説明

有機電子素子のための化合物

本発明は、エレクトロルミネセンス素子、特に青色発光素子の改善に関するものであり、式(1)及び式(2)の化合物が、発光層中のドーピング剤として、正孔輸送層中の正孔輸送材料として使用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、新規な化合物及び有機エレクトロルミネセンス素子でのそれらの使用を記載する。
【0002】
有機半導体は、最も広い意味において電子産業に帰され得る多くの様々なアプリケーションのために開発されている。これら有機半導体が機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構成は、例えば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461及びWO 98/27136に記載されている。しかしながら、これらの素子は、早急の改善を要するかなりの問題をなお示している:
1.効率は、特に蛍光OLEDの場合、未だあまりにも低く、改善されねばならない。
【0003】
2.駆動寿命は、未だ不適当であり、特に青色発光の場合、これまでは、商業的に簡単な応用を達成することができるだけであった。
【0004】
3.駆動電圧は、特に蛍光OLEDの場合、非常に高く、それゆえパワー効率を改善するために低減する必要がある。これは、特に移動用への応用に非常に重要である。
【0005】
4.芳香族アミンを含む多くの青色発光エミッターは、熱的に不安定であり昇華若しくは蒸着時に分解する。このように、これらの系の使用は不可能であるか、大きな損失と高度の技術的複雑性によってのみ可能である。
【0006】
その物理的、光化学的及び電子化学的特性により、アリールアミン系材料が、正孔輸送材料若しくはエミッター材料として、詳細に研究されてきており、それらは、均質な非晶質層を形成し、化学的に変化しない安定な陽イオン遊離基を形成することができる。
【0007】
正孔伝導体として成功することが判明した有機化合物は、一般的にジアリールアミノ置換トリフェニルアミン(TPA型)、ジアリールアミノ置換ビフェニル(TPD型)若しくはこれら基礎的化合物の併用(TPTE型)に由来する。更に、フェニレン-ビニレン構造要素を含むトリスチルベンアミン(例えば、TSA及びMSA)も効率的な正孔伝導を保証する適切な材料であることも判明している。
【化3】

【0008】
驚くべきことに、トリアリールアミンの新規なクラスが、更に改善された電子特性を有することが今回見出された。これら化合物は、分子中心の柔軟性を低減し、置換基に基づく溶解性を増加する、硬質な平面トリフェニルアミン単位と外面周囲の軟質な構造要素を含み、加えて、エミッターとして使用することができる化合物は、外面周囲のπ電子系を拡張することにより合成することができる。加えて、平面状の安定なトリアリールアミンの陽イオン遊離基は、電子及び磁性材料として使用することができる。
【0009】
多くのジ-及びトリ-オルト-架橋トリアリールアミンが1970年代に既に合成されたが、それらの物理的特性に関しては詳細には研究されてこなかった。(D. Hellwinkel, M. Melan, Chem. Ber. 1974, 107, 616-626; D. Hellwinkel, W. Schmidt, Chem. Ber. 1980, 113, 358-384)この面での更なる発展は、オルト位でケト基により架橋された非置換トリフェニルアミン骨格の合成であり(J. E. Field, T. J. Hill, D. Venkataraman, J.Org. Chem. 2003, 68, 6071-6078; J. E. Field, D. Venkataraman, Chem. Mater. 2002, 14, 962-964)、オルト位でエーテル基により架橋された非置換トリフェニルアミン骨格の合成である。これらの化合物は、安定な陽イオン遊離基を形成する。(M.Kuratsu, M. Kozaki, K. Okada, Angew. Chem. 2005, 117, 4124-4126)しかしながら、これら化合物、特にケト基により連結されたものの欠点は、共通の有機溶媒中でのそれらの非常に低い溶解性であり、再結晶化、若しくはクロマトグラフによる効率的な純化を邪魔し、妨げている。これらは、表示装置製造に必要とされるような比較的多量の純化に対して特にそうである。
【0010】
驚くべきことに、本発明の化合物は、OLEDにおけるエミッター及び正孔伝導体として良好な特性を有することが見出された。
【0011】
本発明の化合物は、類似の非架橋代表例よりもより長い波長で吸収し発光する。驚くべきことに、より集中した発光が、フェニルアミン単位の架橋の場合に観察される。更に、これらの化合物は、より高度な正孔移動性を有する。
【0012】
本発明の化合物は、高純度で再現性良く調製することができ、バッチ変動がない。本発明によるエレクトロルミネセンス素子製造のための工業プロセスは、それゆえ顕著により効率的である。
【0013】
本発明の化合物は、有機溶媒中での良好な溶解性により特徴付けられ、それらの純化及び加工をかなり簡単にする。これら化合物は、それゆえ被覆若しくは印刷技術により、溶液から加工することもできる。この特性は、使用される装置とシャドーマスクの浄化がこのためかなり簡単になることから、蒸着による従来の加工の場合にも有利でもある。本発明の化合物は、更に、溶液中での改善された酸化安定性により特徴付けられ、それは、印刷プロセスによる加工のための溶液の貯蔵安定性が顕著に改善することから、一方で純化に対して、他方でこれら化合物の取り扱いに対してプラスの効果を有する。本発明の化合物は、加えて、分解せずに高真空下で蒸着することを可能とする高温安定性により特徴付けられる。この特性は、再現性のあるOLED製造のための基本的前提条件であり、特に駆動寿命にプラスの効果を有する。
【0014】
本発明は、式(1)及び式(2)の化合物に関する。
【化4】

