説明

有機発光素子の製造方法およびこれによって製造された有機発光素子

【課題】有機発光素子の製造方法、これによって製造された有機発光素子、および前記有機発光素子を含む電子装置を提供する。
【解決手段】本発明の有機発光素子の製造方法は、(a)下部電極上に絶縁層を形成するステップと、(b)前記絶縁層をエッチングし、前記絶縁層の上面から前記下部電極に至る開口部を形成するステップであり、最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成されるように開口部を形成するステップと、(c)前記開口部内部の前記下部電極上部面および前記オーバーハング構造を除いた前記絶縁層の表面に導電層を形成するステップと、(d)前記開口部内部において、前記下部電極上部面に形成された前記導電層上に有機物層を形成するステップと、(e)前記絶縁層の上部に位置した前記導電層の上部および前記有機物層上部に上部電極を形成するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電層を含む有機発光素子において、導電層の表面方向に沿って漏洩電流が流れることを防ぐことができるオーバーハング(overhang)構造を有する有機発光素子の製造方法、これによって製造された有機発光素子、および前記有機発光素子を含む電子装置に関する。
【0002】
本出願は、2006年7月25日にそれぞれ韓国特許庁に提出された韓国特許第10−2006−0069978号公報および第10−2006−0069979号公報の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
有機発光現象を用いる有機発光素子は、低電圧で高輝度の実現が可能であるという長所のために各種照明装置にその適用が活発であり、さらに低電圧駆動、軽量薄型、広視野角、そして高速応答などの長所によってディスプレイ装置にその適用が活発である。
【0004】
有機発光現象とは、有機物質を用いて電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象を言う。すなわち、陽極と陰極の間に有機物層を位置させたとき、2つの電極の間に電圧をかけるようになれば、陽極では正孔が、陰極では電子が有機物層に注入されるようになる。この注入された正孔と電子が出会ったときに励起子(exciton)が形成され、この励起子が再び基底状態に落ちたときに光が出るようになる。
【0005】
従来の有機発光素子は、図1に示すように、基板(図示せず)と、基板(図示せず)上に形成された下部電極200と、下部電極200上に形成され、実質的な発光面積である開口部301が形成された絶縁層300と、開口部301内部から下部電極200の上部面と絶縁層300の全領域に渡って形成された導電層500と、開口部301内部に位置した導電層500の上部面に形成された有機物層(図示せず)と、絶縁層300の上部面に形成された導電層500の上部面と有機物層(図示せず)の上部面に形成された上部電極(図示せず)とを含む。
【0006】
ここで、開口部301の1つが1つの発光ピクセルを形成するようになり、下部電極200上には同じ形態で多数の発光ピクセルが形成されている。
【0007】
しかしながら、従来の有機発光素子の場合は、有機発光素子の駆動のために電源を印加すれば、図1に示すように矢印方向に漏洩電流が流れるようになる。すなわち、導電層500の表面方向に沿って漏洩電流が流れるようになり、この漏洩電流が隣接する他の発光ピクセルに流入し、任意に他の発光ピクセルを点灯させるようになるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許第10−2002−3025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、導電層を含む有機発光素子において、導電層の表面方向に沿って漏洩電流が流れることを防ぐことができるオーバーハング(overhang)構造を有する有機発光素子の製造方法、これによって製造された有機発光素子、および前記有機発光素子を含む電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の1つの実施状態は、(a)下部電極上に絶縁層を形成するステップと、(b)前記絶縁層をエッチングし、前記絶縁層の上面から前記下部電極に至る開口部を形成するステップであり、最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成されるように開口部を形成するステップと、(c)前記開口部内部の前記下部電極上部面および前記オーバーハング構造を除いた前記絶縁層の表面に導電層を形成するステップと(d)前記開口部内部において、前記下部電極上部面に形成された前記導電層上に有機物層を形成するステップと、(e)前記絶縁層の上部に位置した前記導電層の上部および前記有機物層上部に上部電極を形成するステップとを含むことを特徴とする有機発光素子の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の他の1つの実施状態は、下部電極と、前記下部電極上に形成され、前記下部電極の板面に対して垂直な方向に形成された開口部を有する絶縁層であって、前記開口部の最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成された絶縁層と、前記開口部内部の前記下部電極上部面および前記オーバーハング構造を除いた前記絶縁層の表面に形成された導電層と、前記開口部内部において、前記下部電極上部面に形成された前記導電層上に形成された有機物層と、前記絶縁層の上部に位置した前記導電層の上部および前記有機物層上部に形成された上部電極とを含むことを特徴とする有機発光素子を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の1つの実施状態は、前記有機発光素子を含む電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来導電層表面方向に流れる漏洩電流の移動経路を断絶させることによって、漏洩電流が導電層表面方向に沿って隣接する他の発光ピクセルに流入して任意に他の発光ピクセルを点灯させることを防ぐことができるようになる。
また、オーバーハング構造を形成するためのエッチング工程が迅速かつ単純であり、オーバーハング構造の大きさを容易に制御できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の有機発光素子の断面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図4】本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図5】本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図6】本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図7】本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図8】本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図9】本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図10】本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図11】本発明の第2実施例に係る有機発光素子の断面図である。
