説明

有機金属塩類を製造するための高収率で迅速な合成法

金属カチオンおよび有機酸の塩類、特に、周期系II族のアルカリ土類金属イオンおよびカルボン酸の二価の塩類を調製するための新しい方法。この方法は、公知の合成方法で得られるものより、高収率、高純度およびより速い反応速度を得るために、高い温度(90℃以上)および任意の高圧の使用を含む。特に、本発明は、カルボン酸のストロンチウム塩の製造に関する。本方法により、新規なストロンチウム塩も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属カチオンおよび有機酸の塩類、特に、周期律表II族のアルカリ土類金属イオンおよびカルボン酸の塩類を製造する方法に関する。特に、本発明は、カルボン酸のストロンチウム塩の製造に関する。これまで可能であった方法より高純度で、より高い収率で、より短いプロセス時間を有するこのような合成を行うための新規手順および条件が本発明において記載されている。新規ストロンチウム塩も、本方法によって提供される。
【背景技術】
【0002】
アルカリ土類金属およびアルカリ金属は、元素の反応性が非常に高いため、有機金属塩類の成分としてほぼ常に酸化状態で見出される。この種の金属イオンの塩類は、自然然界に広く分布している。種々の金属イオンの分布および相対量は、非常にありふれた元素(例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム)からあまりありふれていない元素(例えばストロンチウム、バリウム、ランタンおよびガリウム)、および非常にまれな元素(例えばルビジウム、セシウムおよびベリリウム)まで非常に変動する。
【0003】
アルカリ土類金属およびアルカリ金属化合物の塩類は、多くの産業プロセスおよび食品、医薬品、薬学成分、ビタミンおよび他の健康関連製品の生産、パーソナルケアのための製品、多くの工業製品、例えば、肥料、構造材料、ガラス、鉄および鋼鉄製造、および多くの他の製品において使用される。このように、純粋な有機金属塩の効率的な製造は、非常に商業的に興味あるところである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルカリ土類金属の実用的な用途の多くについて、所望の適用に必要な性質を有する特定の塩を製造しなければならない。本発明について特に興味深いのは、非常に高い純度で有機対イオンが天然に見出されない金属イオン塩類を製造しなければならない状況である。このような塩類の製造は、一般的に、種々の水系プロセスで製造され、反応生成物の均質性および純度を制御することは困難であり、再結晶および他の精製工程を必要とし、Briggman B & Oskasson(1977)、Schmidbaur H et al.(1989)およびSchmidbaurら、(1990)から明らかなように、所望の塩の収率は低いものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の詳細な説明
本発明は、金属イオンの有機塩、特にアルカリ土類金属の有機塩を合成し、単離するための新規な方法を開示する。本発明の製造方法において、アルカリ土類金属およびアルカリ金属の有機塩を製造するための現在知られている合成法を用いて得られるよりも高い収率、純度および反応速度を確実にするために、高温および、場合により圧力が使用される。
【0006】
したがって、本発明は、有機酸の金属塩を調製するための方法であって、当該方法は、前記金属イオンのヒドロキシド塩および/またはハロゲン塩と、前記有機酸(アニオン)とを水性媒体中で約90℃以上、例えば約100℃以上、120℃以上、または約125℃以上の温度で、長くて約60分間、例えば、長くて約30分間または長くて約20分間、例えば約15分間反応させる工程を含む方法に関する。
【0007】
特定の実施形態では、この反応は、100℃以上の温度および1bar以上の圧力で密閉容器中で行われてもよい。
【0008】
反応温度の重要性を示し、所定の有機金属塩合成のための、特にストロンチウム塩の合成のための最適温度を確立するためのガイドラインを与える例が本明細書中に提供される。この合成により、いくつかの完全に新規な塩の製造が可能となり、ここで、温度および圧力は化合物の純度の鍵となるパラメーターである。この合成方法は、ほとんどの金属イオンの有機塩の製造に適用可能であるが、特に、アルカリ土類金属のカルボン酸塩を、他の方法によって得られるものよりも高い収率および純度で本発明に従って製造することができる。
【0009】
本発明の方法における重要な点は、比較的大量の不溶性炭酸塩の形成を避けることである。実際に、炭酸塩が非常に溶解度が低いため、溶液から迅速に沈殿が形成した場合、所望の反応生成物を汚染することを避けることは非常に困難である。さらに、有機金属塩を合成するための出発物質は、金属水酸化物または金属ハロゲン化物を含む(水性媒体中で炭酸塩形成に好都合である状況を可能にする)。有機金属塩の有機酸がカルボン酸である場合、しばしば問題となるが、カルボン酸の脱カルボキシル化が起こり、次いで炭酸塩の濃度が増加する危険性があるために、室温よりもわずかに高い温度まで穏やかに加熱するのみが受け入れ可能であると一般的に理解される。したがって、本発明は、室温よりもかなり高い温度の使用を可能にし、所望の塩のさらに高い収率(既知の方法と比較して)、および同じ温度で炭酸塩の形成を最低限に維持することが可能な二価金属塩を調製するための方法を提供する。本発明の方法により調製される二価金属塩の収率は、70%以上、例えば約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上または約95%以上である。沈殿する炭酸塩の量は、製造プロセスによって製造される所望の有機金属塩の量の1%未満、例えば、0.75%未満、または0.5%未満、または0.2%未満であり得る。
【0010】
本発明の方法は、加熱をやめた後すぐに熱い反応混合物をろ過し、上記反応混合物から沈殿した炭酸ストロンチウムを除去する工程をさらに含んでもよい。
【0011】
さらに、本願発明者らは、二価金属塩の結晶化を促進するために、少量のアルコール(例えばメタノールまたはエタノール)を、例えば5〜10容量%〜50〜60容量%添加することにより、所望の塩の沈殿が顕著に誘発されることを発見した。アルコールの添加は、室温で2g/lを超える溶解度を有する塩の合成において特に重要である。
【0012】
本発明の製造方法は、広範囲にわたる異なる化学物質に適用できる。特に関連性があるのは、所望の有機金属塩が、ヒトへの使用のための製品、例えば食品、薬学用途のための成分、クリーム、ローション剤および歯みがきおよびビタミンおよび他の栄養補給剤のようなパーソナルケア製品において使用される適用である。このような場合には、製品の高い純度が望まれ、本明細書に記載される製造手順は、すべての他の利用可能な方法と比較して顕著な利点を与える。
【0013】
本発明の方法において使用するのに適切な金属は、薬学目的のために試験されたかまたは使用された金属原子またはイオンから選択される。このような金属原子またはイオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、軽金属、遷移金属、ポスト遷移金属または半金属(周期律に従って)と呼ばれる群に属している。
【0014】
好ましい金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムおよびラジウムを含むアルカリ土類金属である。この方法は、炭酸塩の生成が問題を含んでおり、望まれていない金属に特に適している。
【0015】
本明細書中の実施例から明らかなように、本発明の特に適切な実施形態は出発物質として金属イオンの塩化物塩を使用する。しかし、本明細書中の実施例から明らかなように、金属水酸化物も有機金属塩の合成のための出発試薬として十分に適していることがわかっている。
【0016】
金属イオンと有機酸間とのモル比は、最高の収率を成し遂げるために重要である。通常、このモル比は、少なくとも約0.8:1、例えば約1:1、好ましくは1.1:1より上、例えば1.2:1である。
【0017】
原則として、有機酸は、任意の有機酸であってよい。特定の実施形態では、有機酸は、モノ-、ジ-、トリ-、またはテトラカルボン酸である。本発明の方法において使用するのに適切な有機酸の例は、例えば、酢酸、C25COOH、C37COOH、C49COOH、(COOH)2、CH2(COOH)2、C24(COOH)2、C36(COOH)2、C48(COOH)2、C510(COOH)2、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、アスコルビン酸、イブプロフェン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、炭酸、ギ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、樟脳酸、グルコン酸、L-およびD-グルタミン酸、ピルビン酸、L-およびD-アスパラギン酸、トリフルオロ酢酸、ラネリン酸、2,3,5,6-テトラブロモ安息香酸、2,3,5,6-テトラクロロ安息香酸、2,3,6-トリブロモ安息香酸、2,3,6-トリクロロ安息香酸、2,4-ジクロロ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジニトロ安息香酸、3,4-ジメトキシ安息香酸、アビエチン酸、アセト酢酸、アセトンジカルボン酸、アコニット酸、アクリル酸、アジピン酸、α-ケトグルタル酸、アントラニル酸、ベンジル酸、アラキジン酸、アゼライン酸、ベヘン酸、ベンゼンスルホン酸、β-ヒドロキシ酪酸、ブラシジン酸、カプリン酸、クロロアクリル酸、桂皮酸、シトラコン酸、クロトン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シスタチオニン、デカン酸、エルカ酸、エチレンジアミン四酢酸、フルボ酸、フマル酸、没食子酸、グルタコン酸、グルタル酸、グロン酸、硫酸グルコサミン、ヘプタン酸、ヘキサン酸、フミン酸、ヒドロキシステアリン酸、イソフタル酸、イタコン酸、ランチオニン、ラウリン酸(ドデカン酸)、レブリン酸、リノール酸(cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸)、リンゴ酸、m-クロロ安息香酸、メリジン酸、メサコン酸、メタクリル酸、モノクロル酢酸、ミリスチン酸、(テトラデカン酸)、ノナン酸、ノルバリン、オクタン酸、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、オルニチン、オキザロ酢酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、p-アミノ安息香酸、p-クロロ安息香酸、ペトロセリン酸、フェニル酢酸、p-ヒドロキシ安息香酸、ピメリン酸、プロピオル酸、プロピオン酸、p-tert-ブチル安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サルコシン、セバシン酸、セリン、ソルビン酸、ステアリン酸(オクタデカン酸)、スベリン酸、コハク酸、テレフタル酸、テトロル酸、スレオニン、L-スレオネート、サイロニン、トリカルバリル酸、トリクロロ酢酸、トリメリト酸、トリメシン酸、チロシン、ウルミン酸およびシクロヘキサンカルボン酸である。
【0018】
特定の実施形態では、有機酸は、アミノカルボン酸、例えば、天然アミノ酸または合成アミノ酸である。
【0019】
本発明に従って調製されてもよい他の二価金属塩は、二価金属イオンおよび以下の酸またはアミン基を有する医薬的に活性な化合物の群から選択されるアニオンとで構成される:サリチレート類、例えば、アセチルサリチレート、ピロキシカム、テノキシカム、アスコルビン酸、ナイスタチン、メサラジン、サルファサラジン、オルサラジン、グルタミン酸、ラパグリニド、メトトレキサート、レフロウノミド、ジメチルニトロサミン、アザトリオピン、ヒドロキシクロロキン、サイクロスポリン、ミノサイクリン、サラゾピリン、ペニシラミン、ジクロフェナク、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェンおよびイブプロフェンを含むプロピオン酸類、フェニルブタゾンを含むピラゾロン類、メフェナム酸、インドメタシン、スリンダク、メロキシカム、アパゾンを含むフェナメート類、フェニルブタゾンを含むピラゾロン類、ゾレドロン酸、ミノドロン酸、インカドロン酸、イバンドロネート、ゾレドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、オルパドロネート、クロドロネート、チルドロネートおよびパミドロネートのようなビスホスホネート類、セレコキシブ、バルデコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブおよびデラコキシブのようなCOX-2選択的シクロオキシゲナーゼ阻害剤、パントテン酸、エポプロステノール、イロプロスト、チロフィバン、トラネキサム酸、葉酸、フロセミド、ブメタニド、カンレン酸、カポプリル、ラサグリン、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、フォシノプリル、トランドラプリル、バルサルタン、テルミサルタン、プラバスタチン、フルボスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、スルファジアジン、トレチオニン、アダパレン、アゼライン酸、ジノプロストン、レボチロキシン、リチロニン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、アンピシリン、アモキシシリン、クラブラン酸、タキソバクタム、ナリジクシン酸、フシジン酸およびリクロフェロン[2,2-ジメチル-6-(4-クロロフェニル)-7-フェニル-2,3,ジヒドロ-1H-ピロリジン-5-イル]-酢酸、およびこれらの化合物の任意の医薬的に活性な誘導体。
【0020】
医薬的組成物における使用のためのストロンチウム塩を製造するための関連する酸の他の例は、WO 00/01692に見出され得、これは本明細書中に参考として組み込まれる。
【0021】
本発明の方法は、広範囲にわたる金属塩を調製するために使用されてもよい。本発明の特定の実施形態において、金属塩は、少なくとも1つのカルボン酸官能基を含有する有機酸と、ストロンチウム、カルシウムおよびマグネシウムを含む群から選択されるアルカリ土類金属との間で形成されてもよい。特にストロンチウムは、さまざまな疾患、特に骨の異常な調節および/または軟骨代謝に関連する疾患の処置において興味深い成分と考えられている(下記の詳細な議論を参照)。そして、本発明の特定の実施形態で、金属はストロンチウムである。
【0022】
本発明による方法の潜在能力を示すために、有機ストロンチウム塩を製造するための適用の詳細な記載が提供される。しかし、これは単に本発明の潜在能力を示すための意味のみであり、いかなる様式でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
ストロンチウム
ストロンチウムは、非放射性の安定な元素としてもっぱら天然に見出される。ストロンチウムの同位元素は26種記載されているが、地球上で安定な非放射性のストロンチウムはわずかである。天然のストロンチウムは、4つの安定な同位元素Sr-84、Sr-86、Sr-87およびSr-88の混合物であり、この中でSr-88は、すべての地球上で安定なストロンチウムのうち82.5%含まれるもっとも一般的なものである。天然の非放射性ストロンチウムの平均分子量は87.62Daである。ストロンチウムの他の既知の非天然同位元素は放射性であり、これらの放射性ストロンチウム同位元素のうち、ストロンチウム-90およびSr-89はもっとも重要である。これらは強力なベータ放射体であり、いくつかの商業的用途を有する。Sr-89は、いくつかの医療用途において使用され、一方、Sr-90は、非常に特別な適用(例えば、衛星および遠隔発電所)において使用するための人工原子力デバイスにおいて主な用途が見出されている。Sr-89の医療での使用は、主に、Sr-89同位元素が骨腫瘍を破壊するために使用される石灰化した骨組織を標的化するストロンチウムの能力にする。
【0024】
天然では、ストロンチウムは、実際には、ジカチオンとして酸化状態で常に見出され、したがって、無機アニオン(例えばカーボネート、サルフェートおよびホスフェート)と錯化した塩として見出される。比較的限定された数のストロンチウム塩が、詳細に化学的に特性決定され、構造および化学的性質が完全に決定されている。一般的に、研究されたストロンチウム塩は、他の第2の主要な群のアルカリ土類金属の対応する塩と類似の性質を示す。このことは、所定のストロンチウム塩の性質が、対応するカルシウム塩、マグネシウム塩、およびバリウム塩と似ていると予想できることを意味する。
【0025】
ストロンチウムの天然に生じる塩、例えば、炭酸塩および硫酸塩は、非常に低い水溶解度(室温で0.15g/l以下)を有する。この溶解度は、対応するカルシウム塩およびマグネシウム塩よりも低く、カルシウムよりもストロンチウムの方がイオン的性質および陽性が大きいという性質に従っている。この規則に対する例外の重要な例は、水酸化ストロンチウムがより溶解性であるという水酸化物の溶解度において見出される。このように、一般的な観察結果は、ほとんどの無機ストロンチウム塩の水溶解度は、類似のカルシウム塩よりも低いということである。このことは、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンと比較してイオン性ストロンチウムの分極力が低い結果であり、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンは、より小さな核半径に起因して分極力が高い(ストロンチウムでは1.12Åであるのに対し、カルシウムは0.99Å)。しかし、多くの無機ストロンチウム塩は非常に溶解性であることが強調されなければならない。例として、塩化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、硝酸ストロンチウムおよび酸化ストロンチウムは、225〜800g/lの範囲の水溶解度を有し、非常に溶解性である。いくつかのストロンチウム塩(例えば水酸化物塩)について、その溶解度は、対応するカルシウム塩またはマグネシウム塩よりも高い。
【0026】
有機ストロンチウム塩はすでに記載されているが、この種の化合物の文献報告は、むしろ少ない物質に限られている。これら全ては、カルボン酸を含有するアニオンのストロンチウム塩である。有機ストロンチウム塩の生理化学的特性は、対応するマグネシウム塩、カルシウム塩、およびバリウム塩と類似していることが報告された(Schmidbaur Hら、Chem Ber.(1989)122:1433-1438)。カルボン酸のストロンチウム塩は、結晶格子中にイオンを保持し、強い静電力を有する結晶性の不揮発性固体である。有機ストロンチウム塩のほとんどの結晶形は、種々の量の結晶水を含有し、この結晶水は、結晶格子中のストロンチウムイオンと配位するのに役立つ。これらの塩を溶解させるのに必要な温度は、多くの場合非常に高く、溶解する前に、一般的には300〜400℃の温度で、有機アニオンの炭素-炭素結合が破壊され、分子が分解する場合がある(Schmidbaur Hら、Chem Ber.(1989)122:1433-1438)。
【0027】
カルボン酸の全てのアルカリ土類金属塩は、水溶液中である程度まで可溶性であるが、特定の塩の溶解度は、有機アニオンの大きさおよび疎水性および静電的性質に依存してかなり変動する。最も単純な有機カルボン酸のうちの1つ(酢酸塩)はストロンチウムの明確な結晶質の塩類を作り、水に非常に可溶性である(室温で369g/lの溶解度)。さらに大きな有機アニオンは、通常は、塩の水和エンタルピーおよび格子エンタルピーに依存して、かなり低い溶解度を有する。しかし、種々のストロンチウム塩が同様の種類の結晶構造を必ずしも形成するわけではなく、それらの結晶格子エネルギーは知られていないので、このような塩の溶解度を理論的に計算することは可能ではなく、経験的に決定しなければならない。さらに、所定の塩は、異なる結晶構造で存在する場合があり、重要な性質、例えば、結合した結晶水の量が変動し、異なる結晶形態は、異なる格子および水和エンタルピーおよび溶解度を有する。
【0028】
ストロンチウムのカルボン酸塩の性質
二価のアルカリ土類金属(例えばストロンチウム)のカルボン酸塩、特にジカルボン酸塩は、溶液中で部分的なキレート効果を有することが可能なため、いくつかの固有の性質を有する。これらの場合には、これらの塩は、溶液中で錯体として存在し、二価金属イオンがこの錯体中でアニオンのカルボキシル基に結合する。この種の錯体化は、生物系において重要な場合があり、ここで、アルカリ土類金属(特にカルシウムおよびマグネシウム)は、不可欠な生理的役割をはたす。二価金属イオンの大多数は、生物系における水性環境下で、遊離形態および非結合イオン形態よりもむしろ錯体結合形態で存在してもよい。
【0029】
水溶液中のアルカリ土類金属との錯体形成定数は、ヒドロキシカルボン酸および関連する非カルボン酸よりもアミノ酸の場合に高く、これは、アミノ基が錯体形成において役割を果たし得ることを示唆する。通常、金属の半径が増加するにつれて、会合定数およびさまざまなリガンドの水和エンタルピーの差はより小さくなる。このように、ジカルボン酸を有するストロンチウム錯体の安定性は、カルシウムおよびマグネシウムを有する相当する錯体の安定性より低い。このことは、水溶液中で、キレート化するジカルボン酸が、より大きなイオンであるストロンチウムおよびバリウムよりもカルシウムおよびマグネシウムに優先して結合する傾向を有することを意味する。
【0030】
ほとんどの有機ストロンチウム塩は、商業的な適用を見出されておらず、このような化合物は、大規模な化学製造(>1000kgバッチサイズ)において利用可能ではない。しかし、最近、テトラカルボン酸のストロンチウム塩(ラネル酸)が、代謝性骨疾患(例えば骨粗鬆症)の処置における薬学用途で開発された。ラネル酸ストロンチウム塩の化学的性質は、ストロンチウムの多くのジカルボン酸塩と類似している。水中で、22〜24℃で0.76g/lの溶解度を有し、より高い温度およびより低いpHでは溶解度が若干増加する。水溶液中で、ラネル酸イオンはキレーターとして機能し、二価金属イオンを上述のように錯体化する。ラネル酸イオンの中心の3-シアノ-4-カルボキシメチルチオフェン構造は、生理学的条件下で化学的に安定であるが、ニトリル基は、加水分解を受けて種々のα-ヒドロキシ酸またはラネル酸の不飽和酸誘導体を生成する。
【0031】
ストロンチウムのカルボン酸塩の合成
カルボン酸アニオンの有機ストロンチウム塩は、多くの異なる経路により合成されることができる。この種の有機ストロンチウム塩を調製するための従来法は、水溶液中での有機酸と水酸化ストロンチウムとの反応を利用することである。例として、以下の反応スキームは、マロン酸およびストロンチウム水酸化物塩のこの中和反応を示す:
【0032】
反応式1:
【数1】

