説明

有機電界発光素子の製造方法

【課題】発光層の表面均一性を向上させることができる有機電界発光素子の製造方法の提供。
【解決手段】有機電界発光素子の製造方法は、陽極2と陰極8の間に、発光層5及び該発光層に隣接する隣接層を含む有機層を有してなる有機電界発光素子の製造方法であって、前記発光層を、発光材料と、ホスト材料とを溶媒に溶解乃至分散させた塗布液を前記隣接層に塗布し、前記ホスト材料の融解温度よりも高く、かつ前記溶媒の沸点よりも高い温度で加熱して、形成することを含み、前記発光層の純水に対する接触角A(°)と、前記隣接層の純水に対する接触角B(°)との差の絶対値が13(°)以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、自発光、高速応答などの特長を持ち、フラットパネルディスプレイへの適用が期待されており、特に、正孔輸送性の有機薄膜(正孔輸送層)と電子輸送性の有機薄膜(電子輸送層)とを積層した2層型(積層型)のものが報告されて以来、10V以下の低電圧で発光する大面積発光素子として関心を集めている。積層型の有機電界発光素子は、正極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/負極、を基本構成としている。
【0003】
また、このような有機電界発光素子において、表面均一性を向上するために、(i)正孔輸送層において、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)を高温/高湿環境下でレべリング処理する製造方法(例えば、特許文献1参照)、(ii)発光層のガラス転移温度に対して−30〜+30℃、且つ、発光層を構成している有機化合物の分解温度を超えない温度で裏面伝熱方式の熱処理を行い、さらに、ホスト材料としてジカルバゾール誘導体(CBP)を用い、溶媒としてトルエンを用いる製造方法(例えば、特許文献2参照)、(iii)有機発光媒体層を、乾燥時には機能性インクを構成する有機溶媒の沸点以上に加熱し、ガラス転移温度(Tg)前後に加熱をする製造方法(例えば、特許文献3参照)、などが提案されている。
しかしながら、これらの方法により製造された有機電界発光素子では、発光層の表面均一性が十分でないという問題がある。
【0004】
したがって、発光層の表面均一性が十分な有機電界発光素子の製造方法の速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0276910号明細書
【特許文献2】特開2009−163889号公報
【特許文献3】特開2009−129567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、発光層の表面均一性を向上させることができる有機電界発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 陽極と陰極の間に、発光層及び該発光層に隣接する隣接層を含む有機層を有してなる有機電界発光素子の製造方法であって、前記発光層を、発光材料と、ホスト材料とを溶媒に溶解乃至分散させた塗布液を前記隣接層に塗布し、前記ホスト材料の融解温度よりも高く、かつ前記溶媒の沸点よりも高い温度で加熱して、形成することを含み、前記発光層の純水に対する接触角A(°)と、前記隣接層の純水に対する接触角B(°)との差の絶対値が13(°)以下であることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法である。
<2> 発光材料の分子量が1,500以下であり、ホスト材料の分子量が1,500以下である前記<1>に記載の有機電界発光素子の製造方法である。
<3> ホスト材料が、下記一般式(1)及び(2)のいずれかに記載の化合物である前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機電界発光素子の製造方法である。
【化1】

前記一般式(1)において、Rは、t−ブチル基、t−アミル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表し、R〜R23は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シアノ基、フッ素、トリフロオロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表す。
【化2】

前記一般式(2)において、Rは、t−ブチル基、t−アミル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表し、R〜R23は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シアノ基、フッ素、トリフロオロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表す。
<4> ホスト材料が、下記構造式(1)から(4)のいずれかで表される化合物である前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機電界発光素子の製造方法である。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

<5> 溶媒が、沸点100℃以上である芳香族炭化水素、及びケトンから選択される少なくとも1種を含む、前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機電界発光素子の製造方法である。
<6> 加熱の温度が、ホスト材料の融解温度よりも20℃以上高い前記<1>から<5>のいずれかに記載の有機電界発光素子の製造方法である。
<7> 発光層は、ホスト材料が融解する前のRa値が5nm以上であり、前記ホスト材料が融解した後のRa値が1nm以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機電界発光素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、発光層の表面均一性を向上させることができる有機電界発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(有機電界発光素子の製造方法)
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、少なくとも、発光層形成工程を含んでなり、さらに、必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0011】
<発光層形成工程>
前記発光層形成工程は、発光材料と、ホスト材料とを溶媒に溶解乃至分散させた塗布液を発光層に隣接する隣接層に塗布し、加熱して、発光層を形成する工程である。
【0012】
<<発光材料>>
前記発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量が1,500以下の化合物が好ましい。
前記発光材料の分子量は、前記発光材料が複数の化合物を含む混合物である場合、最も分子量が大きい化合物の分子量を意味する。
【0013】
前記発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。前記遷移金属原子としては、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などが挙げられる。これらの中でも、レニウム、イリジウム、白金が好ましく、イリジウム、白金がより好ましい。
【0014】
前記ランタノイド原子としては、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムなどが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、ガドリニウムが好ましい。
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社、1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、又はナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、又はフェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。
【0015】
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を1つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
白金を含む発光材料の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化7】