【0015】
ここで、使用される記号及び添字は、以下が適用される:
Xは、出現毎に同一であるか異なり、N、P、As、Sb、P=O、As=O若しくはSb=Oであり;
Yは、出現毎に同一であるか異なり、O、S、C(R、C=O、C=S、C=C(R、Si(R、BR、NR、PR、AsR、SbR、BiR、P(=O)R、As(=O)R、Bi(=O)R、SO、SeO、TeO、SO、SeO、TeO若しくは化学結合であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、OH、F、Cl、Br、I、CN、CHO、NO、N(Ar)、Si(R、B(OR、C(=O)Ar、P(=O)Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、C≡CAr、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基又は3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(各鎖は1以上の基Rにより置換されていてもよく、そして、1以上の隣接しないCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)R、S=O、SO、NR、-O-、-S-若しく-CONRで置き代えられていてもよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられていてもよい)又は1以上のR基により置換されていてもよい、5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、又は1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜24個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、又は、2、3、4若しくは5個のこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の置換基Rは、同一環上及び異なる環上で、互いにモノ或いはポリ環状、脂肪族、芳香族若しくは複素環式芳香族環構造を形成するものであってもよく;
Rは、Rと同様に定義され、少なくとも1つの基Rは水素ではなく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H若しくは1〜20個のC原子を有する脂肪族芳香族及び/又は複素環式芳香族炭化水素基であって、2以上の基Rは、互いに環構造を形成するものであってもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよく;
Lは、1〜40個のC原子を有する少なくとも2価の直鎖アルキレン、アルキリデン、アルキレンオキシ若しくはチオアルキレンオキシ基、又は3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキレン、アルキリデン、アルキレンオキシ若しくはチオアルキレンオキシ基(各鎖は1以上の基Rにより置換されていてもよく、そして、1以上の隣接しないCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)R、S=O、SO、-O-、-S-若しく-CONRで置き代えられていてもよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられていてもよい)又は5〜40個の芳香族環原子を有する少なくとも2価の芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、1以上の基R若しくはP(R3−P、P(=O)(R3−P、C(R4−P、Si(R4−P、N(Ar)3−Pにより置換されていてもよく又は2、3、4若しくは5個のこれら系の組み合わせ;又はLは化学結合であり;
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1若しくは2であり、ここで、n=0は、水素若しくは基RがYの代わりに存在することを意味するが、但し少なくとも2個の添字nは、0でなく;
pは、2、3、4、5若しくは6であり、但し、pは、Lの最大価数より大きくはなく;
但し、以下の化合物は除く。
【化5】

