説明

有機電子素子

【課題】本発明の目的は、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機太陽電池といった有機電子素子において、平滑性の高い電極により電流リークや電界集中を抑制し、高い導電性と透明性を兼ね備えた電極を提供し、さらには、素子の効率に優れ、寿命を向上させた有機電子素子を提供することにある。
【解決手段】基板上に、対向する第一電極と、第二電極を有し、該第一電極と、第二電極の間に少なくとも一層の有機機能層を有する有機電子素子において、該第一電極と、第二電極の少なくとも一つが導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーとを有してなる導電層を有し、該導電層の3次元表面エネルギーの水素結合成分γHが、γH≦10(mN/m)であることを特徴とする有機電子素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機太陽電池といった有機電子素子に関し、特に、有機電子素子の効率や寿命を向上させた有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子や有機太陽電池といった有機電子素子が注目されており、このような素子において、透明電極は必須の構成技術となっている。
【0003】
従来、透明電極は、ガラスや透明なプラスチックフィルム等の透明基板上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明電極が、その導電性や透明性といった性能の点から、主に使用されてきた。しかし、真空蒸着法やスパッタリング法を用いた透明電極は生産性が悪いため製造コストが高いことや、可撓性に劣るためフレキシブル性が求められる素子用途には適用できないことが問題であった。
【0004】
これに対し、π共役系高分子に代表される導電性ポリマーを適当な溶媒に溶解または分散した塗液を用い、塗布や印刷によって透明導電体層を形成する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。しかし、真空成膜法によるITO等の金属酸化物透明電極に較べると、透明性、導電性とも著しく低下するという課題があった。さらに、これを用いて有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)といった有機電子素子を形成した場合、透明導電体層自身の低導電性に加え、該透明導電体層上に設けられる機能層との界面抵抗が高いと思われる挙動(例えば、有機ELでは駆動電圧の上昇)が見られ、素子としての性能が低下するという課題があった。
【0005】
また、導電性ポリマーは、有機EL素子において、ITOやZnO電極上に、ホール注入材料、ホール輸送材料として積層されることが多い。その際、ITO電極上に突起があると、電極間リークや、その部分での電界集中により素子寿命低下の要因となる。導電性ポリマーの積層は、このような突起を埋めることで、表面平滑性の改善にもなるが、突起の大きさによっては、埋め込みに必要な導電性ポリマー層が厚くなり、素子の透明性の点から、これらを両立させることは難しい。
【0006】
これに対して、導電性ポリマーとバインダー樹脂からなる被覆層を用いる方法(例えば、特許文献2)が提案されている。バインダー樹脂添加により、透明性を損なうことなく、突起の埋め込みに必要な層の厚みを得られるが、導電性ポリマー比率の低下により、層の導電性が著しく低下するという別の課題が生じる。さらに、この電極を用いて有機EL素子を形成した場合、前述の方法同様、駆動電圧の上昇が見られ、素子性能が低下してしまう。
【0007】
このバインダー樹脂添加による導電性低下の問題に対して、導電性ポリマーに特定構造の架橋点形成化合物を添加する方法(例えば、特許文献3)が提案されている。しかし、この方法では、電極自身の導電性低下は抑制できるが、突起の埋め込み効果が低く、結果、表面平滑性の低い電極が形成され、さらには、この電極を用いた有機EL素子において、駆動電圧の上昇を抑制する効果はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−273964号公報
【特許文献2】特開2006−198805号公報
【特許文献3】特開2006−143922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機太陽電池といった有機電子素子において、平滑性の高い電極により電流リークや電界集中を抑制し、高い導電性と透明性を兼ね備えた電極を提供し、さらには、素子の効率に優れ、寿命を向上させた有機電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述のように、導電性ポリマーに水性バインダー樹脂を添加する従来技術では、電極の平滑性、導電性、透明性を同時に満たし、さらには電極上に形成される各種有機機能層との界面抵抗を低減することはできなかった。それに対し本発明者らは、導電性ポリマーと水酸基を含有する非導電性ポリマーとからなる導電層を形成し、該導電層の3次元表面エネルギーの水素結合成分γHを、γH≦10mN/mとすることで、前述の性能を同時に満たす電極を形成し、さらには、電極とその上に形成される有機機能層との界面抵抗を低減でき、有機電子素子の効率及び寿命を向上できることを見いだした。
【0011】
機構の詳細は不明であるが、導電層のγHを、γH≦10mN/mとし、疎水的な表面にすることで、その上に形成される有機機能層の表面配向が促進され、結果、該導電層と該有機機能層との界面抵抗が低減されると考えられる。導電層表面の疎水化自体は、疎水性の非導電性ポリマーを用いた場合でも可能と考えられるが、そのような材では導電層の導電性低下につながる。本発明では、導電性ポリマーに対し導電性増強効果のある特定構造の非導電性ポリマーを用いて導電層を形成したのち、さらに、非導電性ポリマー同士、あるいは導電性ポリマーと非導電性ポリマーとを架橋させる。架橋は、非導電性ポリマーに含まれる水酸基部分が脱水縮合して形成されると考えられ、結果、導電層表面の水酸基やスルホ基量が低減し、3次元表面エネルギーγHが低下した表面が得られる。架橋反応は、酸触媒の下、促進することができ、酸触媒としては、硫酸や硫酸アンモニウムを用いることができる。また導電性ポリマーにドーパントとして用いるポリアニオンにおいて、スルホ基含有ポリアニオンを使用することで、ドーパントと触媒を兼用することができる。さらに、架橋反応は、100℃以上200℃以下の温度の加熱処理で促進することができる。また、架橋により、耐水、耐溶媒性が得られ、洗浄耐性を向上することができる。
【0012】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0013】
1.基板上に、対向する第一電極と、第二電極を有し、該第一電極と、第二電極の間に少なくとも一層の有機機能層を有する有機電子素子において、該第一電極と、第二電極の少なくとも一つが導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーとを有してなる導電層を有し、該導電層の3次元表面エネルギーの水素結合成分γHが、γH≦10(mN/m)であることを特徴とする有機電子素子。
【0014】
2.前記水酸基含有非導電性ポリマーが、下記一般式(A)で表されるポリマー(A)を有してなることを特徴とする前記1に記載の有機電子素子。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、X〜Xはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数5以下のアルキレン基を表す。l、m、nは構成率(mol%)を表し、50≦l+m+n≦100である。)
