えばITOで構成される画素電極(図1の陽極111参照))は個々のエレクトロルミネッセント素子1単位に分離した構成とすることが望ましい。これは何らかの要因によって表示画素141に欠陥があったとしても、欠陥が当該表示画素141に留まるため、照明装置全体の製造歩留まりを向上させることができるからである。このような構成を有する照明装置は、例えば家庭における一般的な照明器具に応用することができる。この場合に照明装置を極めて薄く構成することができるから、天井のみならず壁面にも容易に設置することができるようになる。
【0168】
また、2次元的に配置されたエレクトロルミネッセント素子1は任意のデータを供給することで、その発光パターンを簡単に制御することができ、かつ本発明に係るエレクトロルミネッセント素子1は、その発光領域を例えば40μm角程度のサイズで構成できるから、照明装置にデータを供給してパネル型の表示装置と兼用するようなアプリケーションを構成できる。もちろんこの場合には表示画素141は位置に応じて赤色、緑色、青色に塗り分けられている必要があるがインクジェット法によれば、極めて容易に多色化が可能となる。
【0169】
従来は照明装置と表示装置を比較したときに、その発光輝度は照明装置の方が大きいものであった。しかしながら本発明に係るエレクトロルミネッセント素子110は極めて高い発光輝度を有しているため、照明装置と表示装置を兼用できるのである。この場合、照明装置と表示装置ではその機能の違い(すなわち使用モード)に起因して発光輝度を調整する機構が必要となるが、この機構は例えば前記実施の形態3に示した構成を採用し駆動電流を制御して各エレクトロルミネッセント素子1の発光輝度を調整することで実現できる。即ち照明装置として使用する場合は全てのエレクトロルミネッセント素子1をより大きな電流で駆動し、表示装置として使用する場合は小電流でかつ階調に応じて制御された電流値で(すなわち画像データに応じて)各エレクトロルミネッセント素子1を駆動すればよい。このようなアプリケーションにおいて、照明装置として機能する場合の電源と、表示装置として機能する場合の電源は単一のものとしてもよいが、駆動電流を制御する、例えばディジタル−アナログ変換器のダイナミックレンジが大きく、表示装置として使用する際の階調数が不足するような場合には、図19および図20に示す共通給電線145に接続された電源(図示せず)を使用モードに応じて切り替えるような構成とすることが望ましい。もちろん照明装置としての使用モードにおいても、明るさの制御が必要な態様(すなわち調光機能を有する照明装置)にあっては、先に説明した階調に応じた電流値制御によって容易に対応することができる。また本発明のエレクトロルミネッセント素子1は、ガラス基板2の上のみならず例えばPETなどの樹脂基板上にも形成できることから、様々なイルミネーション用の照明装置としても応用することができる。
【0170】
なお、薄膜トランジスタを有機トランジスタで構成してもよい。また薄膜トランジスタ上に有機エレクトロルミネッセント素子を積層した構造、あるいは有機エレクトロルミネッセント素子上に薄膜トランジスタを積層した構造なども有効である。
【0171】
加えて、高画質のエレクトロルミネッセント表示装置を得るために、有機エレクトロルミネッセント素子を形成したエレクトロルミネッセント基板と、TFT、コンデンサ、配線などを形成したTFT基板とを、エレクトロルミネッセント基板の電極とTFT基板の電極とが接続バンクを用いて接続されるように貼り合わせるようにしてもよい。
【0172】
以上の説明において、有機エレクトロルミネッセント素子は直流駆動としたが、交流電圧または交流電流、あるいはパルス波で駆動してもよい。
【0173】
また、有機エレクトロルミネッセント素子で発光した光は基板側から取り出すようになっているが、基板と反対面(ここでは陰極)側から、あるいは側面から取り出すようにしてもよい。
【0174】
なお、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子を構成する各層の成膜については上記方法に限定されるものではなく、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、分子線エピタキシー法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法などの真空法、あるいはゾルゲル法、ラングミュア・ブロジェット法(LB法)、レイヤーバイレイヤー法、スピンコート法、インクジェット法、ディップコーティング法、スプレー法などの湿式法などから適宜選択可能であり、結果的に本発明の効果を奏効し得るように形成可能な方法であれば、いかなるものでもよいことはいうまでもない。
【0175】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、バッファ層が、バッファ層の電子親和力をあらわすエネルギー値の絶対値(以下電子親和力と表現する)が前記発光機能を有した層の電子親和力よりも小さい材料を使用してもよい。この構成により、電荷の抜けをブロックすることができ、電荷が発光層内で有効に発光に寄与するようにすることができる。
【0176】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、酸化物を含むようにしてもよい。
なお、ここで用いられる酸化物としては、クロム(Cr)、タングステン(W)、バナジ
ウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフ
ニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、トリウム(Tr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)あるいは、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までのいわゆる希土類元素などの酸化物を挙げることができる。なかでも酸化アルミニウム(AlO)、酸化銅(CuO)、酸化シリコン(SiO)は、特に長寿命化に有効である。
例えば遷移金属の化合物は、複数の酸化数をとるため、これにより、複数の電位レベルをとることができ、電荷注入が容易となり、駆動電圧を低減することができる。
【0177】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、遷移金属の酸窒化物を含むようにしてもよい。例えば、ルテニウム(Ru)の酸窒化物結晶Ru4Si2O7N2等も極めて耐熱性(1500℃)が高く安定な物質であることから薄く成膜することにより、電荷注入層として適用可能である。この場合はゾルゲル法で成膜した後、熱処理を行なうことにより成膜することができる。
【0178】
