有機発光素子及びその製造方法
【課題】高効率、高輝度、高寿命の光出力を有し、製膜時の膜欠陥の発生が少なく、安定した発光面を有する有機発光素子を提供する。
【解決手段】陽極と陰極と間に挟持される有機層から構成され、該有機層のうち少なくとも一層が、アクリル化合物を少なくとも一種類含むアクリル薄膜又は該アクリル薄膜を硬化したアクリル硬化膜で形成されることを特徴とする、有機発光素子。
【解決手段】陽極と陰極と間に挟持される有機層から構成され、該有機層のうち少なくとも一層が、アクリル化合物を少なくとも一種類含むアクリル薄膜又は該アクリル薄膜を硬化したアクリル硬化膜で形成されることを特徴とする、有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子の製造プロセスは、乾式法と湿式法とに分類される。ここで乾式法とは、製膜工程に際して主に低分子系材料を使用し、真空蒸着法等の気相プロセスを用いて薄膜形成を行う方法である。これに対し湿式法とは、製膜工程に際して主に高分子系材料を使用し、スピン塗布法、インクジェット塗布法、ディスペンサー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法等の方法を用い薄膜形成を行う方法である。
【0003】
真空蒸着法等の乾式法は生産装置がバッチ式であり、素子作製において、素子の発光のために必要の無い部分にも材料の膜が形成され必要量よりはるかに多い材料を無駄に消費してしまうため、生産性に課題のある方法である。
【0004】
一方、湿式法による製造は、素子の発光のために必要の無い部分に材料の膜が形成されることが少ない上、連続式処理による生産が可能である。例えば、インクジェット塗布法、ディスペンサー塗布法のような液滴吐出法による塗布を選択することができる。これらの方法では、塗布するときに、素子の発光のために必要とする部分のみに材料を塗り分けるパターンニングを同時に行うことができるので、素子の生産性を大幅に改善することができる。
【0005】
故に、昨今、有機発光素子の電荷注入層、電荷輸送層、発光層等の有機層を生産性のよい、湿式法で製膜することが要求されている。
【0006】
塗布系の正孔注入材料としては、電荷注入性を改善するためにポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物の薄膜を用いることが知られている。ただし、これらの注入材料を用いた素子は初期特性に優れるが、長時間使用した場合の輝度劣化が著しいことが問題である。
【0007】
現状では、湿式法に使用可能な電荷注入材料、電荷輸送材料は限られており、また、現在使用可能な材料を使用したとしても発光効率等の初期特性や長時間の発光による輝度劣化等の耐久特性が十分でないという問題があった。
【0008】
ところで湿式法で使用可能な重合性官能基を有する電荷輸送性材料が提案されており、先行技術として、特許文献1乃至3が知られている。ただし、これらの材料を用いても十分な特性を得るに至っていない。
【0009】
他方で、電荷輸送性構造を有するアクリル化合物又はその硬化物も提案されており、これらを有機発光素子へ用いた先行技術として、特許文献4乃至6が知られている。これらの先行文献ではアクリル化合物を硬化する方法として、紫外線の照射に加えて、架橋剤の添加、重合開始剤の添加、加熱等を組み合わせた例が示されている。しかし、開始剤等を用いずに加熱のみで硬化した例は述べられていない。
【0010】
【特許文献1】特開2001−297882号公報
【特許文献2】特開2002−212150号公報
【特許文献3】特開2004−199935号公報
【特許文献4】特開2000−268974号公報
【特許文献5】特開2005−340043号公報
【特許文献6】特開2006−66574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高効率かつ高輝度で、極めて高寿命の光出力を有し、製膜時の膜欠陥の発生が非常に少なく、安定した発光面を有する有機発光素子を提供することである。また、本発明の他の目的は、製造が容易でかつ比較的安価な塗布法で作製可能な有機発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の有機発光素子は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極と間に挟持される有機化合物からなる層と、から構成され、該有機化合物からなる層のうち少なくとも一層が、下記一般式(1)あるいは(2)で示されるアクリル化合物を少なくとも一種類含むアクリル薄膜又は該アクリル薄膜を硬化したアクリル硬化膜で形成されることを特徴とする。
【0013】
【化1】
【0014】
(式(1)において、A11及びA12は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。R11及びR12は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。Ar11及びAr13は、それぞれ置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。Ar12は、置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のベンゾアントラセン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を示す。)
【0015】
【化2】
【0016】
(式(2)において、A21及びA22は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。R21及びR22は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。Ar21及びAr24は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナンスレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。Ar22及びAr23は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナンスレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のベンゾアントラセン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を表す。Z21は、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基又は置換あるいは無置換の芳香族複素環基を表す。nは1乃至4の整数を表す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高効率かつ高輝度で、極めて高寿命の光出力を有し、製膜時の膜欠陥の発生が非常に少なく、安定した発光面を有する有機発光素子を提供することができる。また、本発明によれば、製造が容易でかつ比較的安価な塗布法で作製可能な有機発光素子を提供することができる。本発明の有機発光素子は、特に、湿式法で電荷注入層、電荷輸送層を製膜すると、生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の有機発光素子は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極と間に挟持される有機化合物からなる層と、から構成される。
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の有機発光素子を説明する。
【0021】
図1は、本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。図1の有機発光素子10は、基板1上に陽極2、発光層3及び陰極4が順次設けられている。図1の有機発光素子10は、発光層3が、正孔輸送能、電子輸送能及び発光性の性能を全て有している有機化合物で構成されている場合に有用である。また、正孔輸送能、電子輸送能及び発光性の性能のいずれかの特性を有する有機化合物を混合して構成される場合にも有用である。
【0022】
図2は、本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。図2の有機発光素子20は、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、電子輸送層6及び陰極4が順次設けられている。この有機発光素子20は、正孔輸送性及び電子輸送性のいずれかを備える発光性の有機化合物と電子輸送性のみ又は正孔輸送性のみを備える有機化合物とを組み合わせて使用する場合に有用である。また、有機発光素子20は、正孔輸送層5又は電子輸送層6が発光層を兼ねている。
【0023】
図3は、本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。図3の有機発光素子30は、図2の有機発光素子20において、正孔輸送層5と電子輸送層6との間に発光層3を設けたものである。この有機発光素子30は、キャリア輸送の機能と発光の機能とを分離したものであり、正孔輸送性、電子輸送性、発光性の各特性を有した化合物を適宜組み合わせて使用することができる。このため、材料選択の自由度が増すとともに、発光波長を異にする種々の化合物を使用することができるので、発光色相の多様化が可能になる。さらに、中央の発光層3に各キャリアあるいは励起子を有効に閉じこめて有機発光素子30の発光効率の向上を図ることも可能になる。
【0024】
図4は、本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。図4の有機発光素子は、図3の有機発光素子30において、陽極2と正孔輸送層5との間に正孔注入層7を設けたものである。この有機発光素子40は、正孔注入層7を設けることにより、陽極2と正孔輸送層5の密着性又は正孔注入性が改善されるので、低電圧化に効果的である。また、正孔注入層7の代わりにバッファー層を設けてもよいが、その機能は正孔注入層と同じである。
【0025】
図5は、本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。図5の有機発光素子50は、図3の有機発光素子30において、発光層3と電子輸送層6との間に正孔/エキシトンブロッキング層8を設けたものである。正孔/エキシトンブロッキング層8を設けることにより、正孔又は励起子が発光層3から陰極4側に抜けることが抑制されるので、発光効率を向上させるのに効果的な構成といえる。
【0026】
図6は、本発明の有機発光素子における第六の実施形態を示す断面図である。図6の有機発光素子60は、図4の有機発光素子40において、電子輸送層6と陰極4との間に電子注入層9が設けられたものである。図6の有機発光素子60は、電子注入層9を設けているので素子の低電圧化に効果的である。
【0027】
図7は、本発明の有機発光素子における第七の実施形態を示す断面図である。図7の有機発光素子70は、基板1上に陽極2、正孔注入層7、発光層3、電子注入層8及び陰極4が順次設けられている。
【0028】
ただし、図1乃至図7はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明の有機発光素子はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層、接着層又は干渉層を設ける、正孔注入層又は正孔輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成される、等多様な層構成を採用することができる。
【0029】
本発明の有機発光素子は、有機化合物からなる層のうち少なくとも一層が、アクリル化合物を少なくとも一種類含むアクリル薄膜又は該アクリル薄膜を硬化したアクリル硬化膜で形成されることを特徴とする。ここでアクリル化合物の例として、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0030】
【化3】
【0031】
式(1)において、A11及びA12は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。
【0032】
A11及びA12で表される炭素数2以上8以下の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基等が挙げられる。
【0033】
上記の2価の炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の分枝を有していてもよい。また、上記の2価の炭化水素基は、エーテル結合を1ヶ所含んでいてもよい。
【0034】
式(1)において、R11及びR12は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。
【0035】
式(1)において、Ar11及びAr13は、それぞれ置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。
【0036】
上記のAr11及びAr13で表される1価の置換基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、チエニル基等の芳香族複素環基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0037】
式(1)において、Ar12は、置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のベンゾアントラセン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を示す。
【0038】
上記のAr12で表される2価の置換基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、チエニル基等の芳香族複素環基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0039】
また、上記アクリル化合物の他の例として、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0040】
【化4】
【0041】
式(2)において、A21及びA22は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。
【0042】
A21及びA22で表される炭素数2以上8以下の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
【0043】
上記の2価の炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の分枝を有していてもよい。また、上記の2価の炭化水素基は、エーテル結合を1ヶ所含んでいてもよい。
【0044】
式(2)において、R21及びR22は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。
【0045】
式(2)において、Ar21及びAr24は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換あるいは無置換のフルオレン、置換あるいは無置換のフルオランテン、置換あるいは無置換のフェニルナフタレン、置換あるいは無置換のフェナンスレン、置換あるいは無置換のピレン、置換あるいは無置換のペリレン、置換あるいは無置換のカルバゾール、置換あるいは無置換のジベンゾフラン、置換あるいは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。
【0046】
上記のAr21及びAr24で表される1価の置換基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、チエニル基等の芳香族複素環基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0047】
