説明

有機発光部品の操作方法および有機発光部品

【課題】混合色による白色発光のエージイング中の色変化を保証する簡易な方法を提供する。
【解決手段】複数の異なった色の発光材料を含む有機層(1c)、および該有機層に電気的制御パルスを印加する電極配列(1a、1b)を含む有機発光部品(1)において、該有機発光部品を、約25Hz以上の作動周波数でパルス操作する工程、パルス化された作動の進行中に、該有機層から放射される該混合色光の、エージングにより誘発されて変動する色変化を少なくとも部分的に補償する工程、およびパルス化された作動の進行中に、該有機層からの混合色発光の予め決められた輝度を調整する工程を有し、該混合色光の変動する色変化を補償する工程を、該エージングにより誘発されて変動する色変化が既知である、操作パラメータを記録し、変動する色変化との間の大体既知である依存関係に従って、該電気的制御パルスのパルス高さを調節することにより行う。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、有機発光部品、特に有機発光ダイオード(OLED)の操作方法および有機発光部品に関する。
【発明の背景】
【0002】
近年、有機発光ダイオードに対する関心が高まっている。これには、有機白色発光ダイオードも含まれる。この技術には、照明技術の分野における用途に大きな潜在的可能性がある、と一般的に認められている。この間、有機発光ダイオードは、従来型電球の領域における性能係数を達成し(Forrest et al., Adv. Mater. 7, 624 (2004))、さらなる改良が期待されている。従って、白色発光OLEDには、現在市場を支配している照明技術、例えば白熱電球、ハロゲンランプ、低電圧蛍光管等、の代替品となる可能性がある。
【0003】
しかし、白色OLEDが照明市場で技術的な発展を遂げるためには、技術的改良がなお必要である。今日まで十分に解決されていない課題は、高効率で長寿命の白色OLEDを実現することである。現状技術水準に対応する照明技術は、数百〜数万時間の作動寿命を有する。この等級の寿命は、単色OLED、特に赤色OLED、で実証できるが、白色OLEDには当てはまらない。
【0004】
異なった色の光を放射する複数の有機領域を適切に配列することにより、白色光を放射する有機発光ダイオードは、個々のエミッタ系の寿命のために、それらの寿命に限界がある。個々の色成分の一つが他の色部分に対して強度を失うと、放射スペクトル全体が、他の成分の方向にシフトし、「白色」発光の全体的な印象が失われることになる。従って、白色発光OLEDの寿命は、個別成分の寿命により制限される。有機発光部品における基本色の寿命間に差があり、特に白色発光に不可欠な青色エミッタ系が短い寿命を示すために、白色OLEDの色成分の様々なエージングが技術的な問題を生じる。
【0005】
図1は、様々な色の領域を記したCIEカラーダイアグラムを示す。CIEカラーダイアグラム上の白色領域は中央の、日光の色座標に相当するE点の近くにある。
【0006】
典型的には、有機発光ダイオードは、電圧に依存する放射スペクトルを特徴とし、このために、光放射のCIE色座標がダイオードの輝度(luminance)の関数になる。この挙動は、OLEDが、例えば白色発光ダイオード中に複数のエミッタ系を含んでなる場合に特に顕著である。そのような挙動が望ましい場合もあるが、必要な場合には、放射位置と輝度との間の依存性を断ち切ることが望ましい。これによって、様々なCIE色座標を有するダイオードを一定の輝度で操作するか、または同じ色座標で様々な輝度を得ることができよう。
【0007】
異なった色の光を放射する有機材料のエージングに差があるために、特に青色エミッタ系の寿命が、緑色および赤色エミッタ系に対して比較的短い。青色成分が減少すると、色が白色領域から緑色および/または赤色に向かってシフトするので、エージングの差が白色OLEDの総寿命を制限する。
【0008】
さらに、蛍光青色エミッタならびにリン光緑色および青色エミッタの放射に基づく白色OLEDでは、緑色リン光エミッタの寿命が、総寿命を制限する。
【0009】