この他、バリウムサイアロン(BaSiAlON)、カルシウムサイアロン(CaSiAlON)、セリウムサイアロン(CeSiAlON)、リチウムサイアロン(LiSiAlON)、マグネシウムサイアロン(MgSiAlON)、スカンジウムサイアロン(ScSiAlON)、イットリウムサイアロン(YSiAlON)、エルビウムサイアロン(ErSiAlON)、ネオジムサイアロン(NdSiAlON)などのIA、IIA、IIIB族の元素を含むサイアロン、または多元サイアロン等の酸窒化物が適用可能である。これらはCVD法、スパッタリング法などで形成可能である。この他、窒化珪素酸ランタン(LaSiON)、窒化珪素酸ランタンユーロピウム(LaEuSiON)、酸窒化珪素(SiON3)等も適用可能である。これらはおおむね絶縁体であることが多いため、膜厚は1nmから5nm程度と薄くする必要がある。またこれらの化合物はエキシトンの閉じ込め効果が大であり、電子注入を行なう側に形成してもよい。
【0179】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、電荷注入層が、遷移金属を含む複合酸化物を含むようにしてもよい。理由は明らかではないが、電荷注入層に、遷移金属を含む複合酸化物を用いた場合、発光強度を大きく向上することができた。
また、複合酸化物には非常に多くの種類があり、そのうち多くのものが電子的に興味深い物性を持っている。具体的には以下のような化合物を挙げることができるが、これらはあくまでその一例である。
【0180】
例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)の他、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ビスマス酸化鉄(BiFeO3)、
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、バナジウム酸ナトリウム(Na3VO4)、バナジウム酸鉄(FeVO3)、チタン酸バナジウム(TiVO3)、クロム酸バナジウム(CrVO3)、バナジウム酸ニッケル(NiVO3)、バナジウム酸マグネシウム(MgVO3)、バナジウム酸カルシウム(CaVO3)、バナジウム酸ランタン(LaVO3)、モリブデン酸バナジウム(VMoO5)、モリブデン酸バナジウム(V2MoO8)、バナジウム酸リチウム(LiV2O5)、珪酸マグネシウム(Mg2SiO4)、珪酸マグネシウム(MgSiO3)、チタン酸ジルコニウム(ZrTiO4)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、マグネシウム酸鉛(PbMgO3)、ニオブ酸鉛(PbNbO3)、ホウ酸バリウム(BaB2O4)、クロム酸ランタン(LaCrO3)、チタン酸リチウム(LiTi2O4)、銅酸ランタン(LaCuO4)、チタン酸亜鉛(ZnTiO3)、タングステン酸カルシウム(CaWO4)等が可能となる。
【0181】
これらのいずれを用いることでも本発明を実施することができるが、好ましくはたとえばチタン酸バリウム(BaTiO3)を挙げることができる。BaTiO3は代表的な誘電体であって、高い絶縁性を持つ複酸化物であるが、種々の実験を行なった結果から薄い膜で用いられる場合にはキャリア注入を行うことが可能であることがわかった。BaTiO3やチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)は化合物として安定であり、かつ誘電率が非常に大きいので効率的なキャリア注入を行うことが可能である。成膜に際してはスパッタリング法、ゾルゲル法、CVD法など適宜選択可能である。
【0182】
また本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記バッファ層が、ホール注入側に配置された電荷注入層と発光機能を有した層との間に配置されるようにしてもよい。この構成により、電子の抜けをブロックすることができ、電子が発光機能を有した層内で有効に発光に寄与するようにすることができる。
【0183】
また本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記バッファ層が、高分子層で構成されるようにしてもよい。この構成により、バッファ層を塗布法で形成することができるため、真空工程を経ることなく形成することができる。
【0184】
また本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、前記陽極が透光性基板上に形成されており、前記電荷注入層が、前記陽極上に形成されたホール注入層と、前記発光機能を有した層を介して前記ホール注入層に対向するように、前記発光機能を有した層の上に形成された電子注入層とで構成され、前記電子注入層上には陰極が形成されたものを含むものを含む。すなわち、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、透光性基板上に形成された陽極と、前記陽極上に形成されたホール注入層と、前記ホール注入層上に形成されたバッファ層と、前記発光機能を有した層を介して前記ホール注入層に対向するように、前記発光機能を有した層上に形成された電子注入層と、陰極とで構成されるようにしてもよい。
この構成により、電子の抜けを生じ易いホール注入層側に電子ブロック層等のバッファ層が形成されており、かつこれらの層の上に発光機能を有した層が形成されるため、発光機能を有した層がホール注入層の成膜時にダメージを受けるのを防止することができる。
ここで陰極としては、電子の注入を容易にするためのカルシウム(Ca)層やバリウム(Ba)層など仕事関数の小さい層を発光層側に配した多層構造体として形成するのが望ましい。
【0185】
本発明で用いる上記化合物においては価数の異なる化合物も存在し易く、例示したもの以外にも価数の異なる化合物の形をとるものも含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明のエレクトロルミネッセント素子は、高輝度化が可能で、幅広い輝度の範囲にわたって安定に動作するとともに、寿命特性に優れているため、フラットパネルディスプレイや表示素子を含む広範な応用、あるいは光ヘッド及び画像形成装置として、複写機、プリンタ、マルチファンクションプリンタ、ファクシミリなどに適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明の実施の形態1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子110の断面概要図
【図2】同有機エレクトロルミネッセント素子の発光特性を示す図
【図3】本発明の実施の形態2に記載の有機エレクトロルミネッセント素子110の断面概要図
【図4】同有機エレクトロルミネッセント素子の発光特性を示す図
【図5】本発明の実施の形態3に記載の光ヘッドを構成するエレクトロルミネッセント素子110およびその周辺の断面図
【図6】本発明の実施の形態3に記載の光ヘッドの光検出素子近傍の構成を示した平面構成説明図