3.前記導電性ポリマーが、スルホン酸基含有ポリアニオンを含むことを特徴とする前記1または2に記載の有機電子素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機太陽電池といった有機電子素子において、平滑性の高い電極により電流リークや電界集中を抑制し、高い導電性と透明性を兼ね備えた電極を提供し、さらには、素子の効率に優れ、寿命を向上させた有機電子素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】有機EL素子の構成の一例を示す図である。
【図2】有機EL素子の作製の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0020】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様等について詳細な説明をする。
<基板>
本発明では、基板として透明基板が好ましく、透明基板として、プラスチックフィルム、プラスチック板、ガラスなどを用いることができ、軽量性と柔軟性の観点から透明プラスチックフィルムを用いることが好ましい。
【0021】
プラスチックフィルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、エチレン・酢酸ビニル樹脂(EVA)などのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
【0022】
本発明に係る透明電極及び有機電子素子において、基板は、表面平滑性に優れているものが好ましい。表面の平滑性は算術平均粗さRaが5nm以下かつ最大高さRzが50nm以下であることが好ましく、Raが2nm以下かつRzが30nm以下であることがより好ましく、さらに好ましくはRaが1nm以下かつRzが20nm以下である。基板の表面は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等の下塗り層を付与して平滑化してもよいし、研磨などの機械加工によって平滑にすることもできる。ここで、表面の平滑性は、原子間力顕微鏡(AFM)等による測定から、表面粗さ規格(JIS B 0601−2001)に従い、求めることができる。
【0023】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0024】
また、大気中の酸素、水分を遮断する目的でガスバリア層を設けるのが好ましい。ガスバリア層の形成材料としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物、金属窒化物が使用できる。これらの材料は、水蒸気バリア機能のほかに酸素バリア機能も有する。特にバリアー性、耐溶剤性、透明性が良好な窒化シリコン、酸化窒化シリコンが好ましい。また、バリア層は必要に応じて多層構成とすることも可能である。ガスバリア層の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。前記ガスバリア層を構成する各無機層の厚みに関しては特に限定されないが、典型的には1層あたり5nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1層あたり10nm〜200nmである。ガスバリア層は基板の少なくとも一方の面に設けられ、両面に設けられるのがより好ましい。
<導電層>
本発明における導電層は、少なくともπ共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーと後述する水酸基含有非導電性ポリマーとから構成される。導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーの比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、水酸基含有非導電性ポリマーが30質量部から900質量部であることが好ましく、リーク防止、水酸基含有非導電性ポリマーの導電性増強効果、透明性の観点から、水酸基含有非導電性ポリマーが100質量部以上であることがより好ましい。
【0025】
また、これら導電層の形成方法は、導電性ポリマー及び水酸基含有非導電性ポリマーを含む分散液を、塗布、乾燥して膜形成する液相成膜法であれば特に制限はない。ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。なお、塗布液の濃度、目的とする導電性に応じて、塗布を複数回行ってもよい。また、スプレーコート法やインクジェット法により、あるいはマスクを用いて、直接パターン形成してもよい。
【0026】
本発明の導電層を形成することで、導電層の導電性と透明性を両立するとともに、該導電層の下層の突起を埋め、電極表面を平滑化し、さらに、有機機能層との界面抵抗を低減し、有機機能層の配向を促進できる。
【0027】
導電層の乾燥膜厚は、10nmから2000nmであることが好ましい。導電性、表面平滑性、透明性の観点から、10nmから1000nmがより好ましく、10nmから500nmであることがさらに好ましい。
【0028】
導電層を塗布した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電層が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80℃から150℃で10秒から10分の乾燥処理をすることができる。
【0029】
特に、ポリアニオンがスルホン酸を有するポリアニオンである場合、塗布乾燥により、膜を形成した後に、100℃以上200℃以下の温度で5分以上の追加の加熱処理を施すことが好ましい。これにより、導電層の洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上する。また、保存性も向上する。100℃以上であると上記効果が奏されて好ましく、200℃以下であると別な反応も抑制されて上記効果が奏され好ましい処理温度としては110℃以上160℃以下であることがより好ましく、処理時間としては15分以上であることがより好ましい。処理時間の上限は特にないが、生産性を考えると120分以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の導電性ポリマー及び水酸基含有非導電性ポリマーを含む分散液は、導電層の導電性、透明性、平滑性を同時に満たす範囲において、さらに他の透明な非導電性ポリマーや添加剤を含有してもよい。
【0031】
透明な非導電性ポリマーとしては、天然高分子樹脂または合成高分子樹脂から広く選択して使用することができ、水溶性高分子又は水性高分子エマルジョンが特に好ましい。水溶性高分子としては、天然高分子のデンプン、ゼラチン、寒天等、半合成高分子のヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、合成高分子のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系高分子、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等が、水性高分子エマルジョンとしては、アクリル系樹脂(アクリルシリコン変性樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が、使用することができる。
【0032】