【0016】
これは、上記記載から明らかではあるが、式(1)及び式(2)中の1以上の基Rは、同様に(1)及び式(2)の架橋トリアリールアミン系を表してもよいことが、ここで明らかに強調されねばならない。それゆえ、式(1)及び式(2)の2若しくは3個の部分構造が互いに鎖状に連結することも、式(1)の4個の部分構造が互いに星型形状に連結しデンドリマー系を形成することも可能である。
【0017】
本発明の目的のために、芳香族環構造は、6〜40個のC原子を環構造中に含む。本発明の目的のために、複素環式芳香族環構造は、2〜40個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を環構造中に含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計数は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及び/又はSから選ばれる。本発明の目的のために、芳香族若しくは複素芳香族環構造は、必ずしもアリール又はヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、加えて、複数のアリール又はヘテロアリール基は、例えば、sp混成のC、N又はO原子のような短い非芳香族単位(好ましくは、H以外の原子は、10%より少ない)により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。このように、例えば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテルも、本発明の目的のための芳香族環構造を意味するものと解されることを意図されてもいる。
【0018】
本発明の目的のためには、アリール基も若しくはヘテロアリール基は、共通の芳香族電子構造を有する芳香族基若しくは複素環式芳香族基を意味するものと解される。本発明の目的のためには、これは、単純なホモ若しくはヘテロ環例えばベンゼン、ピリジン、チオフェン等であり、少なくとも2つの芳香族又は複素環式芳香族環例えばベンゼン環が、互いに「縮合」する、即ち互いにアネレーション(anellation)により縮合する、即ち少なくとも1つの共通の辺を有し、それにより共通の芳香族構造を有する、縮合芳香族環構造であることができる。これらアリール基若しくはヘテロアリール基は、置換されていても、非置換でもよく、任意の置換基も同様に更なる環構造を形成してもよい。したがって、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等はアリール基と、そして、キノリン、アクリジン、ベンゾチオフェン、カルバゾール等は本発明のためのヘテロアリール基とみなされるべきであり、一方、例えばビフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン等は、それらが、別々の芳香族電子構造を含むことから、アリール基とはしない。
【0019】
本発明の目的のためには、C〜C40-アルキル基は、ここで、加えて、個々のH原子若しくはCH基は、上記した基により置換されていてよく、特に好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル或いはオクチニル基を意味するものと解される。C〜C40-アルコキシ基は、特に好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、又は2-メチルブトキシを意味するものと解される。5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族又は複素環式芳香族環構造は、いずれの場合にも、上記した基Rにより置換されていてもよく、任意の所望の部位で、芳香族又は複素環式芳香族系に連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、ナフサセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-若しくはトランス-インデノフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、スピロトルクセン、スピロイソトルクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザピレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、及びベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0020】
式(1)及び式(2)の好ましい化合物は、記号Xが、窒素、燐若しくはP=Oを、特に好ましくは、窒素若しくは燐を、非常に特に好ましくは、窒素を表わすものである。
【0021】
更に、式(1)及び式(2)の好ましい化合物は、記号Yが、出現毎に同一であるか異なり、O、S、(CR、C=O、P(=O)R、C=C(R、NR、SO若しくはSO又は化学結合を、特に好ましくは、2個の同一の基Rで置換されたO、S、C=O若しくはC(Rを、非常に特に好ましくは、2個の同一の基R、好ましくは、アルキル置換基、特にメチル置換基で置換されたO、C=O若しくはC(Rを、特に2個の同一のR基、好ましくは、メチル置換基で置換されたC(Rを表わすものである。
【0022】
式(1)及び式(2)の好ましい化合物は、記号Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CF、OCH、OCF、10個までのC原子を有する、脂肪族、芳香族若しくは複素環式芳香族炭化水素基を、特に好ましくは、H、F若しくは6個までのC原子を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素基を、非常に特に好ましくは、H若しくは1〜4個のC原子を有する脂肪族炭化水素基を表わすものである。ブリッジY上のRは、特に好ましくは1〜6個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、非常に特に好ましくは、メチル基を表し又は6〜10個のC原子を有するアリール若しくはヘテロリール基、非常に特に好ましくは、フェニル基を表し、更に、2個の基Rは、同一のブリッジY上で、互いに環構造を形成し、それゆえスピロ系を構成してもよい。
【0023】
本発明の好ましい具体例では、少なくとも2個の基Rは、水素ではなく、本発明の特に好ましい具体例では、全ての3個の基Rは、水素ではない。
【0024】
更に、式(1)及び式(2)の好ましい化合物は、記号Rは、出現毎に同一であるか異なり、F、Cl、Br、I、CHO、B(OR、P(R、N(Ar)、CR=CRAr、C≡CArを、又は5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてよいものを又は、2、3、4若しくは5個のこれらの構造の組み合わせを表わす。Rは、特に好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、F、Br、B(OR、N(Ar)、CR=CRAr又は5〜25個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、各場合に1以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよく、又は、2、3若しくは4個のこれらの構造の組み合わせである。Rは、非常に特に好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、N(Ar)、CR=CRAr又は6〜20個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてよく、又は、2若しくは3個のこれらの構造の組み合わせである。
【0025】
更に、式(1)及び式(2)の好ましい化合物は、記号Arは、出現毎に同一であるか異なり、6〜25個の芳香族環原子を有する芳香族環構造を、特に、ベンゼン、ナフタレン若しくはスピロビフルオレンを表し、各場合に1以上の基Rにより置換されていてよい。非常に特に好ましいのは、フェニル、オルト-、メタ-或いはパラ-トリル、パラ-フルオロフェニル、1-ナフチル及び2-ナフチルである。
【0026】
更に、式(2)の好ましい化合物は、記号Lが、-CR=CR-、-C≡C-、C=O、S=O、SO、-O-、-S-、P(R3−P、P(=O)(R3−P、C(R4−P、Si(R4−P、N(Ar)3−Pを又は6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、1以上の基Rにより置換されていてよいものを、又は、2、3若しくは4個のこれらの構造の組み合わせを、又は化学結合を表わす。記号Lは、特に好ましくは、-CR=CR-、C=O、-O-、P(R3−P、P(=O)(R3−P、C(R4−P、N(Ar)3−Pを、又は6〜25個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、1以上の基Rにより置換されていてよいものを、又は、2若しくは3個のこれらの構造の組み合わせを、又は化学結合を表わす。記号Lは、非常に特に好ましくは、-CR=CR-、C=O、P(=O)(R3−P、N(Ar)3−Pを、又は6〜14個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造若しくはスピロビフルオレンであって、夫々は1以上の基Rにより置換されていてよいものを、又は化学結合を表わす。
【0027】
更に、好ましい化合物は、添字nは、出現毎に同一であるか異なり、0若しくは1を表し、n=0は、水素若しくはR基がYの代わりに存在することを意味し、但し、少なくとも2個の添字nは0ではなく、添字nは、特に好ましくは1である。
【0028】
更に、式(2)の好ましい化合物は、添字pは、2、3、4若しくは5、特に好ましくは、2、3若しくは4、非常に特に好ましくは、2若しくは3であり、但し、pは、Lの最大原子価より大きくはない。
【0029】
化合物が、エナンチオマー若しくはジアステレオマーを形成することができるならば、各場合に、本発明は、ジアステレオマー若しくはエナンチオマーの混合物及び富化或いは単離ジアステレオマー若しくはエナンチオマーの双方に関する。化合物が、1以上の結合についてアトロプ異性を示すことができるならば、各場合に本発明は、単離或いは富化アトロプ異性体にも関する。これは、エナンチオマー及びジアステレオマーの双方に関連する。
【0030】
式(1)の化合物の好ましい例が、以下に挙げる構造(1)乃至(48)である。
【化6−1】

