説明

有機ハロゲン化合物の処理方法及びその処理装置

【課題】 蒸留コストが増大したり、金属ナトリウムが浪費される虞がなく、しかも、有機ハロゲン化合物にアルカリ金属を反応させたときに生成されるアルカリ金属塩によって、送液が阻害される虞もほとんどなく円滑に行うことが可能な有機ハロゲン化合物の処理方法及びその処理装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、有機ハロゲン化合物が炭化水素系溶剤に溶け込んだ被処理液とアルカリ金属とを混合して、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応槽にて反応させ、有機ハロゲン化合物を分解して、反応処理液とする反応工程と、該反応処理液を蒸留することなく水和槽に供給し、該水和槽にて反応処理液に水を添加し、反応により生成したハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させる水和工程と、該水和工程を経た反応処理液から前記水を油水分離槽にて分離除去する油水分離工程と、該油水分離工程を経た反応処理液を蒸留槽にて蒸留し、前記炭化水素系溶剤を回収する蒸留工程とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素系溶剤中の有機ハロゲン化合物にアルカリ金属を添加して、当該炭化水素系溶剤を回収する有機ハロゲン化合物の処理方法及びその処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビフェニル(PCB)類、ダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物は、環境汚染物質として知られており、近年、これらの有機ハロゲン化合物に汚染されたコンデンサ、トランス等の汚染物を如何に安全に処理するかが大きな問題となっている。例えば、コンデンサやトランス等の絶縁材料や熱媒体等に用いられているPCBは、非常に化学的に安定しているため分解され難く、現在では環境上の理由から製造、使用が禁止されており、従前から使用されていたものに対してその処理方法が問題となっている。
【0003】
そこで、この種の有機ハロゲン化合物の処理方法として、ハイブリッド方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。ハイブリッド方法とは、炭化水素系溶剤に溶解された有機ハロゲン化合物(例えば、PCB)の分解を行った後に、当該炭化水素系溶剤を再利用のために回収するものである。
【0004】
図3に、従来の有機ハロゲン化合物の処理方法を説明するための概略フロー図を示す。
即ち、従来のハイブリッド方法によれば、まず、コンデンサ等からPCBが抜き取られ(S201)、該PCBに炭化水素系溶剤が溶解された被処理液が反応工程(S202)に移行される。そして、該被処理液に、反応促進剤及びアルカリ金属が添加され、PCBとアルカリ金属とを反応させ、脱ハロゲン化処理が行われる(S202)。そして、脱ハロゲン化された反応処理液が蒸留により留出液と缶出液とに分離され、炭化水素系溶剤がPCBの溶剤として再利用するために回収される(S203)。そして、缶出液として排出された反応処理液に水を供給して水和処理が行われ(S204)、静置分離により、水相と油相とに油水分離される(S205)。油水分離により分離された処理済油は蒸留されて(S206)、初期留出分としての水が水和工程に供給され、後期留出分がPCBの溶剤として回収される(S207)。また、缶出液は廃油として廃棄される。
【0005】
【特許文献1】特開2003−226658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述のハイブリッド方法によれば、例えば、有機ハロゲン化合物であるPCBに金属ナトリウムを反応させた場合、脱塩素化された反応処理液を蒸留すると、反応促進剤及び炭化水素系溶剤が先に分離除去されるので、蒸留槽にナトリウム塩濃度の高い反応処理液が残る。従って、ナトリウム塩濃度の高い反応処理液が缶出液として排出されると、析出した塩(NaCl)が配管に堆積し、PCBの処理が繰り返されることにより、堆積した塩が、水和工程への送液を困難にするという問題が生じる。そこで、水和工程への送液を円滑に行わせるためには、塩の堆積を防止すべく反応工程で反応処理液中のPCB濃度を低く設定(10%以内)して、送液しなければならなかった。
【0007】
また、このような配管に堆積される塩の問題を解決する別の方法として、特殊なスラリーポンプの設置や、蒸留槽と水和槽とを繋ぐ配管の径を大きくすることなどが考えられるが、多大な設備投資が必要になり好ましくない。