また、合成高分子樹脂としては、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)や、熱・光・電子線・放射線で硬化する透明硬化性樹脂(例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコーン樹脂)を使用することができる。
【0033】
添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤などの安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料などの着色剤などが挙げられる。更に、塗布性などの作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
<導電性ポリマー>
本発明の導電性ポリマーはπ共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
<π共役系導電性高分子>
本発明に用いるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類、の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンであることが最も好ましい。
<π共役系導電性高分子前駆体モノマー>
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0034】
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
【0035】
このポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0036】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシル基がより好ましい。
【0037】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。また、化合物内にフッ素を有するポリアニオンであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)などをあげることができる。これらのうち、スルホ基を有する化合物であると、導電性ポリマー含有層を塗布、乾燥することによって形成した後に、100℃以上200℃以下の温度で加熱処理を施した場合、この塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、より好ましい。さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、バインダー樹脂との相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
【0038】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0039】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
【0040】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0041】
こうした導電性ポリマーは市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT:PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT:PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることが出来る。
【0042】
2nd.ドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物などが挙げられる。前記水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、などが挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
<水系溶媒>
本発明において、水系溶媒とは、50質量%以上が水である溶媒を表す。もちろん、他の溶媒を含有しない純水であっても良い。水系溶媒の水以外の成分は、水に相溶する溶剤であれば特に制限はないが、アルコール系の溶媒を好ましく用いることができ、中でも、沸点が比較的水に近いイソプロピルアルコールを用いることが形成する膜の平滑性などには有利である。
<水酸基含有非導電性ポリマー>
本発明の水酸基含有非導電性ポリマーは水酸基を含有する非導電性ポリマーであり、本発明の前記一般式(A)(下記にも示す。)で表されるポリマー(A)を有してなることが好ましい。
【0043】
【化2】

【0044】
(式中、X〜Xはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数5以下のアルキレン基を表す。l、m、nは構成率(mol%)を表し、50≦l+m+n≦100である。)
本発明の前記一般式(A)で表されるポリマー(A)とは、主たる共重合成分が下記モノマーM1、M2、M3からなり、共重合成分の50mol%以上の成分が該モノマーのいずれか、あるいは、合計が50mol%以上である共重合ポリマーである。該モノマー成分の合計が80mol%以上であることがより好ましく、さらに、いずれか単独のモノマーから形成されたホモポリマーであっても良く、また、好ましい実施形態である。
【0045】
【化3】

【0046】
本発明のポリマー(A)においては、水系溶媒に可溶である範囲において、他のモノマー成分が共重合されていてもかまわないが、親水性の高いモノマー成分であることがより好ましい。また、本発明のポリマー(A)は分子量1000以下の含有量が0〜5質量%であることが好ましい。低分子成分が少ないことで、素子の保存性や、導電層に対して垂直方向の導電性に障壁があるような挙動をより低下させることができる。
【0047】
本発明のポリマー(A)の分子量1000以下の含有量を0〜5質量%とする方法としては、再沈殿法、分取GPCに、リビング重合による単分散のポリマーを合成等により、低分子量成分を除去する、または低分子量成分の生成を抑制する方法を用いることができる。再沈殿法は、ポリマーが溶解可能な溶媒へ溶解し、ポリマーを溶解した溶媒より溶解性の低い溶媒中へ滴下することにより、ポリマーを析出させ、モノマー、触媒、オリゴマー等の低分子量成分を除去する方法である。また、分取GPCは例えばリサイクル分取GPCLC−9100(日本分析工業社製)、ポリスチレンゲルカラムで、ポリマーを溶解した溶液をカラムに通すことにより分子量で分けることができ、所望の低分子量をカットすることができる方法である。リビング重合は、開始種の生成が経時で変化せず、また停止反応等の副反応が少なく、分子量の揃ったポリマーが得られる。分子量はモノマーの添加量により調整できるため、例えば分子量を2万のポリマーを合成すれば、低分子量体の生成を抑制することができる。生産適正の観点から、再沈殿法、リビング重合が好ましい。
【0048】
本発明のポリマー(A)の数平均分子量は3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。本発明のポリマー(A)の分子量分布は1.01〜1.30が好ましく、より好ましくは1.01〜1.25である。分子量分布は(重量平均分子量/数平均分子量)の比で表す。分子量1000以下の含有量はGPCにより得られた分布において、分子量1000以下の面積を積算し、分布全体の面積で割ることで割合を換算した。リビングラジカル重合溶剤は、反応条件化で不活性であり、モノマー、生成するポリマーを溶解できれば特に制限はないが、アルコール系溶媒と水の混合溶媒が好ましい。リビングラジカル重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
