説明

有機太陽電池、有機太陽電池モジュール、及びその製造方法

【課題】有機半導体層による光吸収効率を大幅に向上させて高い発電効率を実現する有機太陽電池及び有機太陽電池モジュールを提供するとともに、連続製造プロセスによる生産性の高い製造方法を提供する。
【解決手段】有機太陽電池10は、開口長さに対して軸方向が十分長い線条体の構造としている。導光部11は、その上端から光を入射させ、その内部に入射された光をP型有機半導体13とN型有機半導体14とからなる太陽電池層に入射させて吸収させるようにしている。また、太陽電池層の外周には、反射膜15が形成されていることから、太陽電池層で吸収されずに通過した光は、反射膜15で反射されて再び太陽電池層に入射して吸収されるか、あるいは吸収されずに導光部11に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体を用いた有機太陽電池及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換によって発電を行う太陽電池としては、シリコン系の太陽電池と有機系の太陽電池が知られている。有機太陽電池はシリコン系太陽電池に比べ吸光係数が大きく、吸収波長の制御の容易さから注目を集めてきた。しかし、有機太陽電池に用いられる有機半導体の特性からこれを薄くする必要があり、単位面積あたりで吸収できる光量が大きく出来ないという課題がある。
【0003】
上記の課題を改善する技術として、例えば特許文献1〜3に記載の技術が公知となっている。これらは、いずれも有機太陽電池層の構成を工夫することによって、単位面積あたりで吸収する光量を増大させることを目的としたものである。
【0004】
特許文献1に記載の有機太陽電池の概略構成を図10に示す。同図に示す通り、有機太陽電池111は、その表面が入射光線112に対して傾斜するように設置されている。入射光線112を太陽電池111の表面に対し傾斜して照射することにより、発電に関与するP層113とN層114の界面付近を通過する光の通過距離を長くすることができる。その結果、入射光線の吸収効率が増加して発電効率が向上する。
【0005】
また、図11に示す特許文献2に記載の有機太陽電池121は、光起電力層としてP型有機半導体層122とN型有機半導体層123とからなるPN接合124を備え、かつそのPN接合124が光照射面に端辺を有し光照射面に対し垂直方向に形成されている。PN接合124が光照射面に対して垂直に形成されていることから、PN接合124の近傍では、有機半導体層中に侵入していった光全てが不活性層による吸収、すなわちマスキング効果による損失なしに光電流発生に寄与することができる。
【0006】
さらに、図12に示す特許文献3に記載の有機太陽電池131は、一平面内に複数の直線状の有機半導体層132を互いに平行にかつ所定の間隔で並列配置し、有機半導体層132の上下に共通電極層133および透明共通電極層134を全面電極として設けている。さらに、各有機半導体層132の両側面にそれぞれ電極135および電極136を設けることで、有機半導体層132内のPN接合から電極までの距離を短く保つことができ、有機半導体層132における光吸収領域を増大させることができる。
【特許文献1】特開平7−66439号
【特許文献2】特開2005−11841号
【特許文献3】特開2005−175131号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の有機太陽電池では発電効率が十分でなく、有機太陽電池を今後実用化するには、さらなる発電効率の改善が必要となっている。
特許文献1〜3のいずれの有機太陽電池においても、有機半導体層における光吸収領域が従来よりも改善されているものの十分ではなく、有機半導体層の一部でのみ発電が行われているに過ぎない。また、各有機太陽電池の製造には、複雑な工程が必要となっている。
【0008】
また、上記3つの発明は、高価な有機太陽電池材を大量に使う必要があり、ランニングコストがかかる問題がある。更に有機半導体の形成は、現在比較的長寿命の低分子材料が用いられているが、バッチ処理のために生産性が低く、生産性を上げるために高価な真空装置の大型化が必要となり大幅な設備投資が掛かる問題がある。更に使用するナノ構造の有機太陽電池を必要な面積分だけ積層しなければならず、製造コスト、製造時間が大幅に掛かるため、大面積用途には不向きである。
