説明

有機光電素子用化合物およびこれを含む有機光電素子

本発明は、有機光電素子用化合物およびこれを含む有機光電素子に関し、前記有機光電素子用化合物は、化学式1で表されるものを提供する。
前記化学式1の定義は、明細書に記載されたとおりである。前記有機光電素子用化合物を利用すると、熱的/電気化学的安定性および寿命、効率に優れた有機光電素子を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命、効率、電気化学的安定性および熱的安定性に優れた有機光電素子を提供することができる有機光電素子用化合物およびこれを含む有機光電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機光電素子(organic photoelectric device)は、正孔または電子を利用した電極と有機材料との間での電荷交換を必要とする素子である。
【0003】
有機光電素子は動作原理に応じて次のように分類することができる。第一の有機光電素子は、外部の光源からの光子により有機材料層で励起子(exciton)が生成し、この励起子が電子と正孔に分離され、そしてこの電子と正孔が互いに異なる電極に電流源(電圧源)として移動することによって駆動される電子素子である。
【0004】
第二の有機光電素子は、少なくとも2つの電極に電圧または電流を加えて前記電極の界面に位置する有機材料半導体に正孔または電子を注入し、そして注入された電子および正孔により素子が駆動される電子素子である。
【0005】
有機光電素子の例としては、有機発光ダイオード(OLED)、有機太陽電池、有機感光体ドラム(organic photo conductor drum)、有機トランジスタ、有機メモリ素子などがあり、これらは正孔注入材料もしくは正孔輸送材料、電子注入材料もしくは電子輸送材料、または発光材料を必要とする。
【0006】
特に、有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)は、近年、平板ディスプレイ(flat panel display)の需要が増加することに伴って注目されている。一般に有機発光とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに変換させることをいう。
【0007】
このような有機発光ダイオードは、有機発光材料に電流を加えて電気エネルギーを光に変換させる素子であって、陽極(anode)と陰極(cathode)との間に機能性有機材料層が挿入された構造を有する。前記有機材料層は、有機発光ダイオードの効率および安全性を高めるために、それぞれ異なる材料を含む多層、例えば、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)などを含む。
【0008】
このような有機発光ダイオードにおいて、陽極と陰極との間に電圧をかけると、陽極からは正孔(hole)が、陰極からは電子(electron)が有機材料層に注入される。生成した励起子が基底状態(ground state)に移動しながら特定の波長を有する光を生成する。
【0009】
1987年にイーストマンコダック(Eastman Kodak)社では、発光層形成用材料として低分子の芳香族ジアミンとアルミニウム錯体とを含む有機発光ダイオードを最初に開発した(Applied Physics Letters,51,913,1987)。1987年にC.W.Tangらが最初に有機発光ダイオードとして実用的な素子を報告した(Applied Physics Letters,51 12,913〜915,1987)。
【0010】
前記文献によれば有機層はジアミン誘導体の薄膜(正孔輸送層(HTL))とトリス(8−ヒドロキシ−キノレート)アルミニウム(tris(8−hydroxy−quinolate)aluminum、Alq)の薄膜とが積層された構造を有する。
【0011】
最近は、蛍光発光材料のみならず、燐光発光材料も有機発光ダイオードの発光材料として使用され得ることが知られるようになった(D.F.O’Brienら、Applied Physics Letters,74 3,442−444,1999;M.A.Baldoら、Applied Physics letters,75 1,4−6,1999)。このような燐光材料は基底状態(ground state)から励起状態(excited state)に電子が遷移した後、項間交差(intersystem crossing)を通じて一重項励起子が三重項励起子に無輻射遷移した後、三重項励起子が基底状態に遷移して発光するメカニズムによって発光する。
【0012】
前記のように有機発光ダイオードにおいて有機材料層は、発光材料および電荷輸送材料、例えば正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料などを含む。
【0013】
また、発光材料は、発光色に応じて青色、緑色、および赤色発光材料とさらに改善された天然色に近い色を発光させるための黄色および橙色発光材料とに分類される。
【0014】
一方、発光材料として一つの材料のみを使用する場合、分子間相互作用により最大発光波長が長波長側に移動したり、色純度が落ちる、または発光クエンチング効果により素子の効率が低下する。したがって、色純度を改善し、エネルギー移動を通じて発光効率および安定性を増加させるために、発光材料としてホスト/ドーパント系を使用しても良い。
【0015】
有機発光ダイオードが前述した優れた特徴を十分に発揮するためには、有機材料層を構成する材料、例えば正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料、電子注入材料、ホストおよび/またはドーパントなどの発光材料が安定であり且つ良好な効率を有する必要がある。しかしながら、現在まで有機発光ダイオード用の有機材料層を形成する材料の開発がまだ十分ではなく、したがって新たな材料が要求されている。このような材料開発は前述した他の有機光電素子でも同様に要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の例示的な実施形態は、発光、または電子注入および/または輸送の役割を果たすことができ、適切なドーパントと共に発光ホストとしての役割を果たすことができる有機光電素子用化合物を提供する。
【0017】
また、本発明の他の実施形態は、寿命、効率、駆動電圧、電気化学的安定性および熱的安定性に優れた有機光電素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表される有機光電素子用化合物を提供する。
【0019】
【化1】

