説明

有機化合物

本発明は、式Iの3−イソプロピル−1−メチルシクロペンチル誘導体およびそれらの香料アプリケーションにおける使用に関する。R、RおよびRは特許請求の範囲において定義したとおりである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−イソプロピル−1−メチルシクロペンチル誘導体であって花の香調、果物の香調および木の香調を有するもの、ならびにそれらの香料としての使用に関する。本発明はさらにそれらの製造方法およびそれらを含む香料組成物に関する。
【0002】
香料産業においては、新たな化合物として香調を向上せしめるかまたは新たな香調を与えるものに対する要求が常に存在する。
ある3−イソプロピル−1−メチルシクロペンチル誘導体が、精力的に探索されてきた花の香調、果物の香調および木の香調を有し、さらにそれらはすぐに用い得る、安価で、天然において入手し得る出発物質から、比較的単純かつ簡単に調製できることが今見出された。
【0003】
すなわち、本発明は一側面において式Iの化合物の香料としての使用に関する。
【化1】

式中、
は水素であるか、または
およびRは独立してC2−8アルキル、C2−8アルケニル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキルであって少なくとも1つのC1−3アルキルによって置換されたもの、アリール、またはアリール基であって少なくとも1つのC1−3アルキル基によって置換されたものであり;
はヒドロキシ、C1−8アルコキシ、C3−8シクロアルコキシ、C2−5アルコキシメチルオキシ、アリールオキシ、またはアリールオキシであり、式中、芳香環はC1−3アルキルによって置換され;または
およびRはこれらの基が結合している炭素原子と一緒にカルボニル基を形成する。
【0004】
とくに好ましい式Iの化合物は、(1R, cis)-1-エトキシメトキシメチル-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンタン、1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オン、1-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オン、1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペンタン-1-オン、1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オール、1-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オール、1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペンタン-1-オール、2-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-2-オール、2-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-2-オール、2-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ブタン-2-オール、2-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ブタン-2-オール、 2-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペント-3-エン-2-オール、3-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペンタン-3-オール、および1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ブタン-1-オールである。
【0005】
式Iの化合物は、少なくとも2つのキラル中心を含み得て、そのため立体異性体の混合物として存在してもよく、または異性体として純粋な形態に分離してもよい。立体異性体を分離することはこれらの化合物の製造および精製の煩雑さにつながるため、好ましいのは前記化合物を立体異性体の混合物として用いることであるが、これは単に経済上の理由によるものである。しかし、個々の立体異性体を調製することを望む場合には、本技術分野において公知の方法、他と合えばHPLCおよびGCまたは立体選択的合成によってかかる目的を達成し得る。
【0006】
当業者にとって、光学異性体は同様な物性を有するが、例えば生理学的特性や官能特性においては異なる場合があることは既に知られている。
したがって、さらなる側面において、本発明は式Iの化合物の使用として、式Ia(すなわち(1R, cis)-)または式Ib(すなわち(1S, cis)-)のいずれかの光学異性体について濃縮されたものの使用に関する。
【化2】

式中、R1、R2およびR3は上記の意味と同一の意味を有する。
【0007】
式Iaのある化合物群は、対応する光学異性体より臭い閾値(odour threshold)が平均して2倍低いことが見出された。したがって、(1R, cis)光学異性体について濃縮された式Iの化合物群は好ましい。
「濃縮された」の語は、本明細書においては、化合物として光学純度が、選択された光学異性体について1:1より大きいことを意味する。化合物群として好ましいのは、約1:3以上、例えば1:4の純度を有するものである。とくに好ましい化合物群は光学純度が1:9以上、5:95または1:99のものである。
【0008】
前記化合物群のうち文献に記載されたものもあるが、他のものは未記載であり、新規である。したがって、本発明は他の本発明の側面において式Iの化合物を与える。
【化3】

