説明

有機電界発光素子及び化合物

【課題】高い効率とともに、駆動電圧が低く、耐久性に優れた有機電界発光素子、並びに、該有機電界発光素子に有用な化合物を提供する。
【解決手段】基板上に、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記発光層に燐光発光材料を少なくとも一種含み、かつ、前記少なくとも一層の有機層のいずれか少なくとも一層にジベンゾチオフェン又はジベンゾフラン構造を有する特定の化合物を含む有機電界発光素子及び該化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光素子及びその素子に用いる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「素子」、「有機EL素子」ともいう)は、低電圧駆動で高輝度の発光が得られることから活発に研究開発が行われている。有機電界発光素子は、一対の電極間に有機層を有し、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが有機層において再結合し、生成した励起子のエネルギーを発光に利用するものである。
【0003】
特許文献1は、発光効率、画素欠陥、耐熱性に優れ、寿命の長い有機EL素子を提供すべく、ベンゾチオフェン構造又はベンゾフラン構造を有する特定の化合物が有効であることを開示している。特許文献3〜11及び非特許文献1においても、有機EL素子に有用であるとして、ベンゾチオフェン構造又はベンゾフラン構造を有する特定の化合物を開示している。
また、特許文献2では、諸性能に優れた有機電界発光素子を提供すべく、特定の構造を有するイリジウム系化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第07/069569号
【特許文献2】国際公開第09/073245号
【特許文献3】国際公開第08/085344号
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0134538号明細書
【特許文献5】国際公開第09/008099号
【特許文献6】特開2004−214050号公報
【特許文献7】特開2005−314239号公報
【特許文献8】特開2007−63501号公報
【特許文献9】特開2009−263579号公報
【特許文献10】特開2009−267257号公報
【特許文献11】国際公開第08/72596号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bull.Chem.Soc.Japan,9(1934)55
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜11におけるような従来の有機電界発光素子について、更に、効率、耐久性に優れるとともに、低い電圧で駆動が可能であることが求められている。
すなわち、本発明の目的は、高い効率とともに、駆動電圧が低く、耐久性に優れた有機電界発光素子を提供することである。
また、本発明の別の目的は、ホスト材料、電子輸送材料などとして有機電界発光素子に有用な化合物、該化合物を含有する組成物及び膜を提供することである。更に、本発明の別の目的は、本発明の有機電界発光素子を含む発光装置、表示装置及び照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの検討により、本発明に従い芳香環への結合位置が3位であるジベンゾチオフェン構造又はジベンゾフラン構造を有する特定の化合物を用いることで、高い効率とともに、駆動電圧が低く、耐久性に優れた有機電界発光素子が提供されることを見出した。駆動電圧の低下は、電子親和力の増大によるものと推測している。
【0008】
すなわち、本発明は下記の手段により達成することができる。
【0009】
〔1〕
基板上に、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記少なくとも一層の有機層のいずれか少なくとも一層に、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1)において、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、R111〜R114は、各々独立に、水素原子、アルキル基、フッ素原子、又はシアノ基を表し、R115〜R117は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、nは1以上の整数を表す。R111〜R116の隣り合う2つが互いに結合して芳香族6員環を形成することはない。Laは、n価の芳香族基を表すが、縮合多環芳香族炭化水素基を表すことはない。Laが表す前記n価の芳香族基は更に置換基を有してもよい。
nが2以上であり、Laとして又はLaの一部として、一般式(1)に表記されているジベンゾフラン(Xが酸素原子のとき)又はジベンゾチオフェン(Xが硫黄原子のとき)が同一のベンゼン環に複数個結合する構造を有するとき、該ベンゼン環は、少なくとも一つの水素原子を有する。)
【0012】
〔2〕
Laが下記一般式(AR)で表される芳香族基又は一般式(AR)で表される芳香族基の複数が単結合で連結した基を含むn価の芳香族基であることを特徴とする上記〔1〕に記載の有機電界発光素子。
【化2】