反応は固体が溶解する際に迅速に起こり、この反応後、溶解したマロン酸ストロンチウム塩の懸濁液から水を蒸発させて塩を過剰濃度にすることによって、沈殿を誘発する。マロン酸ストロンチウム塩の結晶が徐々に生成し、溶液から沈殿する。
【0033】
代替のアプローチは、適当なカルボン酸アニオンおよび塩化ストロンチウムのナトリウム塩またはカリウム塩を利用することである。全ての有機ストロンチウム塩が非常に可溶性の塩化物塩より可溶性ではないため、有機ストロンチウム塩は、これらの条件下で沈殿し、NaClおよび過剰のSrCl2が溶液中に残される。以下の反応式は、例証としてSrCl2とナトリウムマロン酸塩との反応を使用するこの反応スキームを説明し、反応生成物は等モル量で添加される。
【0034】
反応式2:
【数2】

両方の代替の合成経路において、再結晶は、十分に純粋な形態で所望のストロンチウム塩を得るために必要であると考えられる。次に、収率は、溶液からストロンチウムを完全に沈殿させることができず、沈殿する炭酸ストロンチウムの形成からストロンチウムを完全に沈殿させることができず、金属炭酸塩の溶解度が非常に低いために沈殿したストロンチウムをさらなる反応に利用することができないために、再結晶中の物質のロスの結果として減少する。アルカリ溶液中で、炭酸塩は、以下の反応式に従って、大気中の二酸化炭素の溶解によって形成される:
【0035】
反応式3:
【数3】

