説明

有機光電変換素子、太陽電池及び光センサアレイ

【課題】十分なキャリア輸送能を有する有機薄膜太陽電池材料を提供する。
【解決手段】対極と透明電極の間の、少なくとも1つ以上の光学活性中心を有する有機化合物が、下記一般式(1)で表されるフラーレン誘導体を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子、太陽電池及び光センサアレイに関し、さらに詳しくは、バルクへテロジャンクション型の有機光電変換素子、この有機光電変換素子を用いた太陽電池、および光アレイセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の化石エネルギーの高騰によって、自然エネルギーから直接電力を発電できるシステムが求められており、単結晶・多結晶・アモルファスのSiを用いた太陽電池、GaAsやCIGSなどの化合物系の太陽電池、あるいは色素増感型光電変換素子(グレッツェルセル)などが提案・実用化されている。
【0003】
しかしながら、これらの太陽電池で発電するコストは未だ化石燃料を用いて発電・送電される電気の価格よりも高いものとなっており、普及の妨げとなっていた。また、基板に重いガラスを用いなければならないため、設置時に補強工事が必要であり、これらも発電コストが高くなる一因であった。
【0004】
このような状況に対し、化石燃料による発電コストよりも低コストな発電コストを達成しうる太陽電池として、透明電極と対電極との間に電子供与体層(p型半導体層)と電子受容体層(n型半導体層)とが混合されたバルクへテロジャンクション層を挟んだバルクへテロジャンクション型光電変換素子が提案されて(例えば、非特許文献1参照)いる。
【0005】
これらのバルクへテロジャンクション型太陽電池においては、透明電極・対極以外は塗布プロセスで形成されているため、高速かつ安価な製造が可能であると期待され、前述の発電コストの課題を解決できる可能性がある。さらに、上記のSi系太陽電池・化合物半導体系太陽電池・色素増感太陽電池などと異なり、160℃より高温のプロセスがないため、安価かつ軽量なプラスチック基板上への形成も可能であると期待される。
【0006】
なお発電コストには、初期の製造コスト以外にも発電効率及び素子の耐久性も含めて算出されなければならないが、前記非特許文献1では、太陽光スペクトルを効率よく吸収するために、長波長まで吸収可能な有機高分子を用いることによって、5%を超える変換効率を達成するにいたっている。
【0007】
これらの素子は400〜900nmといった幅広い波長の光を吸収することで高効率の変換効率を達成しているものの、IPCEスペクトルから読み取れる内部量子効率は、未だ50〜60%であり、太陽光を十分高い効率で利用しているとは言えず、逆に言えばこの内部量子効率、および内部量子効率と光吸収率の積で表される外部量子効率を向上していくことでより高い光電変換効率を達成できるものと推定される。
【0008】
内部および外部量子効率を向上させる手段としては、主に以下の2つの手段が考えられる。
【0009】
1.有機半導体材料の励起子拡散長の向上、
2.有機半導体材料を厚膜化・タンデム化による光吸収率の向上
有機半導体材料の励起子拡散長は、励起子の寿命と励起子の移動度の積であるため、励起子の移動度を高めることが有用であるが、一般的に移動度の高い有機半導体材料は結晶性が高い材料であり、逆に言えば溶解性の低い材料であった。したがって、これらの材料を生産性の高い塗布方式で生産する際には厚い塗布膜を得ることができないといった、トレードオフを有していた。
【0010】
このように、高い溶解性と高いキャリア輸送性を両立しうる材料の開発が有機光電変換素子の効率向上には必須であり、これらを解決しようとする試みもなされている(例えば、非特許文献2)。
【0011】
非特許文献2においては、溶解性の高いフラーレン誘導体として、長鎖アルキル基を有するフラーレン誘導体を検討し、より長鎖のアルキル基を有するフラーレン誘導体ほどp型高分子との高い相溶性が得られてp型有機半導体材料とn型有機半導体材料の界面面積が増大し、電荷分離効率が向上するものの、キャリアを伝達するフラーレン同士のスタック距離が増大するためにキャリア輸送性が落ち、相溶性とキャリア輸送性のトレードオフが存在しているとの結果であった。
【0012】
有機半導体材料は、例えば非特許文献3のように、分岐鎖を有する立体的に嵩高い置換基を用いることで溶解性が向上できることが知られており、フラーレン誘導体においてもイソブチル基で置換した[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)なども検討が行われているが、溶解性は向上するものの、光電変換効率の向上は一定のものにとどまっている。
【0013】
このように、有機薄膜太陽電池においては単に有機半導体材料の溶媒への溶解性だけでなく、バルクへテロジャンクション層を構成するp型有機半導体材料とn型有機半導体材料同士の相溶性も効率に影響を与えることが推定され、適度な相溶性(相分離状態)を有し、かつp型有機半導体およびn型有機半導体ともに高い移動度を有するような混合状態を得ることが理想的な状態であると推定される。
【0014】
なお有機薄膜太陽電池においては、効率のみならず耐久性についても課題となっており、たとえば非特許文献3においては、100mW/cmの光を100時間当てた後で効率が約60%に低下したと記載されている通り未だ不十分なものであるが、上記のような混合状態を達成できれば、単に効率が向上するだけでなく、電極に取り出されずに失活するキャリア数が減少し、活性なキャリアが失活する際の材料の劣化などが抑制され、有機薄膜太陽電池の耐久性についても向上すると期待される。
【非特許文献1】A.Heeger:Nature Mat.;vol.6(2007),p497
【非特許文献2】Fukuoka:Technical Digest of the International PVSEC−17,2007予稿集、p287
【非特許文献3】A.Heeger:Science;vol.317(2007),p222
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高い光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する有機薄膜太陽電池、およびそれを構成する有機半導体材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0017】
1.対極と透明電極の間に、光学活性中心を有する有機化合物を含有する有機層を有することを特徴とする有機光電変換素子。