(Aは、芳香環を形成する=C(R)−又は=N−を表し、Rは置換基を表す。Aとしての窒素原子の数は0〜3個である。なお、Aとして窒素原子を1〜3個有する場合は、複数のRが結合して環構造を形成してもよい。*は結合手を意味する。)
【0013】
〔3〕
Laが、前記一般式(AR)で表される芳香族基が2〜10個連結した芳香族基であることを特徴とする上記〔2〕に記載の有機電界発光素子。
【0014】
〔4〕
前記発光層にイリジウム錯体を含有することを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【0015】
〔5〕
前記イリジウム錯体が、下記一般式(T−1)で表されることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【0016】
【化3】

【0017】
(一般式(T−1)中、RT3’、RT3、RT4、RT5及びRT6は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。
T3、RT4、RT5及びRT6は隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基を有していてもよい。
T3’とRT6は、−C(R−C(R−、−CR=CR−、−C(R−、−O−、−NR−、−O−C(R−、−NR−C(R−及び−N=CR−から選択される連結基によって連結されて環を形成してもよく、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、更に置換基を有していてもよい。
環Qは窒素原子を1つ以上含む5員又は6員の芳香族複素環又は縮合芳香族複素環である。
(X−Y)は、補助配位子を表す。mは、1〜3の整数を表す。nは、0〜2の整数を表す。m+n=3である。)
【0018】
〔6〕
一般式(1)で表される化合物。
【0019】
【化4】

【0020】
(一般式(1)において、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、R111〜R114は、各々独立に、水素原子、アルキル基、フッ素原子、又はシアノ基を表し、R115〜R117は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、nは1以上の整数を表す。R111〜R116の隣り合う2つが互いに結合して芳香族6員環を形成することはない。Laは、n価の芳香族基を表すが、縮合多環芳香族炭化水素基を表すことはない。Laが表す前記n価の芳香族基は更に置換基を有してもよい。
nが2以上であり、Laとして又はLaの一部として、一般式(1)に表記されているジベンゾフラン(Xが酸素原子のとき)又はジベンゾチオフェン(Xが硫黄原子のとき)が同一のベンゼン環に複数個結合する構造を有するとき、該ベンゼン環は、少なくとも一つの水素原子を有する。)
【0021】
〔7〕
上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の、前記一般式(1)で表される化合物を含有する膜。〔8〕
上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。〔9〕
上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
〔10〕
上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高い効率とともに、駆動電圧が低く、耐久性に優れた有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る発光装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に係る照明装置の一例を示す概略図である。
【図4】合成例1に従って合成された化合物(1−4)のH−NMRスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
下記一般式(1)の説明における水素原子は同位体(重水素原子等)も含み、また更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
本発明において、「置換基」というとき、その置換基は置換されていてもよい。例えば、本発明で「アルキル基」と言う時、フッ素原子で置換されたアルキル基(例えばトリフルオロメチル基)やアリール基で置換されたアルキル基(例えばトリフェニルメチル基)なども含むが、「炭素数1〜6のアルキル基」と言うとき、置換されたものも含めた全ての基として炭素数が1〜6であることを示す。
【0025】
本発明において、置換基群Aを以下のように定義する。
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルフィノ基、イミノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0026】
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記少なくとも一層の有機層のいずれか少なくとも一層に一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0027】
また、本発明は一般式(1)で表される化合物にも関する。一般式(1)で表される化合物は電荷輸送材料又は有機電界発光素子用材料として有用である。
〔一般式(1)で表される化合物〕
【0028】
【化5】