式中、
は水素であるか、または
およびRは独立してC2−8アルキル、C2−8アルケニル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキルであって少なくとも1つのC1−3アルキルによって置換されたもの、アリール、またはアリール基であって少なくとも1つのC1−3アルキル基によって置換されたものであり;
はヒドロキシ、C1−8アルコキシ、C3−8シクロアルコキシ、C2−5アルコキシメチルオキシ、アリールオキシ、またはアリールオキシであり、式中、芳香環はC1−3アルキルによって置換され;または
およびRはこれらの基が結合している炭素原子と一緒にカルボニル基を形成する。
ただし、RおよびRはこれらの基が結合している炭素原子と一緒にカルボニル基を形成しているとき、Rは水素ではなくフェニルでもない。
【0009】
本発明の化合物は、単独で用いてもよいし基材と組み合わせて用いてもよい。本明細書において、「基材」には、公知のあらゆる香気分子として、広範な範囲に及ぶ天然物および合成分子として現在用い得るものが包含される。基材は、精油類、アルコール類、アルデヒド類およびケトン類、エーテル類およびアセタール類、エステル類およびラクトン類、大員環ならびにヘテロ環であり、および/または混和剤として、1種または2種以上の成分または賦形剤として香料組成物とともに通常用いられるもの、例えばキャリア物質、ならびに本技術分野において普通に用いられる他の補助物質との混和剤である。
【0010】
下記リストは公知の香気分子を含み、それらは本発明の化合物とともに用い得る。
−エーテル油類およびエーテル抽出物類。例えば無水ツリーモス、バジルオイル、カストレウム、コスツスルートオイル(costus root oil)、マートルオイル、無水オークモス、ゲラニウムオイル、無水ジャスミン、ペチューリオイル、ローズオイル、サンダルウッドオイル、ワームウッドオイル、ラベンダーオイルまたはイラン・イランオイル;
−アルコール類。例えばシトロネロールオイル、Ebano(商品名)、オイゲノール、ファルネソール、ゲラニオール、Super Muguet(商品名)、リナルール、フェニルエチルアルコール、Sandalore(商品名)、テルピネオールまたはTimberol(商品名);
【0011】
−アルデヒド類およびケトン類。例えばα−アミルシンナムアルデヒド、Georgywood(商品名)、ヒドロキシシトロネラール、Iso E Super(登録商標)、Isoraldeine(登録商標)、Hedione(登録商標)、マルトール、メチルセドリールケトン、メチルイオノンまたはバニリン;
− エーテル類またはアセタール類。例えばAmbrox(商品名)、ゲラニールメチルエーテル、ロースオキシドまたはSpirambrene(商品名)。
−エステル類およびラクトン類。例えば酢酸ベンジル、酢酸セドリール、γ−デカラクトン、Helvetolide(登録商標)、γ−ウンデカラクトンまたは酢酸ベティベニル;
−大員環類。例えばアンブレトリド、エチレンブラシラートまたはExaltolide(登録商標)。
−ヘテロ環類。例えばイソブチルキノリン。
【0012】
本発明の化合物は、広範な香料アプリケーションにおいて用いることができる。例えば、ファイン香料および官能性香料として、香水、家庭用品類、洗濯用品類、ボディケア製品類および化粧品類において用いることができる。本化合物は、広い範囲の種々の量で用いることができ、個々のアプリケーションおよび他の香気成分の性状および質に対応する。割合は、典型的には前記アプリケーションの0.001〜20重量パーセントである。ある一態様において、本発明の化合物は繊維柔軟剤において0.001〜0.05重量パーセントで用い得る。他の一態様においては、本発明の化合物はファイン香料において0.1〜20重量パーセントで、より好ましくは0.1〜5重量パーセントで用い得る。しかしながら、これらの値は例として示されたにすぎないものである。なぜなら、経験を積んだ香料技術者であれば、効果の達成または新規な調和(accord)をより低いかまたはより高い濃度でもなし得るからである。
【0013】
本発明の化合物を香料アプリケーションにおいて用いるには、単に前記香料組成物を香料アプリケーションと直接混合するか、または前段階において、捕捉材に捕捉せしめてもよい。捕捉材の例としては、ポリマー、カプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、リポソーム、膜形成物、カーボンまたはゼオライトのような吸収剤、環状オリゴサッカリドならびにそれらの混合物である。本発明の化合物は、基材に化学的に結合せしめ、その後アプリケーションに混合せしめてもよいところ、かかる基材は外部からの刺激として光、酵素等のようなものに反応して香料分子を放出することに適合したものである。
【0014】
したがって、本発明によって、香料アプリケーションの製造方法がさらに提供される。該製造方法に含まれるのは、式Iの化合物または一方の光学異性体を濃縮した式Iの化合物を香料成分として導入することであって、かかる導入は、単に前記化合物を香料アプリケーションと直接混和することまたは式Iの化合物または一方の光学異性体を濃縮した式Iの化合物を香料組成物を混和することによってなされ、該香料組成物は、その後香料アプリケーションに、通常の技法および方法によって混合される。