【0018】
2.前記光学活性中心を有する有機化合物を含有する有機層が、溶液プロセスによって形成されていることを特徴とする前記1に記載の有機光電変換素子。
【0019】
3.前記光学活性中心を有する有機化合物が、n型半導体材料としてバルクへテロジャンクション層に含まれることを特徴とする前記1又は2に記載の有機光電変換素子。
【0020】
4.前記光学活性中心が、炭素原子であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0021】
5.前記光学活性中心を有する有機化合物が、フラーレン誘導体であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0022】
6.前記光学活性中心を有する有機化合物が、下記一般式(1)で表されるフラーレン誘導体であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、Rは光学活性中心を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基から選ばれる置換基を表し、nは1〜4の整数を表す。なお式中、フラーレン構造は一方の半球部分のみを示してあるが、他に置換基を有していて良いフラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84から選ばれるフラーレン構造を表す。)
7.前記光学活性中心を有する有機化合物単体からなる層が、前記バルクへテロジャンクション層に接して形成されていることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0025】
8.前記有機光電変換素子は光電変換層を有し、かつ、該光電変換層がp型半導体単体からなるp層、p型半導体とn型半導体の混合物からなるバルクへテロジャンクション層(i層)、n型半導体単体からなるn層、の3層積層からなることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0026】
9.前記1〜8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子からなることを特徴とする太陽電池。
【0027】
10.前記1〜8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子がアレイ状に配置されてなることを特徴とする光センサアレイ。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、高い変換効率を達成可能で、耐久性が高く、安価な製造を可能とする塗布プロセスに対応可能な有機薄膜太陽電池材料を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討したところ、光学活性な置換基を有する化合物を用いることで、上記課題を達成できることを見出した。
【0030】
詳しく解説すると、光学活性中心を有する化合物は、その光学活性中心は非対称な分岐鎖構造を有しており、高い溶解性が得られる。また通常、光学活性中心を有する化合物は右手体と左手体が1:1で存在し、それらは鏡像体であるために右手体と左手体は重ね合わせることができず、パッキングしにくいのに対し、光学活性中心が右手体または左手体のどちらか一方のみである、いわゆる光学活性な状態では分子がパッキングしやすくなるために、高い溶解性を有しながらバルクへテロジャンクション層内でも適度な自己凝集力を有し、適切なサイズの相分離を実現し、高い光電変換効率及び高い耐久性がえられたものと推定される。
【0031】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0032】
(有機光電変換素子および太陽電池の構成)
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、透明電極12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部14、電子輸送層18及び対極13が順次積層されている。
【0033】
基板11は、順次積層された透明電極12、光電変換部14及び対極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、光電変換部14の両面に透明電極12及び対極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
【0034】
光電変換部14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0035】
図1において、基板11を介して透明電極12から入射された光は、光電変換部14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極12と対極13の仕事関数が異なる場合では透明電極12と対極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、透明電極12の仕事関数が対極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、透明電極12へ、正孔は、対極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、透明電極12と対極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0036】
なお図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0037】
さらに好ましい構成としては、前記光電変換部14が、いわゆるp−i−nの三層構成となっている構成(図2)である。通常のバルクへテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合した、i層単体であるが、p型半導体材料単体からなるp層、およびn型半導体材料単体からなるn層で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
【0038】
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の光電変換部14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の光電変換部16、次いで対極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の光電変換部16は、第1の光電変換部14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また第1の光電変換部14′、第2の光電変換部16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