【化6−2】

【化6−3】

【化6−4】

【化6−5】

【化6−6】

【化6−7】

【化6−8】

【化6−9】

【化6−10】

物理的特性は、架橋単位Yの特定の選択により影響され、最適化されることができる。この新規なクラスの化合物の決定構造要素は、低イオン化ポテンシャルを持つ平面状トリフェニルアミンであるが、一方で、置換基とブリッジYの選択が、発光に対して、また固体状態での物理的パラメーター(融点、ガラス転移点、非晶質挙動)に対して、重要である。
【0031】
単位の相互作用は、置換基の選択に依存して、誘導体化と平面状トリフェニルアミン構造でのπシステムの拡張により影響されることができ、溶解度の増加がかくして促進されることができる。
【0032】
中心単位の平面性に基づく柱状π-スタック(stack)を形成する能力は、更にこのクラスの分子を、理想的な共役に、3次元ネットワークのための電子的に活性な構成ブロックに、またディスコチック(discotic)液晶にもする。
【0033】
本発明の化合物の好ましい具体例は、ガラス転移点Tが、90℃より大きく、好ましくは100℃より大きく、特に好ましくは120℃より大きい。
【0034】
本発明の化合物の骨格は、例えば、スキーム1及びスキーム2に挙げたように臭素化、ウルマンアリール化、ハートウイック-ブーフバルトカップリング等により当業者に公知の合成工程により調製することができる。
【0035】
これらの骨格は更なる工程で官能化することができる。したがって、架橋要素を含むトリフェニルアミンの臭素化は、窒素原子の+M直接効果に基づいて、良好な収率が、良好なレジオ選択性(regioselectivitiy)として同時に達成される、トリ-p-ブロミン置換架橋トリフェニルアミンを生じる。臭素原子に加えて使用することができる臭素化剤は、特に、N-ブロモサクシンアミド(NBS)のようなN-ブロモ化合物である。他の反応性基を、例えば、塩素、ヨウ素、ボロン酸或いはボリン酸誘導体、トリフレート若しくはトシレートを使用する官能化が、同様に適している。
【化7】

【化8】

【0036】
官能化された、特に臭素化された化合物は、スキーム3に挙げたように、更なる官能化のための中心単位に対応する。したがって、これら官能化された架橋化合物は、例えば、官能化アリールボロン酸に対する鈴木カップリングによって、式(1)の化合物に変換することができる。他のカップリング反応(例えば、スチル(Stille)カップリング、ヘック(Heck)カップリング、ソノガシラカップリング等)も同様に使用することができる。ハートウイック-ブーフバルト法によるジアリールアミンへのカップリングは、トリアリールアミン誘導体を生じる。対応して、脂肪族アミン、カルバゾール等も置換基として導入することができる。更に、ホルミル、アルキルカルボニル及びアリールカルボニル基若しくはそれらの保護アナログは、例えば対応するジオキソランの形で、官能基として適している。生じるカルボニル基質は、例えばウイティッヒ-ホーナー(Wittig-Horner)反応により、対応するオレフィンに容易に変換することができる。臭素化された化合物は、更にリチウム化され、ベンゾニトリルのような求電子試薬との反応と引き続く酸加水分解によりケトンに或いは、クロロジフェニルホスフィンを使用し引き続く酸化によりホスフィンオキシドに変換することができる。
【化9】