【0009】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、有機半導体層による光吸収効率を大幅に向上させて高い発電効率を実現でき、比較的安価な有機太陽電池及び有機太陽電池モジュールを提供するとともに、連続製造プロセスによる生産性の高い製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有機太陽電池の第1の態様は、導光部と、導光部表面の少なくとも一部に接する陰極・陽極・有機半導体層よりなる有機太陽電池層と、前記導光部の少なくとも前記有機太陽電池層と対向する位置に設けられた反射手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2の態様は、前記有機太陽電池層の前記導光部と接する面とは反対の面に反射手段を備えることを特徴とする有機太陽電池である。
【0012】
第3の態様は、前記反射手段と前記導光部との間に前記有機太陽電池層を備えることを特徴とする有機太陽電池である。
【0013】
第4の態様は、前記太陽電池層が、導光部表面に透明電極、太陽電池の半導体層、電極の順に形成してある事を特徴とする有機太陽電池である。
【0014】
第5の態様は、電極が半導体層を覆うように形成され、反射手段を兼ねる事を特徴とする有機太陽電池である。
【0015】
第6の態様は、前記導光部がガラス又は透明樹脂で形成されていることを特徴とする有機太陽電池である。
【0016】
第7の態様は、前記導光部材の導光部の断面形状が円形、楕円、矩形、矩形に近い形状を有していることを特徴とする有機太陽電池である。
【0017】
第8の態様は、前記導光部が線状体であることを特徴とする有機太陽電池である。
【0018】
第9の態様は、前記導光部の開口部を規定する短軸と長軸方向の長さとの比が1:5以上であることを特徴とする有機太陽電池である。
【0019】
第10の態様は、前記導光部の開口端に、前記導光部とは屈折率の異なる手段を付設していることを特徴とする有機太陽電池である。
【0020】
第11の態様は、前記導光部の終端に、反射角度を調整する手段を付設していることを特徴とする有機太陽電池である。
【0021】
本発明の有機太陽電池モジュールの第1の態様は、線状体の導光部材を用い、前記導光部材に太陽電池を形成した導光型太陽電池を用い、入射光を取り入れる開口部を有し、複数の前記導光型太陽電池を導光部材の長軸方向と開口部の位置をそろえて複数配列し、各導光型太陽電池が配線されていることを特徴とする太陽電池モジュールである。
【0022】
本発明の有機太陽電池の製造方法の第1の態様は、線・条の導光部の外周に少なくとも透明電極・有機太陽電池層・電極の順位に形成し、さらにその外周に反射膜または封膜、あるいは両方の膜を形成することを特徴とする有機太陽電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、導光部と反射部との間に光を閉じ込めるように構成することにより、有機太陽電池層に光を効率よく吸収させることが可能となり、変換効率の高い有機太陽電池及び有機太陽電池モジュールを提供することができる。
【0024】
また、本発明の有機太陽電池の製造方法によれば、線条の導光部に有機太陽電池層を連続的に形成することが可能となることから、有機太陽電池の生産性を大幅に高めることができる。
【0025】
さらに、導光部を光の入射部に対して広く取れるので、高価な有機太陽電池層の数を従来の方式に比べて大幅に少なく出来るので製造コストも大幅に低減できる。また導光部により、モジュールに入射する光エネルギを有効に太陽電池部に伝送ロスが非常に少なく導波できるので利用効率も従来方式よりも向上できる。
【0026】
