説明

有機電子輸送材料、有機電子材料形成用組成物及び有機電界発光素子

【課題】湿式法を適用可能で、電子注入、輸送特性及び耐久性に優れた有機電子輸送材料と有機電子材料形成用組成物、及びそれらを用いた有機電界発光素子の提供。
【解決手段】下記式(1)及び(2)のいずれかで表される金属錯体と、アルコール系溶媒とを含むことを特徴とする有機電子輸送材料形成用組成物。


及びLは、ホスフィンオキシド誘導体、L及びLは、アルコキシド等の酸素配位子、Mは、金属元素又は金属イオンを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子輸送材料、有機電子材料形成用組成物及び有機電界発光素子に関し、より具体的には、多層構造を有する有機電子素子の製造において湿式法により形成が可能で、かつ電子注入特性、電子輸送特性及び耐久性に優れた有機電子輸送材料、当該有機電子輸送材料を湿式法により形成するための有機電子材料形成用組成物及びそれらを用いた有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
陽極と陰極との間に発光性有機層(有機エレクトロルミネッセンス層)が設けられた有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子(以下、「有機EL素子」という。)は、無機EL素子に比べ、直流低電圧での駆動が可能であり、輝度及び発光効率が高いという利点を有しており、次世代の表示装置として注目を集めている。最近になってフルカラー表示パネルが市販されるに至り、表示面の大型化、耐久性の向上等に向けて盛んに研究開発が行われている。
【0003】
有機EL素子は、注入した電子とホール(正孔)との再結合により有機化合物を電気的に励起し発光させる電気発光素子である。有機EL素子の研究は、有機積層薄膜素子が高輝度で発光することを示したコダック社のTangらの報告(非特許文献1参照)以来、多くの企業及び研究機関によりなされている。コダック社による有機EL素子の代表的な構成は、透明陽極であるITO(酸化インジウムスズ)ガラス基板上にホール輸送材料であるジアミン化合物、発光材料であるトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)、陰極であるMg:Alを順次積層したもので、10V程度の駆動電圧で約1000cd/cmの緑色発光が観測された。現在研究及び実用化がなされている積層型有機EL素子は、基本的にはこのコダック社の構成を踏襲している。
【0004】
有機EL素子は、その構成材料により、高分子系有機EL素子と低分子系有機EL素子に大別され、前者は湿式法により、後者は蒸着法及び湿式法のいずれかにより製造される。高分子系有機EL素子は、素子の作製に用いられる導電性高分子材料における正孔輸送特性と電子輸送特性とのバランスを取るのが困難であるため、近年では、電子輸送、正孔輸送及び発光の機能を分離した積層型低分子系有機EL素子が主流となりつつある。
【0005】
積層型低分子系有機EL素子において、発光性有機層と電極との間に設けられる電子輸送層、電子注入層及び正孔輸送層の性能はデバイス特性を大きく左右するため、それらの性能向上に向けた研究開発が盛んになされており、電子輸送層及び電子注入層に関しても、多くの改良研究が報告されている。
例えば、特許文献1では、電子輸送性の有機化合物と、仕事関数の低い金属であるアルカリ金属を含む金属化合物とを共蒸着することにより、電子注入層中に金属化合物を混入させることにより、電子注入層の特性の改善を図る構成が提案されている。
また、特許文献2では、ホスフィンオキサイド化合物を電子輸送材料として用いることが提案されている。更に、特許文献3では、電子輸送層の構成として、配位部位を有する有機化合物にアルカリ金属をドーピングする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−63910号公報
【特許文献2】特開2002−63989号公報
【特許文献3】特開2002−352961号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】C. W. Tang, S. A. VanSlyke著、「Organic electroluminescent diodes」、AppliedPhysics Letters(米国)、米国物理学会(The American Institute ofPhysics)、1987年9月21日、第51巻、第12号、p.913−915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1から3に記載の電子注入層、電子輸送材料及び電子輸送層は、いずれも動作電圧の低下や発光効率の向上を図ることが目的であり、湿式法による多層構造の形成や耐久性の向上が図られているとは言い難い。また、これらの発明においては、電子輸送層及び電子注入層を真空蒸着法により成膜するため、大掛かりな設備を必要とると共に、2種以上の材料を同時に蒸着する際には蒸着速度の精密な調整が困難であり、生産性に劣るという問題もある。
【0009】
湿式法による積層型低分子系有機EL素子の製造法には大きく分けて2種類あり、1つは、下層を製膜後、熱や光により架橋や重合を行い不溶化し上層を製膜する方法、もう1つは、下層と上層で溶解性の大きく違う材料を用いる方法である。前者の方法は、材料の選択の幅が広い反面、架橋又は重合反応の終了後に反応開始剤や未反応物を取り除くことが困難であり、耐久性に問題がある。一方、後者の方法は、材料の選択が難しい反面、架橋や重合等の化学反応を伴わないため、前者の方法と比較して高純度で耐久性の高い素子の構築が可能になる。以上述べたように、湿式法による積層型低分子系有機EL素子の製造は、材料の選択が困難であるという問題があるにも関わらず、各層の構成材料の溶解性の違いを利用した後者の方法が適していると考えられる。しかし、各層の構成材料の溶解性の違いを利用した積層を難しくしている要因の1つに、導電性高分子やスピンコート可能な有機半導体の殆どが、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の比較的溶媒能の高い溶媒にしか溶けず、P型の導電性高分子でホール輸送層を成膜した後、同様の溶媒でN型の導電性高分子でスピンコートすると下地のホール輸送性高分子を浸食することになり、平坦で欠陥の少ないPN界面を有する積層構造を形成できないという問題がある。特にインクジェット法を用いる場合には、溶媒が自然乾燥で除去されるため溶媒の滞留時間が長くなることから、ホール輸送層や発光層の浸食が激しくなり、実用上問題のないデバイス特性を得ることが著しく困難になるおそれがある。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、多層構造を有する有機電子素子の製造において湿式法により形成が可能で、かつ電子注入特性、電子輸送特性及び耐久性に優れた有機電子輸送材料、当該有機電子輸送材料を湿式法により形成するための有機電子材料形成用組成物及びそれらを用いた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的に沿う本発明の第1の態様は、下記の式(1)及び(2)のいずれかで表される金属錯体を含むことを特徴とする有機電子輸送材料を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0012】
【化1】