<有機電子素子の構成>
有機電子素子の構成の一例を図1に示す。基板(10)上に対向する第一電極(11)と第二電極(12)を有し、第一電極(11)と第二電極(12)との電極間に少なくとも1層の有機機能層(13)を有する(図1a参照)。本発明においては、第一電極(11)と第二電極(12)の少なくとも一方の電極が導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーからなる導電層(14)を含む(図1b、図1c参照)。少なくとも一方の電極が導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーからなる導電層(14)を含むとは、少なくとも一方の電極が本発明の導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーからなる導電層(14)単体で形成されている(図1b、図1c参照)、あるいは、銀ナノワイヤ層、ITO層、ZnO層など、公知の他の導電性電極層に本発明の導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーからなる導電層(14)が積層されている(図1d、図1e、図1f参照)、あるいは、後述のストライプ状、あるいはメッシュ状、あるいは、ランダムな網目状電極等に本発明の導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーからなる導電層(14)がオーバーコートされている、あるいは、本発明の導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーからなる導電層(14)にストライプ状、あるいはメッシュ状、あるいは、ランダムな網目状電極等の補助電極が埋め込まれている形態などを挙げることができるが、少なくとも一方の電極が導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーからなる導電層(14)を含んでいれば、これらに限定はされない。
【0049】
本発明の有機機能層(13)としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層などを特に限定無く挙げることができるが、本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系の素子である有機発光層、有機光電変換層である場合において、特に有効である。
<補助電極>
大面積化に対応するためには、導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーからなる導電層を有する電極が、さらに、光不透過の導電部と透光性窓部とからなる補助電極を有することが好ましい。補助電極の光不透過の導電部は導電性が良い点で金属であることが好ましく、金属材料としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等が挙げられる。また導電部の金属は合金でも良く、金属層は単層でも多層でも良い。
【0050】
補助電極の形状は特に制限はないが、例えば、導電部がストライプ状、あるいはメッシュ状、あるいは、ランダムな網目状である。導電部がストライプ状、あるいはメッシュ状の補助電極を形成する方法としては、特に、制限はなく、従来公知な方法が利用できる。例えば、基材全面に金属層を形成し、公知のフォトリソ法によって形成できる。具体的には、基材上に全面に、蒸着、スパッタ、めっき等の1或いは2以上の物理的或いは化学的形成手法を用いて導電体層を形成する、あるいは、金属箔を接着剤で基材に積層した後、公知のフォトリソ法を用いて、エッチングすることにより、所望のストライプ状、あるいはメッシュ状に加工できる。
【0051】
別な方法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷により所望の形状に印刷する方法や、メッキ可能な触媒インクをグラビア印刷、あるいは、インクジェット方式で所望の形状に塗布した後、メッキ処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の0076−0112、および実施例を参考にして実施できる。触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する方法については、例えば、特開2007−281290号公報を参考にして実施できる。
<ランダムな網目構造>
ランダムな網目構造としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載のような、金属微粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する方法を利用できる。別な方法としては、例えば、特表2009−505358号公報に記載のような、金属ナノワイヤを含有する塗布液を塗布乾燥することで、金属ナノワイヤのランダムな網目構造を形成させる方法を利用できる。
<金属ナノワイヤ>
金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の繊維状構造体を意味する。金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。金属ナノワイヤの平均短径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0052】
金属ナノワイヤに用いられる金属としては銅、鉄、コバルト、金、銀等を用いることができるが、導電性の観点から銀が好ましい。また、金属は単一で用いてもよいが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と1種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。
【0053】
金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、好ましく適用することができる。
<有機機能層構成>
(有機EL素子)
〔有機発光層〕
本発明において、有機発光層を有する有機電子素子は、有機発光層に加えて、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層、ホールブロック層、電子ブロック層などの有機発光層と併用して発光を制御する層を有しても良い。本発明の導電性ポリマー含有層はホール注入層として働くことも可能であるので、ホール注入層を兼ねることも可能だが、独立にホール注入層を設けても良い。
【0054】
構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)(第一電極部)/発光層/電子輸送層/(第二電極部)
(ii)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(第二電極部)
(iii)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/(第二電極部)
(iv)(第一電極部)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第二電極部)
(v)(第一電極部)/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第二電極部)
ここで、発光層は、発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲にある単色発光層であってもよく、また、これらの少なくとも3層の発光層を積層して白色発光層としたものであってもよく、さらに発光層間には非発光性の中間層を有していてもよい。本発明の有機EL素子としては、白色発光層であることが好ましい。