【0020】
前記化学式1において、Ar1は、置換または非置換のC2〜C30ヘテロアリール基であり、Ar2〜Ar5は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のC6〜C30アリール基であり、L1およびL2は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のC6〜C30アリーレン基であり、X1〜X3は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、X1〜X3のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、Y1〜Y3は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、Y1〜Y3のうちの少なくとも一つはヘテロ原子である。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記Ar1は、置換または非置換のイミダゾリレン基、置換または非置換のチアゾリレン基、置換または非置換のオキサゾリレン基、置換または非置換のオキサジアゾリレン基、置換または非置換のトリアゾリレン基、置換または非置換のピリミジニレン基、置換または非置換のピリジニレン基、置換または非置換のピラダジニレン基、置換または非置換のキノリニレン基、置換または非置換のイソキノリニレン基、置換または非置換のアクリジニレン基、置換または非置換のイミダゾピリジニレン基および置換または非置換のイミダゾピリミジニレン基からなる群より選択されてもよい。本発明の一実施形態によれば、前記Ar1は、下記化学式2〜7からなる群より選択される置換基であってもよい。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
前記化学式2〜7において、A1〜A6は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、A1〜A6のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、B1〜B5は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、B1〜B5のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、C1〜C4は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、C1〜C4のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、D1〜D4は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、D1〜D4のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、E1およびE2は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、E1およびE2のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、R1〜R7は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1〜C10のアルキル基、置換または非置換のC5〜C30アリール基および置換または非置換のC2〜C30ヘテロアリール基からなる群より選択される。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、前記Ar2〜Ar5は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のナフチル基、置換または非置換のアントラセニル基、置換または非置換のフェナントレニル基、置換または非置換のピレニル基、置換または非置換のペリレニル基、置換または非置換のクリセニル基からなる群より選択されてもよい。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、前記L1およびL2は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のナフチレン基、置換または非置換のアントラセニレン基、置換または非置換のフェナントレニレン基、置換または非置換のピレニレン基、置換または非置換のペリレニレン基、置換または非置換のクリセニレン基からなる群より選択されてもよい。
【0028】
本発明の他の実施形態によれば、陽極、陰極および前記陽極と陰極との間に配置される少なくとも一層以上の有機薄膜層を含む有機光電素子において、前記有機薄膜層のうちの少なくとも一層は、前述した有機光電素子用化合物を含む有機光電素子を提供する。
【0029】
前記有機薄膜層は、発光層、正孔輸送層(HTL)、正孔注入層(HIL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、正孔阻止層およびこれらの組み合わせから群より選択されてもよい。
【0030】
前記有機光電素子用化合物は、電子輸送層(ETL)または電子注入層(EIL)内に含まれてもよい。
【0031】
前記有機光電素子用化合物は、発光層内に含まれてもよい。
【0032】
前記有機光電素子用化合物は、発光層内で燐光または蛍光ホスト材料として使用されてもよい。
【0033】
前記有機光電素子用化合物は、発光層内で蛍光青色ドーパント材料として使用されてもよい。
【0034】
前記有機光電素子は、有機発光素子、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機感光体ドラムおよび有機メモリ素子からなる群より選択されてもよい。
【0035】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前述した有機光電素子を含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、優れた電気化学的および熱的安定性により寿命特性に優れ、低い駆動電圧でも高い発光効率を有する有機光電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を用いて製造され得る有機光電素子を示す断面図である。
【図2】本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を用いて製造され得る有機光電素子を示す断面図である。
【図3】本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を用いて製造され得る有機光電素子を示す断面図である。
【図4】本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を用いて製造され得る有機光電素子を示す断面図である。
【図5】本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を用いて製造され得る有機光電素子を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態と比較例における電圧変化による電流密度の変化測定実験データである。
【図7】本発明の一実施形態と比較例における電圧変化による輝度の変化測定実験データである。
【図8】本発明の一実施形態と比較例における発光効率実験データである。
【図9】本発明の一実施形態と比較例における電力効率実験データである。
【図10】本発明の一実施形態と比較例における有機光電素子の寿命測定実験データである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の例示的な実施形態を詳しく説明する。但し、これらの実施形態は単なる例示であり、これらによって本発明が制限されず、後述する特許請求の範囲の範疇のみによって定義される。
【0039】
本明細書で「置換」とは、別途の定義がない限り、C1〜C30アルキル基、C1〜C10アルキルシリル基、C3〜C30シクロアルキル基、C6〜C30アリール基、C1〜C10アルコキシ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基などのC1〜C10トリフルオロアルキル基、またはシアノ基で置換されたものを意味する。
【0040】
本明細書で「ヘテロ」とは、別途の定義がない限り、一つの環内にN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子を1〜3個含有し、残りは炭素であることを意味する。
【0041】
本明細書で「これらの組み合わせ」とは、別途の定義がない限り、二つ以上の置換基が連結基で結合されていたり、二つ以上の置換基が縮合して結合されているものを意味する。
【0042】
本明細書で「アルキル(alkyl)」とは、別途の定義がない限り、脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル部位は、いかなるアルケンやアルキン部位を含んでいないもの意味する「飽和アルキル(saturated alkyl)」基であってもよい。アルキル部位は、少なくとも一つのアルケンまたはアルキン部位を含んでいるものを意味する「不飽和アルキル(unsaturated alkyl)」基であってもよい。「アルケン(alkene)」基は、少なくとも二つの炭素原子が結合して少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を形成する基を意味し、「アルキン(alkyne)」基は、少なくとも二つの炭素原子が結合して少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を形成する基を意味する。飽和や不飽和に関係なくアルキル基は分枝型、直鎖型または環状であってもよい。
【0043】
アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有してもよい。アルキル基は、1〜10個の炭素原子を有する中間サイズのアルキルであってもよい。アルキル基は、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキルであってもよい。
【0044】
例えば、C1〜C4アルキルは、アルキル鎖に1〜4個の炭素原子、つまり、アルキル鎖はメチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルからなる群より選択されるものを意味する。
【0045】
アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどから選択され、個別的且つ独立的に置換されてもよい。
【0046】
用語「アリール(aryl)」は、共役π電子系を有している少なくとも一つの環を持つ炭素環式アリール(例えば、フェニル)を含むアリール基を意味する。この用語は、単環または融合した多環(つまり、炭素原子の隣接した対を分けて有する環)グループを含む。また、この用語は一つの炭素を接点で有しているスピロ(spiro)化合物を含む。
【0047】
用語「ヘテロアリール(heteroaryl)」は、共役π電子系を有している少なくとも一つの環を有している複素環アリール(例えば、ピリジン)を含むアリールグループを意味する。この用語は、単環または融合した多環(つまり、炭素原子の隣接した対を分けて有する環)グループを含む。また、この用語は、一つの炭素を接点で有しているスピロ(spiro)化合物を含む。
【0048】
本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物は、ヘテロアリーレン基のコア構造に少なくとも二つの「*−アリーレン基−ヘテロアリール基」で表されてもよい置換基が結合された構造であってもよい。本明細書で「*」は、結合される位置を意味する。
【0049】
また、前記有機光電素子用化合物は、コア構造と前記二つの置換基に多様な置換基を導入することによって多様なエネルギーバンドギャップを有する化合物を合成することができるため、電子注入層(EIL)および輸送層のみならず、発光層で要求される条件を満たす化合物になり得る。
【0050】
前記化合物の置換基により適切なエネルギー準位を有する化合物を有機光電素子に使用することによって、電子伝達能力が強化されて効率および駆動電圧の面で優れた効果を有し、電気化学的および熱的安定性に優れて有機光電素子の駆動時に寿命特性を向上させることができる。
【0051】
このような本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表される有機光電素子用化合物を提供する。
【0052】
【化5】