【0013】
式(1)及び(2)において、
及びLは、下記の式(3)で表され、アルコール系溶媒に可溶であるホスフィンオキシド誘導体を表し、かつ
及びLは互いに同一であっても異なっていてもよく、或いは
式(2)においてL及びLが同一の原子団に結合し、アルコール系溶媒に可溶なキレート配位子を形成していてもよく、
及びLは、C−O単結合又はC=O二重結合を有し、酸素原子で金属原子又はイオンに配位可能で、アルコール系溶媒に可溶である配位子を表し、かつ
及びLは互いに同一であっても異なっていてもよく、或いは
式(1)及び(2)においてL及びLが同一の原子団に結合し、アルコール系溶媒に可溶なキレート配位子を形成していてもよく、
Mは、電気陰性度(本発明においてPaulingの電気陰性度を意味する。以下同じ。)が1.6以下の金属元素又は金属イオンを表し、
【0014】
【化2】

【0015】
式(3)において、
は1又は複数のアリール基及びヘテロアリール基の一方又は双方を有し、任意の1又は複数の炭素原子上に下記の式(4)で表されるホスフィンオキシド基を有していてもよい原子団を表し、
Ar及びArは、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar及びArが結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよく、
【0016】
【化3】

【0017】
式(4)においてAr及びArは、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar及びArが結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
【0018】
本発明の第2の態様は、上記の式(1)及び(2)のいずれかで表される金属錯体と、アルコール系溶媒とを含むことを特徴とする有機電子輸送材料形成用組成物を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0019】
電子求引性のホスフィンオキシド基(P=O)を有するホスフィンオキシド誘導体は優れた電子輸送特性及び電子注入特性を有するが、電気陰性度の低い(1.6以下)金属が配位することにより、電子輸送特性及び電子注入特性が更に向上すると共に耐久性が大幅に向上する。そのため、式(1)及び式(2)で表される金属錯体を用いることにより、電子輸送特性及び電子注入特性に加え耐久性に優れた有機電子輸送材料、有機電子材料形成用組成物及びそれらを用いた有機電界発光素子が提供される。
また、式(1)及び(2)で表される金属錯体は、アルコール系溶媒に可溶な金属錯体及びホスフィンオキシド誘導体を原料として合成され、それ自身もアルコール系溶媒に可溶である。そのため、有機EL素子等の有機電子デバイスの製造において、正孔輸送層や発光層等の他の層を溶解及び膨潤させないアルコール系溶媒を用いて湿式法により有機電子輸送材料を形成できる。
【0020】
本発明の第1から第3の態様において、前記式(1)及び(2)におけるL及びLが同一の=CH−基に結合しβ−ジケトナト配位子を形成し、前記金属錯体が下記の式(1)’及び(2)’のいずれかで表されるものであってもよい。
【0021】
【化4】

【0022】
式(1)’及び(2)’において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群より選択される官能基を表す。
【0023】
β−ジケトナト配位子は、アルコキシド配位子等よりも加水分解を受けにくいため、金属錯体の耐久性を向上できる。そのため、本発明により提供される有機電子輸送材料、有機電子輸送材料形成用組成物及び有機電界発光素子の耐久性を向上させることができる。
【0024】
本発明の第1から第3の態様において、前記式(1)、(1)’、(2)及び(2)’におけるMがアルカリ金属、アルカリ土類金属及びランタン(La)からなる群より選択されることが好ましい。
【0025】
本発明の第1から第3の態様において、前記式(1)、(1)’、(2)及び(2)’におけるL及びL、或いはL及びLが原子団を共有することにより形成しているアルコール系溶媒に可溶なキレート配位子が下記の式AからQのいずれかで表されるホスフィンオキシド誘導体からなる群より選択されることが好ましい。
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【発明の効果】
【0029】
本発明によると、積層型低分子系有機EL素子等の多層構造を有する有機電子素子の製造において、湿式法により形成が可能で、かつ電子注入特性、電子輸送特性及び耐久性に優れた有機電子輸送材料、当該有機電子輸送材料を湿式法により形成するための有機電子材料形成用組成物及びそれらを用いた有機電界発光素子が提供される。また、本発明に係る有機電子輸送材料及び有機電子材料形成用組成物を用いると、電子輸送層や積層型低分子EL素子の製造に高価な蒸着装置が不要になると共に、金属と有機電子輸送材料との共蒸着のための複雑な条件設定が不要になる。そのため、電子輸送層や積層型低分子EL素子の製造コストを低減できると共に生産性を向上させることが可能になる。本発明を適用することにより、高い生産性かつ低コストで製造でき、発光効率に優れ、高い耐久性を有する有機電界発光素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第2の実施の形態に係る有機電界発光素子の実施形態の縦断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
続いて、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
(1)有機電子輸送材料形成用組成物
本発明の第1の実施の形態に係る有機電子材料形成用組成物は、下記の式(1)及び(2)のいずれか一方又は双方で表される金属錯体と、アルコール系溶媒とを含んでいる。
【化8】

