有機ガス処理装置
【課題】小型で且つ運転が容易な有機ガス処理装置を提供すること。
【解決手段】紫外線を発生し、前記紫外線により光触媒に有機ガスを分解させる紫外線光源と、内壁が前記光触媒の皮膜で覆われ且つ前記紫外線を透す筒状体であって、前記紫外線光源を囲うように前記紫外線光源の長手方向に沿って配置され、且つ前記長手方向に延在する軸を中心に自転する複数の有機ガス光分解部と、複数の前記有機ガス光分解部を直列に連結して、前記有機ガス光分解部の連結構造体を形成する複数の連結管と、前記連結構造体の一端に設けられ、前記有機ガスを含むガスが流入する第1の開口部と、前記連結構造体の他端に設けられ、前記ガスが流出する第2の開口部とを有すること。
【解決手段】紫外線を発生し、前記紫外線により光触媒に有機ガスを分解させる紫外線光源と、内壁が前記光触媒の皮膜で覆われ且つ前記紫外線を透す筒状体であって、前記紫外線光源を囲うように前記紫外線光源の長手方向に沿って配置され、且つ前記長手方向に延在する軸を中心に自転する複数の有機ガス光分解部と、複数の前記有機ガス光分解部を直列に連結して、前記有機ガス光分解部の連結構造体を形成する複数の連結管と、前記連結構造体の一端に設けられ、前記有機ガスを含むガスが流入する第1の開口部と、前記連結構造体の他端に設けられ、前記ガスが流出する第2の開口部とを有すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、種々の有機ガス(気化した有機物)が発生する。例えば、半導体基板の洗浄工程では、イソプロピルアルコールや酢酸ブチル等の洗浄液が気化して、有機ガスになる。また、フォトリソグラフィ工程では、半導体基板に塗布したフォトレジスト液から有機溶剤が気化して有機ガスになる。
【0003】
これらの有機ガスは、清浄空気等の雰囲気ガスと共に、工場内に張り巡らされた排気ダクトに排気される。排気ダクトに排気された有機ガスは、雰囲気ガスと共に一箇所に集められて、有機溶剤無害化装置(半導体製造装置用の有機ガス処理装置)により無害化される。この有機溶剤無害化装置は、有機ガスを活性炭に吸着させて回収する装置である。
【0004】
活性炭を用いる有機溶剤無害化装置は、吸着塔、脱着塔、及びコンデンサーを有する大型設備である。このため、有機溶剤無害化装置の設置面積は、100m2に迫る広い面積である。更に、この有機溶剤無害化装置の運転には、多大な労力が費やされている。
【0005】
尚、悪臭の原因となる有機ガスを、光触媒の光分解作用を利用して分解する空気清浄装置が提案されている。しかし、このような空気清浄装置も広い設置面積を必要とし、且つその有機ガスの分解能力は必ずしも高くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−238115号公報
【特許文献2】特開2007−307297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、小型で且つ運転が容易な有機ガス処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本装置の一観点によれば、紫外線を発生し、上記紫外線により光触媒に有機ガスを分解させる紫外線光源と、内壁が上記光触媒の皮膜で覆われ且つ上記紫外線を透す筒状体であって、上記紫外線光源を囲うように上記紫外線光源の長手方向に沿って配置され、且つ上記長手方向に延在する軸を中心に自転する複数の有機ガス光分解部と、複数の上記有機ガス光分解部を直列に連結して、上記有機ガス光分解部の連結構造体を形成する複数の連結管と、上記連結構造体の一端に設けられ、上記有機ガスを含むガスが流入する第1の開口部と、上記連結構造体の他端に設けられ、上記ガスが流出する第2の開口部とを有する有機ガス処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本装置によれば、小型で且つ運転が容易な有機ガス処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1の有機ガス処理装置の側面図である。
【図2】図1のII-II線における断面を矢印の方向から見た図である。
【図3】実施の形態1の有機ガス処理装置の連結構造体の斜視図である
【図4】第1の隔壁及びガス導入部を取り外して、有機ガス光分解ユニットの内部を、図1の矢印IVの方向から見た図である。
【図5】第2の隔壁及びガス排出部を取り外して、有機ガス光分解ユニットの内部を、図1の矢印Vの方向から見た図である。
【図6】実施の形態1の有機ガス処理装置の使用状態を説明する図である。
【図7】有機ガス光分解部の内壁を覆う光触媒皮膜の構造を説明する図である。
【図8】光触媒粒子をバインダーで基材に固定して形成した光触媒皮膜の構造を説明する図である。
【図9】実施の形態2の有機ガス光分解部の斜視図である。
【図10】実施の形態3の有機ガス光分解部を形成する棒状部材の斜視図である。
【図11】棒状部材を束ねて形成した有機ガス光分解部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。尚、図面が異なっても対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
(実施の形態1)
本実施の形態は、光触媒による光分解作用を利用した、小型で且つ運転が容易な有機ガス処理装置に関する。
【0013】
(1)構 成
図1は、本実施の形態の有機ガス処理装置2の側面図である。図2は、図1のII-II線における断面を矢印の方向から見た図である。
【0014】
本有機ガス処理装置2は、図1に示すように、有機ガス光分解ユニット4と、回転ユニット9を有している。
【0015】
(i)有機ガス光分解ユニット
有機ガス光分解ユニット4は、筒状の本体部7と、ガス導入部8と、ガス排出部10とを有している。
【0016】
―ガス導入部及びガス排出部―
ガス導入部8とガス排出部10は、図1及び2に示すように、漏斗状の部材である。ガス導入部8の広口部には、本体部7の一端が、メカニカルシール20aにより回転自在に取り付けられている。同じく、ガス排出部10の広口部には、本体部7の他端が、メカニカルシール20bにより回転自在に取り付けられている。