炭酸ストロンチウムが迅速に形成され、低い溶解度の生成物を有するため、反応式3は、右側に向かって移動し、生成物のカルボン酸塩からストロンチウムが抽出され、すなわち、反応式1(または2)は左に移動する。このように、反復性の再結晶は、所望のカルボン酸ストロンチウムの収率を下げ、一方、汚染する炭酸ストロンチウムの存在を増やす。
【0036】
上記の反応スキーム(反応式1および2)は、無機ストロンチウム塩と遊離酸形態または塩として利用可能な所望の有機アニオンとの単純な反応を含む、有機ストロンチウム塩の製造のための最終的な反応を示す。このように、これらの反応を実行するために、有機酸が市販であることが必要である。より複雑および/または変わったアニオンの場合には、ストロンチウム塩を調製する前にこれらのアニオンを合成する必要があり、上に概説される反応スキームによるストロンチウム塩の形成が、最後の合成工程に組み込まれてもよい。いずれかの場合において、本特許において開示される方法および手順は所望の反応生成物の収率および純度を向上させるのに非常に有用であり得る。
【0037】
本発明の方法に従って、任意のストロンチウム塩の製造、または有機アニオンおよび金属カチオン(例えば、アルカリ土類金属またはアルカリ金属のカチオン、特にアルカリ土類金属のカチオン)で構成される塩は、高い温度で、不活性雰囲気下、および場合によりさらに高い圧力下で反応を行うことによって、さらに高い収率、さらに良好な純度およびさらに短いプロセス時間でさらに効率よく合成されてもよい。特に、本願発明者らは、従来文献において開示される以前の合成方法と比較して、この様式において製造されるストロンチウム塩の収率および純度の顕著な向上を示す。
【0038】
本製造方法は、ジカルボン酸有機アニオンのストロンチウム塩の製造のために使用することができ、代謝性骨疾患の予防的処置および/または治療的処置の調製において使用されてもよい。
【0039】
高いストロンチウム吸収は、いくつかの動物試験において、骨石灰化における変更および骨格強度の増加と関連している。この効果は、前骨芽細胞成熟、遊走および活性に対するストロンチウムの刺激効果、およびストロンチウムによる破骨細胞活性の直接またはマトリックス媒介性の阻害のためであると考えられている。言い換えると、ストロンチウムは、骨組織上で抗再吸収剤および同化剤として作用する。
【0040】
ストロンチウムの種々の塩は当該技術分野で既知であり、例えば、EP−B 0 415 850に記載されるストロンチウムラネル酸(2-[N,N-ジ(カルボキシメチル)アミノ]-3-シアノ-4-カルボキシメチル-チオフェン-5-カルボン酸のジストロンチウム塩)である。他の既知のストロンチウム塩は、例えば、酒石酸ストロンチウム塩、リン酸ストロンチウム塩、炭酸ストロンチウム塩、硝酸ストロンチウム塩、硫酸ストロンチウム塩および塩化ストロンチウムである。本願発明者らは、いくつかのジカルボン酸のストロンチウム塩、例えば、マロン酸ストロンチウム塩、フマル酸ストロンチウム塩、コハク酸ストロンチウム塩、グルタミン酸ストロンチウム塩、およびアスパラギン酸ストロンチウム塩は、同様の分子サイズの他のジカルボン酸ストロンチウム塩よりも可溶性であることを発見した。このような塩の純粋な水溶液において、ストロンチウムは、部分的に錯体化された形態で存在する。動物、例えば哺乳動物(すなわち、ラット、イヌ、サルまたはヒト)に投与される場合、ストロンチウムイオンおよびカルボン酸アニオンと錯体化したストロンチウムは、受動的および能動的な輸送機構によって、腸の内腔から吸収される。この場合において、ストロンチウムは、利用可能なカルシウムおよびマグネシウムによる錯体から移動し、イオン化したアミノ酸とかなり安定な錯体を形成する。特定のジカルボン酸は、利用可能な遊離カルシウムと優先的に結合/錯体化するように作用し得、特に骨のターンオーバーの制御における役割において、カルシウムイオンの腸での吸収およびイオンの生理学的作用の両方を促進するため、骨疾患への予防的介入および/または治療的介入に特に適している場合がある。
【0041】
興味深い特定の塩は、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、ピルビン酸、L-およびD-アスパラギン酸、グルコン酸、L-およびD-グルタミン酸、ラネリン酸、α-ケトグルタル酸、アラキジン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ピルビン酸、サルコシン、セリン、ソルビン酸、スレオニン、サイロニンおよびチロシンのような酸を用いて形成されるストロンチウム塩である。
【0042】
特定の実施形態において、形成される塩類は、マロン酸ストロンチウム塩、乳酸ストロンチウム塩、コハク酸ストロンチウム塩、フマル酸ストロンチウム塩、Lおよび/またはD形態のアスコルビン酸ストロンチウム塩、Lおよび/またはD形態のいずれかのアスパラギン酸ストロンチウム塩、Lおよび/またはD形態のいずれかのグルタミン酸ストロンチウム塩、ピルビン酸ストロンチウム塩、酒石酸ストロンチウム塩、トレオン酸ストロンチウム塩、グルタル酸ストロンチウム塩、マレイン酸ストロンチウム塩、メタンスルホン酸ストロンチウム塩、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム塩およびそれらの混合物である。
【0043】
新規なストロンチウム塩、たとえば、L-ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物およびD-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物はさらに、本発明によって提供される。これらの塩は、はじめて以下に記載され、これらの以前に開示されていない高純度での簡便な製造および/または製造が困難な有機酸のアルカリ土類金属塩の高純度での簡便な製造が、困難な有機金属塩の効率的な合成のための開示された製造方法の潜在能力を示す。
【0044】
マロン酸ストロンチウム塩
マロン酸ストロンチウム塩は、文献中に以前に記載されている。しかし、純粋形態でのマロン酸ストロンチウム塩の合成方法は、以前に詳細には記載されていない。
【0045】
1つの報告において、無水マロン酸ストロンチウム塩は記載されていた。この著者らは、マロン酸および水酸化ストロンチウムの水溶液を室温で数日かけてゆっくりと蒸発させることにより、無色単結晶を得たことを報告した。これらの結晶は、X線結晶学により分析され、結晶水が結合していない斜方晶単位セルであることが示された(Briggman B & Oskasson A 1977、Acta Cryst.B33;1900-1906)。図2および以下の表1は、無水マロン酸ストロンチウムの解析された結晶構造の模式図を与える:
【0046】
表1:Briggman & Oskasson、1977によって記載されるような、マロン酸ストロンチウム塩の無水結晶形態におけるマロン酸塩イオンの距離[Å]および角度[°]。原子命名法については図2を参照する。
【表1】

【0047】
マロン酸ストロンチウム塩の少なくとも2つの結晶形態、図2および上の表1に記載されるような1つの無水物および結晶中で1分子の水の好ましい単位セルを有する形態が存在する。塩のストロンチウム含量が高いことが望ましい場合、例えば医薬的適用において、モル基準でストロンチウムが塩の45.7%を構成するため、無水塩の使用が好ましい。このように、高純度および高収率でのこの塩の再現性のある制御された製造を可能にする製造手順は非常に価値がある。
【0048】
マロン酸ストロンチウム塩の合成において、生成物の全収率は、合成の温度および時間に依存する。このように、合成は、オートクレーブシステムにおける合成を試験することによって改良される場合があり、温度は所望のストロンチウム塩の有機アニオン部分の分解温度未満に維持される。一例として、マロン酸は、中性条件または酸性条件で132〜134℃で分解し、マロン酸ストロンチウム塩の合成は、132℃未満の温度で行われなければならない。しかし、アルカリ条件ではマロン酸塩の安定性が向上し、通常の分解温度よりも高い温度での合成が可能になる場合がある。
【0049】
さらに関連するのは、カルボン酸塩が加熱(Q)の際に脱カルボキシル化し、気体状の二酸化炭素が放出し得るという事実である。反応式4および5に示される反応は、マロン酸の脱カルボキシル化が、カルボアニオンの中間体を介する反応を促進する酸の添加によって促進されることを示す。
【0050】
【数3】

