説明

有機感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】本願発明の目的は、帯電能に優れ、繰り返し使用しても帯電性の低下が少なく、且つ感光体製造時の乾燥過程でのクラックの発生を防止し、活性ガスに対する耐ガス特性が改善された有機感光体を提供することにある。又、この有機感光体を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することにある。
【解決手段】導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した有機感光体において、前記電荷輸送層が環状オレフィン樹脂と、ヒンダードフェノール系化合物を含有することを特徴とする有機感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は複写機やプリンター等に用いられる有機感光体、及び、該有機感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷分野やカラー印刷の分野において、電子写真方式の複写機やプリンターが使用される機会が増加しており、合わせて高速で、鮮明な文字、画像情報を求める傾向は強まっている。電子写真感光体に代表される分野の光源としては、主に380〜800nmの波長の光を出す半導体レーザーが用いられており、その領域に感度のある有機感光体が多く用いられている。更に、高速化及び高画質化の要求とともに、低コスト化及び小型化の要求も年々強くなっている。低コスト及び小型化への方向に進み、また、長寿命高耐久化が進むと、帯電性や耐摩耗性はまずまず要求が厳しくなることが推測される。
【0003】
しかし、これまでの従来の感光体では、繰り返し使用によって膜厚減耗が発生しやすく、感光層の膜厚減耗が進むと、感光体の帯電性低下や感度劣化、地肌汚れの増加、画像濃度低下等の画質劣化が起こり、感光体の耐摩耗性が大きな課題として挙げられていた。
【0004】
上記のような耐摩耗性の課題に対し、例えば、感光体の表面層として、コロイダルシリカ含有硬化性シロキサン樹脂を用いることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。該コロイダルシリカ含有硬化性シロキサン樹脂は、シロキサン結合(Si−O−Si結合)の硬化性樹脂も、コロイダルシリカも吸湿性が高く、例えば、高温高湿環境下などでは表面層の電気抵抗が低下しやすく、画像ボケや画像流れが発生しやすい。
【0005】
又、保護層に適用する硬化性樹脂としては、アクリロイル基を有する化合物を用いて光重合させて得られる硬化性樹脂の保護層が提案されている(例えば、特許文献2参照)。該保護層にも硬化性樹脂中に金属酸化物等のフィラーを含有させているが、これらフィラーと硬化性樹脂間の結合が弱く、保護層としての強度が不十分であり、又、画像ボケや画像流れに対しても、尚、十分に解決し得ていない。
【0006】
一方、有機感光体への保護層の適用によって、耐摩耗性が改善されたとしても、感光体の帯電性の安定化には、尚、課題が残っている。該帯電性の安定化に対して、オレフィン樹脂を電荷輸送層のバインダー樹脂として用いることが報告されている(特許文献3参照)。オレフィン樹脂は従来の感光体に使用されているポリカーボネートやポリエステルに比べ、低誘電率であり、帯電能(帯電に対するレスポンスの速さ)が高いという特性を有している反面、感光体製造時の乾燥過程で、電荷輸送物質との相溶性が低下し、クラックが発生しやすい。前記特許文献3では、これらの課題を特定の電荷輸送性化合物を用いて改善しているが、電荷輸送性化合物が限定され、より特性の改善が要求される有機感光体の開発には、十分な解決策とはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−118681号公報
【特許文献2】特開2001−125297号公報
【特許文献3】特開2008−176290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、帯電能に優れ、繰り返し使用しても帯電性の低下が少なく、且つ感光体製造時の乾燥過程でのクラックの発生を防止し、活性ガスに対する耐ガス特性が改善された有機感光体を提供することにある。又、この有機感光体を用いたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者等は、従来技術の問題点を洗い出した結果、有機感光体の層構成の中の電荷輸送層のバインダー樹脂に環状構造を有するオレフィン樹脂を用いる場合には、極性基のあるヒンダードフェノール系酸化防止剤を併用すると、該オレフィン樹脂と電荷輸送性化合物との相溶性を改善でき、感光体製造時のクラック耐性が改善し、帯電特性が改善され、高帯電電位を付与できるとともに、繰り返し使用時の電位安定性が改善されることが見いだされ、本願発明を達成した。
【0010】
本願発明は以下のような構成を有することにより達成される。
【0011】
1.導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した有機感光体において、前記電荷輸送層が環状オレフィン樹脂と、ヒンダードフェノール系化合物を含有することを特徴とする有機感光体。
【0012】
2.前記環状オレフィン樹脂が下記一般式(1)又は一般式(2)の繰り返し単位を有する樹脂であることを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
【0013】
【化1】