【0037】
したがって、更に、本発明は、基Rが水素を表わす式(1)の化合物の非官能化親構造が、官能化特に臭素化され、更なる工程で置換基Rが導入されることを特徴とする式(1)の化合物の調製方法に関する。
【0038】
適切に官能化された式(1)若しくは式(2)の化合物、特に、例えば上に挙げた構造(41)乃至(46)のような臭素化化合物は、ポリマー中に組み込むために使用することもできる。
【0039】
したがって、本発明は、更に、式(1)若しくは式(2)の反復単位を含むポリマー、オリゴマー若しくはデンドリマーに関する。これらのポリマー、オリゴマー若しくはデンドリマーは、共役、部分共役或いは非共役であってもよい。本出願の目的のためには、オリゴマーは、少なくとも3個の反復単位を含む化合物を意味するものと解されることを意図している。
【0040】
ポリマー、オリゴマー若しくはデンドリマーの更なる反復単位は、フルオレン(例えば、EP 842208若しくはWO 00/22026による)、スピロビフルオレン(例えばEP 707020、EP 894107若しくはEP 04028865.6による)、パラ-フェニレン(例えばWO 92/18552による)、ジヒドロフェナントレン(例えばWO 05/014689による)、フェナントレン(例えばWO 05/104264若しくは未公開出願DE102005037334.3による)、インデノフルオレン(例えばWO 04/041901若しくはWO 04/113412による)、カルバゾール(例えばWO 04/070772による)、アントラセン、ナフタレン若しくはチオフェン(例えばEP 1028136による)から成る群より好ましくは選択される。更なる好ましい反復単位は、例えば、ビニルアリールアミン若しくは金属錯体系の蛍光若しくは燐光発光単位であり、或いは、特に、トリアリールアミン系の正孔伝導単位である。複数のこれら単位を含むポリマー若しくは式(1)の反復単位のコポリマーも可能である。
【0041】
式(1)及び式(2)の化合物は、有機電子素子に、特に有機エレクトロルミネセンス素子に使用することができる。本発明の目的のためには、有機電子素子は、陽極、陰極及び少なくとも1つ有機化合物を含む少なくとも1つの層を有する素子を意味するものと解される。有機エレクトロルミネセンス素子では、少なくとも1つの層は、発光層である。陰極、陽極及び発光層とは別に、有機エレクトロルミネセンス素子は、更なる層を含んでもよい。これらは、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び/又は電子注入層であり得る。しかしながら、これらの各層は必ずしも存在する必要がないことが、この時点で指摘されるべきである。
【0042】
式(1)及び式(2)の化合物は、置換基次第で、異なる機能で若しくは異なる有機層で使用される。
【0043】
本発明の好ましい具体例では、発光層での化合物は、少なくとも1つの母体材料と共に混合物として使用される。これは、式(1)及び式(2)の化合物の少なくとも1つの置換基R、好ましくは少なくとも2つの置換基R、特に好ましくは全ての3つの置換基Rが、CR=CRAr基を表わすならば、特にそうである。更に、記号Lが、-CR=CR-Ar基を表わす式(2)の化合物が、ここで特に適している。
【0044】
母体とドーパントを含む系における母体材料は、系により高い割合で存在する成分を意味するものと解される。1つの母体と複数のドーパントを含む系においては、母体は、混合物中での割合が最も高い成分を意味するものと解される。
【0045】
発光層中の母体材料の割合は、50.0〜99.9重量%、好ましくは、80.0〜99.5重量%、特に好ましくは90.0〜99.0重量%である。対応して、式(1)及び式(2)のドーパントの割合は、0.1〜50.0重量%、好ましくは、0.5〜20.0重量%、特に好ましくは1.0〜10.0重量%である。
【0046】
適切な母体材料は、種々なクラスの物質である。好ましい母体材料は、オリゴアリーレン(例えば、EP 676461による2.2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレン若しくはジナフチルアントラセン)、特に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリ−レンビニレン(例えば、EP 676461によるDPVBi若しくはスピロDPVBi)、ポリポダル金属錯体(例えば、WO 04/081017による)、正孔伝導化合物(例えば、WO 04/058911による)、電子伝導化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(例えば、WO 05/084081及びWO 05/084082による)若しくはアトロプ異性体(例えば、未公開出願EP 04026402.0による)のクラスから選択される。特に、好ましい母体材料は、ナフタレン、アントラセン及び/又はピレン若しくはこれら化合物のアトロプ異性体を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン、ケトン、ホスフィンオキシド及びスルホキシドのクラスから選択される。非常に特に好ましい母体材料は、アントラセン及び/又はピレン若しくはこれら化合物のアトロプ異性体を含むオリゴアリーレン、ホスフィンオキシド及びスルホキシドのクラスから選択される。この出願の目的のためには、オリゴアリーレンは、少なくとも3個のアリール若しくはアリーレン基が互いに結合する化合物を意味するものと解される。
【0047】
更に、好ましい有機エレクトロルミネセンス素子は、複数の発光化合物が同一層中若しくは異なる層中に使用され、これら化合物の少なくとも一つが式(1)若しくは式(2)の構造を持つことを特徴とする。これら化合物は、特に好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光長を有し、全体として、白色発光が生じる、即ち、式(1)若しくは式(2)の化合物とは別に、蛍光若しくは燐光を発することができ、黄色、オレンジ色若しくは赤色光を発光する少なくとも一つの更なる発光化合物も使用される。特に好ましいものは、3層構造であり、これら層の少なくとも一つの層は式(1)若しくは式(2)の化合物を含み、その層は青色、緑色及びオレンジ色若しくは赤色発光するものである。(基本構造については、WO 05/011013参照。)
本発明の更に好ましい具体例は、式(1)若しくは式(2)の化合物が、発光層中の母体材料として使用される。これは、特に置換基Rが芳香族若しくは複素環式芳香族環構造を表わす場合である。
【0048】
本発明の一層更に好ましい具体例は、式(1)若しくは式(2)の化合物が、有機エレクトロルミネッセンス素子若しくは別の有機電子素子での正孔輸送層若しくは正孔注入層として使用される。化合物は、そのとき好ましくは芳香族置換基R若しくは式N(Ar)基で置換されている。化合物は、好ましくは、正孔輸送層若しくは正孔注入層に使用される。本発明の目的のためには、正孔注入層は陽極に直接隣接する層である。本発明の目的のためには、正孔輸送層は正孔注入層と発光層との間に位置する層である。式(1)若しくは式(2)の化合物が、正孔輸送若しくは正孔注入材料として使用されるならば、例えば、F-TCNQ若しくはEP 1476881及びEP 1596445に記載された化合物と共に、それらが、電子受容化合物でドープされることが好ましいかもしれない。式(1)若しくは式(2)の化合物は、非常に高い正孔移動性を有し、場合によっては、化合物のスタッキング作用により製造される。このクラスの化合物は、このように異方性輸送特性の生成のために使用することもできる。
【0049】
更に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は1以上の層が、昇華プロセスによって被覆されることを特徴とする。ここでは、材料は、10−5mbar未満、好ましくは10−6mbar未満、特に好ましくは10−7mbar未満の圧力で、真空昇華ユニットで真空蒸着される。
【0050】
同様に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機蒸気相堆積)プロセスあるいはキャリアーガス昇華を用いて被覆されることを特徴とする。ここでは、材料は、一般的には10−5mbar〜1barの圧力で適用される。
【0051】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、例えば、スピンコーティングにより、若しくは例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷或いはオフセット印刷、特に好ましくはLITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)或いはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の化合物が、この目的のためには必要である。高溶解度は、化合物の適切な置換基により達成することができる。
【0052】
本発明による化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子の使用に関して、先行技術を超える以下の驚くべき効果を有する。
【0053】
1.対応する素子の効率は、先行技術によるシステムと比較して、特に如何なる架橋要素を含まないシステムと比較してより高い。
【0054】
2.対応する素子の安定性は、先行技術によるシステムと比較してより高く、特に、それは、顕著により長い寿命から明らかである。
【0055】
3.化合物は、考慮すべき分解もなく充分に昇華され、蒸着されることができ、したがって、より処理されやすく、それゆえ先行技術による材料よりもOLEDにおける使用により適している。
【0056】
4.ストークスシフト(吸収と発光との差)は、非架橋構造での関連化合物の場合より小である。
【0057】
5.化合物は、高い電荷担体移動性を有する。
【0058】
本出願の文脈及びまた以下の例では、目的は、本発明による化合物のOLED及び対応する表示装置に関する使用に向けられている。記載が限定されているのに関わらず、当業者は、更なる発明性を必要とすることなく、本発明による化合物を、言及されているが適用の少ない他の素子での更なる使用に、例えば、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機光受容器若しくは有機レーザー(O-laser)に用いることが可能である。本発明は、同様に本発明による化合物の対応する素子への使用及びこれら素子自体に関する。
【0059】
本発明は、以下の例により、より詳細に説明されるが、それにより限定されることを望むものではない。
【0060】

