説明

有機金属錯体

少なくとも1つの電荷輸送配位子を有する有機金属錯体、その製造方法、ならびにそれを含むデバイスおよびサブアセンブリを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、有機電子デバイス中に見られるような有機金属錯体、ならびにそれを製造するための材料および方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年12月30日に出願された米国仮特許出願第60/640,326号明細書および2005年6月28日に出願された米国仮特許出願第60/694,914号明細書に対する利益を主張し、これらそれぞれの開示はそれらの記載内容全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
有機電子デバイスは、電気エネルギーを放射線に変換したり、電子的過程を介して信号を検出したり、放射線を電気エネルギーに変換したり、1つまたは複数の有機半導体層を含んだりする。有機発光ダイオード(OLED)は、エレクトロルミネッセンスが可能な有機層を含む有機電子デバイスである。一部のOLEDにおいては、これらの光活性有機層は、単純な有機分子、共役ポリマー、または有機金属錯体を含む。
【0004】
十分理解できるであろうが、有機金属錯体を開発することが重要である。
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/02714号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2001/0019782号明細書
【特許文献3】欧州特許第1191612号明細書
【特許文献4】国際公開第02/15645号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第1191614号明細書
【特許文献6】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献7】国際公開第00/70655号パンフレット
【特許文献8】国際公開第01/41512号パンフレット
【非特許文献1】「可溶性伝導性ポリマーから製造される可撓性発光ダイオード」(Flexible Light−Emitting Diodes Made From Soluble Conducting Polymer),Nature 1992,357,477−479
【非特許文献2】カーク・オスマー工業化学百科事典(Kirk Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology),Vol.18,837−860(第4版(4th ed.)1996)
【非特許文献3】ブラッドリー(Bradley)ら,Synth.Met.2001,116(1−3),379−383
【非特許文献4】キャンベル(Campbell)ら,Phys.Rev.B,Vol.65 085210
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態においては、少なくとも1つの電荷輸送配位子を有する有機金属錯体、その製造方法、ならびにそれを含むデバイスおよびサブアセンブリを提供する。
【0007】
以上の全体的説明および以下の詳細な説明は、単に例および説明であり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものではない。
【0008】
本明細書において提示される概念をより理解しやすくするために、添付の図面に実施形態を示している。
【0009】
図面は例として提供しており、本発明を限定することを意図するものではない。当業者であれば理解できるように、図面中の物体は、単純および明確にするために示されており、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。たとえば、図面中の一部の物体の寸法は、実施形態を理解しやすくするために、他の物体に対して誇張されている場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
一実施形態においては、次式を有する錯体を提供し:
[Y2M−O−]n−CT
上式中:
Mは、+2、+3、または+4の酸化状態にある金属であり;
Yは、存在ごとに独立して、ヒドロキシアリール−N−複素環、二座シッフ塩基配位子であるか、または両方のYを合わせたものが四座シッフ塩基配位子を形成するかであり;
nは1〜4の整数であり;
CTは電荷輸送基である。
【0011】
用語「ヒドロキシアリール−N−複素環」は、少なくとも1つの窒素含有複素環式基と、ヒドロキシル置換基を有する少なくとも1つの芳香族基とを有する化合物から誘導される配位子であって、ヒドロキシル基のOと複素環式環のNとが金属に配位して5員環または6員環を形成することができる配位子を意味することを意図している。N−複素環式基とヒドロキシ置換芳香族基とは、単結合で結合したり、互いに縮合したりすることができる。N−複素環式基およびヒドロキシ置換芳香族基のそれぞれは、単環または2つ以上の縮合環を含むことができる。ヒドロキシアリール−N−複素環は、さらに置換されていてもよい。置換基の例としては、アルキル、フルオロアルキル、アルケニル、フルオロアルケニル、アルキニル、フルオロアルキニル、アリール、フルオロアリール、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、フルオロアルコキシ、フルオロアリールオキシ、ヘテロアルキル、フルオロヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、フルオロヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、フルオロヘテロアルキニル、ヘテロアリール、フルオロヘテロアリール、ヘテロアルキルアリール、ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、フルオロヘテロアルコキシ、フルオロヘテロアリールオキシ、シアノ、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、ハライド、溶媒可溶化基、およびTg上昇基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
用語「溶媒可溶化」とは、溶媒可溶化置換基を有さない材料に対して、少なくとも1つの有機溶媒に対する材料の溶解性または分散性を増加させる置換基を意味する。この材料が金属錯体中の配位子である場合、溶媒可溶化置換基は、錯形成していない状態でのその配位子が誘導される親化合物の溶解性または分散性を増加させる。好適な溶媒可溶化基の例としては、6〜20個の炭素を有するアリール基、4〜20個の炭素を有するヘテロアリール基、1〜10個の炭素を有するアルキル基、および1〜10個の炭素原子を有するフルオロアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
用語「Tg上昇」とは、材料のガラス転移温度を上昇させる置換基を意味する。言い換えると、Tg上昇置換基を有する化合物のTgが、Tg上昇置換基を有さない化合物のTgよりも高い。材料が金属錯体中の配位子である場合、Tg上昇置換基は、錯形成していない状態での、その配位子が誘導された親化合物のTgを上昇させる。好適なTg上昇基の例としては、6〜20個の炭素を有するアリール基、4〜20個の炭素を有するヘテロアリール基、1〜10個の炭素を有するアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
一実施形態においては、N−複素環基は、ピリジン、ピリミジン、キノリン、およびイソキノリンからなる群より選択される。一実施形態においては、ヒドロキシ置換芳香族基は、フェノールまたはナフトールである。
【0015】
一実施形態においては、Yは、8−ヒドロキシキノレートまたは置換8−ヒドロキシキノレートである。一実施形態においては、8−ヒドロキシキノレートは、2位において置換されている。用語「8−ヒドロキシキノレート」は、化合物8−ヒドロキシキノリンから誘導される配位子であって、ヒドロキシ基上の水素が外れ、酸素が金属に配位結合している配位子を意味する。
【0016】
一実施形態においては、Yは、2−(2−ヒドロキシアリール)ピリジン、2−(2−ヒドロキシアリール)キノリン、1−(2−ヒドロキシアリール)イソキノリン、または3−(2−ヒドロキシアリール)イソキノリンであり、これらは非置換であってもよいし、置換されていてもよい。一実施形態においては、2−ヒドロキシアリール部分がフェノールである。
【0017】
配位子に関して言及される場合、用語「2−(2−ヒドロキシアリール)ピリジン」、「2−(2−ヒドロキシアリール)キノリン」および「1−(2−ヒドロキシアリール)イソキノリン」は、ヒドロキシ基上の水素が外れ、酸素が金属に配位結合している状態のそのような化合物を意味する。
【0018】
一実施形態においては、Yはシッフ塩基配位子である。一実施形態においてはこのシッフ塩基配位子は構造Iを有する化合物であり:
【0019】
【化1】

【0020】
上式中:
1、R2、R3は独立して、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであるか、あるいは隣接する複数のR基が互いに結合して5員環または6員環を形成できるかであり;
Zは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンである。
【0021】
一実施形態においては、両方のYを合わせたものが、構造IIを有する四座シッフ塩基配位子を形成し:
【0022】
【化2】