EP1227466A2は、発光部品が単色の光を放射するように、単一のエミッタ材料が有機層領域中に配列された発光部品を開示している。複数の単色発光部品を使用してカラーディスプレイを形成する。特に、そのカラーディスプレイは、赤色、緑色および青色光を放射する有機発光ダイオードを含んでなる。単色有機発光ダイオードを操作する場合、操作パラメータ、特に駆動電圧、を記録する。操作の際、駆動電圧を補正し、個々の発光ダイオードに対して一定駆動電流を維持する。このようにして、ダイオードのエージングによる輝度変化が、個々の発光ダイオードに対して補正される。補正は、各単色発光ダイオードに対して個別に行われる。これらの個別輝度補正により、カラーディスプレイ中にある個々の単色ダイオードの光の相対的比率が実質的に一定に保持され、それによって、カラーディスプレイの色外観が維持される。
【発明の概要】
【0010】
本発明の課題は、放射された光の色安定性が有機発光部品の寿命期間全体にわたって確保される、有機発光部品の操作方法および有機発光部品を提供することである。
【0011】
本発明により、この課題は、独立請求項1に記載の有機発光部品の操作方法、および独立請求項9に記載の有機発光部品により解決される。本発明の有利な実施態様は、従属請求項の範囲内に入る。
【0012】
本発明の一態様によれば、混合色光が有機層から放射されるように異なった色の光を放射する、複数の異なったエミッタ材料を含んでなる有機層と、有機層に電気的制御パルスを印加する電極配列とを備えた、有機発光部品、特に有機発光ダイオード(OLED)の操作方法であって、該方法が、以下の工程:
有機発光部品を、パルス化された作動モードにある電気的制御パルスを使用し、少なくとも約25Hzの作動周波数で操作する工程、
有機発光部品の進行しているパルス化された作動を特徴付け、エージングにより誘発されて変動する色変化に対する依存関係が少なくとも大体既知である、少なくとも一つの操作パラメータを記録することにより、ならびに前記少なくとも一つの記録された操作パラメータ、および前記少なくとも一つの操作パラメータと前記エージングにより誘発されて変動する色変化との間の前記少なくとも大体既知である依存関係に従って、前記電気的制御パルスのパルス高さを調節することにより、前記パルス化された作動の進行中に、有機層から放射される前記混合色光の、エージングにより誘発されて変動する色変化を少なくとも部分的に補償する工程、および
前記電気的制御パルスのパルス長を調節し、有機層から放射される前記混合色光の予め決められた輝度を調整することにより、前記パルス化された作動の進行中に、有機層から放射される前記混合色光の予め決められた輝度を調整する工程
を有する、方法が提供される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、混合色光が有機層から放射されるように異なった色の光を放射する、複数の異なったエミッタ材料を備えてなる有機層と、
有機層に電気的に接続され、前記有機層に電気的エネルギーを供給する電極配列と、
電極配列に接続され、少なくとも約25Hzの作動周波数を有する電気的制御パルスを印加する制御回路と、
前記電気的制御パルスのパルス高さを調節し、有機層から放射される光の予め決められた混合色を調整することができる、前記制御回路に接続された調整デバイスと、
前記電気的制御パルスのパルス長を調節し、有機層から放射される前記混合色光の予め決められた輝度を調整することができる、前記制御回路に接続された別の調整デバイスと
を備えた、有機発光部品、特に有機発光ダイオードが提供される。
【0014】
発光有機系のエージングは、通常、特定の初期作動輝度および一定作動電流に対して、有機発光部品が本来の輝度の半分に到達する時間、いわゆる半時間、により説明される。本発明は、放射される光の輝度の制御と色座標の切り離しが達成されるように、有機発光部品を、放射される光の電圧に依存する可変色座標で操作する可能性を提供する。これによって、有機発光部品の放射された色座標を特定の輝度に対して変えることができるか、または特定の色座標に対して有機発光部品の輝度を変えることができる。このようにして、放射光のエージングにより誘発される色変化を補償することができる。
【0015】