また導光部とし使用する石英や多成分ガラスや透明樹脂などの素材は通常紫外線を吸収するので、有害な紫外線を導波中に除去できる。さらに太陽電池の受光部の面積を導光体の幅や厚さ及び集光面形状を自由に設計することで、太陽電池部の入射光の平均エネルギ密度を調整できる。寿命に重きをおく場合は、幅や厚さを広くし、集光後の拡散を大きくする設計とする事で平均エネルギ密度を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図面を参照して本発明の好ましい実施の形態における有機太陽電池、有機太陽電池モジュール、及びその製造方法について詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0028】
本発明の有機太陽電池の第一実施形態を、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の有機太陽電池10の構造を示す断面図である。有機太陽電池10は、導光部11の外周に太陽電池層を形成した構造を有しており、導光部11の外周に順次、透明導電膜12、P型有機半導体13、N型有機半導体14を形成し、さらにその外周に反射膜15を形成している。P型とN型の有機半導体層は逆でも良い、またシリコン太陽電池や薄膜シリコン太陽電池などで用いられている構造としても良い。
【0029】
本実施形態の有機太陽電池10は、開口長さ(直径や厚み)に対して導光軸方向が十分長い線状体の構造としている。導光部11は、その上端(開口部)から光を入射させ、その内部に入射された光をP型有機半導体13とN型有機半導体14とからなる太陽電池層に入射させて吸収させるようにしている。また、太陽電池層の外周には、陰極を兼ねた反射膜15が形成されていることから、太陽電池層で吸収されずに通過した光は、反射膜15で反射されて再び太陽電池層に入射して吸収されるか、あるいは吸収されずに導光部11に戻る。
もちろん陰極と反射膜(アルミ等の反射率の高い金属が好ましい)を別々に設けても良い、この場合、陰極は出来るだけ薄い方が良く、太陽電池層より薄い方がよい。好ましくは20nm以下が良い。
【0030】
上記のように、本実施形態の有機太陽電池10は、導光部11に入射した光をP型有機半導体13とN型有機半導体14とからなる太陽電池層に吸収されるまで導光部11と反射膜15との間に閉じ込める構造を有している。有機太陽電池10を上記のような構造とすることにより、太陽電池層による光吸収量を増大させることが可能となっている。導光部11は、光を通過させるものであればよく、石英や多成分ガラス又は透明樹脂で形成することができる。あるいは、いずれの部材も用いない導光空間とすることも可能である。導光空間を用いる場合は、ゴミや雨水等の液体が入らないようにキャップをする事が好ましい。
【0031】
本実施形態の有機太陽電池10では、透明導電膜12と反射膜15で電極を構成している。透明導電膜12は、導光部11からの光が太陽電池層に到達できるよう、透明の電極部材を用いており、例えばITO(酸化インジウム錫)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化錫)などの透明電極とすることができる。また、反射膜15として、光の吸収が少なく反射の高いアルミ、金、銀金、チタンなどの金属電極を用いることができる。また、それらの金属同士の多層構造電極、あるいはそれらの金属と別の金属や上記透明電極材のような導電性酸化物や導電性の有機物との多層構造の電極を反射膜として用いても良い。
更に、反射膜の外層に有機太陽電池を水分や酸素から保護する封止膜を形成する事が好ましい。封止の方法は、従来の発明で用いられるものを適用すればよい。
【0032】
導光部材は、図1の紙面に垂直方向に長い条状の線状態としてもよい。この場合、開口部は線状体の一つの端面となる。端面の形状は光の取り込み易さや入射光の指向性、無指向性を考慮して、凹、凸、レンズ形状などの形状とする。
線状体の長さは、モジュールの長さとし端面の長さ即ち線状体の厚さは、開口部の幅となる。線状体の幅は導光部の長さとなる。電極は一方の端部陽極、もう一方の端部に陰極を取ることで、モジュール化する時の太陽電池間の配線を容易に接続する事が得きる。セル断面構造図を図7に示す。
【0033】
上記説明の構造を有する有機太陽電池10において、以下では光電変換の変換効率について説明する。有機太陽電池では、太陽電池を形成している有機層の厚さ(以下では有機層膜厚という)が、光電変換の変換効率に大きく影響することが知られている。一例として、図2に示す従来構造の有機太陽電池101について、その変換効率を説明する。図2に示す有機太陽電池101は、光の入射側から順に、透明導電膜102、P型有機半導体103、N型有機半導体104、導電膜105、及びガラス基板106からなる構造を有している。ガラス基板106は、幅1mm×厚さ0.1mm×長さ10mmの寸法のものを用いている。