【0039】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0040】
〔n型半導体材料〕
本発明の有機光電変換素子は、n型半導体材料及びp型半導体材料を混合したバルクヘテロジャンクション層に、少なくとも1つ以上の光学活性中心を有する有機化合物を用いることが好ましい。
【0041】
一般に、p型、n型とは、半導体材料で電気伝導に寄与するのが、正孔であるか、電子であるかを示している。
【0042】
前述のとおり、このような置換機は溶解性に優れるだけでなく適度な自己凝集力を有するため、バルクヘテロジャンクション層内で高いキャリア移動度を有するn型有機半導体ドメインを形成し、かつ適切な層分離サイズ(大きなp型/n型有機半導体層の界面面積)を得ることができる。
【0043】
n型半導体材料の母核の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物が挙げられる。
【0044】
これらのn型半導体材料母核に対し、少なくとも1つ以上の光学活性中心を有する置換基によって置換された化合物であれば、際限なく本発明に用いることができる。
【0045】
なお光学活性であるとはキラリティーがあるともいい、キラリティーがあるとは、3次元の図形や物体や現象が、その鏡像と重ね合わすことができない性質を指す。化学におけるキラリティーは、結合の組み換えなしには分子をそれ自身の鏡像に重ね合わせることができないという性質である。
【0046】
立体図形の対称操作は全て、n回回転(Cn)と鏡映(σ)の組み合わせで表すことができ、n回回転(Cn)とはn回の回転で360度回転して元に戻る回転操作で、つまりは360/n度回転させる操作である。従ってC1とは何もしない操作でもある。n回回転(Cn)と、その軸に垂直な面での鏡映(σ)を続けて行う操作をn回回映(Sn)という。従って1回回映(S1)とは鏡映に他ならない。一点を中心に図形の全ての点を反対側に映す操作を反転といいiで表すが、これは2回回映(S2)に等しい。
【0047】
このような対称操作とキラリティーの関係は表1のようにまとめられる。キラルとはSn軸を持たないことと同義であり、キラル図形は全く対称性を持たないもの(無対称)とnが2以上のCn軸だけ持つものに分類できる。本発明においては、どちらのキラリティーを有する置換基も用いることができる。
【0048】
【表1】

【0049】
このような光学活性中心を有する置換基としては、(+)−2−ブチル基、(−)−2−ブチル基、(+)−2−エチルヘキシル基、(−)−2−エチルヘキシル基、(+)−メントール基、(−)−メントール基、シス−2,5−ジメチルシクロヘキシル基、トランス−2,5−ジメチルシクロヘキシル基、(+)−ネオメントール基、(−)−ネオメントール基、(+)−ペンタンジオール基、(−)−ペンタンジオール基、(+)−3−ピロリジノール基、(−)−3−ピロリジノール基、等の不斉炭素を有する置換基、(+)−ビナフチル基、(−)−ビナフチル基等の不斉軸を有する置換基、(+)−ヘリセン基、(−)−ヘリセン基等のらせん軸を有する置換基等を挙げることができる。
【0050】
これらの光学活性な置換基の中でも、不斉炭素を有する置換基であることが好ましい。これは、このような飽和炭化水素のみで形成される置換基の方が半導体材料の溶解性を高める効果が高いためである。
【0051】
また、n型有機半導体母核としては、フラーレンが好ましい。これは、p型有機半導体材料との電荷分離が50fsと非常に速い時間で電荷分離を起こせるためであり、その結果、分離された電荷の再結合などが起こりにくく、高い光電変換効率を得ることができる。
【0052】
なおフラーレン母核としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、等が挙げられるが、フラーレンC60およびC70が好ましく、中でもフラーレンC60が好ましい。
【0053】
さらに好ましくは、前記一般式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
【0054】
一般式(1)において、Rは、光学活性中心を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基から選ばれる置換基を表し、nは2以上の整数を表す。
【0055】
Rで表される光学活性中心を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基としては、具体的には(+)−2−ブチル基、(−)−2−ブチル基、(+)−2−エチルヘキシル基、(−)−2−エチルヘキシル基、(+)−メントール基、(−)−メントール基、シス−2,5−ジメチルシクロヘキシル基、トランス−2,5−ジメチルシクロヘキシル基、(+)−ネオメントール基、(−)−ネオメントール基、(+)−ペンタンジオール基、(−)−ペンタンジオール基、(+)−3−ピロリジノール基、(−)−3−ピロリジノール基、等の不斉炭素を有する置換基を挙げることができる。
【0056】
本発明に係る、光学活性中心を有する有機化合物の具体例としては下記の化合物を挙げることができる。
【0057】
【化2】

【0058】
【化3】

【0059】
これらの化合物は、公知の合成方法で合成する際に、反応基質として単に光学活性な置換基を用いることで合成することができる。フラーレン系化合物としては、例えば、J.Mater.Chem.,vol.15(2005),p5158,Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116、Angewadte Chemie,International Edition,vol.41(2002),p838、Acta Crystallographica, Section B,vol.54(1998)p174等を参考として合成することができる。
【0060】
なお、本発明のn型半導体材料に、結晶化の制御・相分離構造の制御・モルホロジーの制御等を目的として、公知の光学活性中心を有さないn型半導体材料を混合して用いることもできる。公知のn型半導体材料としては例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0061】