電圧または電流パルスを通したパルス化された制御により、放射された光の色座標を選択的に調節するとともに、有機発光部品の輝度も同時に調節することができる。そのような調整手段により、電圧に依存する有機発光部品の様々な色エージングを補償することができる。
【0016】
本発明により、有機発光部品を、放射された光の色および輝度を個別に調節できるように操作することができる。そのような制御可能性は、照明用途、例えば室内照明またはディスプレイにおけるバックライト照明、における有機発光部品に特に望ましい。放射された光の色をそのように選択的に調節することにより、放射光の色座標を使用者の所望に個別に適合させることができる。この様式で、色温度も、特に白色発光有機部品に対して調節することができる。
【0017】
有機発光部品に対して、電気的制御パルスのパルス高さを調節するための調整デバイス、および電気的制御パルスのパルス持続期間を調節するための別の調整デバイスに、それぞれ手動式操作素子を装備することにより、パルス高さ/パルス長を、両方の特徴的な値に対して互いに独立して手動で調節することができる。あるいは、またはこれに加えて、少なくとも一つの操作パラメータを記録するための記録手段を含む補償デバイスを備えることができ、該操作パラメータは、有機発光部品の進行しているパルス化された作動を特徴付け、エージングにより誘発されて変動する色変化に対する依存関係が少なくとも大体既知である。この実施態様には、該調整デバイスおよび該別の調整デバイスに連結された制御デバイスをさらに備え、これによって、少なくとも一つの記録された操作パラメータ、および少なくとも一つの操作パラメータとエージングにより誘発されて変動する色変化との間の少なくとも大体既知の依存関係に従って、電気的パルスのパルス高さを調節することができる。こうして、電気的制御パルスのパルス高さに関する自動調整手段を実現することができる。
【0018】
有機発光部品のパルス化された作動には、放射光の輝度は、順(forward)パルス(有機発光部品が「オン」)の際の強度、およびゼロ電圧相とも呼ばれる逆(reverse)パルス(有機発光部品が「オフ」)の際の強度の平均化から得られる。従って、輝度は、順パルスの持続時間を一定期間長くすることにより、増加させることができる。しかし、放射光の色は、制御パルス、特にパルス高さの際の電流により変化する。輝度と放射光の色との間の関係を切り離すために、印加された制御パルスのパルス長およびパルス高さを調整することができる。パルス高さを適切に調節することにより、放射色を調整することができるのに対し、パルス長は輝度を決定する。これによって、輝度の個別調整ならびに放射スペクトルの個別調整が可能である。
【0019】
ここで、パルス周波数は、広範囲に自由に選択することができるが、有機発光部品が連続的に作動している印象を観察者に与えるように、パルス周波数を調節するのが好ましい。これは特に高周波数の場合に当てはまる。可能な最も高い周波数は、有機発光部品のキャパシタンスにより制限され、キャパシタンスは、有機発光部品の面積と共に増加する。OLEDは、スイッチ−オン遅延が数ナノ秒間の範囲内にある、一般的に速度が非常に高い部品である。
【0020】
様々な色の光を放射する有機エミッタ系を使用する場合、本発明の別の態様では、作動中に、様々なエミッタ系の最短寿命を代表する放射光の色成分を選択的に再調節することができる。青色有機エミッタ系の寿命は、白色発光に寄与する他のエミッタ系の寿命よりも一般的に短いので、そのような再調節は、有機白色発光部品の青色部分に特に効果的である。白色発光部品のエージング差を少なくするために、発光の青色部分が減少する時に、パルスを選択的に増加することにより、これを再調節し、同時にパルス長を短くして有機発光部品の総輝度を一定に維持することができる。これによって、白色発光を維持しながら、総作動寿命を大幅に長くすることができる。
【0021】