式(2)において、Ar22及びAr23は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換あるいは無置換のフルオレン、置換あるいは無置換のフルオランテン、置換あるいは無置換のフェニルナフタレン、置換あるいは無置換のフェナンスレン、置換あるいは無置換のジヒドロフェナントレン、置換あるいは無置換のピレン、置換あるいは無置換のペリレン、置換あるいは無置換のベンゾアントラセン、置換あるいは無置換のカルバゾール、置換あるいは無置換のジベンゾフラン、置換あるいは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を表す。
【0048】
上記のAr22及びAr23で表される2価の置換基ビフェニル、フルオレン及びカルバゾールが有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、チエニル基等の芳香族複素環基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0049】
式(2)において、Z21は、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基又は置換あるいは無置換の芳香族複素環基を表す。
【0050】
Z21で表される芳香族炭化水素環基として、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等が挙げられる。
【0051】
Z21で表される芳香族複素環基として、ピリジル基、チエニル基、フリル基、キノリル基等が挙げられる。
【0052】
上記芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等の芳香族複素環基、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基及びナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0053】
式(2)において、nは1乃至4の整数を表す。
【0054】
式(1)又は式(2)で表されるアクリル化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
【化5】
【0056】
【化6】
【0057】
【化7】
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
【化10】
【0061】
【化11】
【0062】
【化12】
【0063】
【化13】
【0064】
【化14】
【0065】
【化15】
【0066】
【化16】
【0067】
【化17】
【0068】
【化18】
【0069】
【化19】
【0070】
【化20】
【0071】
【化21】
【0072】
【化22】
【0073】
【化23】
【0074】
有機化合物からなる層のうち少なくとも1つの層は、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物より形成されるアクリル薄膜、又はこのアクリル薄膜を硬化して形成されるアクリル硬化膜で形成されるものである。ここで有機化合物からなる層とは、図1乃至図7の有機発光素子においては、発光層3、正孔輸送層5、電子輸送層6、正孔注入層7、正孔/エキシトンブロッキング層8及び電子注入層9が該当する。
【0075】
一方、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、電荷輸送性機能を有するトリアリールアミン骨格を有している。このため、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物より形成されるアクリル薄膜又はアクリル硬化膜は、好ましくは、電荷注入層又は電荷輸送層を形成する。より好ましくは、正孔注入層7を形成する。
【0076】
本発明の有機発光素子は、公知な正孔輸送性化合物、発光性化合物あるいは電子輸送性化合物等と一緒に使用することもできる。
【0077】
以下にこれらの公知な化合物例を挙げる。
【0078】
【化24】
【0079】
【化25】
【0080】
【化26】
【0081】
【化27】
【0082】
【化28】
【0083】
【化29】
【0084】
ここで、式(1)又は(2)で示されるアクリル化合物を、発光層のゲストとして使用する場合、アクリル化合物の含有量は、発光層の全重量を基準として、好ましくは、0.1重量%以上50重量%以下である。より好ましくは、0.5重量%以上30重量%以下である。
【0085】
また、式(1)又は(2)で示されるアクリル化合物を、発光層のホストとして使用する場合、アクリル化合物の含有量は、発光層の全重量を基準として、好ましくは、50重量%以上99.9重量%以下である。より好ましくは、70重量%以上99.5重量%以下である。
【0086】
陽極の構成材料は、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、銀、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム等の金属単体あるいはこれらを複数組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化錫インジウム(ITO),酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は、一種類を単独で使用してもよく、二種類以上を併用して使用してもよい。
【0087】
一方、陰極の構成材料は、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体、これら金属単体を複数組み合わせた合金又はこれら金属単体の塩等を使用することができる。また、酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。ここで、陰極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0088】
本発明の有機発光素子で使用する基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜等を用いて発色光をコントロールすることも可能である。
【0089】
尚、作製した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で、保護層又は封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の高分子膜又は光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属等をカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
【0090】
次に本発明の有機発光素子の製造方法について説明する。
【0091】
本発明の有機発光素子の製造方法は、以下の工程(i)及び(ii)を含むことを特徴とするものである。
【0092】
(i)式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物を少なくとも一種類含むアクリル薄膜を湿式法により製膜する工程
(ii)アクリル薄膜を不活性ガス中で加熱重合又は加熱硬化することで、アクリル硬化膜を形成する工程
湿式法により、有機発光素子を作製する場合は、塗布の容易性、結晶化のない塗料を調製するのが可能である等の理由により、通常高分子材料が使用される。
【0093】
ここで、有機発光素子の発光効率や耐久性を向上させるためには、層を構成する有機材料の純度を向上させる必要があるが、高分子材料では困難である場合が多い。即ち、高分子材料では、一般的に、その材料を製造したときに生成する副生成物又は脱離物、副反応による不純物、残留した触媒又は重合開始剤等を当該材料中から除去することが困難な場合が多い。また、材料の製造時に発生する副生成物、不純物、残留触媒、残留重合開始剤等は、有機発光素子の特性のうち、特に、輝度特性、寿命特性に悪影響を与える。
【0094】
一方、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、低分子化合物又はオリゴマーとして存在するものである。このアクリル化合物は、高分子材料と比べて精製(不純物除去)が容易であるので、純度の高い有機層を形成することができる。従って、これらの化合物を使用することにより、高分子材料特有の問題点である不純物等の除去の問題は解決される。
【0095】
ところで、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、重合性のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを有する。このため加熱、重合開始剤等によるラジカル重合反応により、分子間架橋反応が起こり、このアクリル化合物は硬化する。
【0096】
ここで、アクリル酸エステル基及びメタクリル酸エステル基の重合反応は、通常の空気中の環境下では、酸素による重合阻害作用を受けて所望の重合特性を得ることが困難である。このため、重合反応を行う際は、不活性ガス中で行う必要がある。
【0097】
実際に重合反応を行う際、不活性ガス中の酸素濃度は、好ましくは、10ppm以下である。また、この不活性ガスは、好ましくは、窒素又はアルゴンである。
【0098】
一方で、アクリル薄膜を製膜する際には、好ましくは、重合開始剤を含ませない方がよい。上述した酸素による重合阻害作用を克服する方法としては、通常重合開始剤を含ませるべきである。しかし重合開始剤が存在することにより、層を構成する当該アクリル化合物の純度が低下するだけでなく、その重合開始剤が素子の特性に悪影響を及ぼすためである。
【0099】
また、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、構造的要因から、製造環境の酸素濃度を一定の値以下にすることにより、開始剤、触媒等を使用せずとも加熱のみで重合反応が進行する。また、加熱温度も130℃乃至200℃と比較的低温で重合が進み、素子の他の部分に対する悪影響も小さい。
【0100】
硬化後の膜は不溶不融の有機薄膜となっている。よって次の工程として、この硬化膜の上から湿式法により他の有機層を積層したとしても、上から塗布する塗料に含まれる溶剤によって硬化膜が溶かされることはない。よって層を構成する材料同士の混入がない安定した積層体を有する有機発光素子を作製することができる。
【0101】
さらに、有機発光素子を使用する場合でも、当該硬化膜は3次元架橋構造を有しているため、マイグレーションによる結晶化や界面付近での不均質化、不安定化が発生することがない。従って、低分子化合物をそのまま製膜している場合よりも、安定性が高い素子を提供することができる。
【0102】
また、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、熱硬化を行う際に発生しやすい膜欠陥を発生しにくいという特徴も有する。
【0103】
この特徴は、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物が、嵩高く剛直で比較的分子量の大きいトリアリールアミン骨格と適度な長さのアルキル基とを有するためである。
【0104】
この構造的な特徴により、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、耐熱性の向上と化合物同士の相溶性を両立し得るものである。このため、製膜過程における応力や体積収縮の緩和特性を示し、耐熱性を有していることにより昇温過程の面アレを起こしにくいという特徴を有する。これらの理由により得られる素子の発光面の欠陥も非常に少なくなる。
【0105】
また、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、π電子の共役系が大きく広がる構造を有するため、分子間での軌道の重なりが大きいため、特に、電極からの正孔注入性や層内の正孔輸送性が向上するものと考えられる。
【0106】
以上より、本発明の有機発光素子は、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物を塗料状態にした上で塗布法等の湿式法により製膜し、塗膜の乾燥工程に続いて重合・硬化させて機能性硬化膜を形成する、というプロセスを踏むことが好ましい。一方で、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、加熱反応性を有するため、蒸着法による製膜には適さない。
【0107】
湿式法により、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物の薄膜を形成する際には、以下に説明する塗料組成物を調製して、この塗料組成物を塗膜した方がよい。
【0108】
ここで塗料組成物とは、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物を少なくとも一種類含有するものである。この塗料組成物を使用すれば、有機発光素子を構成する有機化合物からなる層、特に、電荷注入層又は電荷輸送層を塗布法により作製することが可能となり、比較的安価で大面積の有機発光素子を容易に作製することができる。
【0109】
この塗料組成物に使用する溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、n−ドデシルベンゼン、メチルナフタレン等の炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル系溶剤、クロロホルム、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール系溶剤、等が挙げられる。これらの溶媒は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の粘度や、溶液中のアクリル化合物の濃度を調整することにより、アクリル化合物から形成されるアクリル薄膜の膜厚を調整することができる。
【0110】
また式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物の他に、例えば、上述の公知な正孔輸送性化合物、発光性化合物、電子輸送性化合物等を含ませてもよい。
【0111】
塗料組成物における式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物の含有量は、好ましくは、0.05重量%以上20重量%以下であり、より好ましくは、0.1重量%以上5重量%以下である。
【0112】
塗布方法としては、キャスト法、スピンコート法、スリットコーター法、印刷法、インクジェット法、デイスペンス法、スプレー法、ディップ法、LB膜法等が挙げられる。
【0113】
本発明の有機発光素子は、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物を、塗布法等の湿式法により陽極と陰極との間に形成する。アクリル化合物を含む層の膜厚は、10μmより薄く、好ましくは、0.5μm以下であり、より好ましくは、0.005μm乃至0.5μmである。
【0114】
本発明の有機発光素子において、式(1)又は(2)で示されるアクリル化合物を含有する層以外の層は、一般的な真空蒸着法等の乾式法又は適当な溶媒に溶解させた湿式法等により薄膜を形成する。本発明の有機発光素子は、好ましくは、正孔注入層に接するように発光層を設け、この発光層が塗布法により製膜されることを特徴とするものである。
【0115】
湿式法として、具体的には、キャスト法、スピンコート法、スリットコーター法、印刷法、インクジェット法、デイスペンス法、スプレー法、ディップ法、LB膜法等が挙げられる。
【0116】
特に、塗布法で成膜する場合は、適当な結着樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0117】