さらに別の方法として、蒸留槽に直接水を供給し、ナトリウムを水和させることも考えられる。しかし、蒸留槽に水を供給すると、槽内が冷却されるため再び稼働させるには多大なエネルギーコストがかかり、蒸留コストが増大するという問題がある。また、反応槽に水を供給することも考えられる。しかしながら、反応槽内に水が残っていると、次のサイクルで添加される金属ナトリウムが水と反応し、水素を発生して水酸化ナトリウムになり、金属ナトリウムが浪費される問題も生じる。
【0008】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたもので、蒸留コストが増大したり、金属ナトリウムが浪費される虞がなく、しかも、有機ハロゲン化合物にアルカリ金属を反応させたときに生成されるアルカリ金属塩によって、送液が阻害される虞もほとんどなく円滑に行うことが可能な有機ハロゲン化合物の処理方法及びその処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
有機ハロゲン化合物が炭化水素系溶剤に溶け込んだ被処理液とアルカリ金属とを混合して、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応槽にて反応させ、有機ハロゲン化合物を分解して反応処理液とする反応工程と、該反応処理液を蒸留することなく水和槽に供給し、該水和槽にて反応処理液に水を添加し、反応により生成したハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させる水和工程と、該水和工程を経た反応処理液から前記水を油水分離槽にて分離除去する油水分離工程と、該油水分離工程を経た反応処理液を蒸留槽にて蒸留し、前記炭化水素系溶剤を回収する蒸留工程とを備えることを特徴とする有機ハロゲン化合物の処理方法を提供する。
【0010】
上記構成からなる有機ハロゲン化合物の処理方法によれば、蒸留工程の前に、水和工程を行うことから、反応工程で生成されるアルカリ金属塩が蒸留時に濃縮され、配管に堆積されることなく、送液を円滑に行うことができる。また、水和を水和槽にて行うことから、反応槽や蒸留槽に水を添加した場合の如く、蒸留コストが増大したり、金属ナトリウムが浪費される虞もない。
【0011】
本発明における有機ハロゲン化合物としては、例えば、PCB、ダイオキシン類、ハロゲンを有するジベンゾフラン類、ポリ塩化ベンゼン、塩化メチレン或いはこれらに含まれる塩素原子が臭素原子に置換された臭素化物等の有害な有機ハロゲン化合物を挙げることができる。また、アルカリ金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム等を挙げることができ、中でも反応速度、取扱いの容易さからナトリウムが好ましく、特に、トランスオイル等の分散媒中にアルカリ金属を分散させたアルカリ金属分散体として利用するのが好ましい。また、分散媒としてはPCBを含有しているトランスオイルや、洗浄溶剤として利用するノルマルパラフィンを好適に使用することができる。
【0012】
また、本発明において、炭化水素系溶剤としては、アルカリ金属と反応する−OH基、−O−基を有しないパラフィン系、ナフテン系、イソパラフィン系等のものを採用できるが、特に、低価格で且つ有機ハロゲン化合物を充分に溶け込ませやすいという観点から、ノルマルパラフィンが好ましい。また、ノルマルパラフィンを用いると、反応工程における有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応性が良好となり、従来の絶縁油を用いた場合に、反応に必要な化学当量よりも3倍程度必要とされていたアルカリ金属量を、例えば、2.4〜2.8倍程度に低減することもできる。さらに、ノルマルパラフィンは、酸化されにくく、水和槽において水を取り込む虞も少なく再利用可能なため、汚染物を洗浄する洗浄用有機溶媒の使用量を低減させることもできる。ノルマルパラフィンの炭素数としては、9〜13が好ましく、炭素数が9以上であると、通常130℃以下で行われるPCBの処理工程において、反応時にノルマルパラフィンが沸騰することなく、安全に反応を行うことができ、炭素数が13以下であると、電気絶縁油よりも低粘度であり、取扱いが容易で、反応時のアルカリ金属の分散性も良好である。
【0013】
前記反応工程は、前記有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応槽にて反応させる第一の反応工程と、さらに、所定のアルカリ金属濃度に調整すべく添加される前記アルカリ金属と、前記被処理液とを添加することにより反応処理液とする第二の反応工程とを備えることが好ましい。これにより、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応させて脱ハロゲン化反応を行う際に、残存するアルカリ金属の残存量を削減することができる。
【0014】