【0023】
上式中:
1、R2、R3、およびR4は独立して、水素、重水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであるか、あるいは隣接する複数のR基が互いに結合して5員環または6員環を形成できるかである。
【0024】
構造Iの一実施形態においては、両方のR1が同じものであり、両方のR2が同じものである。構造IまたはIIの一実施形態においては、隣接するR1とR2とが互いに結合して、6員芳香環を形成する。一実施形態においては、この芳香環は置換されている。好適な置換基としては、アルキル、フルオロアルキル、アルケニル、フルオロアルケニル、アルキニル、フルオロアルキニル、アリール、フルオロアリール、アルキルアリール、アルコキシ、アリールオキシ、フルオロアルコキシ、フルオロアリールオキシ、ヘテロアルキル、フルオロヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、フルオロヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、フルオロヘテロアルキニル、ヘテロアリール、フルオロヘテロアリール、ヘテロアルキルアリール、ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、フルオロヘテロアルコキシ、フルオロヘテロアリールオキシ、シアノ、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、ハライド、溶媒可溶化基、およびTg上昇基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
構造Iの一実施形態においては、R3は、水素、重水素、フェニル、またなメチルである。
【0026】
一実施形態においては、Zは、1〜20個の炭素原子を有するアルキレン、フェニレン、2〜4個の縮合環を有するアリーレン、ビアリーレン、および2〜20個の炭素原子を有するアザアルキレンであるが、これらに限定されるものではない。このような基は、非置換であってもよいし、置換されていてもよい。
【0027】
構造Iの一実施形態においては、Zは、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン;1,2−シクロへキシレン;1,2−フェニレン;4−メトキシ−1,2−フェニレン;4,5−ジメチル−1,2−フェニレン;o−ビナフタレン−ジイル;3−アザ−1,5−ペンチレン;1,2−o−トリル−1,2−エチレン;1,2−ジシアノ−1,2−エチレン;または2−p−t−ブチルベンジル−1,3−プロピレンである。
【0028】
構造Iの一実施形態においては、Zは、エチレン、1,2−シクロへキシレン、または−CH2CH2NHCH2CH2−である。この1,2−シクロへキシレンは、シスまたはトランスのいずれの配置であってもよい。
【0029】
構造IIの一実施形態においては、R1およびR2が互いに結合して、6員芳香環を形成する。一実施形態においては、この芳香環は、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、またはハライドでさらに置換されている。一実施形態においては、この芳香環は、ジクロロフェニル、またはアルキルが1〜6個の炭素原子を有するアルキルフェニルである。
【0030】
構造IIの一実施形態においては、R4は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル、またはフェニルである。一実施形態においては、R4は置換されている。好適な置換としては、1つまたは複数のハライドまたはアルコキシが挙げられる。
【0031】
一実施形態においては、Mは、Al、Zn、Zr、またはGaである。一実施形態においては、MはAlである。
【0032】
一実施形態においては、CTは、ホール輸送基である。一実施形態においては、CTは、トリアリールメタン基、トリアリールアミン基、またはカルバゾール基である。
【0033】
一実施形態においては、CTは、4−フェニルにおいて酸素に結合するビス[4(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル](フェニル)メタンである。一実施形態においては、CTは、4位において酸素に結合する4’−(9−カルバゾリル)−ビフェニルである。
【0034】
一実施形態においては、CTは、4位において酸素に結合する4’−(1−ナフチル−フェニルアミノ)−ビフェニルである。
【0035】
一実施形態においては、CTは、4位において酸素に結合する4’−((4−N,N−ジフェニルアミノ−フェニル)−フェニルアミン)−ビフェニルである。
【0036】
一実施形態においては、CTは、4位において酸素に結合する4’−(N,N’−(ジ−1−ナプチル)−N’−フェニルベンジジン)−N−ビフェニルである。
【0037】
一実施形態においては、CTは、4位において酸素に結合する9−フェニルカルバゾールである。
【0038】
一実施形態においては、CTは、4位において酸素に結合する4’−(ビス−(4−N,N−ジフェニルアミノ−フェニル)−アミン)−ビフェニルである。
【0039】
一実施形態においては、CTは、2位において酸素に結合する9−フェニルカルバゾールである。
【0040】
一実施形態においては、CTは、4位において酸素に結合する(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)−フェニルエーテルである。一実施形態においては、CTは、4位において酸素に結合する(4−(N−カルバゾリル)−1−フェニル)−フェニルエーテルである。
【0041】
一実施形態においては、CT基は多価であってよく、nは1を超える。このCT基は、酸素結合を介して複数のMY2中心に結合する。
【0042】
一実施形態においては、nは2である。一実施形態においては、CT基は、酸素結合を介して4位において2つのMY2中心に結合する[(N,N’−(ジフェニル)(4−ヒドロキシビフェニル)ベンジジンである。
【0043】
一実施形態においては、CT基は、酸素結合を介して両方のカルバゾール環の2位において2つのMY2中心に結合する1,3−ジ(2−ヒドロキシ−カルバゾリル)ベンゼンである。
【0044】
一実施形態においては、CT基は、酸素結合を介して4位において2つのMY2中心に結合する4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフェニル[(N,N’−(4−(N’’,N’’ジフェニル)アニリン)(4−ヒドロキシビフェニル)である。
【0045】
一実施形態においては、CT基は、酸素を介してカルバゾール環の4位において2つのMY2中心に結合する4,4’−(N−(4−ヒドロキシカルバゾリル))−ビフェニルである。
【0046】
一実施形態においては、CT基は、酸素を介してカルバゾール環の4位において2つのMY2中心に結合する[(3,6−ジ(N−(4−ヒドロキシカルバゾール)ジベンゾチオフェン)である。
【0047】
一実施形態においては、CT基は、酸素結合を介して両方のカルバゾール環の4位において2つのMY2中心に結合する1,3−ジ(4−ヒドロキシ−カルバゾリル)ベンゼンである。
【0048】
一実施形態においては、CTは電子輸送基である。一実施形態においては、CTは、オキサジアゾール、フェナントロリン、またはキノキサリンであり、これらは場合により置換されていてもよい。
【0049】
別の実施形態においては、光活性層およびカソードを含み、以下の式の錯体をさらに含む電子デバイスを提供し:
[Y2M−O−]n−CT
上式中:
Mは、+2、+3、または+4の酸化状態にある金属であり、
Yは、存在ごとに独立して、ヒドロキシアリール−N−複素環、二座シッフ塩基配位子であるか、または両方のYを合わせたものが四座シッフ塩基配位子を形成するかであり、
nは1〜4の整数であり、
CTは電荷輸送基であり、
上記錯体は、光活性層中、または光活性層とカソードとの間の層中に存在する。
【0050】
一実施形態においては、金属に対する配位子を提供し、この配位子は以下の式I、II、またはIIIを有し:
【0051】
【化3】

【0052】
上式中:
5は独立して、Hまたはアルキルであり;
6はNR78であり;
7およびR8は独立して、アルキルまたはアリールであるか、あるいはR7とR8とが協働してアリールを形成するかであり;
9は、Hであるか、または別の配位子への結合である。
【0053】
一実施形態においては、本発明の配位子は以下の式IVまたはVを有し:
【0054】
【化4】