【0017】
―本体部―
本体部7は、図2に示すように、紫外線を発生しこの紫外線により光触媒に有機ガスを分解させる紫外線光源14と、複数の有機ガス光分解部24が連結された連結構造体16と、紫外線光源14と連結構造体16を格納する格納容器12を有している。更に、本体部7は、格納容器12とガス導入部8を隔てる第1の隔壁36と、格納容器12とガス排出部10を隔てる第2の隔壁38を有している。
【0018】
ここで、紫外線光源14としては、発光ダイオードアレイまたはブラックライト蛍光灯が好ましい。発光ダイオードアレイによれば、光触媒として広く用いられている酸化チタン(TiO2)の活性化に適した、波長が375nmの紫外線を、容易に発生することができる。
【0019】
紫外線光源14は、図2に示すように、光源保護容器15に格納された状態で、格納容器12の中心に配置されている。尚、光源保護容器15は、紫外線を透す材料(例えば、石英やパイレックス(登録商標))で形成されている。
【0020】
紫外線光源14の周囲には、上述した連結構造体16が配置されている。図3は、この連結構造体16の斜視図である。連結構造体16は、図2及び3に示すように、紫外線光源14を囲うように紫外線光源14の長手方向に沿って配置された複数の有機ガス光分解部24を有している。更に、連結構造体16は、複数の有機ガス光分解部24を直列に連結する複数の連結管26a,26bを有している。そして、連結構造体16の一端には、有機ガスを含むガス28が流入する第1の開口部30が設けられている。また、連結構造体16の他端には、処理済のガス32が流出する第2の開口部34が設けられている。尚、図2では、第2の開口部34は、第1の開口部30の反対側に描かれている。しかし、実際は、第1の開口部30と第2の開口部34は、隣接した有機ガス光分解部24に設けられている。
【0021】
ここで、有機ガス光分解部24は、紫外線を透す材料(例えば、石英やパイレックス(登録商標))で形成された筒状体であって、その内壁は光触媒22の皮膜(以下、光触媒皮膜と呼ぶ)23により覆われている。そして、有機ガス光分解部24の両端は、図2及び3に示すように、キャップ25a,25bにより塞がれている。但し、連結構造体16の両端に位置する、有機ガス光分解部24の一端は塞がれず、第1の開口部30及び第2の開口部34となっている。
【0022】
光触媒22としては、アナターゼ型の酸化チタン(TiO2)が好ましい。また、光触媒皮膜23は、例えば、実施の形態2で説明する溶射法により形成することができる。或いは、光触媒皮膜23は、光触媒粒子をバインダー(接着材)で基材に固定するバインダー固定法やゾルゲル法により、形成することもできる。
【0023】
上述した連結管の一部26aは、図2に示すように、第1の隔壁36及びキャップ25aを貫通している。この一部の連結管26aは、第1の隔壁36に固定されている。同様に、残りの連結管26bは、第2の隔壁38及びキャップ25bを貫通している。また、残りの連結管26bは、第2の隔壁38に固定されている。そして、これら連結管26a,26bに、有機ガス光分解部24が、回転自在に取り付けられている。
【0024】
図4は、ガス導入部8及び第1の隔壁36を取り外して、本体部7の内部を図1の矢印IVの方向から見た図である。図5は、同様に、ガス排出部10及び第2の隔壁38を取り外して、本体部7の内部を図1の矢印Vの方向から見た図である。
【0025】
図4及び5に示すように、有機ガス光分解部のキャップ25a,25bの側面には、歯車が形成されている。また、格納容器12の内側の側面及び光源保護容器15の側面には、夫々、有機ガス光分解部24の歯車に噛み合う歯車が設けられている。従って、有機ガス光分解部24は、格納容器12が回転すると、有機ガス光分解部24の長手方向に延在する軸40(図2参照)を中心に自転する。
【0026】
尚、有機ガス光分解部24及び光源保護容器15の本体は、上述したように紫外線を透す石英やパイレックス(登録商標)で形成されている。しかし、有機ガス光分解部24及び光源保護容器15の歯車は、歯車に加工しやすく且つ壊れ難い金属で形成されている。
【0027】
(ii)回転体ユニット
回転体ユニット9は、図1に示すように、側面に歯車が形成された回転体6と、回転体6を支持する支持台5を有している。
【0028】
図1に示すように、本体部7の格納容器12の外側の側面には、歯車18が形成されている。回転体6の歯車は、この格納容器12の歯車18と噛み合っている。従って、回転体9が回転すると、格納容器12が回転する。
【0029】
(2)動 作
図6は、本実施の形態の有機ガス処理装置2の使用状態を説明する図である。有機ガス処理装置2のガス導入部8は、図6(a)に示すように、配管52aにより半導体製造装置50の排気口に接続されている。従って、ガス導入部8は、連結構造体16の第1の開口部30を、配管52aを介して、有機ガスを発生する半導体製造装置50に連結している(図2参照)。
【0030】
また、有機ガス処理装置2のガス排出部10は、配管52bにより、集中排気装置(図示せず)に接続された排気ダクト(図示せず)に連結されている。従って、ガス排出部10は、連結構造体16の第2の開口部34を、配管52b及び排気ダクトを介して、集中排気装置に連結している(図2参照)。
【0031】
この集中排気装置が稼働すると排気ダクト内が陰圧になり、その結果、有機ガス処理装置2が排気される。すると、排気され陰圧になった有機ガス処理装置2に、半導体製造装置50で発生した有機ガスが、清浄空気等のガスと共に流入する。この有機ガスを含むガス28は、図2に示すように、まず有機ガス処理装置2のガス導入部8に流入し、その後第1の開口部30から連結構造体16に流入する。次に、有機ガスを含むガス28は、複数の有機ガス光分解部24と複数の連結管26a,26bを交互に通過して、第2の開口部34に到達する。この間に、有機ガスは光触媒被膜により分解され、処理済みのガス32が形成される。この処理済みのガス32は、ガス排出部10を通過し、配管52bに排出される。