【0014】
(一般式(1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基又は置換又は無置換のカルボニル基を示す。R11及びR12は互いに結合して環を形成してもよい。nは20〜5000の整数を表し、*は繰り返し単位の接合部である。)
【0015】
【化2】

【0016】
(一般式(2)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基を示し、Rは水素又は−COORを示し、Rはアルキル基、シリル基を表す。nは20〜5000の整数を表し、*は繰り返し単位の接合部である。)
3.前記有機感光体は、前記電荷輸送層上に保護層を有し、該保護層中に金属酸化物粒子を含有することを特徴とする前記1又は2に記載の有機感光体。
【0017】
4.前記保護層が重合性化合物で表面処理された金属酸化物粒子と重合性化合物の間での重合反応により形成された保護層であることを特徴とする前記3に記載の有機感光体。
【0018】
5.有機感光体の周辺に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段を有し、繰り返し画像形成を行う画像形成装置において、前記有機感光体が前記1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【0019】
6.前記5に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが、少なくとも前記1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体と帯電手段、像露光手段、現像手段の少なくとも1つを一体として有しており、該画像形成装置に出し入れ可能に構成されることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の有機感光体を用いることにより、帯電特性、電位安定性、耐ガス性(活性ガス耐性)、感光体製造時のクラック耐性等が改善され、耐摩耗特性の改善も含めて、感光体の使用環境に対する耐性の改善が顕著にみられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の画像形成装置の機能が組み込まれた概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図3】本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置の構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明の有機感光体は、導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した有機感光体であり、前記電荷輸送層が環状オレフィン樹脂とヒンダードフェノール系化合物を含有することを特徴とする。
【0023】
本願発明の有機感光体は上記の構造を有することにより、本願発明の効果を顕著に達成できる。
【0024】
まず、本発明に用いられる環状オレフィン樹脂について説明する。環状オレフィン樹脂とは、1つ以上のC=C(炭素間の二重結合)を持つ環式炭化水素化合物の重合体をいう。
【0025】
本願発明に係わる環状オレフィン樹脂は、環状オレフィンとそれ以外のモノマーとの共重合重合体であってもよい。
【0026】
環状オレフィン樹脂は、例えば、後記する一般式(1)或いは一般式(2)のような化合物が挙げられるが、これらの化合物は、環状オレフィンを用いて、ラジカル重合や開環メタシス重合等により得ることができる。
【0027】
環状オレフィン樹脂は、その樹脂構造中にσ結合の割合が高いため、誘電率が小さくなり、誘電損失もポリカーボネート等に比し小さいので、該環状オレフィン樹脂を用いた感光体は、帯電立ち上がり特性、電位安定性に優れた特性を得ることができる。
【0028】
本願発明の環状オレフィン樹脂としては、前記一般式(1)又は一般式(2)の繰り返し単位を有する樹脂が好ましい。本願発明においては、これら環状オレフィン樹脂を電荷輸送層のバインダー樹脂として用いる。
【0029】
以下、一般式(1)の環状オレフィン樹脂が有する繰り返し単位の具体例を挙げる。
【0030】
【化3】