【化8】

【化9】

イリジウムを含む発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記記載の化合物であることが好ましい。
【化10】

【化11】

【化12】

【0016】
−ホスト材料−
前記ホスト材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量が1,500以下の化合物が好ましい。
【0017】
前記ホスト材料の分子量は、前記ホスト材料が複数の化合物を含む混合物である場合、最も分子量が大きい化合物の分子量を意味する。
【0018】
前記ホスト材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
例えば、下記一般式(1)、(2)で表される化合物などが挙げられる。具体的には、構造式(1)から(4)で表される化合物などが挙げられる。
【化13】

前記一般式(1)において、Rは、t−ブチル基、t−アミル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表し、R〜R23は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シアノ基、フッ素、トリフロオロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表す。
【化14】

前記一般式(2)において、Rは、t−ブチル基、t−アミル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表し、R〜R23は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シアノ基、フッ素、トリフロオロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表す。
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【0019】
前記ホスト材料の融解温度は、固相から液相への変化する温度を意味し、下記のように測定可能である。
【0020】
<融解温度の測定方法>
示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry)や融点測定装置を用いることができ、本発明ではホットステージで粉体を加熱し、光学顕微鏡で融解する温度を観察することができる。
前記ホスト材料の融解温度は、前記ホスト材料が複数の化合物を含む混合物である場合、最も融解温度が高い化合物の融解温度を意味する。
【0021】
−溶媒−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチルベンゼン、クメン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、キシレン、トルエン、クメンが、塗布液の保存安定性の点で、好ましい。
【0022】
前記溶媒の沸点は、前記溶媒が複数の溶媒を含む混合溶媒である場合、最も沸点が高い溶媒の沸点を意味する。
【0023】
前記塗布液中における固形分(ホスト材料と燐光発光材料)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001%〜20%が好ましく、0.01%〜15%がより好ましく、0.1%〜10%が特に好ましい。
前記固形分の含有量が、0.001%未満であると、タクトタイムが長い、即ち、塗布に要する時間が長くなることがあり、20%を超えると、インクジェットやスプレーの目詰まりが発生することがある。一方、前記固形分の含有量が前記特に好ましい範囲内であると、タクトタイムが短く、かつ装置のメンテナンスが不要になる点で有利である。
なお、発光材料とホスト材料の比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1:99〜30:70が好ましく、2:98〜20:80がより好ましく、4:96〜15:75が特に好ましい。
前記発光材料とホスト材料の比率が、1未満:99超であると、EL発光できないことがあり、30超:70未満であると、濃度消光によりEL発光効率が低くなることがある。一方、前記発光材料とホスト材料の比率が前記特に好ましい範囲内であると、発光効率が高い点で有利である。
【0024】
<<塗布>>
前記塗布の方法としては、前記発光材料及び前記ホスト材料が前記溶媒に溶解乃至分散した塗布液を塗布可能である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート、インクジェット塗布及びスプレー塗布等のミスト噴霧、などが挙げられる。
【0025】
<<加熱>>
前記加熱における加熱温度としては、前記ホスト材料の融解温度よりも高く、かつ前記溶媒の沸点よりも高い温度である限り、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ホスト材料の融解温度よりも20℃以上高いことが好ましい。
前記加熱温度が、前記ホスト材料の融解温度以下であると、レベリングできないことがあり、前記溶媒の沸点以下であると、発光層中に溶媒が残存し、EL発光効率と有機電界発光素子の耐久性が低下することがある。一方、前記加熱温度が前記好ましい範囲内であると、発光層のレベリングが可能になり、かつ残存溶媒がなく、均一な発光および有機電界発光素子の効率の点で有利である。
なお、ホスト材料が複数の化合物を含む混合物である場合、前記加熱温度は、混合物における各化合物の融解温度よりも高い必要がある、即ち、前記加熱温度は、混合物における化合物の融解温度のうち最も高い融解温度よりも高い必要がある。
また、溶媒が複数の溶媒を含む混合溶媒である場合、前記加熱温度は、混合溶媒における各溶媒の沸点よりも高い必要がある、即ち、前記加熱温度は、混合溶媒における溶媒の沸点のうち最も高い沸点よりも高い必要がある。
【0026】
前記加熱における加熱時間としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1分間〜5時間が好ましく、5分間〜1時間がより好ましく、5分間〜30分間が特に好ましい。
前記加熱時間が、1分間未満であると、発光層中に溶媒が残存し、EL発光効率と有機電界発光素子の耐久性が低下することがあり、5時間を超えると、酸化等により分解や、膜の剥離などが発生することがある。一方、前記加熱時間が前記特に好ましい範囲内であると、残存溶媒がなく、均一な発光および有機電界発光素子の効率の点で有利である。
【0027】
前記加熱の回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1回でも複数回でもよい。なお、前記加熱の回数が複数回の場合、加熱温度及び加熱時間は、各加熱において同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
<<発光層及び隣接層の接触角>>
前記接触角は、純水に対する接触角を意味し、下記のように測定される。
【0029】
−接触角の測定方法−
接触角計(協和界面化学社製全自動接触角計DM−301など)を用いることで、接触角を測定できる。
【0030】
前記発光層の純水に対する接触角Aと、前記隣接層の純水に対する接触角Bとの差の絶対値は、13°以下である限り、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができるが、13°以下が好ましく、10°以下がより好ましく、5°以下が特に好ましい。
前記差の絶対値が、13°を超えると、発光層を融解させたときに、下層との界面で剥離を生じることがある。一方、前記差の絶対値が前記特に好ましい範囲内であると、層間の密着性の点で有利である。
【0031】
前記隣接層としては、前記発光層が形成される前に形成され、前記発光層に隣接する層である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、などが挙げられる。
【0032】
<<Ra値>>
前記Ra値(nm)は、粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を測定長さ(中心線の長さ)で割った値を意味し、下記のように測定される。
【0033】
−Raの測定方法−
AFM、共焦点顕微鏡、光干渉式光学顕微鏡などを用いて、任意の領域の表面粗さ(Ra)を測定できる。前記領域のサイズとしては、10μm×10μm〜5mm×5mmの範囲が好ましい。
【0034】
スプレー法により成膜した場合では、前記発光層におけるホスト材料が融解する前における、前記発光層のRa値は、通常、5nm以上である。
【0035】
前記発光層におけるホスト材料が融解した後における、前記発光層のRa値は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm以下であることが好ましく、0.5nm以下であることがより好ましく、0.2nm以下であることが特に好ましい。
前記Ra値が、1nmを超えると、隣接層(電子輸送層)の膜厚が変動し、発光強度が発光面での面内分布を生じることがある。一方、前記発光層のRa値が前記特に好ましい範囲内であると、面内で均一な発光が得られる点で有利である。
【0036】
<正孔注入層形成工程>
前記正孔注入層形成工程は、前記正孔注入層を形成する工程である。
前記正孔注入層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などが挙げられる。
【0037】
<正孔輸送層形成工程>
前記正孔輸送層形成工程は、前記正孔輸送層を形成する工程である。