【0029】
一般式(1)において、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、R111〜R114は、各々独立に、水素原子、アルキル基、フッ素原子、又はシアノ基を表し、R115〜R117は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、nは1以上の整数を表す。R111〜R116の隣り合う2つが互いに結合して芳香族6員環を形成することはない。Laは、n価の芳香族基を表すが、縮合多環芳香族炭化水素基を表すことはない。Laが表す前記n価の芳香族基は更に置換基を有してもよい。
nが2以上であり、Laとして又はLaの一部として、一般式(1)に表記されているジベンゾフラン(Xが酸素原子のとき)又はジベンゾチオフェン(Xが硫黄原子のとき)が同一のベンゼン環に複数個結合する構造を有するとき、該ベンゼン環は、少なくとも一つの水素原子を有する。該ベンゼン環上の置換基としては、置換基群Aにおけるものが挙げられるが、アルコキシ基ではない置換基が好ましい。
【0030】
nは、1〜6が好ましく、2〜4がより好ましく、2又は3が更に好ましい。
Xは、耐久性の点において硫黄原子が好ましい。
111〜R114は、各々独立に、水素原子、アルキル基、フッ素原子、又はシアノ基を表す。これによりLUMOレベルが好ましい範囲となり、駆動電圧の低下、耐久性が向上する。R111〜R114は水素原子、フッ素原子、又はシアノ基を表すことがLUMOレベルの観点でより好ましく、水素原子又はシアノ基を表すことが更に好ましく、水素原子を表すことが最も好ましい。
111〜R114が表すアルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
【0031】
115〜R117が表す置換基は、特に限定されるものではなく、例えば、前記置換基群Aとして例示の置換基を挙げることができる。
115〜R117は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はシアノ基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基であることがより好ましく、水素原子又はアリール基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
115〜R117が表すアルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
【0032】
115〜R117で表されるアルキル基は、特に好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、t−アミル基、s−イソアミル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、及びシクロヘキシル基のいずれかであり、最も好ましくはメチル基、i−プロピル基、n−ブチル基、及びt−ブチル基のいずれかである。
【0033】
115〜R117が表すアリール基は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、ビフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられ、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニルが好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0034】
115〜R117が表す置換基は更に置換基を有していてもよく、更なる置換基としては、アルキル基又はアリール基を挙げることができる。更なる置換基としてのアルキル基は、R115〜R117が表すアルキル基と同義であり、好ましいものも同様である。更なる置換基としてのアリール基は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜14であり、好ましくは、フェニル基である。
【0035】
Laは、n価の芳香族基を表すが、縮合多環芳香族炭化水素基を表すことはない。Laとしてのn価の芳香族基は、例えば、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アリーレン基とヘテロアリーレン基が鎖状に連なった連結基を含む基であることが好ましく、電荷輸送性の観点からアリーレン基を含む基が好ましい。
耐熱性、耐久性及び昇華性の観点から、該連結基を含む基における芳香環の総数は、更なる置換基が有するものも含め、2〜15が好ましく、2〜10がより好ましく、3〜8が特に好ましい。
【0036】
ここで、アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、クォーターフェニレン基、又はキンクフェニレン基が挙げられる。
ヘテロアリーレン基は、例えば、ピリジン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基が挙げられ、ピリジン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基が好ましい。
これらの基は更に置換基を有していてもよい。また、ヘテロアリーレン基においては、隣り合う置換基が連結して環を形成してもよい。これらの環構造としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、フラン環などの5又は6員の芳香環を挙げることができる。
【0037】
更なる置換基としては、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を挙げることができる。更なる置換基としてのアルキル基は、R111〜R117が表すアルキル基と同義であり、好ましいものも同様である。更なる置換基としてのアリール基は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜14であり、好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基であり、より好ましくはフェニル基である。更なる置換基としてのヘテロアリール基は、好ましくは炭素数4〜30、より好ましくは炭素数4〜20であり、例えばピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、チオフェニル基、フラニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基等が挙げられ、好ましくはピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、又はトリアジニル基である。
【0038】
また、Laとしてのn価の芳香族基は、下記一般式(AR)で表される芳香族基又は一般式(AR)で表される芳香族基の複数が単結合で連結した基を含むn価の芳香族基であることが好ましい。
【0039】
【化6】