【0032】
ところで、一般的に、集中排気装置の排気速度はかなり大きい。しかし、集中排気装置には多数の半導体製造装置が接続されるので、個々半導体製造装置における排気速度は小さくなっている。従って、有機ガスを含むガス28は、有機ガス光分解部24の内部を穏やかに流れる。
【0033】
このように、有機ガス光分解部内を有機ガスを含むガス28が流れている間、紫外線光源14が点灯され、発生した紫外線が有機ガス光分解部24に照射される。この紫外線は、有機ガス光分解部24の管壁を透過し、光触媒皮膜23に裏面から入射する。紫外線が入射した光触媒皮膜23は、スーパーオキサイド(O2-)とヒドロキシラジカルを生成する。これら活性種が、その強い酸化還元作用により有機ガスを分解する。
【0034】
ここで、光触媒皮膜23に入射する紫外線の強度は、光触媒皮膜23が形成された管内位置により異なる。紫外線光源14に近接した位置では紫外線強度は強く、紫外線光源14から離れた位置では紫外線強度は弱くなる。このように紫外線強度が弱い位置では、有機ガスの分解効率が低い。
【0035】
そこで、本実施の形態では、有機ガス光分解部24を自転させることにより、光触媒皮膜23に紫外線を一様に照射する。ここで、有機ガス光分解部24の自転速度は、好ましくは、毎分10〜20回転である。
【0036】
有機ガス光分解部24の自転は、以下のように実現される。まず、回転体6に接続されたモータ(図示せず)を駆動して、回転体6を回転する。上述したように、回転体6の側面には歯車が形成されている。この歯車は、格納容器12の外側の側面に形成された歯車と噛み合っている。このため、回転体6が回転すると、格納容器12が回転する。格納容器12には、外側の側面だけなく内側の側面にも歯車が形成されている。この歯車は、有機ガス光分解部24のキャップ25a,25bの側面に形成された歯車と噛み合っている。従って、格納容器12が回転すると、複数の有機ガス光分解部24が同時に回転(自転)する。これにより、光触媒皮膜23に紫外線が一様に照射され、有機ガス光分解部24の内壁に形成された光触媒皮膜は全面で活性化され、その光分解効率は高くなる。
【0037】
上述したように、有機ガス光分解部24の長さは0.5〜2.0mである。このような有機ガス光分解部24が7本直列に連結されて、有機ガス分解ユニット4が形成されている。従って、有機ガスを含むガスは、3.5〜14mに及ぶ長い距離を、全面が活性化した光触媒皮膜23に接しながら穏やかに流れる。このため、有機ガスは十分に分解され、有機ガスの分解効率は高くなる。
【0038】
このように、本有機ガス処理装置2には、有機ガス光分解部24が多数連結された長い光分解領域(連結構造体16)が形成されている。しかし、本有機ガス処理装置2では、図2及び3に示すように、この光分解領域は繰り返し折り返されている。このため、本有機ガス処理装置2の長さは、高々0.5〜2.0mである。また、本有機ガス処理装置2の高さ及び幅は、高々0.15〜0.6mである。このように、本有機ガス処理装置2は小型である。
【0039】
更に、本有機ガス光分解部24を動作させるには、紫外線光源14を点灯するだけでよい。故に、本有機ガス処理装置2の運転は極めて容易である。また、本有機ガス処理装置2は、個々の半導体製造装置ごとに設置される分散処理型の排ガス処理装置なので、特別に設置エリアを設ける必要はない。
【0040】
(3)変形例
以上の例では、有機ガス処理装置2は、長手方向が水平になるように設置されている。しかし、有機ガス処理装置2は、図6(b)に示すように、有機ガス光分解部24の長手方向が鉛直になるように設置してもよい。
【0041】
また、以上の例では、有機ガス光分解部24は7本である。しかし、有機ガス光分解部24の本数は、要求される有機ガスの分解能力に応じて、適宜変更することが好ましい。
【0042】
また、有機ガス光分解部24の長さ及び太さも、要求される有機ガスの分解能力に応じて、適宜変更することが好ましい。
【0043】
これらの変更は、有機ガス光分解部24の数、長さ、及び太さが異なる複数の本体部分7を用意しておき、要求される有機ガスの分解能力に応じ、適宜本体部を交換することにより実現できる。
【0044】
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1の有機ガス処理装置において、光触媒皮膜の光分解能力を向上させた有機ガス処理装置に関する。尚、実施の形態1と共通する部分にいては、説明を省略する。
【0045】
(1)光触媒皮膜
図7は、本実施の形態の光触媒皮膜42の構造を説明する図である。図8は、広く用いられている光触媒皮膜である、光触媒粒子をバインダー46で基材48に固定した光触媒皮膜42aの構造を説明する図である。
【0046】
本実施の形態の光触媒皮膜42は、図7に示すように、複数の光触媒の粒子(例えば、酸化チタン粒子(TiO2))44が直接結合した皮膜である。従って、光触媒皮膜42の表面は、密集した光触媒の粒子により覆われている。このため、光触媒皮膜42の表面に沿って流れる、有機ガスを含むガス28aは、常に光触媒粒子44に接触する。
【0047】
一方、光触媒皮膜内の光触媒粒子間には、多数の空隙54が形成されている(図7参照)。有機ガスを含むガスの一部28bは、光触媒皮膜内部に侵入し、この空隙を伝わって光触媒皮膜内を伝搬する。この間、有機ガスを含むガス28bは、光触媒粒子44と緊密に接触する。
【0048】
このように、本実施の形態では、有機ガスを含むガス28a,28bと光触媒粒子44が緊密に接触する。従って、光触媒皮膜42による有機ガスの光分解能力は高くなる。故に、本実施の形態によれば、有機ガス分解部を短くしても有機ガスの処理能力を高く保つことができるので、有機ガス処理装置を一層小型化することができる。
【0049】
図7のように複数の光触媒粒子が直接結合して形成される光触媒皮膜は、例えば、燃焼ガスやプラズマにより材料粒子を溶融し、ガスと共に基材表面に吹き付ける溶射法により形成することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0050】