【0034】
図2に示す従来構造の有機太陽電池101について、その変換効率と有機層膜厚との関係の1例を図3に示す。図3は、縦軸を変換効率とし、横軸を有機層膜厚としたときの有機太陽電池101の変換効率の有機層膜厚依存性を示すグラフである。同図に示す通り、従来構造の有機太陽電池101の変換効率は、有機層膜厚が大きくなるにつれて低下することがわかる。これは、有機層は電機抵抗が高いので有機層が厚くなると電気として取り出す効率が急激に悪化する事によるものと考えられる。
【0035】
また一方で、有機太陽電池101の有機層における透過率の有機層膜厚依存性の1例を、変換効率と比較して図4に示す。同図より、透過率も有機層膜厚が大きくなるにつれて低下しており、変換効率とは逆に吸収効率は向上する。
【0036】
図3、4の結果より、有機太陽電池101の変換効率は、有機層膜厚を薄くする程高くなることがわかる。一方、有機層膜厚を薄くする程透過率も高くなることから、有機層に吸収されずに透過してロスする割合も大きくなることがわかる。
【0037】
そこで本発明の有機太陽電池では、有機層を薄くする一方、有機層で吸収されずに透過した光を再び有機層に戻すために反射部材を備えるように構成している。図1に示す実施形態の有機太陽電池10においても、P型有機半導体13とN型有機半導体14からなる有機層の外周に、反射部材として電極を兼ねた反射膜15を設けている。
【0038】
有機太陽電池10の変換効率の1例を図5に示す。同図では、比較のために従来構造の有機太陽電池101の変換効率もあわせて表示している。同図より、本実施形態の有機太陽電池10の変換効率は、特に有機層膜厚が小さいときに従来構造の有機太陽電池101より大きく改善されていることがわかる。これは、本実施形態の有機太陽電池10では、導光部11と反射膜15との間に光が閉じ込められることにより、光が有機層に効率よく吸収されるようになる効果(以下では光閉込効果という)が得られるためである。
【0039】
光閉込効果を、例えば次式のように定義することができる。
【0040】
【数1】

ここで、nは従来構造の有機太陽電池101の変換効率を示し、nは本実施形態の有機太陽電池10の変換効率を示している。但し、nは導光部11と反射膜15との間に閉じ込められて有機層を3回通過するものまでを含めた変換効率を示している。
【0041】
図5では、右縦軸に上式の光閉込効果を示しており、有機層膜厚が10nmの時には式1に示す光閉込効果が72%になることを示している。すなわち、本実施形態の有機太陽電池10の変換効率は、従来構造の有機太陽電池101に比べて72%も改善されることがわかる。
光の閉じ込め効果は用いる有機半導体材料にもよるが、50nm以下の厚さより効果が現れる。好ましくは40nm以下の厚さとする事で10%程度以上の効果がえられる。
【0042】
本発明の有機太陽電池の別の実施形態を、図6を用いて説明する。図6(a)に示す実施形態の有機太陽電池30は、平板形状の導光部31の一方の面に、透明導電膜32とP型有機半導体33とN型有機半導体34と導電膜35からなる有機太陽電池層が形成されており、導光部31の有機太陽電池層と対向する他方の面に反射膜36が形成されている。
【0043】
本実施形態の有機太陽電池30では、導光部31に入射して有機太陽電池層に入射しない光は、反射膜36で反射されて有機太陽電池層に入射される。また、有機太陽電池層で吸収されずに再び導光部31に戻った光も、反射膜36で反射されて再び有機太陽電池層に入射される。これにより、変換効率の高い有機太陽電池を実現することが可能となる。
【0044】
図6(b)に示す実施形態の有機太陽電池40は、有機太陽電池層の背面にも反射膜41を形成するように構成されたものである。但し、電極として設けられていた導電膜35に代えて、反射膜41が電極を兼ねるようにしている。このように形成された有機太陽電池40では、有機太陽電池層で吸収されずに透過した光は、反射膜41で反射されて再び有機太陽電池層に戻される。すなわち、図1に示す第1の実施形態と同様に、反射膜36と反射膜41との間に光を閉じ込めるようにすることにより、変換効率をさらに高めることが可能となる。