前記正孔輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などが挙げられる。
【0038】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子輸送層形成工程、電子注入層形成工程、正孔ブロック層形成工程、電子ブロック層形成工程、などが挙げられる。
【0039】
<有機電界発光素子>
前記有機電界発光素子は、一対の電極(陽極及び陰極)間に有機層を有し、さらに、必要に応じて適宜選択した、その他の層を有していてもよい。
前記有機層は、少なくとも発光層を有し、更に必要に応じて、正孔輸送層、電子輸送層
、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、などを有していてもよい。
【0040】
<<発光層>>
前記発光層は、前記発光材料及び前記ホスト材料を含有してなり、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
【0041】
前記発光層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、2nm〜500nmが好ましく、外部量子効率の観点から、3nm〜200nmがより好ましく、10nm〜200nmが特に好ましい。また、前記発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0042】
<<正孔注入層、正孔輸送層>>
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。該正孔注入層及び正孔輸送層は、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0043】
−正孔注入材料、正孔輸送材料−
前記正孔注入層及び前記正孔輸送層に用いられる正孔注入材料、又は正孔輸送材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
前記正孔注入材料、又は正孔輸送材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記正孔注入層、及び正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。
前記電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
前記無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のハロゲン化金属;五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物、などが挙げられる。
前記有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基等を有する化合物;キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレン、などが挙げられる。
これらの電子受容性ドーパントは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
前記電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料又は正孔注入材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜20質量%がより好ましく、0.1質量%〜10質量%が特に好ましい。
【0045】
前記正孔注入層及び正孔輸送層の厚さは、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
【0046】
<<電子輸送層及び電子注入層>>
前記電子注入層及び電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
【0047】
前記電子注入層及び電子輸送層は、還元性ドーパントを含有することが好ましい。
前記還元性ドーパントとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、及び希土類金属の有機錯体の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記還元性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料又は電子注入材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、0.3質量%〜80質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜50質量%であることが特に好ましい。
【0048】
前記電子輸送層及び電子注入層は、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、湿式製膜法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などにより好適に形成することができる。
前記電子輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜200nmであることが好ましく、1nm〜100nmであることがより好ましく、1nm〜50nmであることが特に好ましい。
前記電子注入層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜200nmが好ましく、1nm〜100nmがより好ましく、1nm〜50nmであることが特に好ましい。
【0049】
<<正孔ブロック層及び電子ブロック層>>
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
前記電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば、前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。
【0050】
前記電子ブロック層及び正孔ブロック層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記正孔ブロック層及び電子ブロック層の厚さは、1nm〜200nmであるのが好ましく、1nm〜50nmであるのがより好ましく、3nm〜10nmであるのが特に好ましい。また正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0051】
<<電極>>
前記有機電界発光素子は、一対の電極、即ち陽極と陰極とを含む。前記有機電界発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。
前記電極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0052】
−陽極−
前記陽極を構成する材料としては、例えば、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、又はこれらとITOとの積層物、などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが特に好ましい。
【0053】
−陰極−
前記陰極を構成する材料としては、例えば、Li、Na、K、Cs等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
前記アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0054】
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式;真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式;CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などが挙げられる。これらの中でも、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
【0055】
なお、前記電極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザー等による物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0056】
<<基板>>
前記有機電界発光素子は、基板上に設けられていることが好ましく、電極と基板とが直接接する形で設けられていてもよいし、中間層を介在する形で設けられていてもよい。
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス(無アルカリガラス、ソーダライムガラス等)等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料、などが挙げられる。
【0057】
前記基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。基板は透明でも不透明でもよく、透明な場合は無色透明でも有色透明でもよい。
【0058】
前記基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、例えば、窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0059】
<<保護層>>
有機電界発光素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
