説明

有機性廃棄物のメタン発酵処理方法及びメタン発酵処理システム

【課題】有機性廃棄物を可溶化処理したのち、嫌気性細菌により分解してバイオガスを得るメタン発酵処理において、凝集剤の使用量を抑制し、処理を簡素化する。
【解決手段】有機性廃棄物Aを密閉された処理容器22中で亜臨界水により処理した後、加圧状態である亜臨界水処理物を減圧させることで脱水させて脱水処理物を得、この脱水処理物Cをメタン発酵処理槽23に投入してメタン発酵させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生ゴミ等の有機性廃棄物を可溶化した後にメタン発酵させ、バイオガスを発生させてエネルギーを回収するメタン発酵処理に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭排出生ゴミ、木質系廃棄物、家畜糞尿、汚泥などの有機性廃棄物を処理する方法として、微生物によってそれら有機性廃棄物を分解し、メタンを含むバイオガスをエネルギー源として回収するメタン発酵処理が行われている。この処理においては、有機性廃棄物に水を加えて攪拌し、微生物の働きによって可溶化させた後、溶液又はスラリー状態でメタン発酵処理槽に投入することが一般的であった。
【0003】
従来行われていたメタン発酵処理方法の例を図5に示す。生ゴミなどの有機性廃棄物aを粉砕機11に投入し、細かく破砕して得られた粉砕廃棄物bを選別機12にかけて、プラスチックなどの発酵不適物jを分離する。こうして得られた分解性廃棄物cを、可溶化処理槽13に送入し、一日かけて微生物分解させて可溶化させる。得られた可溶化液dを、嫌気性細菌を保有するメタン発酵処理槽14に投下して、メタン発酵処理させる。このとき発生するバイオガスkはメタン発酵処理槽14の上方で捕集する。可溶化液dを投下する前に、投下する可溶化液dと同量の消化液fを抜き出す。ただし、消化液fには、微生物を含む固形分が含まれるので、メタン発酵処理槽14内の微生物量を低下させすぎないようにするため、消化液fに凝集槽15で凝集剤eを投下して固形分を凝集させ、得られた凝集液gを濃縮装置16で濃縮して得られる濃縮汚泥iを、メタン発酵処理槽14に返送する必要がある。また、濃縮汚泥iと分離された濃縮ろ液hは別途処理する。
【0004】
しかし、メタン発酵に用いる細菌はプラスチックの分解が出来ないため、それらの発酵不適物を選別除去しなければ、処理槽に分解不可能な物質が蓄積される場合があった。また、可溶化処理には1日ほどの時間がかかり、さらに、含水率を高めるために大量の水を必要としており、可溶化処理を行う反応槽はかなりの容量を必要としていた。
【0005】
これに対して、有機性廃棄物を可溶化する際に、亜臨界水を用いて可溶化処理する方法が特許文献1及び2に記載されている。これらは、100℃以上の高温高圧の水に接触させることで、有機性廃棄物の可溶化を行うものであり、従来の可溶化処理では分解できなかったプラスチックゴミも含めて、一時間程度の処理で可溶化させることができる。これにより、可溶化前に廃棄物から分解できない有機物を選別する必要がなくなり、従来法に比べて時間及び保管場所の大幅な圧縮が可能となった。すなわち、図5に示す選別機12及び可溶化処理槽13の処理を、一の装置で行うとともに、従来は選別して別途処理する必要があったプラスチックなどの発酵不適物jが排出されなくなったこととなる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−117526号公報
【特許文献2】WO2004/037731
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、亜臨界水を用いて処理した後の可溶化処理液や希薄スラリーをメタン発酵処理槽に送っている(請求項4及び5に記載。)。また、特許文献2では、亜臨界水処理した後で得られる処理物からさらに水相のみを分離して、その水相をメタン発酵するものである(請求項6、実施例中の「油相、油脂相、水相および固相の分離回収」に記載。)。
【0008】
