説明

有機電極コーティング用組成物及びこれを用いた高透明性有機電極の製造方法

本発明は、多価アルコール、ポリオールまたはこれらの混合物3乃至20重量%、炭素数が1乃至5の1価アルコール5乃至10重量%、アミド系、スルホキシド系またはこれらの混合溶媒5乃至25重量%、界面活性剤0.01乃至0.1重量%及び残量としてナノ粒子サイズのポリエチレンジオキシチオフェン系伝導性高分子水溶液を含有する有機電極コーティング用組成物及びこれを用いた高透明性有機電極の製造方法に関し、コーティング時、有機伝導膜の可視光線領域での透過度が90%以上であり、且つ面抵抗が300〜900Ω/sqであって、優れた透明度を有し、これにより、ディスプレイ用透明電極のほか、有機トランジスタの電極や配線材料、スマートカード、アンテナ、電池及び燃料電池の電極、PCB用コンデンサやインダクタ、電磁波遮蔽、センサなどの有機電極を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電極コーティング用組成物及びこれを用いた高透明性有機電極の製造方法に関し、さらに詳細には、ナノ粒子サイズのポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)系伝導性高分子水溶液、多価アルコール、界面活性剤を、溶媒である1価アルコール及びアミド系、スルホキシド系溶媒またはこれらの混合溶媒と混合し、伝導性高分子水溶液中の伝導性高分子粒子をナノスケールで微細相分離させることによって、これを用いた有機電極を製造する際、伝導膜の可視光線領域での透過度が90%以上であり、面抵抗が300〜900Ω/sqであり、優れた透明度を有する有機電極を製造する方法に関する。
【0002】
コンピュータ、各種家電機器や通信機器がデジタル化され、急速に高性能化されるにしたがって、大画面及び携帯可能なディスプレイの具現が切実に要求されている。携帯可能な大面積の柔軟なディスプレイを具現するためには、新聞のように折り畳んだり、巻くことができる材質のディスプレイ材料が要求される。
【0003】
このために、ディスプレイ用電極材料は、透明であり、且つ低い抵抗値を示すだけでなく、素子を曲げたり、折り畳む場合にも、機械的に安定となるように、高い強度を示さなければならない。また、電極材料は、プラスチック基板の熱膨張係数と類似の熱膨張係数を有していて、機器が過熱されるか、又は高温である場合にも、短絡や面抵抗の大きな変化が発生してはならない。
【0004】
柔軟なディスプレイは、任意の形態を有するディスプレイの製造を可能にするので、携帯用ディスプレイ装置のみならず、色相やパターンを変えることができる衣服や、衣類の商標、広告看板、商品陳列台の価格表示板、大面積電気照明装置などに使用できるので、その活用度が高い。
【背景技術】
【0005】
現在、国内外で透明電極を製造する方法として、インジウム、錫、亜鉛、チタニウム、セシウムなど多様な金属酸化物を用いた化学蒸着法、マグネトンスパッタリング法、反応性蒸発蒸着法に関する研究が活発に進行されている。しかし、このように基板に金属酸化物をコーティングするためには、真空条件が必要なので、高価の工程費用を招くという短所がある。
【0006】
高費用を必要としない透明電極を製造するための方案として、伝導性高分子を使用する方法が登場した。伝導性高分子を用いて製造する電極の場合には、既存の多様な高分子コーティング方法を使用できるので、工程費用と作業工程を大いに低減することができるという長所がある。すなわち、柔軟なディスプレイや電気照明装置などの製造に際して、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンなどのような伝導性高分子で製造した透明電極が、酸化インジウム錫(ITO)で製造した透明電極に比べて、工程上の利点を有するだけでなく、非常に柔軟で、且つあまり壊れないので、非常に柔軟な電極が必要な場合、特にタッチスクリーンなどの製造に際して、装置の寿命を延長させることができるという長所を有する。しかし、このような長所にもかかわらず、一般的に伝導性高分子は、可視光線領域の光を吸収し、伝導性高分子で製造された有機電極の伝導特性は、電極の厚さに比例して増加するので、透過率を高めるために、伝導膜を薄くコーティングする場合、面抵抗が増加するようになる。このため、前記伝導性高分子は、タッチパネル、フレキシブルディスプレイなど透明電極の応用分野に適用しがたいという問題点を有する。特に、伝導性高分子による製造性を向上させるために、伝導性高分子をナノ粒子化し、水分散した市販のポリチオフェンを用いて透明電極を製造する場合、85%透過度で1MΩ/sq程度の面抵抗を示すようになるので、実際ディスプレイ用透明電極として使用することが困難である。
【0007】