【0055】
また、本発明において有機発光層に使用できる発光材料またはドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素及び希土類金属錯体、燐光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることも好ましい。有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写などの方法が挙げられる。この有機発光層の厚みは0.5〜500nmが好ましく、特に、0.5〜200nmが好ましい。
〔第二電極部〕
本発明の第二電極は有機EL素子においては陰極となる。本発明の第二電極部は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。第二電極部の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
【0056】
これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0057】
第二電極部の導電材として金属材料を用いれば第二電極側に来た光は反射されて第一電極部側にもどる。第一電極部の金属ナノワイヤは光の一部を後方に散乱、あるいは反射するが第二電極部の導電材として金属材料を用いることで、この光が再利用可能となりより取り出しの効率が向上する。
<有機光電変換素子>
有機光電変換素子は、第一電極部、バルクヘテロジャンクション構造(p型半導体層およびn型半導体層)を有する光電変換層(以下、バルクヘテロジャンクション層とも呼ぶ)、第二電極部が積層された構造を有する。
【0058】
光電変換層と第二電極部との間に電子輸送層などの中間層を有しても良い。
〔光電変換層〕
光電変換層は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を構成している。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0059】
p型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
【0060】
縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0061】
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
【0062】
また、特にポリチオフェン及びそのオリゴマーのうち、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0063】
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリンなどが挙げられ、更には特開2006−36755号公報などの置換―無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、WO2008/000664号、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981などのチオフェン共重合体などを挙げることができる。
【0064】
さらに、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンジチオロテトラチアフルバレン(BEDT−TTF)−過塩素酸錯体、BEDT−TTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、等の有機分子錯体、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等、さらにポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや特開2000−260999号に記載の有機・無機混成材料も用いることができる。
【0065】
これらのπ共役系材料のうちでも、ペンタセン等の縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニン、金属ポルフィリンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。また、ペンタセン類がより好ましい。
【0066】
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第二003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載の置換アセン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0067】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。そのような化合物としては、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物、及び米国特許出願公開第二003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、特開2007−224019号公報等に記載のポルフィリンプレカーサー等のような、プレカーサータイプの化合物(前駆体)が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、後者のプリカーサータイプの方が好ましく用いることができる。
【0069】
これは、プリカーサータイプの方が、変換後に不溶化するため、バルクヘテロジャンクション層の上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、バルクヘテロジャンクション層が溶解してしまうことがなくなるため、前記の層を構成する材料とバルクヘテロジャンクション層を形成する材料とが混合することがなくなり、一層の効率向上・寿命向上を達成することができるためである。
【0070】
p型半導体材料としては、p型半導体材料前駆体に熱・光・放射線・化学反応を引き起こす化合物の蒸気に晒す、等の方法によって化学構造変化を起こし、p型半導体材料に変換された化合物であることが好ましい。中でも熱によって科学構造変化を起こす化合物が好ましい。
【0071】
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
【0072】
中でも、フラーレン含有高分子化合物が好ましい。フラーレン含有高分子化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ高分子化合物が挙げられる。フラーレン含有高分子化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ高分子化合物(誘導体)が好ましい。
【0073】
フラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。
【0074】
これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
【0075】
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
【0076】
本発明の光電変換素子を、太陽電池などの光電変換材料として用いる形態としては、光電変換素子を単層で利用してもよいし、積層して(タンデム型)利用してもよい。
【0077】