また、これらの方法では、メタン発酵処理槽に可溶化された廃棄物を送入する際に、大量の水とともに送ることになるので、送入前に廃棄物分に相当する量だけでなく、付随する水に相当する分も加えた量の消化液を抜き出す必要がある。大量の消化液を抜き出すと、それに応じて大量の固形分が付随して除去され、固形分に含まれるメタン発酵細菌が減少してしまう。そのため、消化液に凝集剤を投下してから濃縮し、得られた濃縮汚泥をメタン発酵処理槽内に返送させることで、メタン発酵処理槽内の固形分濃度を維持しなければならなかった。その過程では、凝集を行う凝集槽で大量の凝集剤を投下して固形分を沈降させる必要があり、その沈降にかなりの時間がかかるという問題点があり、これは亜臨界水を用いて処理してもなお解決しなかった。さらに、メタン発酵処理槽、凝集槽、返送装置のいずれも大きなままで扱う液の量も減少せず、これらの装置負担が軽減できなかった。
【0009】
そこでこの発明は、有機性廃棄物を可溶化処理したのち、メタン発酵細菌により分解してバイオガスを得るメタン発酵処理システムにおけるメタン発酵処理方法において、凝集剤の使用量を抑制し、装置負担を軽減し、処理を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、有機性廃棄物を密閉された処理容器中で亜臨界水により処理した後、加圧状態である亜臨界水処理物を減圧させることで脱水させて脱水処理物を得、この脱水処理物をメタン発酵処理槽に投入してメタン発酵させることにより、上記の課題を解決したのである。すなわち、加温加圧状態である亜臨界水は、そこから減圧させるだけで、沸点が下がるために容易に蒸発させることができるので、亜臨界水処理に使用した亜臨界水の大部分を蒸発させて、処理物を脱水することができる。この脱水処理物は亜臨界水によって分子量を低下されて容易に溶解できるようになっているが、上記のような減圧脱水によって、スラリーや溶液に比べて含有する水分量が十分に少ないものとなっている。これにより、この脱水処理物を投下する際に、内容量を超過させないためにメタン発酵処理槽から予め抜き出しておかなければならない消化液の液量は、スラリーや溶液として投下していた従来法に比べて十分に小さなものとなる。さらに、消化液の抜き出し量が少ないことで、それに同伴して抜き出される固形分の量も少なくなるので、凝集槽で使用する凝集剤の量が少なく、消化液から脱水して汚泥を取り出し、それをメタン発酵処理槽に返送しなくても、メタン発酵処理槽内の固形分濃度を維持することが出来る。
【0011】
亜臨界水が存在する環境は加圧状態であり、亜臨界水は常圧では気体の水蒸気となる温度である。その環境下にある有機性廃棄物を常圧にまで減圧すると、水は蒸発して有機性廃棄物から離れることになる。これにより、処理後の有機性廃棄物を遠心分離や濾過などで別途脱水処理を行う必要なく、塊状物を得ることができる。このような常圧までの減圧を行うには、亜臨界水で処理した後の廃棄物を、より低圧の環境下にある蒸発槽に送り込むことでも実現できる。しかし、処理後に密閉されたままである亜臨界水処理を行う処理装置を開封することで常圧にまで圧力を低下させると、廃棄物及び亜臨界水が有している熱エネルギーを無駄なく脱水に用いることができるので最も好ましい。
【0012】
このような処理方法を実施することができるメタン発酵処理システムは、有機物を嫌気性細菌により分解可能なメタン発酵処理槽とともに、有機性廃棄物を亜臨界水で処理し、処理後に亜臨界水処理物を減圧させることで脱水できる亜臨界水処理装置を有するものである。また、その亜臨界水処理装置は、上記のように、減圧させるにあたっては常圧までの減圧を行うとよいので、装置外へ気体を排出可能である排気弁を有するものであるとよい。
【0013】
なお、亜臨界水での処理にあたっては、加温加圧蒸気の導入前に、上記処理容器を密封した上で減圧しておくと、空気の影響を受けにくくなり、亜臨界状態になるように加温加圧蒸気を導入することで、温度や圧力の低下を起こりにくくして、亜臨界水の環境を容易に実現することができる。具体的には、処理容器内を5×10−3〜10×10−3MPaの環境にまで減圧しておくとよく、導入する加温加圧蒸気は、150〜240℃、0.5〜3MPaであると好ましい。
【0014】