本明細書において、「香料アプリケーション」(fragrance application)とは、あらゆる製品を意味し、以下のようなものである。ファイン香料、例えば香水およびオードトアレ;家庭用品類、例えば食器洗浄剤、表面洗浄剤;洗濯用品類、例えば柔軟剤、漂白剤、洗剤;ボディケア製品類、例えばシャンプー、シャワーゲル;および化粧品類、例えば消臭剤、バニシングクリーム。これらは着臭剤を含む。製品の前記リストは例示を目的とするものであり、如何なる意味においても限定するものとはみなされない。
【0015】
式Iの化合物の製造は、例えばフェンチョン(1,3,3-トリメチル-2-ノルボルネン)のHaller-Bauer転位の後、3-イソプロピル-1-メチルシクロペンタンカルボン酸への加水分解をアルカリ条件下、例えばNaOHまたはKOHのような塩基の存在下、において行うことによって行うことができる。生成する酸を、次に、対応するアルキルリチウム産物と反応せしめ、式IにおいてR2およびR3がこれらの基が結合している炭素原子と一緒にカルボニル基を形成したものを生成せしめる。本発明の他の化合物を得るには、生成したケトンの二級アルコールまたは三級アルコールへの変換を、例えばNaBH4による還元やグリニヤール試薬の添加によって行ってよい。本発明のさらに別の化合物を得るには、生成したアルコールのさらに対応するエーテルへの変換を、Williamson反応によって当技術分野において公知の条件下において行ってよい。
【0016】
光学的に純粋な式Iの化合物および式Iの化合物の一方、すなわち式Iaの化合物またはIbの化合物、を濃縮した光学異性体の混合物の合成は、光学的に純粋なフェンチョンまたは(1R)-(-)-フェンチョンもしくは(1S)-(+)-フェンチョンのいずれかを濃縮した光学異性体の混合物から行ってよい。
【0017】
ここで、本発明のさらなる説明を下記の非限定的な例を参照しながら行う。
下記例1〜8における全ての最終物は、無色のオイルである。これらの生成は、(1R)-(-)-および(1S)-(+)-フェンチョンとして、それぞれ他方の光学異性体を8%および2%含むものから行った。記載したNMRデータの測定は、以下の一般的な条件によって行った:1Hは400 MHzおよび13Cは100 MHz;CDCl3で;化学シフト(d)はppmとしてTMSからのダウンフィールド;カップリング定数JはHz。
例1:(1R, cis)-1-エトキシメトキシメチル-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンタン
a)[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]メタノール
(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンタンカルボン酸(70.0g、0.41 mol)の溶液として(1R)-(-)-フェンチョン(V. Braun、J.; Jacob、A. Chem. Ber. 1933、66、1461)からジエチルエーテル(100 ml)中に得たものを、窒素下においてゆっくりと同じ溶媒(500 ml)中の水素化リチウムアルミニウム(13.3g、0.35 mol)に添加した。環流下にて3時間加熱した後、反応生成物を10℃に冷まし、2N NaOH溶液(70 ml)の注意深い添加を攪拌しながら5時間続けた。白色の固体を濾別し、濾液の洗浄をブライン(2 x 500 ml)にて行い、乾燥せしめ(MgSO4)および真空中にて濃縮した。粗生成物(79.0g)の精製を蒸留にて10 cmのVigreux column(0.9-1.1 mbar、96-98°C)を用いて行い、[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]メタノールを得た(57.0g、90%の収率)。
【0018】
b)(1R, cis)-1-Ethoxyメトキシメチル-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンタン
例1からの[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]メタノールの溶液(3.9g、19 mmol)としてTHF(20 ml)中のものを同じ溶媒(120 ml)の水素化ナトリウムの懸濁液(0.77g、32 mmol)に添加した。環流下にて一晩攪拌した後、クロロメチルエチルエーテル(3.8 ml、38.5 mmol)を添加し、環流下にて攪拌を2時間続けた。反応混合物を冷まし、2N HCl(100 ml)にて処理を行い、MTBE(2 x 100 ml)を用いて抽出を行った。有機濾物の洗浄をブライン(2 x 50 ml)を用いて行い、乾燥せしめ(MgSO4)、真空中にて濃縮した。未精製の[(1R, cis)-1-エトキシメトキシメチル-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンタン(4.0g)の精製をバルブ−トゥ−バルブ蒸留(bulb-to-bulb distillation)にて行った(3.25g、79%の収率)。
【0019】
【表1】