前記保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属;MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物;SiNx、SiNxOy等の金属窒化物;MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、などが挙げられる。
【0060】
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法などが挙げられる。
【0061】
<<封止容器>>
前記有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体が封止されていてもよい。更に、前記封止容器と有機電界発光素子の間の空間には、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム、などが挙げられる。
前記不活性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類;パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;塩素系溶剤、シリコーンオイル類、などが挙げられる。
【0062】
<<樹脂封止層>>
前記有機電界発光素子は、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により封止することで抑制することが好ましい。
前記樹脂封止層の樹脂素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、エステル系樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、水分防止機能の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。前記エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
【0063】
前記樹脂封止層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法、などが挙げられる。
【0064】
<<封止接着剤>>
本発明に用いられる封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
前記封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。これらの中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤がより好ましい。
前記封止接着剤にフィラーを添加することも好ましい。前記フィラーとしては、例えば、SiO、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)、SiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。該フィラーの添加により、封止接着剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、及び耐湿性が向上する。
前記封止接着剤は、乾燥剤を含有してもよい。前記乾燥剤としては、例えば、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、などが挙げられる。前記乾燥剤の添加量は、前記封止接着剤に対し0.01質量%〜20質量%が好ましく、0.05質量%〜15質量%がより好ましい。前記添加量が、0.01質量%未満であると、乾燥剤の添加効果が薄れることになり、20質量%を超えると、封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になることがある。
本発明においては、前記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2基板を重ねて、硬化させることにより封止することができる。
【0065】
図1は、前記有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。有機電界発光素子10は、ガラス基板1上に形成された陽極2(例えば、ITO電極)と、正孔注入層3と、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6と、電子注入層7(例えば、フッ化リチウム含有層)と、陰極8(例えば、Al−Li電極)とをこの順に積層してなる層構成を有する。なお、陽極2(例えば、ITO電極)と陰極8(例えば、Al−Li電極)とは電源を介して互いに接続されている。
【0066】
−駆動−
前記有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
前記有機電界発光素子は、薄膜トランジスタ(TFT)によりアクティブマトリックスへ適用することができる。薄膜トランジスタの活性層としてアモルファスシリコン、高温ポリシリコン、低温ポリシリコン、微結晶シリコン、酸化物半導体、有機半導体、カーボンナノチューブ等を適用することができる。
前記有機電界発光素子は、例えば、WO2005/088726号パンフレット、特開2006−165529号公報、米国特許出願公開2008/0237598A1明細書などに記載の薄膜トランジスタを適用することができる。
【0067】
前記有機電界発光素子は、特に制限はなく、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば、微細な凹凸パターンを形成する)、基板、ITO層、有機層の屈折率を制御する、基板、ITO層、有機層の厚みを制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
前記有機電界発光素子からの光取り出し方式は、トップエミッション方式であってもボトムエミッション方式であってもよい。
【0068】
前記有機電界発光素子は、共振器構造を有してもよい。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第1の態様の場合の計算式は、特開平9−180883号公報に記載されている。第2の態様の場合の計算式は、特開2004−127795号公報に記載されている。
【0069】
−用途−
前記有機電界発光素子の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
前記有機電界発光素子を用いたディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば、「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機電界発光素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機電界発光素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。また、上記方法により得られる異なる発光色の有機電界発光素子を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、などが挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において、蒸着速度は、特に断りのない場合は、0.2nm/秒であり、蒸着速度は水晶振動子を用いて測定し、以下の各層厚は水晶振動子を用いて測定し、各物質の融解温度は、下記測定方法により測定し、溶媒の沸点は、MSDS(Material Safety Data Sheet)から抽出したものである。
【0071】
<融解温度の測定方法>
ホットステージ:MT−350(コレット工業株式会社)を用い、偏光顕微鏡:ECLIPSE50iPOL(ニコン株式会社)で観察し、粉体が融解する温度を測定した。
【0072】
(実施例1)
−有機電界発光素子の作製−
0.7mm厚み、25mm角のガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。このガラス基板上に以下の各層を形成した。
【0073】
まず、ガラス基板上に、陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み150nmにスパッタ蒸着した。得られた透明支持基板をエッチング及び洗浄した。
次に、陽極(ITO)上に、アリールアミン誘導体(商品名:PTPDES−2、ケミプロ化成製、Tg=205℃)2質量部を電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)98質量部に溶解乃至分散させた塗布液をスピンコートした後、120℃で30分間乾燥処理し、160℃で10分間アニール処理して、厚み約40nmの正孔注入層を形成した。
次に、アリールアミン誘導体としての下記構造式(6)で表される化合物(Mw=8,000、(GPC(ゲルパーミションクロマトグラフ)を用いて、標準ポリスチレン換算で算出))19質量部と、下記構造式(7)で表される化合物1質量部とを、電子工業用キシレン(関東化学製)2,000質量部に溶解乃至分散させて、1時間攪拌し、正孔輸送層塗布液を調製した。この正孔輸送層塗布液を正孔注入層上にスピンコートした後、120℃で30分間乾燥処理し、150℃で10分間アニール処理して、厚み約15nm正孔輸送層を形成した。なお、正孔注入層、正孔輸送層のスピンコートは、グローブボックス(露点−70℃、酸素濃度8ppm)内で行った。さらに、前記正孔輸送層の純水に対する接触角を下記測定方法により測定したところ、80°であった。
【化19】