【0053】
前記化学式1において、Ar1は、置換または非置換のC2〜C30ヘテロアリール基であってもよい。具体的な例として、前記Ar1は、置換または非置換のイミダゾリレン基、置換または非置換のチアゾリレン基、置換または非置換のオキサゾリレン基、置換または非置換のオキサジアゾリレン基、置換または非置換のトリアゾリレン基、置換または非置換のピリミジニレン基、置換または非置換のピリジニレン基、置換または非置換のピラダジニレン基、置換または非置換のキノリニレン基、置換または非置換のイソキノリニレン基、置換または非置換のアクリジニレン基、置換または非置換のイミダゾピリジニレン基および置換または非置換のイミダゾピリミジニレン基からなる群より選択されてもよい。
【0054】
より具体的なAr1の例としては、下記化学式2〜7からなる群より選択される置換基などになり得る。
【0055】
【化6】

【0056】
【化7】

【0057】
【化8】

【0058】
前記化学式2〜7において、A1〜A6は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、A1〜A6のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、B1〜B5は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、B1〜B5のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、C1〜C4は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、C1〜C4のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、D1〜D4は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、D1〜D4のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、E1およびE2は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、E1およびE2のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、R1〜R7は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1〜C10のアルキル基、置換または非置換のC5〜C30アリール基および置換または非置換のC2〜C30ヘテロアリール基からなる群より選択される。
【0059】
前記Ar1が前述したヘテロアリーレン基のコア構造である。前記化学式1で分かるように、前記コア構造にはL1およびL2が結合され得る。
【0060】
L1およびL2は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のC6〜C30アリーレン基であってもよい。具体的な例として、L1およびL2は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のナフチレン基、置換または非置換のアントラセニレン基、置換または非置換のフェナントレニレン基、置換または非置換のピレニレン基、置換または非置換のペリレニレン基、置換または非置換のクリセニレン基からなる群より選択されてもよい。
【0061】
前記L1およびL2のπ共役長(π−conjugation length)を調節して可視領域で発光調節を可能にすることができる。これによって、前記化合物が有機光電素子の発光層に非常に有用に適用され得る。但し、炭素数が前述した範囲を逸脱するようになると素子としての十分な効果が得られないこともある。
【0062】
前記化合物が発光層として使用される場合、炭素数が6未満であれば共役(Conjugation)が不十分であり、炭素数が30を超えると発光色が赤外線領域側に大幅移動して不適切である。
【0063】
また、前記化合物が電子輸送層(ETL)として使用される場合にも、同様に、炭素数が6未満であれば共役が不十分であり、炭素数が30を超えるとバンドギャップ(band gap)が減少し正孔阻止能力が落ちるようになる。
【0064】
前記化学式1で示されるように、前記L1およびL2には、独立してヘテロアリール基が結合され得る。
【0065】
前記化学式1において、X1〜X3は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、X1〜X3のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であってもよく、Y1〜Y3は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、Y1〜Y3のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であってもよい。
【0066】
このような置換基が結合された構造を有する化合物は、ヘテロ原子の水素結合により、熱的安定性に優れ、これによって、有機光電素子の寿命特性を向上させることができる。
【0067】
また、末端のヘテロアリール基に結合された置換基であるAr2〜Ar5は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のC6〜C30アリール基であってもよい。具体的な例として、前記Ar2〜Ar5は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のナフチル基、置換または非置換のアントラセニル基、置換または非置換のフェナントレニル基、置換または非置換のピレニル基、置換または非置換のペリレニル基、置換または非置換のクリセニル基からなる群より選択されてもよい。
【0068】
前記Ar2〜Ar5の種類によって化合物の電子輸送能力を調節することができる。また、化合物の結晶化度を調節して素子の長寿命化を期待することができる。
【0069】
前記有機光電素子用化合物は、下記化学式8〜18で表されるものを使用することができる。しかし、本発明は下記化合物に限定されない。これによる化合物の組み合わせは、化合物1〜385で表されてもよい。
【0070】
【化9】