なお本発明の光電変換素子の好ましい層構成としては、前記図1で示されるような透明電極/正孔輸送層/バルクへテロジャンクション層/電子輸送層/対極、といった構成でも良いが、より好ましくはバルクへテロジャンクション層(i層)に少なくとも1層のp型有機半導体またはn型有機半導体単体からなる層を有する構成である。このような構成とすることで、電流の整流性が向上し、より高い光電変換効率を得ることができる。さらに好ましくは、前記図2で示されるような、p−i−n構成である。
【0062】
このような構成を作製する場合には、一度塗布した層の上にさらに塗布することが必要であるが、通常溶解性の良い材料からなる層の上にさらに層を溶液プロセスによって積層使用とすると、下地の層を溶かしてしまうために積層することができないという課題があるため、後述するような、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いることが好ましい。
【0063】
〔p型半導体材料〕
本発明の有機光電変換素子は、n型半導体材料及びp型半導体材料を混合したバルクヘテロジャンクション層に、少なくとも1つ以上の光学活性中心を有する有機化合物を用いることが好ましい。したがって、p型有機半導体材料に光学活性中心を有する有機化合物を用いても良い。他方で、n型有機半導体材料に光学活性中心を有する有機化合物を用いている場合には、p型有機半導体材料に光学活性中心を有さない有機化合物を用いても良い。
【0064】
本発明のバルクへテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
【0065】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0066】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0067】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008000664に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0068】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0069】
これらのp半導体材料母核に対し、光学活性中心を有する置換基によって置換された有機化合物であれば、際限なく本発明に用いることができる。光学活性中心を有する置換基としては、前述の(+)−2−ブチル基、(−)−2−ブチル基、(+)−2−エチルヘキシル基、(−)−2−エチルヘキシル基、(+)−メントール基、(−)−メントール基、シス−2,5−ジメチルシクロヘキシル基、トランス−2,5−ジメチルシクロヘキシル基、(+)−ネオメントール基、(−)−ネオメントール基、(+)−ペンタンジオール基、(−)−ペンタンジオール基、(+)−3−ピロリジノール基、(−)−3−ピロリジノール基、等の不斉炭素を有する置換基、(+)−ビナフチル基、(−)−ビナフチル基等の不斉軸を有する置換基、(+)−ヘリセン基、(−)−ヘリセン基等のらせん軸を有する置換基等を挙げることができる。
【0070】
これらの光学活性な置換基の中でも、不斉炭素を有する置換基であることが好ましい。これは、このような飽和炭化水素のみで形成される置換基の方が半導体材料の溶解性を高める効果が高いためである。
【0071】
このような化合物の例としては、以下のような化合物を挙げることができる。
【0072】
【化4】

【0073】
上記、P6〜P10の数平均分子量は、3000〜30万で、好ましくは、1万〜10万である。
【0074】
これらの化合物は、公知の合成方法で合成する際に、反応基質として単に光学活性な置換基を用いることで合成することができる。
【0075】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。より好ましくは、n型有機半導体材料と適度な相溶性を有するような化合物(適度な相分離構造形成し得る化合物)であることが好ましい。
【0076】
他方で、前述の図2のp−i−n構造のようなより好ましい素子構造を得るためには、一度塗布した層の上にさらに塗布することが必要であるが、通常溶解性の良い材料からなる層の上にさらに層を溶液プロセスによって積層使用とすると、下地の層を溶かしてしまうために積層することができないという課題を有していた。したがって、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料が好ましい。
【0077】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,p1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号、および特開2008−16834等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料などを挙げることができる。
【0078】
これらの中でも、不溶化後の移動度の高い塗布後に顔料化できる材料が好ましく、中でも好ましくは前記特開2008−16834号公報記載のポルフィリン系化合物を用いることが好ましい。このポルフィリン系化合物(BP−1前駆体)は、塗布時は立体的に嵩高いビシクロ基を分子末端に4箇所有しているが、熱等のエネルギーが加えられると、逆Diels−Alder反応を起こしてビシクロ基部分が反応し、4分子のエチレンガスを放出して溶剤に不溶なベンゾポルフィリン誘導体(BP−1)に変換される。
【0079】
【化5】

【0080】
このような、塗布後に不溶な顔料に変換できる材料としては、特開2008−16834号段落番号0044及び0045に記載されている化合物を挙げることができる。
【0081】
このようなポルフィリン系化合物は、前記特開2008−16834号公報、Chem.Commun.1998,p1661等を参考として合成することができる。
【0082】
〔正孔輸送層・電子ブロック層〕
本発明の有機光電変換素子10は、バルクへテロジャンクション層と透明電極(陽極)との中間には正孔輸送層17を、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0083】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006019270号公報等に記載のシアン化合物、などを用いることができる。なお、バルクへテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した電子を透明電極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0084】