以下の合成は、他に断らない限り、保護ガス雰囲気下で行われる。出発物質は、アルドリッチ(ALDRICH)或いはABCRから購入することができる(メチルアントラニレート、メチル2-ヨードベンゾエート、パラジウム(II)アセテート、トリ-o-トリルホスフィン、無機物、溶媒)。4,4,8,8,12,12-ヘキサメチル-2,6,10-トリブロモ-4H,8H,12H-ベンゾ[1,9]キノリジノ[3,4,5,6,7-defg]アクリジンの合成は、文献(D.Hellwinkel, M. Melan, Chem. Ber. 1974, 107, 616-626)に記載されている。
【0061】
例1: 4,4,8,8,12,12-ヘキサメチル-2,6,10-トリブロモ-4H,8H,12H-ベンゾ[1,9]キノリジノ[3,4,5,6,7-defg]アクリジンの合成
【化10】

【0062】
5.3g(14.5ミリモル)の4,4,8,8,12,12-ヘキサメチル-4H,8H,12H-ベンゾ[1,9]キノリジノ-[3,4,5,6,7-defg]アクリジンが、150mlのCHCl中に先ず導入される。100mlのCHCl中の8.0g(45.1ミリモル)のNBS溶液が、引き続き遮光下0℃で滴下され、混合物は、RTに達するままにされ、この温度で更に4時間撹拌される。150mlの水が引き続き混合物に添加され、その後CHClで抽出される。有機相が、MgSOで乾燥され、溶媒が真空で除去される。生成物は熱ヘキサンで撹拌洗浄され、吸引ろ過される。収量:3g(5ミリモル)、理論値の57%、H-NMRによる純度約98%。この化合物は、引き続く合成のための中間体として使われる。
【0063】
例2: 4,4,8,8,12,12-ヘキサメチル-2,6,10-トリフェニル-4H,8H,12H-ベンゾ[1,9]キノリジノ[3,4,5,6,7-defg]アクリジン(HTM1)の合成
【化11】

【0064】
0.27g(0.9ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンとそれから33.5mg(0.15ミリモル)のパラジウム(II)アセテートが、7.5mlのジオキサン、15mlのトルエン及び18mlの水中の、3g(5ミリモル)の2,6,10-トリブロモ-4,4,8,8,12,12-ヘキサメチル-4H,8H,12H-ベンゾ[1,9]キノリジノ[3,4,5,6,7-defg]アクリジン(例1から)、2.74g(22.5ミリモル)のフェニルボロン酸及び7.8g(31.5ミリモル)の燐酸水素カリウムの脱気懸濁液に、激しく撹拌しながら添加される。混合物は、還流下5時間煮沸され、冷却されるままにされる。沈殿物は、吸引ろ過され、10mlのエタノール/水(1:1,v/v)で3度洗浄され、5mlのエタノールで3度洗浄され、引き続き真空乾燥される。収量:2.4g(4ミリモル)、理論値の81%、H-NMRによる純度約98%。
【0065】
例3:ドーパントD1の合成
【化12】