【0071】
前記化学式8において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は、下記表1で定義されたとおりである。
【0072】
【表1−1】

【0073】
【表1−2】

【0074】
【化10】

【0075】
前記化学式9において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は下記表2で定義されたとおりである。
【0076】
【表2−1】

【0077】
【表2−2】

【0078】
【化11】

【0079】
前記化学式10において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は下記表3で定義されたとおりである。
【0080】
【表3−1】

【0081】
【表3−2】

【0082】
【化12】

【0083】
前記化学式11において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は下記表4で定義されたとおりである。
【0084】
【表4−1】

【0085】
【表4−2】

【0086】
【化13】

【0087】
前記化学式12において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は下記表5で定義されたとおりである。
【0088】
【表5−1】

【0089】
【表5−2】

【0090】
【化14】

【0091】
前記化学式13において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は下記表6で定義されたとおりである。
【0092】
【表6−1】

【0093】
【表6−2】

【0094】
【化15】

【0095】
前記化学式14において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は下記表7で定義されたとおりである。
【0096】
【表7−1】

【0097】
【表7−2】

【0098】
【化16】

【0099】
前記化学式15において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は下記表8で定義されたとおりである。
【0100】
【表8−1】

【0101】
【表8−2】

【0102】
【化17】

【0103】
前記化学式16において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は下記表9で定義されたとおりである。
【0104】
【表9−1】

【0105】
【表9−2】

【0106】
【化18】

【0107】
前記化学式17において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は下記表10で定義されたとおりである。
【0108】
【表10−1】