【0040】
Aは、芳香環を形成する=C(R)−又は=N−を表し、Rは置換基を表す。Aとしての窒素原子の数は0〜3個である。*は結合手を意味する。なお、Aとして窒素原子を1〜3個有する場合は、複数のRが結合して環構造を形成してもよい。上記表記では、好ましい場合として、結合手*が2つのものを示したが、3つ以上であってもよい。
Laとしてのn価の芳香族基について、nは、2〜6が好ましく、2〜5がより好ましく、2〜4がより好ましく、2又は3が特に好ましく、2が最も好ましい。
Laとしてのn価の芳香族基は、一般式(AR)で表される芳香族基を1〜20個有することが好ましく、2〜10個がより好ましく、3〜10個が更に好ましく、4〜8個が特に好ましい。
Aとしての窒素原子は少ないほうが好ましい。窒素原子は、一般式(AR)に示す炭素原子のオルト位又はパラ位の原子として存在することが好ましい。
Rとしての置換基は、R115〜R117が表す置換基と同様であり、好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素原子又はシアノ基を挙げることができ、フッ素原子又はシアノ基が好ましく、シアノ基がより好ましい。
低電圧化の点ではシアノ基が特に好ましい。Laで表される芳香族基として、シアノ基を1個又は2個有することが好ましく、1個有することが特に好ましい。
また、Aとして窒素原子を1〜3個有する場合は、Rとしての置換基の隣接する複数が結合して芳香環など環構造を形成してもよい。即ち、一般式(AR)における芳香環は、縮合含窒素芳香族環となっていてもよい。ただし、発光効率の観点から縮環構造は有さない方が好ましい。
【0041】
また、Laとしてのn価の芳香族基は、下記一般式(A)で表される基であることが特に好ましい。*は結合手を意味する。下記表記では、好ましい場合として、結合手*が2つのものを示したが、3つ以上であってもよい。
【0042】
【化7】

【0043】
411は、各々独立に置換基を表す。n411は、各々独立に0〜4の整数を表す。mは1以上の整数を表し、好ましくは1〜15の整数を表し、より好ましくは2〜10の整数を表し、更に好ましくは3〜8の整数を表す。昇華性の点からmは10以下が好ましい。
【0044】
411が表す置換基は、R115〜R117が表す置換基と同義であり、好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素原子又はシアノ基を挙げることができ、フッ素原子又はシアノ基が好ましい。
隣り合うベンゼン環上のR411が結合して縮合芳香族ヘテロ環環構造(例えば、チオフェン環、フラン環)を形成してもよい。ただし、発光効率や合成適性の観点から環構造は有さない方が好ましい。
411は各々独立に0〜5の整数を表し、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。
411が2以上となると連結する基との2面角が大きくなり、耐久性の低下要因となるためである。
【0045】
一般式(A)で表される基の連結数(m)が多いほうが、耐熱性及び耐久性の点で好ましい。
また、一般式(A)で表される基の連結は、外部量子効率の点ではメタ位での連結が好ましい。これは、例えば、緑色燐光材料を発光層のドーパントとして用いる場合などでは、励起三重項エネルギーがドーパントより小さくなりやすいためと考えられる。
なお、耐熱性及び耐久性の点ではパラ位での連結が好ましい。ただし、パラ位での連結は一般式(A)で表される基の数が3つまでであることが好ましく、一般式(A)で表される基が4つ以上パラ位で連結しないことが好ましい。これは、例えば、緑色燐光材料を発光層のドーパントとして用いる場合などでは、励起三重項エネルギーがドーパントより小さくなりやすいためと考えられる。
【0046】
一般式(A)で表される基の具体例としては、例えば、以下に示す基を挙げることができ、また、これらの基の複数を組み合わせた基を挙げることができる。
下記において、*は結合手を意味する。下記においては、代表的な結合手を有する場合の例を挙げているが、Laとしてのn価の芳香族基を形成する場合、下記の表示にかかわらず、n個の*を有する。
例えば、下記の例において、nが1価の芳香族基を形成するとき、2個目以上の*は水素原子が結合した基であり、nが2以上のとき、n個の*に一般式(1)に示す括弧内の基が結合し、残りの*に水素原子が結合する。
【0047】
【化8】