【0066】
500mlNMP中の30.1g(50ミリモル)の4,4,8,8,12,12-ヘキサメチル-2,6,10-トリブロモ-4H,8H,12H-ベンゾ[1,9]キノリジノ[3,4,5,6,7-defg]アクリジン(例1から)と25.8ml(225ミリモル)のスチレン、337mg(1.5ミリモル)のパラジウム(II)アセテート、1.55g(15ミリモル)のN,N-ジメチルグリシン、81mg(0.5ミリモル)の塩化鉄(III)及び37.8g(450ミリモル)の炭酸水素ナトリウムの混合物が、激しく撹拌しながらゆっくりと140℃迄加熱され、引き続きこの温度で16時間撹拌される。冷却後、500mlのジクロロメタンと1000mlの水が添加される。有機相が分離され、500mlの水でその度毎に5度洗浄される。硫酸ナトリウムで乾燥後、有機相が蒸発乾燥される。得られた黄色固形物は、トルエンから6度再結晶化され、還流下500mlエタノールで撹拌しながらその度毎に2度洗浄され、HPLCによる99.4%超の純度の22g(32ミリモル)(理論値の68%に対応)の生成物が得られる。
【0067】
例4:母体材料H1の合成
【化13】

【0068】
1.3g(1.17ミリモル)のPd(PPhが、200mlジオキサン及び200mlの水中の6.2g(10.4ミリモル)の4,4,8,8,12,12-ヘキサメチル-2,6,10-トリブロモ-4H,8H,12H-ベンゾ[1,9]キノリジノ[3,4,5,6,7-defg]アクリジン(例1から)と9.9g(31.2ミリモル)の10-(1-ナフチル)-9-アントリルボロン酸、14.9g(70.2ミリモル)のKPOの窒素飽和混合物に添加され、懸濁液は80℃で7時間加熱される。0.08gのNaCNが、その後添加され、水相が分離される。有機相が水で2度洗浄され、NaSOで乾燥される。得られた残留物は、トルエンから再結晶化される。沈殿した結晶は、吸引ろ過され、50mlエタノールで洗浄され真空乾燥され、HPLCによる99.6%超の純度の10.4g(8.1ミリモル)(理論値の80%に対応)の生成物が得られる。
【0069】
例5:DFT(濃度機能理論)計算
平面状トリアリールアミンの性質の更なる情報が、HOMO及びLUMOエネルギー及びバンドギャップにより与えられる。これらの量は、電子親和性、イオン化傾向、電子遷移性及び反応性に相関されることができる。これら分子の電子基底状態でのエネルギーを計算することを目的として、DFT(濃度機能理論)計算がなされた。(表1)ここで構造は、表記載の構造に対応する。励起エネルギーは、HOMO/LUMOギャップにより見積もられた。b3pw91基本セットが計算に使用された。加えて、計算はサイクリックボルタンメトリーデータにより較正された。
【表1】

【0070】
例6:OLEDの製造
OLEDが、WO 04/058911に記載される一般的プロセスにより製造されるが、これは、特別な状況(例えば、最適な効率と色を達成するための層の厚さの変化)に対する個々の場合において適合される。
【0071】
種々のOLEDの結果が、以下の例に示される。使用された基本構造と材料と層厚は、発光層と正孔注入層と正孔輸送層を除いて、より良い比較のために同一である。以下の構造を有するOLEDは、上記の一般的プロセスと同様に製造される。
【0072】
正孔注入層(HIL):0nm若しくは20nmのHTM1、表1参照、
正孔輸送層(HTL):40nm若しくは20nmのNPB(蒸着、N-ナフチル-N-フェニル-4,4’-ジアミノビフェニル)表1参照、
発光層(EML):材料は表1参照、濃度5%、層厚30nm
電子伝導体(ETC):20nmAlq3、(SynTec社から購入したトリス(キノリノラート)アルミニウム(III))
LiF-Al(陰極):150nmのAl上の1nmLiF。
【0073】
これらのOLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、効率(cd/Aで測定)、電流/電圧/輝度密度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としてのパワー効率(Im/Wで測定)及び寿命が測定される。寿命は、当初輝度1000cd/mが半分に低下した時間として定義される。
【0074】
表2は、いくつかのOLED(例7乃至9)の結果を示し、各場合に、層厚を含むEML、HIL及びHTLの組成も示される。例7は、本発明の母体材料(例4からの)中の先行技術のドーパントD2を示す。例8は、本発明の発光材料(例3からの)を有する先行技術の母体材料H2を示す。例9のOLEDは、追加的に正孔注入材料として、HTM1(例2からの)を含む。使用されるドーパントD2及び先行技術の母体材料H2の構造式は、以下に挙げられる。
【化14】

【表2】

【0075】
要約すると、本発明による化合物、例えばHTM1、D1及びH1は、有機エレクトロルミネセンス素子での使用において、非常に高度に適しており、これら材料を含む有機エレクトロルミネセンス素子は非常に良好な特性を有するということができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)及び式(2)の化合物。
【化1】