特に、そのような調整手段により、有機発光部品の個々の色成分の色エージング差に反作用させることもできる。有機エミッタ系の場合、青色に関して、通常、電流または量子効率の低下が最初にあるので、そのような異なったエージングは、特に白色発光OLEDに公知である。様々な色系が混合されたOLEDでは、このために、放射された光は、特定の輝度に対して、作動進行と共に、青色部分が次第に減少し、そのために色座標が緑色−赤色放射に向かってシフトする。そのようなエージングに対処するために、OLEDのパルス化された作動の際に、青色部分の減少が作動時間全体を通して正常に起こる程度に、放射位置を青色領域に向けて連続的にシフトさせる。これによって、放射位置、特に放射の色座標が全体的に安定したレベルに維持される。
【発明の好ましい実施態様の説明】
【0022】
ここで、本発明を、図面を参照しながら、代表的な実施態様により説明する。
【0023】
図2は、有機発光部品1をパルス化された作動モードで操作するための対応する回路2を備えた配置を図式的に示す図である。2個の電極1a、1bの間に配置された有機区域1cに電気的制御パルスを印加するための電極1a、1bが、制御回路3に接続されている。電気的制御パルスは、制御回路3を通して有機発光部品1に印加され、有機区域1cにあるエミッタ材料を励起し、これらのエミッタ材料を発光させる。有機区域1cには、複数の異なったエミッタ材料が配列され、それぞれ異なった色の光を放射する。このようにして、有機区域1cから放射される光は、混合された色の光であり、特に白色光でよい。
【0024】
回路2は、有機発光部品1に、パルス高さおよびパルス長を互いに独立して調節できる電気的制御パルスを供給する。電気的制御パルスのこれらの特徴的な値を手動で調節するために、例えば押しボタンまたは回転スイッチの形態にある、手動式操作素子6a、7aが、パルス高さを調節する調整デバイス6およびパルス長を調節する別の調整デバイス7に備えられている。こうして、有機区域1cから放射される混合色光のエージングにより誘発されて変動する色変化を少なくとも部分的に補償することができる。
【0025】
手動式操作素子6a、7aに加えて、またはこれに代わる別の実施態様では(図には示していない)、自動調整手段を備える。この目的に、図2により、記録手段5および制御デバイス8を含んでなる補償デバイス4を備える。記録手段5により、有機発光部品1の進行しているパルス化された作動を特徴付け、エージングにより誘発されて変動する色変化に対する依存関係が少なくとも大体既知である、少なくとも一つの操作パラメータを測定することができる。例えば、有機区域1c中のエミッタ材料の一種に対して、その放射率は、作動持続時間の増加と共に減少することが分かる。作動持続時間は、記録手段5で測定する。次いで、少なくとも一つの記録された操作パラメータ、即ち作動持続時間、および操作パラメータとエージングにより誘発されて変動する色変化との間の少なくとも大体既知である依存関係に従って、制御デバイス8により、電気的制御パルスのパルス高さを、調整デバイス6を通して調整する。このようにして、有機区域1c中にあるエミッタ材料の一種が混合色光に対して行う貢献がエージングのために減少した時に、それを再び増加することができる。例えば、電気的制御パルスのパルス高さを増加し、エージングしているエミッタ材料の、有機区域1c中にある他のエミッタ系と比較した光への寄与を等化する。
【0026】
測定された操作パラメータ、例えば作動持続時間または放射光の光学的色分析、と、放射光のエージングにより誘発されて変動する色変化との間の依存関係は、例えば比較成分に対する校正測定から、予め知ることができるか、または進行するパルス化作動の間に決定することができる。
【0027】
パルス高さの調整から独立して、電気的制御パルスの長さを別の調整デバイス7で調節するが、これは制御デバイス8により手動または自動で行う。パルス持続時間の調整は、有機区域1cから放射された光の輝度に実質的に影響する。
【0028】
パルス高さおよびパルス長が独立して調整されるので、回路2により、有機発光部品1から放射される混合色光を、予め決められた色範囲中に、および同時に予め決められた輝度範囲内に維持することができる。特に、パルス高さを再調節し、エージングにより誘発されて変動する色変化を補償する結果として得られる輝度変化を、その後に、または同時にパルス持続時間を変化させることにより、十分に釣り合わせることができる。
【0029】