【0055】
上式中:
10およびR11は独立して、H、NR78、アリールであるか、あるいは別の配位子への結合であるか、あるいはR10とR11とが協働してアリールを形成するかである。
【0056】
一実施形態においては、両方のR5がアルキルであり、NR78がN(Me)2である。
【0057】
一実施形態においては、R7およびR8はそれぞれアリールである。
【0058】
一実施形態においては、次式を含む有機金属錯体を提供し:
[Y]nMZ
上式中:
nは、1、2、または3であり;
Mは、+2、+3、または+4の酸化状態にある金属であり;
Yは、存在ごとに、8−ヒドロキシキノリンまたはアルキル置換8−ヒドロキシキノリンを含む配位子であり;
Zは、請求項1に記載の配位子である。
【0059】
一実施形態においては、Mは、Al、Zn、Zr、またはGaである。
【0060】
一実施形態においては、アルキル置換8−ヒドロキシキノリンは2位で置換されている。
【0061】
一実施形態においては、アルキル置換8−ヒドロキシキノリンは2−メチル−8−ヒドロキシキノリンである。
【0062】
一実施形態においては、上述の化合物あるいは錯体と、少なくとも1種類の溶媒、加工助剤、電荷輸送材料、または電荷障壁材料とを含む組成物が提供される。これらの組成物は、限定するものではないが、溶媒、エマルジョン、およびコロイド分散体などのあらゆる形態であってよい。
【0063】
(デバイス)
図1を参照すると、代表的な有機電子デバイス100が示されている。デバイス100は基体105を含む。基体105は、剛性または可撓性であってよく、たとえば、ガラス、セラミック、金属、またはプラスチックであってよい。電圧が印加されると、発せられた光は基体105を通して見ることができる。
【0064】
基体105の上には、第1の電気接触層110が堆積される。説明のため、層110はアノード層である。アノード層は線として堆積することができる。アノードは、たとえば、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合金属酸化物を含有するまたは含む材料でできていてよい。アノードは、伝導性のポリマー、ポリマーブレンド、またはポリマー混合物を含むことができる。好適な金属としては、11族金属、4族、5族、および6族の金属、ならびに8族、10族の遷移金属が挙げられる。アノードが光透過性である場合、インジウムスズ酸化物などの12族、13族、および14族金属の混合金属酸化物が一般に使用される。アノードは、有機材料を含むこともでき、特に、(非特許文献1)に記載される代表的材料などの、ポリアニリンなどの伝導性ポリマーを含むことができる。アノードおよびカソードの少なくとも1つは、発生した光を観察できるようにするため、少なくとも部分的に透明であるべきである。
【0065】
場合により、ホール輸送材料などの緩衝層120および他の層を、アノード層110の上に堆積することができ、このホール輸送材料は「ホール注入接触層」と呼ばれることもある。層120あるいは任意の追加の層としての使用に適した任意のホール輸送材料用緩衝材料の例は、たとえば、(非特許文献2)にまとめられている。ホール輸送「小」分子とオリゴマーおよびポリマーと両方を使用することができる。ホール輸送分子としては:N,N’ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。有用なホール輸送ポリマーとしては、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、およびポリアニリンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。伝導性ポリマーは、有用な種類の1つである。前述のようなホール輸送部分を、ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中にドープすることによって、ホール輸送ポリマーを得ることもできる。
【0066】
有機層130は、緩衝層120が存在する場合にはその上に堆積することができるし、第1の電気接触層110の上に堆積することもできる。ある実施形態においては、有機層130は、種々の成分を含む多数の別個の層であってよい。デバイスの用途に依存するが、有機層130は、電圧を適用することによって励起する発光層(発光ダイオードまたは発光電気化学セル中など)、あるいは放射エネルギーに応答し、バイアス電圧を使用しまたは使用せずに信号を発生する材料の層(光検出器中など)であってよい。
【0067】
デバイス中の他の層は、そのような層が果たすべき機能を考慮することによってそのような層に有用であることが知られているあらゆる材料でできていてよい。
【0068】
あらゆる有機エレクトロルミネッセンス(「EL」)材料を、光活性材料(たとえば、層130中)として使用することができる。このような材料としては、蛍光染料、小分子有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。蛍光染料の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;ペトロフ(Petrov)らの(特許文献1)に開示されるようなフェニルピリジン、フェニルキノリン、またはフェニルピリミジンの配位子を有するイリジウム錯体などの、シクロメタレート化されたイリジウムおよび白金のエレクトロルミネッセンス化合物、ならびに、たとえば、米国特許公報(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、および(特許文献5)に記載されるような有機金属錯体;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電荷キャリアホスト材料と金属錯体とを含むエレクトロルミネッセンス発光層が、トンプソン(Thompson)らにより米国特許公報(特許文献6)に、ならびにバローズ(Burrows)およびトンプソン(Thompson)により(特許文献7)および(特許文献8)に記載されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
本発明のデバイスの一実施形態においては、光活性材料が有機金属錯体であってよい。別の実施形態においては、光活性材料が、イリジウムまたは白金のシクロメタレート化錯体である。他の有用な光活性材料を使用することもできる。フェニルピリジン、フェニルキノリン、またはフェニルピリミジンの配位子を有するイリジウム錯体が、エレクトロルミネッセンス化合物としてペトロフ(Petrov)らの(特許文献1)に開示されている。他の有機金属錯体が、たとえば、米国特許公報(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、および(特許文献5)に記載されている。イリジウムの金属錯体でドープしたポリビニルカルバゾール(PVK)の活性層を有するエレクトロルミネッセンスデバイスが、バローズ(Burrows)およびトンプソン(Thompson)により(特許文献7)および(特許文献8)に記載されている。電荷キャリアホスト材料とリン光性白金錯体とを含むエレクトロルミネッセンス発光層が、米国特許公報トンプソン(Thompson)らにより(特許文献6)、(非特許文献3)、および(非特許文献4)に記載されている。
【0070】
有機層130の上には、第2の電気接触層160が堆積される。説明のため、層160はカソード層である。
【0071】
カソード層は、線としてまたは薄膜として堆積することができる。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。カソードの代表的材料としては、アルカリ金属、特にリチウム、2族(アルカリ土類)金属、12族金属、たとえば希土類元素およびランタニド、ならびにアクチニドを挙げることができる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウム、およびマグネシウム、ならびにそれらの組み合わせなどの材料を使用することができる。系の動作電圧を下げるために、LiFおよびLi2Oなどのリチウム含有化合物およびその他の化合物を、有機層とカソード層との間に堆積することもできる。
【0072】
電子輸送層140または電子注入層150は、場合によりカソードに隣接して配置され、カソードは「電子注入接触層」と呼ばれることもある。
【0073】
水および酸素などの望ましくない成分がデバイス100内に入るのを防止するために、接触層160の上に封入層170が堆積される。このような成分は、有機層130に対して悪影響を及ぼすことがある。一実施形態においては、封入層170は、障壁層またはフィルムである。
【0074】
図示していないが、デバイス100は追加の層を含むことができることを理解されたい。たとえば、層の正電荷輸送および/またはバンドギャップの整合性を促進するため、または保護層として機能させるために、アノード110とホール輸送層120との間に層(図示せず)が存在してもよい。当技術分野またはその他の分野で知られている他の層を使用することもできる。さらに、上述のいずれかの層は、2つ以上の副層を含むことができるし、層状構造を形成することもできる。あるいは、アノード層110ホール輸送層120、電子輸送層140および150、カソード層160、ならびにその他の層の一部またはすべて、電荷キャリア輸送効率またはデバイスの他の物理的性質を改善するための処理、特に表面処理を行うことができる。それぞれの構成要素層の材料の選択は、好ましくは、デバイスの稼働寿命を考慮した高いデバイス効率、製造時間、および複雑な要因、ならびに当業者によって認識されているその他の重要事項を有するデバイスを提供するための複数の目標のバランスを取るように決定される。最適な構成要素、構成要素の構成、および組成の決定は、当業者の日常業務であることを理解されたい。
【0075】
一実施形態においては、本発明の種々の層は、以下の範囲の厚さを有する:アノード110、500−5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;ホール輸送層120、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;光活性層130、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;層140および150、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;カソード160、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイス中の電子−ホール再結合領域の位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さの影響を受けることがある。たとえば、電子−ホール再結合ゾーンが発光層中に存在するように、電子輸送層の厚さを選択すべきである。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の厳密な性質に依存する。
【0076】
動作中、適切な電源(図示せず)からの電圧がデバイス100に印加される。それによって、デバイス100の層に電流が流れる。電子が有機ポリマー層に入り、フォトンを放出する。アクティブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、光活性有機フィルムの個別の堆積物が、電流の流れによって独立して励起し、それによって個別のピクセルが発光することができる。パッシブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、光活性有機フィルムの堆積物は、電気接触層の行および列によって励起させることができる。
【0077】
デバイスは、種々の技術を使用して作製することができる。このようなものとしては、非限定的な例として、気相堆積技術および液相堆積が挙げられる。デバイスは、後に組み合わせることでデバイスを形成することが可能な分離した複数の製品に組み立てることもできる。
【0078】
(定義)
「a」または「an」の使用は、本発明の要素および成分を記述するために使用される。これは、単に便宜上のものであり、本発明の一般的意味を示すために使用される。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、特に明記しない限り単数形は、複数形も包含するものとする。
【0079】
層または材料について言及される場合、用語「活性」は、電子的または電気放射的(electro−radiative)性質を示す層または材料を意味することを意図している。活性層材料は、放射線を受けた場合に、放射線を放出する場合もあるし、電子−ホール対の濃度変化を示す場合もある。したがって、用語「活性材料」は、デバイスの動作を電子的に促進する材料を意味する。活性材料の例としては、限定するものではないが、電荷を伝導、注入、輸送、またはブロックする材料が挙げられ、この電荷は電子またはホールのいずれであってもよい。不活性材料の例としては、平坦化材料、絶縁材料、および環境障壁材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」(comprises)、「含んでなること」(comprising)、「含む」(includes)、「含むこと」(including)、「有する」(has)、「有すること」(having)、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素にのみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」(or)は、包含的な「または」(or)を意味するのであって、排他的な「または」(or)を意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在する)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)Bが真である(または存在する)、およびAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0081】
用語「層」は、用語「フィルム」と交換可能に使用され、希望する領域を覆うコーティングを意味する。この領域は、デバイス全体または実際の画像表示などの特定の機能性領域までの大きさであってもよいし、あるいは1つのサブピクセルの小ささであってもよい。フィルムは、気相堆積および液相堆積などのあらゆる従来の堆積技術によって形成することができる。液相堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングなどの連続堆積技術;ならびにインクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷などの不連続堆積技術が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
用語「有機電子デバイス」は、1つまたは複数の半導体の層または材料を含むデバイスを意味することを意図している。有機電子デバイスとしては:(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザー、または照明パネル)、(2)電子的過程を介して信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器 光導電セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、赤外線(「IR」)検出器、またはバイオセンサー)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電性デバイスまたは太陽電池)、および(4)1つまたは複数の有機半導体層(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含む1つまたは複数の電子部品を含むデバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。デバイスという用語は、記憶デバイス、帯電防止フィルム、バイオセンサー、エレクトロクロミックデバイス、固体電解コンデンサ、充電式電池などのエネルギー蓄積デバイス、および電磁遮蔽用途のためのコーティング材料も含んでいる。
【0083】
用語「基体」は、剛性または可撓性のいずれであってもよく、1つまたは複数の材料の1つまたは複数の層を含むことができる工作物を意味することを意図しており、このような材料としては、ガラス、ポリマー、金属、またはセラミック材料、あるいはそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的な用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験が可能であるが、好適な方法および材料については以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特に明記しない限り、それらの記載内容全体が参照により援用される。抵触の場合には、定義を含めた本明細書が調整される。さらに、本発明の材料、方法、および実施例は単に説明的なものであって、限定を意味するものではない。
【0085】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0086】
緩衝層という用語は、導電層または半導体層を意味することを意図しており、この層は、限定するものではないが、下にある層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉、ならびに有機電子デバイスの性能を促進または改善するための性質などの有機電子デバイスの1つまたは複数の機能を有することができる。緩衝材料は、ポリマー、オリゴマー、または小分子であってよく、溶液、分散液、懸濁液、エマルジョン、コロイド混合物、またはその他の組成物の形態であってよい。
【実施例】
【0087】
本明細書に記載される概念を以下の実施例でより詳細に説明するが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0088】
(実施例1)
実施例1では、CTがトリアリールメタン誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0089】
【化5】