〔電子輸送層・正孔ブロック層〕
本発明の有機光電変換素子10は、バルクへテロジャンクション層と対極(陰極)との中間には電子輸送層18を形成することで、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0085】
また電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクへテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した正孔を対極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0086】
〔その他の層〕
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などを挙げることができる。
【0087】
〔透明電極(陽極)〕
本発明の透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、通常陽極として用いることが一般的である。なお本発明において陽極とは、正孔を取り出す電極のことを意味する。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0088】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
【0089】
〔対電極(陰極)〕
本発明の対電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、通常陰極として用いることが一般的である。なお本発明において陰極とは、電子を取り出す電極のことを意味する。例えば、陰極として用いる場合、対電極は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。対電極は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。対電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0090】
対電極の導電材として金属材料を用いれば対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0091】
また、対電極13は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により形成でき好ましい。
【0092】
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
【0093】
〔中間電極〕
また、前記図3のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0094】
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
【0095】
〔基板〕
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0096】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0097】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよい。
【0098】
〔光学機能層〕
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していて良い。光学機能層としては、たとえば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、対極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層などを設けても良い。
【0099】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0100】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0101】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0102】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物などのナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層などを挙げることができる。
【0103】
〔各種の層の形成方法〕
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、および輸送層・電極の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクへテロジャンクション層の形成方法としては、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
【0104】
この際に使用する塗布方法に制限は無いが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
【0105】
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクへテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0106】
発電層(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
【0107】
〔パターニング〕
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0108】
バルクへテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取っても良いし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしても良い。
【0109】
電極材料などの不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成しても良い。
【0110】
(封止)
また、作製した有機光電変換素子10が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子などで公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上10を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【0111】