上記結着樹脂としては広範囲な結着性樹脂より選択できる。例えば、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリーレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、結着樹脂の形態はホモポリマーであってもよいし共重合体ポリマーであってもよい。また、結着樹脂は一種類を単独で使用してもよいし、また二種類以上を混合して使用してもよい。
【0118】
本発明の有機発光素子は、発光層の他に複数の有機層を有してもよく、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正孔/エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。これらの層は、上述したように、真空蒸着法や溶液塗布法等いかなる方法によっても作製することができる。素子を作成する際にこれらの層の膜厚は、5μmより薄く、好ましくは、1μm以下、より好ましくは、5nm以上500nm以下である。
【0119】
本発明の有機発光素子は、適宜組み合わされることによりディスプレイを構成することができる。具体的には、本発明のディスプレイは、有機発光素子と駆動回路とをそれぞれ複数有することを特徴とし、パッシブマトリックス方式又はアクティブマトリックス方式で駆動される。以下、図面を参照しながら、本発明の素子において、その応用例を説明する。尚、以下の応用例において、その駆動方式はアクティブマトリクス方式を用いている。
【0120】
図8は、基板上の有機発光素子とその外部に配置されている回路、データ線の配置を示す断面模式図である。回路は、TFTと保持容量等から構成されている。
【0121】
図8において有機発光素子は、1つのみ図示されているが、ディスプレイを構成する場合は後述する図10のように2次元状に複数配置されている。本実施形態に係る有機化合物はこの有機化合物層に含まれる。
【0122】
図9は、図8で示した回路の構成の詳細を示す回路図である。図9で示す回路は、電流プログラミング方式とよばれる代表的な回路構成である。尚、本発明のディスプレイが有する回路はこれに限るものではない。
【0123】
図9で示される回路は、ドライブトランジスタT1、スイッチングトランジスタT2、保持容量Ch、有機発光素子から構成されている。尚、この回路は周知な回路構成であるため、動作の詳細については説明を省略する。
【0124】
この有機発光素子を1つの発光点として利用してディスプレイや照明装置や電子写真方式の画像形成装置の露光光源に用いることができる。
【0125】
次に、本発明の有機発光素子をディスプレイに利用した場合について説明する。
【0126】
図8、図9で示した有機発光素子と回路を1画素として同一面内に2次元状に複数配置した状態、即ちマトリックス状に配置したものを図10に模式的に示す。
【0127】
図10のディスプレイが有する画素は、配線を介してゲートドライバ、ソースドライバと接続され、駆動パルスが供給されることで、発光状態あるいは非発光状態となる。
【0128】
このような有機発光素子が画素として同一面内に面内方向に複数配置されている領域が、ディスプレイの表示領域である。即ち、本実施形態に係る有機発光素子はディスプレイの表示領域に用いることができる。
【0129】
このディスプレイは例えばテレビやPC用の表示装置、あるいは画像を表示する部分を有する機器であれば如何なる形態も問わない。例えばこのディスプレイを搭載する携帯型の表示装置であってもよい。あるいはデジタルカメラ等の電子撮像装置や携帯電話の表示部に本実施形態に係るディスプレイを用いることができる。
【0130】
尚、図10で示したディスプレイをパネルモジュール化した構成を図11に示す。パネルモジュールとは、図10で示した構成に加え、インターフェースドライバ、接続端子等の外部機器との接続に必要な部品を備え、これらを筐体で一体化した構成を意味する。
【実施例】
【0131】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0132】
[合成例1]例示化合物No.1−16の合成
フラスコ内で、以下の試薬、溶媒を仕込み、フラスコを氷水バスで冷却した。
【0133】
下記式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.19mmol)
【0134】
【化30】
トリエチルアミン:0.42g(4.17mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
【0135】
次に、反応溶液の温度を10℃以下に保ちながら、この反応溶液中にアクリル酸クロライド0.32g(3.57mmol)を滴下した。滴下終了後、反応溶液を徐々に昇温させ、反応用液の温度を50℃に保ちながらさらに30分間反応を続けた。
【0136】
反応終了後、反応溶液を冷却した。次にこの反応溶液に、酢酸エチル100ml、10%水酸化ナトリウム水溶液50mlをそれぞれ加えて攪拌した後、分液操作を行い、有機層を回収した。回収した有機層を、さらにイオン交換水30mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。
【0137】
次に、この有機層中の溶媒を、ロータリーエバポレーターを用いて除去し、粗生成物を得た。この粗生成物について、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製を行った。具体的には、シリカゲル約10gを使用し、展開溶媒は、始めはトルエンを使用し、途中からトルエン/テトラヒドロフラン混合溶媒(混合比:10/1)を使用した。
【0138】
最後に目的化合物に該当するフラクションを回収し溶媒を減圧除去することにより、目的とする例示化合物No.1−16を0.73g得た。例示化合物No.1−16は、結晶性を示さない淡黄色の固体であった。
【0139】
[合成例2]例示化合物No.1−2の合成
各合成試薬を下記の分量で使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0140】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.32mmol)
【0141】
【化31】
トリエチルアミン:0.47g(4.62mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
アクリル酸クロライド:0.36g(3.96mmol)
【0142】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.1−2を0.77g得た。
【0143】
[合成例3]例示化合物No.1−10の合成
各合成試薬を下記の分量で使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0144】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.30mmol)
【0145】
【化32】
トリエチルアミン:0.46g(4.55mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
アクリル酸クロライド:0.35g(3.9mmol)
【0146】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.1−2を0.75g得た。
【0147】
[合成例4]例示化合物No.1−17の合成
各合成試薬を下記の分量で使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0148】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.14mmol)
【0149】
【化33】
トリエチルアミン:0.40g(3.99mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
アクリル酸クロライド:0.31g(3.42mmol)
【0150】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.1−17を0.77g得た。
【0151】
[合成例5]例示化合物No.1−19の合成
各合成試薬を下記の分量で使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。下記構造式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.19mmol)
【0152】
【化34】
トリエチルアミン:0.42g(4.18mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
メタアクリル酸クロライド:0.37g(3.57mmol)
【0153】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.1−19を0.78g得た。
【0154】
[合成例6]例示化合物No.1−21の合成
各合成試薬を下記の量使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0155】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.12mmol)
【0156】
【化35】
トリエチルアミン:0.40g(3.92mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
アクリル酸クロライド:0.30g(3.36mmol)
【0157】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。目的とする例示化合物No.1−21を0.67g得た。
【0158】
[合成例7]例示化合物No.2−1の合成
各合成試薬を下記の量使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0159】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:0.5g
【0160】
【化36】
トリエチルアミン:0.40g
テトラヒドロフラン:20ml
アクリル酸クロライド0.30g
【0161】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.2−1を0.36g得た。
【0162】
[合成例8]例示化合物No.2−2の合成
各合成試薬を下記の量使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0163】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:0.5g
【0164】
【化37】
トリエチルアミン:0.40g
テトラヒドロフラン:30ml
アクリル酸クロライド:0.30g
【0165】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.2−2を0.35g得た。
【0166】
[合成例9]例示化合物No.2−14の合成
各合成試薬を下記の量使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0167】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:0.5g
【0168】
【化38】
トリエチルアミン:0.40g
テトラヒドロフラン:20ml
メタアクリル酸クロライド0.30g
【0169】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.2−14を0.33g得た。
【0170】
[実施例1]
図7に示される有機発光素子を作製した。
【0171】
ガラス基板(基板1)上に、酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて成膜し、陽極2を形成した。このとき陽極2の膜厚を120nmとした。次に、これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、IPAで煮沸洗浄後に乾燥をした。さらにUV/オゾン洗浄した。以上の方法で処理した基板を透明導電性支持基板として使用した。
【0172】
次に、例示化合物No.1−16をメチルイソブチルケトンに溶解して、濃度0.5重量%の塗布液を調製した。この塗布液を、上記の透明導電性支持基板上にスピンコート法により1000rpmで成膜した(成膜工程)。次に、作製した膜を、200℃で30分間加熱し硬化することにより、正孔注入層7を形成した(加熱硬化工程)。このとき正孔注入層7の膜厚を30nmとした。尚、上記の成膜工程及び加熱硬化工程を酸素濃度5ppmの窒素雰囲気下で行った。この熱硬化膜は、架橋構造を有している膜であり、溶剤に不溶である。
【0173】
次に、以下に示す(a)乃至(c)をクロロホルム99質量部に溶解して、塗布液を調製した。
【0174】
(a)下記式で示されるIr(ppy)3(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム):0.01質量部
【0175】
【化39】
【0176】
(b)下記式で示される電子輸送性化合物であるPBD(2−(4−ビフェニル)−5−(4−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール):0.3質量部
【0177】
【化40】
【0178】
(c)下記式で示されるPVK(ポリビニルカルバゾール、Mn=35,000):0.7質量部
【0179】
【化41】
【0180】
次に、この塗布液を正孔注入層7上に滴下し、回転数1000rpmで1分間スピンコートを行うことで発光層3である薄膜を形成した。この後、80℃で30分間加熱して、薄膜中の溶剤を蒸発させた。加熱処理後の発光層3の膜厚は50nmであった。
【0181】
次に、発光層3の上に、真空蒸着法によりフッ化リチウムを蒸着し、電子注入層9を形成した。このとき電子輸送層9の膜厚を0.5nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を0.05nm/secとした。
【0182】
さらに、アルミニウムを蒸着することで陰極4である金属層を形成した。このとき、陰極4の膜厚を100nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を1.0nm/sec乃至1.2nm/secとした。最後に、窒素雰囲気下で、保護用ガラス板を被せてアクリル樹脂系接着剤で封止した。以上により有機発光素子を得た。
【0183】
得られた素子について、ITO電極を陽極に、アルミニウム電極を陰極にして8.0Vの直流電圧を印加すると素子に電流が流れた。このときの電流密度は46mA/cm2であった。また、直流電圧の印加時に輝度2350cd/m2の緑色発光が観測できた。さらに、電流密度を30mA/cm2に保ちながら素子を連続駆動したところ、初期輝度は1610cd/m2であり、50時間後の輝度は1400cd/m2であった。
【0184】
また、本発明の有機発光素子において、製膜工程における膜欠陥の発生状況を観察するために、本実施例1の素子を輝度500cd/m2で発光させながら、発光面の状態を光学顕微鏡で観察して膜欠陥の有無を評価した。発光面の均一性の観察結果も含めた評価結果を表1に示す。
【0185】
[実施例2]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−2を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0186】
[実施例3]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−10を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0187】