【0045】
図6(c)に示す実施形態の有機太陽電池42は、図6(a)、(b)で反射膜36が形成されていた導光部31の他方の面にも、反射膜36の内面に有機太陽電池層を形成したものである。但し、反射膜36に代えて、電極を兼ねた反射膜41を用いるようにしている。このように構成された有機太陽電池42では、有機太陽電池層の範囲を拡大することで、変換効率をさらに高めることが可能となる。
【0046】
図6(a)〜(c)に示すいずれの実施形態においても、平板形状の導光部31には紫外線は吸収し可視光や近赤外や赤外線を透過する石英、多成分ガラス又は透明樹脂を用いることができる。赤外線を吸収する素材を用いても良い。
また、上記いずれの実施形態の有機太陽電池においても、導光部11又は31の長さを開口部長さの5倍以上、50倍以下とするのがよい。導光部11又は31の開口部長さに対し導光方向(軸方向)の長さを長くすることにより、開口部面積に比べて導光方向に大きな面積の有機太陽電池層を形成することができ、導光部11又は31に閉じ込められた光を有機太陽電池層に効率よく吸収させることができる。
【0047】
さらに、光が導光部11又は31を通過する間にこれに紫外線が吸収されることから、有機太陽電池層が紫外線を受けて劣化するのを防止することができるといった効果も得られる。さらに、有機太陽電池層の入射光の平均エンルギ密度を低減する事ができ太陽電池の寿命を向上できることが期待できる。
【0048】
50倍よりも大きくしても、吸収の効果はほとんど上がらない。また、部材費や原料費が高くなり、実質的な効果が得られない。さらに太陽電池モジュールが大きくなり、重さも重くなり輸送費や施工費が増え好ましくない。
【0049】
本発明の有機太陽電池のさらに別の実施形態を、図7を用いて説明する。図7(a)〜(d)に示す本実施形態の有機太陽電池51〜54は、いずれも図1に示す第1の実施形態の有機太陽電池10と同様に、線条体の導光部55の外周に透明導電膜56、P型有機半導体57、N型有機半導体58、及び反射膜59が順次形成された構造を有している。
【0050】
図7(a)に示す有機太陽電池51では、上記構造に加えて、導光部55の光が入射する開口部61とは反対側の終端部62に乱反射シール63が貼付されている。乱反射シール63を設けることにより、P型有機半導体57とN型有機半導体58からなる有機太陽電池層に吸収されずに終端部62に到達した光が、乱反射シール63で乱反射されて再び導光部55に戻り、有機太陽電池層に吸収されることになる。
また、図7(b)に示す有機太陽電池52では、開口部61に導光部55とは異なる屈折率を有する部材64が設けられている。部材64は、例えばレンズを形成する集光構造とするのが好ましく、これにより部材64に入射した光を、効率よく有機太陽電池層に吸収させることができる。
【0051】
図7(a)〜(c)に示す有機太陽電池51〜54のいずれにおいても、導光部55の内部に入射した光を適切に分散させることにより、有機太陽電池層に効率よく吸収させることができ、変換効率の高い有機太陽電池を提供することが可能となる。
また、開口部の形状を凸のレンズ形状とする事で、レンズの半径方向からの入射光に対して角度依存性を小さくでき、太陽のように移動する光源を対象とする場合に有効となる。(図7(C))
【0052】
上記で説明した本発明の有機太陽電池のいずれの実施形態を用いても、複数本の有機太陽電池を開口部が同じ方向となるように配列することにより、本発明の太陽電池モジュールを構成することができる。
【0053】
本発明の有機太陽電池の製造方法を、図面を用いて以下に説明する。本発明の有機太陽電池の製造方法では、線条の導光部の外周に有機太陽電池層を形成し、さらにその外周に反射層を形成する工程を有している。
【0054】
本発明の有機太陽電池の製造方法の一実施例を図8に示す。図8に示す製造方法では、ガラス又は透明樹脂で形成されたファイバの外周にITOが形成されたITO付ファイバ71を用いている。ITO付ファイバ71は、例えばファイバ製造時にITOの膜を形成させるようにして製造することができる。
【0055】