【図12】第2実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図13】第2実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図14】第2実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図15】第2実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図16】第2実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図17】第2実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図18】第2実施例に係る有機発光素子の製造工程図である。
【図19】図14に対応し、図14とドライエッチング領域を異にした例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の1つの実施状態として、有機発光素子の製造方法は、本発明の1つの(a)下部電極上に絶縁層を形成するステップと、(b)前記絶縁層をエッチングし、前記絶縁層の上面から前記下部電極に至る開口部を形成するステップであり、最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成されるように開口部を形成するステップと、(c)前記開口部内部の前記下部電極上部面および前記オーバーハング構造を除いた前記絶縁層の表面に導電層を形成するステップと、(d)前記開口部内部において、前記下部電極上部面に形成された前記導電層上に有機物層を形成するステップと、(e)前記絶縁層の上部に位置した前記導電層の上部および前記有機物層上部に上部電極を形成するステップとを含む。
【0016】
以下では、本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造方法について説明する。
【0017】
本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造方法において、前記絶縁層はシリコン絶縁層であり得る。これにより、本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造方法において、前記(b)ステップは、前記シリコン絶縁層をドライエッチングし、前記シリコン絶縁層の上面から前記下部電極に至る開口部を形成するステップであり、最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング構造が形成されるように開口部を形成するようになる。
【0018】
ここで、前記(a)ステップの前に、基板上に下部電極を形成するステップをさらに含むことができ、下部電極そのものが基板の役割を兼ねることができる。
【0019】
前記基板上に前記下部電極を形成するステップは、当技術分野において周知の方法で実行することができる。例えば、(i)基板上に下部電極のための薄膜を蒸着するステップと、(ii)前記薄膜をパターニングして前記基板上に下部電極を形成するステップとのように実行することができる。
【0020】
前記(i)ステップで用いられる基板は、透明なプラスチックで形成されることもできるし、金、銀、およびアルミニウムとこれらの合金のような金属で形成されることもできる。
【0021】
下部電極にパターニングされる薄膜は、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、および鉛のような金属またはこれらの合金で形成されることもできるし、インジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium Zinc Oxide)、および亜鉛酸化物(ZnO)などのような透明導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide)で形成されることもできる。本発明が逆(inverted)構造の有機発光素子に適用される場合、下部電極は上述した金属で形成される。
【0022】
下部電極のための薄膜形成は、スパッタリング法、熱蒸着(thermal evaporation)法、原子層蒸着(Atomic layer deposition)法、化学蒸着(Chemical vapordeposition)、法および電子ビーム蒸着(e−beam evaporation)法など当技術分野において周知の電極形成方法を用いることができる。
【0023】
前記(ii)ステップでは、レジストパターンをマスクにして前記薄膜をウエットエッチングまたはドライエッチングしてパターニングすることによって、下部電極を形成することができる。ここで、用いられるレジストパターンは、リソグラフィ(lithography)法によって形成されることができる。
【0024】
また、基板上に下部電極を形成するステップと前記(a)ステップの間、すなわち前記下部電極上にシリコン絶縁層を形成する前に、前記下部電極上に酸化膜を形成するステップをさらに含むことができる。
【0025】
酸化膜は、前記(b)ステップでシリコン絶縁層をドライエッチングするときに下部電極を保護する役割と、シリコン絶縁層をドライエッチングするときに発生する後述するノッチ(notch)現象を増大させる役割をする。
【0026】
酸化膜は、酸化シリコン(SiO)で形成することができる。また、前記酸化膜としては、絶縁膜の材料として用いられるTiO、ZrO、HfO、Taなどの遷移金属酸化物を用いることができる。
【0027】
ここで、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、熱蒸着(thermal evaporation)法、原子層蒸着(Atomic layer deposition)法、化学蒸着(Chemical vapor deposition)法、および電子ビーム蒸着(e−beame vaporation)法など当技術分野において周知の方法を用いて前記酸化膜を形成することができる。
【0028】
前記(a)ステップでは、下部電極上に前記シリコン絶縁層を形成する。
【0029】
前記シリコン絶縁層は、発光ピクセル(RGB)がそれぞれ個別に動作するように発光ピクセル(RGB)それぞれを電気的に断絶させる役割をする。
【0030】
前記シリコン絶縁層は、非晶質シリコン(Amorphous Silicon)または多結晶シリコン(Polycrystalline Silicon)で形成することができる。
【0031】
ここで、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、熱蒸着(thermal evaporation)法、原子層蒸着(Atomic layer deposition)法、化学蒸着(Chemical vapor deposition)法、および電子ビーム蒸着(e−beame vaporation)法など当技術分野において周知の方法を用いて前記シリコン絶縁層を形成することができる。
【0032】
前記(b)ステップでは、前記シリコン絶縁層をドライエッチングし、前記シリコン絶縁層の上面から前記下部電極に至る開口部(発光面積)を形成する。
【0033】
このような開口部を形成する方法の一例としては、前記シリコン絶縁層の上部面のうちで前記開口部を形成するためのドライエッチング領域を除いた領域にフォトレジストをパターニングし、前記ドライエッチング領域をドライエッチングした後、前記フォトレジストを除去して前記開口部を形成することができる。
【0034】
前記シリコン絶縁層をドライエッチングするようになれば、前記下部電極と隣接した前記シリコン絶縁層の下部領域に最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成されながら開口部が形成される。
【0035】