米国特許第5,766,515号、米国特許第6,083, 635号及び韓国特許公開第2000−1824号には、ナノ粒子サイズのポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)系高分子水溶液を用いて製造された電極の伝導度を溶媒や添加剤を用いて向上させようとする試みが記載されている。しかし、米国特許第5,766,515号や米国特許第6,083,635号の場合、ソルビトールなど多価アルコールを添加する場合、透過度が90%以上であるコーティング膜の面抵抗を1kΩ/sq以下に低減することが難しく、アミド系溶媒を添加する場合、コーティング膜の面抵抗を1kΩ/sq以下に低減することができるが、膜硬度が低く、コーティング特性が低下するという問題点がある。一方、韓国特許公開第2000−1824号の記載によれば、アミド系溶媒で処理されたポリチオフェン水溶液にシリカゾルを添加して膜硬度を向上させる場合には、面抵抗が1kΩ/sq以上に増加するようになる。
【0008】
このような点を勘案する時、コーティング膜は、90%以上の透過度と数百Ω/sq以下の面抵抗を示し、優れた透明度と硬度及び低い面抵抗を有する。これにより、実際電子機器に応用できる有機透明電極材料の開発が依然として要求されている。
【特許文献1】米国特許第5,766,515号
【特許文献2】米国特許第6,083, 635号
【特許文献3】韓国特許公開第2000−1824号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明者らは、高透明性を有する有機電極を製造するための有機電極コーティング用組成物の研究を重なった結果、ナノ粒子サイズのポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)系伝導性高分子水溶液、多価アルコール、界面活性剤を、溶媒である1価アルコール及びアミド系、スルホキシド系溶媒またはこれらの混合溶媒と混合する場合、伝導性高分子水溶液中の伝導性高分子粒子をナノスケールで微細相分離することによって、このような組成物をコーティングする際、有機伝導膜の可視光線領域での透過度が90%以上であり、面抵抗が300〜900Ω/sqである高透明性有機電極を製造できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の目的は、伝導性高分子粒子をナノスケールで微細相分離させることができる有機電極コーティング用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記組成物を用いて高透明性有機電極を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明に係る有機電極コーティング用組成物は、多価アルコール、ポリオールまたはこれらの混合物3乃至20重量%、炭素数が1乃至5の1価アルコール5乃至10重量%、アミド系、スルホキシド系またはこれらの混合溶媒5乃至25重量%、界面活性剤0.01乃至0.1重量%及び残量としてナノ粒子サイズのポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)系伝導性高分子水溶液を含有し、前記伝導性高分子水溶液のうちポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホネート(PSS)固形分の濃度が水溶液の総重量に対して1.0乃至1.5重量%を占め、コーティング時、有機伝導膜の可視光線領域透過度が90%以上であり、膜の表面抵抗が300乃至900Ω/sqであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る高透明性有機電極の製造方法は、前記組成物を攪拌した後、透明基板上に塗布する段階;及び前記基板を乾燥し、0.2μm乃至20μmの厚みでコーティングする段階とから構成されること特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る高透明性有機電極の製造方法は、前記組成物を攪拌した後、振動数20,000乃至40,000Hz、パワー50乃至700Wである超音波発生器で3乃至10分ずつ2乃至10回繰り返して分散する段階;前記分散液を透明基板上に塗布する段階;及び前記基板を乾燥し、0.2μm乃至20μmの厚みでコーティングする段階とから構成されることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、まず、本発明の有機電極コーティング用組成物を具体的に説明する。
【0016】
本発明に係る有機電極コーティング用組成物は、ナノ粒子サイズのポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)系伝導性高分子水溶液;多価アルコール、ポリオールまたはこれらの混合物;炭素数が1乃至5の1価アルコール;アミド系、スルホキシド系またはこれらの混合溶媒;及び界面活性剤を必須構成要素として含み、その他の架橋剤やスルホン酸基(−SO3H)を含有するドーパントなどをさらに含有することができる。
【0017】