【0090】
(1a)フェノール系トリアリールメタン配位子ヒドロキシMPMPの調製)
N,N−ジメチル−m−トルイジン(32.6g)とp−ヒドロキシベンズアルデヒド(12.2g)とを、30mLのエタノールと10mLのHClとの中で混合する。この混合物を窒素下で2日間穏やかに還流した後、得られた混合物を250mLの水に注ぎ、NaOHを使用してpHを8に調整する。エタノールを蒸発させ、その水層を固形残留物からデカンテーションする。その固形分を蒸留水で再び洗浄した後、得られた油状固形分にさらにエタノールを加えて、固形分が固化するまで粉砕する。熱エタノールから再結晶させる。
【0091】
中和させることによって約28gの生成物が回収される(水または塩基を加える前に、生成物は既に反応混合物から固化している)。この生成物をエタノールで十分に洗浄し、吸引乾燥する。塩化メチレンから再結晶し、ソックスレー抽出によって精製し、ヘキサンを加えて沈殿させる。この材料は塩化メチレンに対する溶解性があまり高くない。回収によって約24gの白色微結晶が得られる。このフェノール系トリアリールメタン配位子の2−メチル−8−ヒドロキシキノリンは、NMR分析によって確認した。
【0092】
(1b)1aで調製したトリアリールメタンフェノールのアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、6.4gの2−メチル−8−ヒドロキシキノリンを、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら100mLのトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、11mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。発泡するので、あふれるのを防止するために、添加はゆっくり行う必要があるこの段階でこの溶液は透明な黄色である。この溶液をマントルヒーター中で還流させるが、溶液は透明な黄色のままである。7.5gのヒドロキシMPMP(前述の1aに記載されるように調製した)を固体として加えると、その混合物は再び発泡する。この混合物を加熱撹拌する。溶液は透明なオレンジイエローになる。この混合物を撹拌し、窒素冷却器(nitrogen condensor)を使用して1時間還流した後、冷却する。ヘキサンを加えると白みがかった沈殿物が得られ、これを濾過によって回収し、ヘキサンで洗浄する。
【0093】
鮮やかなレモンイエローの結晶性材料をヘキサン/トルエンから濾取する。この材料は、塩化メチレンに対して非常に溶解性が高く、熱トルエンに対して溶解性である。この黄色結晶は、ターコイズ色のルミネッセントとなる。この結晶をメタノールおよびヘキサンで洗浄し、乾燥させると、NMR用のサンプルが得られる。このアルミニウム錯体はNMR分析によって確認した。
【0094】
(実施例2)
実施例2では、CTがビフェニル、ナフチル、およびフェニルアミンの誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0095】
【化6】

【0096】
(2a)フェノール系配位子の調製)
【0097】
【化7】

【0098】
Pd2(dba)3(1.48g、1.61mmol)と2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(1.36g、3.87mmol)とのTHF(30mL)中の懸濁液を30分間撹拌する。これに、4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル(8.04g、32.3mmol)、N−フェニル−1−ナプチルアミン(14.16g、65.6mmol)、およびLiN(SiMe32(11.89g、71.0mmol)を、THF(70mL)とともに加え、この混合物を5日間還流した後、シリカに通して濾過し、ブラインで洗浄し、その有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させた。蒸発によって、暗赤色の粘稠固体が得られ、これをシリカ(EtOAc/hex)上のクロマトグラフィーによって精製すると、薄いオレンジ色の粉末(9.2g、74%)が得られる。この生成物はNMR分析によって確認した。
【0099】
(2b)(2a)で調製したの配位子アルミニウム錯体)
グローブボックス中で、1.60gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、2.75mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。発泡が激しいので、あふれるのを防止するため、添加はゆっくり行う必要がある。溶液は濁り始め、最終的には濃い黄色の繊維状沈殿物が形成される。この溶液をマントルヒーター中で還流させると、溶液は透明な黄色になる。前述の2aで得た1.94gのフェノール配位子を、5mLのトルエン中の溶液として加えると発泡が起こり、この溶液を薄いオレンジ色の溶液として加熱撹拌する。還流は30分間行う。
【0100】
上記トルエン溶液を冷却すると淡黄色固形分が沈殿し、ヘキサンを加えるとさらに黄色沈殿物が得られ、これは濾過によって回収することができる。この固形分を吸引乾燥すると、3.5gの生成物が得られる。このアルミニウム錯体はNMR分析によって確認した。融点235℃、Tg:136℃。
【0101】
(実施例3)
実施例3では、CTが9−フェニルカルバゾール誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0102】
【化8】

【0103】
(3a)フェノール系配位子の調製)
【0104】
【化9】

【0105】
4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル(5.0g、2.01×10-2mol)およびカルバゾール(4.03g、2.41×10-2mol)の、トルエン(20mL)およびジオキサン(20mL)中の混合物を窒素下で撹拌する。この溶液に、Pd2(dba)3(0.350g、3.82×10-4mol)およびP(tBu)3(0.077g、3.82×10-4mol)を加え、続いてLiN(SiMe32(7.4g、2.41×10-2mol)を加える。この結果得られた混合物を80℃で48時間加熱する。室温まで冷却した後、1MのHCl(10mL)を加え、10分間撹拌する。10%のNaHCO3で中和した後、相分離させ、有機相を水(2×100mL)で洗浄する。その有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させる。ヘキサンを加えると、淡褐色の沈殿物が分離し、これをCH2Cl2(約30mL)中で終夜撹拌することによってさらに精製すると、所望の生成物のオフホワイトの固形分(4.2g、63%)が得られる。この生成物はNMR分析によって確認した。
【0106】
(3b)パート(3a)の配位子のアルミニウム錯体)
グローブボックス中で、3.20gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を秤量し、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、5.5mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。発泡が激しいので、あふれるのを防止するため、添加はゆっくり行う必要がある。溶液は濁り始め、最終的には濃い黄色の繊維状沈殿物が形成される。この溶液をマントルヒーター中で還流させると、溶液は透明な黄色になる。前述の(3a)で調製した3.4gの4−(4’−(9−カルバゾリル)−フェニル)−フェノールを固体として加えると発泡が起こり、この溶液を濃いオレンジ色の透明な溶液として加熱撹拌する。この溶液を10分間還流させると、濃いクリーム色の沈殿物が形成される。この溶液を冷却し、この結果得られた白っぽい固形分を含むスラリーにメタノールを加える。この固形分を濾過によって回収し、吸引乾燥した後、メタノールおよびヘキサンで洗浄すると、真珠光沢のある灰白色固形分が残留する。この固形分は、固体としては青色ルミネッセンスとなり、塩化メチレン溶液中では緑色ルミネッセンスとなる。
【0107】
得られた繊維状のオフホワイト固形分を回収し、吸引乾燥する。グローブボックス中で、塩化メチレンおよびトルエンからの再結晶を、沸騰、ならびに濾過および蒸発/冷却により、針状固体を沈殿させることによって行う。銀灰色固体が回収され、これは塩化メチレンに対して溶解性であり、このアルミニウム錯体はNMR分析によって確認した。
【0108】
(実施例4)
実施例4では、CTが[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル(4−ヒドロキシビフェニル)アミン誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0109】
【化10】

【0110】
(4a)フェノール系配位子の合成)
【0111】
【化11】

【0112】
4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル(13.45g、5.3×10-2mol)および[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニルアミン(20g、5.9×10-2mol)の、トルエン(100mL)およびジオキサン(100mL)中の混合物を窒素下で撹拌する。この溶液に、Pd2(dba)3(0.970g、1.05×10-3mol)およびP(シクロヘキシル)2(2−ビフェニル)(0.890g、2.5×10-3mol)を加え、続いてLiN(SiMe32(19.8g、1.19×10-2mol)を加える。この結果得られた混合物を80℃で72時間加熱する。室温まで冷却した後、1MのHCl(50mL)を加え、10分間撹拌する。10%のNaHCO3で中和した後、相分離させ、有機相を水(2×200mL)で洗浄する。その有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させる。ヘキサンを加えると、褐色固形分が得られ、これをクロマトグラフィー(1:5のEtOAc:ヘキサン)によってさらに精製すると、淡黄色固形分が45%の収率(12g)で得られる。この生成物はNMR分析によって確認した。
【0113】
(4b)パート4aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、1.60gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させた。迅速に撹拌しながら、2.75mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加えた。発泡が激しいので、あふれるのを防止するため、添加はゆっくり行う必要がある。溶液は濁り始め、最終的には濃い黄色の繊維状沈殿物が形成される。この溶液をマントルヒーター中で還流させると、溶液は透明な黄色になる。前述の4aで調製したフェノール2.52gを5mLのトルエン中の溶液として加え、加熱撹拌すると薄いオレンジ色の溶液となる。30分間還流した後、メタノールを加えると、色がわずかに薄くなる。この溶液を真空下で排気し、次に再びメタノールを加えた。最後にヘキサンを加えると、淡黄色沈殿物が約2gの収量で得られる。この固形分は塩化メチレン中に溶解し、このアルミニウム錯体をNMR分析によって確認した。
【0114】
(実施例5)
実施例5では、CTが[(N,N’−(ジフェニル)(4−ヒドロキシジフェニル)ベンジジン誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0115】
【化12】