また、メタン発酵処理槽から抜き出した消化液は多少の固形分を含んでいる。上記の通り、メタン発酵処理槽内の固形分濃度を維持するために返送する必要はないが、この固形分は処理する必要がある。この消化液に凝集槽で凝集剤を投下して凝集液とした後、この凝縮液を濃縮する濃縮装置を設け、得られた濃縮汚泥を亜臨界水処理装置に返送する返送手段を設け、濃縮汚泥を新たな有機性廃棄物とともに亜臨界水処理することで、余分な汚泥処理を行うことなく、かつ、抜き出した消化液に含まれる固形分からもバイオガスを得ることができる。
【0015】
さらに、脱水処理物のメタン発酵処理槽への投下にあたっては、脱水処理物をそのまま投下してもよいし、加水して加えてもよい。脱水処理物をそのまま投下すると、メタン発酵処理槽から抜き出さねばならない消化液が少なくて済む。一方で、メタン発酵処理槽内の水分が少なくなりすぎる場合には投下段階で加水しておくとよい。また、投下にあたって、脱水状態のままでは扱いにくいこともあり、加水することで投下を容易にすることが出来る場合もある。
【発明の効果】
【0016】
この発明にかかる処理システムを用いた処理方法では、廃棄物の選別処理や、可溶化後の廃棄物の脱水処理などを行う必要なく、廃棄物を可溶化して脱水した塊状物を得ることができ、その塊状物をメタン発酵処理槽に投下することで、スラリーや溶液の状態での投下において必要になった大量の消化液の抜き出しが不要となり、汚泥の返送も不要となる。それに応じて、従来は、投下されるスラリーや溶液の水分に対応する大量の消化液を予めメタン発酵処理槽から抜き出すので必要とされた凝集剤の使用量を削減できるとともに、メタン発酵処理槽内の固形分濃度を維持するために汚泥を返送するので必要だった汚泥圧縮装置やポンプなどの設備が不要となる。また、メタン発酵処理槽に投下され、抜き出される体積量が少なくなるので、メタン発酵処理槽自体の容量を削減することができるので、占有体積を減らし、作業効率を上げることができる。
【0017】
また、メタン発酵の分解効率が上がるために、バイオガスの発生量が従来法よりも増加し、それに伴って、得られるバイオガスによって得られる発電量や熱量も増加する。
【0018】
さらに、亜臨界水処理をしているので、廃棄物を滅菌、減菌する効果も同時に得られる。さらに、減圧脱水において容器の開放を行うと、蒸気と共に、アンモニア性窒素も系外に排出されるので、このアンモニア性窒素によってメタン発酵処理が阻害されることを未然に防ぐこともできる。
【0019】
さらにまた、亜臨界水処理及びその後の脱水処理を合計しても1.5時間程度で行うことができるので、従来の可溶化処理に比べて処理時間を大幅に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明について具体的に説明する。この発明は、家庭排出生ゴミ、木質系廃棄物、家畜糞尿、汚泥、廃プラスチックスなどの有機性廃棄物からバイオガスを得るメタン発酵処理方法である。この方法の実施形態を、図1に示すメタン発酵処理システムを用いて説明する。
【0021】
まず、有機性廃棄物Aを粉砕機21に投入して粉砕する。個々の廃棄物が大きすぎると、亜臨界水との接触面積が小さくなり、十分な処理ができなくなるためである。粉砕機21で処理した粉砕廃棄物Bの最大長さは10cm以下であると好ましい。なお、細かければ細かいほどその後の処理には好ましいが、その分粉砕機21の負担が大きくなるので、最大長さを5cm未満にまで粉砕するのは作業上の無駄が多くなる。
【0022】
上記のように適切な大きさに粉砕した粉砕廃棄物Bを、亜臨界水処理装置22に投入して、亜臨界水により可溶化処理する。この亜臨界水処理装置22での処理を、図2を用いて説明する。亜臨界水処理装置22は、密閉可能である円筒状の収容体31を主体とし、内部には攪拌羽根を有する攪拌軸32を備えており、内部の廃棄物を攪拌可能である。上方には粉砕廃棄物Bを投入するための投入口33が設けられ、下方には亜臨界水処理を終えた後の処理廃棄物を排出する排出口41と、排水用のドレーン40とが設けられてある。また、収容体31の上側には、減圧ポンプ35に連結された開閉弁34と、大気中へ開放可能である安全弁38及び排気弁39が設けられてある。また、一方の端部には、蒸気ボイラから蒸気を導入可能な蒸気噴射パイプ37が設けられてある。
【0023】