【0032】
式(1)及び(2)において、
及びLは、下記の式(3)で表され、アルコール系溶媒に可溶であるホスフィンオキシド誘導体を表し、かつ
及びLは互いに同一であっても異なっていてもよく、或いは
式(2)においてL及びLが同一の原子団に結合し、アルコール系溶媒に可溶なキレート配位子を形成していてもよく、
及びLは、C−O単結合又はC=O二重結合を有し、酸素原子で金属原子又はイオンに配位可能で、アルコール系溶媒に可溶である配位子を表し、かつ
及びLは互いに同一であっても異なっていてもよく、或いは
式(1)及び(2)においてL及びLが同一の原子団に結合し、アルコール系溶媒に可溶なキレート配位子を形成していてもよく、
Mは、電気陰性度が1.6以下の金属元素又は金属イオンを表し、
【0033】
【化9】

【0034】
式(3)において、
は1又は複数のアリール基及びヘテロアリール基の一方又は双方を有し、任意の1又は複数の炭素原子上に下記の式(4)で表されるホスフィンオキシド基を有していてもよい原子団を表し、
Ar及びArは、それぞれ独立して1又は複数の置換基(式(4)で表されるホスフィンオキシド基であってもよい。)を有していてもよいアリール基を表し、Ar及びArが結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよく、
【0035】
【化10】

【0036】
式(4)においてAr及びArは、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar及びArが結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
【0037】
に含まれるアリール基及びヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。より具体的には、フェニル基等の単環式の芳香族炭化水素基、チオフェン環、トリアジン環、フラン環、ピラジン環、ピリジン環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリミジン環等の単環式の複素環基、ナフタレン環、アントラセン環等の縮合多環式芳香族炭化水素基、チエノ[3,2−b]フラン環等の縮合多環式の複素環基、ビフェニル環、ターフェニル環等の環集合式の芳香族炭化水素基、ビチオフェン環、ビフラン環等の環集合式の複素環基、アクリジン環、イソキノリン環、インドール環、カルバゾール環、カルボリン環、キノリン環、ジベンゾフラン環、シンノリン環、チオナフテン環、1,10−フェナントロリン環、フェノチアジン環、プリン環、ベンゾフラン環、シロール環等の芳香族環と複素環との組み合わせからなるものが挙げられる。Ar〜Arに含まれるアリール基についても上記の原子団Rの場合と同様であるが、好ましくはフェニル基である。
【0038】
有機電子輸送材料形成用組成物は、金属塩又は金属化合物と配位子となる化合物、或いは金属錯体と、上記の式(3)で表されるホスフィンオキシド誘導体(式(1)及び(2)におけるL及びL、或いはL及びLが同一の原子団に結合することによって形成するアルコール系溶媒に可溶なキレート配位子に相当する)とをアルコール系溶媒中で混合することにより製造することができる。
【0039】
式(3)で表されるホスフィンオキシド誘導体のうち、有機電子輸送材料形成用組成物の製造に好ましく用いられるのは下記の一般式(5)、(6)及び(7)で表されるホスフィンオキシド誘導体である。
【0040】
【化11】

【0041】
式(5)、(6)及び(7)において、
X及びRは、1又は複数のアリール基及びヘテロアリール基の一方又は双方を有し、1又は複数の置換基を有していてもよい原子団を表し、
Ar〜Ar25はそれぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、
ArとAr、ArとAr、Ar12とAr13、Ar14とAr15、Ar16とAr17、Ar18とAr19、Ar20とAr21、Ar22とAr23、及びAr24とAr25がそれぞれ結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
X、R、Ar〜Ar25に含まれるアリール基についても上記の原子団Rの場合と同様であるが、Ar〜Ar25は好ましくはフェニル基である。
【0042】
ホスフィンオキシド誘導体の具体例としては、下記の構造式A〜Qで表されるホスフィンオキシド誘導体が挙げられる。
【0043】
【化12】