前記シリコン絶縁層をドライエッチングするときのエッチングガスとしては、Cl、BCl、HBr、NF、CF、およびSFのうちから選択された1種以上のガスとHe、O、およびHのうちから選択された1種以上のガスを混合した混合ガス、またはCl、BCl、HBr、NF、CF、およびSFのうちから選択された1種以上のガスを用いることができる。前記シリコン絶縁層をドライエッチングするときにはClガスを用いることが好ましく、Clガス使用時のエッチング条件は、圧力500mTorr、パワー 300W、Clの流量100sccmであることが好ましい。
【0036】
前記(b)ステップで開口部を形成するためにシリコン絶縁層をエッチングする場合、ノッチ(notch)現象が発生するようになり、このノッチ現象を用いて前記オーバーハング構造を誘導できるようになる。
【0037】
ノッチ現象は、ドライエッチング工程、例えばプラズマドライエッチング工程の間に発生した陽イオンが下部電極上に蓄積(charging)し、蓄積された陽イオンによってプラズマは直進性を失って側面に曲がるようになることにより、シリコン絶縁層の下部領域にオーバーハング構造を形成するようになる。
【0038】
一方、下部電極とシリコン絶縁層の間に、シリコン絶縁層をドライエッチングするときに下部電極を保護する役割と、シリコン絶縁層をドライエッチングするときに発生する後述するノッチ(notch)現象を増大する役割をする酸化膜が形成されている場合、プラズマドライエッチング工程の間に発生した陽イオンが下部電極上の酸化膜に蓄積(charging)し、蓄積された陽イオンによってプラズマは直進性を失って側面に曲がるようになることにより、シリコン絶縁層の下部領域にオーバーハング構造を形成するようになる(図5参照)。
【0039】
前記(b)ステップは、このように下部電極とシリコン絶縁層の間に酸化膜が形成された場合、前記シリコン絶縁層をドライエッチングした後に、前記酸化膜をドライエッチングするステップをさらに含むことができる。
【0040】
前記酸化膜をドライエッチングするとき、CF、CHF、NF、SF、BCl、およびHBrのうちから選択された1種以上のガスとHe、O、およびHのうちから選択された1種以上のガスを混合した混合ガス、またはCF、CHF、NF、SF、BCl、およびHBrのうちから選択された1種以上のガスを用いることができる。
【0041】
前記酸化膜をドライエッチングするときにはCFを用いることが好ましく、CFガス使用の時のエッチング条件は、圧力50mTorr、パワー 1200W、CHFの流量70sccm、Oの流量50sccmであることが好ましい。前記酸化膜が遷移金属酸化物である場合、エッチングガスとしてBCl、HBrを用いることが好ましく、BCl使用時の条件は、圧力500mTorr、パワー 300W、BClの流量100sccm、He80sccmであることが好ましい。
【0042】
また、前記酸化膜をドライエッチングするステップ後、開口部を形成するためにシリコン絶縁層上部に形成した前記フォトレジストを除去することもできる。
【0043】
前記(c)ステップは、前記開口部内部の前記下部電極上部と前記シリコン絶縁層に導電層を形成する。
【0044】
導電層は、下部電極の表面に酸化膜が形成されて電子の移動が阻害されることを防ごうと導電性物質を蒸着して形成する。
【0045】
ここで、導電性物質としては、金属または導電性が優れた有機物を用いることが好ましい。
【0046】
例えば、下部電極がアルミニウムである場合、下部および上部絶縁層エッチング後または大気中の露出によって自然酸化膜が形成されるため電子注入が妨害され、動作電圧が上昇して発光効率が急激に低下する現象が発生する場合がある。この問題を改善するために、金属または導電性が優れた有機物を下部電極上を含んで上部絶縁層上まで全領域に渡って蒸着する。
【0047】
蒸着可能な金属は、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、および鉛のような金属またはこれらの合金を例示することができる。
【0048】
導電性が優れた有機物としては、通常、電子注入層(EIL)、正孔注入層(HIL)を形成するために用いられる物質が用いられることもできるし、電子輸送層(ETL)と電子注入層または正孔輸送層(HTL)と正孔注入層との複合物を用いることもできる。
【0049】
逆(inverted)構造の有機発光体の製作時に電子注入層として用いられるアルカリ金属、アルカリ土金属、またはこれらの混合物で導電層を形成することもできるし、正構造の製作時に正孔注入層として用いられる下記の化学式1(韓国特許出願第10−2002−3025)の化合物(ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン、HAT)で導電層を形成することもできる。
【0050】
(化学式1)
【化1】

【0051】
また、電子注入層として用いられるLiF、CsF、CaF、MgFなどのアルカリ金属、土金属フッ化物類および金属で導電層を形成することもできるし、正孔注入層として用いられるCuPc(Copper phthalocyanine)で導電層を形成することもできる。
【0052】
前記(d)ステップでは、前記開口部内部において、前記下部電極上部に位置した導電層上に有機物層を形成する。
【0053】
例えば、蒸着マスクを用いて真空蒸着法で前記開口部の内部に有機物層を形成することもできるし、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、または熱転写法などを用いることもできる。
【0054】
このような、有機物層は単層で構成されることもできるが、2層以上、例えば正孔注入層、正孔伝達層、発光層、および電子伝達層で構成されることもできる。
【0055】
前記(e)ステップでは、前記シリコン絶縁層上部に位置した導電層上部と前記有機物層上部に上部電極を形成する。
【0056】
例えば、スパッタリング法、熱蒸着(thermal evaporation)法、原子層蒸着(Atomic layer deposition)法、化学蒸着(Chemical vapor deposition)法、および電子ビーム蒸着(e−beame vaporation)法など当技術分野において周知の方法を用いて前記上部電極を形成することができる。
【0057】
ここで、上部電極は、インジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium Zinc Oxide)、および亜鉛酸化物(ZnO)などのような透明導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide)で形成されることもできるし、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、および鉛のような金属またはこれらの合金で形成されることもできる。本発明が逆(inverted)構造の有機発光素子に適用される場合、上部電極は透明なインジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)で形成される。
【0058】
このように、本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造方法によれば、シリコン絶縁層をドライエッチングするときに発生するノッチ現象を用い、下部電極と隣接した前記シリコン絶縁層の下部領域に前記開口部の最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成されることにより、導電層の表面方向に沿って流れる漏洩電流の移動経路(図1の矢印参照)を断絶させることができ、漏洩電流が隣接する他の発光ピクセルに流入して任意に他の発光ピクセルを点灯させることを防ぐことができるようになる。また、オーバーハング構造を形成するためのエッチング工程が迅速かつ単純であり、オーバーハング構造の大きさを容易に制御できるようになる。
【0059】