また、光電変換材料は、環境中の酸素、水分等で劣化しないために、公知の手法によって封止することが好ましい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「部」あるいは「%」の表示は、「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0079】
実施例1
[水酸基含有非導電性ポリマーの合成]
本発明の水酸基含有非導電性ポリマーをリビング重合(ATRP:Atom Transfer Radical Polymerization)法を用いて合成する。
【0080】
まず、下記の開始剤1を合成した。
(開始剤1の合成)
開始剤1(メトキシキャップされたオリゴエチレングリコール・2−ブロモイソブチリレート)の合成
50ml三口フラスコに2−ブロモイソブチリルブロミド(7.3g、35mmol)とトリエチルアミン(2.48g、35mmol)及びTHF(20ml)を加え、アイスバスにより内温を0℃に保持した。この溶液内にオリゴエチレングリコール(10g、23mmol、エチレングリコールユニット7〜8、Laporte Specialties社製)の33%THF溶液30mlを滴下した。30分攪拌後、溶液を室温にし、更に4時間攪拌した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧除去後、残渣をジエチルエーテルに溶解し、分駅ロートに移した。水を加えエーテル層を3回洗浄後、エーテル層をMgSOにより乾燥させた。エーテルをロータリーエバポレーターにより減圧留去し、開始剤1を8.2g(収率73%)得た。
(リビング重合(ATRP)による水酸基含有非導電性ポリマーP−1〜P−5の合成)
合成例1(ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)の合成)
上記にて合成した開始剤1(500mg、1.02mmol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(4.64g、40mmol、東京化成社製)、50:50(v/v%)のメタノール/水混合溶媒を5mlをシュレンク管に投入し、減圧下液体窒素に10分間シュレンク管を浸した。シュレンク管を液体窒素から出し、5分後に窒素置換を行った。この操作を3回行った後、窒素下で、ビピリジン(400mg、2.56mmol)、CuBr(147mg、1.02mmol)を加え、20℃で攪拌した。30分後、ろ紙とシリカを敷いた4cm桐山ロート上に反応溶液を滴下し、減圧で反応溶液を回収した。ロータリーエバポレーターにより溶媒を減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量13100、分子量分布1.17、分子量<1000の含量0%、の水酸基含有非導電性ポリマーP−1を2.60g(収率84%)得た。構造、分子量は各々H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定、確認した。
<GPC測定条件>
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414 (Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
更に、合成例1において、用いたモノマー2−ヒドロキシエチルアクリレートを、それぞれ、下記の対応するモノマーに代えた他は同様にして、水酸基含有非導電性ポリマーのホモポリマーとして、ポリヒドロキシブチルアクリレート(P−2)、ポリヒドロキシエチルビニルエーテル(P−3)、ポリヒドロキシエチルアクリルアミド(P−4)、(数平均分子量約2万、分子量<1000の含量0%)を合成した。また、同様にして、ヒドロキシエチルアクリレート(60mol%)、メチルアクリレート(40mol%)の共重合ポリマーとしてP−5(数平均分子量約2万、分子量<1000の含量0%)を合成した。
<導電層の作製>
透明基板として、片面易接着加工を施された二軸延伸PETフィルムA4100(東洋紡社製)を用い、易接着加工を施されていない面に、12W・min/mのコロナ放電処理を施した。これに、表1記載の導電性ポリマー及び非導電性ポリマーの組成の混合液を、表1記載の所定の乾燥膜厚となるように、スピンコーターを用いて塗設し、乾燥した。さらに、表1記載の温度にて、10分の加熱処理を行い、表1記載の導電層を作製した試料101〜120を作製した。
【0081】
なお、表1のポリマー組成は、導電性ポリマーと非導電性ポリマーの総質量に対する導電性ポリマーの質量比を表す。
《評価》
上記にて導電層を作製した試料について、導電性、透明性、平滑性、洗浄耐性、疎水性、を下記により評価した。
(導電性)
導電性の評価として、抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて表面抵抗値R(Ω/□)を測定した。レンジオーバーで測定不可の試料については、3cm×3cmの試料を作製して、導電性ポリマー含有層上の対向する2辺に端から約2mmの幅で銀ペーストを塗布し、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、1Vの直流電圧を印加し、その時の電流値から1v/電流値を表面抵抗値とした。補助電極の構成にもよるが、1×10Ω/□以下であることが好ましい。
【0082】
下記評価基準に則り導電性を評価した。
◎:表面抵抗値が、10未満である
○:表面抵抗値が、10未満である
△:表面抵抗値が、10未満である
×:表面抵抗値が、10未満である
××:表面抵抗値が、10以上である
(透明性)
透明性の評価として、東京電色社製HAZE METER NDH5000を用いて、全光線透過率(%)を測定した。素子での光ロスから、80%以上であることが好ましい。
【0083】
下記評価基準に則り透明性を評価した。
◎:全光線透過率が、85%以上である
○:全光線透過率が、80%以上85%未満である
△:全光線透過率が、75%以上80%未満である
×:全光線透過率が、70%以上75%未満である
××:全光線透過率が、0%以上70%未満である
(平滑性)
平滑性の評価として、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニット(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、表面粗さRaを測定した。カンチレバーは、SI−DF20(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/m、DFMモード(Dynamic Force Mode)にて、測定領域10μm角を、走査周波数1Hzで測定した。JIS B601(1994)に準じて求めた算術平均粗さRa(nm)で平滑性を評価した。導電性ポリマー含有層単独としては、5nm以下であることが好ましい。
【0084】
下記評価基準に則り平滑性を評価した。
◎:算術平均粗さRaが、1未満である
○:算術平均粗さRaが、1以上5未満である
△:算術平均粗さRaが、5以上10未満である
×:算術平均粗さRaが、10以上20未満である
××:算術平均粗さRaが、20以上である
(洗浄耐性)
導電層膜の洗浄耐性評価として、後述の洗浄処理前後での表面抵抗を測定し、その変動にて評価した。洗浄前の表面抵抗値/洗浄後の表面抵抗値比が、0.5以上であることが好ましい。洗浄処理は、セミコクリーン56(フルウチ化学社製)にフィルムを浸漬し、超音波洗浄器ブランソニック3510J−MT(日本エマソン社製)により10分間の超音波洗浄処理を施した。
【0085】
下記評価基準に則り洗浄耐性を評価した。