前記水和工程に於いて、前記反応工程を経た前記反応槽中の反応処理液の一部を供給することが好ましい。これにより、反応槽の容量を増大させることなく、脱ハロゲン化反応を繰り返し行うことができる。
【0015】
前記アルカリ金属は、平均粒子径が7μm以下のアルカリ金属分散体であることが好ましい。これにより、脱ハロゲン化反応を数回繰り返すことにより、脱ハロゲン化化合物を好適に分解することができる。
【0016】
また、本発明は、有機ハロゲン化合物が炭化水素系溶剤に溶け込んだ被処理液とアルカリ金属とを混合して、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応槽にて反応させ、有機ハロゲン化合物を分解して反応処理液とする反応手段(1)と、前記反応槽から反応処理液を蒸留することなく水和槽(2a’)に供給し、該水和槽(2a’)にて反応処理液に水を添加し、反応により生成したハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させる水和手段(2a)と、前記水和槽(2a’)から供給された反応処理液から前記水を油水分離槽にて分離除去する油水分離手段(2b)と、前記油水分離槽で分離された反応処理液を蒸留槽にて蒸留し、前記炭化水素系溶剤を回収する蒸留手段(2c)とを備えることを特徴とする有機ハロゲン化合物の処理装置を提供する。かかる構成からなる有機ハロゲン化合物の処理装置によれば、請求項1記載の処理方法を好適に実施することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の通り、本発明は、蒸留コストが増大したり、金属ナトリウムが浪費される虞がなく、しかも、有機ハロゲン化合物にアルカリ金属を反応させたときに生成されるアルカリ金属塩によって、送液が阻害される虞もほとんどなく円滑に行うことが可能な利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態として、有機ハロゲン汚染物として、コンデンサやトランス等の汚染物に含まれるPCBを、炭化水素系溶剤としてノルマルパラフィンを、そして、アルカリ金属として金属ナトリウムを例に取り、その処理方法及びその処理装置について図面を参酌しつつ説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るPCBの処理装置を説明するための概略ブロック図である。図1に示すように、まず、コンデンサ等は、充填された油(PCB)を抜き取って高濃度PCB槽に回収し、本体を解体する。そして、解体後にノルマルパラフィンで洗浄し、洗浄後の溶剤油を低濃度PCB槽に回収し、洗浄後の解体物を乾燥後に廃棄又は再利用する。
【0020】
続いて、PCBの処理装置は、反応槽にて被処理液たるPCB及びノルマルパラフィンに、金属ナトリウムを反応させる反応手段1と、該反応手段1を経て金属ナトリウムにより脱塩素化された反応処理液からノルマルパラフィンを回収する溶剤回収手段2とを備えて構成されている。以下に、各手段について具体的に説明する。
【0021】
反応手段1は、コンデンサ、トランス等から抜き取られた高濃度のPCB、及びコンデンサ、トランス等を解体後に、ノルマルパラフィンで洗浄された低濃度のPCBを貯留するPCB汚染油貯留部1aと、該PCB汚染油貯留部1aに反応促進剤を供給する促進剤供給部1dと、前記PCB汚染油貯留部1aから供給された被処理液にアルカリ金属として金属ナトリウム(ここではトランスオイル中にナトリウム金属が分散されたナトリウム分散体)が供給されて脱塩素化反応を行う反応槽からなる脱塩素化部1cと、該脱塩素化部1cに前記金属ナトリウムを供給するナトリウム供給部1bとを備えて構成されている。前記反応促進剤は、脱塩素化されたビフェニルに水素を供与してPCBの分解を促進すると共にビフェニルの高分子化を防止するためのものであり、本実施形態においては、反応促進剤としてイソプロピルアルコールが使用されている。尚、イソプロピルアルコールに替えて、水が使用されても構わない。
【0022】
溶剤回収手段2は、前記反応槽にて脱塩素化反応が行われた反応処理液に水を添加する水和部(水和手段)2aと、該水和部2aを経て反応処理液を静置分離する油水分離部(油水分離手段)2bと、該油水分離部2bを経た反応処理液の蒸留を行う蒸留部(蒸留手段)2cとを備えて構成されている。
【0023】
前記水和部2aは、脱塩素化部1cから供給された反応処理液に水を供給して水和処理を施す、反応槽や蒸留槽とは別槽の水和槽2a’と、該水和槽2a’に水を供給する水供給部2a’’とを備えている。水和部2aにおいては、反応処理液に水を添加することにより、反応処理液中に存在する塩化ナトリウム等は水に溶解し、未反応のナトリウム、アルコキシドは水と反応して水酸化ナトリウムになり、水に溶解される。そして、水和された反応処理液は、油水分離部2bに供給される。
【0024】