【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
ホスフィンオキシド誘導体は、市販のものを用いてもよく、第三級ホスフィンの酸化、塩化ホスフィニル又は二塩化ホスホリルとGrignard試薬との反応、ハロゲン化アリールとジアリールホスフィンオキシドとのカップリング、ジハロホスホランの加水分解等の任意の公知の方法を用いて合成して用いてもよい。
ホスフィンオキシド誘導体は任意の1種類を単独で用いてもよく、任意の2種類以上を任意の割合で混合して用いてもよい。有機電界発光素子の製造に用いられる陰極材料や有機発光層に含まれる発光材料の種類等に応じてホスフィンオキシド誘導体又はその組み合わせを適宜選択することにより、電子注入特性及び電子輸送特性を最適化できる。
【0047】
式(1)及び(2)における、C−O単結合又はC=O二重結合を有し、酸素原子で金属原子又はイオンに配位可能で、アルコール系溶媒に可溶である配位子L及びLの例としては、一般式R−Oで表されるアルコキシド、一般式R−C(=O)−Rで表されるカルボニル誘導体、一般式R−COOで表されるカルボキシレート等が挙げられる。R、R、R、及びRは、それぞれ独立して炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群より選択される官能基を表す。
及びLは、同一の=CH−基に結合しβ−ジケトナト配位子を形成していてもよい。この場合、上記の式(1)及び式(2)で表される金属錯体は、下記の式(1)’及び(2)’のいずれかで表される。
【0048】
【化15】

【0049】
式(1)’及び(2)’において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群より選択される官能基を表す。
【0050】
遊離の状態又は金属β−ジケトナト錯体において中心金属に配位した状態で有機電子輸送材料形成組成物の製造に用いられるβ−ジケトンは、下記の一般式(8)で表される構造を有している。
【0051】
【化16】

【0052】
式(8)において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群より選択される官能基を表す。
【0053】
電子輸送材料形成用組成物の製造に好ましく用いることができるβ−ジケトンの具体例としては、下式に示すものが挙げられる。下式に示したβ−ジケトンは、左からアセチルアセトン(acac)、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン(TMHD)、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトン(TFA)、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)である。
【0054】
【化17】