◎:表面抵抗値/洗浄後の表面抵抗値比が、1.0以上である
○:表面抵抗値/洗浄後の表面抵抗値比が、0.5−1である
△:表面抵抗値/洗浄後の表面抵抗値比が、0.4−0.5である
×:表面抵抗値/洗浄後の表面抵抗値比が、0.2−0.4である
××:表面抵抗値/洗浄後の表面抵抗値比が、0−0.2である
導電層の3次元表面エネルギーの水素結合成分γH
(γH値、疎水性評価)
導電層表面の疎水性の評価として、導電層表面の3次元表面エネルギーを以下の方法で測定した。
【0086】
作製した導電層表面と、標準液体として、水、ニトロメタン、ジヨードメタンの3種の溶媒との接触角を、自動接触角測定装置CA−V型(協和界面化学社製)を用いて測定し、下記式に基づきγH値を算出し、導電層の3次元表面エネルギーの水素結合成分γH値(mN/m)とした。なお、接触角は、導電層表面に溶媒着滴後100m秒後の値を用いた。
γ・(1+cosθ)/2=(γD・γD)1/2+(γP・γP)1/2+(γH・γH)1/2
式中、
γ:液体の表面張力
θ:液体と固体の接触角
γD、γP、γH:固体の表面エネルギーの分散、極性、水素結合成分
γD、γP、γH:液体の表面エネルギーの分散、極性、水素結合成分
γ=γD+γP+γH、
γ=γD+γP+γ
なお、標準液体の3次元表面エネルギー(γD、γP、γH)としては、下記の値を用いた。
水(29.1、1.3、42.4)、ニトロメタン(18.3、17.7、0)、ジヨードメタン(46.8、4.0、0)
求められた、3次元表面エネルギーの水素結合成分γHの値について、下記評価基準に則り評価して疎水性を表す指標として示す。
◎:3次元表面エネルギーの水素結合成分γHが、0以上5未満である
○:3次元表面エネルギーの水素結合成分γHが、5以上10未満である
△:3次元表面エネルギーの水素結合成分γHが、10以上20未満である
×:3次元表面エネルギーの水素結合成分γHが、20以上30未満である
××:3次元表面エネルギーの水素結合成分γHが、30以上である
結果を、表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1において、
※1:ポリマ組成(質量%):(導電性ポリマー質量/導電性ポリマーと非導電性ポリマーの総質量)×100
表1において、
(導電性ポリマー)
PH510:PEDOT:PSS分散液、PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製)
P4083:PEDOT:PSS分散液、Clevios P AI 4083(固形分1.5%)(H.C.Starck社製)
(水酸基含有非導電性ポリマー)
CMC:カルボキシメチルセルロース、低粘度型(シグマ−アルドリッチ社製)
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、60SH−06(信越化学工業社製)
PVA:ポリビニルアルコール、PVA−235(クラレ社製)
PAC:ポリアクリル酸、AC−10P(東亞合成社製)
P−1:ポリヒドロキシエチルアクリレート(合成例1において合成した。)
P−2:ポリヒドロキシブチルアクリレート(合成例1において合成した。)
P−3:ポリヒドロキシエチルビニルエーテル(合成例1において合成した。)
P−4:ポリヒドロキシエチルアクリルアミド(合成例1において合成した。)
P−5:ヒドロキシエチルアクリレート(60mol%)、メチルアクリレート(40mol%)の共重合ポリマー(合成例1において合成した。)
表1から明らかなように、導電層は、導電性ポリマー単独で膜厚をアップすると透過率が低下する。また、洗浄耐性を有さない。また、非導電性ポリマーを含有する系でも、架橋構造を取らず、3次元表面エネルギーの水素結合成分γHが10mN/mを超える系では、導電性、透明性、平滑性、洗浄耐性、疎水性を同時に満たすことができないことがわかる。一方、本発明の導電層は、3次元表面エネルギーの水素結合成分γHが10mN/m以下であり、前記性能を同時に満たし優れていることがわかる。
【0089】
実施例2
《有機EL素子201及び203〜217の作製》
(有機EL素子201及び203〜217の第一電極の作製)
30mm×30mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を150nm成膜した基板に、フォトリソ法により図2aのITO電極22のパターニングを行った後、イソプロピルアルコールに基板を浸漬し、超音波洗浄器ブランソニック3510J−MT(日本エマソン社製)により10分間の超音波洗浄処理を施した。
【0090】
これに、表2記載の組成の導電層を、スピンコーターにて塗設し、純水を浸した綿棒を用いて図2bの導電層23以外の領域を除去、乾燥した後、さらに、表2記載の温度で、10分間の熱処理を施した。次いで、セミコクリーン56(フルウチ化学社製)に基板を浸漬し、超音波洗浄器ブランソニック3510J−MTにより10分間の超音波洗浄処理を施した。流水で5分洗浄後、乾燥し、有機EL素子201及び203〜217の第一電極を形成した。
(有機EL素子201及び203〜217の作製)
〈有機機能層(有機発光層)の作製〉
市販の真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼは、モリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0091】
まず、真空度1×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で、第一電極として図2bの導電層23の領域に蒸着し、30nmの正孔輸送層を設けた。
【0092】
次いで、以下の手順で、図2bの導電層23の領域に各発光層を設けた。
【0093】
Ir−1が13質量%、Ir−2が3.7質量%の濃度になるように、Ir−1、Ir−2及び化合物A−1を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光層を形成した。
【0094】
次いで、A−2が10質量%になるように、A−2及び化合物A−1を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光層を形成した。
【0095】
その後、A−2を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成し、更にCsFを膜厚比で10%になるようにM−1と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。以上にて、有機機能層(有機発光層)24を作製した。
【0096】
更に、アルミニウム(膜厚:110nm)を図2cのアルミニウム陰極25の領域に蒸着して陰極を形成した。
【0097】
【化4】

【0098】
〈封止膜の形成〉
形成した電子輸送層の上に、ポリエチレンテレフタレートを基材とし、Alを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を使用した。第1電極及び第2電極の外部取り出し端子が形成できる様に端部を除き第2電極の周囲に接着剤を塗り、可撓性封止部材を図2d2−4の可撓性封止部材26の領域に貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させた。
【0099】
ITOをアノード電極及びカソード電極の外部取り出し端子とし、有機EL素子201及び203〜217を作製した。
(有機EL素子202の作製)
ITOのパターンを図2eのITO電極27(取り出し電極として)、導電層のパターンを図2fの導電層または銀ナノワイヤ補助電極28の導電層として導電層を形成した以外は有機EL素子201と同様にして有機EL素子202を作製した。