ここで、使用される記号及び添字は、以下が適用される:
Xは、出現毎に同一であるか異なり、N、P、As、Sb、P=O、As=O若しくはSb=Oであり;
Yは、出現毎に同一であるか異なり、O、S、C(R、C=O、C=S、C=NR、C=C(R、Si(R、BR、NR、PR、AsR、SbR、BiR、P(=O)R、As(=O)R、Sb(=O)R、Bi(=O)R、SO、SeO、TeO、SO、SeO、TeO若しくは化学結合であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、OH、F、Cl、Br、I、CN、CHO、NO、N(Ar)、Si(R、B(OR、C(=O)Ar、P(=O)Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、C≡CAr、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基又は3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(各鎖は1以上の基Rにより置換されていてもよく、そして、1以上の隣接しないCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)R、S=O、SO、NR、-O-、-S-若しく-CONRで置き代えられていてもよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられていてもよい)又は1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造、又は1以上のR基により置換されていてもよい、5〜24個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、又は、2、3、4若しくは5個のこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の置換基Rは、同一環上及びまた異なる環上で、互いにモノ或いはポリ環状、脂肪族、芳香族若しくは複素環式芳香族環構造を形成するものであってもよく;
Rは、Rと同様に定義され、少なくとも1つの基Rは、水素ではなく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H若しくは1〜20個のC原子を有する脂肪族芳香族及び/又は複素環式芳香族炭化水素基であって、2以上の基Rは、互いに環構造を形成するものであってもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよく;
Lは、1〜40個のC原子を有する少なくとも2価の直鎖アルキレン、アルキリデン、アルキレンオキシ若しくはチオアルキレンオキシ基、又は3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキレン、アルキリデン、アルキレンオキシ若しくはチオアルキレンオキシ基(各鎖は1以上の基Rにより置換されていてもよく、そして、1以上の隣接しないCH基は、-CR=CR-、-C≡C-、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)R、S=O、SO、-O-、-S-若しくは-CONRで置き代えられていてもよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられていてもよい)又は5〜40個の芳香族環原子を有する少なくとも2価の芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、1以上の基R、若しくはP(R3−P、P(=O)(R3−P、C(R4−P、Si(R4−P、N(Ar)3−Pにより置換されていてもよく、又は2、3、4若しくは5個のこれら系の組み合わせ;又はLは化学結合であり;
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1若しくは2であり、ここで、n=0は、水素若しくは基RがYの代わりに存在することを意味するが、但し少なくとも2個の添字nは、0でなく;
pは、2、3、4、5若しくは6であり、但し、pは、Lの最大原子価より大きくはなく;
但し、以下の化合物は除く。
【化2】

【請求項2】
記号Xは、窒素、燐若しくはP=Oを表わすことを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
記号Yは、出現毎に同一であるか異なり、O、S、(CR、C=O、P(=O)R、C=C(R、NR、SO、SO又は化学結合を表わすことを特徴とする、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
記号Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CF、OCH、OCF、1〜10個のC原子を有する、脂肪族、芳香族若しくは複素環式芳香族炭化水素基を表し又はブリッジY上のRは、1〜6個のC原子を有する脂肪族炭化水素基若しくは6〜10個のC原子を有するアリール或いはヘテロリール基を表し、そして、2個の基Rは、同一ブリッジY上で、互いに環構造を形成してもよいことを特徴とする、請求項1乃至3何れか1項記載の化合物。
【請求項5】
記号Rは、出現毎に同一であるか異なり、F、Cl、Br、I、CHO、B(OR、P(R、N(Ar)、CR=CRAr、C≡CArを、又は5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、1以上の非芳香族基Rにより置換されていてもよいものを、又は、2、3、4若しくは5個のこれらの基の組み合わせを表わすことを特徴とする、請求項1乃至4何れか1項記載の化合物。
【請求項6】
記号Lは、C-R=CR-、-C≡C-、C=O、S=O、SO、-O-、-S-、P(R3−P、P(=O)(R3−P、C(R4−P、Si(R4−P、N(Ar)3−Pを、又は6〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であって、1以上の基Rにより置換されていてもよいものを、又は、2、3若しくは4個のこれらの構造の組み合わせを、又は化学結合を表わすことを特徴とする、請求項1乃至5何れか1項記載の化合物。
【請求項7】
請求項1乃至6何れか1項記載の1以上の反復単位を含み、少なくとも1つの基R若しくはRがポリマーへの結合を表わす、ポリマー、オリゴマー若しくはデンドリマー。
【請求項8】
すべての基Rが水素を表わす式(1)の化合物の非官能化親構造が官能化、特に臭素化され、そして、更なる工程で置換基Rが導入されることを特徴とする、請求項1乃至6何れか1項記載の化合物の調製方法。
【請求項9】
請求項1乃至7何れか1項記載の化合物の有機電子素子での使用。
【請求項10】
請求項1乃至7何れか1項記載の少なくとも1つの化合物を含む有機電子素子。
【請求項11】
有機エレクトロルミネセンス素子(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機光受容器(O-PC)及び有機レーザーダイオード(O-laser)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項10記載の有機電子素子。
【請求項12】
少なくとも1つの層が、請求項1乃至7何れか1項記載の少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする、陽極、陰極及び少なくとも1つの発光層を含む有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項13】
請求項1乃至7何れか1項記載の化合物が、少なくとも1つの母体材料との混合物として使用され、及び/又は請求項1乃至7何れか1項記載の化合物が、正孔輸送及び/又は正孔注入材料として使用されることを特徴とする、請求項12記載の有機エレクトロルミネセンス素子。

【公表番号】特表2009−512628(P2009−512628A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530354(P2008−530354)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008053
【国際公開番号】WO2007/031165
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】