低温では、式4の反応が遅いために脱カルボキシル化は顕著ではない。しかし、温度を上げて酸を添加することにより、反応は終了するまで進む場合がある。マロン酸ストロンチウム塩の合成において、最適な手順によって、不活性ガスまたは蒸気のいずれかのガス圧下アルカリ条件下で密閉された反応容器を使用することによって高収率で生成することが判った。この最適化の結果、反応式4および5の反応に従い、これらの反応は両方とも左に進むと予想され、マロン酸塩イオンの安定性が高まる。脱カルボキシル化の危険性を下げるために蒸気およびアルゴンが使用されたが、他の不活性ガスも同様に使用することができた。
【0051】
したがって、マロン酸ストロンチウム塩は、マロン酸の懸濁物と水酸化ストロンチウムとを100℃より高いが130℃よりは低い温度に維持してマロン酸の分解を避け、高圧(1bar以上)下、密閉容器中で反応させることによって合成されてもよい。この方法によって、反応時間はたった15分で、単純なろ過工程の後に、純粋なマロン酸ストロンチウム塩を高い収率で得ることができる。
【0052】
グルタミン酸ストロンチウム塩
L-グルタミン酸ストロンチウム塩は、水酸化ストロンチウムとL-グルタミン酸とを還流下3時間反応させた後、冷却し、2週間かけてゆっくりと結晶化させることにより、以前に調製されている。
【0053】
本発明の方法において、水酸化ストロンチウムとグルタミン酸とを約120〜約135℃の温度で約1〜約1.7barの圧力で、場合により不活性ガス雰囲気下で約15〜約60分間反応させてグルタミン酸ストロンチウム塩を得ることによって、L-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物を調製した。この方法はさらに、加熱をやめた後すぐに熱い反応混合物をろ過し、反応混合物から沈殿した炭酸カルシウムを除去する工程を含んでもよい。この反応の最適化についてのさらなる詳細およびガイドラインは実施例8に見出される。
【0054】
上述のように、本発明による方法を用いて、本願発明者らは、既知のグルタミン酸ストロンチウム塩とは異なるストロンチウムの新規グルタミン酸塩(L-グルタミン酸ストロンチウム塩五水和物)を調製した。
【0055】
この新規な塩の調製および結晶構造に関する詳細は、本明細書中の実施例5に見出される。この新規な塩に関して以下に詳細に記載される。
【0056】
X線結晶分析(図1)により、合成されたグルタミン酸ストロンチウム塩が、図1および2および表2および3に記載される、以前に記載されたL-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物とは異なることが判った。
【0057】
本発明の方法によって製造された別の新規なグルタミン酸ストロンチウム塩は、D-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物である。この塩の性質および結晶構造は実施例10に記載される。
【0058】
D-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物およびストロンチウムジ-L-グルタミン酸塩五水和物の場合には両方とも、本特許において記載される高温製造方法によるX線分析に適用可能なこれらのストロンチウムの2つの新規な有機塩の高純度で均質な結晶形態での迅速な製造は、困難な有機金属塩を製造するための方法の適用可能性の例を提供する。
【0059】
アスパラギン酸ストロンチウム塩
L-アスパラギン酸ストロンチウム塩も、L-アスパラギン酸と水酸化ストロンチウムとを反応させることによって以前に調製されている。この反応は還流下で3時間かけて行われ、得られた反応混合物を3日かけて冷却し、結晶形成を開始させた。結晶構造を解明するために、得られたL-アスパラギン酸ストロンチウム塩結晶についてX線結晶解析を行った(H.Schmidbaur、P.Mikulcik & G.Mueller(1990)、Chem Ber.、123;1599-1602を参照のこと)。この観察により、単離したL-アスパラギン酸ストロンチウム塩が三水和物形態で形成されることが判った。
【0060】
要約すると、本願発明者らは、異なるストロンチウム塩が異なる合成経路を必要とすることを発見し、いくつかのストロンチウム塩について、最適化された合成および製造手順を同定した。本発明に特に関連があることの中で、ジカルボキシルアミノ酸アスパラギン酸およびグルタミン酸塩のストロンチウム塩(D形態またはL形態のいずれか)およびマロン酸ストロンチウム塩の合成は、従来の反応経路に従った場合には非常に困難であり、一般的に、得られた結晶塩の収率および純度が低くなることが判った。例えば医薬的に使用するためのジカルボキシルアミノ酸の純粋なストロンチウム塩の大規模製造を容易にするために、本願発明者らは、これらの特定のストロンチウム塩の種々の合成経路を研究した。
【0061】
このように、驚くべきことに、十分に定義された純粋な六水和物形態でのグルタミン酸ストロンチウム塩の合成が、グルタミン酸塩の遊離酸形態および水酸化ストロンチウムを用いて最も簡便に行われ、高温、例えば、80℃より高い温度、または好ましくは100℃または120℃または最も好ましくは130℃より高い温度を必要とすることが判った(実施例5〜17を参照)。さらに、少量のアルコールの添加が、溶解した水溶性有機ストロンチウム塩の結晶形成を促進することが判った(実施例3を参照)。さらに、本発明において、ジカルボン酸のストロンチウム塩の新規な結晶形態が開示される(実施例5、6および10を参照)。
【0062】
本発明により調製されるストロンチウム塩が、医薬の製品(例えばクリーム、ローション剤、軟膏、錠剤、カプセル、ゲル類など)で使用されてもよい。上述のように、ストロンチウムは、軟骨および/または骨状態および/または他の状態に効果を有し、ストロンチウム塩は、哺乳動物における軟骨および/または骨状態ならびに/あるいは軟骨および/または骨代謝の調整不全、例えば、骨粗鬆症、骨格の骨折の治癒、整形移植組織の安定化、骨関節炎、慢性関節リウマチ、レッグ-カルベ-ペルテス病、ステロイド誘発された骨粗鬆症、化学療法または高活性抗レトロウイルス療法(HAART)のような他の治療によって誘発される骨量減少または全身紅はん性エリテマトーデス(SLE)の処置および/または予防のための医薬的組成物の調製のために使用されてもよいと考えられる。この医薬的組成物は、1つ以上の生理学的に受容可能な賦形剤をさらに含んでもよい。
【0063】
哺乳動物における軟骨および/または骨疾患ならびに/あるいは軟骨および/または骨代謝の調整不全から生じる状態を処置および/または予防するために、それぞれ種々の量のストロンチウム、関連するマロン酸塩、α-ケトグルタル酸塩またはアミノ酸、例えば、グルタミン酸および/またはアスパラギン酸を投与する可能性が望ましい場合がある。本発明の医薬的組成物中のストロンチウム(および、例えば、関連するマロン酸塩、α-ケトグルタル酸塩またはアミノ酸の場合)の量は、さらなる量のストロンチウムをストロンチウム含有化合物の形態で組成物に添加することによって調整されてもよい。ストロンチウム含有化合物は、上述の塩から選択されてもよい。
【0064】
以下に、本発明の個々の塩の調製のさらなる詳細な記載が与えられる。ストロンチウムに関するすべての詳細は、本発明のすべての他のアルカリ土類金属塩またはアルカリ金属の塩にも適用される。
【0065】
さらに、ストロンチウム塩についての上述の詳細および特定は、関連する場合にはいつでも、個々のストロンチウム塩に対して必要な変更を加えて適用され、個々のストロンチウム塩についての以下に記載される詳細および特定は、一般的に、関連する場合にはいつでもストロンチウム塩に必要な変更を加えて適用される。さらに、本発明の方法は、他の有機金属塩の製造に対して等しく関連しつつ適用される。
【0066】
図面の簡単な説明
図1は、2つのストロンチウム塩のX線分析のディフラクトグラムを示す。上側のディフラクトグラムは以下のものを示す:水酸化ストロンチウムおよびL-グルタミン酸によって、実施例2に記載される反応条件を用いるが高い温度で合成されるような、グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物。この塩および得られたディフラクトグラムは、以前に記載されたL-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物に相当する(H.Schmidbaur、I.Bach、L.Wilkinson & G.Mueller(1989)、Chem Ber.122;1433-1438)。下側のディフラクトグラムは、本実施例に開示されるように、塩化ストロンチウムおよびL-グルタミン酸から合成されたグルタミン酸ストロンチウム塩六水和物を示す。新規なグルタミン酸ストロンチウム塩は、1個のストロンチウムイオンおよび2個のモノプロトン化グルタミン酸塩イオンで構成されるジ-L-グルタミン酸ストロンチウム塩五水和物として同定された。
【0067】
図2は、Briggman B & Oskasson A 1977、Acta Cryst.B33;1900-1906に開示されるような、結晶形態でのマロン酸ストロンチウム塩(無水)の分子構造を示す。この結晶は、任意の半径によって示される原子を用いて示される。
図3は、b軸に沿って見た(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物の結晶パッキングを示す。ストロンチウムの9個の配位は、灰色の影のついた多面体として示される。H原子は明確化のために省略されている。
【0068】
図4は、75%の確率での置換楕円面および原子のナンバリングを示す、(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物結晶の非対称単位を示す。H原子は、任意のサイズの円によりあらわされる。
図5は、実施例8に記載されるような方法によって調製されたグルタミン酸ストロンチウム塩六水和物の結晶のX線粉末ディフラクトグラムを示す。
【0069】
図6は、実施例9に記載され、実施例18に記載されるように分析されるような方法によって調製されたマロン酸ストロンチウム塩の結晶のX線粉末ディフラクトグラムを示す。
図7は、75%の確率での置換楕円面および原子のナンバリングを示す、D-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物(左側パネル)およびこの結晶の非対称単位(右側パネル)の結晶パッケージングを示す。H原子は、任意のサイズの円によりあらわされる。左側パネルにおいて、結晶はα軸に沿って見られ、Srの9個の配位は八面体で示されている。
【実施例】
【0070】
実施例1-比較のために
溶解した塩化ストロンチウムおよび適切なカルボン酸アニオンの溶解したナトリウム塩からの沈殿による、ストロンチウムの結晶性塩を調製するための既知の方法の使用
100mLの体積のガラスビーカー中で、カルボン酸のナトリウム塩5gを30〜50℃以下の温度にわずかに加熱した少量の水に溶解した。最終的な体積は25〜50mLであった。別のビーカーに、SrCl210g(SrCl2六水和物、Sigma-Aldrich 43、966-5)を水100mLに溶解した。この後者の溶液を溶解したナトリウム塩の第1の溶液内にゆっくりとデカンテーションした。最初の曇りが観察されるまで移動を続け、全量が50〜100mLになった。この溶液を、顕著な量の有機ストロンチウム塩の結晶化した沈殿があらわれるまで、室温(22〜24℃)で数日間インキュベートした。
【0071】
進行する反応は、ストロンチウムイオンとフマル酸ナトリウムの反応によって例示される(反応スキーム(a)および(b)):
【数4】

沈殿させた後、吸引フラスコを用いてブフナー漏斗で溶液をろ過し、結晶を少量のエタノールで洗った。いくつかの塩の結晶は非常に溶解性であり、結晶の収率を高めるために、溶液をさらに長い時間、例えば少なくとも30〜60分間放置した。結晶化を繰り返し、収率約50%を得た。L-アスパラギン酸および乳酸塩のストロンチウム塩は非常に溶解性であり、室温で25g/Lを超える溶解度を有する。
【0072】
ストロンチウムの乳酸塩およびL-アスパラギン酸塩を、過剰の塩化ストロンチウムを含む溶液から沈殿させ、乳酸塩の大きな結晶は、溶媒をゆっくりとエバポレーションすることにより得られた。
【0073】
実施例2-比較のために
カルボン酸を水酸化ストロンチウムで中和することによる、結晶性塩を調製するための一般的な方法
少量の適切な有機酸プロパー(0.75〜3g、以下の表を参照)を、30〜50℃の温度まで加熱することによって水に溶解した。次いで、水酸化ストロンチウム(Sigma-Aldrich、Sr(OH)2・8H2O、MW265.71、CAS番号1311-10-0、約10g/L)をゆっくりと添加した。次いで、磁気撹拌棒を入れ、懸濁物を撹拌し、穏やかな加熱(30〜50℃)を開始した。しばらくすると溶液は透明になり、すべての固体物質が溶解した。加熱を続け、3時間インキュベーションした後、溶液を熱いままでブフナー漏斗でろ過した。非常に少量の不純物がフィルターに残った。
次いで、ろ液を室温で一晩冷却し、所望のストロンチウム塩の純粋な微細粉末状結晶が成長した。再結晶を繰り返すことによってこの塩をさらに精製することができた(表2)。
【0074】
表2: 有機ストロンチウム塩合成のために使用される出発試薬の量およびアニオンの遊離酸形態および水酸化ストロンチウムを用いた一般的な反応経路後の8個の特定の有機ストロンチウム塩の合成における回収率。
【表2】