図8は、光触媒粒子44をバインダー46で基材48に固定した光触媒皮膜42aの構造を説明する図である。光触媒皮膜42aとしては、このような構造の皮膜が一般的である。この光触媒皮膜42aの表面には、図8に示すように、光触媒粒子44が疎らにしか分布していない。従って、この光触媒皮膜42aの表面を流れる、有機ガスを含むガス28aは、間欠的にしか光触媒粒子44に接触しない。また、光触媒皮膜42aの内部の光触媒粒子44の間は、隙間無くバインダー46で充填されている。従って、有機ガスを含むガス28aが、光触媒皮膜42aの内部に侵入することはない。
【0051】
故に、図8に示すように、バインダーにより光触媒粒子を基材48に固定した光触媒皮膜42aでは、有機ガスを含むガスが、光触媒粒子44に緊密に接触することなない。従って、このような光触媒皮膜42aによる有機ガスの分解能力は余り高くない。
【0052】
(2)有機ガス光分解部
本実施の形態の光触媒皮膜は、上述したように、溶射法により形成することができる。上述したように、溶射法は、溶融した材料粒子を含むガスを基材に吹き付けて皮膜を形成する成膜方法である。
【0053】
ところで、有機ガス光分解部の本体部分は、図2等を参照して説明したように、筒状の部材である。このような筒状部材の内壁に、溶融した材料粒子を含むガスを吹き付けて皮膜を形成することは困難である。
【0054】
図9は、本実施の形態の有機ガス光分解部24aの斜視図である。但し、図9では、キャップ25a,25bは省略されている。図9に示すように、本実施の形態の有機ガス光分解部24aは、紫外線光源の長手方向に延在する軸40に沿って延在する複数の棒状の部材56を有している。この棒状部材56は、石英やパイレックス(登録商標)等の紫外線を透す材料で形成されている。この棒状部材56の側面には、光触媒皮膜23aが溶射法により半周形成されている。このような棒状部材の側面に、光触媒皮膜を溶射法により形成することは容易である。そして、溶射法により光触媒皮膜23aが形成された棒状部材56が、光触媒皮膜23aが形成された領域を内側として束ねられ、有機ガス光分解部24aとなっている。
【0055】
尚、棒状部材の代わりに、短辺方向に沿って円弧状に湾曲した板状部材や細長い板状部材の一面に、光触媒皮膜23aを溶射法により形成してもよい。
【0056】
以上のように、本実施の形態によれば、有機ガス光分解部の内壁を、溶射法による光触媒皮膜で覆うことができる。
【0057】
尚、以上の例では、棒状部材の表面に直接光触媒皮膜を形成しているが、アクリル樹脂層等のアンダーコート層を上記棒状部材の表面に形成してから、光触媒皮膜42を溶射法により形成してもよい。
【0058】
(実施の形態3)
本実施の形態は、実施の形態2の有機ガス処理装置において、光触媒皮膜と有機ガスの接触面積を広くした有機ガス処理装置に関する。尚、実施の形態2と共通する部分にいては、説明を省略する。
【0059】
図10は、本実施の形態の有機ガス光分解部を形成する棒状部材56aの斜視図である。図10に示すように、本実施の形態の棒状部材56aには、光触媒の皮膜で覆われた複数の突起部58が設けられている。図11は、この棒状の部材56aを束ねて形成した有機ガス光分解部の断面図である。図11には、この有機ガス光分解部の内部を流れる、有機ガスを含むガス28の流れも記載されている。
【0060】
図11に示すように、有機ガスを含むガス28は、光触媒皮膜で覆われた突起部58に接触しながら有機ガス光分解部内を流れる。従って、本実施の形態によれば、有機ガスを含むガス28と光触媒皮膜の接触面積が広くなるので、有機ガスの分解効率が高くなる。
【0061】
尚、以上の本実施の形態では、有機ガス光分解部を形成する複数の部材の側面に突起部58を設けている。しかし、一体形成された管状部材の内壁に、光触媒皮膜で覆われた複数の突起部を設けてもよい。すなわち、本実施の形態の有機ガス処理装置は、光触媒皮膜で覆われ、有機ガス光分解部の内壁に設けられた、複数の突起部を有している。
【0062】
以上の実施の形態1乃至3では、光触媒皮膜の原料として酸化チタンを用いているが、酸化亜鉛等の他の光触媒を用いてもよい。
【0063】
また、実施の形態1では、有機ガス処理装置を、半導体製造装置が発生する有機ガスの処理に用いている。しかし、本有機ガス処理装置は、半導体製造装置以外の装置(例えば、有機溶媒を用いて機械部品を洗浄する装置)が発生する有機ガスの処理や悪臭の原因物質(ホルムアルデヒト、メルカプタン類等)の処理に用いてもよい。
【符号の説明】
【0064】
2・・・有機ガス処理装置
14・・・紫外線光源
22・・・光触媒
24・・・有機ガス光分解部
26・・・連結管
30・・・第1の開口部
34・・・第2の開口部
58・・・突起部
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、種々の有機ガス(気化した有機物)が発生する。例えば、半導体基板の洗浄工程では、イソプロピルアルコールや酢酸ブチル等の洗浄液が気化して、有機ガスになる。また、フォトリソグラフィ工程では、半導体基板に塗布したフォトレジスト液から有機溶剤が気化して有機ガスになる。
【0003】
これらの有機ガスは、清浄空気等の雰囲気ガスと共に、工場内に張り巡らされた排気ダクトに排気される。排気ダクトに排気された有機ガスは、雰囲気ガスと共に一箇所に集められて、有機溶剤無害化装置(半導体製造装置用の有機ガス処理装置)により無害化される。この有機溶剤無害化装置は、有機ガスを活性炭に吸着させて回収する装置である。
【0004】
活性炭を用いる有機溶剤無害化装置は、吸着塔、脱着塔、及びコンデンサーを有する大型設備である。このため、有機溶剤無害化装置の設置面積は、100m2に迫る広い面積である。更に、この有機溶剤無害化装置の運転には、多大な労力が費やされている。
【0005】