一方、本発明の他の1つの実施状態として、有機発光素子は、下部電極と、前記下部電極上に形成され、前記下部電極の板面に対して垂直な方向に形成された開口部を有する絶縁層であり、前記開口部の最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成された絶縁層と、前記開口部内部の前記下部電極上部面および前記オーバーハング構造を除いた前記絶縁層の表面に形成された導電層と、前記開口部内部において、前記下部電極上部面に形成された前記導電層上に形成された有機物層と、前記絶縁層の上部に位置した前記導電層の上部および前記有機物層上部に形成された上部電極とを含む。
【0060】
ここで、本発明の第1実施例に係る有機発光素子は、下部電極と、前記下部電極上に形成され、前記下部電極の板面に対して垂直な方向に形成された開口部を有するシリコン絶縁層であり、前記開口部の最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成されたシリコン絶縁層と、前記開口部内部の前記下部電極上部と前記シリコン絶縁層に形成された導電層と、前記開口部内部で前記下部電極上部に位置した導電層上に形成された有機物層と、前記シリコン絶縁層の上部に位置した導電層上部と前記有機物層上部に形成された上部電極とを含む。
【0061】
一方、本発明のさらに他の1つの実施状態として、電子装置は、本発明に係る有機発光素子を含むことができる。前記電子装置は、例えば各種ディスプレイ装置であり得るが、これに限定されるものではない。
【0062】
以下では、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施例に係る有機発光素子およびこの製造方法について詳しく説明する。
【0063】
本発明の第1実施例に係る有機発光素子は、図7および図10に示すように、基板(図示せず)と、基板上に形成された下部電極20と、下部電極20上に形成されたシリコン絶縁層40と、シリコン絶縁層40の上部面から下部電極20に至る開口部32a、32bと、開口部32a、32b内部の下部電極20上部とシリコン絶縁層40に形成された導電層50a、50bと、開口部32a、32b内部で下部電極20上部に形成された導電層50a上に形成された有機物層60と、導電層50b上部と有機物層60上部に形成された上部電極70とを含む。また、下部電極20とシリコン絶縁層40の間に形成された酸化膜30をさらに含むことができる。
【0064】
下部電極20は、金属で形成された陰極であり、上部電極70は、透明なインジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)で形成された陽極である。
【0065】
導電層50a、50bは、開口部32a、32bの内部で下部電極20上に形成された第1導電層50aと、シリコン絶縁層40の上部面とシリコン絶縁層40の開口部32a、32bの上部領域32a周囲面上に形成された第2導電層50bとを含む。
【0066】
有機物層60は、開口部32a、32b内で第1導電層50a上に形成されており、図10に具体的に示してはいないが、正孔注入層、正孔伝達層、発光層、および電子伝達層で構成されることができる。
【0067】
シリコン絶縁層40と酸化膜30には、シリコン絶縁層40から酸化膜30を経て下部電極20に至る開口部32a、32bが形成されている。
【0068】
酸化膜30と隣接したシリコン絶縁層40の下部領域には、開口部32a、32bの最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造31が形成されている。このオーバーハング構造31によって、開口部32a、32bの上部領域32a周囲よりも下部領域32bの周囲が大きい形態を帯びるようになる。
【0069】
本発明の第1実施例に係る有機発光素子の製造方法は、図2〜図10に示すように、(a)下部電極20上にシリコン絶縁層40を形成するステップと、(b)シリコン絶縁層40をドライエッチングし、シリコン絶縁層40の上面から下部電極20に至る開口部32a、32bを形成するステップであり、最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造31が形成されるように開口部32a、32bを形成するステップと、(c)開口部32a、32b内部の下部電極20上部とシリコン絶縁層40に導電層50a、50bを形成するステップと、(d)開口部32a、32b内部で下部電極20上部に形成された第1導電層50a上に有機物層60を形成するステップと、(e)第2導電層50b上部と有機物層60上部に上部電極70を形成するステップとを含む。
【0070】
また、前記(a)ステップの前に、下部電極20上に酸化膜30を形成するステップと、前記(b)ステップでシリコン絶縁層40をドライエッチングした後に、酸化膜30をドライエッチングするステップをさらに含むことができる。
【0071】
図2に示すように、下部電極20上に酸化シリコン(SiO)で酸化膜30を形成するようになる。
【0072】
(a)ステップでは、図3に示すように、酸化膜30上に非晶質シリコンでシリコン絶縁層40を形成する。
【0073】
図4に示すように、シリコン絶縁層40の上部面のうちで前記開口部32a、32bを形成するためのドライエッチング領域を除いた領域にフォトレジスト80をパターニングする。
【0074】
(b)ステップでは、フォトレジスト80をマスクにしてシリコン絶縁層40をClガスでドライエッチングするようになれば、図5に示すように、シリコン絶縁層40の下部領域にはオーバーハング構造31が形成される。
【0075】
図6に示すように、次に酸化膜30をCFガスでドライエッチングした後、フォトレジスト80を除去するようになれば、図7に示すように、シリコン絶縁層40から酸化膜30を経て下部電極20に至る開口部32a、32bが形成される。
【0076】
(c)ステップでは、導電層50a、50bを形成するために、図7に示す状態で上部から金属材質または導電性を有する有機物質を蒸着するようになれば、図8に示すように、開口部32a、32b内部で下部電極20上部面、シリコン絶縁層40の上部面、およびシリコン絶縁層40のうちで開口部32a、32bの上部領域32a周囲面にのみ導電層50a、50bが形成される。
【0077】
シリコン絶縁層40にオーバーハング構造31が形成されていることにより、開口部32a、32b内部から下部電極20上部面に形成された第1導電層50aと開口部32a、32bの上部領域32aの周囲面を含んだシリコン絶縁層40の上部面に形成された第2導電層50bが断絶されるように形成される。
【0078】
(d)ステップでは、図9に示すように、開口部32a、32b内部で下部電極20上部に形成された第1導電層50a上に有機物層60を形成する。
【0079】
(e)ステップでは、図10に示すように、第2導電層50b上部と有機物層60上部に上部電極70を形成する。
【0080】
このように、上述した製造方法によれば、下部電極20上に配置されるシリコン絶縁層40をドライエッチングするときに発生するノッチ現象を用いてオーバーハング(overhang)構造(31)を形成することができるため、従来導電層500の表面方向に流れる漏洩電流の移動経路(図1の矢印参照)を断絶できることにより、漏洩電流が導電層50a、50bの表面方向に沿って隣接する他の発光ピクセルに流入して任意に他の発光ピクセルを点灯させることを防ぐことができるようになる。
【0081】
また、オーバーハング構造を形成するためのエッチング工程が迅速かつ単純であり、オーバーハング構造の大きさを容易に制御できるようになる。
【0082】
以下では、本発明の第2実施例に係る有機発光素子の製造方法について説明する。
【0083】
本発明の第2実施例に係る有機発光素子の製造方法において、前記絶縁層は、前記下部電極上に形成された下部絶縁層と、前記下部絶縁層上に形成されて前記下部絶縁層よりもエッチング速度が遅い上部絶縁層とを含むことができる。
【0084】