【0075】
(注)
*)Sr(OH)2・8H2O中のストロンチウム含量の計算された回収率(%)および対応する酸の最小含量、例えば酒石酸において1:1比に対応する化学量論量。表2(上)のストロンチウム塩は、粉末X線結晶学によって特性決定され、対応するディフラクトグラム(示されない)は、この生成物が相対的に純度が低く、質が悪いことを示した(すなわち、不均一な結晶形態)。従って、室温合成の最大収率は30%であると評価され、これは、X線ディフラクトグラムにおける特徴的なピークの強度から計算された。このように、概算回収率を得るために重量に因子0.3を掛け、ストロンチウム塩の分子量を、結合した結晶水の関連する量とともに使用した。不正確ではあるが、この方法により、表2の白色粉末が、所望の生成物を高い収率では含有しなかったことがわかる。生成物の残りのフラクションは、主として未反応試薬(すなわち水酸化ストロンチウム)および炭酸ストロンチウムからなる。表2のストロンチウム塩が6個の水分子を結晶構造中に含有している場合、見かけの収率と比較して、収率はさらに10〜50%下がる。決定におけるこれらの概算値および困難は、塩が再結晶によって分離される場合にかなりの量の炭酸ストロンチウムが形成することに起因する。
1)フマル酸は水に不溶性であり、完全に溶解するまでエタノールを懸濁物に添加する。この物質を用いて合成を続ける。
2)ストロンチウム-AKG塩はわずかに褐色の外観を有している。
3)所定量の水酸化ストロンチウムおよびL-アスコルビン酸塩に加えて、水に溶解したさらに4.087gのSrCl2・6H2Oを反応混合物に添加する。
【0076】
結論として、ストロンチウム塩を調製するための既知の方法は、比較的低い収率を与えた(多くとも40%未満)。さらに、本実施例のデータは、従来技術の文献に開示される方法によってストロンチウム塩を合成する場合、炭酸ストロンチウムの形成、不均一な結晶形成、および反応生成物中の未反応出発生成物の存在が一般的な現象であることを示す。以下の実施例では、さらに高い収率でストロンチウム塩を調製する方法のためのガイダンスが与えられる。以下に与えられる実施例は、例示の目的を意図しており、いかなる様式でも本発明を限定することを意図するものではない。さらに、当業者は、本発明によって他のアルカリ土類金属塩または目的の有機金属化合物を調製するためのガイダンスを発見することができる。
【0077】
実施例3
エタノール沈殿を用いて有機金属塩を製造するための既知の合成方法の改良
実施例1および2に記載される方法の改良として、本願発明者らは結晶化を促進するために、少量のアルコール(例えばメタノールまたはエタノール)を、例えば5〜10容量%〜50〜60容量%添加することにより、所望のストロンチウム塩の沈殿が顕著に促進されることを発見した。エタノールの添加は、室温(22〜24℃)で2g/lを超える溶解度を有する塩の合成において特に重要であり、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸塩および乳酸塩のストロンチウム塩を合成するのに実質的な利点を提供する。短い時間で必要な生成物に到達するために、最初の段階から溶液中で初期の結晶化または初期の曇りを観察することが重要であった。
【0078】
以下の実施例では、アルコール沈殿が、本発明の調製中に特定のストロンチウム塩の結晶化を加速および増大させるために有利に適用可能であるかどうかについての情報を得るために、ストロンチウム塩の溶解度を決定するためのガイダンスが与えられる。
【0079】
実施例4
有機ストロンチウム塩の溶解度の決定
ストロンチウム塩の合成
大多数のストロンチウム塩は、実施例1に記載される一般的な合成方法に従って有機酸のナトリウム塩と塩化ストロンチウムとを反応させることによって得ることができた。しかし、溶解度観察のためのクエン酸ストロンチウム塩、酒石酸ストロンチウム塩、コハク酸ストロンチウム塩およびα-ケトグルタル酸ストロンチウム塩は、実施例2に記載されるようなカルボン酸の遊離酸形態および水酸化ストロンチウムからの合成によって得られた。有機カルボン酸ストロンチウム塩の溶解度を純水中で測定した。これらの塩の溶解度をさらに、温度の関数として測定した。温度制御されたインキュベーター中で塩の飽和溶液をインキュベートすることにより測定を行った。さらに、塩の溶解度を、純粋な蒸留水中および0.05M炭酸アンモニウム緩衝液(生理学的pH7.5)で試験した。
【0080】
緩衝液を室温(22〜24℃)または30℃または40℃に温度制御された水浴中に浸した。試験管を撹拌し、その後、溶液を一定温度のインキュベーター中で24時間インキュベートした。任意の残った塩化ストロンチウムが溶解度の決定に与える潜在的な影響を排除するために、すべての沈殿を試験管の底に集め、沈殿の上澄み溶液を注意深く取り出し、新しい溶液と交換した。溶液を交換した後、試験管を再び撹拌し、さらに24時間放置した。これらの溶液から、溶解したストロンチウム塩を特定の温度で1mLの体積で集めた。この溶液を50mLまで希釈した後、フレーム原子吸光分析(F-AAS)で分析した。連続したサンプリングの前に、溶液を次の温度で24時間平衡化させた。
【0081】
フレーム原子吸光分析F-AASによるストロンチウムの分析
溶液中のストロンチウムを定量するために2つの方法を使用した:フレーム原子吸光分析(F-AAS)、およびさらに感度が高い誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)。ほとんどの調査について、F-AAS方法で十分な感度を有していた。
【0082】
非常に溶解性のストロンチウム塩のいくつかを、F-AASによる分析の前にさらに希釈した。バックグラウンドシグナルの較正のためのハロゲンランプを取り付けたPerkin-Elmer 2100を用いて測定を行った。ストロンチウムを0.2mmのスリットで測定し、波長は58のエネルギーおよび8mAの電流で操作して460.8nmであった。
【0083】
有機ストロンチウム塩の溶解度に対する温度およびpHの影響
表3に列挙される大多数の有機ストロンチウム塩について、20〜40℃の間隔で温度を変化させても溶解度はほとんど影響を受けなかった(表3)。しかし、L-グルタミン酸ストロンチウムについては、20〜40℃の範囲で温度による顕著な影響が観察された。この塩の溶解度は、ほとんどの他の塩と比較して観察された間隔で3倍を超えて増加した。生理学的条件(37℃)での溶解度は、基質の医薬的用途と関連しており、より高い温度でグルタミン酸ストロンチウムの溶解度が驚くほど増加することは、非常に潜在能力の高い治療的な意味を有するかもしれないことが注記される。
【0084】
pH7.5の炭酸アンモニウム緩衝液中でのストロンチウム塩の溶解度は、一般的に、純水中で決定される溶解度よりも高かった(表3)。しかし、いくつかの注記できる例外が存在し、例えば、マレイン酸ストロンチウム塩は、緩衝液中で溶解度が減少する。従って、表3に示されるように、水中で得られた値を比較することによって、ストロンチウム塩の溶解度を比較することにもっとも関連することが判った。
【0085】
相対溶解度
室温および40℃での有機ストロンチウム塩の水溶解度を表3に列挙した。L-アスパラギン酸および乳酸のストロンチウム塩は、使用した実験手順での溶解度の実際の決定を妨げる50g/lを超える溶解度を有していた。
【0086】
この結果は、実施例1および2に記載される製造手順によって合成される場合、クエン酸塩、フマル酸塩、および酒石酸塩がすぐに沈殿するという合成実験中の観察結果と一致している。これは、22℃および40℃の両方で他の有機ストロンチウム塩と比較してこれらの塩の溶解度が低いことによって明らかなように、これらのストロンチウム塩の低い溶解度の指標である。
【0087】
グルタミン酸塩は、特に40℃の温度で、他の塩よりも高い溶解度を示した。この塩の合成中に、本願発明者らは、実施例3に記載されるように、溶液にアルコールを添加することによる、塩の収率の顕著な向上を発見した。アルコールの添加により、結晶成長の開始が促進された。他の試験したストロンチウム塩は、室温で数日後、溶媒を蒸発させた後にのみ沈殿した。アルコールの添加は、結晶形成および沈殿を開始させるのに必要ではないが、沈殿を顕著に促進し、所望の塩の合成方法および収率を向上させた。
【0088】
表3 F-AASによって決定された、pH7.5の水緩衝液中、40℃および室温(22〜24℃)での観察されたストロンチウム塩の相対溶解度。
【表3】

*)モノカルボン酸
**) ジカルボン酸-グルタミン酸塩は六水和物塩である
***)トリカルボン酸
****)テトラカルボン酸
【0089】
実施例5
本発明による100℃での合成による、新規な塩、(L-)グルタミン酸ストロンチウム塩五水和物の調製
最初に、グルタミン酸(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体L-グルタミン酸(Sigma Aldrich、C59NO4、MW187.14g/モル、CAS番号142-47-2、ロット番号426560/1、充填コード43003336)14.703g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体SrCl2(SrCl2六水和物、Sigma-Aldrich43、966-5、MW266.6)26.66g(0.1モル)を添加した。次いで、磁気撹拌棒を入れ、撹拌および加熱を開始し、懸濁物が沸点に達するまで維持した。最終的な懸濁物は乳白色であり、撹拌装置の中程度の回転速度を維持することによって撹拌を維持した。二酸化炭素が溶液に入ることを防ぐために、ビーカーをカバーガラスで覆った。
【0090】
数分間沸騰させ撹拌した後、溶液は透明になり、すべての固体物質が溶解した。沸騰を維持し、必要な場合には追加の水を添加し、沸騰によって失った水を交換した。3時間沸騰させた後、溶液を沸騰したままブフナー漏斗でろ過した。非常に少量の不純物がフィルターに残った。ろ液を室温まで冷却し、エタノールを添加すると、L-ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物の純粋な微細粉末状結晶が成長した。最終的な生成物の沈殿は、1時間以内にろ液中で進行した。生成物をろ過し、オーブン中で0.5時間110℃で乾燥し、シリカオレンジを入れたデシケーター中で12時間乾燥した。X線結晶学による分析およびFAASによる分析の前に、塩を乳鉢によって微細粉末に粉砕した。
【0091】
X線結晶分析(図1を参照)により、合成したグルタミン酸ストロンチウム塩が、以前に記載されたL-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物とは異なっていることが判った(H.Schmidbaur、I.Bach,L.Wilkinson & G.Mueller(1989)、Chem Ber.122;1433-1438)。Schmidbaurらによる文献中に以前に記載されたグルタミン酸ストロンチウム塩六水和物は、非常に低い溶解度(0.023g/l)を有することが報告されており、一方、本実施例に開示される方法によって調製されるグルタミン酸ストロンチウム塩は2g/lを超える溶解度を有していた。この後者のパラメーターは、本発明において記載されるようなストロンチウム塩の潜在的な医療用途のために非常に重要である。この塩は、ストロンチウムの新規なグルタミン酸塩として同定された:L-ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物として1個のストロンチウムイオンに対して2つの一水和グルタミン酸部分を含有する。この塩についての配位は以下のように同定された:
【0092】
(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物は、単位サイズa=8.7097Å、b=7.2450Åおよびc=14.5854Å、体積:904.891(0.158)Å3の単斜晶系P21空間群に属する均一結晶で形成された。X線結晶学の手順の詳細な記載については、実施例18を参照のこと。
(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物の結晶組成は、図3および4に示される。
【0093】
表4:(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物結晶についての鍵となる原子間距離(Å)。
【表4】

使用した原子ナンバリングは図5に示されるとおりである。すべてのH原子のパラメーターは最初に自由に決められた。Rietweld改良の最後のサイクルでは、CH2基およびCH基のH原子は、それぞれ0.97Åおよび0.98ÅのC-H距離を有して計算された位置に配置され、その上に結合する原子が配置された。結晶構造中の水分子について、O-H距離は0.84Åに制限され、N-H距離は0.89Åに制限された。交換パラメーターは、対応するC、N、またはO原子の1.2倍(CHおよびNH)または1.5倍(OH)のUeqに設定された。
【0094】
表5:(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物の水素結合幾何学(Å1°)。
【表5】

使用した原子ナンバリングは図5に示されるとおりである。
【0095】
表6:(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物のねじれ角(°)。
【表6】