上記の可溶化処理を行うにあたっては、粉砕廃棄物Bを投入口33から投下した後、減圧ポンプ35を用いて収容体31の内部を減圧させる。加温加圧蒸気を導入する前に減圧させることで、空気による影響を少なくして、供給された加温加圧蒸気のエネルギーを活かしてを亜臨界状態にしやすくすることができる。減圧後の圧力は5×10−3MPa以上10×10−3MPa以下であると好ましい。10×10−3MPaより高いと、減圧させることによる効果が十分に発揮できない場合がある。一方で、5×10−3MPa未満にするには収容体31の強度を高め、減圧ポンプ35の能力も高度なものが必要となり、設備にかかる負荷が高くなりすぎてしまう。
【0024】
上記の減圧後、蒸気噴射パイプ37から加温加圧した飽和水蒸気を導入する。この飽和水蒸気は、導入した亜臨界水処理装置内を亜臨界状態にすることができるものである必要がある。
【0025】
蒸気の飽和水蒸気を導入し、亜臨界状態となった亜臨界水処理装置22内の温度は150℃以上、240℃以下であると好ましい。180℃未満であると、処理すべき有機性廃棄物の中に含まれる生物の骨などの固い成分が十分に可溶化させることができず、強度を保ったままになる場合がある。一方、300℃を超える温度にすると、設備負担が大きいが、それに見合う処理結果の向上が見られない。また、飽和水蒸気を導入後の圧力は、0.5MPa以上、3MPa以下であると好ましい。0.5MPa未満であると亜臨界状態になるには不十分で通常の水蒸気となる可能性が高くなってしまう。一方で、3MPaを超えると圧力が強すぎて装置にかかる負担が大きすぎる場合がある。
【0026】
上記の飽和水蒸気の導入により、亜臨界水処理装置22内の水を上記のような亜臨界状態にするとともに、攪拌軸32を回転させて、粉砕廃棄物Bを攪拌しながら亜臨界水と接触させることによって熱分解処理させる。この攪拌時間は、5分以上60分以下であると好ましい。5分以下では熱分解反応が不十分で、得られる亜臨界水処理物Cに不溶成分が残存しやすくなってしまう。一方、60分を超えて処理しても、効果の向上はそれほど見込めず、メタン発酵可能な有機分を分解させてしまう量が無視できなくなる場合がある。なお、上記の安全弁38は緊急時における減圧開放に用いる。また、飽和水蒸気の導入による昇温時間と合わせても、1.5時間程度で処理を完了させることができる。
【0027】
上記の処理が完了したら、排気弁39を開放することによって、加圧状態にあった収容体31の内部を常圧にまで減圧させる。このとき、空気とともに蒸気も大気中に放出される。亜臨界状態にある水は、常圧下では蒸発する温度であるため、常圧にまで減圧されることで、収容体31内にある水の大半が蒸発することとなる。これにより、開放後に収容体31内に残る亜臨界水処理物Cは脱水されて、含水率が50%程度から、それ以下となる。なお、十分に脱水できずに収容体31内に水分が余分に残っている場合は、ドレーン40を開放して排水する。このようにして得られる亜臨界水処理物Cはケーキ状であり、次の工程を行うメタン発酵処理槽23へ送り込むにあたっては、従来法のように溶液やスラリーとして送り込むのではなく、固形分として持ち運んで投入することができる。
【0028】
なお、上記のように減圧により脱水すると、水分の蒸発が進行しすぎることで、得られる亜臨界水処理物Cが有する水分が少なくなりすぎ、次の工程を行うメタン発酵処理槽23内に補充すべき水分が足りなくなってしまう場合がある。この場合は、亜臨界水処理物Cに適度な水分を加えた上でメタン発酵処理槽23に投入する。
【0029】
上記のメタン発酵処理槽23は、攪拌のための攪拌翼を有し、満たされた水溶液中にメタン発酵を行う嫌気性細菌を含有するものである。ここに投入された亜臨界水処理物Cは嫌気性細菌によって分解、発酵され、メタンなどのバイオガスKが得られる。メタン発酵処理槽23の上方は密閉されており、発生するバイオガスKを空気中へ逃がさないようになっている。このバイオガスKを捕集して、ガスホルダ26に一時貯留し、コ・ジェネ装置27により電気と熱とに変換して、亜臨界水処理装置22で用いる飽和水蒸気を得るための加熱などや、これらの装置からなる一連のシステムを可動させるための電力を得るための発電に用いる。
【0030】