これにより、本発明の第2実施例に係る有機発光素子の製造方法は、(a)下部電極上に前記下部絶縁層を形成し、前記下部絶縁層上に前記下部絶縁層よりもエッチング速度が遅い前記上部絶縁層を形成するステップと、(b)前記上部絶縁層と前記下部絶縁層をエッチングし、前記上部絶縁層から前記下部絶縁層を経て前記下部電極に至る開口部を形成するステップであり、前記開口部のうちで前記上部絶縁層に形成された上部開口部の周囲よりも前記下部絶縁層に形成された下部開口部の周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成されるように前記開口部を形成するステップと、(c)前記開口部内部の前記下部電極上部面と前記上部絶縁層に導電層を形成するステップと、(d)前記開口部内部で前記下部電極上部に形成された導電層上に有機物層を形成するステップと、(e)前記上部絶縁層上部に形成された導電層上部と前記有機物層上部に上部電極を形成するステップとを含む。
【0085】
ここで、前記(a)ステップの前に、基板上に下部電極を形成するステップをさらに含むことができ、このステップの具体的な内容は、本発明の第1実施例で説明したとおりである。
【0086】
前記(a)ステップでは、下部電極上に下部絶縁層を形成する。
【0087】
下部電極の電子注入を容易にするために金属または導電性を有する有機物を用いて前記(c)ステップで導電層を形成するとき、下部絶縁層は、導電層の表面方向に沿って流れる漏洩電流を遮断させる役割をする。
【0088】
下部絶縁層は、上部絶縁層よりもエッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が速い酸化シリコン(SiO)で形成することが好ましい。この他にも、SiON、非晶質Alを用いて下部絶縁層を形成することができる。
【0089】
ここで、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、熱蒸着(thermal evaporation)法、原子層蒸着(Atomic layer deposition)法、化学蒸着(Chemical vapor deposition)法、および電子ビーム蒸着(e−beame vaporation)法など当技術分野において周知の方法を用いて前記下部絶縁層を形成することができる。
【0090】
前記(a)ステップでは、前記下部絶縁層上に上部絶縁層を形成する。
【0091】
上述した下部絶縁層および上部絶縁層は、発光ピクセル(RGB)がそれぞれ個別に動作するように発光ピクセル(RGB)それぞれを電気的に断絶させる役割をする。
【0092】
上部絶縁層は、下部絶縁層よりもエッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が低下するSiで形成されることが好ましい。
【0093】
ここで、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、熱蒸着(thermal evaporation)法、原子層蒸着(Atomic layer deposition)法、化学蒸着(Chemical vapor deposition)法、および電子ビーム蒸着(e−beame vaporation)法など当技術分野において周知の方法を用いて前記上部絶縁層を形成することができる。
【0094】
前記(b)ステップでは、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層をエッチングし、前記上部絶縁層から前記下部絶縁層を経て前記下部電極に至る開口部を形成する。
【0095】
前記(b)ステップでは、エッチングによって前記上部絶縁層から前記下部絶縁層を経て前記下部電極に至る開口部(発光面積)を形成するようになるが、このとき、前記開口部のうちで前記上部絶縁層に形成された上部開口部の周囲よりも前記下部絶縁層に形成された下部開口部の周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成され、導電層の表面方向に漏洩電流が流れることを防ぐ。
【0096】
具体的に説明すれば、前記上部絶縁層をまずドライエッチングした後、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層がエッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が互いに異なることを利用して前記下部絶縁層をウエットエッチングするようになる。
【0097】
または、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層をまずドライエッチングした後、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層がエッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が互いに異なることを利用して前記下部絶縁層をウエットエッチングすることもできる。
【0098】
上述したドライエッチングは、等方性エッチング方法であり、上部絶縁層をエッチングガスでエッチングすることができる。
【0099】
例えば、上部絶縁層上にリソグラフィ(lithography)法によって形成されたレジストパターンをマスクにしてCFにOを混合したエッチングガスでエッチングすることができる。
【0100】
ここで、ドライエッチング条件として、圧力5mTorr、ICP パワー 400W、bias パワー 100W、CFの流量45sccm(standard cubic centimeter per minutes)、Oの流量5sccmであることが好ましい。
【0101】
また、エッチングガスとしては、CHFガス、Oガス、およびCFガスが混合した混合ガス、またはOガス、Hガス、およびHeガスのうちから選択された1つ以上のガスとCFガスの混合ガス、またはCFガス、CHFガス、Cガス、Cガス、SFガス、およびNFガスのうちから選択された1種以上のガスを用いることができる。例えば、混合ガスとしては、CF+H、およびCF+Heなどを用いることもできる。
【0102】
上述したウエットエッチング方法は、異方性エッチング方法であり、前記下部絶縁層が前記上部絶縁層よりもエッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が速いことを利用してエッチング溶液でエッチングするようになれば、前記上部絶縁層に形成された上部開口部の周囲よりも前記下部絶縁層に形成された下部開口部の周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成される。
【0103】
ここで、エッチング溶液としては、フッ酸(HF)、BOE(buffered oxide etchant)、およびBHF(Buffered HF solution)などを用いることができる。
【0104】
このように形成されたオーバーハング構造は、前記下部絶縁層のエッチングされた面の形態として湾曲面を含むことが好ましい。
【0105】
このとき、下部絶縁層の高さは20〜50nmであることが好ましく、湾曲面の両頂点を直線で連結した長さをオーバーハング構造の深さとしたとき、オーバーハング構造の深さは20〜50nmであることが好ましい。また、オーバーハング構造の湾曲面は、基板の上部面に対して30ないし45度の傾斜角度を有するように形成されることが好ましい。
【0106】
一方、上述したように、オーバーハング構造を形成するためにドライエッチングした後にウエットエッチングをすることもできるが、2度ともウエットエッチングをすることもできる。例えば、上部絶縁層はリン酸(HPO)でウエットエッチングし、下部絶縁層はフッ酸(HF)でウエットエッチングすることができる。
【0107】
前記(c)ステップでは、前記開口部内部の前記下部電極上部面と前記上部絶縁層に導電層を形成する。このステップの具体的な内容は、本発明の第1実施例で説明したとおりである。