図8に示す実施例では、P型有機半導体噴出部72、N型有機半導体噴出部73、及び金属ナノ粒子ペースト噴出部74が、ITO付ファイバ71の周囲に左側から順に配置されている。本実施例の製造方法は、ITO付ファイバ71を右方向に一定速度で移動させながら、各噴出部72〜74からそれぞれP型有機半導体、N型有機半導体、及び金属ナノ粒子ペーストを噴出させてITO付ファイバ71に吹き付ける、インクジェット方式やスリット状のダイスより加圧圧送された液体原料を被覆するダイコート方式としている。これにより、ITO付ファイバ71の外周にP型有機半導体の膜が形成され、その上にN型有機半導体の膜が形成され、さらにその上に金属膜が形成される。
【0056】
現状最も広く使われている真空プロセスを用いて作製しても良い。P型有機半導体噴出部72、N型有機半導体噴出部73は真空蒸着、陰極材料は金属は電子ビーム蒸着や蒸着あるいはKセルなどの蒸発源を用いることができる。
【0057】
本実施例のインクジェット方式やダイコート方式の製造方法によれば、図8に示すような構成とすることにより、有機太陽電池を連続して大量に製造することが容易となる。
【0058】
本発明の有機太陽電池の製造方法の別の実施例を図9に示す。同図に示すダイスコーティング方式の製造方法でも、ITO付ファイバ71を所定の方向に一定速度で移動させながら、有機太陽電池を連続的に製造する構成としている。図9では、ITO付ファイバ71を下方向に移動させる例を示しており、上流側にP型有機半導体コーティング部81を配置し、所定の距離を置いて下流側にN型有機半導体コーティング部82を配置している。コーティング部81、82はコーティングダイとコーティングタンク、圧力制御手段(図示していない)よりなり、線状体の移動速度に応じて所定の圧力での被覆材料をコーティングダイに供給し被覆を行う。被覆材料の厚さはコーティングダイの出口部(ダイス部)の寸法で決まる。被覆材料として溶媒を用い原料を希釈した場合の最終の被覆厚さは、原料の濃度とコーティングダイのダイス寸法で決める事が出来る。
【0059】
図9に示す本実施例の製造方法は、ITO付ファイバ71がP型有機半導体コーティング部81を通過する際にP型有機半導体がコーティングされ、N型有機半導体コーティング部82を通過する際にP型有機半導体の膜の上にN型有機半導体がコーティングされる、リップ方式(ウエット オン ウエット:wet on wetあるいは二層コ―ティング方式)としている。本実施例のリップ方式でも、有機太陽電池を連続して大量に製造することが容易となる。
実施例として、厚さ0.1mmx幅1mmx長さ0.3mのファイバ基板において、図13に示すように、ファイバ基板の左右両側にITO(100nm)+有機層(20〜100nm、ステップ+10nm)+AL(100nm)を成膜した。
【0060】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る有機太陽電池、有機太陽電池モジュール、及びその製造方法の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における有機太陽電池、有機太陽電池モジュール、及びその製造方法の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態の有機太陽電池の構造を示す断面図である。
【図2】従来構造の有機太陽電池の断面図である。
【図3】従来型の有機太陽電池の変換効率の有機層膜厚依存性を示すグラフである。
【図4】従来型の有機太陽電池の透過率の有機層膜厚依存性を示すグラフである。
【図5】本発明の有機太陽電池の変換効率の1例を示すグラフである。
【図6】本発明の有機太陽電池の別の実施形態の構造を示す断面図である。
【図7】本発明の有機太陽電池のさらに別の実施形態の構造を示す断面図である。
【図8】本発明の有機太陽電池の製造方法の実施例を示す概略構成図である。
【図9】本発明の有機太陽電池の製造方法の別の実施例を示す概略構成図である。
【図10】従来の有機太陽電池の概略構成を示す断面図である。
【図11】従来の別の有機太陽電池の概略構成を示す斜視図である。
【図12】従来のさらに別の有機太陽電池の概略構成を示す断面図である。
【図13】本発明の有機太陽電池の実施例である。
【符号の説明】