香気の描写:フルーティ、グリーン、フローラル、ヘスペリジン様。
【0020】
例2: 1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オン
0.5Mのエチリチウム溶液としてジエチルエーテル(150 ml、75 mmol)中のものを、6時間にわたり同じ溶媒(40 ml)中の(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンタンカルボン酸(4.0g、24 mmol)に10℃にて滴下添加した。反応混合物を氷冷水性NH4Cl溶液(200 ml)に注ぎ、MTBE(2 x 150 ml)を用いて抽出を行った。有機相を合わせて洗浄を2N NaOH溶液(100 ml)およびブライン(2 x 100 ml)を用いて行い、乾燥せしめ(MgSO4)、真空中にて濃縮した。粗生成物(3.1g)をフラッシュクロマトグラフィによって精製し(シリカゲル、n-ヘキサン/MTBE 16:1)1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オンを得た(1.15g、27%の収率)。
【0021】
【表2】

香気の描写:グリーン、土様/モッシー、フルーティ、フローラル。
【0022】
例3:
以下の化合物を、例2に記載の一般的な手法に従って調製した。
【0023】
A)1-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オン
【表3】

香気の描写:土様/モッシー、フルーティ、グリーン。
【0024】
B)1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペンタン-1-オン
【0025】
【表4】

香気の描写: グリーン、フローラル.
【0026】
例4:1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オール
1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オンの溶液(0.8g、4.4 mmol)としてエタノール(5 ml)中のものを水素化ナトリウムの冷却した(アイスバス)溶液(0.4g、10 mmol)として同じ溶媒中(17 ml)のものに添加した。室温下にて4.5時間攪拌した後、反応生成物を氷冷2M HCl(50 ml)に注ぎ、MTBE(2 x 100 ml)用いて抽出を行った。有機相を合わせ、ブライン(2 x 100 ml)を用いて洗浄し、乾燥せしめ(MgSO4)、真空中にて濃縮した。未精製物(1.1g)をフラッシュクロマトグラフィによって精製し(シリカゲル、n-ヘキサン/MTBE 10:1)1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オールを得た(0.53g、66%の収率、ジアステレオマー比〜1:1)。
【0027】
【表5】

香気の描写:アニス様、フローラル、グリーン、マリン。
【0028】
例5:
以下の化合物を、例4に記載の一般的な手法に従って調製した。
A)1-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オール
【表6】

香気の描写:フルーティ、グリーン、皮様、フローラル.
B)1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ブタン-1-オール
ジアステレオマー比〜1:1。
【0029】
【表7】

香気の描写:グリーン、スパイシー、フルーティ.
C)1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペンタン-1-オール
ジアステレオマー比〜1:1。
【0030】
【表8】

香気の描写: グリーン、フルーティ.
【0031】
例6:2-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-2-オール
a)1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]エタノン
1.6Mのメチルリチウム溶液としてジエチルエーテル(200 ml、0.32 mol)中のものの25分間にわたる滴下添加を、(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンタンカルボン酸(25.5g、0.15mol)としてTHF中のものに、0°Cにおいて行った。0°Cにおいて3時間攪拌した後、クロロトリメチルシラン(151 ml、1.2 mol)を冷ましながら添加し、反応生成物を室温まで昇温せしめ氷冷水(200 ml)に注ぎ、0.5時間攪拌しMTBE(2 x 250 ml)を用いて抽出を行った。有機相を合わせ、洗浄を水(200 ml)、2M NaOH(150 ml)およびブライン(3 x 200 ml)を用いて行い、乾燥せしめ(MgSO4)、真空中にて濃縮し、未精製の1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]エタノン(27.6g)を得た。そのサンプル(1.5g)の精製をバルブ−トゥ−バルブ蒸留にて行った(0.93g、68%の収率)。
【0032】
b)2-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-2-オール
1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]エタノン(3.0g、18 mmol)としてジエチルエーテル(10 ml)中のものを、臭化メチルマグネシウムの3Mジエチルエーテル溶液(7.5 ml、22.5 mmol)を同じ溶媒(20 ml)で希釈したものに0℃の窒素下において添加した。反応混合物を室温にて1.5時間攪拌し、氷冷水性NH4Cl溶液(100 ml)に注ぎ、MTBE(2 x 100 ml)を用いて抽出を行った。有機相を合わせて洗浄を2N NaOH溶液(100 ml)およびブライン(2 x 100 ml)を用いて行い、乾燥せしめ(MgSO4)、真空中にて濃縮した。未精製物(2.92g)の精製をバルブ−トゥ−バルブ蒸留にて行った(2.88g、88%の収率)。
【0033】
【表9】