前記ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)系伝導性高分子水溶液としては、数十ナノメートルサイズのポリスチレンスルホネート(PSS)ゲルに反復単位が5程度であるエチレンジオキシチオフェンオリゴマーが水分散されている形態であって、水溶液のうちポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホネート(PSS)固形分の濃度は、水溶液の総重量に対して1.0乃至1.5重量%の量を占め、より好ましくは、ポリエチレンジオキシチオフェンが0.4乃至0.7重量%、ポリスチレンスルホネート(PSS)が0.6乃至0.8重量%の量を占めることが好ましい。その一例として、本発明の場合、バイトロンP(バイエル社製)が使われることができる。一方、このような伝導性高分子水溶液が有機電極コーティング用組成物に対して40重量%以下の量で使われる場合、伝導度が300〜900Ω/sqの範囲に属しないようになる。
【0018】
このような伝導性高分子水溶液が有機電極コーティング用組成物に対して70重量%以上の量で使われる場合、可視光線領域での透過度が85%以下に低くなるようになるので、伝導性高分子がこのような範囲に属しないことが好ましい。
【0019】
前記構成要素のうち多価アルコール、ポリオールまたはこれらの混合物は、伝導性高分子ナノ粒子と準安定状態で混合され得る程度の親和性が要求され、ポリスチレンスルホネート(PSS)との相互作用により伝導性ナノ粒子間の接着力を向上させて、エチレンジオキシチオフェン間の伝導性を高める役割と、微細相分離によって伝導性ナノ粒子が互いに連結している空間間毎に空き空間を形成し、フィルムの透過度を向上させる役割を同時に行う。
【0020】
粒子と粒子間の接着力を向上させるために、必ず2つ以上の水酸化基(−OH)を含まなければならないし、多価アルコールが伝導性ナノ粒子間の接着力と微細相分離による透過度の向上を同時に行うためには、分子量が300以下であることが好ましい。分子量が300以上である場合、伝導性ナノ粒子間の距離がさらに遠くなり、伝導性が減少する問題が発生することができる。使われることができるアルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチルヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール及びこれらの誘導体などを挙げることができる。より好ましくは、分子量が150以下であるエチレングリコール、ジエチレングリコールまたはグリセリンを使用する。多価アルコール及びポリオールが3重量%未満の量で添加される場合、添加剤による伝導度の向上及び膜硬度の向上効果を期待することが難しく、20重量%超過の量で添加される場合、伝導性高分子ナノ粒子の含量が相対的に減少するに従って、伝導度が低くなるという問題点がある。したがって、多価アルコール、ポリオールまたはこれらの混合物は、有機電極コーティング用組成物の総重量に対して3乃至20重量%の量で使用することが好ましい。
【0021】
一方、本発明の構成要素のうちアミド系溶媒とスルホキシド系溶媒は、伝導性高分子ナノ粒子ゲルをなしているドーパントであるポリスチレンスルホネート(PSS)との親和性に優れているので、ゲルを容易に膨潤させる。膨潤されたゲル間の高分子鎖の相互拡散によって、伝導性ナノ粒子は、1つの帯をなすようになり、内部に分散されているエチレンジオキシチオフェンオリゴマー間の浸透を円滑にし、伝導度を向上させる役割をする。その例として、アミド系溶媒には、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、カプロラクタム、及び1,1,3,3−テトラメチルウレアなどが使われることができる。また、スルホキシド系溶媒には、メチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホンなどが使われることができる。アミド系、スルホキシド系またはこれらの混合溶媒が5重量%未満の量で添加される場合、添加される溶媒の効果が微弱であるので、透過度90%であり且つ表面抵抗が300乃至900Ω/sqである透明電極を製造することができない。また、25重量%超過の量で添加される場合、溶液内にゲル化が進行されたり、フィルムが不均一に形成されるようになる。したがって、アミド系、スルホキシド系またはこれらの混合溶媒は、有機電極コーティング用組成物の総重量に対して5乃至25重量%の量で使用することが好ましい。
【0022】
その他、界面活性剤及び炭素数が1乃至5の1価アルコールは、前記アミド系、スルホキシド系またはこれらの混合溶媒を表面エネルギーが高いポリエチレンテレフタレートなどのような透明高分子基材上にコーティングする場合、濡れ特性が悪くて、不均一な膜を形成しやすいという問題点を解決する役割をする。
【0023】