【0031】
次に、一般式(2)の環状オレフィン樹脂が有する繰り返し単位の具体例を挙げる。
【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
上記一般式(1)及び一般式(2)において、繰り返し単位のnは、20〜5000の間の整数を表すが、40〜3000の間の整数がより好ましい。尚、該nは、本願発明では、数平均分子量から算出する値とする。
【0035】
又、一般式(1)及び一般式(2)の例示化合物のいくつかは、JSR(株)や日本ゼオン(株)等で製造され、市販されている。
【0036】
上記例示化合物の中でも、置換基としてカルボン酸エステルやアルコキシ基を有する環状オレフィン樹脂はヒンダードフェノール化合物との相互作用が強くなり、このような環状オレフィン樹脂を用いた電荷輸送層は均一性を増大し、耐クラック性が改善される。
【0037】
本願発明に係わる電荷輸送層には、上記環状オレフィン樹脂と共に、ヒンダードフェノール化合物を含有する。ヒンダードフェノール化合物は、環状オレフィン樹脂と電子輸送性化合物の相溶性を改善し、その結果として、誘電率が小さい環状オレフィン樹脂の特性を生かして、高帯電電位を付与でき、且つ電位安定性が良好で、活性ガス耐性、クラック耐性等が改善された感光体を得ることができる。
【0038】
ここでヒンダードフェノールとはフェノール化合物の水酸基に対しオルト位置に分岐アルキル基を有する化合物類及びその誘導体を云う(但し、水酸基がアルコキシに変成されていても良い)。
【0039】
以下に代表的ヒンダードフェノール化合物例を挙げる。
【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
又、本願発明の有機感光体では、前記電荷輸送層の上に、金属酸化物粒子を含有する保護層を設けることが好ましい。
【0046】
特に、重合性化合物で表面処理された金属酸化物粒子と重合性化合物の間での重合反応により形成された保護層が好ましい。即ち、重合性化合物の連鎖重合等で進行する重合反応の過程で、金属酸化物粒子を表面処理している重合性化合物も連鎖重合等の反応進行に加わり、その結果、金属酸化物粒子がその表面処理剤を介して、重合反応により生成した樹脂の中に組み込まれたて形成された保護層が好ましい。
【0047】
重合性化合物で表面処理された金属酸化物粒子としては、数平均一次粒径が約1〜100nmのシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫等の金属酸化物粒子が好ましく、下記のような不飽和基を有するシランカップリング剤で表面処理することで、重合性化合物で表面処理された金属酸化物粒子を得ることができる。
【0048】
表面処理基を有する連鎖重合性化合物として、下記一般式(3)で表される化合物等がある。
【0049】
【化11】

【0050】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアラルキル基、Rは重合性二重結合を有する有機基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基を示し、nは1〜3の整数である。)
これらのシラン化合物と金属酸化物粒子とを反応させることにより重合性化合物で表面処理された金属酸化物粒子を製造することができる。
【0051】
上記のような連鎖重合性化合物で表面処理された金属酸化物粒子と前記の重合性化合物を重合して形成した保護層は、環状オレフィン樹脂の電荷輸送層上に0.5〜3.0μmの薄層の保護層として設置しても、著しく耐摩耗特性や耐傷特性が顕著に改善される。
【0052】
以下に一般式(3)の化合物例を挙げる。
【0053】
S−1 CH=CHSi(CH)(OCH
S−2 CH=CHSi(OCH
S−3 CH=CHSiCl
S−4 CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
S−5 CH=CHCOO(CHSi(OCH
S−6 CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
S−7 CH=CHCOO(CHSi(OCH
S−8 CH=CHCOO(CHSi(OC)(OCH
S−9 CH=CHCOO(CHSiCl
S−10 CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S−11 CH=CHCOO(CHSiCl
S−12 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S−13 CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S−14 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S−15 CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S−16 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S−17 CH=C(CH)COO(CHSiCl
S−18 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S−19 CH=C(CH)COO(CHSiCl
S−20 CH=CHSi(C)(OCH
S−21 CH=C(CH)Si(OCH
S−22 CH=C(CH)Si(OC
S−23 CH=CHSi(OCH
S−24 CH=C(CH)Si(CH)(OCH
S−25 CH=CHSi(CH)Cl
S−26 CH=CHCOOSi(OCH
S−27 CH=CHCOOSi(OC
S−28 CH=C(CH)COOSi(OCH
S−29 CH=C(CH)COOSi(OC
S−30 CH=C(CH)COO(CHSi(OC
一方、重合性化合物としては、下記のような化合物を用いることが好ましい。
【0054】
以下に重合性化合物の例を示す。以下にいうAc基数(アクリロイル基数)又はMc基数(メタクリロイル基数)とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基の数を表す。
【0055】
【化12】