尚、悪臭の原因となる有機ガスを、光触媒の光分解作用を利用して分解する空気清浄装置が提案されている。しかし、このような空気清浄装置も広い設置面積を必要とし、且つその有機ガスの分解能力は必ずしも高くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−238115号公報
【特許文献2】特開2007−307297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、小型で且つ運転が容易な有機ガス処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本装置の一観点によれば、紫外線を発生し、上記紫外線により光触媒に有機ガスを分解させる紫外線光源と、内壁が上記光触媒の皮膜で覆われ且つ上記紫外線を透す筒状体であって、上記紫外線光源を囲うように上記紫外線光源の長手方向に沿って配置され、且つ上記長手方向に延在する軸を中心に自転する複数の有機ガス光分解部と、複数の上記有機ガス光分解部を直列に連結して、上記有機ガス光分解部の連結構造体を形成する複数の連結管と、上記連結構造体の一端に設けられ、上記有機ガスを含むガスが流入する第1の開口部と、上記連結構造体の他端に設けられ、上記ガスが流出する第2の開口部とを有する有機ガス処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本装置によれば、小型で且つ運転が容易な有機ガス処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1の有機ガス処理装置の側面図である。
【図2】図1のII-II線における断面を矢印の方向から見た図である。
【図3】実施の形態1の有機ガス処理装置の連結構造体の斜視図である
【図4】第1の隔壁及びガス導入部を取り外して、有機ガス光分解ユニットの内部を、図1の矢印IVの方向から見た図である。
【図5】第2の隔壁及びガス排出部を取り外して、有機ガス光分解ユニットの内部を、図1の矢印Vの方向から見た図である。
【図6】実施の形態1の有機ガス処理装置の使用状態を説明する図である。
【図7】有機ガス光分解部の内壁を覆う光触媒皮膜の構造を説明する図である。
【図8】光触媒粒子をバインダーで基材に固定して形成した光触媒皮膜の構造を説明する図である。
【図9】実施の形態2の有機ガス光分解部の斜視図である。
【図10】実施の形態3の有機ガス光分解部を形成する棒状部材の斜視図である。
【図11】棒状部材を束ねて形成した有機ガス光分解部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。尚、図面が異なっても対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
(実施の形態1)
本実施の形態は、光触媒による光分解作用を利用した、小型で且つ運転が容易な有機ガス処理装置に関する。
【0013】
(1)構 成
図1は、本実施の形態の有機ガス処理装置2の側面図である。図2は、図1のII-II線における断面を矢印の方向から見た図である。
【0014】
本有機ガス処理装置2は、図1に示すように、有機ガス光分解ユニット4と、回転ユニット9を有している。
【0015】
(i)有機ガス光分解ユニット
有機ガス光分解ユニット4は、筒状の本体部7と、ガス導入部8と、ガス排出部10とを有している。
【0016】
―ガス導入部及びガス排出部―
ガス導入部8とガス排出部10は、図1及び2に示すように、漏斗状の部材である。ガス導入部8の広口部には、本体部7の一端が、メカニカルシール20aにより回転自在に取り付けられている。同じく、ガス排出部10の広口部には、本体部7の他端が、メカニカルシール20bにより回転自在に取り付けられている。
【0017】
―本体部―
本体部7は、図2に示すように、紫外線を発生しこの紫外線により光触媒に有機ガスを分解させる紫外線光源14と、複数の有機ガス光分解部24が連結された連結構造体16と、紫外線光源14と連結構造体16を格納する格納容器12を有している。更に、本体部7は、格納容器12とガス導入部8を隔てる第1の隔壁36と、格納容器12とガス排出部10を隔てる第2の隔壁38を有している。
【0018】
ここで、紫外線光源14としては、発光ダイオードアレイまたはブラックライト蛍光灯が好ましい。発光ダイオードアレイによれば、光触媒として広く用いられている酸化チタン(TiO2)の活性化に適した、波長が375nmの紫外線を、容易に発生することができる。
【0019】
紫外線光源14は、図2に示すように、光源保護容器15に格納された状態で、格納容器12の中心に配置されている。尚、光源保護容器15は、紫外線を透す材料(例えば、石英やパイレックス(登録商標))で形成されている。
【0020】
紫外線光源14の周囲には、上述した連結構造体16が配置されている。図3は、この連結構造体16の斜視図である。連結構造体16は、図2及び3に示すように、紫外線光源14を囲うように紫外線光源14の長手方向に沿って配置された複数の有機ガス光分解部24を有している。更に、連結構造体16は、複数の有機ガス光分解部24を直列に連結する複数の連結管26a,26bを有している。そして、連結構造体16の一端には、有機ガスを含むガス28が流入する第1の開口部30が設けられている。また、連結構造体16の他端には、処理済のガス32が流出する第2の開口部34が設けられている。尚、図2では、第2の開口部34は、第1の開口部30の反対側に描かれている。しかし、実際は、第1の開口部30と第2の開口部34は、隣接した有機ガス光分解部24に設けられている。
【0021】
ここで、有機ガス光分解部24は、紫外線を透す材料(例えば、石英やパイレックス(登録商標))で形成された筒状体であって、その内壁は光触媒22の皮膜(以下、光触媒皮膜と呼ぶ)23により覆われている。そして、有機ガス光分解部24の両端は、図2及び3に示すように、キャップ25a,25bにより塞がれている。但し、連結構造体16の両端に位置する、有機ガス光分解部24の一端は塞がれず、第1の開口部30及び第2の開口部34となっている。
【0022】