【0062】
10、30、40、51、52、53、54、101,111、121、131・・・有機太陽電池
11、31、55・・・導光部
12、32、56、102・・・透明導電部
13、33、57、103、113、122・・・P型有機半導体
14、34、58、104、114,123・・・N型有機半導体
15、36、59・・・反射膜
35、41、105・・・導電膜
106・・・ガラス基板
61・・・開口部
62・・・終端部
63・・・乱反射シール
64、65・・・部材
66・・・斜め切端子
71・・・ITO付ファイバ
72・・・P型有機半導体噴出部
73・・・N型有機半導体噴出部
74・・・金属ナノ粒子ペースト噴出部74
81・・・P型有機半導体コーティング部
82・・・N型有機半導体コーティング部
112・・・入射光線
113・・・P層
114・・・N層
124・・・PN接合
132・・・有機半導体層
133・・・共通電極層
143・・・透明共通電極層
135、136・・・電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光部と、
前記導光部表面の少なくとも一部に接する陰極・陽極・有機半導体層よりなる有機太陽電池層と、
前記導光部の少なくとも前記有機太陽電池層と対向する位置に設けられた反射手段と、を備えることを特徴とする有機太陽電池。
【請求項2】
前記有機太陽電池層の前記導光部と接する面とは反対の面に反射手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項3】
前記反射手段と前記導光部との間に前記有機太陽電池層を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の有機太陽電池。
【請求項4】
前記太陽電池層は、導光部表面に透明電極、太陽電池の半導体層、電極の順に形成してある事を特徴とする請求項1から3に記載の有機太陽電池。
【請求項5】
電極が半導体層を覆うように形成され、反射手段を兼ねる事を特徴とする請求項1または4に記載の有機太陽電池。
【請求項6】
前記導光部はガラス又は透明樹脂で形成されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の有機太陽電池。
【請求項7】
前記導光部材の導光部の断面形状が円形、楕円、矩形、矩形に近い形状を有している
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の有機太陽電池。
【請求項8】
前記導光部材が線状体である
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の有機太陽電池。
【請求項9】
前記導光部の開口部を規定する短軸と長軸方向長さとの比が1:5以上である
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の有機太陽電池。
【請求項10】
前記導光部の開口端に、前記導光部とは屈折率の異なる部材を付設している
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の有機太陽電池。
【請求項11】
前記導光部の終端に、反射角度を調整する手段を付設している
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の有機太陽電池。
【請求項12】
線状体の導光部材を用い、前記導光部材に太陽電池を形成した導光型太陽電池を用い、入射光を取り入れる開口部を有し、複数の前記導光型太陽電池を導光部材の長軸方向と開口部の位置をそろえて複数配列し、各導光型太陽電池が配線されている
ことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項13】
線・条の導光部の外周に少なくとも透明電極・有機太陽電池層・電極の順位に形成し、さらにその外周に反射膜または封膜、あるいは両方の膜を形成する
ことを特徴とする有機太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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