【0108】
前記(d)ステップでは、前記開口部内部から前記下部電極上部に形成された導電層上に有機物層を形成する。このステップの具体的な内容は、本発明の第1実施例で説明したとおりである。
【0109】
前記(e)ステップでは、前記上部絶縁層上部に形成された導電層上部と前記有機物層上部に上部電極を形成する。このステップの具体的な内容は、本発明の第1実施例で説明したとおりである。
【0110】
このように、本発明の第2実施例に係る有機発光素子の製造方法によれば、上部および下部絶縁層から下部電極に至る開口部のうち、上部絶縁層に形成された上部開口部の周囲よりも前記下部絶縁層に形成された下部開口部の周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成されることにより、導電層の表面方向に沿って流れる漏洩電流の移動経路(図1の矢印参照)を断絶させることができ、漏洩電流が隣接する他の発光ピクセルに流入して任意に他の発光ピクセルを点灯させることを防ぐことができるようになる。
【0111】
本発明の第2実施例に係る有機発光素子は、下部電極と、前記下部電極上に形成され、下部開口部が形成された下部絶縁層と、前記下部絶縁層上に形成され、前記下部開口部と連通して前記下部開口部の周囲もより小さい周囲を有する上部開口部を有して前記下部絶縁層と共にオーバーハング(overhang)構造を形成する上部絶縁層と、前記下部開口部内部の前記下部電極上部面と前記上部絶縁層に形成された導電層と、前記下部開口部内部から前記下部電極上部に形成された導電層上に形成された有機物層と、前記上部絶縁層上部に形成された導電層上部と前記有機物層上部に形成された上部電極とを含む。
【0112】
以下では、添付の図面を参照しながら、本発明の第2実施例に係る有機発光素子およびこの製造方法について詳しく説明する。
【0113】
本発明の第2実施例に係る有機発光素子は、図11および図16に示すように、基板(図示せず)と、基板(図示せず)上に形成された下部電極120と、下部電極120上に形成され、下部開口部132aが形成された下部絶縁層130と、下部絶縁層130上に形成され、下部開口部132aと連通して下部開口部132aの周囲よりも小さい周囲を有する上部開口部132bを有して下部絶縁層130と共にオーバーハング(overhang)構造131を形成する上部絶縁層140と、下部開口部132a内部の下部電極120上部面と上部絶縁層140に形成された導電層150a、150bと、下部開口部132a内部で下部電極120上部に形成された導電層150a上に形成された有機物層160と、上部絶縁層140上部に形成された導電層50bの上部と有機物層160上部に形成された上部電極170とを含む。
【0114】
基板は、透明なプラスチックで形成されることもでき、金、銀、およびアルミニウムとこれらの合金のような金属で形成されることもできる。
【0115】
下部電極120は、金属に形成された陰極であり、上部電極170は、透明なインジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)で形成された陽極である。
【0116】
導電層150は、開口部132a、132bの内部で下部電極120上に形成された第1導電層150aと、上部絶縁層140の上部面と上部絶縁層140の上部開口部132b周囲面上に形成された第2導電層150bとを含む。
【0117】
ここで、導電層は、金属材質または導電性が優れた有機物を用いて形成することが好ましい。
【0118】
有機物層160は、開口部132a、132b内で第1導電層150a上に形成されており、図11に具体的に示してはいないが、正孔注入層、正孔伝達層、発光層、および電子伝達層で構成されることができる。
【0119】
絶縁層130、140は、下部電極120上に形成された下部絶縁層130と、下部絶縁層130上に形成された上部絶縁層140と、上部絶縁層140から下部絶縁層130を経て下部電極120に至る開口部132a、132bとを有する。
【0120】
下部絶縁層130は、上部絶縁層140がエッチング溶液によってエッチングされるエッチングの速度よりも速いエッチング速度を有する酸化シリコン(SiO)で形成され、上部絶縁層140は、下部絶縁層130よりもエッチング速度が低下する窒化シリコン(Si)で形成される。
【0121】
開口部132a、132bは、下部絶縁層130に形成された下部開口部132aと、下部開口部132aよりも小さい周囲を有して上部絶縁層140に形成された上部開口部132bとを含む。
【0122】
また、開口部132a、132bのうちで上部絶縁層140に形成された上部開口部132bの周囲よりも下部絶縁層130に形成された下部開口部132aの周囲が大きいオーバーハング構造131が形成されている。オーバーハング構造131において、下部開口部132aの周囲が上部開口部132bの周囲よりも大きいように開口部132a、132bの中心から下部絶縁層130の内側にエッチングされた面は湾曲面形態である。
【0123】
本発明の第2実施例に係る有機発光素子の製造方法は、図12〜図19に示すように、(a)下部電極120上に下部絶縁層130を形成し、下部絶縁層130上に下部絶縁層130よりもエッチング速度が遅い上部絶縁層140を形成するステップと、(b)上部絶縁層140と下部絶縁層130をエッチングし、上部絶縁層140から下部絶縁層130を貫通して下部電極120に至る開口部132a、132bを形成するステップと、(c)開口部132a、132bの下部電極120上部面と上部絶縁層140に導電層150a、150bを形成するステップと、(d)開口部132a、132b内部で下部電極120上部に形成された導電層150a上に有機物層160を形成するステップと、(e)上部絶縁層140上部に形成された導電層150b上部と有機物160層上部に上部電極170を形成するステップとを含む。
【0124】
基板上に下部電極120のための薄膜を蒸着し、薄膜をパターニングして基板上に下部電極120を形成する過程の図は省略した。
【0125】
図12に示すように、前記(a)ステップでは、下部電極120上に酸化シリコン(SiO)で下部絶縁層130を形成する。
【0126】
図13に示すように、(a)ステップでは、下部絶縁層130上に下部絶縁層130よりもエッチング速度が低下した窒化シリコン(Si)で上部絶縁層140を形成する。
【0127】
前記(b)ステップでは、上部絶縁層140と下部絶縁層130をエッチングし、上部絶縁層140から下部絶縁層130を経て下部電極120に至る開口部132a、132bを形成する。
【0128】
具体的に説明すれば、上部絶縁層140上に形成されたレジストパターン(図示せず)をマスクにしてCFにOを混合したエッチングガスで、図14に示すように、上部絶縁層140と下部絶縁層130をまずドライエッチングする。
【0129】
また、上部絶縁層140と下部絶縁層130がエッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が互いに異なることを利用して下部絶縁層130をウエットエッチングするようになれば、図15に示すように、開口部132a、132bのうちで上部絶縁層140に形成された上部開口部132bの周囲よりも下部絶縁層130に形成された下部開口部132aの周囲が大きいオーバーハング構造が形成される。
【0130】
または、図19に示すように、上部絶縁層140をまずドライエッチングした後、上部絶縁層140と下部絶縁層130がエッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が互いに異なることを利用して下部絶縁層130をウエットエッチングし、オーバーハング(overhang)構造を形成することもできる。
【0131】