これらのうち1価アルコールとして、溶液との親和性を考慮して、炭素数が1乃至5の1価アルコール類を使用することができ、より好ましくは、イソプロパノール、エタノール、メタノールが使われる。1価アルコールは、5重量%未満の量で添加される場合、濡れ特性が悪く、10重量%超過の量で添加される場合、伝導特性が悪くなることができるので、有機電極コーティング用組成物の総重量に対して5乃至10重量%の量で使用することが好ましい。
【0024】
一方、界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選択された1種以上の界面活性剤であることが好ましく、HLB(hydrophilic-lipophilic balance)が7乃至20に属するものを使用する。非イオン性界面活性剤には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどを含むポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどを含むポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレアートなどを含むソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどを含むポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどを含むポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、オレイン酸モノグリセリド及びステアリン酸モノグリセリドなどを含むグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ポリプロピレンブロック共重合体類などが使われることができる。
【0025】
陰イオン性界面活性剤には、ソジウムステアレート、ソジウムオレアート、ソジウムラウレートなどを含む脂肪酸塩類、ソジウムドデシルベンゼンスルホネートなどを含むアルキルアリルスルホン酸塩類、ソジウムラウリルスルフェートなどを含むアルキル硫酸エステル塩類、ソジウムモノオクチルスルホサクシネート、ソジウムジオクチルスルホサクシネート、ソジウムポリオキシエチレンラウリルスルホサクシネートなどを含むアルキルスルホコハク酸エステル塩類、ソジウムポリオキシエチレンラウリルエーテルスルフェートなどを含むポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ソジウムポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルフェートなどを含むポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル塩類が使われることができる。陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤には、ラウリルアミンアセテートなどを含むアルキルアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどを含む4級アンモニウム塩類、ポリオキシエチルアルキル−アミン類などが使われることができる。より好ましくは、非イオン性界面活性剤であり、濡れ特性に優れたポリオキシエチレン系界面活性剤が使われる。界面活性剤は、0.01重量%未満の量で添加される場合、濡れ特性が悪くて、フィルム形成が不均一である。また、0.1重量%超過の量で添加される場合、界面活性剤と伝導性高分子ナノ粒子が相分離され、不透明な膜が形成されることができる。したがって、界面活性剤は、有機電極コーティング用組成物の総重量に対して0.01乃至0.1重量%の量で使われることが好ましい。
【0026】
前記組成で構成された組成物をコーティングする際、有機伝導膜の硬度は、鉛筆硬度で約3Hで、良好であるが、膜の硬度をさらに向上させるために、架橋剤を追加に添加することができる。この際に使われる架橋剤は、ポリスチレンスルホネート(PSS)の酸基と多価アルコールやポリオールの水酸化基を結合させたり、多価アルコールとポリオールの水酸化基間の結合を誘導できるものであって、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、有機チタニウム化合物(Vertic IA10, Johnson Matthey Catalysts製)などが使われることができる。この架橋剤を0.01重量%未満の量で使われる場合、架橋度が不充分であり、膜硬度の向上が微弱である。また、0.2重量%超過の量で使われる場合、混合溶液内でゲル化する傾向にあるので、均一な膜を形成させることが難しく、溶液の長期安定性面においても好ましくない。従って、架橋剤は、添加される場合、有機電極コーティング用組成物の総重量に対して0.01乃至0.2重量%の量で使われることが好ましい。
【0027】