【0055】
有機電子輸送材料形成用組成物の製造に用いられる金属(式(1)及び(2)におけるM)としては、電気陰性度(χ)が1.6以下である任意の金属が挙げられる。
なお、電気陰性度の最小値は、Csにおけるχ=0.79である。
【0056】
電気陰性度が1.6以下の金属Mの具体例としては、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba)、及びランタン(La)が挙げられる。電気陰性度が1.6を超えると、陰極からの電子注入効率が低下するため、電子輸送特性が低下する。また、電気陰性度が1.6以下であっても、ランタン以外の遷移元素については、d−d遷移等により励起エネルギーがクエンチされるため、電子輸送特性が低下する。したがって、典型金属塩が好ましく、電気陰性度の小さなアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が特に好ましい。
【0057】
これらの金属を含む原料としては、金属アルコキシド、或いは1又は複数のβ−ジケトンが配位したβ−ジケトナト錯体が好ましいが、後者の場合、アルコール系溶媒に可溶な塩と遊離のβ−ジケトンを溶液中で反応(錯形成)させ、反応系内で生成させてもよい。この場合において、用いられる金属塩の種類に特に制限はなく、アルコール系溶媒に可溶であれば、塩化物等のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、スルホン酸塩等の任意の塩を用いることができる。
【0058】
電子輸送材料形成用組成物の製造に用いられるアルコール系溶媒としては、電子輸送材料の下層に形成される有機発光層や正孔輸送層を溶解又は膨潤させにくく、金属化合物の溶解性が高い任意のアルコール系溶媒を用いることができ、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜4の単価アルコールが用いられる。このようなアルコール系溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、任意の2以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0059】
有機電子輸送材料形成用組成物中に含まれる金属錯体の好ましい濃度範囲は、金属錯体の溶解度及び溶媒の揮発性等に依存するために必ずしも一義的に決定できないが、例えば、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜2重量%である。金属錯体の濃度が低すぎると、膜厚の大きな電子輸送材料を形成するために必要な作業時間が増大するため生産性が低下する。逆に金属錯体の濃度が高すぎると、金属錯体が沈殿したり、溶液(有機電子輸送材料形成用組成物)の粘度が高くなりすぎて作業性が低下したりするおそれがある。
【0060】
有機電子輸送材料形成用組成物の製造にあたり、個別に調製したそれぞれの原料の溶液を混合してもよい。この場合において、それぞれの溶液に使用する溶媒は同一であってもよいが、均一な溶液が得られるならば互いに異なっていてもよい。これにより、ホスフィンオキシド誘導体と金属化合物の溶解性が大きく異なっており、所望の量比で混合することが困難な場合においても、溶液の調製が可能となる。さらに、前記いずれの液状材料の調製方法においても、ホスフィンオキシド誘導体と金属化合物の比が所望の値となるよう混合することができる。なお、金属化合物の含有量は、ホスフィンオキシド誘導体に対して1〜50wt%であることが好ましい。
【0061】
なお、有機電子輸送材料形成用組成物を用いて形成される有機電子輸送材料(電子輸送層)が発光層を兼ねるようにするために、有機電子輸送材料形成用組成物が発光物質を更に含んでいてもよい。この場合において、添加される発光物質はアルコール系溶媒に可溶なものである必要がある。
【0062】
(2)有機電界発光素子
次に、図1を参照しながら本発明の第2の実施の形態に係る有機電界発光素子について説明する。有機電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)1は、基板2上に設けられた陽極3と、陰極7と、陽極3と陰極7との間に、陽極3側から順に、正孔輸送層4と、有機発光層5と、電子輸送層6とを積層し、その全体が封止部材8で封止されている。
【0063】
基板2は、有機電界発光素子1の支持体となるものである。本実施の形態に係る有機電界発光素子1は、基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板2及び陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明又は半透明)な材料より構成されている。基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。なお、有機電界発光素子1が基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、基板2には、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板の例としては、アルミナ等のセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼等の金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0065】
陽極3は、後述する正孔輸送層4に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料
としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウムジルコニウム)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cu又はこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0066】
一方、陰極7は、後述する電子輸送層6に電子を注入する電極であり、電子輸送層6の有機発光層5と反対側に設けられている。この陰極7の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。陰極7の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rb又はこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種又は任意の2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0067】
特に、陰極7の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好
ましい。かかる合金を陰極7の構成材料として用いることにより、陰極7の電子注入効率及び安定性の向上を図ることができる。陰極7の平均厚さは、特に限定されないが、50〜10000nm程度であるのが好ましく、80〜500nm程度であるのがより好ましい。
【0068】
トップエミッション型の場合、仕事関数の小さい材料、又はこれらを含む合金を5〜20nm程度とし、透過性を持たせ、さらにその上面にITO等の透過性の高い導電材料を100〜500nm程度の厚さで形成する。
なお、本実施の形態に係る有機電界発光素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極7の光透過性は特に要求されない。
【0069】
陽極3上には、正孔輸送層4が設けられている。この正孔輸送層4は、陽極3から注入された正孔を、有機発光層5まで輸送する機能を有するものである。
正孔輸送層4の構成材料としては、例えば、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)、鉄フタロシアニンのような金属又は無金属のフタロシアニン系化合物、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂又はその誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0070】
正孔輸送層4の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。正孔輸送層4上、すなわち、陽極3の一方の面側には、有機発光層5が設けられている。この有機発光層5には、後述する電子輸送層6から電子が、また、前記正孔輸送層4から正孔がそれぞれ供給(注入)される。そして、有機発光層5内では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーにより励起子(エキシトン)が生成し、励起子が基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)が放出(発光)される。
【0071】
有機発光層5の構成材料(発光物質)としては、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリフルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq)、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))のような低分子系のものや、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子、カルバゾール系高分子、ポリフルオレン系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子のような高分子系のものが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
有機発光層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0073】
有機発光層5上には、電子輸送材料の一例である電子輸送層6が設けられている。この電子輸送層6は、陰極7から注入された電子を、有機発光層5まで輸送する機能を有するものである。電子輸送層6は、本発明の第1の実施の形態に係る電子輸送材料形成用組成物を用いて形成される。形成の方法については後述する。
【0074】
電子輸送層6の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、10〜50nm程度であるのがより好ましい。
【0075】
封止部材8は、有機電界発光素子1(陽極3、正孔輸送層4、有機発光層5、電子輸送層6及び陰極7)を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材8を設けることにより、有機電界発光素子1の信頼性の向上や、変質及び劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
【0076】
封止部材8の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Ti又はこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材8の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材8と有機電界発光素子1との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。また、封止部材8は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
【0077】
有機電界発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電界メッキ、浸漬メッキ、無電界メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0078】
次に、陽極3上に正孔輸送層4を形成する。
正孔輸送層4は、例えば、正孔輸送材料を溶媒に溶解又は分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、陽極3上に供給した後、乾燥(脱溶媒又は脱分散媒)することにより形成することができる。正孔輸送層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。このような塗布法を用いることにより、正孔輸送層4を比較的容易に形成することができる。
【0079】
正孔輸送層形成用材料の調製に用いる溶媒又は分散媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、又は、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
なお、乾燥は、例えば、大気圧又は減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
【0080】