【0109】
【表10−2】

【0110】
【化19】

【0111】
前記化学式18において、Ar2〜Ar5、X1〜X3、Y1〜Y3、L1およびL2は下記表11で定義されたとおりである。
【0112】
【表11−1】

【0113】
【表11−2】

【0114】
前記のような化合物を含む有機光電素子用化合物は、ガラス転移温度が120℃以上であり、熱分解温度が400℃以上であって、熱的安定性に優れている。これによって、高効率の有機光電素子が実現可能である。
【0115】
前記のような化合物を含む有機光電素子用化合物は、発光、または電子注入および/または輸送の役割を果たすことができ、適切なドーパントと共に発光ホストとしての役割も果たすことができる。つまり、前記有機光電素子用化合物は、燐光または蛍光のホスト材料、青色の発光ドーパント材料、または電子輸送材料として使用され得る。
【0116】
本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物は、有機薄膜層に使用されて有機光電素子の寿命特性、効率特性、電気化学的安定性および熱的安定性を向上させ、駆動電圧を低めることができる。
【0117】
これによって、本発明の一実施形態は、前記有機光電素子用化合物を含む有機光電素子を提供する。この時、前記有機光電素子とは、有機光電素子、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機感光体ドラム、有機メモリ素子などを意味する。特に、有機太陽電池の場合には、本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物が電極や電極バッファー層に含まれて量子効率を増加させ、有機トランジスタの場合には、ゲート、ソース−ドレイン電極などで電極物質として使用され得る。
【0118】
以下、有機光電素子について具体的に説明する。
【0119】
本発明の他の一実施形態は、陽極、陰極および前記陽極と陰極との間に配置される少なくとも一層以上の有機薄膜層を含む有機光電素子において、前記有機薄膜層のうちの少なくとも一層は、本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物を含む有機光電素子を提供する。
【0120】
前記有機光電素子用化合物を含むことができる有機薄膜層としては、発光層、正孔輸送層(HTL)、正孔注入層(HIL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、正孔阻止層およびこれらの組み合わせからなる群より選択される層を含むことができるところ、この中で少なくとも一層は、本発明による有機光電素子用化合物を含む。特に、電子輸送層(ETL)または電子注入層(EIL)に本発明の一実施形態による有機光電素子用化合物を含むことができる。また、前記有機光電素子用化合物が発光層内に含まれる場合、前記有機光電素子用化合物は燐光または蛍光ホストとして含まれ得、特に、蛍光青色ドーパント材料として含まれ得る。
【0121】
図1〜図5は、本発明の多様な実施形態による有機光電素子用化合物を含む有機光電素子の断面図である。
【0122】
図1〜図5を参照すれば、本発明の多様な実施形態による有機光電素子100、200、300、400、500は、陽極120、陰極110およびこの陽極と陰極との間に配置された少なくとも一層の有機薄膜層105を含む構造を有する。
【0123】
前記陽極120は、陽極物質を含み、この陽極物質としては、通常有機薄膜層へ正孔注入が円滑に行われるように仕事関数が大きい物質が好ましい。前記陽極物質の具体的な例としては、ニッケル、白金、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属含有酸化物;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](polyehtylene dioxy thiophene:PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような伝導性高分子などが挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、前記陽極としてITO(indium tin oxide)を含む透明電極を使用してもよい。
【0124】
前記陰極110は、陰極物質を含み、この陰極物質としては、通常有機薄膜層へ電子注入が容易に行われるように仕事関数が小さい物質であることが好ましい。陰極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛、セシウム、バリウムなどのような金属またはこれらの合金;LiF/Al、LiO/Al、LiF/Ca、LiF/AlおよびBaF/Caのような多層構造物質などが挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、前記陰極としてアルミニウムなどのような金属電極を使用してもよい。
【0125】
まず、図1を参照すれば、図1は、有機薄膜層105として発光層130のみが存在する有機光電素子100を示した図面であり、前記有機薄膜層105は、発光層130のみで存在してもよい。
【0126】
図2を参照すれば、図2は、有機薄膜層105として電子輸送層(ETL)を含む発光層230と正孔輸送層(HTL)140が存在する2層型有機光電素子200を示した図面であり、図2に示されているように、有機薄膜層105は、発光層230および正孔輸送層(HTL)140を含む2層型であってもよい。この場合、発光層130は電子輸送層(ETL)の機能を果たし、正孔輸送層(HTL)140はITOのような透明電極との接合性および正孔輸送性を向上させる機能を果たす。
【0127】
図3を参照すれば、図3は、有機薄膜層105として電子輸送層(ETL)150、発光層130および正孔輸送層(HTL)140が存在する3層型有機光電素子300を示した図面であり、前記有機薄膜層105で発光層130は独立した形態からなっており、電子輸送性や正孔輸送性に優れた膜(電子輸送層(ETL)150および正孔輸送層(HTL)140)を別途の層で積んだ形態を示している。
【0128】
図4を参照すれば、図4は、有機薄膜層105として電子注入層(EIL)160、発光層130、正孔輸送層(HTL)140および正孔注入層(HIL)170が存在する4層型有機光電素子400を示した図面であり、前記正孔注入層(HIL)170は陽極として使用されるITOとの接合性を向上させることができる。
【0129】
図5を参照すれば、図5は、有機薄膜層105として電子注入層(EIL)160、電子輸送層(ETL)150、発光層130、正孔輸送層(HTL)140および正孔注入層(HIL)170のようなそれぞれ異なる機能を果たす5層が存在する5層型有機光電素子500を示した図面であり、前記有機光電素子500は、電子注入層(EIL)160を別途に形成して低電圧化に効果的である。
【0130】
前記図1〜図5において前記有機薄膜層105をなす電子輸送層(ETL)150、電子注入層(EIL)160、発光層130、230、正孔輸送層(HTL)140、正孔注入層(HIL)170およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるいずれか一つは、前記有機光電素子用化合物を含む。この時、前記有機光電素子用化合物は、前記電子輸送層(ETL)150または電子注入層(EIL)160を含む電子輸送層(ETL)150に使用され得、その中でも電子輸送層(ETL)に含まれる場合、正孔阻止層(図示せず)を別途に形成する必要がないため、より単純化された構造の有機光電素子を提供することができて好ましい。
【0131】
また、前記有機光電素子用化合物が発光層130、230内に含まれる場合、前記有機光電素子用化合物は燐光または蛍光ホストとして含まれ得、または蛍光青色ドーパントとして含まれ得る。
【0132】
上述した有機光電素子は、基板に陽極を形成した後、真空蒸着法(evaporation)、スパッタリング(sputtering)、プラズマメッキおよびイオンメッキのような乾式成膜法、またはスピンコーティング(spin coating)、浸漬法(dipping)、流動コーティング法(flow coating)のような湿式成膜法などで有機薄膜層を形成した後、その上に陰極を形成して製造することができる。
【0133】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、前記有機光電素子を含む表示装置を提供する。
【実施例】
【0134】
以下の実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。但し、これらの実施例は本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これらによって本発明が制限されてはならないことが理解されるであろう。
【0135】
(有機光電素子用化合物の製造)
〔実施例1〕:化合物246の合成
本発明のより具体的な例として提示された前記化合物246は、下記反応式1のような経路を通じて合成される。
【0136】
【化20】

【0137】
2,4−ジクロロ−6−(ナフタレン−7−イル)ピリミジン7g(25mmol)、4−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−2,6−ジフェニルピリジン24.3g(56mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.5g(1.3mmol)をテトラヒドロフラン210mlとトルエン140mLの混合溶媒に懸濁して懸濁液を製造し、炭酸カリウム14.1g(100mmol)を水140mLに溶解した溶液をこの懸濁液に加え、得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、析出した結晶をろ過によって分離し、トルエンで洗浄し、化合物16.7g(収率:80.3%)を得た。
【0138】
(計算値:816.99/測定値:MS[M+1]816)
〔実施例2〕:化合物248の合成
本発明のより具体的な例として提示された前記化合物248は、下記反応式2のような経路を通じて合成される。
【0139】
【化21】