前記(c)ステップでは、図15に示す状態で上部から金属材質または導電性を有する有機物質を蒸着するようになれば、図16に示すように、開口部132a、132b内部で下部電極120上部面と、上部絶縁層140の上部面、上部絶縁層140のうちで上部開口部132bの周囲面にのみ導電層150a、150bが形成される。
【0132】
オーバーハング構造131が形成されていることにより、開口部132a、132b内部で下部電極120上部面に形成された第1導電層150aと上部開口部132bの周囲面を含んだ上部絶縁層140の上部面に形成された第2導電層150bが断絶するように形成される。
【0133】
前記(d)ステップでは、図17に示すように、開口部132a、132b内部で下部電極120上部に形成された第1導電層150a上に有機物層160を形成する。
【0134】
前記(e)ステップでは、図18に示すように、第2導電層150b上部と有機物層160上部に上部電極170を形成する。
【0135】
このように、上述した第2実施例に係る有機発光素子の製造方法によれば、開口部132a、132bのうちで上部絶縁層140に形成された上部開口部132bの周囲よりも下部絶縁層130に形成された下部開口部132aの周囲が大きいオーバーハング131が形成されることによって、従来導電層500の表面方向に流れる漏洩電流の移動経路(図1の矢印参照)を断絶させることができ、漏洩電流が導電層150a、150bの表面方向に沿って隣接する他の発光ピクセルに流入して任意に他の発光ピクセルを点灯させることを防ぐことができるようになる。
【符号の説明】
【0136】
200 下部電極
300 絶縁層
301 開口部
500 導電層
20 下部電極
30 酸化膜
31 オーバーハング(overhang)構造
40 シリコン絶縁層
32a、32b 開口部
50a、50b 導電層
60 有機物層
70 上部電極
80 フォトレジスト
120 下部電極
130 下部絶縁層
131 オーバーハング構造
132a 下部開口部
132b 上部開口部
140 上部絶縁層
150、150a、150b 導電層
160 有機物層
170 上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下部電極上に絶縁層を形成するステップと、
(b)前記絶縁層をエッチングし、前記絶縁層の上面から前記下部電極に至る開口部を形成するステップであり、最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成されるように開口部を形成するステップと、
(c)前記開口部内部の前記下部電極上部面および前記オーバーハング構造を除いた前記絶縁層の表面に導電層を形成するステップと、
(d)前記開口部内部において、前記下部電極上部面に形成された前記導電層上に有機物層を形成するステップと、
(e)前記絶縁層の上部に位置した前記導電層の上部および前記有機物層上部に上部電極を形成するステップと、
を含むことを特徴とする有機発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層はシリコン絶縁層であり、
前記b)ステップで、前記絶縁層のエッチングはドライエッチングであることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン絶縁層は、非晶質シリコンで形成することを特徴とする、請求項2に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記(b)ステップでは、前記シリコン絶縁層の上部面のうちで前記開口部を形成するためのドライエッチング領域を除いた領域にフォトレジストをパターニングし、前記ドライエッチング領域をドライエッチングした後、前記フォトレジストを除去して前記開口部を形成することを特徴とする、請求項2に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記(b)ステップで、前記シリコン絶縁層は、Cl、BCl、HBr、NF、CF、およびSFのうちから選択された1種以上のガスとHe、O、およびHのうちから選択された1種以上のガスを混合した混合ガス、またはCl、BCl、HBr、NF、CF、およびSFのうちから選択された1種以上のガスでドライエッチングされることを特徴とする、請求項2に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記(a)ステップの前に前記下部電極上に酸化膜を形成するステップと、
前記(b)ステップで、前記シリコン絶縁層をドライエッチングした後、前記酸化膜をドライエッチングするステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記酸化膜は、SiO、TiO、ZrO、HfO、およびTaのうちのいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項6に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記酸化膜は、CF、CHF、NF、SF、BCl、およびHBrのうちから選択された1種以上のガスとHe、O、およびHのうちから選択された1種以上のガスを混合した混合ガス、またはCF、CHF、NF、SF、BCl、およびHBrのうちから選択された1種以上のガスでドライエッチングされることを特徴とする、請求項6に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁層は、前記下部電極上に形成された下部絶縁層および前記下部絶縁層上に形成されて前記下部絶縁層よりもエッチング速度が遅い上部絶縁層を含み、
前記b)ステップでは、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層をエッチングし、前記上部絶縁層から前記下部絶縁層を経て前記下部電極に至る前記開口部を形成するステップであり、前記開口部のうちで前記上部絶縁層に形成された上部開口部の周囲よりも前記下部絶縁層に形成された下部開口部の周囲が大きい前記オーバーハング構造が形成されるように前記開口部を形成することを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記下部絶縁層は、SiON、非晶質Al、およびSiOのうちから選択されたいずれか1つで形成し、前記上部絶縁層は、Siで形成することを特徴とする、請求項9に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記(b)ステップでは、前記上部絶縁層をドライエッチングして前記上部開口部を形成した後、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層がエッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が互いに異なることを利用して前記下部絶縁層をウエットエッチングすることにより、前記上部開口部の周囲よりも前記下部開口部の周囲が大きい前記オーバーハング構造を形成することを特徴とする、請求項9に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記(b)ステップでは、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層をドライエッチングした後、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層がエッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が互いに異なることを利用して前記下部絶縁層をウエットエッチングすることにより、前記上部開口部の周囲よりも前記下部開口部の周囲が大きい前記オーバーハング構造を形成することを特徴とする、請求項9に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記(b)ステップで、ドライエッチング時のエッチングガスは、CHFガス、Oガス、およびCFガスが混合した混合ガス、またはOガス、Hガス、およびHeガスのうちから選択された1つ以上のガスとCFガスの混合ガス、またはCFガス、CHFガス、Cガス、Cガス、SFガス、およびNFガスのうちから選択された1種以上のガスであることを特徴とする、請求項11または12に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記エッチング溶液は、フッ酸(HF)、BOE(buffered