【0116】
(5a)フェノール系配位子の合成)
【0117】
【化13】

【0118】
4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル(10.0g、4×10-2mol)およびジフェニルベンジジン(5,40g、1.6×10-2mol)、Pd2(dba)3(0.350g、3.82×10-4mol)およびP(tBu)3(0.077g、3.8×10-4mol)、ならびにLiN(SiMe32(29.56g、1.77×10-1mol)を、トルエン(100mL)およびジオキサン(100mL)中で使用して、実施例4に概説される手順に従った。ヘキサンを加えると、褐色固形分が得られ、これをクロマトグラフィー(ヘキサン)によってさらに精製すると、黄色粉末が61%の収率(6.6g)で得られる。
【0119】
(5b)パート5aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、3.20gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させた。迅速に撹拌しながら、5.5mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加えた。発泡が激しいので、あふれるのを防止するため、添加はゆっくり行う必要がある。溶液は濁り始め、最終的には濃い黄色の繊維状沈殿物が形成される。この溶液をマントルヒーター中で還流させると、溶液は透明な黄色になる。前述の5aで調製したフェノール3.36gを5mLのトルエン中の溶液として加えると、溶液が再び発泡する。30分間還流させると、透明な薄いオレンジ色の溶液が得られる。蒸発させた後、得られた黄色固形分をメタノールおよびヘキサンで洗浄すると、乾燥した黄色粉末が得られ、NMR分析によってこれが上記アルミニウム錯体であることを確認した。この材料は一般的な有機溶媒に対する溶解性が低い。
【0120】
(実施例6)
実施例6では、CTが[(1,3−ジ(2−ヒドロキシカルバゾール)ベンゼン]誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成について説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0121】
【化14】

【0122】
(6a)フェノール系配位子の合成)
【0123】
【化15】

【0124】
1,3−ジヨードベンゼン(5.0g、1.5×10-2mol)、2−ヒドロキシカルバゾール(6.11g、3.3×10-2mol)、Pd2(dba)3(0.690g、7.58×10-4mol)、およびP(tBu)3(0.15g、7.58×10-4mol)、ならびにLiN(SiMe32(11.16g、6.67×10-2mol)を、トルエン(124mL)およびジオキサン(125mL)中で使用して、実施例4に概説される手順に従った。この生成物をクロマトグラフィー(ヘキサン)によって精製して、黄色粉末を45%の収率(3.0g)で得た。この生成物はNMR分析によって確認した。
【0125】
(6b)パート6aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、2.80gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させた。迅速に撹拌しながら、4.75mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加えた。発泡が激しいので、あふれるのを防止するため、添加はゆっくり行う必要がある。溶液は濁り始め、最終的には濃い黄色の繊維状沈殿物が形成される。この溶液をマントルヒーター中で還流させると、溶液は透明な黄色になる。6aで調製したジフェノール1.9gを固体として加え、加熱撹拌すると、溶液は透明で非常に濃いオレンジ色になる。10分間還流させると、暗褐色になる。減圧下で蒸発乾固させ、ヘキサンで洗浄する。熱メタノール中に抽出し、濾過する。濾液中に黄色固形分が沈殿し、これを濾過によって回収し、吸引乾燥する。生成物はトルエンに対する溶解性が非常に高く、熱メタノールから再結晶させることで、緑色のルミネッセンスを有する結晶性黄色固体を得ることができる。この生成物はNMR分析によって確認した。
【0126】
(実施例7)
実施例7では、CTが[(N,−(1−ナフチル)(フェニル)−N’−(1−ナフチル)(4−ヒドロキシビフェニル)ベンジジン誘導体(benzidinederivative)である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成について説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0127】
(7a)フェノール系配位子の合成)
【0128】
【化16】

【0129】
(化合物7iの合成)
Pd2(dba)3(1.48g、1.61mmol)と2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(1.36g、3.87mmol)とのTHF(30mL)中の懸濁液を30分間撹拌した。これに、4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル(8.04g、32.3mmol)、N−フェニル−1−ナプチルアミン(14.16g、65.6mmol)、およびLiN(Si(Me)32(11.89g、71.0mmol)を、THF(70mL)とともに加え、その混合物を5日間還流させた後、シリカで濾過し、ブラインで洗浄し、その有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させた。蒸発させると、暗赤色の粘稠固形分が得られ、これをシリカ上のクロマトグラフィー(EtOAc/hex)によって精製すると、薄いオレンジ色の粉末(9.2g、74%)が得られた。化合物7iはNMR分析によって確認した。
【0130】
(化合物7iiの合成)
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(8.04g、28.5mmol)を、7i(9.20g、23.7mmol)とピリジン(4.88g、61.7mmol)とのジクロロメタン(140mL)中の混合物に滴下した。この混合物を15分間撹拌すると、オレンジ色から黒色に変化し、4日後、混合物をジクロロメタンで希釈し、水(3×200mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウム上で乾燥させる。溶媒を蒸発させると、暗赤色の粘稠材料が得られ、その一部をヘキサンで抽出して精製し、残りの不溶性材料はシリカ上のクロマトグラフィー(ヘキサン)によって精製し、薄いピンク色の粉末(全収量:9.21g、75%)を得た。化合物7iiはNMR分析によって確認した。
【0131】
(化合物7iiiの合成)
7ii(1.00g、1.93mmol)、1−ナプチルアミン(0.33g、2.31mmol)、NaOtBu(0.26g、2.70mmol)、Pd2(dba)3(0.09g、0.096mmol)、および2−(ジtert−ブチルホスフィノ)ビフェニル(0.029g、0.096mmol)のトルエン(20mL)中の混合物を、24時間還流させた後、セライトおよびシリカで濾過した。溶媒を蒸発させると、黄色粉末が得られ、これをヘキサン中で撹拌することによって精製して、淡黄色粉末(0.68g、69%)を得た。化合物7iiiはNMR分析によって確認した。
【0132】
(化合物7ivの合成)
Pd2(dba)3(0.055g、0.06mmol)、P(tBu)3(0.03g、0.144mmol)、4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル(1.79g、7.2mmol)、7iii(3.06g、6.0mmol)、およびLiN(SiMe32(2.89g、17.3mmol)をTHF(50mL)で使用して、7iの合成のために開発した手順を使用することで、2.57g(63%)の所望の生成物7ivを得た。
【0133】
(7b)パート7aで調製した配位子7ivのアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、0.80gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させた。迅速に撹拌しながら、1.4mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加えた。発泡が激しいので、あふれるのを防止するため、添加はゆっくり行う必要がある。溶液は濁り始め、最終的には濃い黄色の繊維状沈殿物が形成される。この溶液をマントルヒーター中で還流させると、溶液が透明な黄色になる。前述の実施例7aで調製した1.7gのフェノール7ivを、5mLのトルエン中の溶液として加え、その混合物を加熱撹拌すると薄いオレンジ色の溶液となる。30分間還流した後、冷却すると、淡黄色固体沈殿物が形成され、これを濾過によって回収し、吸引乾燥した。この固形分は、塩化メチレンに対して溶解性であり、このアルミニウム錯体はNMR分析によって確認した。
【0134】
(実施例8)
実施例8では、CTが9−フェニル−4−ヒドロキシカルバゾリル誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0135】
【化17】

【0136】
(8a)フェノール系配位子の調製)
ヨードベンゼン(6.36g、3.15×10-2mol)、4−ヒドロキシカルバゾール(4.76g、2.6×10-2mol)、Pd2(dba)3(0.476g、5.2×10-4mol)、およびP(tBu)3(0.226g、1.12×10-3mol)、ならびにLiN(SiMe32(8.70g、5.2×10-2mol)を、トルエン(180mL)およびジオキサン(130mL)中で使用して、実施例4に概説される手順に従った。この生成物をシリカクロマトグラフィー(ヘキサン中10%エチルアセテート)によって精製することによって、黄色粉末を63%の収率(4.25g)で得た。
【0137】
(8b)パート8aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、3.2gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、5.3mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。発泡が激しいので、あふれるのを防止するため、添加はゆっくり行う必要がある。溶液は濁り始め、最終的には濃い黄色の繊維状沈殿物が形成される。マントルヒーター中で還流させると、透明な黄色の溶液が得られる。前述の8aで調製したフェノール2.6gを、5mLのトルエン中の溶液として加える。加熱撹拌によって、薄いオレンジ色の溶液が得られる。30分間還流した後、濃いクリーム色の沈殿物が現れるまで、減圧下で蒸発させる。トルエンおよび塩化メチレンに対して溶解性である微結晶固体を、メタノールを加えて粉砕する。濾過し、吸引乾燥して、約3gの生成物を淡黄色粉末として回収する。このアルミニウム錯体はNMR分析によって確認した。
【0138】
(実施例9)
実施例9では、CTが4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフェニル[(N,N’−(4−(N’’,N’’ジフェニル)アニリン)(4−ヒドロキシビフェニル)誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有し:
【0139】
【化18】

