説明

有機電子素子における電子輸送層のn型ドーピングのための新規の材料

有機電子素子における電子輸送層のn型ドーピングのための新規材料、そのための使用並びに有機電子素子。本発明は、有機素子、例えば有機発光ダイオード(OLED)、有機電界効果トランジスタ(OFET)及び特に有機太陽電池などの有機光電池を基礎とする素子における電子注入と電子輸送の改善のための供与体カルベン中間体を基礎とする新規材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機素子、例えば有機発光ダイオード(OLED)、有機電界効果トランジスタ(OFET)及び有機太陽電池における電子注入と電子輸送の改善のための新規材料に関する。
【0002】
近年、特に有機発光ダイオードに関して、OLEDにおける電子注入と電子輸送を改善する材料が知られてきている(Novaled GmbH(ドレスデン)の特許DE10307125号A1 2004年8月1日)。
【0003】
その材料は、付加的に、同じOLED効率において、駆動電圧の低下をもたらす。
【0004】
これらの材料は、前駆体として存在し、そして蒸着過程を通じて強力な電子供与体に変換されるので、該材料は、電子輸送体と一緒に同時蒸着されて、少量でOLEDの電子輸送層もしくは発光体層をドーピングする(n型ドーピングと呼ばれる)。それは、電子輸送材料もしくは発光体との電子的相互作用をもたらし、それによって係る添加剤は、電子輸送材料もしくは発光体材料の還元(従って、電子輸送材料もしくは発光体材料のLUMO[最低空分子軌道]への電子の収容)を容易にし、これはその他にもっぱら電場のエネルギーによってもたらされる。その結果、より弱い電場(それはより低い駆動電圧に相当する)で、同じ効率が達成され、その効率は、前記材料なくしてはより弱い電場では不可能であった。
【0005】
しかしながら、今までに知られた材料では、とりわけ安定性と、注入促進効果と電子輸送促進効果とがなおも満足のいくものではない。
【0006】
従って、本発明の課題は、有機素子における電子注入及び/又は電子輸送の改善のための材料であって、先行技術の欠点、特に注入促進効果と電子輸送促進効果の不足した安定性を高める材料を創作することである。
【0007】
前記課題の解決と本発明の対象は、特許請求の範囲、実施例及び詳細な説明に開示されている。
【0008】
本発明によれば、注入促進効果と電子輸送促進効果は、下位構造1〜3の新規の特許請求の範囲に記載される材料によって、なおも実質的に強化でき、かつその安定性は、変更された結合比によって同様に改善することができる。
【0009】
その原因を成すのは、下位構造1中のジアルキルアミノ置換基と芳香核との橋かけ並びに下位構造2及び3の新たに使用されるレドックス安定性のトリアリールアミン供与体であり、それらは、一方では、高真空プロセスにおけるカルベン機構を介した転化によって二量体の4供与体エチレン(1a及び2a)もしくは4供与体フルバレン(3a)となり、それらは電子受容体マトリクスにおいて直ちに電子を伝達することができ、又は他方では、カルベン状態から直接的に受容体マトリクスとともに、その物理作用において特徴付けることができるが、その化学構造においては特徴付けることができない電子伝達性の錯体様の遷移状態を形成する。
【0010】
他の可能性は、4供与体エチレン(1a及び2a)もしくは4供与体フルバレン(3a)を直接的に合成し、それにより電子受容体マトリクスをドーピングすることにある。
【0011】
下位構造2及び3の材料は、更に、トリアリールアミン置換基のため、良好なガラス形成特性を有し、それは同様に電荷輸送と電荷伝達の改善に寄与し、従って電子輸送層/発光体層の伝導率向上に寄与する。
【0012】
前駆体(カルベノイド)の下位構造:
【化1】

[式中、置換基は以下の意味を有する:
Xは、アニオン、有利にはクロリド及びホルミエートの意味を有し、
Yは、O、SもしくはN−Arを表し、その際、Arは、有利にはフェニルもしくは1−ナフチルを表し、
Rは、アルキル、有利にはメチルを意味し、
Ar1ないしAr3は、アリール基を表し、その意味は、互いに無関係に、有利にはフェニル、1−ナフチル及び2−ナフチルである]
カルベン二量体の下位構造:
【化2】

【0013】
任意の電子輸送層及び/又は発光体層との化学的相互作用によって電子輸送と電子注入を改善するのに適した新規の材料は、従って、全般的にポリマー型電子素子中で効果的に使用でき、それと理解されるは、優先的に、有機発光ダイオード(OLED)、有機電界効果トランジスタ(OFET)及び有機太陽電池などの有機光起電性素子を基礎とする素子の製造のためのあらゆる技術である。
【0014】
実施例:
1) カルベノイド1の製造
8−ヒドロキシジュロリジンのフィールスマイヤーホルミル化と、過剰の8−ヒドロキシジュロリジン中でのメチン色素1への縮合と、塩化カリウムの添加による合成
【化3】