光触媒22としては、アナターゼ型の酸化チタン(TiO2)が好ましい。また、光触媒皮膜23は、例えば、実施の形態2で説明する溶射法により形成することができる。或いは、光触媒皮膜23は、光触媒粒子をバインダー(接着材)で基材に固定するバインダー固定法やゾルゲル法により、形成することもできる。
【0023】
上述した連結管の一部26aは、図2に示すように、第1の隔壁36及びキャップ25aを貫通している。この一部の連結管26aは、第1の隔壁36に固定されている。同様に、残りの連結管26bは、第2の隔壁38及びキャップ25bを貫通している。また、残りの連結管26bは、第2の隔壁38に固定されている。そして、これら連結管26a,26bに、有機ガス光分解部24が、回転自在に取り付けられている。
【0024】
図4は、ガス導入部8及び第1の隔壁36を取り外して、本体部7の内部を図1の矢印IVの方向から見た図である。図5は、同様に、ガス排出部10及び第2の隔壁38を取り外して、本体部7の内部を図1の矢印Vの方向から見た図である。
【0025】
図4及び5に示すように、有機ガス光分解部のキャップ25a,25bの側面には、歯車が形成されている。また、格納容器12の内側の側面及び光源保護容器15の側面には、夫々、有機ガス光分解部24の歯車に噛み合う歯車が設けられている。従って、有機ガス光分解部24は、格納容器12が回転すると、有機ガス光分解部24の長手方向に延在する軸40(図2参照)を中心に自転する。
【0026】
尚、有機ガス光分解部24及び光源保護容器15の本体は、上述したように紫外線を透す石英やパイレックス(登録商標)で形成されている。しかし、有機ガス光分解部24及び光源保護容器15の歯車は、歯車に加工しやすく且つ壊れ難い金属で形成されている。
【0027】
(ii)回転体ユニット
回転体ユニット9は、図1に示すように、側面に歯車が形成された回転体6と、回転体6を支持する支持台5を有している。
【0028】
図1に示すように、本体部7の格納容器12の外側の側面には、歯車18が形成されている。回転体6の歯車は、この格納容器12の歯車18と噛み合っている。従って、回転体9が回転すると、格納容器12が回転する。
【0029】
(2)動 作
図6は、本実施の形態の有機ガス処理装置2の使用状態を説明する図である。有機ガス処理装置2のガス導入部8は、図6(a)に示すように、配管52aにより半導体製造装置50の排気口に接続されている。従って、ガス導入部8は、連結構造体16の第1の開口部30を、配管52aを介して、有機ガスを発生する半導体製造装置50に連結している(図2参照)。
【0030】
また、有機ガス処理装置2のガス排出部10は、配管52bにより、集中排気装置(図示せず)に接続された排気ダクト(図示せず)に連結されている。従って、ガス排出部10は、連結構造体16の第2の開口部34を、配管52b及び排気ダクトを介して、集中排気装置に連結している(図2参照)。
【0031】
この集中排気装置が稼働すると排気ダクト内が陰圧になり、その結果、有機ガス処理装置2が排気される。すると、排気され陰圧になった有機ガス処理装置2に、半導体製造装置50で発生した有機ガスが、清浄空気等のガスと共に流入する。この有機ガスを含むガス28は、図2に示すように、まず有機ガス処理装置2のガス導入部8に流入し、その後第1の開口部30から連結構造体16に流入する。次に、有機ガスを含むガス28は、複数の有機ガス光分解部24と複数の連結管26a,26bを交互に通過して、第2の開口部34に到達する。この間に、有機ガスは光触媒被膜により分解され、処理済みのガス32が形成される。この処理済みのガス32は、ガス排出部10を通過し、配管52bに排出される。
【0032】
ところで、一般的に、集中排気装置の排気速度はかなり大きい。しかし、集中排気装置には多数の半導体製造装置が接続されるので、個々半導体製造装置における排気速度は小さくなっている。従って、有機ガスを含むガス28は、有機ガス光分解部24の内部を穏やかに流れる。
【0033】
このように、有機ガス光分解部内を有機ガスを含むガス28が流れている間、紫外線光源14が点灯され、発生した紫外線が有機ガス光分解部24に照射される。この紫外線は、有機ガス光分解部24の管壁を透過し、光触媒皮膜23に裏面から入射する。紫外線が入射した光触媒皮膜23は、スーパーオキサイド(O2-)とヒドロキシラジカルを生成する。これら活性種が、その強い酸化還元作用により有機ガスを分解する。
【0034】
ここで、光触媒皮膜23に入射する紫外線の強度は、光触媒皮膜23が形成された管内位置により異なる。紫外線光源14に近接した位置では紫外線強度は強く、紫外線光源14から離れた位置では紫外線強度は弱くなる。このように紫外線強度が弱い位置では、有機ガスの分解効率が低い。
【0035】
そこで、本実施の形態では、有機ガス光分解部24を自転させることにより、光触媒皮膜23に紫外線を一様に照射する。ここで、有機ガス光分解部24の自転速度は、好ましくは、毎分10〜20回転である。
【0036】
有機ガス光分解部24の自転は、以下のように実現される。まず、回転体6に接続されたモータ(図示せず)を駆動して、回転体6を回転する。上述したように、回転体6の側面には歯車が形成されている。この歯車は、格納容器12の外側の側面に形成された歯車と噛み合っている。このため、回転体6が回転すると、格納容器12が回転する。格納容器12には、外側の側面だけなく内側の側面にも歯車が形成されている。この歯車は、有機ガス光分解部24のキャップ25a,25bの側面に形成された歯車と噛み合っている。従って、格納容器12が回転すると、複数の有機ガス光分解部24が同時に回転(自転)する。これにより、光触媒皮膜23に紫外線が一様に照射され、有機ガス光分解部24の内壁に形成された光触媒皮膜は全面で活性化され、その光分解効率は高くなる。
【0037】
上述したように、有機ガス光分解部24の長さは0.5〜2.0mである。このような有機ガス光分解部24が7本直列に連結されて、有機ガス分解ユニット4が形成されている。従って、有機ガスを含むガスは、3.5〜14mに及ぶ長い距離を、全面が活性化した光触媒皮膜23に接しながら穏やかに流れる。このため、有機ガスは十分に分解され、有機ガスの分解効率は高くなる。