(光センサアレイ)
次に、以上説明したバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10を応用した光センサアレイについて詳細に説明する。光センサアレイは、前記のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が受光によって電流を発生することを利用して、前記の光電変換素子を細かく画素状に並べて作製し、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する効果を有するセンサである。
【0112】
図4は、光センサアレイの構成を示す図である。図4(A)は、上面図であり、図4(B)は、図4(A)のA−A’線断面図である。
【0113】
図4において、光センサアレイ20は、保持部材としての基板21上に、下部電極としての透明電極22、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部24及び透明電極22と対をなし、上部電極としての対電極23が順次積層されたものである。光電変換部24は、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有してなる光電変換層24bと、バッファ層24aとの2層で構成される。図4に示す例では、6個のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が形成されている。
【0114】
これら基板21、透明電極22、光電変換層24b及び対電極23は、前述したバルクヘテロジャンクション型の光電変換素子10における透明電極12、光電変換部14及び対電極13と同等の構成及び役割を示すものである。
【0115】
基板21には、例えば、ガラスが用いられ、透明電極22には、例えば、ITOが用いられ、対電極23には、例えば、アルミニウムが用いられる。そして、光電変換層24bのp型半導体材料には、例えば、前記BP−1前駆体が用いられ、n型半導体材料には、例えば、前記例示化合物13が用いられる。また、バッファ層24aには、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)−PSS(ポリスチレンスルホン酸)導電性高分子(スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP)が用いられる。このような光センサアレイ20は、次のようにして製作された。
【0116】
ガラス基板上にスパッタリングによりITO膜を形成し、フォトリソグラフィにより所定のパターン形状に加工した。ガラス基板の厚さは、0.7mm、ITO膜の厚さは、200nm、フォトリソグラフィ後のITO膜における測定部面積(受光面積)は、0.5mm×0.5mmであった。次に、このガラス基板21上に、スピンコート法(条件;回転数=1000rpm、フィルター径=1.2μm)によりPEDOT−PSS膜を形成した。その後、該基板を、オーブンで140℃、10分加熱し、乾燥させた。乾燥後のPEDOT−PSS膜の厚さは30nmであった。
【0117】
次に、上記PEDOT−PSS膜の上に、P3HT(ポリ−3ヘキシルチオフェン)+例示化合物N6の1:1混合膜を、スピンコート法(条件;回転数=3300rpm、フィルター径=0.8μm)により形成した。このスピンコートに際しては、テトラベンゾポルフィリン誘導体をクロロベンゼン溶媒に=1:1で混合し、これを攪拌(5分)して得た混合液を用いた。BP−1誘導体と前記化合物例1の混合膜の形成後、窒素ガス雰囲気下においてオーブンで180℃、30分加熱しアニール処理を施した。アニール処理後のP3HTと前記例示化合物N6の混合膜の厚さは70nmであった。
【0118】
その後、所定のパターン開口を備えたメタルマスクを用い、P3HTと前記例示化合物例N6の混合膜の上に、上部電極としてのアルミニウム層を蒸着法により形成(厚さ=10nm)した。その後、PVA(polyvinyl alcohol)をスピンコートで1μm形成し、150℃で焼成することで図略のパッシベーション層を作製した。以上により、光センサアレイ20が作製された。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0120】
実施例1
<比較の有機光電変換素子1の作製>
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を110nm堆積したもの(シート抵抗13Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて2mm幅にパターニングして、透明電極を形成した。
【0121】
パターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
【0122】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron PH510(スタルクヴィテック社製)を30nmの膜厚でスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した。
【0123】
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。クロロベンゼンにp型半導体材料として、アルドリッチ製Poly(2−Methoxy−5−(2−ethylhexyloxy)−1,4−phenylenevinylene),Mn=40000−70000を1.5質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製Nanom SpectraE100(PCBM)を1.5質量%を溶解した液を作製し、0.45μmのフィルタでろ過をかけながら500rpmで60秒、ついで2200rpmで1秒間のスピンコートを行い、室温で30分乾燥した。
【0124】
次に、上記一連の有機層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、フッ化リチウムを5nm、Alを80nmを蒸着した。最後に120℃で30分間の加熱を行い、比較の有機光電変換素子1を得た。なお蒸着速度はいずれも2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。
【0125】