【0140】
<第1段階;中間体生成物(A)の合成>
4−ブロモフェナシルブロミド100g(360mmol)をピリジン1000mLに徐々に入れて常温で1時間撹拌した。析出された固体をろ過によって分離しジエチルエーテルで洗浄して中間体生成物(A)127.4g(収率:99%)を得た。
【0141】
<第2段階;中間体生成物(B)の合成>
中間体生成物(A)185.2g(86.4mmol)、トランスカルコン90g(43.2mmol)およびアンモニウムアセテート333g(432mmol)をメタノール1200mLに懸濁して12時間加熱還流した。冷却後、析出された固体をろ過によって分離しメタノールで洗浄して中間体生成物(B)88.4g(収率:53%)を得た。
【0142】
<第3段階:中間体生成物(C)の合成>
中間体生成物(B)130g(337mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン102.7g(404.4mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェノセン]ジクロロパラジウム(II)6.9g(8.4mmol)および酢酸カリウム99.2g(1011mmol)をジメチルホルムアミド650mLに懸濁して80℃で12時間撹拌した。冷却後、反応溶液を蒸溜水に注いで固体を析出しろ過によって分離した。ろ過された固体は酢酸エチル/ヘキサンで再結晶して中間体生成物(C)88.4g(収率:53%)を得た。
【0143】
<第4段階:化合物248の合成>
2,4−ジクロロ−6−(ナフタレン−7−イル)ピリミジン2.5g(9.1mmol)、中間体生成物(C)8.7g(20mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.5g(0.5mmol)をテトラヒドロフラン75mLとトルエン50mLの混合溶媒に懸濁して懸濁液を製造し、炭酸カリウム5g(36.4mmol)を水140mLに溶解した溶液をこの懸濁液に加え、得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をトルエンで再結晶し、析出した結晶をろ過によって分離し、トルエンで洗浄し、化合物6.2g(収率:83.5%)を得た。
【0144】
(計算値:816.99/測定値:MS[M+1]816)
〔実施例3〕:化合物283の合成
本発明のより具体的な例として提示された前記化合物283は下記反応式3のような経路を通じて合成される。
【0145】
【化22】

【0146】
<第1段階;中間体生成物(D)の合成>
2−ブロモアセチルナフタレン24.9g(100mmol)と2−アミノ−3,5−ジブロモピリジン25.2g(100ml)をエタノール300mLに懸濁させた後、12時間加熱還流した。冷却後、析出された固体をろ過によって分離しエタノールで洗浄して中間体生成物(D)26.8g(収率:66%)を得た。
【0147】
<第2段階:化合物283の合成>
中間体生成物(D)3.5g(8.7mmol)、化合物(C)9.4g(21.7mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.5g(0.44mmol)をテトラヒドロフラン400mLに懸濁して懸濁液を製造し、炭酸カリウム4.8g(34.8mmol)を水200mLに溶解した溶液をこの懸濁液に加え、得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をテトラヒドロフラン/メタノールで再結晶し、析出した結晶をろ過によって分離し、メタノールで洗浄し、化合物6.1g(収率:82%)を得た。
【0148】
(計算値:855.03/測定値:MS[M+1]855
<実施例4:化合物318の合成>
本発明のより具体的な例として提示された前記化合物318は下記反応式4のような経路を通じて合成される。
【0149】
【化23】

【0150】
<第1段階;中間体生成物(E)の合成>
エチルブロモアセテート50mL(451mmol)をピリジン700mLに徐々に入れて常温で2時間撹拌した。析出された固体をろ過によって分離しジエチルエーテルで洗浄して中間体生成物(E)105g(収率:94%)を得た。
【0151】
<第2段階;中間体生成物(F)の合成>
中間体生成物(E)42.5g(172.9mmol)、トランスカルコン30g(144mmol)およびアンモニウムアセテート111g(1440mmol)をメタノール600mLに懸濁して12時間加熱還流した。冷却後、析出された固体をろ過によって分離しメタノールで洗浄して中間体生成物(F)831.2g(収率:87%)を得た。
【0152】
<第3段階;中間体生成物(G)の合成>
中間体生成物(F)20g(80.9mmol)と燐酸トリブロミド25g(87.2mmol)を130℃で2時間撹拌した。反応液を常温に冷却した後、水に注いで中和して固体をろ過した。得られた固体はメタノールで洗浄して中間体生成物(G)17.3g(収率:68%)を得た。
【0153】
<第4段階;中間体生成物(H)の合成>
4−ブロモフェナシルブロミド50g(180mmol)と2−アミノピリジン20.3g(220ml)をエタノール300mLに懸濁させた後、12時間加熱還流した。冷却後、析出された固体をろ過によって分離しエタノールで洗浄して中間体生成物(H)36.6g(収率:74%)を得た。
【0154】
<第5段階;中間体生成物(I)の合成>
中間体生成物(H)27.3g(100mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン30.5g(120mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェノセン]ジクロロパラジウム(II)0.82g(1mmol)および酢酸カリウム29.4g(300mmol)をジメチルホルムアミド250mLに懸濁して80℃で12時間撹拌した。冷却後、反応溶液を蒸溜水に注いで固体を析出しろ過によって分離した。ろ過された固体は酢酸エチル/ヘキサンで再結晶して中間体生成物(I)22.6g(収率:70%)を得た。
【0155】
<第6段階;中間体生成物(J)の合成>
中間体生成物(I)9.1g(25.8mmol)、化合物(G)8g(21.7mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.9g(0.8mmol)をテトラヒドロフラン200mLに懸濁して懸濁液を製造し、炭酸カリウム7.1g(51.6mmol)を水100mLに溶解した溶液をこの懸濁液に加え、得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をシリカゲルでカラム分離して化合物(J)3.35g(収率:30%)を得た。
【0156】
<第7段階;中間体生成物(K)の合成>
中間体生成物(J)3.3g(7.8mmol)とN−ヨードスクシンイミド2.1g(9.4mmol)をテトラヒドロフラン150mLに溶かし50℃で12時間撹拌した。冷却後、溶媒を減圧蒸留した。得られた固体はジクロロメタンに溶かした後、メタノールに再沈殿しろ過して化合物(K)4.3g(収率:100%)を得た。
【0157】
<第8段階:化合物318の合成>
中間体生成物(K)4.3g(7.8mmol)、化合物(C)4.1g(9.4mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.27g(0.23mmol)をテトラヒドロフラン400mLに懸濁して懸濁液を製造し、炭酸カリウム2.2g(17.2mmol)を水200mLに溶解した溶液をこの懸濁液に加え、得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をシリカゲルでカラム分離して化合物5.36g(収率:93%)を得た。
【0158】
(計算値:728.88/測定値:MS[M+1]728
〔実施例5〕:化合物177の合成
本発明のより具体的な例として提示された前記化合物177は下記反応式5のような経路を通じて合成される。
【0159】
【化24】