《有機EL素子218〜236の作製》
<銀ナノワイヤ併用電極>
30mm×30mm×1.1mmのガラス基板上に、取り出し電極としてITOのパターンを図2eのITO電極27とし、後述する銀ナノワイヤからなる補助電極を図2fの導電層または銀ナノワイヤ補助電極28のパターンとして銀ナノワイヤ補助電極を形成した。これに、表3記載の導電層に代えた他は有機EL素子201の導電層の場合と同様にして導電層を塗設し、有機EL素子201と同様の操作を行い、有機EL素子218〜236を作製した。
<銀ナノワイヤの調製>
金属微粒子として、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、水洗処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
<銀ナノワイヤ電極の作製>
上記にて調製した銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/mとなるように、スピンコーターを用いて塗布、乾燥させて銀ナノワイヤ電極を作製した。
【0100】
下記の金属微粒子除去液の粘度をカルボキシメチルセルロースナトリウム(SIGMA−ALDRICH社製;C5013、以下CMCと称す)で10Pa・s(10000cP)に調整し、銀ナノワイヤ層の上に塗布膜厚30μmとなるよう図2fの導電層または銀ナノワイヤ補助電極28の逆パターンでスクリーン印刷を行った。印刷後1分間放置し、次いで30秒水に浸漬して水洗処理を行い、銀ナノワイヤ電極のパターニングを行った。
〈金属微粒子除去液の作製〉
エチレンジアミン4酢酸第二鉄アンモニウム 60g
エチレンジアミン4酢酸 2.0g
メタ重亜硫酸ナトリウム 15g
チオ硫酸アンモニウム 70g
マレイン酸 5.0g
純水で1Lに仕上げ、硫酸またはアンモニア水でpHを5.5に調整し金属ナノワイヤ除去剤を作製した。
《評価》
(導電層の評価)
上記にて導電層を作製した試料について、疎水性、を実施例1の場合と同様にして評価した。
(有機EL素子の評価)
上記実施例2で得られた、各有機EL素子について、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を印加して1000cd/mで発光させた。
【0101】
各基板5個作製した。基板1個につき2個の発光部があるので、計10個の発光部で評価した。
(整流比)
印加電圧のプラスマイナスを反転させる。(反転時の電流の絶対値)/(発光時の電流の絶対値)を整流比とした。異物や突起の影響があるとこの比率が大きくなる。この比率が1であると完全にリーク状態、100以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。以下の指標で評価した。大面積化に対応するためには、△以上のレベルであることが必須で、○以上が好ましい。
◎:8個以上が1000以上、100未満なし
○:5個以上が1000以上、100未満なし
△:発光しない素子はないが、100未満が1個
×:100未満、あるいは発光しない素子が1〜4個
××:100未満、あるいは発光しない素子が5個以上
(駆動電圧)
発光した有機EL素子の平均値を各有機EL素子の駆動電圧とし、有機EL素子201の駆動電圧に対する比率(%)を求め、以下の指標で評価した。△以上が好ましく、○以上であることがより好ましい。
◎:駆動電圧の素子201の駆動電圧に対する比率が、80%未満
○:駆動電圧の素子201の駆動電圧に対する比率が、80%以上90%未満
△:駆動電圧の素子201の駆動電圧に対する比率が、90%以上110%未満
×:駆動電圧の素子201の駆動電圧に対する比率が、110%以上130%未満
××:駆動電圧の素子201の駆動電圧に対する比率が、130%以上
(寿命)
任意に有機EL素子を選び、初期の輝度を5000cd/mで連続発光させて、輝度が半減するまでの時間(半減期)を求めた。有機EL素子201の半減期に対する各有機EL素子の半減期の比率を求め、下記の評価基準に則り寿命を評価した。△以上が好ましく、○以上であることがより好ましい。
◎:輝度の半減期の、素子201の輝度の半減期に対する比率(%)が、130%以上
○:輝度の半減期の、素子201の輝度の半減期に対する比率(%)が、110%以上130%未満
△:輝度の半減期の、素子201の輝度の半減期に対する比率(%)が、90%以上90−110%未満
×:輝度の半減期の、素子201の輝度の半減期に対する比率(%)が、70%以上90%未満
××:輝度の半減期の、素子201の輝度の半減期に対する比率(%)が、0%以上70%未満
結果を併せて表2、表3に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
ITO:インジウムチンオキシド
【0104】
【表3】

【0105】
AgNW:銀ナノワイヤ
表2、表3から明らかなように、導電層が(水酸基含有非導電性ポリマーを有していても)、導電層の表面エネルギーの水素結合成分が10mN/mを超える場合、有機EL素子を形成した際の、整流比、駆動電圧、さらには寿命といった素子性能が劣ることがわかる。一方、本発明の導電層は、表面エネルギーの水素結合成分が10mN/m以下であり、前記性能を同時に満たし優れていることがわかる。
【0106】
そして、本発明の場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機太陽電池といった有機電子素子において、平滑性の高い電極により電流リークや電界集中を抑制し、高い導電性と透明性を兼ね備えた電極を提供し、さらには、素子の効率に優れ、寿命を向上させた有機電子素子を提供できることがわかる。
【符号の説明】
【0107】
10 基板
11 第一電極
12 第二電極
13 有機機能層
14 導電層
21 ガラス基板
22、27 ITO電極
23 導電層
24 有機機能層(有機発光層)
25 アルミニウム陰極
26 可撓性封止部材
28 導電層、または、銀ナノワイヤ補助電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、対向する第一電極と、第二電極を有し、該第一電極と、第二電極の間に少なくとも一層の有機機能層を有する有機電子素子において、該第一電極と、第二電極の少なくとも一つが導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーとを有してなる導電層を有し、該導電層の3次元表面エネルギーの水素結合成分γHが、γH≦10(mN/m)であることを特徴とする有機電子素子。
【請求項2】
前記水酸基含有非導電性ポリマーが、下記一般式(A)で表されるポリマー(A)を有してなることを特徴とする請求項1に記載の有機電子素子。
【化1】

(式中、X〜Xはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数5以下のアルキレン基を表す。l、m、nは構成率(mol%)を表し、50≦l+m+n≦100である。)
【請求項3】
前記導電性ポリマーが、スルホン酸基含有ポリアニオンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の有機電子素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−103186(P2011−103186A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256824(P2009−256824)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】