得られた有機光電変換素子1は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、ソーラシュミレーターの光を100mW/cm(AM1.5G)の照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期の変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、透明電極と対極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後の変換効率を評価し、相対低下効率を算出した。
【0126】
【化6】

【0127】
<本発明の有機光電変換素子2の作製>
比較の有機光電変換素子1の作製において、p型半導体材料をアルドリッチ製Poly(2−Methoxy−5−(2−ethylhexyloxy)−1,4−phenylenevinylene)に代えて、側鎖のエチルヘキシルオキシ基が光学活性である本発明の例示化合物P6に変更した以外は、比較の有機光電変換素子1と同様にして有機光電変換素子2を得た。なお光学活性な2−エチル−1−ヘキサノールは、J.A,/CChem.Soc.,Vol118(1996)p1577、Tetrahedron Letters,vol.46(2005),p7217などを参考として合成することができる。またこの材料のMnは35000であった。
【0128】
得られた有機光電変換素子2は、窒素雰囲気下でアルミニウム缶とUV硬化樹脂を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期の変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、透明電極と対極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後の変換効率を評価した。
【0129】
上記の結果を、表2にまとめた。
【0130】
【表2】

【0131】
表2からわかるように、本発明の有機光電変換素子が、高い効率および耐久性を有していることがわかる。
【0132】
実施例2
<比較の有機光電変換素子11の作製>
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を110nm堆積したもの(シート抵抗13Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて2mm幅にパターニングして、透明電極(陽極)を形成した。
【0133】
パターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
【0134】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を40nmの膜厚となるようにスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した。
【0135】
Baytron P4083の層を形成して窒素下に移送した後、まず、窒素雰囲気下で上記基板を180℃で3分間加熱処理した。次いでバルクへテロジャンクション層(i層)として、前記BP−1前駆体を1.2質量%、およびn型半導体材料としてフロンティアカーボン社製PCBMを1.0質量%を溶解した液を作製し、0.45μmのフィルタでろ過をかけた後、70nmの厚さとなるようにスピンコートし、180℃で20分間加熱することで、i層を得た。なおBP−1前駆体はBP−1に変換される際に分子量が約5/6となるため、p型半導体材料:n型半導体材料=1:1である。
【0136】
【化7】

【0137】
バルクへテロジャンクション層まで設けた基板を、大気暴露させずに、蒸着機に移動して2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、4×10−4Paまで減圧した。なお、タンタル製抵抗加熱ボートに、また、タングステン製抵抗加熱ボートに、Aldrich社製バソキュプロインおよびアルミニウムを入れ、蒸着機内に取り付けておいた。
【0138】
次いで、タンタル製抵抗熱ボートに通電し加熱し、基板上にバソキュプロイン(BCP)の電子輸送層を6nm設けた。つづいて、タングステン製タンタル加熱ボートに通電し加熱し、蒸着速度1〜2nm/秒で膜厚100nmの陰極を、前記透明導電膜と直交するように蒸着し、2mm角のサイズの有機光電変換素子1を得た。
【0139】
得られた有機光電変換素子1は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、ソーラシュミレーターの光を100mW/cm(AM1.5G)の照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期の変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、陽極と陰極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後の変換効率を評価し、相対低下効率を算出した。
【0140】
<本発明及び比較の有機光電変換素子12〜15の作製>
本発明の有機光電変換素子11の作製において、n型半導体材料を表3に記載の化合物に変更した以外は、比較の有機光電変換素子11と同様にして有機光電変換素子12〜15を得た。
【0141】
得られた有機光電変換素子12〜15は、窒素雰囲気下でアルミニウム缶とUV硬化樹脂を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期の変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、透明電極と対極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後の変換効率を評価した。
【0142】
【化8】

【0143】
<本発明の有機光電変換素子16の作製>
本発明の有機光電変換素子11の作製において、n型半導体材料を例示化合物N6に変更してバルクへテロジャンクション層(i層)を形成し、乾燥させた後、トルエンに例示化合物N6だけを1.2質量%を溶解した液を作製し、0.45μmのフィルタでろ過をかけながら2000rpmで60秒のスピンコートを行い、室温で5分放置後、160℃で30分加熱し、例示化合物N6単体からなるn層を30nmの厚さで形成した。
【0144】
次に、上記一連の有機層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後は同様にして、BCPとAlを蒸着した。最後に120℃で30分間の加熱を行い、光電変換層がi層+n層の2層からなる本発明の光電変換素子16を得た。