油水分離部2bは、水和部2aにて水が添加された反応処理液を、静置分離により、塩化ナトリウム等を含む水相と、ビフェニル及びノルマルパラフィン等を含む油相とに分離する油水分離槽を備えて構成されている。そして、塩化ナトリウム等を含む水相側の溶液が廃水として廃棄されるようになっている。尚、本実施形態においては、水和部2aと油水分離部2bとは、それぞれ別々の水和槽及び油水分離槽を備えて構成してもよいが、同一の槽を共有してもよい。
【0025】
蒸留部2cは、前記油水分離部2bにより分離された油相側の溶液を留出液と缶出液とに分離する蒸留槽を備えて構成されている。具体的には、蒸留槽内を加熱・減圧することにより、油相側の溶液を蒸留し、留出蒸気を冷却して留出液とし、該留出液を回収しうるように構成されている。ここでは、ノルマルパラフィンを蒸留塔上部より回収し(回収溶剤)、それ以外のビフェニル等の油を蒸留塔下部より抜き出している(回収油)。
【0026】
次に、蒸留部2cで回収された回収溶剤のうち、初期留出分は油中に溶解しているイソプロピルアルコールが留出するので、反応促進剤として促進剤供給部1dに供給すると共に、後期留出分はノルマルパラフィンが留出するので、洗浄用及び希釈用の溶剤油として蒸留再生部3に供給して再利用するように構成されている。
【0027】
蒸留再生部3は、蒸留部2cから回収されたノルマルパラフィンを精留等によって、留出分を洗浄油として利用するために洗浄部へ供給し、缶出分を高濃度PCB槽を介してPCB汚染油貯留部1aに供給するようになっている。また、蒸留再生部3では、一旦洗浄された解体物の溶剤油を低濃度PCB槽を介して回収し、同様に精留等が行われるようになっている。
【0028】
なお、上記実施形態では、反応槽において脱塩素化反応が行われた反応処理液中に、脱塩素化反応に使用されなかった金属ナトリウムが残存しているが、この反応処理液を水和槽2a’に供給して水和すると、残存する金属ナトリウムを無駄に消費することとなる。そこで、前記反応槽において脱塩素化反応が行われた後に、所定の金属ナトリウム濃度に調整すべく、ナトリウム供給部1bから金属ナトリウムを添加し、PCB汚染油貯留部1aから被処理液を添加して、脱塩素化反応を繰り返し行う構成としてもよい。また、脱塩素化反応が繰り返し行われた後の前記反応槽中の反応処理液の一部を水和槽2a’に供給し、反応槽に残った反応処理液に、再び上記と同様にナトリウム供給部1bから金属ナトリウムを添加し、PCB汚染油貯留部1aから被処理液を添加する構成としてもよい。
このように、一旦、脱塩素化反応が行われた反応処理液に、また新たに金属ナトリウムと被処理液とを添加して脱塩素化反応を行うことにより、通常であれば反応工程後の水和工程により無駄に消費されていた脱塩素化反応後に残存する金属ナトリウムを有効利用することができる。さらに、反応槽にて繰り返し行われた脱塩素化反応後の反応処理液の一部を抜き取ることにより、反応槽の容量を増大させることなく、脱塩素化反応を繰り返し行うことができる。
【0029】
また、反応槽において、脱塩素化反応を行う回数が多いほど、残存する金属ナトリウムを無駄に水和工程により消費せずに有効利用することができるが、この回数が4回を超えると、被処理液中に生成した反応生成物によって、脱塩素化反応が阻害され、反応後の被処理液中にPCBが残存する虞がある。そこで、脱塩素化反応を行う回数は、2〜4回が好ましく、より好ましくは3〜4回である。
【0030】
また、添加するナトリウム分散体としては、平均粒子径が7μm以下のものが好ましく、より好ましくは5μm以下である。平均粒子径が7μm以下のナトリウム分散体を利用することで、脱塩素化反応を数回(2〜4回)繰り返すことにより、PCBを好適に分解処理することができる。また、平均粒子径が5μm以下の場合、追加するナトリウム分散体の量を削減することができる(反応に必要な化学当量の2.4〜2.8倍)。なお、平均粒子径が7μmを超える場合、脱塩素化反応を繰り返したときに、多量の金属ナトリウムを添加しなければならず(例えば、反応に必要な化学当量の3倍〜4倍)、反応終了後に残存する金属ナトリウムの量も増加するので好ましくない。また、添加するナトリウム分散体の平均粒子径の下限としては、1μm以上のものが好ましい。平均粒子径が1μm未満であると取り扱いにくく、また、発火の虞があるので好ましくない。
【0031】
ここで、ナトリウム分散体の平均粒子径(d32(mm) )とは、次式により求めた平均体積径を意味する。すなわち、平均体積径は、n個(n=1300)のナトリウム粒子を光学顕微鏡(蛍光顕微鏡)で撮影し、その画像を蛍光画像解析システム(製品名 Lumina Vision、三谷商事(株)製)によって解析して、個々の粒子の粒子径(投影面積相当径;di)を測定し、このときに重なった粒子についてもシステム上で処理を行い、測定した粒子径(di)の平均値を算出することにより求めた。
【0032】