なお、手順上は、上記の亜臨界水処理物Cを投入する前に、メタン発酵処理槽23内の消化液のうち、投入する亜臨界水処理物Cに相当する量をそのまま抜き出す(図中Fと示す。)。ここで消化液Fの抜き出す量は、投入する亜臨界水処理物Cが脱水されているために抑えられており、同伴して抜き出される固形分は少ないので、メタン発酵処理槽23内の固形分濃度を維持するためにあえてメタン発酵処理槽23内へ汚泥を返送する必要はない。
【0031】
抜き出した消化液Fは凝集槽24へ送り、そこで凝集剤Eを投下して固形分を回収しやすくする。これを濃縮装置25で濃縮して、濃縮ろ液Hと濃縮汚泥Iとに分離する。この分離された濃縮ろ液Hのみを排水としておくと、その後の排水処理の負担を軽減できるので好ましい。また、分離された濃縮汚泥Iは焼却等の処分を行ってもよいが、これらはメタン発酵処理を行いきれなかった有機成分であるので、亜臨界水処理装置22に返送して、新たな粉砕廃棄物Bとともに亜臨界水で処理して可溶化させると、再びメタン発酵処理槽23で発酵する機会が得られ、より徹底してエネルギー回収できるので好ましい。返送を行う返送手段は、パイプなどを通してもよいし、濃縮汚泥Iを蓄積した後に一括して運搬して投入するものでもよい。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
以下、この発明を具体的に実施した例を示す。この実施例では、図3に記載のフローにより処理を行った。それぞれのフローの固形分、有機分、水分、及び全量の時間あたり重量をkg単位で表1に示す。有機性廃棄物である1日あたり30トンの生ゴミを粉砕した粉砕生ゴミ101を亜臨界水処理装置151(伊賀国友産業(株)クニスターAZW)に投入する。この亜臨界水処理装置151を密閉し、5×10−3MPaまで減圧した後、飽和水蒸気102を導入して、180℃、1.0MPaで20分間亜臨界水処理を行う。処理後には排気弁を開放して内部を減圧させ蒸発水分102’を放出する。これにより、固形分比率が45重量%の亜臨界水処理物103を得る。蒸発水分102’を回収した一部を調整水分102”として、亜臨界水処理物103を一時保管する一時貯留槽152に追加して、固形分比率が30.5重量%のメタン発酵原料106とする。このメタン発酵原料106をメタン発酵処理槽153に投下する。
【0033】
メタン発酵処理槽153では、有機分の93.0%を分解し、発生するバイオガス108を槽の上方で回収する。また、メタン発酵処理槽153内の溶液の一部を消化液107として抜き出す。この消化液107は汚泥濃縮装置154に送り、この汚泥濃縮装置154に対固形分濃度で1.0重量%(対液濃度で0.3%)の凝集剤を含有する凝集剤溶液109を投下する。この凝集剤により、消化液107を濃縮汚泥110と濃縮ろ液113とに分離する。この濃縮汚泥110はメタン発酵処理槽153に返送しなくてもよいので、返送汚泥111の量は0であり、全てを余剰汚泥112として汚泥脱水装置156に送る。脱水された固形分は水分含有率が75.0%である脱水汚泥117として排出し、残りの脱水ろ液118は廃水処理装置155へ送る。一方、濃縮ろ液113も、廃水処理装置155に送る。廃水処理装置155に蓄積された水分は、一部を再利用水115として、凝集剤溶液109の水分として利用し、残りの処理水114は蒸発水分102’から調整水分102”を除外した残りの除外水分102’’’と合わせて、放流する。
【0034】
なお、亜臨界水処理物103を加水した含水率が69.5%であるメタン発酵原料106とした上でメタン発酵処理槽153に投下するのは、メタン発酵処理槽153内の汚泥濃度を6.0%のまま維持させるための調整である。また、メタン発酵処理槽153から失われるバイオガス108と消化液107との合計量は、メタン発酵処理槽153に加えられるメタン発酵原料106の全量に等しい。また、表中添加水116は、外部から供給する水の全量である。
【0035】
【表1】

【0036】
(比較例1)