oxide etchant)、およびBHF(Buffered HF solution)のうちから選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項11または12に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記(b)ステップでは、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層がエッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が互いに異なることを利用して前記上部絶縁層と前記下部絶縁層をすべてウエットエッチングすることにより、前記上部開口部の周囲よりも前記下部開口部の周囲が大きい前記オーバーハング構造を形成することを特徴とする、請求項9に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記上部絶縁層はリン酸(HPO)でウエットエッチングし、前記下部絶縁層はフッ酸(HF)でウエットエッチングすることを特徴とする、請求項15に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項17】
前記オーバーハング構造は、前記下部開口部の中心から前記下部絶縁層の内側に向かって陥没した湾曲面を含むことを特徴とする、請求項9に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項18】
前記(c)ステップで、前記導電層は、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛、およびこれらの合金からなる金属グループから選択された1つ以上または導電性を有する有機物質で形成されることを特徴とする、請求項2または9に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項19】
下部電極と、
前記下部電極上に形成され、前記下部電極の板面に対して垂直な方向に形成された開口部を有する絶縁層であり、前記開口部の最上側周囲よりも最下側周囲が大きいオーバーハング(overhang)構造が形成された絶縁層と、
前記開口部内部の前記下部電極上部面および前記オーバーハング構造を除いた前記絶縁層の表面に形成された導電層と、
前記開口部内部において、前記下部電極上部面に形成された前記導電層上に形成された有機物層と、
前記絶縁層の上部に位置した前記導電層の上部および前記有機物層上部に形成された上部電極と、
を含むことを特徴とする有機発光素子。
【請求項20】
前記絶縁層は、シリコン絶縁層であることを特徴とする、請求項19に記載の有機発光素子。
【請求項21】
前記シリコン絶縁層は、非晶質シリコンで形成されたことを特徴とする、請求項20に記載の有機発光素子。
【請求項22】
前記下部電極と前記シリコン絶縁層の間に形成された酸化膜をさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の有機発光素子。
【請求項23】
前記酸化膜は、SiO、TiO、ZrO、HfO、およびTaのうちのいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項22に記載の有機発光素子。
【請求項24】
前記オーバーハング構造が形成された前記絶縁層は、前記下部電極上に形成された下部絶縁層および前記下部絶縁層上に形成された上部絶縁層を含み、
前記オーバーハング構造が形成されるように、前記開口部は、前記下部絶縁層に形成された下部開口部および前記下部開口部と連通するように前記上部絶縁層に形成され、前記下部開口部の周囲よりも小さい周囲を有する上部開口部を含むことを特徴とする、請求項19に記載の有機発光素子。
【請求項25】
前記下部絶縁層は、SiON、非晶質Al、およびSiOのうちから選択されたいずれか1つで形成され、前記上部絶縁層は、Siで形成されたことを特徴とする、請求項24に記載の有機発光素子。
【請求項26】
前記オーバーハング構造は、前記下部開口部の中心から前記下部絶縁層の内側に向かって陥没した湾曲面を含むことを特徴とする請求項24に記載の有機発光素子。
【請求項27】
前記下部絶縁層と前記上部絶縁層は、エッチング溶液によってエッチングされるエッチング速度が互いに異なり、
前記下部絶縁層は、前記上部絶縁層よりもエッチング速度が速いことを特徴とする、請求項24に記載の有機発光素子。
【請求項28】
前記オーバーハング構造は、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層をすべてウエットエッチングして形成されたことを特徴とする、請求項24に記載の有機発光素子。
【請求項29】
前記上部絶縁層のウエットエッチングに用いられたエッチング溶液はリン酸(HPO)であり、前記下部絶縁層のウエットエッチングに用いられたエッチング溶液はフッ酸(HF)であることを特徴とする、請求項28に記載の有機発光素子。
【請求項30】
前記オーバーハング構造は、前記上部絶縁層をドライエッチングした後、前記下部絶縁層をエッチング溶液でウエットエッチングして形成されたことを特徴とする、請求項24に記載の有機発光素子。
【請求項31】
前記オーバーハング構造は、前記上部絶縁層と前記下部絶縁層をドライエッチングした後、前記下部絶縁層をエッチング溶液でウエットエッチングして形成されたことを特徴とする、請求項24に記載の有機発光素子。
【請求項32】
前記ドライエッチングに用いられるエッチングガスは、CHFガス、Oガス、およびCFガスが混合した混合ガス、またはOガス、Hガス、およびHeガスのうちから選択された1つ以上のガスとCFガスの混合ガス、またはCFガス、CHFガス、Cガス、Cガス、SFガス、およびNFガスのうちから選択された1種以上のガスであることを特徴とする、請求項30または31に記載の有機発光素子。
【請求項33】
前記エッチング溶液は、フッ酸(HF)、BOE(buffered oxide etchant)、およびBHF(Buffered HF solution)のうちから選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項30または31に記載の有機発光素子。
【請求項34】
前記導電層は、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛、およびこれらの合金からなる金属グループから選択された1つ以上または導電性を有する有機物質で形成されることを特徴とする、請求項20または24に記載の有機発光素子。
【請求項35】
請求項20または24に係る有機発光素子を含むことを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−195302(P2012−195302A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−134079(P2012−134079)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【分割の表示】特願2009−521697(P2009−521697)の分割
【原出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】