前記組成で構成された伝導膜に、スルホン酸基(−SO3H)を含有したモノマーを追加ドーパントとして導入することによって、膜の伝導特性をさらに向上させることができる。前記ドーパントには、ポリスチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1,5−アントラキノンジスルホン酸、2,6−アントラキノンジスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸またはニトロベンゼンスルホン酸などが使われることができる。前記ドーパントを0.01重量%未満の量で添加する場合、ドーピング効果が低下し、0.5重量%超過の量で添加する場合、添加したモノマードーパントが相分離され、膜の均一性を低下させる問題点があるので、添加する場合、有機電極コーティング用組成物の総重量に対して0.01乃至0.5重量%の量で使われることが好ましい。
【0028】
以下、前記組成物を用いて高透明性有機電極を製造する方法を具体的に説明する。
【0029】
本発明に係る高透明性有機電極の製造方法は、前記有機電極コーティング用組成物を攪拌した後、透明基板上に塗布する段階及び前記基板を乾燥し、0.2μm乃至20μmの厚さでコーティングする段階とから構成されることを特徴とする。しかし、用途によって、攪拌後、振動数20,000乃至40,000Hz、パワー50乃至700Wである超音波発生器で3乃至10分ずつ2乃至10回繰り返して分散する段階をさらに備えて、有機電極を製造することができる。
【0030】
まず、有機電極コーティング用組成物は、前記ポリエチレンジオキシチオフェン系伝導性高分子水溶液をゆっくり攪拌しながら、多価アルコールまたはポリオール、1価アルコール、アミド系またはスルホキシド系溶媒、界面活性剤、架橋剤、ドーパントなどを順に添加し、常温で1乃至2時間十分に攪拌することによって製造される。
【0031】
超音波発生器を用いた製造方法の場合、このように製造された有機電極コーティング用組成物を振動数が20,000乃至40,000Hzであり且つパワーが50乃至700Wである超音波発生器を用いて3乃至10分間分散する過程を2乃至10回繰り返すことによって、伝導性ナノ粒子ゲルの膨潤を促進させる。続いて、分散液をポリエステルフィルムなどの透明基板上に塗布した後、加温下に乾燥し、コーティング層を形成するが、この時、その厚さは、0.2μm乃至20μm、さらに好ましくは、0.5μm乃至10μmである。前記透明基板には、ガラス、セルロースエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリオキシエチレンが使われることができる。さらに好ましくは、トリアセチルセルロース、ポリカーボネートまたはポリエチレンテレフタレートを使用する。
【0032】
このようにして製造された有機電極伝導膜の可視光線領域での透過度は、90%以上であり、その伝導度は、大部分の場合、300〜900Ω/sqに属し、より好ましくは、500Ω/sq以下に属し、膜硬度は、2H〜4Hに属し、これにより、高透明性有機電極を製造することができるようになる。
【0033】
このような高透明性有機電極の製造方法を用いて各種ディスプレイ用有機透明電極を製造することができる。また、本発明の有機電極は、ディスプレイ用透明電極の他、有機トランジスタの電極や配線材料、スマートカード、アンテナ、電池及び燃料電池の電極、PCB用キャパシタやインダクタ、電磁波遮蔽フィルム、静電気発生抑制フィルム、センサなど多様な分野に広く適用できる。
【0034】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
【0035】
<実施例1〜8>
【0036】
【表1】

【0037】
−製造方法−
ビーカーに、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)系伝導性高分子水溶液としてバイトロンP(ポリエチレンジオキシチオフェン;バイエルAG社製/ドイツレバクセン所在)を表1の組成に基づいて投入して攪拌した後、アミド系溶媒としてメチルホルムアミド(アルドリッチ社製/米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)、ジメチルホルムアミド(アルドリッチ社製/米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)またはN−メチルピロリドン(アルドリッチ社製/米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)を、スルホキシド系溶媒としてジメチルスルホキシド(アルドリッチ社製/米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)を、多価アルコールまたはポリオールとしてエチレングリコール(アルドリッチ社製/米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)、ジエチレングリコール(アルドリッチ社製/米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