[実施例4]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−17を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0188】
[実施例5]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−19を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0189】
[実施例6]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−21を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0190】
[実施例7]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−1を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0191】
[実施例8]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−2を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0192】
[実施例9]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−14を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0193】
[参考例1]
実施例1において、正孔注入層7の作製工程(塗布工程及び熱硬化工程)を酸素濃度21%の乾燥空気雰囲気下で実施した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0194】
[比較例1]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、下記式に示される4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS、商品名:バイトロンP Al−4083、バイエル社製)を使用した。また、正孔注入層7を形成する際に、スピンコート法によりPEDOT/PSS薄膜を成膜した後、120℃で30分加熱し、膜厚を35nmとした。これらを除いては実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0195】
【化42】
【0196】
[比較例2]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、下記式に示される化合物を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0197】
【化43】
【0198】
[比較例3]
実施例1において、正孔注入層7を以下に示す方法により形成した。即ち、以下に示す(a)及び(b)をクロロホルム80質量部に溶解して塗布液を調製した。
【0199】
(a)下記式に示される化合物:1質量部
【0200】
【化44】
【0201】
(b)4−(チオフェンオキシフェニル)−ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート:0.05質量部(光開始剤)
【0202】
次に、この塗布液を透明導電性支持基板上に滴下し、回転数1000rpmで1分間スピンコートして製膜した。さらにUV照射装置により280nmの紫外線を1分間照射した後、窒素雰囲気下、150℃で10分間加熱して正孔注入層7を形成した。このとき正孔注入層7の膜厚は30nmであった。これを除いては、実施例1と同様に素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様を行った。結果を表1に示す。
【0203】
【表1】
【0204】
[実施例10]
図7に示す構造の素子を作製した。
【0205】
ガラス基板(基板1)上に、酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて成膜し陽極2を形成した。このとき陽極の膜厚を120nmとした。次に、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、IPAで煮沸洗浄後に乾燥をした。さらにUV/オゾン洗浄した。以上のようにして処理した基板を透明導電性支持基板として使用した。
【0206】
次に、例示化合物No.1−16をメチルエチルケトンに溶解し、濃度0.5重量%の塗布液を調製した。次にこの塗布液を、上記透明導電性支持基板上にスピンコート法により塗布した(塗布工程)。ここで塗布するときの回転数を1000rpmとした。次に、200℃で30分間加熱することで硬化した(加熱硬化工程)。硬化した後の正孔注入層7の膜厚は30nmであった。尚、上記の塗布工程及び加熱硬化工程は、酸素濃度5ppmの窒素雰囲気下で行った。
【0207】
次に、下記式で示されるポリ(9、9―ジオクチル)フルオレンをトルエンに溶解し、1重量%の発光層塗布液を調製した。この塗布液を上記正孔注入層7上にスピンコートして製膜した。その後80℃で30分間加熱乾燥することにより発光層3を形成した。加熱乾燥後の発光層3の膜厚は50nmであった。
【0208】
【化45】
【0209】
次に、上記有機薄膜層の上に、フッ化リチウムを真空蒸着法により蒸着し、電子注入層9を形成した。このとき電子注入層9の膜厚を0.5nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を0.05nm/secとした。
【0210】
次に、アルミニウムを蒸着して陰極4となる金属層を形成した。このとき陰極4の膜厚を100nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を1.0nm/sec乃至1.2nm/secとした。最後に、窒素雰囲気下で保護用ガラス板を被せ、アクリル樹脂系接着剤で封止した。以上のようにして有機発光素子を得た。
【0211】
得られた素子について、ITO電極を陽極に、アルミニウム電極を陰極にして、6.0Vの直流電圧を印加すると素子に電流が流れた。このときの電流密度は55mA/cm2の電流密度であった。また、直流電圧を印加したときに輝度1150cd/m2の青色発光が観測できた。さらに、電流密度を30mA/cm2に保ちながら素子を連続駆動したところ、初期輝度は750cd/m2であり、100時間後の輝度は610cd/m2であった。
【0212】
また、本発明の有機発光素子において、製膜工程における膜欠陥の発生状況を観察するために、本実施例1の素子を輝度500cd/m2で発光させながら、発光面の状態を光学顕微鏡で観察して膜欠陥の有無を評価した。発光面の均一性の観察結果も含めて表1に表す。
【0213】
[実施例11]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−2を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0214】
[実施例12]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−10を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0215】
[実施例13]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−17を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0216】
[実施例14]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−19を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0217】
[実施例15]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−21を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0218】
[実施例16]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−1を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0219】
[実施例17]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−2を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0220】
[実施例18]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−14を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0221】
[参考例2]
実施例10において、正孔注入層7の作製工程(塗布工程及び熱硬化工程)を酸素濃度21%の乾燥空気雰囲気下で実施した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0222】
[比較例4]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、PEDOT/PSSを使用した。また、正孔注入層7を形成する際に、スピンコート法によりPEDOT/PSS薄膜を成膜した後、120℃で30分加熱し、膜厚を30nmとした。これらを除いては実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0223】
[比較例5]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、比較例2で使用した化合物を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0224】
[比較例6]
実施例10において、正孔注入層7を上記比較例3と同様の方法により形成した他は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0225】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明によれば、高発光効率で高耐久であり、かつ発光面の製膜欠陥が無い有機発光素子を作製することができる。また、本発明の有機発光素子はディスプレイパネル等の表示装置への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の有機発光素子における第六の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の有機発光素子における第七の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る有機発光素子とそれの駆動するため回路と配線を示す模式的断面図である。
【図9】図8の回路の詳細を示す図である。
【図10】図8及び図9で示した有機発光素子と回路を1画素としてマトリックス状に配置し、ディスプレイを構成した状態を示す模式図である。
【図11】図10で示したディスプレイをパネルモジュール化した構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0228】
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 正孔輸送層
6 電子輸送層
7 正孔注入層(バッファ層)
8 正孔/エキシトンブロッキング層
9 電子注入層
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子の製造プロセスは、乾式法と湿式法とに分類される。ここで乾式法とは、製膜工程に際して主に低分子系材料を使用し、真空蒸着法等の気相プロセスを用いて薄膜形成を行う方法である。これに対し湿式法とは、製膜工程に際して主に高分子系材料を使用し、スピン塗布法、インクジェット塗布法、ディスペンサー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法等の方法を用い薄膜形成を行う方法である。
【0003】
真空蒸着法等の乾式法は生産装置がバッチ式であり、素子作製において、素子の発光のために必要の無い部分にも材料の膜が形成され必要量よりはるかに多い材料を無駄に消費してしまうため、生産性に課題のある方法である。
【0004】
一方、湿式法による製造は、素子の発光のために必要の無い部分に材料の膜が形成されることが少ない上、連続式処理による生産が可能である。例えば、インクジェット塗布法、ディスペンサー塗布法のような液滴吐出法による塗布を選択することができる。これらの方法では、塗布するときに、素子の発光のために必要とする部分のみに材料を塗り分けるパターンニングを同時に行うことができるので、素子の生産性を大幅に改善することができる。
【0005】
故に、昨今、有機発光素子の電荷注入層、電荷輸送層、発光層等の有機層を生産性のよい、湿式法で製膜することが要求されている。
【0006】
塗布系の正孔注入材料としては、電荷注入性を改善するためにポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物の薄膜を用いることが知られている。ただし、これらの注入材料を用いた素子は初期特性に優れるが、長時間使用した場合の輝度劣化が著しいことが問題である。
【0007】
現状では、湿式法に使用可能な電荷注入材料、電荷輸送材料は限られており、また、現在使用可能な材料を使用したとしても発光効率等の初期特性や長時間の発光による輝度劣化等の耐久特性が十分でないという問題があった。
【0008】
ところで湿式法で使用可能な重合性官能基を有する電荷輸送性材料が提案されており、先行技術として、特許文献1乃至3が知られている。ただし、これらの材料を用いても十分な特性を得るに至っていない。
【0009】
他方で、電荷輸送性構造を有するアクリル化合物又はその硬化物も提案されており、これらを有機発光素子へ用いた先行技術として、特許文献4乃至6が知られている。これらの先行文献ではアクリル化合物を硬化する方法として、紫外線の照射に加えて、架橋剤の添加、重合開始剤の添加、加熱等を組み合わせた例が示されている。しかし、開始剤等を用いずに加熱のみで硬化した例は述べられていない。
【0010】
【特許文献1】特開2001−297882号公報
【特許文献2】特開2002−212150号公報
【特許文献3】特開2004−199935号公報
【特許文献4】特開2000−268974号公報
【特許文献5】特開2005−340043号公報
【特許文献6】特開2006−66574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高効率かつ高輝度で、極めて高寿命の光出力を有し、製膜時の膜欠陥の発生が非常に少なく、安定した発光面を有する有機発光素子を提供することである。また、本発明の他の目的は、製造が容易でかつ比較的安価な塗布法で作製可能な有機発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の有機発光素子は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極と間に挟持される有機化合物からなる層と、から構成され、該有機化合物からなる層のうち少なくとも一層が、下記一般式(1)あるいは(2)で示されるアクリル化合物を少なくとも一種類含むアクリル薄膜又は該アクリル薄膜を硬化したアクリル硬化膜で形成されることを特徴とする。
【0013】
【化1】
【0014】