【化20】

【0074】
<接触角の測定方法>
接触角計:Drop Master 300(協和界面科学社製)を用いて、純水を2μL滴下し、その接触角を測定した。なお、接触角は10箇所の平均値を代表値とした。
【0075】
次に、正孔輸送層上に、ホスト材料としての下記構造式(1)で表される化合物(融解温度:125℃)4.75質量部と、燐光発光材料としての下記構造式(5)で表される化合物(商品名:Ir(ppy)3、ケミプロ化成製)0.25質量部とを、メチルイソブチルケトン(沸点116℃、和光純薬社製)995質量部に溶解乃至分散し、モレキュラーシーブ(商品名:モレキュラーシーブ4A 1/16、和光純薬株式会社製)を添加し、グローブボックス中で孔径0.22μmのシリンジフィルターを用いて濾過して調製した発光層塗布液を、スプレーコートし、120℃で30分間乾燥し、160℃10分間アニールすることで、厚み30nmの発光層を形成した。さらに、前記発光層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、89°であった。前記発光層を顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)で観察したところ、ボイドは観測されず、均一な表面が得られた。
【化21】

【化22】

【0076】
次に、発光層上に、BAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium−(III))を真空蒸着法にて蒸着して、厚み40nmの電子輸送層を形成した。
次に、電子輸送層上にフッ化リチウム(LiF)を蒸着して、厚み1nmの電子注入層を形成した。
次に、電子注入層上に金属アルミニウムを蒸着し、厚み70nmの陰極を形成した。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止して、有機電界発光素子を作製した。この有機電界発光素子に12Vの直流電圧を印加して通電したところ、ダークスポットが発生することなく、均一な発光面を確認した。ここで、ダークスポットとは、光らない領域のことである。
【0077】
なお、前記構造式(1)で表される化合物は、下記合成スキーム1及び2に従い合成された。
【0078】
<合成スキーム1>