【0056】
【化13】

【0057】
【化14】

【0058】
【化15】

【0059】
【化16】

【0060】
【化17】

【0061】
【化18】

【0062】
但し、上記においてRは下記で示される。
【0063】
【化19】

【0064】
【化20】

【0065】
【化21】

【0066】
【化22】

【0067】
【化23】

【0068】
【化24】

【0069】
【化25】

【0070】
【化26】

【0071】
但し、上記においてR′は下記で示される。
【0072】
【化27】

【0073】
本願発明に係わる重合性化合物を反応させる際には、電子線開裂で反応する方法、ラジカル重合開始剤あるいはカチオン重合性開始剤を添加して、光、熱で反応する方法などが用いられる。重合開始剤は光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれも使用することができる。また、光、熱の両方の開始剤を併用することもできる。
【0074】
これら光硬化性化合物のラジカル重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、中でも、アルキルフェノン系化合物、或いはフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。特に、α−ヒドロキシアセトフェノン構造、或いはアシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物が好ましい。また、カチオン重合を開始させる化合物としては、例えば、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C、PF、AsF、SbF、CFSO塩などのイオン系重合開始剤やスルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を発生するハロゲン化物或いは、鉄アレン錯体等の非イオン系重合開始剤を挙げることができる。特に、非イオン系重合開始剤であるスルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を発生するハロゲン化物が好ましい。
【0075】
上記重合開始剤としては、下記のような化合物が例示される。
【0076】
【化28】