)を、1価アルコールとしてイソプロパノール(アルドリッチ社製/米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)を、界面活性剤としてトリトンX−100(ユニオンカーバイト社製)を、ドーパントとしてp−トルエンスルホン酸(アルドリラッチ社製/米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)またはドデシルベンゼンスルホン酸(アルドリッチ社製/米国ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)を順に表1の組成に基づいて注入し、フィルム形成組成物を製造した。
【0038】
<比較例1〜7>
【0039】
【表2】

【0040】
−製造方法−
表2の組成によって投入することを除いて、実施例1乃至8の製造方法と同様の方法によってフィルム形成組成物を製造した。
【0041】
<製造例1〜8>
前記実施例1の組成物を300rpmで1時間攪拌した後、この混合物をバーコーターを用いてポリエステルフィルム上に塗布した後、110℃乾燥器で30分間乾燥し、コーティング層の厚さが2μmである透明基板形態の有機透明電極を製造した。
【0042】
<比較製造例1>
比較例1のバイトロンPをガラス板上に3000rpmで30秒間スピンコートし、110℃乾燥器で30分間乾燥し、コーティング層の厚さが400nmである透明基板形態の有機透明電極を製造した。
【0043】
<比較製造例2>
トリトンX−100をさらに添加することを除いて、比較製造例1の製造方法と同様の方法によって有機透明電極を製造した。
【0044】
<比較製造例3〜7>
前記比較例1の代わりに、前記比較例3乃至7の組成物を使用することを除いて、製造例1の製造方法と同様の製造方法によって有機透明電極を製造した。
【0045】
<試験例1>
製造例1乃至8の透明電極を対象にして伝導度、透過度及び膜硬度を評価した。これらのうち伝導度は、面抵抗器(Loresta-GP MCP-T600/三菱化学社製)を用いて表面抵抗で評価し、透過度は、UV−Visスペクトロメータ(Helios β/Spectronic Unicam社製)を用いて550nmの透過度で評価し、膜硬度は、鉛筆硬度計で評価し、その結果を表3に示した。
【0046】
【表3】

【0047】
表3から分かるように、製造例1乃至8で製造された全ての透明電極は、伝導度(膜の表面抵抗)が300〜900Ω/sqに属し、可視光線領域透過度が90%に近似し、膜硬度が2H乃至4Hの範囲に属し、優れていた。
【0048】
<試験例2>
製造例1乃至8の代わりに、比較製造例1乃至7の透明電極を対象にして伝導度、透過度及び膜硬度を評価し、その結果を表4に示した。
【0049】
【表4】

【0050】
表4から分かるように、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)系伝導性高分子水溶液の含量が70重量%を超過する比較製造例3及び7の透明電極の場合、透過度90%以上を満足させることができず、多価アルコールを使用しない比較製造例1乃至3及び5の場合、膜硬度が低下し、膜が不均一であった。
【0051】
<製造例9>
前記実施例1の組成物を300rpmで1時間攪拌した後、この混合物を2,000Hz、140Wである超音波発生器で3分間5回超音波分散し、分散液を製造した。製造された分散液をバーコーターを用いてポリエステルフィルム上に塗布した後、110℃乾燥器で30分間乾燥し、コーティング層の厚さが2μmである透明基板形態の有機透明電極を製造した。
【0052】
<比較製造例8>
混合液を140Wの超音波発生器で10秒間分散し、分散液を製造することを除いて、前記製造例9と同様の方法で透明電極を製造した。
【0053】
<比較製造例9>
混合液を1,000Wの超音波発生器で3分間分散し、分散液を製造することを除いて、前記製造例9と同様の方法で透明電極を製造した。
【0054】
<試験例3>
前記試験例1の測定方法によって製造例9、比較製造例8及び9の伝導度、透過度及び膜硬度を測定した。
【0055】
【表5】

【0056】
表5から分かるように、超音波発生器のパワーを50乃至700Wの範囲に属するようにし、分散時間が3乃至10分となるようにした製造例9の場合、可視光線透過度が90%と優れており、伝導度は、450Ω/sqと非常に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明の有機電極コーティング用組成物及びこれを用いた高透明性有機電極の製造方法は、伝導性高分子ナノ粒子の浸透を向上させることができ、これにより、コーティングや印刷工程を通じて伝導性及び透過度に優れた大面積の柔軟な透明有機電極を製造できるので、既存の真空工程を使用する金属酸化物電極に比べて製造工程の経済性を高めることができ、ディスプレイ用透明電極のほか、有機トランジスタの電極や配線材料、スマートカード、アンテナ、電池及び燃料電池の電極、PCB用コンデンサやインダクタ、電子波遮蔽、センサなど多様な分野に広く適用することができるので、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール、ポリオールまたはこれらの混合物3乃至20重量%;