図3は、図2に詳細に示す有機発光部品1の代表的な層構造を図式的に示す。基材12上に形成された電極11の上に、有機材料の層構造13を好適な層形成方法により施す。図3により、2個の電荷キャリヤー輸送層14、15を形成し、それらの間に放射層16を形成する。最後に別の電極17を積重構造の上に付ける。2個の電極11、17の少なくとも一方は、放射層16で発生する光を確実に放出するために透明である。その上、電荷キャリヤー輸送層14、15は、通常、電荷キャリヤー、即ち正孔または電子、の一種を輸送するために最適化し、正孔を優先的に伝導する電荷キャリヤー輸送層を陽極に接続し、電子を優先的に伝導する電荷キャリヤー輸送層を陰極に接続する。
【0030】
図3は、OLEDに代表的な構造を示す。しかし、以下により詳細に説明する本発明の原理は、図3に示す構造に限定されるものではない。特に、より多くの層を、例えば複数の放射層の形態で、あるいは電荷キャリヤーを遮断するための、または電荷キャリヤー輸送層と放射区域との間の界面で励起させるための追加層の形態で、もしくは電荷キャリヤー輸送層と電極との間の、または電荷キャリヤー輸送層と放射区域との間の電荷キャリヤー注入層の形態で使用できる。その上、一つまたは二つの有機層だけ含むOLED構造も、特に重合体OLEDの分野で公知であり、本発明は、そのようなOLEDにも適用できる。
【0031】
さらに、本発明は、複数のOLED単位が積み重ねられている発光有機部品にも、これらの単位が個別に供給電圧に接続されていない限り、使用できる。
【0032】
有機発光部品の、放射光の輝度と色座標の切り離しを達成できるパルス化された制御を提供する。これには、OLEDでは、通常、放射色が供給電圧に依存しているという事実、を利用する。これは、広いスペクトルにわたって放射するOLED、特にCIE色度図(図1参照)のスペクトルの白色領域で放射するOLEDの場合に当てはまる。この放射色の供給電圧に対する依存性を選択的に利用する。放射の輝度と色度座標の切り離しを達成するには、パルス化された供給電圧を使用して制御する。
【0033】
図4は、パルス持続時間は等しいが、パルス高さが異なっている電圧パルス42、43の形態にある電気的制御パルスを図式的に示す。さらに、この図は、直流電圧41も示す。
【0034】
図5は、パルス高さが異なり、パルス持続時間が等しい電流パルス45、46の形態にある電気的制御パルスを図式的に示す。さらに、この図は、比較のために直流電圧41も示す。異なったエミッタ材料を含む有機区域(図2および3参照)に印加する場合、より高い電流には、対応して、より高い供給電圧が必要なので、異なったパルス高さは、異なった放射色を引き起こし、さらに、電流パルスの異なった高さに対して、放射光の輝度値が異なっている。
【0035】
図6は、正の電圧領域で等しいパルス長ならびに等しいパルス高さを有する2種類の電圧パルス47、48を示すが、電圧パルス47は、部品のスイッチ−オフ状態で負の電圧が印加されている、つまり正の電圧が印加されていない、という点で、電圧パルス48と異なっている。
【0036】
放射光の色と輝度の切り離した調整を行うには、好ましい操作モードでは、放射光の所望の色を先ずパルス高さを通して調節する。続いて、パルス長を変えることにより、輝度を調整する。図7は、一例として2種類の電圧パルス49、50を使用するそのような調整を示し、電圧パルス50は、小さなパルス長のために放射光の総輝度を下げるのに対し、パルス高さが等しいために、放射された混合色光の色は変化しない。
【0037】
図8は、2種類のパルス51、52に関して、放射光の輝度および色調整の類似の引き離しを示すが、そこでは、電流パルス52を使用する制御により、パルス長が短いために、部品の放射は全体的に明るさが低下する。
【0038】
図9は、長方形パルス53と比較した、電気的制御パルスに関する複数のパルス形状を図式的に示す。三角形パルス54、鋸歯パルス55および正弦波形パルス56を示す。パルス高さおよびパルス長の変化に加えて、制御パルスの形状を変えることができ、これによって、制御パルス中で電圧および流れる電流の両方が変化する。図4〜8に示す長方形パルスとは別に、例えば三角形パルス、鋸歯パルスおよび正弦波形パルスが可能であり、原則的に、より複雑なパルス形状も実現できる。様々なパルス形状により、得られる放射光の同じ輝度に対して、同じパルス振幅および同じパルス長で様々な色を発生させることができる。特に、発生させるべき特定の色に関して、原則的に、有機発光部品の最低「装荷」で、即ち、例えば最も低いパルス高さで、この色が実現されるパルス形状がある。そのようなパルス形状を選択することにより、部品の寿命を増加することができる。