【0079】
<合成スキーム2>

【0080】
(実施例2)
実施例1において、発光層の形成において、ホスト材料として、上記構造式(1)で表される化合物を用い、溶媒として、メチルイソブチルケトンを用い、120℃で30分間乾燥し、160℃10分間アニールする代わりに、ホスト材料として、下記構造式(2)で表される化合物(融解温度:128℃)を用い、溶媒として、電子工業用キシレン(沸点144℃、関東化学製)及び脱水トルエン(沸点110℃、和光純薬製)の混合溶媒(混合比率2/8)を用い、125℃で30分間乾燥し、さらに160℃で10分間アニール処理したこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。さらに、前記発光層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、87.6°であった。前記発光層を顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)で観察したところ、ボイドは観測されず、均一な表面が得られた。
また、得られた有機電界発光素子に12Vの直流電圧を印加して通電したところ、ダークスポットが発生することなく、均一な発光面を確認した。
【化23】

【0081】
なお、前記構造式(2)で表される化合物は、上記合成スキーム1及び2のように合成された。
【0082】
(実施例3)
実施例1において、発光層の形成において、ホスト材料として、上記構造式(1)で表される化合物を用いる代わりに、下記構造式(3)で表される化合物(融解温度:155℃)を用い、また、実施例1において、発光層の形成において、120℃で30分間乾燥し、160℃10分間アニールする代わりに、120℃で30分間乾燥し、165℃10分間アニールしたこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。さらに、前記発光層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、89°であった。前記発光層を顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)で観察したところ、ボイドは観測されず、均一な表面が得られた。
また、得られた有機電界発光素子に12Vの直流電圧を印加して通電したところ、ダークスポットが発生することなく、均一な発光面を確認した。
【化24】

【0083】
なお、前記構造式(3)で表される化合物は、上記合成スキーム1及び下記合成スキーム3のように合成された。
<合成スキーム3>

【0084】
(実施例4)
−有機電界発光素子の作製−
0.7mm厚み、25mm角のガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。このガラス基板上に以下の各層を形成した。まず、陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み150nmにスパッタ蒸着した。得られた透明支持基板をエッチング及び洗浄した。
次に、陽極(ITO)上に、アリールアミン誘導体(商品名:PTPDES−2、ケミプロ化成製、Tg=205℃)2質量部を電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)98質量部に溶解乃至分散させた塗布液を、グローブボックス(露点−70℃、酸素濃度8ppm)内で、スピンコートした後、120℃で30分間乾燥処理し、160℃で10分間アニール処理して、厚み約40nmの正孔注入層を形成した。
さらに、前記正孔注入層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、78.4°であった。
次に、正孔注入層上に、ホスト材料としての下記構造式(4)で表される化合物(融解温度:170℃)4.75質量部と、燐光発光材料としての上記構造式(5)で表される化合物(商品名:Ir(ppy)3、ケミプロ化成製)製)0.25質量部とを、メチルイソブチルケトン(沸点116℃、和光純薬社製)995質量部に溶解乃至分散し、モレキュラーシーブ(商品名:モレキュラーシーブ4A 1/16、和光純薬株式会社製)を添加し、グローブボックス中で孔径0.22μmのシリンジフィルターを用いて濾過して調製した発光層塗布液をスプレーコートし、120℃で30分間乾燥し、190℃5分間アニールすることで、厚み40nmの発光層を形成した。さらに、前記発光層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、73.2°であった。前記発光層を顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)で観察したところ、ボイドは観測されず、均一な表面が得られた。
【化25】