【0077】
【化29】

【0078】
【化30】

【0079】
次に、本願発明の実施に係わる画像形成装置について記載する。
【0080】
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
【0081】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0082】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0083】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0084】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光除電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0085】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0086】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜1000nmの半導体レーザ又は発光ダイオードを像露光光源として用いる。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、400dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0087】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0088】
用いられる光ビームとしては半導体レーザを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0089】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に酸化防止剤を含有するトナーを用いられる現像剤が用いられる。
【0090】
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写紙Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写紙Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写紙Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25、爪分離手段250等によって、転写紙P上に転写され、該転写紙Pも感光体から分離され、その後、転写紙Pは転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送され、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0091】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写紙Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0092】
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0093】
更に、搬送機構178により転写紙Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写紙Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0094】
転写紙Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pを再給紙し、転写紙Pを搬送路40に案内する。
【0095】
再び、上述したように感光体21方向に転写紙Pを搬送し、転写紙Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0096】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0097】
図2は、本願発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0098】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0099】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0100】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
【0101】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0102】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Y(以下、単にクリーニング手段6Y、あるいは、クリーニングブレード6Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
【0103】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0104】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザ光学系などが用いられる。
【0105】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0106】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0107】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0108】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0109】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0110】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0111】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0112】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0113】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0114】
次に図3は本願発明の他の一実施形態を示すカラー画像形成装置(少なくとも有機感光体の周辺に帯電手段、露光手段、複数の現像手段、転写手段、クリーニング手段及び中間転写体を有する複写機あるいはレーザビームプリンタ)の構成断面図である。ベルト状の中間転写体70は中程度の抵抗の弾性体を使用している。
【0115】
1は像形成体として繰り返し使用される回転ドラム型の感光体であり、矢示の反時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0116】
感光体1は回転過程で、帯電手段(帯電工程)2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段(像露光工程)3により画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームによる走査露光光等による画像露光を受けることにより目的のカラー画像のイエロー(Y)の色成分像(色情報)に対応した静電潜像が形成される。