使用した原子ナンバリングは図5に示されるとおりである。
【0096】
(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物の合成のさらなる改良は、不純物の炭酸ストロンチウムの形成を最終的に導き得る二酸化炭素との接触を防ぐ、窒素またはアルゴンによる水およびすべての水溶液の脱気を含んでもよい。当業者は不活性ガス雰囲気下で手順を進行させるように容易に適応可能である。
【0097】
実施例6
本発明による100℃での合成による、アスパラギン酸ストロンチウム塩三水和物の調製
最初に、アスパラギン酸(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体L-アスパラギン酸(Fluka,C59NO4、MW133.11g/モル、CAS番号56-84-8、ロット番号432866/1、充填コード52603495)13.311g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体水酸化ストロンチウム(Sigma-Aldrich、Sr(OH)2・8H2O、MW265.71、CAS番号1311-10-0)26.571g(0.1モル)を添加した。次いで、磁気撹拌棒を入れ、撹拌および加熱を開始し、懸濁物が沸点に達するまで維持した。最終的な懸濁物は乳白色であり、撹拌装置の中程度の回転速度を維持することによって撹拌を維持した。二酸化炭素が溶液に入ることを防ぐために、ビーカーをカバーガラスで覆った。
【0098】
数分間沸騰させ撹拌した後、溶液は透明になり、すべての固体物質が溶解した。沸騰を維持し、必要な場合には追加の水を添加し、沸騰によって失った水を交換した。3時間沸騰させた後、溶液を沸騰させたままブフナー漏斗でろ過した。非常に少量の不純物がフィルターに残った。次いでろ液を室温まで冷却し、アスパラギン酸ストロンチウム塩三水和物の純粋な微細粉末状結晶が成長した。最終的な生成物の沈殿は、1時間以内にろ液中で進行した。生成物をろ過し、オーブン中で0.5時間110℃で乾燥し、シリカオレンジを入れたデシケーター中で12時間乾燥した。X線結晶学による分析およびFAASによる分析の前に、塩を乳鉢によって微細粉末に粉砕した。
【0099】
アスパラギン酸ストロンチウム塩三水和物の全収率は、再結晶前に約98%であり、不純物の大多数は、試薬および炭酸ストロンチウムの残りからなっていた。この収率は、たった3%しか得られなかった従来の条件下での合成(実施例2を参照)によって得られる収率よりも顕著に高い。このように、本明細書中に開示されるような高温合成法は、より高い純度のアスパラギン酸ストロンチウム塩を生じつつ、収率の顕著な向上および合成時間の短縮を与える。この生成物は、X線結晶学によってアスパラギン酸ストロンチウム塩三水和物であると明白に同定され、Cambridge Crystallographic Databaseの結果およびH.Schmidbaur、P.Mikulcik & G.Mueller(1990)、Chem Ber.123;1599-1602からの情報と比較された。X線結晶学手順の詳細な記載については、実施例18を参照のこと。
【0100】
合成のさらなる改良は、不純物の炭酸ストロンチウムの形成を最終的に導き得る二酸化炭素との接触を防ぐ、窒素またはアルゴンによる水およびすべての水溶液の脱気を含んでもよい。当業者は不活性ガス雰囲気下でこの手順を進行させるように容易に適応可能である。
【0101】
実施例7
本発明による100℃での合成による、マロン酸ストロンチウム塩無水物の調製
最初に、マロン酸(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体マロン酸(Fluka、MW104.06g/モル、CAS番号141-82-2、ロット番号449503/1、充填コード44903076)10.406g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体水酸化ストロンチウム(Sigma-Aldrich、Sr(OH)2・8H2O、MW265.71、CAS番号1311-10-0)26.571g(0.1モル)を添加した。次いで、磁気撹拌棒を入れ、撹拌および加熱を開始し、懸濁物が沸点に達するまで維持した。最終的な懸濁物は乳白色であり、撹拌装置の中程度の回転速度を維持することによって撹拌を維持した。二酸化炭素が溶液に入ることを防ぐために、ビーカーをカバーガラスで覆った。
【0102】
数分間沸騰させ撹拌した後、溶液は透明になり、すべての固体物質が溶解した。沸騰を維持し、必要な場合には追加の水を添加し、沸騰によって失った水を交換した。3時間沸騰させた後、溶液を沸騰したままブフナー漏斗でろ過した。非常に少量の不純物がフィルターに残った。ろ液を室温まで冷却し、マロン酸ストロンチウム塩の純粋な微細粉末状結晶が成長した。最終的な生成物の沈殿は、迅速にろ液中で進行し、生成物の大多数がフィルターに見出された(加熱せず)。まれな場合には、沈殿がろ液中で進行した。生成物をろ過し、オーブン0.5時間110℃で乾燥し、シリカオレンジを入れたデシケーター中で12時間乾燥した。X線結晶学による分析およびFAASによる分析の前に、塩を乳鉢によって微細粉末に粉砕した。
【0103】
マロン酸ストロンチウム塩無水物の全収率は、再結晶前に約98%であり、不純物の大多数は、試薬および炭酸ストロンチウムの残りからなっていた。この生成物は、X線結晶学によってマロン酸ストロンチウム塩(無水)であると明白に同定され、Cambridge Crystallographic Databaseと比較された(実施例18の記載を参照のこと)。
【0104】
合成のさらなる改良において、無水マロン酸ストロンチウム塩を本発明の方法において10kgスケールで合成し、さらに大きなスケールの合成のための方法に適用可能であることを示した。Sr(OH)2・8H2O 15.80kgを精製水63.2Lに溶解し、95〜100℃まで加熱した。マロン酸5.63kgを4.1Lの精製水に溶解し、ろ過した後、さらに水1.4Lを添加し、溶液を95〜100℃まで加熱した。2つの溶液を不活性窒素雰囲気下で密閉反応容器中で混合し、還流下で20分間撹拌した。次いで、加熱をやめ、溶液を40〜50℃まで2〜4時間かけて冷却し、マロン酸ストロンチウム塩を沈殿させた。沈殿をろ過し、塩をさらなる水13.2Lで洗浄し、減圧下70℃で完全に乾燥した。無水の高純度マロン酸ストロンチウム塩9.4kgを均一微細結晶白色粉末として得て、これは収率94%に相当する。この生成物は、X線結晶学によってマロン酸ストロンチウム塩(無水)であると明白に同定され、Cambridge Crystallographic Databaseと比較された。X線結晶学手順の詳細な記載については、実施例18を参照のこと。
【0105】
実施例8
本発明による100℃を超える温度を用いた、ジカルボン酸のストロンチウム塩の製造方法
以前に開発された方法および実施例1および2に詳細に記載される方法に従って、ジカルボン酸有機酸のストロンチウム塩の合成、特にアミノ酸のストロンチウム塩の合成は、低い収率および汚染物質から所望の反応生成物を分離する困難性に起因して、大規模スケール(すなわち>1kg)を製造するのが困難である場合がある。ストロンチウムの炭酸塩は、反応が二酸化炭素を通常レベルで含有する周囲空気中で行われる場合に、不純物が生成するため、特に関心が高い。実施例4〜7において、本願発明者らは、ストロンチウムのジカルボン酸塩がアニオンの遊離酸形態および水酸化ストロンチウムから製造される場合、生成物の全収率は、合成の温度および時間に依存する。この反応において反応を完結させるために、他の手段または手順が所望でない炭酸ストロンチウムの形成を制御するために使用されない場合には、反応混合物中のストロンチウムが空気中の二酸化炭素と反応することが可能な十分な時間、適切なアミノ酸および水酸化ストロンチウムの混合物を水中で沸騰させることが必要である。本実施例では、本願発明者らは、温度を密閉容器中で100℃を超える温度まで上げ、反応時間を顕著に減らし、二酸化炭素を含まないガスの不活性雰囲気を容易に導入可能である、最適化された反応条件を与えることによって、さらに合成を改良する方法を開示する。
【0106】
本実施例は、オートクレーブ系中でのL-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物を合成するための条件の最適化から代表的なデータを提供する。実施例5において使用される条件と対照的に、水酸化ストロンチウム塩が出発物質として使用され、L-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物の形成を生じる。L-グルタミン酸ストロンチウム塩が例として使用されるが、本実施例に記載される最適化はさらに、他のストロンチウム塩の合成にも適用可能であり、実際の反応条件は本実施例に開示されるように最適化することができる。反応温度は、所望のストロンチウム塩の有機アニオン部分の融点未満または分解温度未満に維持されなければならない。
【0107】
L-グルタミン酸ストロンチウム塩は、最適化実験におけるモデルストロンチウム化合物として使用された。生成物の純度を、結晶学的データと比較することによって、およびストロンチウム含量を測定することによってモニタリングした。理想的には、ストロンチウム含量は、これらの実験で形成された生成物であるL-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物中で25.7%である。他のストロンチウム塩は、同様の方法によって高い収率および高い純度で調製され得る。
【0108】
実験
溶液の調製:グルタミン酸(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体L-グルタミン酸(Sigma Aldrich、C59NO4、MW187.14g/モル、CAS番号142-47-2、ロット番号426560/1、充填コード43003336)14.703g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体水酸化ストロンチウム(Sigma-Aldrich、Sr(OH)2・8H2O、MW265.71、CAS番号1311-10-0)22.257g、26.571gまたは31.885(0.08モル、0.1モルまたは0.12モル)を添加した。
【0109】
最適化実験
塩を調製した後、9つの最適化実験を表7の設定に従って行った。この表では、用語「塩基-酸比」は、水酸化ストロンチウムとグルタミン酸のモル比を示す。
表7:L-グルタミン酸ストロンチウム塩を合成するためのパラメーターおよび最適化手順の主な結果。
【表7】

最適プロセスを使用することなく、圧力をモニタリングした。定量パラメーターを使用せずにストロンチウム含量(Sr%)をFAASによって測定した。グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物の理論的なストロンチウム含量は25.7%である。収率(%)を定量パラメーターとして適用した。
【0110】
手順
1.計算量の酸を秤量し、ブルーキャップオートクレーブボトルに移し、ミリポア水を添加した。微細に粉砕した懸濁物を得るために、このボトルを密閉して振りまぜた。
2.計算量の水酸化ストロンチウム八水和物を秤量し、(1)の酸溶液に添加し、すべての物質の粗い塊が微細に粉砕された粉末になるまでボトルを激しく撹拌した。
3.ボトルをオートクレーブに入れ、温度を設定した。オートクレーブ中ではさらなる撹拌は行わなかった。
4.t=100℃でオートクレーブのバルブを閉にし、反応を開始させた。
【0111】
5.その間、実際の温度および実際の圧力についてオートクレーブをモニタリングした。
6.オートクレーブの反応時間終了後、安全予防策の観点からできる限り蒸気を抜く。
7.約110℃でオートクレーブを開け、溶液を取り出した。高いレベルの混合度を得るために、再びボトルを振り混ぜた。
8.オートクレーブ後に溶液を熱いままですぐにブフナー漏斗でろ過し、フィルター中に少量の痕跡量の炭酸塩が残った。室温まで冷却中に溶液から生成物を沈殿させた。
9.沈殿後に、生成物をろ過し、オーブン中で0.5時間110℃で乾燥した。次いで、シリカオレンジを入れたデシケーター中で乾燥した。最後に、生成物を乳鉢によって微細粉末に粉砕した。
10.粉砕後に生成物を秤量し、全収率を計算した。
【0112】
ストロンチウム含量(Sr%)
サンプル0.2gをミリポア水で調製した0.1M HNO3 100mLに溶解した。この溶液を、1%KClの溶液によってさらにファクター500まで希釈し、ストロンチウム含量をFAASによって決定した。バックグラウンドシグナルの較正のためのハロゲンランプを取り付けたPerkin-Elmer 2100を用いて測定を行った。ストロンチウムを0.2mmのスリット幅で測定し、波長は58のエネルギーおよび8mAの電流で操作して460.8nmであった。
【0113】
X線結晶学
純度の第2の検査を、実施例18において詳細に記載されるように、Huber G670回折計を用いて粉末X線結晶学によって行った。グルタミン酸ストロンチウム塩の特徴的なディフラクトグラムは図5に示される。
【0114】
結果および議論
上の表7に列挙された結果から、反応生成物中のストロンチウムのモル%から明らかなように、いくつかの合成条件では、比較的収率が低く、グルタミン酸ストロンチウム塩の純度が低いことが明らかである。実験番号8の生成物は、比較的低収率で得られ、予想されるストロンチウムの25.7%を含有していなかった。しかし、一般的に、最適化実験の結果は予想された生成物に密接している。不完全な反応は、ストロンチウムの含量が低すぎる生成物を与える。実験1および5で使用される条件は、予想された値と最も一致するストロンチウム含量を与えた。
【0115】
全収率に対する個々のパラメーターの影響を研究することによって(表4)、温度、反応時間および塩基-酸比が合成に重要であることが明らかになり、全体積はあまり重要ではないことが明らかになる。100%より高い収率は、不完全な乾燥に起因して実験条件2、3、4、5および7で観察される(表7)が、この影響は、平均値が考慮されるとほぼ排除される。
【0116】
最大収率は、高温(133℃)、短い反応時間および余剰の水酸化ストロンチウムを用いることによって得ることができた。従って、温度は時間よりも重要であるが、塩基-対-酸比に対する重要性と比較される。最適化実験の最大収率を確認するための最適化のコントロールとなる10番目の実験を行ない、この実験の結果は、表7に報告される発見と一致していた。
【0117】
合成のさらなる改良は、炭酸塩の形成を減らすための、不活性雰囲気の合成環境への導入、および窒素ガスまたはアルゴンガスのいずれかによるすべての溶液の脱気を含む。このような塩は、通常の空気雰囲気下で容易に形成される場合があり、ほとんどのアルカリ土類金属およびアルカリ金属の炭酸塩の溶解度が非常に低いため、これらの炭酸塩は反応混合物から容易に沈殿する。
【0118】
実施例9
本発明による100℃よりも高い温度を用いたマロン酸ストロンチウム塩の製造方法
L-グルタミン酸ストロンチウム塩以外のストロンチウム塩のための開示された高温合成方法の適用可能性を確認するために、マロン酸ストロンチウム塩を高温合成法により調製した。基本的に、L-グルタミン酸ストロンチウム塩を調製するために見いだされた反応条件(実施例8)を使用した。マロン酸(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体マロン酸(FLUKA 63290、MW104、1、CAS番号141-82-2)10.41g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体水酸化ストロンチウム(Sigma-Aldrich、Sr(OH)2・8H2O、MW265.71、CAS番号1311-10-0)22.257g、26.571gまたは31.885(0.08モル、0.1モルまたは0.12モル)を添加した。実施例8に記載される反応手順を続け、温度を130℃未満に維持してマロン酸の分解を避けつつ、反応時間は15分に維持した。
【0119】
酸に対するSr(OH)2のモル比1.2を用いた合成方法によって最も高い収率が得られた。
本実施例で開示された高温合成法により得られたマロン酸ストロンチウム塩のX線粉末ディフラクトグラムを図7に示す。X線結晶学手順の詳細な記載については、実施例18を参照のこと。
【0120】
合成したストロンチウムのマロン酸塩の明らかにされたX線ディフラクトグラムは、以前に記載されたマロン酸ストロンチウム塩の無水結晶のX線ディフラクトグラムと一致している。安定なベースライン、および十分に定義された回折ピークの間隔から、マロン酸塩の結晶形態が均一であり純粋であることが明らかである。このように、純水な結晶および十分に定義されたマロン酸ストロンチウム塩を高温合成法によって容易に得ることができた。
【0121】
実施例10
高温合成法によるD-グルタミン酸の新規ストロンチウム塩の調製
他のラセミ体のストロンチウム塩を調製するための高温合成方法の適用可能性を確認するために、さらなる実験を行った。D-グルタミン酸ストロンチウム塩が選択された。この塩は、以前には調製されていない。以下のようにD-グルタミン酸の懸濁物を調製することによって合成した:250mLビーカー中で、固体D-グルタミン酸(Sigma Aldrich、HO2CCH2CH2CH(NH2)CO2H、MW147.13、CAS番号6896-26-1)14.713g(0.1モル)を純水100mLに溶解した。この懸濁物に、固体水酸化ストロンチウム(SigmaAldrich、Sr(OH)2・8H2O、MW265.71、CAS番号1311-10-0)31.898g(0.12モル)を添加した。実施例8に記載される反応手順を続け、温度を132℃に維持し、反応時間を15分に維持した。反応が終了した後、D-グルタミン酸ストロンチウム塩をろ過し、乾燥し、X線回折分析にかけ、この構造が実施例18に記載されるような構造であることが判った。
【0122】
D-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物は、単位サイズa=7.3244Å、b=8.7417Åおよびc=20.0952Å、体積:1286.65Å3の斜方晶系P2111空間群に属する均一結晶で見出された。D-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物の結晶形態は、以前に記載されたL-グルタミン酸ストロンチウム塩の構造と類似していた(H.Schmidbaur、I.Bach、L.Wilkinson & G.Mueller(1989)、Chem Ber.122;1433-1438)。図8は、この結晶の構造および単位セル幾何学を示す。
【0123】
以下の配位が得られた(表8および9)。
表8:D-グルタミン酸ストロンチウム塩の鍵となる原子間距離(Å)
【表8】