【数1】

【0033】
また、洗浄油としてノルマルパラフィンを利用した場合、脱塩素化反応後の反応槽中の反応処理液から一部を抜き出す際に比重差を利用することができる。具体的には上澄み液として得られる反応処理液は大部分がノルマルパラフィンであり、未反応のナトリウムは沈降するため、上澄み液のみを一部除去することによって、未反応の金属ナトリウムを残存させることが可能となる。
【0034】
上述のように構成された有機ハロゲン化合物の処理装置について、以下に、ハイブリッド方法による処理方法について図面を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る有機ハロゲン化合物の処理方法を説明するための概略フロー図である。
【0035】
まず、コンデンサ等からPCBが抜き取られ(S101)、該PCBにノルマルパラフィンが溶解された被処理液が反応工程(S102)に移行される。
【0036】
反応工程(S102)においては、被処理液に反応促進剤としてイソプロピルアルコールが供給される。反応層には予め金属ナトリウム分散体を供給しておき、この反応層にノルマルパラフィンで希釈したPCBを供給して、金属ナトリウム分散体とPCBとを反応させて脱塩素化反応が行われる。このとき、金属ナトリウム分散体の供給量は反応に必要な化学当量の約2.4〜2.8倍とされる。金属ナトリウム分散体の分散媒としては、炭化水素系溶剤と同種のものを使用するのが好ましいが、電気絶縁油等を使用することもできる。上記反応工程(S102)により、脱塩素化された反応処理液は、イソプロピルアルコールから水素が供給され、その重合が抑制されて、ノルマルパラフィン中に、ビフェニル、塩化ナトリウム、未反応のナトリウム、アルコキシド等が存在することとなる。
【0037】
次に、水和工程(S103)においては、脱塩素化された反応処理液を、従来行われていた蒸留工程を得ることなく水和槽に供給し、水が供給される。かかる工程により、ノルマルパラフィン中の塩化ナトリウムが水に溶解され、アルコキシドがイソプロピルアルコールと水酸化ナトリウムとして水に抽出され、残留ナトリウムが水酸化ナトリウムとして水に抽出されることにより、反応液中のアルカリ金属塩が溶解される。また、イソプロピルアルコールの一部は油に抽出される。そして、水和処理が行われた反応処理液が油水分離工程(S104)に移行される。
【0038】
油水分離工程(S104)においては、静置分離により、水相(水、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、一部のイソプロピルアルコール)と油相(絶縁油、ノルマルパラフィン、ビフェニル、一部のイソプロピルアルコール)とに分離され、水相側の溶液が廃アルカリとして系外に排出され、油相側の溶液が抜き出されて蒸留工程(S105)に移行される。
【0039】
蒸留工程(S105)においては、油相側の溶液が加熱蒸留され、沸点の差によって、初期留出分のイソプロピルアルコールが促進剤供給部1dに供給されると共に、後期留出分のノルマルパラフィンが蒸留再生部3に供給され、コンデンサ等の洗浄油、PCBの希釈油等に再利用される(S106)。そして、ビフェニル等を含む缶出液は廃油として廃棄される。
【0040】
このように、本実施形態に係る有機ハロゲン化合物の処理方法及びその処理装置によれば、反応槽にて有機ハロゲン化合物が炭化水素系溶剤に溶け込んだ被処理液にアルカリ金属を反応させて脱ハロゲン化処理を行い、脱ハロゲン化処理された反応処理液を蒸留することなく水和槽に供給して水を添加し、ハロゲン化アルカリ金属塩や未反応のアルカリ金属等を溶解させて分離除去し、残った反応処理液を蒸留槽にて蒸留して、炭化水素系溶剤を回収するようにした。従って、蒸留工程の前に、水和工程を行うことから、反応工程で生成されるアルカリ金属塩が蒸留時に濃縮され、配管に堆積されることなく、送液を円滑に行うことができる。また、水和を水和槽にて行うことから、反応槽や蒸留槽に水を添加した場合の如く、蒸留コストが増大したり、金属ナトリウムが浪費される虞もない。
【0041】
なお、本実施形態では、反応槽において、脱ハロゲン化反応を繰り返し行う場合、被処理液を添加する毎にナトリウム濃度を調整するようにしてもよく、または、1回目の被処理液の添加時に大過剰のナトリウム分散体を添加し、脱ハロゲン化反応の終了時に、ナトリウムの量を反応に必要な化学当量の3.5倍以下、好ましくは2.4〜2.8倍に濃度調整するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態における反応槽での反応温度は80〜130℃で行うことが好ましい。反応温度が80℃未満であると脱塩素化反応に長時間を要し、130℃を超えると脱塩素化反応時に副生成物(重合体)が生成されやすくなることから好ましくない。
【0043】