【0145】
得られた有機光電変換素子16は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、ソーラシュミレーターの光を100mW/cm(AM1.5G)の照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期の変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、透明電極と対極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後の変換効率を評価し、相対低下効率を算出した。
【0146】
<本発明の有機光電変換素子17の作製>
本発明の有機光電変換素子16の作製において、Baytron PH510(スタルクヴィテック社製)を30nmの膜厚でスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した後、 まずp層として、クロロベンゼンに前記p型半導体材料として、BP−1前駆体を0.5質量%で溶解し、0.45μmのフィルタでろ過をかけた後、25nmの膜厚となるようにスピンコートし、180℃で20分間加熱することで、BP−1前駆体をBP−1へと変換し、p層を得た。
【0147】
以降は、本発明の有機光電変換素子16と同様にして素子を作製し、光電変換層がp層+i層+n層の3層からなる本発明の光電変換素子17を得た。
【0148】
得られた有機光電変換素子17は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、ソーラシュミレーターの光を100mW/cm(AM1.5G)の照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期の変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、透明電極と対極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後の変換効率を評価し、相対低下効率を算出した。
【0149】
【表3】

【0150】
表3からわかるように、本発明の有機光電変換素子が、高い効率および耐久性を有していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図2】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図3】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる別の太陽電池を示す断面図である。
【図4】光センサアレイの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0152】
10 有機光電変換素子(バルクヘテロジャンクション型)
11 基板
12 透明電極
13 対極
14 光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)
14p p層
14i i層
14n n層
14′ 第1の光電変換部
15 電荷再結合層
16 第2の光電変換部
17 正孔輸送層
18 電子輸送層
20 光センサアレイ
21 基板
22 透明電極
23 対電極
24 光電変換部
24a バッファ層
24b 光電変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対極と透明電極の間に、光学活性中心を有する有機化合物を含有する有機層を有することを特徴とする有機光電変換素子。
【請求項2】
前記光学活性中心を有する有機化合物を含有する有機層が、溶液プロセスによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機光電変換素子。
【請求項3】
前記光学活性中心を有する有機化合物が、n型半導体材料としてバルクへテロジャンクション層に含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機光電変換素子。
【請求項4】
前記光学活性中心が、炭素原子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項5】
前記光学活性中心を有する有機化合物が、フラーレン誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項6】
前記光学活性中心を有する有機化合物が、下記一般式(1)で表されるフラーレン誘導体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【化1】

(式中、Rは光学活性中心を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基から選ばれる置換基を表し、nは1〜4の整数を表す。なお式中、フラーレン構造は一方の半球部分のみを示してあるが、他に置換基を有していて良いフラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84から選ばれるフラーレン構造を表す。)
【請求項7】
前記光学活性中心を有する有機化合物単体からなる層が、前記バルクへテロジャンクション層に接して形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項8】
前記有機光電変換素子は光電変換層を有し、かつ、該光電変換層がp型半導体単体からなるp層、p型半導体とn型半導体の混合物からなるバルクへテロジャンクション層(i層)、n型半導体単体からなるn層、の3層積層からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子からなることを特徴とする太陽電池。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子がアレイ状に配置されてなることを特徴とする光センサアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−135665(P2010−135665A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311883(P2008−311883)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】