【図7】本発明の実施の形態3に記載の光ヘッドに用いられるエレクトロルミネッセント素子の画素規制層の表面物性を示す写真
【図8】従来のエレクトロルミネッセント素子の画素規制層の表面物性を示す写真
【図9】本発明の実施の形態3に記載の光ヘッドに用いられるエレクトロルミネッセント素子の発光状態を示す写真
【図10】従来の光ヘッドに用いられるエレクトロルミネッセント素子の発光状態を示す写真
【図11】本発明の実施の形態3に記載の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドの光量検出回路の等価回路図
【図12】本発明の実施の形態3に記載の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドの光検出素子の特性を示す図
【図13】本発明の実施の形態3に記載の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドの光量検出フローを示す図
【図14】本発明の実施の形態3に記載の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた光ヘッドの変形例を示す断面図
【図15】本発明の実施の形態4に記載の有機エレクトロルミネッセント素子をトップエミッション構造で構成した場合の断面図
【図16】本発明の実施の形態4に記載の光ヘッドの変形例を示す断面図
【図17】本発明の実施の形態5の光ヘッドを用いた画像形成装置21の構成図
【図18】本発明の実施の形態5に記載の画像形成装置21における現像ステーション22の周辺を示す構成図
【図19】本発明の実施の形態6に記載のアクティブマトリックス型の表示装置の等価回路図
【図20】本発明の実施の形態6に記載の表示装置のレイアウト説明図
【図21】本発明の実施の形態6に記載の表示装置の上面説明図
【図22】従来例の有機エレクトロルミネッセント素子110の断面概要図
【図23】同有機エレクトロルミネッセント素子の発光特性を示す図
【符号の説明】
【0188】
100 ガラス基板
101 オーバーコート層
110 エレクトロルミネッセント素子
111 陽極
112 発光層
113 陰極
114 画素規制層
115 遷移金属酸化物層
120 光検出素子
121 多結晶シリコン層
121S,D ソース・ドレイン領域
121i チャネル領域
122 第1の絶縁層
123 第2の絶縁層
124 保護層
125S、D ソース・ドレイン電極
130 駆動トランジスタ
131 活性層
132S,D ソース・ドレイン領域
133 ゲート電極
134S、D ソース・ドレイン電極
21 画像形成装置
22 現像ステーション
22Y 現像ステーション
22M 現像ステーション
22C 現像ステーション
22K 現像ステーション
23 記録紙
24 給紙トレイ
25 記録紙搬送路
26 現像剤
27a 攪拌パドル
27b 攪拌パドル
28 感光体
28Y 感光体
28M 感光体
28C 感光体
28K 感光体
29 帯電器
30 現像スリーブ
31 薄層化ブレード
32 マグロール
33 露光装置
33Y 露光装置
33M 露光装置
33C 露光装置
33K 露光装置
36 転写ローラ
37 トナーボトル
38 給紙ローラ
39 レジストローラ
40 ピンチローラ
41 記録紙通過検出センサ
43 定着器
44 加熱ローラ
45 加圧ローラ
46 背面コア
47 温度センサ
48 記録紙後端検出センサ
52 トナー像検出センサ
53 記録紙搬送ドラム
54 フェイスダウン排出部
55 蹴り出しローラ
56 支持部材
57 リブ
58 駆動源
59 排紙トレイ
61 コントローラ
62 エンジン制御部
63 電源部
64 電源監視部
65 給紙口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一組の電極と、前記電極間に形成された複数の機能層とを具備し、
前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、
少なくとも膜厚30nm以上の遷移金属酸化物層を含む有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層は比抵抗が100000オーム/cm以上である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項3】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記少なくとも一組の電極のうちの少なくとも一方が、透光性基板表面に形成されており、前記電極上に前記遷移金属酸化物層を形成すると共にその上層に発光機能を有した層 を配置した有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項4】
請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層と前記発光機能を有した層との間にバッファ層を含む有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項5】
請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記バッファ層は電子ブロック層である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項6】
請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記バッファ層は高分子化合物を含む有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記電極と前記発光機能を有した層との間に画素規制層を備え、
光出射領域を規定するようにした有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項8】
請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層が絶縁膜である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項9】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層が酸化シリコンである有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項10】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層が窒化シリコンである構有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項11】
請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層がフォトレジスト材料で構成された有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層表面全体を遷移金属酸化物層で被覆され、この上層に発光機能を有した層が形成された有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項13】