【0117】
次いで、その静電潜像がイエロー(Y)の現像手段:現像工程(イエロー色現像器)4Yにより第1色であるイエロートナーにより現像される。この時第2〜第4の現像手段(マゼンタ色現像器、シアン色現像器、ブラック色現像器)4M、4C、4Bkの各現像器は作動オフになっていて感光体1には作用せず、上記第1色目のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。
【0118】
中間転写体70はローラ79a、79b、79c、79d、79eで張架されて時計方向に感光体1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0119】
感光体1上に形成担持された上記第1色目のイエロートナー画像が、感光体1と中間転写体70とのニップ部を通過する過程で、1次転写ローラ5aから中間転写体70に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体70の外周面に順次中間転写(1次転写)されていく。
【0120】
中間転写体70に対応する第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光体1の表面は、クリーニング装置6aにより清掃される。
【0121】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のクロ(ブラック)トナー画像が順次中間転写体70上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した重ね合わせカラートナー画像が形成される。
【0122】
2次転写ローラ5bで、2次転写対向ローラ79bに対応し平行に軸受させて中間転写体70の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0123】
感光体1から中間転写体70への第1〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための1次転写バイアスはトナーとは逆極性で、バイアス電源から印加される。その印加電圧は、例えば+100V〜+2kVの範囲である。
【0124】
感光体1から中間転写体70への第1〜第3色のトナー画像の1次転写工程において、2次転写ローラ5b及び中間転写体クリーニング手段6bは中間転写体70から離間することも可能である。
【0125】
ベルト状の中間転写体70上に転写された重ね合わせカラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写は、2次転写ローラ5bが中間転写体70のベルトに当接されると共に、対の給紙レジストローラ23から転写紙ガイドを通って、中間転写体70のベルトに2次転写ローラ5bとの当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送される。2次転写バイアスがバイアス電源から2次転写ローラ5bに印加される。この2次転写バイアスにより中間転写体70から第2の画像担持体である転写材Pへ重ね合わせカラートナー画像が転写(2次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着手段24へ導入され加熱定着される。
【0126】
本発明の画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0128】
(感光体1の作製)
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、表面粗さRz=0.8(μm)の導電性支持体を用意した。
【0129】
〈中間層〉
下記組成の中間層塗布液を作製した。
ポリアミド樹脂X1010(ダイセルデグサ株式会社製) 1部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製) 1.1部
エタノール 20部
分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行った。
【0130】
上記塗布液を用いて前記支持体上に、110℃で20分乾燥後の膜厚2μmとなるよう浸漬塗布法で塗布した。
【0131】
〈電荷発生層〉
電荷発生物質:Y−チタニルフタロシアニン(Cu−Kα特性X線によるX線回折のスペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシン顔料) 50部
ポリビニルブチラール樹脂(#3000−K:電気化学工業社製) 10部
メチルエチルケトン 700部
シクロヘキサノン 300部
を混合し、サンドミルを用いて15時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0132】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質:例示化合物のCTM−A 150部
バインダー:例示化合物A−1(nが500のA−1) 300部
ヒンダードフェノール化合物(AO−3) 15部
トルエン/テトラヒドロフラン=1/9体積% 2000部
シリコンオイル(KF−96:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法を用いて、110℃で60分乾燥後膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。
【0133】
〈保護層〉
金属酸化物微粒子(金属酸化物粒子と同一質量のS−4で表面処理された数平均一次粒径5nmの酸化チタン) 100部
重合性化合物(例示化合物Mc−31) 100部
重合開始剤(例示化合物1−6) 15部
ヒンダードフェノール化合物(AO−8) 6部
2−ブチルアルコール 100部
この保護層塗布液を上記電荷輸送層の上に円形量規制型塗布装置を用いて塗布し、保護層を形成した。該保護層を乾燥後、メタルハライドランプを用いて窒素気流下、光源から感光体表面までの距離を100mmに設置し、ランプ出力4kWで紫外線を1分間照射して、乾燥膜厚3.0μmの保護層を形成し、感光体1を作製した。
【0134】
感光体2〜10の作製
感光体1の電荷輸送層、保護層に使用する材料を表1の一覧表のように変更した以外は、同様にして感光体2〜10を作製した。
【0135】
感光体11(保護層のバインダーにポリカーボネートを用いた)
感光体1の作製において、保護層を下記のようにして形成した以外は、感光体1と同様にして感光体11を作製した。
【0136】
〈保護層〉
金属酸化物微粒子(金属酸化物粒子と同一質量のメチルハイドロジェンポリシロキサンで表面処理された数平均一次粒径30nmシリカ) 100部
バインダー(下記構造のポリカーボネート:重量平均分子量2万) 100部
ヒンダードフェノール化合物(AO−8) 6部
イソプロピルアルコール 500部
上記成分をサンドミルを用いて10時間分散して保護層塗布液を作製した。該塗布液を先に電荷輸送層まで作製した感光体上に円形スライドホッパー塗布機を用いて、保護層を塗布した。塗布後、100℃で50分乾燥し、膜厚3μmの保護層を得た。
【0137】
【化31】