【0140】
上式中、MeQは2−メチル−8−ヒドロキシキノリンを表している。
【0141】
(9a)フェノール系配位子の合成)
【0142】
【化19】

【0143】
ヘキサフルオロイソプロピリデンジアニリン(10.136g、31.26mmol)、Pd2(dba)3(0.300g、3.28×10-4mol)、P(tBu)3(0.132g、6.5×10-4mol)、およびNa(OtBu)(3.16g、32.9mmol)を、トルエン(100mL)中、室温で24時間使用して、実施例4に概説される手順に従い、化合物9iを得た。化合物9iを、クロマトグラフィー(シリカ/ヘキサン)によって精製して、6gの白色粉末(47%の収率)を得た。
【0144】
4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル(6.0g、2.4×10-2mol)および9ii(7.9g、9.6×10-3mol)、Pd2(dba)3(0.300g、3.28×10-4mol)、P(tBu)3(0.132g、6.5×10-4mol)およびLiN(SiMe32(17.73g、1.06mol)を、トルエン(100mL)およびジオキサン(100mL)中で使用して、実施例4に記載の手順に従うことで、化合物9iiを合成した。この生成物を、アセトン/ヘキサンで洗浄した後、クロマトグラフィー(シリカ、THF:ヘキサンが1:10)によって精製した。生成物は、白色粉末として51%の収率(5.65g)で得られた。
【0145】
(9b)パート9aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、3.2gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、5.3mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。発泡が激しいので、あふれるのを防止するため、添加はゆっくり行う必要がある。溶液は濁り始め、最終的には濃い黄色の繊維状沈殿物が形成される。マントルヒーター中で還流させると、透明な黄色の溶液が得られる。前述の9aで調製した5.8gのビスフェノール9iiを、25mLのトルエン中の溶液として加える。加熱撹拌によって、薄いオレンジ色の溶液が得られる。30分間還流した後、最終的にガラス状の黄色固体が得られるまで、減圧下で蒸発させる。トルエンおよび塩化メチレンに対して溶解性である黄色固体を、メタノールを加えて粉砕する。濾過し、吸引乾燥して、約6.5gの生成物を淡黄色粉末として回収する。この生成物は、塩化メチレンおよびトルエンに対して非常に溶解性が高いが、メタノールに対しては実質的に不溶性である。このアルミニウム錯体はNMR分析によって確認した。
【0146】
(実施例10)
実施例10では、CTが4−ヒドロキシビフェニル−ビス−(4−トリフェニルアミノ)−アミン誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0147】
【化20】

【0148】
(10a)フェノール系配位子の合成)
【0149】
【化21】

【0150】
2mol当量の4−ブロモフェニル−ジフェニルアミンと、1mol当量の4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル(タイガー・サイエンティフィック・インコーポレイテッド(Tyger Scientific Inc.)324ストークス・アベニュー(324 Stokes Avenue)、ニュージャージー州ユーイング(Ewing,NJ))とを、Pd2(dba)3(0.01mol当量)P(tBu)3(0.022mol当量)およびLiN(SiMe3)2(3mol当量)の存在下で、還流トルエン中で24時間反応させることによって、実施例4に記載の手順と類似の手順に従って、上記配位子が合成される。化合物10aは、シリカ上のクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0151】
(10b)パート10aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、3.2gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、5.3mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。発泡が激しいはずなので、あふれるのを防止するために添加はゆっくり行う。マントルヒーター中で還流させると、透明な黄色の溶液が得られる。前述の10aで調製したフェノール6.71gを、10mLのトルエン中の溶液として加える。この溶液を30分間還流状態で維持し、減圧下で蒸発させると、クリーム色の沈殿物が得られるはずである。メタノールを加えると微結晶固体が沈殿し、これはトルエンおよび塩化メチレンに対して溶解性である。濾過し、吸引乾燥することによって、回収できる。所望の生成物は、淡黄色粉末であり、これは濾過および吸引乾燥の後に回収することができる。
【0152】
(実施例11)
実施例11では、CTが9−フェニル−2−ヒドロキシカルバゾリル誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0153】
【化22】

【0154】
(11a)フェノール系配位子の調製)
【0155】
【化23】

【0156】
ヨードベンゼン(6.36g、3.15×10-2mol)、2−ヒドロキシカルバゾール(4.76g、2.6×10-2mol)、Pd2(dba)3(0.476g、5.2×10-4mol)、およびP(tBu)3(0.226g、1.12×10-3mol)、ならびにLiN(SiMe32(8.70g、5.2×10-2mol)を、トルエン(180mL)およびジオキサン(130mL)中で使用して、実施例4に概説される手順に従う。この生成物を、シリカクロマトグラフィー(ヘキサン中10%のエチルアセテート)によって精製して黄色粉末を得ることができる。
【0157】
(11b)パート11aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、3.2gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、5.3mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。発泡が激しいはずなので、あふれるのを防止するために添加はゆっくり行う。溶液は濁り始め、最終的には濃い黄色の繊維状沈殿物が形成されるはずである。マントルヒーター中で還流させると、透明な黄色の溶液が得られる。前述の11aで調製した2.6gのフェノールを、5mLのトルエン中の溶液として加える。加熱撹拌によって、薄いオレンジ色の溶液が得られる。この溶液を30分間還流状態で維持し、最終的にクリーム色の沈殿物が現れるまで減圧下で蒸発させる。メタノールを加えると、微結晶固体が沈殿し、これはトルエンおよび塩化メチレンに対して溶解性である。濾過し、続いて吸引乾燥することによって、この固体を回収する。この固体は淡黄色粉末として得られるはずである。
【0158】
(実施例12)
実施例12では、CTが[(4,4’−ジ(4−ヒドロキシカルバゾール)ビフェニル]誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0159】
【化24】

【0160】
(12a)フェノール系配位子の合成)
【0161】
【化25】

【0162】
4,4’−ジヨードビフェニル(1mol当量)、4−ヒドロキシカルバゾール(2mol当量)、Pd2(dba)3(0.05mol当量)、およびP(tBu)3(0.05mol当量)、ならびにLiN(SiMe32(4mol当量)を、1:1のトルエンおよびジオキサン中で使用して、実施例4に概説される手順に従う。この生成物はシリカ上のクロマトグラフィー(ヘキサン)によって精製することで、単独で反応したあらゆるビフェニル材料を除去することができる。
【0163】
(12b)パート12aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、2mol当量のキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、丸底フラスコ中で撹拌しながらトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、1mol当量のトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。あふれるのを防止するために、添加はゆっくり行う。この溶液を、透明な黄色になるまでマントルヒーター中で還流させる。前述の12aで調製した0.5mol当量のジフェノールを固体として加え、加熱撹拌すると、溶液は透明になる。この溶液を10分間還流状態で維持し、次に減圧下で蒸発乾固させる。この溶液をヘキサンで洗浄して、所望の生成物を固体材料として単離する。精製は、シリカ上のクロマトグラフィーおよび/または再結晶によって行うことができる。
【0164】
実施例13
実施例13では、CTが[(4(ジフェニルアミン)ビフェニルエーテル)誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0165】
【化26】

【0166】
(13a)フェノール系配位子の合成
4−ブロモ−4−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(1mol当量)、ジフェニルアミン(1mol当量)、Pd2(dba)3(0.05mol当量)、およびP(tBu)3(0.05mol当量)、ならびにLiN(SiMe32(2mol当量)を、1:1のトルエンおよびジオキサン中で使用して、実施例4に概説される手順に従う。この生成物は、シリカ上のクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0167】
(13b)パート13aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、2mol当量のキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、丸底フラスコ中で撹拌しながらトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、1mol当量のトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。あふれるのを防止するために、添加はゆっくり行う。この溶液を、透明な黄色になるまでマントルヒーター中で還流させる。前述の13aで調製したフェノール1mol当量を固体として加え、加熱撹拌すると、溶液は透明になるはずである。この溶液の還流を10分間続けた後、減圧下で蒸発乾固させる。この溶液をヘキサンで洗浄して、所望の生成物を固体材料として単離する。精製は、シリカ上のクロマトグラフィーおよび/または再結晶によって行うことができる。
【0168】
実施例14
実施例14では、CTが[(4(カルバゾール)ビフェニルエーテル)誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0169】
【化27】

【0170】
(14a)フェノール系配位子の合成
【0171】
【化28】

【0172】
4−ブロモ−4−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(1mol当量)、カルバゾール(1mol当量)、Pd2(dba)3(0.05mol当量)、およびP(tBu)3(0.05mol当量)、ならびにLiN(SiMe32(2mol当量)を、1:1のトルエンおよびジオキサン中で使用して、実施例4に概説される手順に従う。この生成物は、シリカ上のクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0173】
(14b)パート14aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製
グローブボックス中で、2mol当量のキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、丸底フラスコ中で撹拌しながらトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、1mol当量のトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。あふれるのを防止するために、添加はゆっくり行う。この溶液を、透明な黄色になるまでマントルヒーター中で還流させる。前述の14aで調製したフェノール1mol当量を固体として加え、加熱撹拌すると、溶液は透明になるはずである。この溶液の還流を10分間続けた後、減圧下で蒸発乾固させる。この溶液をヘキサンで洗浄して、所望の生成物を固体材料として単離する。シリカ上のクロマトグラフィーおよび/または再結晶によって精製することができる。
【0174】
(実施例15)
実施例15では、CTが[(3,6−ジ(N−(4−ヒドロキシカルバゾール)ジベンゾチオフェン)誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0175】
【化29】