(式(1)において、A11及びA12は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。R11及びR12は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。Ar11及びAr13は、それぞれ置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。Ar12は、置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のベンゾアントラセン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を示す。)
【0015】
【化2】
【0016】
(式(2)において、A21及びA22は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。R21及びR22は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。Ar21及びAr24は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナンスレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。Ar22及びAr23は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナンスレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のベンゾアントラセン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を表す。Z21は、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基又は置換あるいは無置換の芳香族複素環基を表す。nは1乃至4の整数を表す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高効率かつ高輝度で、極めて高寿命の光出力を有し、製膜時の膜欠陥の発生が非常に少なく、安定した発光面を有する有機発光素子を提供することができる。また、本発明によれば、製造が容易でかつ比較的安価な塗布法で作製可能な有機発光素子を提供することができる。本発明の有機発光素子は、特に、湿式法で電荷注入層、電荷輸送層を製膜すると、生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の有機発光素子は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極と間に挟持される有機化合物からなる層と、から構成される。
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の有機発光素子を説明する。
【0021】
図1は、本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。図1の有機発光素子10は、基板1上に陽極2、発光層3及び陰極4が順次設けられている。図1の有機発光素子10は、発光層3が、正孔輸送能、電子輸送能及び発光性の性能を全て有している有機化合物で構成されている場合に有用である。また、正孔輸送能、電子輸送能及び発光性の性能のいずれかの特性を有する有機化合物を混合して構成される場合にも有用である。
【0022】
図2は、本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。図2の有機発光素子20は、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、電子輸送層6及び陰極4が順次設けられている。この有機発光素子20は、正孔輸送性及び電子輸送性のいずれかを備える発光性の有機化合物と電子輸送性のみ又は正孔輸送性のみを備える有機化合物とを組み合わせて使用する場合に有用である。また、有機発光素子20は、正孔輸送層5又は電子輸送層6が発光層を兼ねている。
【0023】
図3は、本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。図3の有機発光素子30は、図2の有機発光素子20において、正孔輸送層5と電子輸送層6との間に発光層3を設けたものである。この有機発光素子30は、キャリア輸送の機能と発光の機能とを分離したものであり、正孔輸送性、電子輸送性、発光性の各特性を有した化合物を適宜組み合わせて使用することができる。このため、材料選択の自由度が増すとともに、発光波長を異にする種々の化合物を使用することができるので、発光色相の多様化が可能になる。さらに、中央の発光層3に各キャリアあるいは励起子を有効に閉じこめて有機発光素子30の発光効率の向上を図ることも可能になる。
【0024】
図4は、本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。図4の有機発光素子は、図3の有機発光素子30において、陽極2と正孔輸送層5との間に正孔注入層7を設けたものである。この有機発光素子40は、正孔注入層7を設けることにより、陽極2と正孔輸送層5の密着性又は正孔注入性が改善されるので、低電圧化に効果的である。また、正孔注入層7の代わりにバッファー層を設けてもよいが、その機能は正孔注入層と同じである。
【0025】
図5は、本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。図5の有機発光素子50は、図3の有機発光素子30において、発光層3と電子輸送層6との間に正孔/エキシトンブロッキング層8を設けたものである。正孔/エキシトンブロッキング層8を設けることにより、正孔又は励起子が発光層3から陰極4側に抜けることが抑制されるので、発光効率を向上させるのに効果的な構成といえる。
【0026】
図6は、本発明の有機発光素子における第六の実施形態を示す断面図である。図6の有機発光素子60は、図4の有機発光素子40において、電子輸送層6と陰極4との間に電子注入層9が設けられたものである。図6の有機発光素子60は、電子注入層9を設けているので素子の低電圧化に効果的である。
【0027】
図7は、本発明の有機発光素子における第七の実施形態を示す断面図である。図7の有機発光素子70は、基板1上に陽極2、正孔注入層7、発光層3、電子注入層8及び陰極4が順次設けられている。
【0028】
ただし、図1乃至図7はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明の有機発光素子はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層、接着層又は干渉層を設ける、正孔注入層又は正孔輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成される、等多様な層構成を採用することができる。
【0029】
本発明の有機発光素子は、有機化合物からなる層のうち少なくとも一層が、アクリル化合物を少なくとも一種類含むアクリル薄膜又は該アクリル薄膜を硬化したアクリル硬化膜で形成されることを特徴とする。ここでアクリル化合物の例として、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0030】
【化3】
【0031】
式(1)において、A11及びA12は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。
【0032】
A11及びA12で表される炭素数2以上8以下の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基等が挙げられる。
【0033】
上記の2価の炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の分枝を有していてもよい。また、上記の2価の炭化水素基は、エーテル結合を1ヶ所含んでいてもよい。
【0034】
式(1)において、R11及びR12は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。
【0035】
式(1)において、Ar11及びAr13は、それぞれ置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。
【0036】
上記のAr11及びAr13で表される1価の置換基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、チエニル基等の芳香族複素環基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0037】
式(1)において、Ar12は、置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のベンゾアントラセン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を示す。
【0038】
上記のAr12で表される2価の置換基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、チエニル基等の芳香族複素環基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0039】
また、上記アクリル化合物の他の例として、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0040】
【化4】
【0041】
式(2)において、A21及びA22は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。
【0042】
A21及びA22で表される炭素数2以上8以下の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
【0043】
上記の2価の炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の分枝を有していてもよい。また、上記の2価の炭化水素基は、エーテル結合を1ヶ所含んでいてもよい。
【0044】
式(2)において、R21及びR22は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。
【0045】
式(2)において、Ar21及びAr24は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換あるいは無置換のフルオレン、置換あるいは無置換のフルオランテン、置換あるいは無置換のフェニルナフタレン、置換あるいは無置換のフェナンスレン、置換あるいは無置換のピレン、置換あるいは無置換のペリレン、置換あるいは無置換のカルバゾール、置換あるいは無置換のジベンゾフラン、置換あるいは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。
【0046】
上記のAr21及びAr24で表される1価の置換基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、チエニル基等の芳香族複素環基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0047】
式(2)において、Ar22及びAr23は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換あるいは無置換のフルオレン、置換あるいは無置換のフルオランテン、置換あるいは無置換のフェニルナフタレン、置換あるいは無置換のフェナンスレン、置換あるいは無置換のジヒドロフェナントレン、置換あるいは無置換のピレン、置換あるいは無置換のペリレン、置換あるいは無置換のベンゾアントラセン、置換あるいは無置換のカルバゾール、置換あるいは無置換のジベンゾフラン、置換あるいは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を表す。
【0048】
上記のAr22及びAr23で表される2価の置換基ビフェニル、フルオレン及びカルバゾールが有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、チエニル基等の芳香族複素環基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0049】
式(2)において、Z21は、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基又は置換あるいは無置換の芳香族複素環基を表す。
【0050】
Z21で表される芳香族炭化水素環基として、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等が挙げられる。
【0051】
Z21で表される芳香族複素環基として、ピリジル基、チエニル基、フリル基、キノリル基等が挙げられる。
【0052】
上記芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、フルオレニル基等の芳香族炭化水素環基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基及びジベンゾチオフェニル基等の芳香族複素環基、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基及びナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0053】
式(2)において、nは1乃至4の整数を表す。
【0054】
式(1)又は式(2)で表されるアクリル化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
【化5】
【0056】
【化6】
【0057】
【化7】
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
【化10】
【0061】
【化11】
【0062】
【化12】
【0063】
【化13】
【0064】
【化14】
【0065】
【化15】
【0066】
【化16】
【0067】
【化17】
【0068】
【化18】
【0069】
【化19】
【0070】
【化20】
【0071】
【化21】
【0072】
【化22】
【0073】
【化23】
【0074】
有機化合物からなる層のうち少なくとも1つの層は、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物より形成されるアクリル薄膜、又はこのアクリル薄膜を硬化して形成されるアクリル硬化膜で形成されるものである。ここで有機化合物からなる層とは、図1乃至図7の有機発光素子においては、発光層3、正孔輸送層5、電子輸送層6、正孔注入層7、正孔/エキシトンブロッキング層8及び電子注入層9が該当する。
【0075】
一方、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、電荷輸送性機能を有するトリアリールアミン骨格を有している。このため、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物より形成されるアクリル薄膜又はアクリル硬化膜は、好ましくは、電荷注入層又は電荷輸送層を形成する。より好ましくは、正孔注入層7を形成する。
【0076】
本発明の有機発光素子は、公知な正孔輸送性化合物、発光性化合物あるいは電子輸送性化合物等と一緒に使用することもできる。
【0077】
以下にこれらの公知な化合物例を挙げる。
【0078】
【化24】
【0079】
【化25】
【0080】
【化26】
【0081】
【化27】
【0082】
【化28】
【0083】
【化29】
【0084】
ここで、式(1)又は(2)で示されるアクリル化合物を、発光層のゲストとして使用する場合、アクリル化合物の含有量は、発光層の全重量を基準として、好ましくは、0.1重量%以上50重量%以下である。より好ましくは、0.5重量%以上30重量%以下である。
【0085】
また、式(1)又は(2)で示されるアクリル化合物を、発光層のホストとして使用する場合、アクリル化合物の含有量は、発光層の全重量を基準として、好ましくは、50重量%以上99.9重量%以下である。より好ましくは、70重量%以上99.5重量%以下である。