【0038】
このように、本有機ガス処理装置2には、有機ガス光分解部24が多数連結された長い光分解領域(連結構造体16)が形成されている。しかし、本有機ガス処理装置2では、図2及び3に示すように、この光分解領域は繰り返し折り返されている。このため、本有機ガス処理装置2の長さは、高々0.5〜2.0mである。また、本有機ガス処理装置2の高さ及び幅は、高々0.15〜0.6mである。このように、本有機ガス処理装置2は小型である。
【0039】
更に、本有機ガス光分解部24を動作させるには、紫外線光源14を点灯するだけでよい。故に、本有機ガス処理装置2の運転は極めて容易である。また、本有機ガス処理装置2は、個々の半導体製造装置ごとに設置される分散処理型の排ガス処理装置なので、特別に設置エリアを設ける必要はない。
【0040】
(3)変形例
以上の例では、有機ガス処理装置2は、長手方向が水平になるように設置されている。しかし、有機ガス処理装置2は、図6(b)に示すように、有機ガス光分解部24の長手方向が鉛直になるように設置してもよい。
【0041】
また、以上の例では、有機ガス光分解部24は7本である。しかし、有機ガス光分解部24の本数は、要求される有機ガスの分解能力に応じて、適宜変更することが好ましい。
【0042】
また、有機ガス光分解部24の長さ及び太さも、要求される有機ガスの分解能力に応じて、適宜変更することが好ましい。
【0043】
これらの変更は、有機ガス光分解部24の数、長さ、及び太さが異なる複数の本体部分7を用意しておき、要求される有機ガスの分解能力に応じ、適宜本体部を交換することにより実現できる。
【0044】
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1の有機ガス処理装置において、光触媒皮膜の光分解能力を向上させた有機ガス処理装置に関する。尚、実施の形態1と共通する部分にいては、説明を省略する。
【0045】
(1)光触媒皮膜
図7は、本実施の形態の光触媒皮膜42の構造を説明する図である。図8は、広く用いられている光触媒皮膜である、光触媒粒子をバインダー46で基材48に固定した光触媒皮膜42aの構造を説明する図である。
【0046】
本実施の形態の光触媒皮膜42は、図7に示すように、複数の光触媒の粒子(例えば、酸化チタン粒子(TiO2))44が直接結合した皮膜である。従って、光触媒皮膜42の表面は、密集した光触媒の粒子により覆われている。このため、光触媒皮膜42の表面に沿って流れる、有機ガスを含むガス28aは、常に光触媒粒子44に接触する。
【0047】
一方、光触媒皮膜内の光触媒粒子間には、多数の空隙54が形成されている(図7参照)。有機ガスを含むガスの一部28bは、光触媒皮膜内部に侵入し、この空隙を伝わって光触媒皮膜内を伝搬する。この間、有機ガスを含むガス28bは、光触媒粒子44と緊密に接触する。
【0048】
このように、本実施の形態では、有機ガスを含むガス28a,28bと光触媒粒子44が緊密に接触する。従って、光触媒皮膜42による有機ガスの光分解能力は高くなる。故に、本実施の形態によれば、有機ガス分解部を短くしても有機ガスの処理能力を高く保つことができるので、有機ガス処理装置を一層小型化することができる。
【0049】
図7のように複数の光触媒粒子が直接結合して形成される光触媒皮膜は、例えば、燃焼ガスやプラズマにより材料粒子を溶融し、ガスと共に基材表面に吹き付ける溶射法により形成することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0050】
図8は、光触媒粒子44をバインダー46で基材48に固定した光触媒皮膜42aの構造を説明する図である。光触媒皮膜42aとしては、このような構造の皮膜が一般的である。この光触媒皮膜42aの表面には、図8に示すように、光触媒粒子44が疎らにしか分布していない。従って、この光触媒皮膜42aの表面を流れる、有機ガスを含むガス28aは、間欠的にしか光触媒粒子44に接触しない。また、光触媒皮膜42aの内部の光触媒粒子44の間は、隙間無くバインダー46で充填されている。従って、有機ガスを含むガス28aが、光触媒皮膜42aの内部に侵入することはない。
【0051】
故に、図8に示すように、バインダーにより光触媒粒子を基材48に固定した光触媒皮膜42aでは、有機ガスを含むガスが、光触媒粒子44に緊密に接触することなない。従って、このような光触媒皮膜42aによる有機ガスの分解能力は余り高くない。
【0052】
(2)有機ガス光分解部
本実施の形態の光触媒皮膜は、上述したように、溶射法により形成することができる。上述したように、溶射法は、溶融した材料粒子を含むガスを基材に吹き付けて皮膜を形成する成膜方法である。
【0053】
ところで、有機ガス光分解部の本体部分は、図2等を参照して説明したように、筒状の部材である。このような筒状部材の内壁に、溶融した材料粒子を含むガスを吹き付けて皮膜を形成することは困難である。
【0054】
図9は、本実施の形態の有機ガス光分解部24aの斜視図である。但し、図9では、キャップ25a,25bは省略されている。図9に示すように、本実施の形態の有機ガス光分解部24aは、紫外線光源の長手方向に延在する軸40に沿って延在する複数の棒状の部材56を有している。この棒状部材56は、石英やパイレックス(登録商標)等の紫外線を透す材料で形成されている。この棒状部材56の側面には、光触媒皮膜23aが溶射法により半周形成されている。このような棒状部材の側面に、光触媒皮膜を溶射法により形成することは容易である。そして、溶射法により光触媒皮膜23aが形成された棒状部材56が、光触媒皮膜23aが形成された領域を内側として束ねられ、有機ガス光分解部24aとなっている。
【0055】
尚、棒状部材の代わりに、短辺方向に沿って円弧状に湾曲した板状部材や細長い板状部材の一面に、光触媒皮膜23aを溶射法により形成してもよい。
【0056】
以上のように、本実施の形態によれば、有機ガス光分解部の内壁を、溶射法による光触媒皮膜で覆うことができる。
【0057】