【0176】
(15a)フェノール系配位子の合成)
【0177】
【化30】

【0178】
3,6−ジブロモ−ジベンゾチオフェン(1mol当量)、4−ヒドロキシカルバゾール(2mol当量)、Pd2(dba)3(0.05mol当量)、およびP(tBu)3(0.05mol当量)、ならびにLiN(SiMe32(4mol当量)を、1:1のトルエンおよびジオキサン中で使用して、実施例4に概説される手順に従う。この生成物は、シリカ上のクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0179】
(15b)パート15aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、2mol当量のキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、丸底フラスコ中で撹拌しながらトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、1mol当量のトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。あふれるのを防止するために、添加はゆっくり行う。この溶液を、透明な黄色になるまでマントルヒーター中で還流させる。前述の15aで調製した0.5mol当量のジフェノールを固体として加え、加熱撹拌すると、溶液は透明になるはずである。この溶液の還流を10分間続けた後、減圧下で蒸発乾固させる。この溶液をヘキサンで洗浄して、所望の生成物を固体材料として単離する。シリカ上のクロマトグラフィーおよび/または再結晶によって精製することができる。
【0180】
(実施例16)
実施例16では、CTが[(1,3−ジ(4−ヒドロキシカルバゾール)ベンゼン]誘導体である場合の錯体[Y2M−O−]n−CTの形成を説明する。この錯体は以下の構造を有する:
【0181】
【化31】

【0182】
(16a)フェノール系配位子の合成)
【0183】
【化32】

【0184】
1,3−ジヨードベンゼン(5.0g、1.5×10-2mol)、4−ヒドロキシカルバゾール(6.11g、3.3×10-2mol)、Pd2(dba)3(0.690g、7.58×10-4mol)、およびP(tBu)3(0.15g、7.58×10-4mol)、ならびにLiN(SiMe32(11.16g、6.67×10-2mol)を、トルエン(124mL)およびジオキサン(125mL)中で使用して、実施例4に概説される手順に従う。この生成物をクロマトグラフィー(ヘキサン)によって精製して黄色粉末を得ることができる。
【0185】
(16b)パート16aで調製した配位子のアルミニウム錯体の調製)
グローブボックス中で、2.80gのキナルジン(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)を、300mLの丸底フラスコ中で撹拌しながら25mLのトルエンに溶解させる。迅速に撹拌しながら、4.75mLの1.9Mトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(アルドリッチ(Aldrich))をシリンジで加える。発泡が激しいはずなので、あふれるのを防止するために添加はゆっくり行う。溶液は濁り始め、最終的には濃い黄色の繊維状沈殿物が形成されるはずである。この溶液をマントルヒーター中で還流させると、溶液が透明な黄色になるはずである。前述の16aで調製した1.9gのジフェノールを固体として加え、加熱撹拌すると溶液は透明で非常に濃いオレンジ色になるはずである。この溶液を10分間還流状態で維持すると、暗褐色になるはずである。この溶液を減圧下で蒸発乾固させ、ヘキサンで洗浄する。この溶液を熱メタノール中に抽出して、濾過する。濾液中に黄色固体沈殿物が現れるはずで、これを濾過によって回収し、吸引乾燥する。生成物はトルエンに対する溶解性が非常に高く、熱メタノールから、緑色ルミネッセンスを有する結晶性黄色固体として再結晶させることができる。
【0186】
(実施例17)
(デバイスの製造および特性決定データ)
熱蒸着技術によってOLEDデバイスを製造した。すべての薄膜蒸着においてあるベース真空を使用した。シン・フィルム・デバイシズ・インコーポレイテッド(Thin Film Devices,Inc)の、パターン形成されたインジウムスズ酸化物がコーティングされたガラス基体を使用した。これらのITOは、30Ω/□のシート抵抗および80%の光透過率を有する1400ÅのITOコーティングがコーティングされたコーニング(Corning)1737ガラスを主とするものである。次に、これらのパターン形成されたITO基体を洗浄し、すすぎ、続いて脱脂を行った。
【0187】
次に、このようにパターン形成されたITO基体を洗浄したものを、真空チャンバー中に入れ、さらに洗浄した。洗浄後、熱蒸着によって基体上に複数の薄膜層を順次堆積した。マスクを介して、パターン形成された金属電極(LiF/Al)を堆積した。堆積中に、水晶モニターを使用して薄膜の厚さを測定した。完成したOLEDデバイスを次に、真空チャンバーから取り出し、エポキシを使用してカバーガラスで封入し、それらについて(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネッセンス放射輝度対電圧、および(3)エレクトロルミネッセンススペクトル対電圧を測定することによって特性決定を行った。3つすべての測定を同時に行い、コンピュータで制御を行った。LEDのエレクトロルミネッセンス放射輝度を、デバイスを動作させるために必要な電流密度で割ることによって、ある電圧におけるデバイスの電流効率が求められる。この単位はcd/Aである。出力効率は、電流効率を動作電圧で割った値である。この単位はlm/Wである。
【0188】
デバイス製造に使用した材料を以下に列挙する:
PEDOT HT:コロイド形成性フッ素化ポリマー酸を有するポリチオフェン
NPB:N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン
TDATA:4,4’,4’’−トリス−(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン
MTDATA:4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン
赤色発光体1:
【0189】
【化33】

【0190】
AlQ:トリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム
ZrQ:テトラキス−(8−ヒドロキシキノリン)ジルコニウム
【0191】
(デバイスの構成)
(実施例17.1)
層:
ITO基体
NPB(80nm)
実施例1のホスト材料(40nm)中にドープした赤色発光体1(3.2nm)
AlQ(30nm)
LiF(1nm)
Al(100nm)
【0192】
(実施例17.2)
層:
ITO基体
PEDOT HT(44nm)
NPB(30nm)
実施例2のホスト材料(40nm)中にドープした赤色発光体1(3.2nm)
ZrQ(30nm)
LiF(1nm)
Al(100nm)
【0193】
(実施例17.3)
層:
ITO基体
PEDOT HT(44nm)
TDATA(30nm)
実施例3のホスト材料(40nm)中にドープした赤色発光体1(3.2nm)
ZrQ(30nm)
LiF(1nm)
Al(100nm)
【0194】
(実施例17.4)
層:
ITO基体
mTDATA(80nm)
実施例4のホスト材料(40nm)中にドープした赤色発光体1(3.2nm)
ZrQ(30nm)
LiF(1nm)
Al(100nm)
【0195】
(実施例17.5)
層:
ITO基体
NPB(80nm)
実施例5のホスト材料(40nm)中にドープした赤色発光体1(3.2nm)
ZrQ(30nm)
LiF(1nm)
Al(100nm)
【0196】
(実施例17.6)
層:
ITO基体
PEDOT HT(45nm)
NPB(30nm)
実施例6のホスト材料(40nm)中にドープした赤色発光体1(3.2nm)
ZrQ(30nm)
LiF(1nm)
Al(100nm)
【0197】
(実施例17.7)
層:
ITO基体
PEDOT HT(49nm)
NPB(30nm)
実施例7のホスト材料(40nm)中にドープした赤色発光体1(3.2nm)
ZrQ(30nm)
LiF(1nm)
Al(100nm)
【0198】
(実施例17.8)
層:
ITO基体
PEDOT HT(43nm)
NPB(30nm)
実施例8のホスト材料(40nm)中にドープした赤色発光体1(3.2nm)
ZrQ(30nm)
LiF(1nm)
Al(100nm)
【0199】
【表1】

【0200】
(実施例18)
(溶液処理によるデバイスの製造および特性決定データ)
溶液処理および熱蒸着技術の組み合わせによってOLEDデバイスを製造した。シン・フィルム・デバイシズ・インコーポレイテッド(Thin Film Devices,Inc)の、パターン形成されたインジウムスズ酸化物(ITO)がコーティングされたガラス基体を使用した。これらのITO基体は、30Ω/□のシート抵抗および80%の光透過率を有する1400ÅのITOがコーティングされたコーニング(Corning)1737ガラスを主とするものである。これらのパターン形成されたITO基体は、洗浄し、すすぎ、乾燥させ、さらにもう一度洗浄した。
【0201】
ホール注入材料の一種であるPEDOT HTを、上記ITO表面上にスピンコーティングした。カソードのリードを拭いて清浄にし、次に基体の焼き付けを行った。冷却後、HT12の0.4%w/v溶液を基体にスピンコーティングし、カソードのリードを拭いて清浄にし、アルゴン雰囲気下で基体の焼き付けを行った。冷却後、トルエンからの発光層溶液を基体にスピンコーティングした。次にカソードの接点を拭いて清浄にし、アルゴン雰囲気下で基体の焼き付けを行った。基体をマスクし、真空チャンバーに入れた。熱蒸着によってZrQ層を堆積し、続いてLiF層を堆積した。次に減圧下でマスクを交換し、熱蒸着によってAl層を堆積した。チャンバーにアルゴンを通気し、ガラス蓋、デシカント(dessicant)、およびUV硬化性エポキシを使用してデバイスを封入した。実施例17に記載されるようにサンプルの特性決定を行った。
【0202】
デバイス製造に使用した材料を以下に列挙する:
PEDOT HT:コロイド形成性フッ素化ポリマー酸を有するポリチオフェン
ダウ・ケミカル(Dow Chemical)より入手可能なHT−12
BALq:ビス−(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレートアルミニウム
H694:
【0203】
【化34】