【0086】
陽極の構成材料は、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、銀、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム等の金属単体あるいはこれらを複数組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化錫インジウム(ITO),酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は、一種類を単独で使用してもよく、二種類以上を併用して使用してもよい。
【0087】
一方、陰極の構成材料は、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体、これら金属単体を複数組み合わせた合金又はこれら金属単体の塩等を使用することができる。また、酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。ここで、陰極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0088】
本発明の有機発光素子で使用する基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜等を用いて発色光をコントロールすることも可能である。
【0089】
尚、作製した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で、保護層又は封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の高分子膜又は光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属等をカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
【0090】
次に本発明の有機発光素子の製造方法について説明する。
【0091】
本発明の有機発光素子の製造方法は、以下の工程(i)及び(ii)を含むことを特徴とするものである。
【0092】
(i)式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物を少なくとも一種類含むアクリル薄膜を湿式法により製膜する工程
(ii)アクリル薄膜を不活性ガス中で加熱重合又は加熱硬化することで、アクリル硬化膜を形成する工程
湿式法により、有機発光素子を作製する場合は、塗布の容易性、結晶化のない塗料を調製するのが可能である等の理由により、通常高分子材料が使用される。
【0093】
ここで、有機発光素子の発光効率や耐久性を向上させるためには、層を構成する有機材料の純度を向上させる必要があるが、高分子材料では困難である場合が多い。即ち、高分子材料では、一般的に、その材料を製造したときに生成する副生成物又は脱離物、副反応による不純物、残留した触媒又は重合開始剤等を当該材料中から除去することが困難な場合が多い。また、材料の製造時に発生する副生成物、不純物、残留触媒、残留重合開始剤等は、有機発光素子の特性のうち、特に、輝度特性、寿命特性に悪影響を与える。
【0094】
一方、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、低分子化合物又はオリゴマーとして存在するものである。このアクリル化合物は、高分子材料と比べて精製(不純物除去)が容易であるので、純度の高い有機層を形成することができる。従って、これらの化合物を使用することにより、高分子材料特有の問題点である不純物等の除去の問題は解決される。
【0095】
ところで、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、重合性のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを有する。このため加熱、重合開始剤等によるラジカル重合反応により、分子間架橋反応が起こり、このアクリル化合物は硬化する。
【0096】
ここで、アクリル酸エステル基及びメタクリル酸エステル基の重合反応は、通常の空気中の環境下では、酸素による重合阻害作用を受けて所望の重合特性を得ることが困難である。このため、重合反応を行う際は、不活性ガス中で行う必要がある。
【0097】
実際に重合反応を行う際、不活性ガス中の酸素濃度は、好ましくは、10ppm以下である。また、この不活性ガスは、好ましくは、窒素又はアルゴンである。
【0098】
一方で、アクリル薄膜を製膜する際には、好ましくは、重合開始剤を含ませない方がよい。上述した酸素による重合阻害作用を克服する方法としては、通常重合開始剤を含ませるべきである。しかし重合開始剤が存在することにより、層を構成する当該アクリル化合物の純度が低下するだけでなく、その重合開始剤が素子の特性に悪影響を及ぼすためである。
【0099】
また、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、構造的要因から、製造環境の酸素濃度を一定の値以下にすることにより、開始剤、触媒等を使用せずとも加熱のみで重合反応が進行する。また、加熱温度も130℃乃至200℃と比較的低温で重合が進み、素子の他の部分に対する悪影響も小さい。
【0100】
硬化後の膜は不溶不融の有機薄膜となっている。よって次の工程として、この硬化膜の上から湿式法により他の有機層を積層したとしても、上から塗布する塗料に含まれる溶剤によって硬化膜が溶かされることはない。よって層を構成する材料同士の混入がない安定した積層体を有する有機発光素子を作製することができる。
【0101】
さらに、有機発光素子を使用する場合でも、当該硬化膜は3次元架橋構造を有しているため、マイグレーションによる結晶化や界面付近での不均質化、不安定化が発生することがない。従って、低分子化合物をそのまま製膜している場合よりも、安定性が高い素子を提供することができる。
【0102】
また、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、熱硬化を行う際に発生しやすい膜欠陥を発生しにくいという特徴も有する。
【0103】
この特徴は、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物が、嵩高く剛直で比較的分子量の大きいトリアリールアミン骨格と適度な長さのアルキル基とを有するためである。
【0104】
この構造的な特徴により、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、耐熱性の向上と化合物同士の相溶性を両立し得るものである。このため、製膜過程における応力や体積収縮の緩和特性を示し、耐熱性を有していることにより昇温過程の面アレを起こしにくいという特徴を有する。これらの理由により得られる素子の発光面の欠陥も非常に少なくなる。
【0105】
また、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、π電子の共役系が大きく広がる構造を有するため、分子間での軌道の重なりが大きいため、特に、電極からの正孔注入性や層内の正孔輸送性が向上するものと考えられる。
【0106】
以上より、本発明の有機発光素子は、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物を塗料状態にした上で塗布法等の湿式法により製膜し、塗膜の乾燥工程に続いて重合・硬化させて機能性硬化膜を形成する、というプロセスを踏むことが好ましい。一方で、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物は、加熱反応性を有するため、蒸着法による製膜には適さない。
【0107】
湿式法により、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物の薄膜を形成する際には、以下に説明する塗料組成物を調製して、この塗料組成物を塗膜した方がよい。
【0108】
ここで塗料組成物とは、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物を少なくとも一種類含有するものである。この塗料組成物を使用すれば、有機発光素子を構成する有機化合物からなる層、特に、電荷注入層又は電荷輸送層を塗布法により作製することが可能となり、比較的安価で大面積の有機発光素子を容易に作製することができる。
【0109】
この塗料組成物に使用する溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、n−ドデシルベンゼン、メチルナフタレン等の炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル系溶剤、クロロホルム、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール系溶剤、等が挙げられる。これらの溶媒は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の粘度や、溶液中のアクリル化合物の濃度を調整することにより、アクリル化合物から形成されるアクリル薄膜の膜厚を調整することができる。
【0110】
また式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物の他に、例えば、上述の公知な正孔輸送性化合物、発光性化合物、電子輸送性化合物等を含ませてもよい。
【0111】
塗料組成物における式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物の含有量は、好ましくは、0.05重量%以上20重量%以下であり、より好ましくは、0.1重量%以上5重量%以下である。
【0112】
塗布方法としては、キャスト法、スピンコート法、スリットコーター法、印刷法、インクジェット法、デイスペンス法、スプレー法、ディップ法、LB膜法等が挙げられる。
【0113】
本発明の有機発光素子は、式(1)又は式(2)で示されるアクリル化合物を、塗布法等の湿式法により陽極と陰極との間に形成する。アクリル化合物を含む層の膜厚は、10μmより薄く、好ましくは、0.5μm以下であり、より好ましくは、0.005μm乃至0.5μmである。
【0114】
本発明の有機発光素子において、式(1)又は(2)で示されるアクリル化合物を含有する層以外の層は、一般的な真空蒸着法等の乾式法又は適当な溶媒に溶解させた湿式法等により薄膜を形成する。本発明の有機発光素子は、好ましくは、正孔注入層に接するように発光層を設け、この発光層が塗布法により製膜されることを特徴とするものである。
【0115】
湿式法として、具体的には、キャスト法、スピンコート法、スリットコーター法、印刷法、インクジェット法、デイスペンス法、スプレー法、ディップ法、LB膜法等が挙げられる。
【0116】
特に、塗布法で成膜する場合は、適当な結着樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0117】
上記結着樹脂としては広範囲な結着性樹脂より選択できる。例えば、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリーレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、結着樹脂の形態はホモポリマーであってもよいし共重合体ポリマーであってもよい。また、結着樹脂は一種類を単独で使用してもよいし、また二種類以上を混合して使用してもよい。
【0118】
本発明の有機発光素子は、発光層の他に複数の有機層を有してもよく、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正孔/エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。これらの層は、上述したように、真空蒸着法や溶液塗布法等いかなる方法によっても作製することができる。素子を作成する際にこれらの層の膜厚は、5μmより薄く、好ましくは、1μm以下、より好ましくは、5nm以上500nm以下である。
【0119】
本発明の有機発光素子は、適宜組み合わされることによりディスプレイを構成することができる。具体的には、本発明のディスプレイは、有機発光素子と駆動回路とをそれぞれ複数有することを特徴とし、パッシブマトリックス方式又はアクティブマトリックス方式で駆動される。以下、図面を参照しながら、本発明の素子において、その応用例を説明する。尚、以下の応用例において、その駆動方式はアクティブマトリクス方式を用いている。
【0120】
図8は、基板上の有機発光素子とその外部に配置されている回路、データ線の配置を示す断面模式図である。回路は、TFTと保持容量等から構成されている。
【0121】
図8において有機発光素子は、1つのみ図示されているが、ディスプレイを構成する場合は後述する図10のように2次元状に複数配置されている。本実施形態に係る有機化合物はこの有機化合物層に含まれる。
【0122】
図9は、図8で示した回路の構成の詳細を示す回路図である。図9で示す回路は、電流プログラミング方式とよばれる代表的な回路構成である。尚、本発明のディスプレイが有する回路はこれに限るものではない。
【0123】
図9で示される回路は、ドライブトランジスタT1、スイッチングトランジスタT2、保持容量Ch、有機発光素子から構成されている。尚、この回路は周知な回路構成であるため、動作の詳細については説明を省略する。
【0124】
この有機発光素子を1つの発光点として利用してディスプレイや照明装置や電子写真方式の画像形成装置の露光光源に用いることができる。
【0125】
次に、本発明の有機発光素子をディスプレイに利用した場合について説明する。
【0126】
図8、図9で示した有機発光素子と回路を1画素として同一面内に2次元状に複数配置した状態、即ちマトリックス状に配置したものを図10に模式的に示す。
【0127】
図10のディスプレイが有する画素は、配線を介してゲートドライバ、ソースドライバと接続され、駆動パルスが供給されることで、発光状態あるいは非発光状態となる。
【0128】
このような有機発光素子が画素として同一面内に面内方向に複数配置されている領域が、ディスプレイの表示領域である。即ち、本実施形態に係る有機発光素子はディスプレイの表示領域に用いることができる。
【0129】
このディスプレイは例えばテレビやPC用の表示装置、あるいは画像を表示する部分を有する機器であれば如何なる形態も問わない。例えばこのディスプレイを搭載する携帯型の表示装置であってもよい。あるいはデジタルカメラ等の電子撮像装置や携帯電話の表示部に本実施形態に係るディスプレイを用いることができる。
【0130】
尚、図10で示したディスプレイをパネルモジュール化した構成を図11に示す。パネルモジュールとは、図10で示した構成に加え、インターフェースドライバ、接続端子等の外部機器との接続に必要な部品を備え、これらを筐体で一体化した構成を意味する。
【実施例】
【0131】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0132】
[合成例1]例示化合物No.1−16の合成
フラスコ内で、以下の試薬、溶媒を仕込み、フラスコを氷水バスで冷却した。
【0133】
下記式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.19mmol)
【0134】
【化30】
トリエチルアミン:0.42g(4.17mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
【0135】
次に、反応溶液の温度を10℃以下に保ちながら、この反応溶液中にアクリル酸クロライド0.32g(3.57mmol)を滴下した。滴下終了後、反応溶液を徐々に昇温させ、反応用液の温度を50℃に保ちながらさらに30分間反応を続けた。
【0136】