【0085】
なお、上記構造式(4)で表される化合物は、特開2007−269772号公報に記載の方法に従い、合成した。
【0086】
次に、発光層上に、BAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium−(III))を真空蒸着法にて蒸着して、厚み40nmの電子輸送層を形成した。
次に、電子輸送層上にフッ化リチウム(LiF)を蒸着して、厚み1nmの電子注入層を形成した。
次に、電子注入層上に金属アルミニウムを蒸着し、厚み70nmの陰極を形成した。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止して、有機電界発光素子を作製した。この有機電界発光素子に12Vの直流電圧を印加して通電したところ、ダークスポットが発生することなく、均一な発光面を確認した。
【0087】
(実施例5)
実施例1において、正孔輸送層を形成せずに、正孔注入層上に発光層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
前記正孔注入層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、78.4°であった。また、前記発光層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ89°であった。また、前記発光層を顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)で観察したところ、ボイドは観測されず、均一な表面が得られた。さらに、得られた有機電界発光素子に12V直流電圧を印加して通電したところ、ダークスポットが発生することなく、均一な発光面を確認した。
【0088】
(比較例1)
実施例1において、発光層の形成において、160℃10分間のアニールを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
前記正孔注入層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、80°であった。また、前記発光層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、89°であった。また、前記発光層を顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)で観察したところ、ボイド、コーヒーステインナドナドなどの凹凸が観察された。また、直流電圧12Vを印加して通電したところ、輝点があり、不均一な発光面であった。
【0089】
(比較例2)
−有機電界発光素子の作製−
0.7mm厚み、25mm角のガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。このガラス基板上に以下の各層を形成した。まず、ガラス基板上に、陽極として陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み150nmにスパッタ蒸着した。得られた透明支持基板をエッチング及び洗浄した。
次に、陽極(ITO)上に、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)(商品名:CLEVIOS P AI4083、H.C.Sterck製、Tg=190℃)90質量部をエタノール(関東化学製)10質量部に溶解乃至分散させた塗布液を、スピンコートした後、100℃で10分間乾燥処理し、160℃で120分間真空乾燥処理して、厚み約40nmの正孔注入層を形成した。
さらに、前記正孔注入層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、12.4°であった。
【0090】
次に、正孔注入層上に、ホスト材料としての上記構造式(1)で表される化合物(融解温度:125℃)4.75質量部と、燐光発光材料としての上記構造式(5)で表される化合物(商品名:Ir(ppy)3、ケミプロ化成社製)0.25質量部とを、メチルイソブチルケトン(沸点116℃、和光純薬社製)995質量部に溶解乃至分散し、モレキュラーシーブ(商品名:モレキュラーシーブ4A 1/16、ナカライテスク株式会社製)を添加し、グローブボックス中で孔径0.22μmのシリンジフィルターを用いて濾過して調製した発光層塗布液を、スプレーコートし、120℃で30分間乾燥し、160℃10分間アニールすることで、厚み35nmの発光層を形成した。さらに、前記発光層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、89°であった。前記発光層を顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)で観察したところ、微小なボイドが多数発生しているのが観測された。
【化26】

【化27】

【0091】
次に、発光層上に、BAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium−(III))を真空蒸着法にて蒸着して、厚み40nmの電子輸送層を形成した。
次に、電子輸送層上にフッ化リチウム(LiF)を蒸着して、厚み1nmの電子注入層を形成した。
次に、電子注入層上に金属アルミニウムを蒸着し、厚み70nmの陰極を形成した。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止して、有機電界発光素子を作製した。この有機電界発光素子に12Vの直流電圧を印加して通電したところ、ダークスポットが発生し、ムラのある発光面であった。
【0092】
(比較例3)
比較例2において、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)90質量部をエタノール10質量部に溶解乃至分散させた正孔注入層塗布液をスピンコートした後、100℃で10分間乾燥処理し、160℃で120分間真空乾燥処理して、厚み約40nmの正孔注入層を形成する代わりに、以下のように調製した塗布液をスピンコートした後、120℃で30分間乾燥処理して、厚み約40nmの正孔注入層を形成した以外は、比較例2と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
−正孔注入層塗布液の調製−
ナフィオン(登録商標)(DE520)水性コロイド状分散液(5.0%)の60g、脱イオン水240g、及び、過硫酸ナトリウム1.0gを500mLのセパラブルフラスコへ量り入れ、Nフローしながら1時間撹拌した。次に、硫酸鉄(III)n水和物(和光純薬製、091−02832)を350μg添加した。さらに、3,4−エチレンジオキシチオフェン1.5gを添加し、4時間撹拌した。
イオン交換樹脂レバチット(登録商標)S100の10g、及び、レバチット(登録商標)MP62WSの10gを加え、1時間撹拌することによって反応を停止させた。2つのイオン交換樹脂は、先ず、使用前に水に何の色もなくなるまで別々に脱イオン水で洗浄した。
ろ過により、イオン交換樹脂を分離し、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))/ナフィオンの水分散液を得た。
得られた水分散液に1Nの塩酸を添加し、遠心分離処理後、固形分を回収し、脱イオン水を添加し、再度遠心分離処理を施すことによって、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ナフィオンとを含有するスラリーを回収した。
このスラリーと、溶剤(イソプロパノールとエチレングリコールとの9:1混合溶剤)とを混合することにより、固形分20質量%の正孔注入層用塗布液を調製した。
【0093】
前記正孔注入層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、119°であった。また、前記発光層を成膜したところ、前記発光層が前記正孔注入層から剥離し、粒子状になった。また、前記発光層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、89°であった。さらに、得られた有機電界発光素子に12V直流電圧を印加して通電したところ、発光が確認できなかった。
【0094】
(比較例4)
比較例2において、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)90質量部をエタノール10質量部に溶解乃至分散させた正孔注入層塗布液をスピンコートした後、100℃で10分間乾燥処理し、160℃で120分間真空乾燥処理して、厚み約40nmの正孔注入層を形成する代わりに、MoOをで蒸着し、厚み約20nmの正孔注入層を形成した以外は、比較例2と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【0095】
前記正孔注入層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、60°であった。また、前記発光層を顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)で観察したところ、微小なボイドが多数発生しているのが観測された。また、前記発光層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、89°であった。さらに、得られた有機電界発光素子に12V直流電圧を印加して通電したところ、ダークスポットが発生し、発光面にムラがあった。
(比較例5)
比較例4において、発光層塗布液を実施例4記載の材料に変更した以外には同様にして、有機電界発光素子を作製した。
前記正孔注入層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、60°であった。また、前記発光層を顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)で観察したところ、微小なボイドが多数発生しているのが観測された。また、前記発光層の純水に対する接触角を上記測定方法により測定したところ、73.2°であった。さらに、得られた有機電界発光素子に12V直流電圧を印加して通電したところ、ダークスポットが発生し、発光面にムラがあった。
【0096】
<Ra値の測定>
次に、作製した実施例1〜5及び比較例1〜5の有機電界発光素子について、以下のようにして、発光層におけるホスト材料が融解する前の発光層のRa値、及び、発光層におけるホスト材料が融解した後の発光層のRa値を下記の測定方法により測定した。測定結果を表1に示す。
なお、発光層におけるホスト材料が融解する前の発光層とは、ホスト材料の融解温度より低く、溶媒の沸点より高い温度で加熱した時点での発光層を意味し、発光層におけるホスト材料が融解した後の発光層とは、ホスト材料の融解温度より高い温度まで加熱した時点での発光層を意味する。
−ホスト材料が融解する前後の発光層のRa値の測定方法−
顕微鏡(商品名:Wyco NT1100、ビーコ社製)を用いて、観察エリア2.5mm×1.8mmの領域のRaを測定した。
発光層におけるホスト材料が融解する前の発光層のRa値は、以下のように測定し、発光層におけるホスト材料が融解した後の発光層のRa値は、以下のように測定した。
−発光層におけるホスト材料が融解する前の発光層のRa値の測定方法−
発光層を塗布後、乾燥のための加熱処理を行った発光層のRaを測定した。
−発光層におけるホスト材料が融解した後の発光層のRa値の測定方法−
発光層を塗布後、乾燥及びアニール処理のための加熱を行った発光層のRaを測定した。
【0097】
【表1】