この比較例では、図4に記載のフローにより処理を行った。実施例1の手順において、粉砕生ゴミ101の替わりに、プラスチックゴミをあらかじめ除去した選別生ゴミ121を用い、亜臨界水処理装置151及び一時貯留槽152の替わりに、糞尿受入槽161を用いて、飽和水蒸気102の替わりに加水122を加え、選別生ゴミ121を一日かけて可溶化処理するものとした。処理後の可溶化処理物123の固形分含有率は12.0重量%であり、大量の水分を含んだものである。これに合わせて、凝集剤溶液109及び消化液107の量を増加させ、汚泥濃縮装置154で濃縮された汚泥(水分率90.0重量%)のうちの70.0%を返送汚泥111としてメタン発酵処理槽153に返送させるものとした。なお、メタン発酵処理槽の有機分の分解率は83.0%であった。また、廃水処理装置155から排出された再利用水115により、凝集剤溶液109及び加水122の必要水分の半分をまかない、残りは外部から供給する添加水116によりまかなった。以上の工程における固形分、有機分、水分及び全量を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
(実施例2)
(亜臨界水処理後の状態の検討)
実施例1において、亜臨界水処理装置151の温度を150℃として20分間処理したところ、得られた亜臨界水処理物103は薄い褐色であり、生ゴミに含まれる骨は触っただけでは崩せず手で折らねばならない強度を残していた。また、骨以外は手で練りつぶせる強度になっていた。
【0039】
(実施例3〜5)
実施例1において、亜臨界水処理装置151の温度を180℃として処理したところ、実施例2よりも褐色が深くなり、焦げの度合いが増した。なお、この条件で、処理時間を5分、10分、20分(実施例3、4、5に対応する。)と処理時間を変えたところ、得られる亜臨界水処理物の外観は変化しなかったが、ドレーンから抜き出される排出液の色は、処理時間が長くなるにつれて黒に近づくこととなった。
【0040】
(含水率の比較)
亜臨界水処理前の粉砕生ゴミの含水率が79%であったが、実施例2(150℃20分)では73.3%、実施例3(180℃5分)では73.8%、実施例4(180℃10分)では71.8%、実施例5(180℃20分)では69.1%となり、温度が高く、反応時間が長くなるにつれて、含水率が低下することがわかった。
【0041】
(有機分/固形分(=VS/TS)比率の検討)
元の粉砕生ゴミはVS/TSが83.2%であったが、実施例2では81.1%、実施例3では82.2%、実施例4では81.2%、実施例5では79.5%となり、温度が高く、反応時間が長くなるにつれてVS/TS比は減少することがわかった。これは、メタン発酵できる有機物が一部分解してしまうためと考えられる。
【0042】
(亜臨界水処理による有機酸の発生の検討)
亜臨界水処理が進行すると、有機物が可溶化し、糖化を経て有機酸が生成すると考えられるので、それぞれの例においてpHを測定して有機酸の生成を確認した。
【0043】
(実施例6〜8)
表3の構成からなる試料を、実施例1で用いた亜臨界水処理装置を用いて180℃の環境で5、10、20分間(実施例6、7、8に対応する。)亜臨界水処理した。その後、50mlの蒸留水に溶解させた。その溶解液のpHを表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
(比較例2)
表3の構成からなる試料を、亜臨界水処理せずそのままの状態でpHを測定した。その結果を表3に示す。
【0046】
(実施例9)
脱水汚泥30.15gを実施例1で用いた亜臨界水処理装置を用いて、180℃の環境で20分間かけて亜臨界水処理した。その後60mlの蒸留水に溶解させたもののpHを表3に示す。
【0047】
(比較例3)
脱水汚泥30.33gを、亜臨界水処理せず、蒸留水60mlと混合した状態でpHを測定した。その結果を表3に示す。
【0048】
(結果)
いずれも亜臨界水処理装置を用いて処理したものは、ガラス棒で攪拌するだけで容易に蒸留水に溶解した。また、厨芥物、脱水汚泥ともに、亜臨界水処理したものは、処理していないものよりもpHが低下しており、厨芥物では反応時間が長くなるにしたがって、pHがより低下しており、亜臨界水処理がより徹底して行われていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明にかかるメタン発酵処理方法の手順を示すフロー図
【図2】この発明で用いる亜臨界水で処理を行う亜臨界水処理装置の例を示す概念図
【図3】実施例1における手順のフロー図
【図4】比較例1における手順のフロー図
【図5】従来のメタン発酵処理方法の手順を示すフロー図
【符号の説明】
【0050】
A、a 有機性廃棄物