【0204】
赤色発光体1:
【0205】
【化35】

【0206】
赤色発光体2:
【0207】
【化36】

【0208】
ZrQ:テトラキス−(8−ヒドロキシキノリン)ジルコニウム
【0209】
(デバイスの構成)
(実施例18.1)
層:
ITO基体
PEDOT HT(20nm)
HT12(20nm)、200℃で焼き付け
[実施例4のホスト材料:H694(6:1)]:赤色発光体1(92:8)(50nm)、90℃で焼き付け
ZrQ(20nm)
LiF(0.5nm)
Al(100nm)
【0210】
(実施例18.2)
層:
ITO基体
PEDOT HT(20nm)
HT12(20nm)、195℃で焼き付け
実施例4のホスト材料:赤色発光体2(92:8)(53nm)、105℃で焼き付け
ZrQ(20nm)
LiF(0.5nm)
Al(100nm)
【0211】
(実施例18.3)
層:
ITO基体
PEDOT HT(20nm)
HT12(20nm)、195℃で焼き付け
[実施例7のホスト材料:H694(4:1)]:赤色発光体2(92:8)(55nm)、90℃で焼き付け
ZrQ(20nm)
LiF(0.5nm)
Al(100nm)
【0212】
(実施例18.4)
層:
ITO基体
PEDOT HT(20nm)
HT12(20nm)、200℃で焼き付け
実施例8のホスト材料:赤色発光体1(92:8)(50nm)、90℃で焼き付け
ZrQ(20nm)
LiF(0.5nm)
Al(100nm)
【0213】
(実施例18.5)
層:
ITO基体
PEDOT HT(20nm)
HT12(20nm)、195℃で焼き付け
実施例8のホスト材料:赤色発光体2(92:8)(50nm)、105℃で焼き付け
ZrQ(20nm)
LiF(0.5nm)
Al(100nm)
【0214】
(実施例18.6)
層:
ITO基体
PEDOT HT(20nm)
HT12(20nm)、195℃で焼き付け
実施例9のホスト材料:赤色発光体2(92:8)(50nm)、105℃で焼き付け
ZrQ(20nm)
LiF(0.5nm)
Al(100nm)
【0215】
【表2】

【0216】
以上の本明細書において、特定の実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者には理解できるように、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱しない種々の修正および変形を行うことができる。したがって、本明細書および図面は、限定的ではなく説明的な意義があると見なすべきであり、このようなすべての修正が、本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0217】
多数の態様および実施形態を以上に説明してきたが、これらは単に例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が実現可能であることが、当業者には分かるであろう。
【0218】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著となったりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴として構成されるものではない。
【0219】
明確にするために、別々の実施形態の状況において、本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。さらに、ある範囲において記載される値への言及は、その範囲内にあるすべての値を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】有機電子デバイスの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式を有することを特徴とする錯体。
[Y2M−O−]n−CT
(上式中:
Mは、+2、+3、または+4の酸化状態にある金属であり;
Yは、存在ごとに独立して、ヒドロキシアリール−N−複素環、二座シッフ塩基配位子であるか、または両方のYを合わせたものが四座シッフ塩基配位子を形成するかであり;
nは1〜4の整数であり;
CTは電荷輸送基である)
【請求項2】
Yが8−ヒドロキシキノレートであることを特徴とする請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
Yが2位において置換されている8−ヒドロキシキノレートであることを特徴とする請求項2に記載の錯体。
【請求項4】
Yが、2−(2−ヒドロキシアリール)ピリジン、2−(2−ヒドロキシアリール)キノリン、1−(2−ヒドロキシアリール)イソキノリン、または3−(2−ヒドロキシアリール)イソキノリンであることを特徴とする請求項1に記載の錯体。
【請求項5】
CTが、トリアリールメタン基、トリアリールアミン基、カルバゾール基、ビス[4(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル](フェニル)メタン、4位で酸素に結合する4’−(9−カルバゾリル)−ビフェニル、4’−(1−ナフチル−フェニルアミノ)−ビフェニル、4’−((4−N,N−ジフェニルアミノ−フェニル)−フェニルアミン)−ビフェニル、4’−(N,N’−(ジ−1−ナプチル)−N’−フェニルベンジジン)−N−ビフェニル、4’−(ビス−(4−N,N−ジフェニルアミノ−フェニル)−アミン)−ビフェニル、9−フェニルカルバゾール、(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)−フェニルエーテル、[(N,N’−(ジフェニル)(4−ヒドロキシビフェニル)ベンジジン、1,3−ジ(2−ヒドロキシ−カルバゾリル)ベンゼン、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフェニル[(N,N’−(4−(N’’,N’’ジフェニル)アニリン)(4−ヒドロキシビフェニル)、4,4’−(N−(4−ヒドロキシカルバゾリル))−ビフェニル、[(3,6−ジ(N−(4−ヒドロキシカルバゾール)ジベンゾチオフェン)、1,3−ジ(4−ヒドロキシ−カルバゾリル)ベンゼン、オキサジアゾール、フェナントロリン、またはキノキサリンであることを特徴とする請求項1に記載の錯体。
【請求項6】
有機電子デバイスであって:
光活性層と;
請求項1に記載の錯体とを含み、前記錯体が、光活性層内にあるか、または光活性層に隣接しているかであることを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項7】
金属に対する配位子であって、以下の式I、II、またはIIIを有することを特徴とする配位子。
【化1】

(上式中:
5は独立して、Hまたはアルキルであり;
6はNR78であり;
7およびR8は独立して、アルキルまたはアリールであるか、あるいはR7とR8とが協働してアリールを形成するかであり;
9は、Hであるか、または別の配位子への結合である)
【請求項8】
以下の式IVまたはVを有することを特徴とする請求項7に記載の配位子。
【化2】

(上式中:
10およびR11は独立して、H、NR78、アリールであるか、あるいは別の配位子への結合であるか、あるいはR10とR11とが協働してアリールを形成するかである)
【請求項9】
存在する両方のR5がアルキルであり、NR78がN(Me)2であることを特徴とする請求項7に記載の配位子。
【請求項10】
7およびR8がそれぞれアリールであることを特徴とする請求項7に記載の配位子。
【請求項11】
以下の式VIを含むことを特徴とする有機金属錯体。
[Y]nMZ
VI
(上式中:
nは1、2、または3であり;
Mは、+2、+3、または+4の酸化状態にある金属であり;
Yは、存在ごとに、8−ヒドロキシキノリンまたはアルキル置換8−ヒドロキシキノリンを含む配位子であり;
Zは請求項7に記載の配位子である)
【請求項12】
Mが、Al、Zn、Zr、またはGaであることを特徴とする請求項11に記載の錯体。
【請求項13】
前記アルキル置換8−ヒドロキシキノリンが、2位において置換されていることを特徴とする請求項11に記載の錯体。
【請求項14】
前記アルキル置換8−ヒドロキシキノリンが2−メチル−8−ヒドロキシキノリンであることを特徴とする請求項11に記載の錯体。
【請求項15】
請求項1に記載の錯体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項16】
請求項11に記載の錯体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項17】
請求項11に記載の錯体を含む活性層を有することを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項18】
請求項11に記載の錯体を含むことを特徴とする、有機電子デバイスの製造に有用な物品。
【請求項19】
少なくとも1つの電荷輸送配位子を有することを特徴とする有機金属錯体。
【請求項20】
前記電荷輸送配位子が、トリアリールメタン基、トリアリールアミン基、カルバゾール基、ビス[4(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル](フェニル)メタン、4位において酸素に結合する4’−(9−カルバゾリル)−ビフェニル、4’−(1−ナフチル−フェニルアミノ)−ビフェニル、4’−((4−N,N−ジフェニルアミノ−フェニル)−フェニルアミン)−ビフェニル、4’−(N,N’−(ジ−1−ナプチル)−N’−フェニルベンジジン)−N−ビフェニル、4’−(ビス−(4−N,N−ジフェニルアミノ−フェニル)−アミン)−ビフェニル、9−フェニルカルバゾール、(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)−フェニルエーテル、[(N,N’−(ジフェニル)(4−ヒドロキシビフェニル)ベンジジン、1,3−ジ(2−ヒドロキシ−カルバゾリル)ベンゼン、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリジン)ジフェニル[(N,N’−(4−(N’’,N’’ジフェニル)アニリン)(4−ヒドロキシビフェニル)、4,4’−(N−(4−ヒドロキシカルバゾリル))−ビフェニル、[(3,6−ジ(N−(4−ヒドロキシカルバゾール)ジベンゾチオフェン)、1,3−ジ(4−ヒドロキシ−カルバゾリル)ベンゼン、オキサジアゾール、フェナントロリン、またはキノキサリンであることを特徴とする請求項19に記載の錯体。

【図1】
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【公表番号】特表2008−526766(P2008−526766A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549660(P2007−549660)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/047476
【国際公開番号】WO2006/072002
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】