【0138】
感光体12(保護層なし)
感光体1の作製において、保護層を除いた他は同様にして感光体12を作製した。
【0139】
感光体13(保護層がなく、電荷輸送層にヒンダードアミン系化合物を用いた)
感光体2の作製において、保護層を除き、電荷輸送層にヒンダードフェノールAO−8の代わりに下記のヒンダードアミン化合物(AO−30)を用いた以外は、感光体2と同様にして感光体13を作製した。
【0140】
【化32】

【0141】
感光体14(電荷輸送層のヒンダードフェノール系化合物を除いた)
感光体1の作製において、電荷輸送層のヒンダードフェノール系化合物(AO−8)を除いた以外は、感光体1と同様にして感光体14を作製した。
【0142】
感光体15(電荷輸送層のバインダーをTPXに変更)
感光体1の作製において、電荷輸送層のバインダーを下記構造の樹脂に変更した以外は、感光体1と同様にして感光体15を作製した。
【0143】
【化33】

【0144】
感光体16(電荷輸送層のバインダーをポリカーボネートに変更)
感光体1の作製において、電荷輸送層のバインダーを前記感光体11の保護層で用いたポリカーボネート樹脂に変更した以外は、感光体1と同様にして感光体16を作製した。
【0145】
【表1】

【0146】
電荷輸送性物質のCTM−A〜CTM−Dは下記構造の化合物を示す。
【0147】
【化34】

【0148】
〔評価1〕
〈クラック試験〉
感光体11〜13を除く感光体1〜16において、保護層を塗布してから紫外線照射をするまでの時間を1時間、3時間に分けて硬化し、ドラム表面のクラック発生有無を目視により判定した。また、感光体11は、保護層を塗布してから熱乾燥するまでの時間、感光体12、13は電荷輸送層を塗布してから熱乾燥するまでの時間として、ドラム表面のクラック発生有無を判定した。
◎:3時間でもクラック発生なし(生産上全く問題なし)
○:1時間ではクラック発生ないが、3.0時間ではクラック発生(生産許容内)
×:1時間でクラック発生(生産上問題)
〔評価2〕
〈帯電特性〉
前記した感光体1〜16について、アルミニウム支持体をアルミニウム蒸着フィルムに置換えた以外は同様の感光体フィルム1〜16を作製した。
評価条件
EPA8300((株)川口電気製作所)にて帰還電流Ir=−100μA、スタティック方式(STAT6)に設定した時の表面電位を測定した。
◎:表面電位が|1200|Vより高い負帯電(良好)
○:表面電位が|1200〜1100|Vの負帯電(実用上問題なし)
×:表面電位が|1100|Vより低い負帯電(実用上問題あり)
〔評価3〕
感光体1〜16を基本的に、図2の構成を有する市販のフルカラー複合機bizhub PRO C6500改造機(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製;600dpi、780nmの半導体レーザの露光光を使用、反転現像で評価した。尚、上記フルカラー複合機は画像形成ユニットを4組有しているので、それぞれの画像形成ユニットの感光体を同一種類の感光体(例えば、感光体1の場合は、4本の感光体1を用意して)で統一して、評価を行った。各評価は、30℃80%RHの条件で、YMCBk各色印字率2.5%のA4画像を中性紙のA4紙に10万枚の画出し耐刷試験を行い、下記の評価項目を評価した。
【0149】
尚、上記耐刷試験で、感光体への帯電条件は−700Vに設定した。
【0150】
〈電位安定性〉
上記耐刷試験において、初期と10万枚後の露光部電位、未露光部電位を現像手段の位置に電位計を設置して測定した。
【0151】
(露光部電位)
◎:べたの露光部電位が初期と10万枚後で30V未満(良好)
○:べたの露光部電位が初期と10万枚後で30〜80V(実用上問題なし)
×:べたの露光部電位が初期と10万枚後で80Vより大(実用上問題あり)
(未露光部電位)
◎:べたの未露光部電位が初期と10万枚後で50V未満(良好)
○:べたの未露光部電位が初期と10万枚後で50〜100V(実用上問題なし)
×:べたの露光部電位が初期と10万枚後で100Vより大(実用上問題あり)
〈耐ガス性〉
上記デジタル複写機bizhub PRO C6500改造機の耐刷試験を高温高湿環境下(HH:33℃、80RH%)で10万枚行い、5万枚、10万枚後のそれぞれにおいて、3時間放置後、オリジナル画像で0.4の濃度のハーフトーン画像をコピーし、コピー画像に活性ガスの感光体上への付着により発生する白帯状の画像の発生を目視により判定した。
【0152】
◎:白帯状の発生が全くみられない(良好)
○:白帯状の発生がぼんやりとみられる(実用上問題なし)
×:白帯状の発生が明確にみられる(実用上問題あり)
評価結果を下記表2にまとめた。
【0153】
【表2】

【0154】
表2から明らかなように、本願発明内の感光体1〜12は、各評価項目において、実用性あり以上の結果が得られているが、感光体の保護層が本願発明外の組み合わせNo.13、14、15、16では何れかの評価項目において、実用性に問題がある結果となっている。
【符号の説明】
【0155】
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した有機感光体において、前記電荷輸送層が環状オレフィン樹脂と、ヒンダードフェノール系化合物を含有することを特徴とする有機感光体。
【請求項2】
前記環状オレフィン樹脂が下記一般式(1)又は一般式(2)の繰り返し単位を有する樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【化1】

(一般式(1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基又は置換又は無置換のカルボニル基を示す。R11及びR12は互いに結合して環を形成してもよい。nは20〜5000の整数を表し、*は繰り返し単位の接合部である。)
【化2】

(一般式(2)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基を示し、Rは水素又は−COORを示し、Rはアルキル基、シリル基を表す。nは20〜5000の整数を表し、*は繰り返し単位の接合部である。)
【請求項3】
前記有機感光体は、前記電荷輸送層上に保護層を有し、該保護層中に金属酸化物粒子を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機感光体。
【請求項4】
前記保護層が重合性化合物で表面処理された金属酸化物粒子と重合性化合物の間での重合反応により形成された保護層であることを特徴とする請求項3に記載の有機感光体。
【請求項5】
有機感光体の周辺に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段を有し、繰り返し画像形成を行う画像形成装置において、前記有機感光体が請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが、少なくとも請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体と帯電手段、像露光手段、現像手段の少なくとも1つを一体として有しており、該画像形成装置に出し入れ可能に構成されることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−13749(P2012−13749A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147293(P2010−147293)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】