なお、表1において、「均一発光」とは、面内がダークスポットや輝点がなく発光していることを意味し、「欠陥あり」とは、ダークスポットの発生を意味し、「非発光」とは、通電しても発光していないことを意味する。
【0098】
ホスト材料の融解温度よりも高く、かつ溶媒の沸点よりも高い温度で加熱して、形成された発光層の純水に対する接触角A(°)と、隣接層の純水に対する接触角B(°)との差の絶対値が13(°)以下である実施例1〜5の有機電界発光素子は、比較例1〜5の有機電界発光素子と比較して、発光層の表面均一性を向上させる(均一発光を実現する)ことができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の方法により製造された有機電界発光素子は、優れた発光効率と発光寿命を両立することができるので、例えば、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0100】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
10 有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極の間に、発光層及び該発光層に隣接する隣接層を含む有機層を有してなる有機電界発光素子の製造方法であって、
前記発光層を、発光材料と、ホスト材料とを溶媒に溶解乃至分散させた塗布液を前記隣接層に塗布し、前記ホスト材料の融解温度よりも高く、かつ前記溶媒の沸点よりも高い温度で加熱して、形成することを含み、
前記発光層の純水に対する接触角A(°)と、前記隣接層の純水に対する接触角B(°)との差の絶対値が13(°)以下であることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項2】
発光材料の分子量が1,500以下であり、ホスト材料の分子量が1,500以下である請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項3】
ホスト材料が、下記一般式(1)及び(2)のいずれかに記載の化合物である請求項1から2のいずれかに記載の有機電界発光素子の製造方法。
【化28】

前記一般式(1)において、Rは、t−ブチル基、t−アミル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表し、R〜R23は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シアノ基、フッ素、トリフロオロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表す。
【化29】

前記一般式(1)において、Rは、t−ブチル基、t−アミル基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表し、R〜R23は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シアノ基、フッ素、トリフロオロ基、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びフェニル基のいずれかを表す。
【請求項4】
ホスト材料が、下記構造式(1)から(4)のいずれかで表される化合物である請求項1から2のいずれかに記載の有機電界発光素子の製造方法。
【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【請求項5】
溶媒が、沸点100℃以上である芳香族炭化水素、及びケトンから選択される少なくとも1種を含む、請求項1から4のいずれかに記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項6】
加熱の温度が、ホスト材料の融解温度よりも20℃以上高い請求項1から5のいずれかに記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項7】
発光層は、ホスト材料が融解する前のRa値が5nm以上であり、前記ホスト材料が融解した後のRa値が1nm以下である請求項1から6のいずれかに記載の有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−192524(P2011−192524A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57556(P2010−57556)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】