【0160】
1,3−ジクロロイソキノリン3g(15.1mmol)、化合物(C)16.4g(37.8mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.9g(0.76mmol)をテトラヒドロフラン180mLに懸濁して懸濁液を製造し、炭酸カリウム8.3g(60.4mmol)を水90mLに溶解した溶液をこの懸濁液に加え、得られた混合物を12時間加熱還流した。反応流体を2層に分離した後、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を減圧下で蒸留して除去した後、その残留物をクロロベンゼンで再結晶して化合物5.4g(収率:48%)を得た。
【0161】
(計算値:739.90/測定値:MS[M+1]739
合成した材料のガラス転移温度と熱分解温度はDSCとTGAで測定した。
【0162】
(有機光電素子の製造)
〔実施例6〕
陽極としてはITOを1000Åの厚さに使用し、陰極としてはアルミニウム(Al)を1000Åの厚さに使用した。
【0163】
具体的に、有機光電素子の製造方法を説明すると、陽極は15Ω/cmの面抵抗値を有するITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさで切断してアセトンとイソプロピルアルコールと純水の中で各5分間超音波洗浄した後、30分間UVオゾン洗浄して使用した。
【0164】
前記ガラス基板上部に正孔注入層(HIL)としてN1,N1’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(N1−(ナフタレン−2−イル)−N4,N4−ジフェニルベンゼン−1,4−ジアミン)65nmを蒸着し、次に正孔輸送層(HTL)としてN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40nmを蒸着した。
【0165】
発光層としてN,N,N’,N’−テトラキス(3,4−ジメチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン5%および9−3−(ナフタレン−1−イル)フェニル)−10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン95%を25nmの厚さに蒸着した。
【0166】
次に、電子輸送層(ETL)として前記実施例1で製造された化合物30nmを蒸着した。
【0167】
前記電子輸送層(ETL)上部に電子注入層(EIL)としてLiqを0.5nmの厚さに真空蒸着し、Alを100nmの厚さに真空蒸着してLiq/Al電極を形成した。
【0168】
〔実施例7〕
電子輸送層(ETL)として、実施例1で製造された化合物の代わりに、実施例2で製造された化合物を使用したことを除いては前記実施例6と同様な方法で有機光電素子を製作した。
【0169】
〔実施例8〕
電子輸送層(ETL)として、実施例1で製造された化合物の代わりに、実施例4で製造された化合物を使用したことを除いては前記実施例6と同様な方法で有機光電素子を製作した。
【0170】
〔比較例1〕
電子輸送層(ETL)として、実施例1で製造された化合物の代わりに、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq)35nmを使用したことを除いては前記実施例6と同様な方法で有機光電素子を製作した。
【0171】
(有機光電素子の性能測定)
〔実験例〕
<測定方法>
このように製造されたそれぞれの有機光電素子(前記実施例6〜8および比較例1)に対して電圧による電流密度変化、輝度変化および発光効率を測定した。具体的な測定方法は次のとおりである。
【0172】
1)電圧変化による電流密度の変化測定
製造された有機光電素子に対し、電圧を上昇させながら電流−電圧計(Keithley 2400)を利用して単位素子に流れる電流値を測定し、測定された電流値を面積で分けて結果を得た。その結果は図6に示した。
【0173】
2)電圧変化による輝度の変化測定
製造された有機光電素子に対し、電圧を上昇させながら輝度計(Minolta Cs−1000A)を利用してその時の輝度を測定して結果を得た。その結果は図7に示した。
【0174】
3)発光効率および電力効率測定
前記1)と2)で測定された輝度と電流密度および電圧を利用して発光効率および電力効率を計算した。その結果は図8、図9および表12に示した。
【0175】
4)寿命測定
前記実施例6および比較例1で製造された有機光電素子に対して、基準輝度を1000cd/mとして時間による輝度減少を通じた寿命を比較した。その結果は図10に示した。
【0176】
<測定結果>
図6から分かるように、本発明の一実施形態である実施例6〜7において比較例1に比べて同一の電圧で電流密度が顕著に優れていた。電流密度の差は高い電圧であるほど大きく現れた。
【0177】
また、図7から分かるように、本発明の一実施形態である実施例6〜7において比較例1に比べて同一の電圧で発光輝度が顕著に優れていた。発光輝度の差も高い電圧であるほど大きく現れた。
【0178】
図8、図9および下記表12から分かるように、本発明の一実施形態である実施例6〜7において比較例1に比べて発光効率および電力効率が顕著に優れていた。
【0179】
【表12】