【0039】
パルスにより達成される輝度に関して、電流および電圧パルス間には差があるが、電圧ならびに電流調整される制御形態に対して、様々なパルス形状を実現できる。OLEDは、小さな電流の流れですでに光を放射し、部品の一定電流効率を仮定して、これは多くの場合のOLEDにほぼ当てはまり、その輝度は、パルスが機能する面積に比例するのに対し、OLEDは閾電圧に到達した後でのみ発光し、この閾電圧は個々のOLED構造によって異なるので、この仮定は、電圧駆動される部品には不可能である。
【0040】
エージング差の補償を実現した有機発光部品の好ましい代表的な実施態様を以下に説明する。これは、2種類の異なったエミッタ材料、即ち青色およびオレンジ−赤色放射層、を含んでなるエミッタ構造を有するOLEDを構成する。他の実施態様では、様々な色の3個以上のエミッタ層を備えることもできる。一つの層中に複数のエミッタ材料を含むOLEDも提供することができる。
【0041】
代表的な実施態様におけるOLEDは、下記の層構造を含んでなる。
1)陽極:酸化インジウムスズ(ITO)
2)p−ドーピングされた正孔輸送層、F4−TCNQ4重量%でドーピングされた80nm MeO−TPD
3)正孔側中間層:10nm Spiro−TAD
4)オレンジ−赤色放射層:イリジウム(III)トリス(1−フェニルイソキノリン)15重量%でドーピングされた10nm Spiro−TAD
5)青色エミッタ層:イリジウム(III)ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナート−N,C2’)ピコリネート6重量%でドーピングされた15nm 4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル
6)電子側中間層:10nmバソフェナントロリン
7)n−ドーピングされた電子輸送層:Csでドーピングされた30nmバソフェナントロリン(分子比1:1)
8)陰極:100nmアルミニウム
【0042】
供給電圧5Vで、このOLEDは、CIE色度図の白色光領域で、CEE色座標x=0.26/y=0.34、輝度530cd/mで放射する。
【0043】
次いで、エージングを促進するために、このOLEDを、先ず電流密度31.5mA/cmで70分間、続いて電流密度63mA/cmでさらに30分間作動させた。選択した電流密度は、通常の操作条件下で使用される電流密度よりも明らかに高いので、この操作により、部品のエージングが促進される。
【0044】
OLEDの促進エージング中、本来の操作電圧5Vにおける放射の色座標を、規則的な間隔で測定した(図10参照)。その結果、放射の色座標は、CIE色度図における元の出発点から離れるように移動し、放射は黄色−オレンジ色領域に向かってシフトすることが分かった。20分間のエージング後、部品の放射は、CIE色度図における色座標の座標点+/−0.02に設定した許容最大公差をすでに越えている。エージング工程の後、OLEDの放射は、平面素子電圧5Vに対してx=0.30/y=0.37であることが分かり、従って、本来の放射位置から0.04座標点より大きく離れている。
【0045】
100分間のエージング時間を完了した後、好適な供給電圧を選択することにより、部品の放射を色座標に向けて再度シフトさせることができる。供給電圧7.5Vで、放射はx=0.26/y=0.36で観察され、これは設定した公差限界内に再び入っている。ここで部品の観察された輝度は1150cd/mであり、従って、5Vにおける本来の輝度の2倍を僅かに超えている。電圧5Vにおける本来の輝度530cd/mに対して、パルス化された作動で、パルス高さ7.5Vで、本来のパルス長の46%であるパルス長がここで必要である。パルスを対応して短くすることにより、本来の輝度値に再び到達した。