【0124】
表9:D-グルタミン酸ストロンチウム塩の座標。水素原子の座標が表中に含まれ、原子ナンバリングは図5に示されるとおりである。
【表9】

【0125】
実施例11
ギ酸ストロンチウム塩の合成
基本的に、L-グルタミン酸ストロンチウム塩を調製するために見いだされた反応条件実施例8を使用した。マロン酸(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体マロン酸(FLUKA 33015、MW104.1、CAS64-18-6)4.603g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体水酸化ストロンチウム(Sigma Aldrich、Sr(OH)2・8H2O、MW265.71、CAS番号1311-10-0)31.898g(0.12モル)を添加した。実施例8に記載される反応手順を続けた。
【0126】
実施例12
マロン酸マグネシウムの合成
純粋形態のマロン酸マグネシウムを、マロン酸ストロンチウム塩を調製するために見いだされた反応条件(実施例9)を使用して高収率および高純度で合成した。マロン酸ナトリウム(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体マロン酸二塩基性一水和物(SIGMA M1875-100G、MW 166.05、CAS26522-85-0)16.605g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体塩化マグネシウム六水和物(FLUKA 63068、MgCl2・6H2O、MW 203.3、CAS7791-18-6)24.410g(0.12モル)を添加した。実施例8に記載される反応手順を続けた。
【0127】
実施例13
L-グルタミン酸亜鉛二水和物の合成
基本的に、L-グルタミン酸ストロンチウム塩を調製するために見いだされた反応条件(実施例8)を使用した。グルタミン酸ナトリウム(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体L-グルタミン酸一ナトリウム一水和物(ALDRICH G2834、MW 187.14、CAS 142-47-2)18.714g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体塩化亜鉛(FLUKA、96469、MW 136.28、CAS 7646-85-7)13.628g(0.1モル)を添加した。反応物をオートクレーブ中の密閉容器に入れ、温度を15分間で132℃まで上げて、その後反応を止め、その後に反応混合物の温度を92〜98℃にし、ブフナー漏斗でろ過し、所望のL-グルタミン酸亜鉛塩は、ろ液から容易に沈殿した。収率は約95%であり、純度は96%より高かった。
【0128】
実施例14
マロン酸亜鉛二水和物の合成
基本的に、L-グルタミン酸亜鉛を調製するために見いだされた反応条件(実施例13)を使用した。マロン酸ナトリウム(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体マロン酸二塩基性一水和物(SIGMA M1875-100G、MW 166.05、CAS26522-85-0)16.605g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体塩化亜鉛(FLUKA、96469、MW 136.3、CAS 7646-85-7)13.628g(0.1モル)を添加した。次の製造工程は、実施例13に記載されるとおりであった。
【0129】
実施例15
L-グルタミン酸バリウムの合成
基本的に、L-グルタミン酸亜鉛を調製するために見いだされた反応条件(実施例13)を使用した。L-グルタミン酸(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体L-グルタミン酸(FLUKA 49449、MW 147.13、CAS 56-86-0)14.713g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体水酸化マグネシウム八水和物(FLUKA 11780、Ba(OH)2・8H2O、MW 315.5、CAS 12230-71-6)37.86g(0.12モル)を添加した。実施例8に記載される反応手順を続けた。
【0130】
実施例16
L-グルタミン酸カルシウムの合成
基本的に、L-グルタミン酸亜鉛を調製するために見いだされた反応条件(実施例13)を使用した。グルタミン酸ナトリウム(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体L-グルタミン酸一ナトリウム一水和物(ALDRICH G2834、MW 187.14、CAS 142-47-2)18.714g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体塩化カルシウム二水和物(FLUKA 21097、MW 147.0、CAS 10035-04-8)17.6424g(0.12モル)を添加した。実施例8に記載される反応手順を続けた。
【0131】
実施例17
マロン酸カルシウムの合成
基本的に、マロン酸ストロンチウム塩を調製するために見いだされた反応条件(実施例9)を使用した。マロン酸ナトリウム(白色)の懸濁物を、250mLビーカー中で、ミリポア水100mLを固体マロン酸二塩基性一水和物(SIGMA M1875-100G、MW 166.05)16.605g(0.1モル)に添加することによって調製した。この懸濁物に、固体塩化カルシウム二水和物(FLUKA 21097、MW 147.0、CAS 10035-04-8)17.6424g(0.12モル)を添加した。実施例8に記載される反応手順を続けた。
【0132】
実施例18
X線回折による結晶構造の決定
一般論
本願発明者らは、三次元反復を有する構造を有するものとして結晶物質を定義する。すなわち、もっとも小さな同一単位(単位セル)が存在し、この同一単位は、三次元における翻訳によって結晶のいかなる部分にも適合する。この単位セルのサイズは、典型的には、無機材料および有機材料について3〜25Åである。このような単位セルの三次元配列はさらに、単位セルのすべての角に結合する複数セットの格子平面を含有している。このようなセットにおける格子平面間の距離は、0〜単位セル自身の最大寸法までである。この平面距離は、回折のために使用されるX線波長と同じオーダーの大きさの0.5〜2.4Åである。このような結晶がX線ビーム中におかれる場合、特徴的な干渉パターンまたは回折パターンを作成する格子として作用する。記録された回折された放射の位置は、格子平面の距離(すなわち単位セルのサイズ)によって決定され、記録された回折された強度は、単位セル中の原子の位置および対称性によって決定される。実際的な目的のために、固有の結晶構造は、結晶構造を同定または決定するために使用することができる固有の回折パターンを作成することを意味する。構造分析についてよく使用される2つの一般的な方法が存在する:単結晶法および粉末回折法。
【0133】
単結晶法
この方法は、未知の物質の結晶構造を決定するために使用される。文字通り、たった1つの結晶(典型的には0.3mm未満のサイズ)が用いられる。この結晶を単結晶回折計に取り付け、独立した方向に回転し、完全な三次元回折パターンを約10時間で集めることができる。回折点の位置から、単位セルの寸法が計算され、点の強度から、単位セルないの原子配置が導かれ得る。導かれた構造は、精度の範囲内で固有であり、典型的には、原子間距離で0.01Åより上で良好であり、この方法はさらに、構造中の分子の絶対構造に感度が高い。現代の回折計およびソフトウエアを用いて、この方法は、有機化合物および金属有機化合物の99%で成功している。
【0134】
粉末回折
粉末サンプルは、理想的には、ランダム配向で無限量のマイクロメートルサイズの結晶を含有する。X線によって照射される場合、それぞれの結晶子はそれぞれに回折して、回折パターンを与える。その結果、粉末回折パターンは、三次元の単結晶パターンの一次元投影である。粉末回折パターンの解釈は、単結晶パターンほど直接的ではない。単位セルのサイズおよび対称性に依存して、粉末回折パターンは、種々の反射重なり度を示す。それにもかかわらず、ピーク位置は、なお単位セルのサイズの関数であり、強度は単位セル含量の関数である。粉末回折パターンは、おおよそ観察された構造の指紋であり、粉末回折データベースおよび有効な検索-マッチプログラムを用いて、本願発明者らは、データ収集に10分間、既知の構造を安全に同定する分析に数分間をかけることができる。粉末回折は、一般的に物質の構造的な特性決定に役立つ。相同定を除いて、この方法は、構造解析、構造の改良および結晶性、結晶サイズおよびサイズ分布、応力/ひずみの研究などによく使用される。この方法は固体結晶物質を主に意図しているが、アモルファス材料および繊維状材料および薄膜からの情報も容易に得られる。
【0135】
粉末回折装置
回折計:Guinier(透過)幾何学で操作され、一次的な石英集束モノクロメーターおよび画像プレート検出器を取り付けた、一体型レーザー/光電子増倍管読み出しシステムを有する、Huber G670粉末回折装置
X線発生器:40kVおよび30mA
照射:CuKα1 1.54059Å
装置較正:強度および2θ-スケールを全パターンRietveld改良法であわせたSi標準(NBS)で検査した。較正は1週間にほぼ1回、回折計の調整の後に行った。
【0136】
サンプルホルダー:フラットプレートスコッチテープ、スコッチテープ中の活性領域は10×10mm
測定:範囲:2θで2〜100°。検出器は2θで1ステップ0.05°ずつ読み出す。露出時間は散乱した粉末に依存して15〜120分である。
【0137】
測定手順:サンプルをメノウ乳鉢および乳棒で粉砕し、スコッチテープ上のサンプルホルダーに置く。サンプルホルダーを粉末回折計の取り付け位置に取り付け、ロッキングモーターをスタートさせる。データ収集プログラムにおいて、ファイル名をつけ(典型的にはサンプル名)、任意の他のコメントまたは観察結果を入力する。測定時間を入力し、データ収集を開始する。ファイル名、測定時間および操作者をノートに記載する。測定が完了した後、粉末回折パターンを印刷し、操作者がサインする。検索-マッチプログラムを用いてサンプルを同定しようとする試みを通常は行う。
【0138】
参考文献
Briggman B & Oskasson A、1977、Acta Cryst、B33;1900-1906
Schmidbaur Hら、Chem Ber.、(1989)122:1433-1438
Schmidbaur,H,P.Mikulcik & G.Mueller(1990)、Chem Ber.、123;1599-1602
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、2つのストロンチウム塩のX線分析のディフラクトグラムを示す。上側のディフラクトグラムは以下のものを示す:水酸化ストロンチウムおよびL-グルタミン酸によって、実施例2に記載される反応条件を用いるが高い温度で合成されるような、グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物。この塩および得られたディフラクトグラムは、以前に記載されたL-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物に相当する(H.Schmidbaur,I.Bach,L.Wilkinson & G.Mueller(1989),Chem Ber.122;1433-1438)。下側のディフラクトグラムは、本実施例に開示されるように、塩化ストロンチウムおよびL-グルタミン酸から合成されたグルタミン酸ストロンチウム塩六水和物を示す。新規なグルタミン酸ストロンチウム塩は、1個のストロンチウムイオンおよび2個のモノプロトン化グルタミン酸塩イオンで構成されるジ-L-グルタミン酸ストロンチウム塩五水和物として同定された。
【0140】
【図2】図2は、Briggman B & Oskasson A 1977,Acta Cryst.B33;1900-1906に開示されるような、結晶形態でのマロン酸ストロンチウム塩(無水)の分子構造を示す。この結晶は、任意の半径によって示される原子を用いて示される。
【図3】図3は、b軸に沿って見た(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物の結晶パッキングを示す。ストロンチウムの9個の配位は、灰色の影のついた多面体として示される。H原子は明確化のために省略されている。
【図4】図4は、75%の確率での置換楕円面および原子のナンバリングを示す、(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物結晶の非対称単位を示す。H原子は、任意のサイズの円によりあらわされる。
【0141】
【図5】図5は、実施例8に記載されるような方法によって調製されたグルタミン酸ストロンチウム塩六水和物の結晶のX線粉末ディフラクトグラムを示す。
【図6】図6は、実施例9に記載され、実施例18に記載されるように分析されるような方法によって調製されたマロン酸ストロンチウム塩の結晶のX線粉末ディフラクトグラムを示す。
【図7】図7は、75%の確率での置換楕円面および原子のナンバリングを示す、D-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物(左側パネル)およびこの結晶の非対称単位(右側パネル)の結晶パッケージングを示す。H原子は、任意のサイズの円によりあらわされる。左側パネルにおいて、結晶はα軸に沿って見られ、Srの9個の配位は八面体で示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンのヒドロキシド塩および/またはハロゲン塩の少なくとも1つと、有機酸(アニオン)とを水性媒体中で約90℃以上、例えば約100℃以上、120℃以上、または約125℃以上の温度で、長くて約60分間、例えば長くて約30分間または長くて約20分間、例えば約15分間反応させることを含む、前記有機酸のアルカリ土類金属および/またはその他の二価の金属イオン塩を調製するための方法。
【請求項2】