また、本工程に先立って、陽極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極3の上面に親液性を付与すること、陽極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100〜800W程度、酸素ガス流量50〜100mL/min程度、被処理部材(陽極3)の搬送速度0.5〜10mm/sec程度、基板2の温度70〜90℃程度とするのが好ましい。
【0081】
次に、正孔輸送層4上(陽極3の一方の面側)に、有機発光層5を形成する。
有機発光層5は、例えば、発光材料を溶媒に溶解又は分散媒に分散してなる有機発光層形成用材料を、正孔輸送層4上に供給した後、乾燥(脱溶媒又は脱分散媒)することにより形成することができる。有機発光層形成用材料の供給方法及び乾燥の方法は、前記正孔輸送層4の形成で説明したのと同様である。
【0082】
なお、前述したような発光材料を用いる場合、有機発光層形成用材料の調製に用いる溶媒又は分散媒としては、非極性溶媒が好適であり、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらを単独又はこれらを含む混合溶媒として用いることができる。
【0083】
次に、有機電子輸送材料形成用組成物を有機発光層5上に供給した後乾燥することにより、電子輸送層6が得られる。有機電子輸送材料形成用組成物の供給方法および乾燥の方法は、前記正孔輸送層4の形成で説明したのと同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0084】
最後に、電子輸送層6上(有機発光層5と反対側)に、陰極7を形成する。
陰極7は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
最後に、得られた有機発光素子1を覆うように封止部材8を被せ、基板2に接合する。
以上のような工程を経て、有機電界発光素子1が得られる。
【0085】
以上のような製造方法によれば、有機層(ホール輸送層4、有機発光層5、電子輸送層6)の形成や、金属微粒子インクを使用する場合は陰極7の形成においても、真空装置等の大掛かりな設備を要しないため、有機発光素子1の製造時間および製造コストの削減を図ることができる。また、インクジェット法(液滴吐出法)を適用することで、大面積の素子の作製や多色の塗り分けが容易となる。
【0086】
なお、本実施の形態では、正孔輸送層4および有機発光層5を液相プロセスにより製造することとして説明したが、本発明では、用いる正孔輸送材料および発光材料の種類に応じて、これらの層を、例えば、真空蒸着法等の気相プロセスにより形成するようにしてもよい。
【0087】
このような有機発光素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の有機電界発光素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置を構成することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0088】
有機電界発光素子1に供給される電気エネルギー源としては、主に直流電流であるが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値及び電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力、寿命を考慮するとできるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるようにするべきである。
【0089】
ディスプレイ装置を構成する「マトリックス」とは、表示のための画素(ピクセル)が格子状に配置されたものをいい、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状、サイズは用途によって決まる。例えばパーソナルコンピュータ、モニター、テレビの画像及び文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられるし、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリックスの駆動方法としては、パッシブマトリックス方式及びアクティブマトリックス方式のどちらでもよい。前者には、構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、後者のアクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0090】
有機電界発光素子1は、セグメントタイプの表示装置であってもよい。「セグメントタイプ」とは、予め決められた情報を表示するように所定形状のパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器等の動作状態表示、自動車のパネル表示などがあげられる。そして、前記マトリックス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0091】
有機電界発光素子1は、自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ機器、自動車パネル、表示板、標識等に使用されるバックライトであってもよい。特に液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパーソナルコンピュータ用途のバックライトとしては、蛍光灯や導光板からなる従来のものに比べ、薄型化、軽量化が可能になる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
使用したホスフィンオキシド誘導体(上記の式A〜Qで表されるもの)のうち国際公開第2005/104628号パンフレットに記載のものは、同パンフレットに記載の方法にしたがい合成した。
(1)有機電子輸送材料形成用組成物の製造
まず金属化合物を2−プロパノールに溶解後、ホスフィンオキシド誘導体を添加し熔解させた。得られた溶液を2−プロパノールで希釈し、金属化合物及びホスフィンオキシド誘導体の濃度の合計が0.5wt%である有機電子輸送材料形成用組成物を得た。
用いた金属化合物、ホスフィンオキシド誘導体(A〜Q)、後者に対する前者の添加量(ドープ濃度[wt%])を下記の表1及び表2に示す。
【0093】
(2)モデル系を用いた錯体形成の確認
有機電子輸送材料形成用組成物中で金属錯体が形成していることを確認するためのモデル実験を下記のとおり行った。
リチウムアセチルアセトナトLi(acac)及びトリフェニルホスフィンオキシドTPPOをモル比で1:1及び1:2で混合し、Liの濃度が1Mになるようにメタノールに溶解した。この溶液とマトリックスであるニトロベンジルアルコールを混合し、FAB−MS測定を行った。使用した質量分析器は、日本電子JMS700である。また、Li(acac)及びTPPOをモル比で1:1及び1:2で混合し、Liの濃度が1Mになるように重水素置換DMSOに溶解した溶液を用いて、H−NMR測定をおこなった。使用したNMR分光計は、日本電子JNM−MY60FT(60MHz)である。
なお、比較のため、Li(acac)のみを溶解した溶液を用いて同様の測定も併せて行った。
【0094】
FAB−MS測定の結果
Li(acac)のみを含む溶液では、[acac](m/z=99)、[acac+Li−1](m/z=105)及び[acac+Li+1](m/z=107)等に相当するピークが検出された。
一方、TPPOを1モル当量加えたサンプルからは、[TPPO+1](m/z=279)[LiTPPO]+1(m/z=285)及び[LiTPPO(m/z=563)に相当するピークが検出された。この結果より、TPPOのリチウムイオンへの配位が確認された。しかしながら、Li、acac、TPPOの3者からなる錯体は検出できなかった。これは、質量分析条件下ではacacが脱離しているためであると考えられる。
TPPOを1当量添加した溶液及び2当量添加した溶液の測定結果を比較すると、TPPOを2当量添加した溶液では、フリーのTPPO由来の質量数(m/z=279:[TPPO+H]等)が検出された。この結果より、TPPO1配位体(一般式(1))が主に生成していることが予想される。
【0095】
H−NMR測定の結果
次に、acacがTPPOの配位により脱離を起こさず、Liに配位した状態で残っていることを確認するために、Li(acac)とTPPOの混合溶液のH−NMRを測定した。
フリーのacacではケト−エノール互変異性に起因して、δ=2ppm付近のメチル基由来のピークが2本に分裂すると共に、δ=3.7ppm及び5.7ppmに、それぞれエノール型及びケト型の3−位炭素上のプロトンに起因するピークが観察される。
一方、Li(acac)のみを含む溶液及びLi(acac)にTPPOを加えた溶液のH−NMRは7.5〜8.0ppm付近の芳香族由来のピーク以外はほぼ同等であり、メチル基由来のピーク(δ=1.7ppm)の分裂は見られず、3−位炭素上のプロトン由来のピークはδ=5ppm付近に一本線として観測され、ケト−エノール互変異性に由来するピークの分裂は観測されなかった。
このNMRの結果から、TPPOを加えることによりacacの脱離は起こらないことが示された。
【0096】
以上のFAB−MSの結果及び、H−NMRの結果より、LiacacとTPPOを溶液中で混合することによりTPPOのLiへの配位が起こると共に、それに伴うacacの脱離はおきないことが示された。
【0097】
(3)積層型有機EL素子の製造
ITO基板は、三容真空製のもの(膜厚80nm)を使用した。基板洗浄に用いる2−プロパノールは関東化学製の電子工業用を用い、電子輸送層の成膜に用いるアルコール類は関東化学製、発光層の成膜に用いるトルエンは関東化学製の電子工業用を用いた。正孔輸送材料としてのPEDOT−PSSは、H.C.Starck製の、AI4083を用いた。発光材料は、メルク製PDY−132(商品名スーパーイエロー:ポリ−p−フェニレンビニレン誘導体)を用いた。
ITO基板の前処理として、2−プロパノール中で5分間煮沸洗浄し、その後すぐにUV/O処理装置に入れ、15分間UV光照射によりO処理を行った。PEDOT−PSS及び電子輸送層はアイデン製のスピンコーターを用い成膜後、大気中の乾燥庫で乾燥した。また、発光層は酸素濃度が1〜3ppmのN雰囲気下(グローブボックス内)でMIKASA製のスピンコーターを用いて形成後、N雰囲気下の乾燥庫で乾燥した。
【0098】
陰極の蒸着には、大気中に設置した1.0×10−3Pa以下の高真空蒸着装置を用いた。蒸着速度は、LiFについては0.1Å/s、Alについては10Å/sとした。またMgAgは9:1の重量比になるよう蒸着速度の制御により共蒸着した。Baは、グローブボックス内に設置した高真空蒸着装置を用いて、蒸着速度1.0Å/sで蒸着した。全ての素子においてN雰囲気下で封止を行った。
【0099】
素子構造は、全て図1に示すものとした。各層の膜厚は下記のとおりである。
陽極:ITO
正孔輸送層:PEDOT−PSS(50nm)
有機発光層:PDY−132(50nm)
電子輸送層:表1及び2に示すホスフィンオキシド誘導体及び金属錯体を使用(30nm)陰極:LiF(0.2nm)/Al(100nm)
【0100】
(4)素子特性の評価
電流効率η[cd/A]、電力効率η[lm/W]の測定には、有機EL発光効率測定装置を使用した。
500cd/m換算寿命の測定にはアペックス製の装置を使用し、50mA/mの定電流連続駆動により測定した。全て1.5乗則(下式参照)を用い500cd/mに換算した駆動時間により、初期輝度の1/2に達した半減時間により比較した。
【0101】
1.5乗則:T=(L/L)1.5×T
(式中、L:初期輝度[cd/m]、L:換算輝度[cd/m]、T:輝度半減時の実測時間、T:半減時間である。)
【0102】
上記のようにして得られた電流効率、電力効率及び500cd/m換算寿命の測定結果を下記の表1及び表2に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
上記の表1及び2の結果より、金属錯体を添加しなかった場合について比較実験を行わなかったA、G、I、J、N、P及びQ以外の全てのホスフィンオキシド誘導体について、金属錯体の添加による500cd/m換算寿命の顕著な増大が観測されることがわかる。これらの結果は、有機EL素子において、電子輸送層が上記の式(1)、(1)’、(2)、及び(2)’のいずれかで表される金属錯体を含むことにより、特にその寿命が大幅に延長可能であることを示している。
【符号の説明】
【0106】
1 有機電界発光素子
2 基板
3 陽極
4 正孔輸送層
5 有機発光層
6 電子輸送層
7 陰極
8 封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)及び(2)のいずれかで表される金属錯体を含むことを特徴とする有機電子輸送材料。
【化1】