【0046】
上記の説明で開示し、請求項に記載し、図面に示す本発明の特徴は、本発明のその様々な実施態様を個別に、または任意の組合せで実行するのに重要である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】CIE色度図を示す。
【図2】有機発光部品および有機発光部品をパルス化作動で操作するための対応する回路を含んでなる配置を図式的に示す図である。
【図3】有機発光部品の層構造を図式的に示す図である。
【図4】パルス持続時間は等しいが、パルス高さが異なっている電圧パルスの形態にある電気的制御パルスを図式的に示す図である。
【図5】パルス高さが異なり、パルス持続時間が等しい電流パルスの形態にある電気的制御パルスを図式的に示す図である。
【図6】正電圧領域における、パルス長が等しい、ならびにパルス高さが等しい2種類の電圧パルスを図式的に示す図である。
【図7】パルス長が異なった、ならびにパルス高さが等しい2種類の電圧パルスを図式的に示す図である。
【図8】パルス長が異なった、ならびにパルス高さが等しい2種類の電流パルスを図式的に示す図である。
【図9】電気的制御パルスに関する複数のパルスを図式的に示す図である。
【図10】有機発光部品に対して測定されたCIE色座標と、印加された制御パルスのパルス高さのエージングおよびそれに続く補正との関係を図式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合色光が有機層(1c)から放射されるように異なった色の光を放射する、複数の異なったエミッタ材料を含んでなる有機層(1c)と、有機層(1c)に電気的制御パルスを印加する電極配列(1a、1b)とを備えた、有機発光部品、特に有機発光ダイオード(OLED)の操作方法であって、該方法が、以下の工程:
有機発光部品(1)を、パルス化された作動モードにある電気的制御パルスを使用し、少なくとも約25Hzの作動周波数で操作する工程、
有機発光部品(1)の進行しているパルス化された作動を特徴付け、エージングにより誘発されて変動する色変化に対する依存関係が少なくとも大体既知である、少なくとも一つの操作パラメータを記録することにより、ならびに前記少なくとも一つの記録された操作パラメータ、および前記少なくとも一つの操作パラメータと前記エージングにより誘発されて変動する色変化との間の前記少なくとも大体既知である依存関係に従って、前記電気的制御パルスのパルス高さを調節することにより、前記パルス化された作動の進行中に、有機層(1c)から放射される前記混合色光の、エージングにより誘発されて変動する色変化を少なくとも部分的に補償する工程、および
前記電気的制御パルスのパルス長を調節し、有機層(1c)から放射される前記混合色光の予め決められた輝度を調整することにより、前記パルス化された作動の進行中に、有機層(1c)から放射される前記混合色光の予め決められた輝度を調整する工程
を有する、方法。
【請求項2】
前記エージングにより誘発されて変動する色変化を少なくとも部分的に補償する際に、前記電気的制御パルスのパルス長を調節し、前記電気的制御パルスのパルス高さを調節することにより引き起こされる輝度変化に反作用させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機層(1c)中の前記複数の異なったエミッタ材料から放射される異なった色の光が白色光に混合される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有機層(1c)から放射される前記混合色光が、前記エージングにより誘発されて変動する色変化の前記少なくとも部分的な補償により、CIE色度図の予め決められた色領域中に維持される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記パルス化された作動の際に有機層(1c)から放射される前記混合色光のCIE値が、前記少なくとも一つの操作パラメータとして記録される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パルス化された作動