前記塩が少なくとも1つのカルボン酸基を含む有機酸と、ストロンチウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択されるアルカリ土類金属との間で形成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルカリ土類金属がストロンチウムである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機酸が、モノ-、ジ-、トリ-またはテトラカルボン酸である請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記有機酸が:酢酸、C25COOH、C37COOH、C49COOH、(COOH)2、CH2(COOH)2、C24(COOH)2、C36(COOH)2、C48(COOH)2、C510(COOH)2、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、アスコルビン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、炭酸、ギ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、樟脳酸、グルコン酸、L-およびD-グルタミン酸、ピルビン酸、L-およびD-アスパラギン酸、トリフルオロ酢酸、ラネリン酸、2,3,5,6-テトラブロモ安息香酸、2,3,5,6-テトラクロロ安息香酸、2,3,6-トリブロモ安息香酸、2,3,6-トリクロロ安息香酸、2,4-ジクロロ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジニトロ安息香酸、3,4-ジメトキシ安息香酸、アビエチン酸、アセト酢酸、アセトンジカルボン酸、アコニット酸、アクリル酸、アジピン酸、α-ケトグルタル酸、アントラニル酸、ベンジル酸、アラキジン酸、アゼライン酸、ベヘン酸、ベンゼンスルホン酸、β-ヒドロキシ酪酸、ブラシジン酸、カプリン酸、クロロアクリル酸、桂皮酸、シトラコン酸、クロトン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シスタチオニン、デカン酸、エルカ酸、エチレンジアミン四酢酸、フルボ酸、フマル酸、没食子酸、グルタコン酸、グルタル酸、グロン酸、硫酸グルコサミン、ヘプタン酸、ヘキサン酸、フミン酸、ヒドロキシステアリン酸、イソフタル酸、イタコン酸、ランチオニン、ラウリン酸(ドデカン酸)、レブリン酸、リノール酸(cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸)、リンゴ酸、m-クロロ安息香酸、メリジン酸、メサコン酸、メタクリル酸、モノクロル酢酸、ミリスチン酸、(テトラデカン酸)、ノナン酸、ノルバリン、オクタン酸、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、オルニチン、オキザロ酢酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、p-アミノ安息香酸、p-クロロ安息香酸、ペトロセリン酸、フェニル酢酸、p-ヒドロキシ安息香酸、ピメリン酸、プロピオル酸、プロピオン酸、p-tert-ブチル安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サルコシン、セバシン酸、セリン、ソルビン酸、ステアリン酸(オクタデカン酸)、スベリン酸、コハク酸、テレフタル酸、テトロル酸、スレオニン、L-スレオネート、サイロニン、トリカルバリル酸、トリクロロ酢酸、トリメリト酸、トリメシン酸、チロシン、ウルミン酸およびシクロヘキサンカルボン酸
からなる群から選択される請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記有機酸が、アミノカルボン酸、例えば天然アミノ酸または合成アミノ酸である請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記塩が、グルタミン酸ストロンチウム塩、アスパラギン酸ストロンチウム塩、マロン酸ストロンチウム塩、D-グルタミン酸ストロンチウム塩、L-グルタミン酸ストロンチウム塩、(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物、D-アスパラギン酸ストロンチウム塩、L-アスパラギン酸ストロンチウム塩、マレイン酸ストロンチウム塩、アスコルビン酸ストロンチウム塩、トレオン酸ストロンチウム塩、乳酸ストロンチウム塩、ピルビン酸ストロンチウム塩、フマル酸ストロンチウム塩およびコハク酸ストロンチウム塩からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記塩がマロン酸ストロンチウム塩である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属イオンと前記有機酸との間のモル比が0.8:1〜1.2:1、好ましくは1.05:1より上、例えば1.1:1より上の範囲である請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記ハロゲン塩が塩化物塩である、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記反応が、100℃以上の温度で、かつ1bar以上の圧力で密閉容器中で行われる請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記二価金属塩の収率が70%以上、例えば約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上または約95%以上である請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記沈殿する炭酸塩の量が、二価金属塩の量の1%未満、例えば0.5%未満または0.2%未満である、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
二価金属イオンに加えて、酸および/またはアミノ基を含有する医薬的に活性な成分を含む請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記医薬的に活性な成分が、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、COX-3阻害剤、誘発性一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害剤、PAR2レセプターアンタゴニスト、神経弛緩薬、オピオイド、シクロオキシゲナーゼ(COX)-阻害性一酸化窒素供与体(CINOD)、疾患改変性抗リウマチ剤(DMARD)、ビスホスホネート、N-アセチルコリンレセプターアゴニスト、グリシンアンタゴニスト、バニロイドレセプターアンタゴニスト、ニューロキニンアンタゴニスト、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニスト、カルシトニン遺伝子関連ペプチドアンタゴニストおよび6-(5-カルボキシメチル-ヘキシルオキシ)-2,2-ジメチル-ヘキサン酸、およびそれらの活性代謝物を含むそれらの類似物からなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記医薬的に活性な成分が、ピロキシカム、ジクロフェナク、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェンおよびイブプロフェンを含むプロピオン酸類、メフェナム酸、パラセタモール、インドメタシン、スリンダク、メロキシカム、アパゾンを含むフェナメート類、フェニルブタゾンを含むピラゾロン類、アスピリンを含むサリチル酸類からなる群から選択されるNSAIDである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬的に活性な成分が、以下の化合物:
ロフェコキシブ(Vioxx)、バルデコキシブ(Bextra)、セレコキシブ(Celebrex)、エトリコキシブ(Arcoxia)、ルミラコキシブ(Prexige)、パレコキシブ(Dynastat)、デラコキシブ(Deram)、チラコキシブ、メロキシカム、ニメソリド、(1,1-ジメチルヘプチル)-6a,7,10,10a-テトラヒドロ-1-ヒドロキシ-6,6-ジメチル-6H-ジベンゾ[b,d]ピランカルボン酸(CT-3);2(5H)-フラノン、5,5-ジメチル(1-メチルエトキシ)[4-(メチルスルホニル)フェニル]-(DFP);カルプロフェン(RIMADYLO);(アセチルオキシ)-安息香酸、3-[(ニトロオキシ)-メチル]フェニルエステル(NCX4016);P54(CAS登録番号1309960)2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)[(E)-(2-エチル-1,1-ジオキソイソチアゾリジニリデン)-メチル]フェノール(S-2474);5(R)-チオスルホンアミド-3(2H)-ベンゾフラノン(SVT-2016)およびN-[3-(フォニル-アミノ)オキソフェノキシ-4H-ベンゾピラニル]メタンスルホン酸アミド(「T-614」)およびリクロフェロン[2,2-ジメチル-6-(4-シクロフェニル)-7-フェニル-2,3,ジヒドロ-1H-ピロリジン-5-イル]-酢酸、ならびにそれらの医薬的に活性な誘導体および医薬的に許容な塩
のようなKi 10μm未満の阻害定数を有するシクロオキシゲナーゼ2酵素の阻害剤(COX-2阻害剤)からなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬的に活性な成分が、アミノ-グアニジン、NG-ニトロ-L-アルギニン、NG-モノメチル-L-アルギニン、N6-(1-イミノエチル)-L-リジン、NG-ニトロ-L-アルギニン、S-メチル-L-チオシトルリン、NG-モノメチル-L-アルギニンアセテート、ジフェニレンヨードニウムクロリド、イソチオウレア誘導体、例えばS-メチルイソチオウレア、S-エチルイソチオウレア、S-イソプロピルイソチオウレア、およびS-(2-アミノエチル)-イソチオウレア、NG-モノメチル-L-アルギニンアセテート、2-イミノピペリジン;2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシ-ピリミジン;5-クロロ-1,3-ジヒドロ-2H-ベンズイミダゾール-2-オン(FR038251)、1,3(2H,4H)-イソキノリン-ジオン(FR038470)および5-クロロ-2,4(1H,3H)-キナゾロンジオン(FR191863)からなる群から選択される誘発性NOS(iNOS)の阻害剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬的に活性な成分が、ドキシサイクリン、コンドロイチンサルフェート、メトトレキサート、レフロウノミド(ARAVA(登録商標)、Aventis)、ジメチルニトロサミン、アザトリオピン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、ミノサイクリン、サラゾピリン、ペニシラミン、金チオリンゴ酸塩(金塩)、シクロホスファミド、およびアザチオプリンを含む群から選択されるDMARDである請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記医薬的に活性な成分が、イバンドロネート、ゾレドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート、クロドロネート、チルドロネート、ミノドロネート、インカドロネート、オルパドロネートおよびパミドロネートからなる群から選択されるビスホスホネートである、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
水酸化ストロンチウムとジカルボン酸とを約120℃〜約135℃の範囲の温度で、約1〜約1.7barの圧力で約15分〜約60分の時間反応させて、使用したジカルボン酸のストロンチウム塩を得る工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項22】
加熱をやめた後すぐに熱い反応混合物をろ過し、前記反応混合物から沈殿した炭酸ストロンチウムを除去する工程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記反応混合物からのストロンチウム塩の沈殿が、5〜60容量%のアルコール、例えば5〜40容量%のアルコール、またはさらに好ましくは10〜25容量%のアルコールを前記溶液に添加することによって改良される請求項1〜22のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
前記アルコールがエタノールである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アルコールがメタノールである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
(L-)ジグルタミン酸ストロンチウム塩五水和物であるストロンチウム塩。
【請求項27】
本明細書の図3および/または図4に示しているような結晶性組成物および/または本明細書の表4、5および/または6に示しているような幾何学的特性を有する請求項26に記載のストロンチウム塩。
【請求項28】
D-グルタミン酸ストロンチウム塩六水和物であるストロンチウム塩。
【請求項29】
本明細書の表7に示すような結晶性組成物および/または表8および/または9に示すような幾何学的特性を有する請求項28に記載のストロンチウム塩。
【請求項30】
医薬中で使用のための請求項26〜29のいずれか一つに記載のストロンチウム塩。

【図1】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−536288(P2007−536288A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511865(P2007−511865)
【出願日】平成17年5月5日(2005.5.5)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000307
【国際公開番号】WO2005/108339
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(505403979)
【氏名又は名称原語表記】OSTEOLOGIX A/S
【住所又は居所原語表記】c/o Symbion Science Park,Fruebjergvej 3,DK−2100 Copenhagen O,DENMARK
【Fターム(参考)】