式(1)及び(2)において、
及びLは、下記の式(3)で表され、アルコール系溶媒に可溶であるホスフィンオキシド誘導体を表し、かつ
及びLは互いに同一であっても異なっていてもよく、或いは
式(2)においてL及びLが同一の原子団に結合し、アルコール系溶媒に可溶なキレート配位子を形成していてもよく、
及びLは、C−O単結合又はC=O二重結合を有し、酸素原子で金属原子又はイオンに配位可能で、アルコール系溶媒に可溶である配位子を表し、かつ
及びLは互いに同一であっても異なっていてもよく、或いは
式(1)及び(2)においてL及びLが同一の原子団に結合し、アルコール系溶媒に可溶なキレート配位子を形成していてもよく、
Mは、電気陰性度が1.6以下の金属元素又は金属イオンを表し、
【化2】

式(3)において、
は1又は複数のアリール基及びヘテロアリール基の一方又は双方を有し、任意の1又は複数の炭素原子上に下記の式(4)で表されるホスフィンオキシド基を有していてもよい原子団を表し、
Ar及びArは、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar及びArが結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよく、
【化3】

式(4)においてAr及びArは、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar及びArが結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
【請求項2】
前記式(1)及び(2)において、L及びLが同一の=CH−基に結合しβ−ジケトナト配位子を形成し、前記金属錯体が下記の式(1)’及び(2)’のいずれかで表されることを特徴とする請求項1記載の有機電子輸送材料。
【化4】