B、b 粉砕廃棄物
C 亜臨界水処理物
E、e 凝集剤
F、f 消化液
G、g 凝集液
H、h 濃縮ろ液
I、i 濃縮汚泥
K、K’、k バイオガス
c 分解性廃棄物
d 可溶化液
j 発酵不適物
11、21 粉砕機
12 選別機
13 可溶化処理槽
14、23 メタン発酵処理槽
15、24 凝集槽
16、25 濃縮装置
22 亜臨界水処理装置
26 ガスホルダ
27 コ・ジェネ装置
31 収容体
32 攪拌軸
33 投入口
34 開閉弁
35 減圧ポンプ
37 蒸気噴射パイプ
38 安全弁
39 排気弁
40 ドレーン
41 排出口
101 粉砕生ゴミ
102 飽和水蒸気
102’ 蒸発水分
102” 調整水分
102’’’ 除外水分
103 亜臨界水処理物
106 メタン発酵原料
107 消化液
108 バイオガス
109 凝集剤溶液
110 濃縮汚泥
111 返送汚泥
112 余剰汚泥
113 濃縮ろ液
114 処理水
115 再利用水
116 添加水
117 脱水汚泥
118 脱水ろ液
121 選別生ゴミ
122 加水
123 可溶化処理物
151 亜臨界水処理装置
152 一時貯留槽
153 メタン発酵処理槽
154 汚泥濃縮装置
155 廃水処理装置
156 汚泥脱水装置
161 糞尿受入槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を可溶化処理した後、嫌気性細菌を含むメタン発酵槽により分解するメタン発酵処理方法であって、
前記有機性廃棄物を、密閉された処理容器中で亜臨界水により可溶化した後、加圧状態である亜臨界水処理物を減圧させることで脱水させて脱水処理物を得て、この脱水処理物を前記メタン発酵槽に投入することを特徴とする、メタン発酵処理方法。
【請求項2】
上記脱水の際に、密閉された上記処理容器を開封することで常圧にまで減圧させる請求項1に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項3】
上記有機性廃棄物を上記処理容器中に入れた後、上記処理容器内を常圧よりも減圧してから、亜臨界状態となるように加温加圧蒸気を導入することで、その加温加圧蒸気を亜臨界水として可溶化処理を行う、請求項1又は2に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項4】
上記処理容器内の、前記加温加圧蒸気の送入前に減圧した時の圧力が5×10−3MPa以上10×10−3MPa以下であり、加温加圧蒸気を導入した後の温度が150℃以上240℃以下、圧力が0.5MPa以上3MPa以下である、請求項3に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項5】
上記メタン発酵槽から排出された消化液に含まれる汚泥を上記処理容器に返送して亜臨界水処理することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項6】
有機性廃棄物をメタン発酵させてバイオガスを得るメタン発酵処理システムであって、
有機性廃棄物を亜臨界水で処理し、処理後に亜臨界水処理物を減圧させることで脱水できる亜臨界水処理装置と、脱水された後の脱水処理物を嫌気性細菌により分解可能なメタン発酵処理槽とを備えたメタン発酵処理システム。
【請求項7】
上記亜臨界水処理装置が、上記有機性廃棄物を亜臨界水で処理した後に、上記亜臨界水処理装置の内部を常圧にまで低下させつつ蒸発した水蒸気を装置外に排出可能である排気弁を有することを特徴とする、請求項6に記載のメタン発酵処理システム。
【請求項8】
上記メタン発酵処理槽から排出された消化液に含まれる固形分を濃縮する濃縮装置と、濃縮によって得られた濃縮汚泥を上記亜臨界水処理装置に返送する返送手段とを有する、請求項6又は7に記載のメタン発酵処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−119378(P2009−119378A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296910(P2007−296910)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】