反応終了後、反応溶液を冷却した。次にこの反応溶液に、酢酸エチル100ml、10%水酸化ナトリウム水溶液50mlをそれぞれ加えて攪拌した後、分液操作を行い、有機層を回収した。回収した有機層を、さらにイオン交換水30mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。
【0137】
次に、この有機層中の溶媒を、ロータリーエバポレーターを用いて除去し、粗生成物を得た。この粗生成物について、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製を行った。具体的には、シリカゲル約10gを使用し、展開溶媒は、始めはトルエンを使用し、途中からトルエン/テトラヒドロフラン混合溶媒(混合比:10/1)を使用した。
【0138】
最後に目的化合物に該当するフラクションを回収し溶媒を減圧除去することにより、目的とする例示化合物No.1−16を0.73g得た。例示化合物No.1−16は、結晶性を示さない淡黄色の固体であった。
【0139】
[合成例2]例示化合物No.1−2の合成
各合成試薬を下記の分量で使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0140】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.32mmol)
【0141】
【化31】
トリエチルアミン:0.47g(4.62mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
アクリル酸クロライド:0.36g(3.96mmol)
【0142】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.1−2を0.77g得た。
【0143】
[合成例3]例示化合物No.1−10の合成
各合成試薬を下記の分量で使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0144】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.30mmol)
【0145】
【化32】
トリエチルアミン:0.46g(4.55mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
アクリル酸クロライド:0.35g(3.9mmol)
【0146】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.1−2を0.75g得た。
【0147】
[合成例4]例示化合物No.1−17の合成
各合成試薬を下記の分量で使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0148】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.14mmol)
【0149】
【化33】
トリエチルアミン:0.40g(3.99mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
アクリル酸クロライド:0.31g(3.42mmol)
【0150】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.1−17を0.77g得た。
【0151】
[合成例5]例示化合物No.1−19の合成
各合成試薬を下記の分量で使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。下記構造式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.19mmol)
【0152】
【化34】
トリエチルアミン:0.42g(4.18mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
メタアクリル酸クロライド:0.37g(3.57mmol)
【0153】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.1−19を0.78g得た。
【0154】
[合成例6]例示化合物No.1−21の合成
各合成試薬を下記の量使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0155】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:1.0g(1.12mmol)
【0156】
【化35】
トリエチルアミン:0.40g(3.92mmol)
テトラヒドロフラン:10ml
アクリル酸クロライド:0.30g(3.36mmol)
【0157】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。目的とする例示化合物No.1−21を0.67g得た。
【0158】
[合成例7]例示化合物No.2−1の合成
各合成試薬を下記の量使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0159】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:0.5g
【0160】
【化36】
トリエチルアミン:0.40g
テトラヒドロフラン:20ml
アクリル酸クロライド0.30g
【0161】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.2−1を0.36g得た。
【0162】
[合成例8]例示化合物No.2−2の合成
各合成試薬を下記の量使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0163】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:0.5g
【0164】
【化37】
トリエチルアミン:0.40g
テトラヒドロフラン:30ml
アクリル酸クロライド:0.30g
【0165】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.2−2を0.35g得た。
【0166】
[合成例9]例示化合物No.2−14の合成
各合成試薬を下記の量使用し、合成例1と同様な操作により合成を行った。
【0167】
下記構造式で示されるジヒドロキシ体:0.5g
【0168】
【化38】
トリエチルアミン:0.40g
テトラヒドロフラン:20ml
メタアクリル酸クロライド0.30g
【0169】
反応終了後、合成例1と同様に後処理を行い、実施例1と同様に精製を行った。これにより目的とする例示化合物No.2−14を0.33g得た。
【0170】
[実施例1]
図7に示される有機発光素子を作製した。
【0171】
ガラス基板(基板1)上に、酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて成膜し、陽極2を形成した。このとき陽極2の膜厚を120nmとした。次に、これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、IPAで煮沸洗浄後に乾燥をした。さらにUV/オゾン洗浄した。以上の方法で処理した基板を透明導電性支持基板として使用した。
【0172】
次に、例示化合物No.1−16をメチルイソブチルケトンに溶解して、濃度0.5重量%の塗布液を調製した。この塗布液を、上記の透明導電性支持基板上にスピンコート法により1000rpmで成膜した(成膜工程)。次に、作製した膜を、200℃で30分間加熱し硬化することにより、正孔注入層7を形成した(加熱硬化工程)。このとき正孔注入層7の膜厚を30nmとした。尚、上記の成膜工程及び加熱硬化工程を酸素濃度5ppmの窒素雰囲気下で行った。この熱硬化膜は、架橋構造を有している膜であり、溶剤に不溶である。
【0173】
次に、以下に示す(a)乃至(c)をクロロホルム99質量部に溶解して、塗布液を調製した。
【0174】
(a)下記式で示されるIr(ppy)3(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム):0.01質量部
【0175】
【化39】
【0176】
(b)下記式で示される電子輸送性化合物であるPBD(2−(4−ビフェニル)−5−(4−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール):0.3質量部
【0177】
【化40】
【0178】
(c)下記式で示されるPVK(ポリビニルカルバゾール、Mn=35,000):0.7質量部
【0179】
【化41】
【0180】
次に、この塗布液を正孔注入層7上に滴下し、回転数1000rpmで1分間スピンコートを行うことで発光層3である薄膜を形成した。この後、80℃で30分間加熱して、薄膜中の溶剤を蒸発させた。加熱処理後の発光層3の膜厚は50nmであった。
【0181】
次に、発光層3の上に、真空蒸着法によりフッ化リチウムを蒸着し、電子注入層9を形成した。このとき電子輸送層9の膜厚を0.5nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を0.05nm/secとした。
【0182】
さらに、アルミニウムを蒸着することで陰極4である金属層を形成した。このとき、陰極4の膜厚を100nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を1.0nm/sec乃至1.2nm/secとした。最後に、窒素雰囲気下で、保護用ガラス板を被せてアクリル樹脂系接着剤で封止した。以上により有機発光素子を得た。
【0183】
得られた素子について、ITO電極を陽極に、アルミニウム電極を陰極にして8.0Vの直流電圧を印加すると素子に電流が流れた。このときの電流密度は46mA/cm2であった。また、直流電圧の印加時に輝度2350cd/m2の緑色発光が観測できた。さらに、電流密度を30mA/cm2に保ちながら素子を連続駆動したところ、初期輝度は1610cd/m2であり、50時間後の輝度は1400cd/m2であった。
【0184】
また、本発明の有機発光素子において、製膜工程における膜欠陥の発生状況を観察するために、本実施例1の素子を輝度500cd/m2で発光させながら、発光面の状態を光学顕微鏡で観察して膜欠陥の有無を評価した。発光面の均一性の観察結果も含めた評価結果を表1に示す。
【0185】
[実施例2]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−2を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0186】
[実施例3]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−10を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0187】
[実施例4]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−17を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0188】
[実施例5]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−19を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0189】
[実施例6]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−21を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0190】
[実施例7]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−1を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0191】
[実施例8]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−2を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0192】
[実施例9]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−14を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0193】
[参考例1]
実施例1において、正孔注入層7の作製工程(塗布工程及び熱硬化工程)を酸素濃度21%の乾燥空気雰囲気下で実施した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0194】
[比較例1]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、下記式に示される4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS、商品名:バイトロンP Al−4083、バイエル社製)を使用した。また、正孔注入層7を形成する際に、スピンコート法によりPEDOT/PSS薄膜を成膜した後、120℃で30分加熱し、膜厚を35nmとした。これらを除いては実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0195】
【化42】
【0196】
[比較例2]
実施例1において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、下記式に示される化合物を使用した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表1に示す。
【0197】
【化43】
【0198】
[比較例3]
実施例1において、正孔注入層7を以下に示す方法により形成した。即ち、以下に示す(a)及び(b)をクロロホルム80質量部に溶解して塗布液を調製した。
【0199】
(a)下記式に示される化合物:1質量部
【0200】
【化44】
【0201】
(b)4−(チオフェンオキシフェニル)−ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート:0.05質量部(光開始剤)
【0202】
次に、この塗布液を透明導電性支持基板上に滴下し、回転数1000rpmで1分間スピンコートして製膜した。さらにUV照射装置により280nmの紫外線を1分間照射した後、窒素雰囲気下、150℃で10分間加熱して正孔注入層7を形成した。このとき正孔注入層7の膜厚は30nmであった。これを除いては、実施例1と同様に素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様を行った。結果を表1に示す。
【0203】
【表1】
【0204】
[実施例10]
図7に示す構造の素子を作製した。
【0205】
ガラス基板(基板1)上に、酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて成膜し陽極2を形成した。このとき陽極の膜厚を120nmとした。次に、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、IPAで煮沸洗浄後に乾燥をした。さらにUV/オゾン洗浄した。以上のようにして処理した基板を透明導電性支持基板として使用した。
【0206】
次に、例示化合物No.1−16をメチルエチルケトンに溶解し、濃度0.5重量%の塗布液を調製した。次にこの塗布液を、上記透明導電性支持基板上にスピンコート法により塗布した(塗布工程)。ここで塗布するときの回転数を1000rpmとした。次に、200℃で30分間加熱することで硬化した(加熱硬化工程)。硬化した後の正孔注入層7の膜厚は30nmであった。尚、上記の塗布工程及び加熱硬化工程は、酸素濃度5ppmの窒素雰囲気下で行った。
【0207】