また、反応槽内において有機ハロゲン化合物とナトリウム分散体とを反応させる際には、有機ハロゲン化合物の濃度が低い場合には有機ハロゲン化合物を先に反応槽内に仕込み、後からナトリウム分散体を添加する構成とするのが好ましく、有機ハロゲン化合物の濃度が高い場合には先にナトリウム分散体を反応槽内に仕込み、後から有機ハロゲン化合物を添加する構成とするのが好ましい。有機ハロゲン化合物の濃度が高い場合、ナトリウム分散体を後から添加すると、急激に分散体と有機ハロゲン化合物が反応し、反応槽内の温度が局部的に上昇する虞があるが、先にナトリウム分散体を仕込んでおくことで、見かけ上、有機ハロゲン化合物の濃度が薄まり、好適に分散させることも可能となり、重合体などの反応副生成物の生成を抑制できる。さらに、大過剰のナトリウム分散体中に有機ハロゲン化合物が添加されるため、有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化を短時間で行うことが可能である。ここで、高濃度とは有機ハロゲン化合物濃度が1%以上をいい、好適には10%以上をいう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一実施形態の有機ハロゲン化合物の処理装置を説明するための概略ブロック図である。
【図2】同実施形態の有機ハロゲン化合物の処理方法を説明するための概略フロー図である。
【図3】従来の有機ハロゲン化合物の処理方法を説明するための概略フロー図である。
【符号の説明】
【0045】
1…反応手段
1a…PCB汚染油貯留部
1b…ナトリウム供給部
1c…脱塩素化部
1d…促進剤供給部
2…溶剤回収手段
2a…水和部
2a’…水和槽
2a’’…水供給部
2b…油水分離部
2c…蒸留部
3…蒸留再生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハロゲン化合物が炭化水素系溶剤に溶け込んだ被処理液とアルカリ金属とを混合して、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応槽にて反応させ、有機ハロゲン化合物を分解して反応処理液とする反応工程と、
該反応処理液を蒸留することなく水和槽に供給し、該水和槽にて反応処理液に水を添加し、反応により生成したハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させる水和工程と、
該水和工程を経た反応処理液から前記水を油水分離槽にて分離除去する油水分離工程と、
該油水分離工程を経た反応処理液を蒸留槽にて蒸留し、前記炭化水素系溶剤を回収する蒸留工程とを備えることを特徴とする有機ハロゲン化合物の処理方法。
【請求項2】
前記反応工程は、前記有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応槽にて反応させる第一の反応工程と、さらに、所定のアルカリ金属濃度に調整すべく添加される前記アルカリ金属と、前記被処理液とを添加することにより反応処理液とする第二の反応工程とを備えることを特徴とする請求項1記載の有機ハロゲン化合物の処理方法。
【請求項3】
前記水和工程に於いて、前記反応工程を経た前記反応槽中の反応処理液の一部を供給することを特徴とする請求項2記載の有機ハロゲン化合物の処理方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属は、平均粒子径が7μm以下のアルカリ金属分散体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の処理方法。
【請求項5】
有機ハロゲン化合物が炭化水素系溶剤に溶け込んだ被処理液とアルカリ金属とを混合して、有機ハロゲン化合物とアルカリ金属とを反応槽にて反応させ、有機ハロゲン化合物を分解して反応処理液とする反応手段(1)と、
前記反応槽から反応処理液を蒸留することなく水和槽(2a’)に供給し、該水和槽(2a’)にて反応処理液に水を添加し、反応により生成したハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させる水和手段(2a)と、
前記水和槽(2a’)から供給された反応処理液から前記水を油水分離槽にて分離除去する油水分離手段(2b)と、
前記油水分離槽で分離された反応処理液を蒸留槽にて蒸留し、前記炭化水素系溶剤を回収する蒸留手段(2c)とを備えることを特徴とする有機ハロゲン化合物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−193482(P2006−193482A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7581(P2005−7581)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】