炭素数が1乃至5の1価アルコール5乃至10重量%;
アミド系、スルホキシド系またはこれらの混合溶媒5乃至25重量%;
界面活性剤0.01乃至0.1重量%;及び
残量としてナノ粒子サイズのポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)系伝導性高分子水溶液を含有し、
前記伝導性高分子水溶液のうちポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホネート(PSS)固形分の濃度が水溶液の総重量に対して1.0乃至1.5重量%を占め、
コーティング時、有機伝導膜の可視光線領域透過度が90%以上であり、膜の表面抵抗が300乃至900Ω/sqであることを特徴とする有機電極コーティング用組成物。
【請求項2】
前記多価アルコール、ポリオールまたはこれらの混合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチルヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール及びこれらの誘導体よりなる群から選択された1種以上のアルコールであることを特徴とする請求項1記載の有機電極コーティング用組成物。
【請求項3】
前記多価アルコールまたはポリオールは、分子量が300以下のものであることを特徴とする請求項2記載の有機電極コーティング用組成物。
【請求項4】
前記アミド系溶媒は、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、カプロラクタム及びテトラメチルウレアよりなる群から選択された1種以上の溶媒であり、
前記スルホキシド系溶媒は、メチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホンよりなる群から選択された1種以上の溶媒であることを特徴とする請求項1記載の有機電極コーティング用組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選択された1種以上の界面活性剤であり、HLBが7乃至20に属するものであることを特徴とする請求項1記載の有機電極コーティング用組成物。
【請求項6】
ドーパントとしてスルホン酸基を含有する化合物を0.01乃至0.5重量%の量でさらに含有することを特徴とする請求項1記載の有機電極コーティング用組成物。
【請求項7】
前記ドーパントは、ポリスチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸及びニトロベンゼンスルホン酸よりなる群から選択された1種以上の化合物であることを特徴とする請求項6に記載の有機電極コーティング用組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物を攪拌した後、透明基板上に塗布する段階;及び
前記基板を乾燥し、0.2μm乃至20μmの厚みでコーティングする段階とから構成されることを特徴とする高透明性有機電極の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の組成物を攪拌した後、振動数20,000乃至40,000Hz、パワー50乃至700Wである超音波発生器で3乃至10分ずつ2乃至10回繰り返して分散する段階;
前記分散液を透明基板上に塗布する段階;及び
前記基板を乾燥し、0.2μm乃至20μmの厚みでコーティングする段階とから構成されることを特徴とする高透明性有機電極の製造方法。

【公表番号】特表2007−531233(P2007−531233A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506073(P2007−506073)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000748
【国際公開番号】WO2005/096319
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506326109)ディーピーアイ ソリューションズ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】DPI Solutions, Inc.
【住所又は居所原語表記】# 1601, Venture Incubating Center, Hanwha Chemical R&D Center 6, Shinseong−dong, Yuseong−gu, Daejeon, Republic of Korea
【Fターム(参考)】