香気の描写:土様/モッシー、ウッディ、樟脳様、琥珀様、スウィート。
【0034】
例7:
以下の化合物を、例6に記載の一般的な手法に従って調製した。
A)2-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-2-オール
【表10】

香気の描写:ヘスペリジン様/柑橘、フルーティ、フレッシュ(グレープフルーツ)。
B)2-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ブタン-2-オール
ジアステレオマー比〜1:1.
【0035】
【表11】

香気の描写:樟脳様、土様/モッシー、ウッディ、僅かにパチョリ。
【0036】
C)2-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ブタン-2-オール
【表12】

香気: フルーティ、フローラル、グリーン(パイナップル)。
D)2-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペント-3-エン-2-オール
ジアステレオマー比〜1:1.
【0037】
【表13】

香気の描写:土様/モッシー、ウッディ、ムッシュルーム。
【0038】
例8:3-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペンタン-3-オール
調製を例6に記載の一般的な方法に従い、4.3 mol等量のエチルリチウムを用いて行った。精製はフラッシュクロマトグラフィによって(n-ヘキサン/MTBE 15:4)行った。収率26%。
【0039】
【表14】

香気の描写:グリーン、ファッティ(fatty)、フローラル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物の香料としての使用:
【化1】

式中、
は水素であるか、または
およびRは独立してC2−8アルキル、C2−8アルケニル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキルであって少なくとも1つのC1−3アルキルによって置換されたもの、アリール、またはアリール基であって少なくとも1つのC1−3アルキル基によって置換されたものであり;
はヒドロキシ、C1−8アルコキシ、C3−8シクロアルコキシ、C2−5アルコキシメチルオキシ、アリールオキシ、またはアリールオキシであり、式中、芳香環はC1−3アルキルによって置換され;または
およびRはこれらの基が結合している炭素原子と一緒にカルボニル基を形成する。
【請求項2】
式Iの化合物が、式Iaまたは式Ibの光学異性体のいずれかについて濃縮された、請求項1に記載の化合物の使用:
【化2】

式中、R、RおよびRは請求項1において与えられた意味と同一の意味を有する。
【請求項3】
化合物が下記の化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物の使用:
(1R, cis)-1-エトキシメトキシメチル-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンタン、1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オン、1-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オン、1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペンタン-1-オン、1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オール、1-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-1-オール、1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペンタン-1-オール、2-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-2-オール、2-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]プロパン-2-オール、2-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ブタン-2-オール、2-[(1S, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ブタン-2-オール、 2-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペント-3-エン-2-オール、3-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ペンタン-3-オール、および1-[(1R, cis)-3-イソプロピル-1-メチルシクロペンチル]ブタン-1-オール。
【請求項4】
香料アプリケーションにおける、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物またはそれらの混合物を含む、香料アプリケーション。
【請求項6】
香水、家庭用品、洗濯用品、ボディケア製品または化粧品である、請求項5に記載の香料アプリケーション。
【請求項7】
香料アプリケーションの製造方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物を導入する工程を含む、製造方法。
【請求項8】
式Iの化合物
【化3】

式中、
は水素であるか、または
およびRは独立してC2−8アルキル、C2−8アルケニル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキルであって少なくとも1つのC1−3アルキルによって置換されたもの、アリール、またはアリール基であって少なくとも1つのC1−3アルキル基によって置換されたものであり;
はヒドロキシ、C1−8アルコキシ、C3−8シクロアルコキシ、C2−5アルコキシメチルオキシ、アリールオキシ、またはアリールオキシであり、式中、芳香環はC1−3アルキルによって置換され;または
およびRはこれらの基が結合している炭素原子と一緒にカルボニル基を形成する。
ただし、RおよびRはこれらの基が結合している炭素原子と一緒にカルボニル基を形成しているとき、Rは水素ではなくフェニルでもない。

【公表番号】特表2007−507563(P2007−507563A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529546(P2006−529546)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000605
【国際公開番号】WO2005/030915
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】