の作動持続時間に関する時間値が、前記少なくとも一つの操作パラメータとして記録される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電気的制御パルスが、長方形、三角形、鋸歯形または正弦波形パルスまたはそれらの組合せとして実現される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電気的制御パルスが、電流調整された、または電圧調整された制御パルスとして印加される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
混合色光が有機層(1c)から放射されるように異なった色の光を放射する、複数の異なったエミッタ材料を備えてなる有機層(1c)と、
有機層(1c)に電気的に接続され、前記有機層に電気的エネルギーを供給する電極配列(1a、1b)と、
電極配列(1a、1b)に接続され、少なくとも約25Hzの作動周波数を有する電気的制御パルスを印加する制御回路(3)と、
前記電気的制御パルスのパルス高さを調節し、有機層(1c)から放射される光の予め決められた混合色を調整することができる、前記制御回路(3)に接続された調整デバイス(6)と、
前記電気的制御パルスのパルス長を調節し、有機層(1c)から放射される前記混合色光の予め決められた輝度を調整することができる、前記制御回路(3)に接続された別の調整デバイス(7)と
を備えた、有機発光部品(1)、特に有機発光ダイオード(OLED)。
【請求項10】
調整デバイス(6)および別の調整デバイス(7)がそれぞれ手動式操作素子(6a、7a)を備え、手動式操作素子(6a、7a)を使用して前記パルス高さおよびパルス長を調節することができる、請求項9に記載の有機発光部品。
【請求項11】
有機発光部品(1)の進行しているパルス化された作動を特徴付け、エージングにより誘発されて変動する色変化に対する依存関係が少なくとも大体既知である、少なくとも一つの操作パラメータを記録するための記録手段(5)を備えた補償デバイス(4)と、前記少なくとも一つの記録された操作パラメータ、および前記少なくとも一つの操作パラメータとエージングにより誘発されて変動する色変化との間の少なくとも大体既知の依存関係に従って、前記電気的制御パルスのパルス高さを調節することができる、調整デバイス(6)および所望により別の調整デバイス(7)に連結された制御デバイス(8)とを備えた、請求項9または10に記載の有機発光部品。
【請求項12】
制御回路(3)および/または調整デバイス(6)および/または別の調整デバイス(7)および/または補償デバイス(4)が、共通の回路中に配置されている、請求項11に記載の有機発光部品。
【請求項13】
記録手段(5)が、有機層(1c)から放射される前記混合色光の光学的特性を測定するための光学的測定デバイスを備えた、請求項11または12に記載の有機発光部品。
【請求項14】
記録手段(5)が、作動持続時間を測定するための時間測定デバイスを有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の有機発光部品。
【請求項15】
有機層(1c)が、白色光を放射するために複数の異なったエミッタ材料から構成される、請求項9〜14のいずれか一項に記載の有機発光部品。
【請求項16】
有機層(1c)が複数の層を含んでなり、何種類かの異なったエミッタ材料が幾つかの層の上に配分されている、請求項9〜15のいずれか一項に記載の有機発光部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−351538(P2006−351538A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−165175(P2006−165175)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(504432747)ノバレット、アクチェンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】NOVALED AG
【Fターム(参考)】