式(1)’及び(2)’において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群より選択される官能基を表す。
【請求項3】
前記式(1)、(1)’、(2)及び(2)’において、Mがアルカリ金属、アルカリ土類金属及びランタン(La)からなる群より選択されることを特徴とする請求項1及び2のいずれか1項記載の有機電子輸送材料。
【請求項4】
前記式(1)、(1)’、(2)及び(2)’において、L及びL、或いはL及びLが原子団を共有することにより形成しているアルコール系溶媒に可溶なキレート配位子が下記の式AからQのいずれかで表されるホスフィンオキシド誘導体からなる群より選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の有機電子輸送材料。
【化5】

【化6】

【化7】

【請求項5】
下記の式(1)及び(2)のいずれかで表される金属錯体と、アルコール系溶媒とを含むことを特徴とする有機電子輸送材料形成用組成物。
【化8】

式(1)及び(2)において、
及びLは、下記の式(3)で表され、アルコール系溶媒に可溶であるホスフィンオキシド誘導体を表し、かつ
及びLは互いに同一であっても異なっていてもよく、或いは
式(2)においてL及びLが同一の原子団に結合し、アルコール系溶媒に可溶なキレート配位子を形成していてもよく、
及びLは、C−O単結合又はC=O二重結合を有し、酸素原子で金属原子又はイオンに配位可能で、アルコール系溶媒に可溶である配位子を表し、かつ
及びLは互いに同一であっても異なっていてもよく、或いは
式(1)及び(2)においてL及びLが同一の原子団に結合し、アルコール系溶媒に可溶なキレート配位子を形成していてもよく、
Mは、電気陰性度が1.6以下の金属元素又は金属イオンを表し、
【化9】

式(3)において、
は1又は複数のアリール基及びヘテロアリール基の一方又は双方を有し、任意の1又は複数の炭素原子上に下記の式(4)で表されるホスフィンオキシド基を有していてもよい原子団を表し、
Ar及びArは、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar及びArが結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよく、
【化10】

式(4)においてAr及びArは、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar及びArが結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
【請求項6】
前記式(1)及び(2)において、L及びLが同一の=CH−基に結合しβ−ジケトナト配位子を形成し、前記金属錯体が下記の式(1)’及び(2)’のいずれかで表されることを特徴とする請求項5記載の有機電子輸送材料形成用組成物。
【化11】

式(1)’及び(2)’において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群より選択される官能基を表す。
【請求項7】
前記式(1)、(1)’、(2)及び(2)’において、Mがアルカリ金属、アルカリ土類金属及びランタン(La)からなる群より選択されることを特徴とする請求項5及び6のいずれか1項記載の有機電子輸送材料形成用組成物。
【請求項8】
前記式(1)、(1)’、(2)及び(2)’において、L及びL、或いはL及びLが原子団を共有することにより形成しているアルコール系溶媒に可溶なキレート配位子が下記の式AからQのいずれかで表されるホスフィンオキシド誘導体からなる群より選択されることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項記載の有機電子輸送材料形成用組成物。
【化12】

【化13】

【化14】

【請求項9】
下記の式(1)及び(2)のいずれかで表される金属錯体を含む電子輸送層を有することを特徴とする有機電界発光素子。
【化15】

式(1)及び(2)において、
及びLは、下記の式(3)で表され、アルコール系溶媒に可溶であるホスフィンオキシド誘導体を表し、かつ
及びLは互いに同一であっても異なっていてもよく、或いは
式(2)においてL及びLが同一の原子団に結合し、アルコール系溶媒に可溶なキレート配位子を形成していてもよく、
及びLは、C−O単結合又はC=O二重結合を有し、酸素原子で金属原子又はイオンに配位可能で、アルコール系溶媒に可溶である配位子を表し、かつ
及びLは互いに同一であっても異なっていてもよく、或いは
式(1)及び(2)においてL及びLが同一の原子団に結合し、アルコール系溶媒に可溶なキレート配位子を形成していてもよく、
Mは、電気陰性度が1.6以下の金属元素又は金属イオンを表し、
【化16】

式(3)において、
は1又は複数のアリール基及びヘテロアリール基の一方又は双方を有し、任意の1又は複数の炭素原子上に下記の式(4)で表されるホスフィンオキシド基を有していてもよい原子団を表し、
Ar及びArは、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar及びArが結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよく、
【化17】

式(4)においてAr及びArは、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar及びArが結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
【請求項10】
前記式(1)及び(2)において、L及びLが同一の=CH−基に結合しβ−ジケトナト配位子を形成し、前記金属錯体が下記の式(1)’及び(2)’のいずれかで表されることを特徴とする請求項9記載の有機電界発光素子。
【化18】

式(1)’及び(2)’において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基からなる群より選択される官能基を表す。
【請求項11】
前記式(1)、(1)’、(2)及び(2)’において、Mがアルカリ金属、アルカリ土類金属及びランタン(La)からなる群より選択されることを特徴とする請求項9及び10のいずれか1項記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
前記式(1)、(1)’、(2)及び(2)’において、L及びL、或いはL及びLが原子団を共有することにより形成しているアルコール系溶媒に可溶なキレート配位子が下記の式AからQのいずれかで表されるホスフィンオキシド誘導体からなる群より選択されることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項記載の有機電界発光素子。
【化19】

【化20】

【化21】


【図1】
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【公開番号】特開2010−278376(P2010−278376A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131866(P2009−131866)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000207089)大電株式会社 (67)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【Fターム(参考)】