尚、以上の例では、棒状部材の表面に直接光触媒皮膜を形成しているが、アクリル樹脂層等のアンダーコート層を上記棒状部材の表面に形成してから、光触媒皮膜42を溶射法により形成してもよい。
【0058】
(実施の形態3)
本実施の形態は、実施の形態2の有機ガス処理装置において、光触媒皮膜と有機ガスの接触面積を広くした有機ガス処理装置に関する。尚、実施の形態2と共通する部分にいては、説明を省略する。
【0059】
図10は、本実施の形態の有機ガス光分解部を形成する棒状部材56aの斜視図である。図10に示すように、本実施の形態の棒状部材56aには、光触媒の皮膜で覆われた複数の突起部58が設けられている。図11は、この棒状の部材56aを束ねて形成した有機ガス光分解部の断面図である。図11には、この有機ガス光分解部の内部を流れる、有機ガスを含むガス28の流れも記載されている。
【0060】
図11に示すように、有機ガスを含むガス28は、光触媒皮膜で覆われた突起部58に接触しながら有機ガス光分解部内を流れる。従って、本実施の形態によれば、有機ガスを含むガス28と光触媒皮膜の接触面積が広くなるので、有機ガスの分解効率が高くなる。
【0061】
尚、以上の本実施の形態では、有機ガス光分解部を形成する複数の部材の側面に突起部58を設けている。しかし、一体形成された管状部材の内壁に、光触媒皮膜で覆われた複数の突起部を設けてもよい。すなわち、本実施の形態の有機ガス処理装置は、光触媒皮膜で覆われ、有機ガス光分解部の内壁に設けられた、複数の突起部を有している。
【0062】
以上の実施の形態1乃至3では、光触媒皮膜の原料として酸化チタンを用いているが、酸化亜鉛等の他の光触媒を用いてもよい。
【0063】
また、実施の形態1では、有機ガス処理装置を、半導体製造装置が発生する有機ガスの処理に用いている。しかし、本有機ガス処理装置は、半導体製造装置以外の装置(例えば、有機溶媒を用いて機械部品を洗浄する装置)が発生する有機ガスの処理や悪臭の原因物質(ホルムアルデヒト、メルカプタン類等)の処理に用いてもよい。
【符号の説明】
【0064】
2・・・有機ガス処理装置
14・・・紫外線光源
22・・・光触媒
24・・・有機ガス光分解部
26・・・連結管
30・・・第1の開口部
34・・・第2の開口部
58・・・突起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を発生し、前記紫外線により光触媒に有機ガスを分解させる紫外線光源と、
内壁が前記光触媒の皮膜で覆われ且つ前記紫外線を透す筒状体であって、前記紫外線光源を囲うように前記紫外線光源の長手方向に沿って配置され、且つ前記長手方向に延在する軸を中心に自転する複数の有機ガス光分解部と、
複数の前記有機ガス光分解部を直列に連結して、前記有機ガス光分解部の連結構造体を形成する複数の連結管と、
前記連結構造体の一端に設けられ、前記有機ガスを含むガスが流入する第1の開口部と、
前記連結構造体の他端に設けられ、前記ガスが流出する第2の開口部とを有する、
有機ガス処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機ガス処理装置において、
前記皮膜は、複数の前記光触媒の粒子が直接結合して形成され、
前記筒状体は、前記軸に沿って延在する複数の部材が連結されて形成されている、
ことを特徴とする有機ガス処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機ガス処理装置において、
更に、前記皮膜で覆われ、前記内壁に設けられた複数の突起部を有することを、
特徴とする有機ガス処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機ガス処理装置において、
前記第1の開口部を、前記有機ガスを発生する半導体製造装置に連結する第1の連結部と、
前記第2の開口部を、排気装置に連結する第2の連結部とを有する、
ことを特徴とする有機ガス処理装置。
【請求項1】
紫外線を発生し、前記紫外線により光触媒に有機ガスを分解させる紫外線光源と、
内壁が前記光触媒の皮膜で覆われ且つ前記紫外線を透す筒状体であって、前記紫外線光源を囲うように前記紫外線光源の長手方向に沿って配置され、且つ前記長手方向に延在する軸を中心に自転する複数の有機ガス光分解部と、
複数の前記有機ガス光分解部を直列に連結して、前記有機ガス光分解部の連結構造体を形成する複数の連結管と、
前記連結構造体の一端に設けられ、前記有機ガスを含むガスが流入する第1の開口部と、
前記連結構造体の他端に設けられ、前記ガスが流出する第2の開口部とを有する、
有機ガス処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機ガス処理装置において、
前記皮膜は、複数の前記光触媒の粒子が直接結合して形成され、
前記筒状体は、前記軸に沿って延在する複数の部材が連結されて形成されている、
ことを特徴とする有機ガス処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機ガス処理装置において、
更に、前記皮膜で覆われ、前記内壁に設けられた複数の突起部を有することを、
特徴とする有機ガス処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機ガス処理装置において、
前記第1の開口部を、前記有機ガスを発生する半導体製造装置に連結する第1の連結部と、
前記第2の開口部を、排気装置に連結する第2の連結部とを有する、
ことを特徴とする有機ガス処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−62640(P2011−62640A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215298(P2009−215298)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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