【0015】
2) 二量体1aの製造
a) 8−ヒドロキシジュロリジン及び炭酸ジエチルからのミヒラー・ケトン型の合成
b) マクマーリー反応によるミヒラー・ケトン型の二量体化
【化4】

【0016】
3) カルベノイド2の製造
a) ジフェニルアミンと塩化フェニル酢酸からの2−フェニル酢酸ジフェニルアミドの合成
b) 2−フェニル酢酸ジフェニルアミドとラウェッソン試薬からの2−フェニルチオ酢酸ジフェニルアミドの合成
c) 2−フェニルチオ酢酸ジフェニルアミドと1,5−ジブロモ−3,3−ジメチル−ペンタン−2,4−ジオンからのジ−[2−(ジフェニルアミノ)−3−フェニル−チエン−4−イル]−ジメチル−メタンの合成
メチン色素2の形成下でのジ−[2−(ジフェニルアミノ)−3−フェニル−チエン−4−イル]−ジメチル−メタンのフィールスマイヤーホルミル化と、塩化カリウムによるアニオン交換
【化5】

【0017】
4) 二量体2aの製造
a) ジ−[2−(ジフェニルアミノ)−3−フェニル−チエン−4−イル]−ジメチル−メタン3cと炭酸ジエチルとの反応によるミヒラー・ケトン型の合成
b) マクマーリー反応によるミヒラー・ケトン型4aの二量体化
【化6】

【0018】
5) カルベノイド3の製造
a) フェニル−1−ナフチルアミンと塩化フェニル酢酸からの2−フェニル酢酸フェニル−1−ナフチルアミドの合成
b) 2−フェニル酢酸フェニル−1−ナフチルアミドとラウェッソン試薬からの2−フェニルチオ酢酸フェニル−1−ナフチルアミドの合成
c) 2−フェニルチオ酢酸フェニル−1−ナフチルアミド、モルホリン及びオルトギ酸エステルからの2−フェニル−3−モルホリノ−チオアクリル酸フェニル−1−ナフチルアミドの合成
d) 2−フェニル−3−モルホリノ−チオアクリル酸フェニル−1−ナフチルアミドと1,4−ジブロモブタン−2,3−ジオンからの1,2−ジ−[2−(フェニル−1−ナフチルアミノ)−3−フェニル−チエン−5−イル]−エタン−1,2−ジオンの合成
e) 1,2−ジ−[2−(フェニル−1−ナフチルアミノ)−3−フェニル−チエン−5−イル]−エタン−1,2−ジオンと1,3−ジフェニルアセトンからのカリウム−t−ブチレートを用いた2,5−ジフェニル−3,4−ジ−[2−(フェニル−1−ナフチル−アミノ)−3−フェニル−チエン−5−イル]−シクロペンタジエノンの縮合
f) ホウ水素化ナトリウムを用いた、2,5−ジフェニル−3,4−ジ−[2−(フェニル−1−ナフチルアミノ)−3−フェニル−チエン−5−イル]−シクロペンタジエノンのカルビノールへの還元
g) カルビノール5fからのHClを用いた、メチン色素3の形成
【化7】

【0019】
6) 二量体3aの製造
a) マクマーリー反応によるミヒラー・ケトン型5eの二量体化
【化8】

【0020】
本発明は、有機素子、例えば有機発光ダイオード(OLED)、有機電界効果トランジスタ(OFET)及び特に有機太陽電池などの有機光電池を基礎とする素子における電子注入と電子輸送の改善のための供与体カルベン中間体を基礎とする新規材料に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の3つの構造1〜3
【化1】

[式中、置換基は、以下の意味を有する:
Xは、アニオンの意味を有し、
Yは、O、SもしくはN−Arを表し、その際、Arは、有利にはフェニルもしくは1−ナフチルを表し、
Rは、アルキル、有利にはメチルを意味し、
Ar1ないしAr3は、アリール基を表し、その意味は互いに無関係である]の1つに従う少なくとも1つの成分を含む、有機電子素子における電子輸送層のn型ドーピングのための材料。
【請求項2】
請求項1に記載の材料であって、式中、Xは、クロリドもしくはホルミエートであり、かつ/又はRは、メチルであり、かつ/又はAr1ないしAr3は、任意に互いに無関係に、フェニル、1−ナフチル及び2−ナフチルを含む群から選択される材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の材料を、有機電子素子の電子輸送層のn型ドーピングのために用いる使用。
【請求項4】
2つの電極とともに1つの活性層を含む有機電子素子であって、少なくとも1つの電極と活性層との間に、1つの電子輸送層が配置されており、前記電子輸送層が、請求項1又は2に記載の材料でドーピングされている有機電子素子。

【公表番号】特表2009−510718(P2009−510718A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529598(P2008−529598)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065752
【国際公開番号】WO2007/028738
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】