次に、下記式で示されるポリ(9、9―ジオクチル)フルオレンをトルエンに溶解し、1重量%の発光層塗布液を調製した。この塗布液を上記正孔注入層7上にスピンコートして製膜した。その後80℃で30分間加熱乾燥することにより発光層3を形成した。加熱乾燥後の発光層3の膜厚は50nmであった。
【0208】
【化45】
【0209】
次に、上記有機薄膜層の上に、フッ化リチウムを真空蒸着法により蒸着し、電子注入層9を形成した。このとき電子注入層9の膜厚を0.5nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を0.05nm/secとした。
【0210】
次に、アルミニウムを蒸着して陰極4となる金属層を形成した。このとき陰極4の膜厚を100nmとし、蒸着時の真空度を1.0×10-4Paとし、成膜速度を1.0nm/sec乃至1.2nm/secとした。最後に、窒素雰囲気下で保護用ガラス板を被せ、アクリル樹脂系接着剤で封止した。以上のようにして有機発光素子を得た。
【0211】
得られた素子について、ITO電極を陽極に、アルミニウム電極を陰極にして、6.0Vの直流電圧を印加すると素子に電流が流れた。このときの電流密度は55mA/cm2の電流密度であった。また、直流電圧を印加したときに輝度1150cd/m2の青色発光が観測できた。さらに、電流密度を30mA/cm2に保ちながら素子を連続駆動したところ、初期輝度は750cd/m2であり、100時間後の輝度は610cd/m2であった。
【0212】
また、本発明の有機発光素子において、製膜工程における膜欠陥の発生状況を観察するために、本実施例1の素子を輝度500cd/m2で発光させながら、発光面の状態を光学顕微鏡で観察して膜欠陥の有無を評価した。発光面の均一性の観察結果も含めて表1に表す。
【0213】
[実施例11]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−2を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0214】
[実施例12]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−10を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0215】
[実施例13]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−17を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0216】
[実施例14]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−19を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0217】
[実施例15]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.1−21を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0218】
[実施例16]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−1を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0219】
[実施例17]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−2を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0220】
[実施例18]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、例示化合物No.2−14を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0221】
[参考例2]
実施例10において、正孔注入層7の作製工程(塗布工程及び熱硬化工程)を酸素濃度21%の乾燥空気雰囲気下で実施した以外は、実施例1と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例10と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0222】
[比較例4]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、PEDOT/PSSを使用した。また、正孔注入層7を形成する際に、スピンコート法によりPEDOT/PSS薄膜を成膜した後、120℃で30分加熱し、膜厚を30nmとした。これらを除いては実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0223】
[比較例5]
実施例10において、正孔注入層7の構成材料を、例示化合物No.1−16に代えて、比較例2で使用した化合物を使用した以外は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0224】
[比較例6]
実施例10において、正孔注入層7を上記比較例3と同様の方法により形成した他は、実施例10と同様にして素子を作製した。得られた素子について実施例1と同様に評価をした。結果を表2に示す。
【0225】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明によれば、高発光効率で高耐久であり、かつ発光面の製膜欠陥が無い有機発光素子を作製することができる。また、本発明の有機発光素子はディスプレイパネル等の表示装置への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の有機発光素子における第六の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の有機発光素子における第七の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る有機発光素子とそれの駆動するため回路と配線を示す模式的断面図である。
【図9】図8の回路の詳細を示す図である。
【図10】図8及び図9で示した有機発光素子と回路を1画素としてマトリックス状に配置し、ディスプレイを構成した状態を示す模式図である。
【図11】図10で示したディスプレイをパネルモジュール化した構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0228】
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 正孔輸送層
6 電子輸送層
7 正孔注入層(バッファ層)
8 正孔/エキシトンブロッキング層
9 電子注入層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極と、
該陽極と該陰極と間に挟持される有機化合物からなる層と、から構成され、
該有機化合物からなる層のうち少なくとも一層が、下記一般式(1)あるいは(2)で示されるアクリル化合物を少なくとも一種類含むアクリル薄膜又は該アクリル薄膜を硬化したアクリル硬化膜で形成されることを特徴とする、有機発光素子。
【化1】
(式(1)において、A11及びA12は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。R11及びR12は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。Ar11及びAr13は、それぞれ置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。Ar12は、置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のベンゾアントラセン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を示す。)
【化2】
(式(2)において、A21及びA22は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。R21及びR22は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。Ar21及びAr24は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナンスレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。Ar22及びAr23は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナンスレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のベンゾアントラセン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を表す。Z21は、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基又は置換あるいは無置換の芳香族複素環基を表す。nは1乃至4の整数を表す。)
【請求項2】
前記アクリル薄膜又は前記アクリル硬化膜が正孔注入層を形成することを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
以下の工程(i)及び(ii)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機発光素子の製造方法。
(i)前記アクリル化合物を少なくとも一種類含む前記アクリル薄膜を湿式法により製膜する工程
(ii)前記アクリル薄膜を不活性ガス中で加熱重合又は加熱硬化することで、前記アクリル硬化膜を形成する工程
【請求項4】
前記不活性ガス中の酸素濃度が10ppm以下であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記不活性ガスが窒素又はアルゴンであることを特徴とする、請求項3及び4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記アクリル薄膜を製膜する際に重合開始剤を含ませないことを特徴とする、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記正孔注入層に接するように発光層を設け、該発光層が塗布法により製膜されることを特徴とする、請求項3乃至6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の有機発光素子と駆動回路とをそれぞれ複数有することを特徴とする、ディスプレイ。
【請求項9】
請求項8に記載のディスプレイと、外部機器とのインターフェースとを備えることを特徴とする、パネルモジュール。
【請求項10】
請求項8に記載のディスプレイを搭載することを特徴とする、携帯型の表示装置。
【請求項1】
陽極と陰極と、
該陽極と該陰極と間に挟持される有機化合物からなる層と、から構成され、
該有機化合物からなる層のうち少なくとも一層が、下記一般式(1)あるいは(2)で示されるアクリル化合物を少なくとも一種類含むアクリル薄膜又は該アクリル薄膜を硬化したアクリル硬化膜で形成されることを特徴とする、有機発光素子。
【化1】
(式(1)において、A11及びA12は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。R11及びR12は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。Ar11及びAr13は、それぞれ置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。Ar12は、置換もしくは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナントレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のベンゾアントラセン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン及び置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を示す。)
【化2】
(式(2)において、A21及びA22は、それぞれ炭素数2乃至8の2価の炭化水素基を表す。R21及びR22は、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。Ar21及びAr24は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナンスレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる1価の置換基を表す。Ar22及びAr23は、それぞれ置換あるいは無置換のビフェニル、置換もしくは無置換のフルオレン、置換もしくは無置換のフルオランテン、置換もしくは無置換のフェニルナフタレン、置換もしくは無置換のフェナンスレン、置換もしくは無置換のジヒドロフェナントレン、置換もしくは無置換のピレン、置換もしくは無置換のペリレン、置換もしくは無置換のベンゾアントラセン、置換もしくは無置換のカルバゾール、置換もしくは無置換のジベンゾフラン、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェンより選ばれる2価の置換基を表す。Z21は、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基又は置換あるいは無置換の芳香族複素環基を表す。nは1乃至4の整数を表す。)
【請求項2】
前記アクリル薄膜又は前記アクリル硬化膜が正孔注入層を形成することを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
以下の工程(i)及び(ii)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機発光素子の製造方法。
(i)前記アクリル化合物を少なくとも一種類含む前記アクリル薄膜を湿式法により製膜する工程
(ii)前記アクリル薄膜を不活性ガス中で加熱重合又は加熱硬化することで、前記アクリル硬化膜を形成する工程
【請求項4】
前記不活性ガス中の酸素濃度が10ppm以下であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記不活性ガスが窒素又はアルゴンであることを特徴とする、請求項3及び4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記アクリル薄膜を製膜する際に重合開始剤を含ませないことを特徴とする、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記正孔注入層に接するように発光層を設け、該発光層が塗布法により製膜されることを特徴とする、請求項3乃至6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の有機発光素子と駆動回路とをそれぞれ複数有することを特徴とする、ディスプレイ。
【請求項9】
請求項8に記載のディスプレイと、外部機器とのインターフェースとを備えることを特徴とする、パネルモジュール。
【請求項10】
請求項8に記載のディスプレイを搭載することを特徴とする、携帯型の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−16739(P2009−16739A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179780(P2007−179780)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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