請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層はインクジェット法により形成された有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項14】
請求項7乃至11のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層が前記画素規制層の下層に形成され、前記遷移金属酸化物層が光出射領域でのみ前記機能層と当接した有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層が酸化モリブデン層である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項16】
請求項15に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記酸化モリブデン層の膜厚は膜厚40nm以上である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項17】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記画素規制層の膜厚は膜厚20nm以上100nm以下である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層が少なくとも1種の高分子発光材料を含む有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項19】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層がフルオレン環を含む高分子化合物を含む有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項20】
請求項19に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層が下記一般式(I)で表されるポリフルオレンおよびその誘導体(R1、R2はそれぞれ置換基を表す)を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【化1】

【請求項21】
請求項20に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層がフェニレンビニレン基を含む有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項22】
請求項21記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層が下記一般式(II)で表されるポリフェニレンビニレンおよびその誘導体(R3、R4はそれぞれ置換基を表す)を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【化2】

【請求項23】
請求項18に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記機能層は、樹木状多分岐構造をもつ少なくとも1種類の高分子物質からなる発光機能を有した層と、少なくとも1種類の無機物からなる電荷注入層とを含む有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項24】
請求項23に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層は、発光性の構造単位を中心に有する樹木状多分岐高分子構造体からなる有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項25】
請求項23に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記発光機能を有した層は、発光性の構造単位を中心に有する樹木状多分岐低分子構造体からなる有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項26】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記一組の電極のうちの一方の電極である陽極は透光性基板上に形成されており、
前記陽極上に形成された遷移金属酸化物層としての酸化モリブデン層と、
ホール注入層と、
前記発光機能を有した層と、
前記ホール注入層に対向するように、前記発光機能を有した層の上に形成された電子注入層と、
前記電子注入層上に配設され前記一組の電極のうち他方の電極である陰極とが順次積層形成された有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子が二次元に配列形成された表示装置。
【請求項28】
請求項1乃至26のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子が列状に配列され、発光部を構成した露光装置。
【請求項29】
請求項1乃至26のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
前記一組の電極のうちの一方の電極の形成された基板表面に膜厚30nm以上の遷移金属酸化物層を形成する工程と、
この上にインクジェット法により発光機能を有した層を形成する工程とを含む有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【請求項30】
請求項29に記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
遷移金属酸化物層の形成に先立ち、画素規制層を形成する工程を含み、前記遷移金属酸化物層上に発光機能を有した層を形成するようにした有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【請求項31】
請求項29に記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
遷移金属酸化物層の形成後に、画素規制層を形成する工程を含み、前記画素規制層の形成された遷移金属酸化物層上に発光機能を有した層を形成するようにした有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−288074(P2007−288074A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116194(P2006−116194)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】