【0180】
図10から分かるように、素子の寿命測定実験結果は本発明の一実施形態である実施例6において比較例1に比べて約20倍以上優れていた。
【0181】
つまり、本発明による材料を含む有機光電素子は、低い駆動電圧および高い発光効率を示し、これによって素子寿命も増加することが、基礎的な素子作動実験を通じて確認された。
【0182】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、当業者によって特許請求の範囲の精神および技術的範囲に含まれる多様な変形および等価の形態で製造され得る。したがって、上記の実施例は例示的なものであり、本発明をいかようにも限定するものではないことを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0183】
100…有機光電素子
110…陰極
120…陽極
105…有機薄膜層
130…発光層
140…正孔輸送層(HTL)
150…電子輸送層(ETL)
160…電子注入層(EIL)
170…正孔注入層(HIL)
230…発光層+電子輸送層(ETL)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される有機光電素子用化合物:
【化1】

前記化学式1において、
Ar1は、置換または非置換のC2〜C30ヘテロアリール基であり、
Ar2〜Ar5は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のC6〜C30アリール基であり、
L1およびL2は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のC6〜C30アリーレン基であり、
X1〜X3は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、X1〜X3のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、
Y1〜Y3は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、Y1〜Y3のうちの少なくとも一つはヘテロ原子である。
【請求項2】
前記Ar1は、置換または非置換のイミダゾリレン基、置換または非置換のチアゾリレン基、置換または非置換のオキサゾリレン基、置換または非置換のオキサジアゾリレン基、置換または非置換のトリアゾリレン基、置換または非置換のピリミジニレン基、置換または非置換のピリジニレン基、置換または非置換のピラダジニレン基、置換または非置換のキノリニレン基、置換または非置換のイソキノリニレン基、置換または非置換のアクリジニレン基、置換または非置換のイミダゾピリジニレン基および置換または非置換のイミダゾピリミジニレン基からなる群より選択される、請求項1に記載の有機光電素子用化合物。
【請求項3】
前記Ar1は、下記化学式2〜7からなる群より選択される置換基である、請求項1に記載の有機光電素子用化合物:
【化2】

【化3】

【化4】

前記化学式2〜7において、
A1〜A6は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、A1〜A6のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、
B1〜B5は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、B1〜B5のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、
C1〜C4は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、C1〜C4のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、
D1〜D4は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、D1〜D4のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、
E1およびE2は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、ヘテロ原子またはC−Hであり、E1およびE2のうちの少なくとも一つはヘテロ原子であり、
R1〜R7は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1〜C10のアルキル基、置換または非置換のC5〜C30アリール基および置換または非置換のC2〜C30ヘテロアリール基からなる群より選択される。
【請求項4】
前記Ar2〜Ar5は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のナフチル基、置換または非置換のアントラセニル基、置換または非置換のフェナントレニル基、置換または非置換のピレニル基、置換または非置換のペリレニル基、置換または非置換のクリセニル基からなる群より選択される、請求項1に記載の有機光電素子用化合物。
【請求項5】
前記L1およびL2は、互いに同一または異なるものであって、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のナフチレン基、置換または非置換のアントラセニレン基、置換または非置換のフェナントレニレン基、置換または非置換のピレニレン基、置換または非置換のペリレニレン基、置換または非置換のクリセニレン基からなる群より選択される、請求項1に記載の有機光電素子用化合物。
【請求項6】
陽極、陰極および前記陽極と陰極との間に配置される少なくとも一層以上の有機薄膜層を含む有機光電素子において、
前記有機薄膜層のうちの少なくとも一層は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機光電素子用化合物を含む、有機光電素子。
【請求項7】
前記有機薄膜層は、発光層、正孔輸送層(HTL)、正孔注入層(HIL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、正孔阻止層およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項6に記載の有機光電素子。
【請求項8】
前記有機光電素子用化合物は、電子輸送層(ETL)または電子注入層(EIL)内に含まれる、請求項6に記載の有機光電素子。
【請求項9】
前記有機光電素子用化合物は、発光層内に含まれる、請求項6に記載の有機光電素子。
【請求項10】
前記有機光電素子用化合物は、発光層内で燐光または蛍光ホスト材料として使用される、請求項6に記載の有機光電素子。
【請求項11】
前記有機光電素子用化合物は、発光層内で蛍光青色ドーパント材料として使用される、請求項6に記載の有機光電素子。
【請求項12】
前記有機光電素子は、有機発光素子、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機感光体ドラムおよび有機メモリ素子からなる群より選択される、請求項6に記載の有機光電素子。
【請求項13】
請求項6に記載の有機光電素子を含む、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−516405(P2013−516405A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546983(P2012−546983)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007763
【国際公開番号】WO2011/081290
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】