【0048】
Laとして、上記L7、L11、L13又はL15の構造を有するn価の芳香族基が好ましい。
【0049】
一般式(1)で表される化合物は、炭素原子、水素原子及び酸素原子若しくは硫黄原子のみからなる化合物であることが好ましい。これにより耐久性の向上がもたらされる。
【0050】
一般式(1)で表される化合物の分子量は通常400以上1500以下であり、450以上1200以下であることが好ましく、500以上1100以下であることがより好ましく、600以上1000以下であることが更に好ましい。蒸着膜形成性の点で分子量は400以上が望まれ、分子量が450以上であると良質なアモルファス薄膜形成に有利であり、分子量が1200以下であると溶解性や昇華性が向上し、化合物の純度向上に有利である。
また、一般式(1)においてnが1であり、R112がフェニル基であり、Laとしての芳香族基がベンゼン環1個のみからなる場合は、蒸着膜形成性の点で、該ベンゼン環は、置換基を有することが好ましく、置換基としては置換基群Aにおけるものが挙げられる。
【0051】
一般式(1)で表される化合物を有機電界発光素子の発光層のホスト材料や発光層に隣接する層の電荷輸送材料として使用する場合、発光材料より薄膜状態でのエネルギーギャップ(発光材料が燐光発光材料の場合には、薄膜状態での最低励起三重項(T)エネルギー)が大きいと、発光がクエンチしてしまうことを防ぎ、効率向上に有利である。一方、化合物の化学的安定性の観点からは、エネルギーギャップ及びTエネルギーは大き過ぎない方が好ましい。
一般式(1)で表される化合物の膜状態でのTエネルギーは、2.39eV(55kcal/mol)以上3.51eV(80kcal/mol)以下であることが好ましく、2.52eV(58kcal/mol)以上3.04eV(70kcal/mol)以下であることがより好ましい。特に、発光材料として燐光発光材料を用いる場合には、Tエネルギーが上記範囲となることが好ましい。
【0052】
エネルギーは、材料の薄膜の燐光発光スペクトルを測定し、その短波長端から求めることができる。例えば、洗浄した石英ガラス基板上に、材料を真空蒸着法により約50nmの膜厚に成膜し、薄膜の燐光発光スペクトルを液体窒素温度下でF−7000日立分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定する。得られた発光スペクトルの短波長側の立ち上がり波長をエネルギー単位に換算することによりTエネルギーを求めることができる。
【0053】
有機電界発光素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、一般式(1)で表される化合物のガラス転移温度(Tg)は100℃以上400℃以下であることが好ましく、120℃以上400℃以下であることがより好ましく、140℃以上400℃以下であることが更に好ましい。
【0054】
一般式(1)で表される化合物の純度が低いと、不純物が電荷輸送のトラップとして働いたり、素子の劣化を促進させたりするため、一般式(1)で表される化合物の純度は高いほど好ましい。純度は例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定でき、254nmの光吸収強度で検出したときの一般式(1)で表される化合物の面積比は、好ましくは95.0%以上であり、より好ましくは97.0%以上であり、特に好ましくは99.0%以上であり、最も好ましくは99.9%以上である。
【0055】
国際公開第2008/117889号に記載のカルバゾール系材料で知られているように、一般式(1)で表される化合物の水素原子の一部又は全部を重水素原子で置換した材料も用いることができる。
【0056】
一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に列挙するが、本発明がこれらに限定されることはない。
【0057】
【化9】

【0058】
【化10】

【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
【化13】

【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
【化18】

【0067】
【化19】

【0068】
【化20】

【0069】
上記一般式(1)で表される化合物は、例えばTetrahedron,58(2002),p.1709-1718等に記載の方法を用いて下記中間体(1)を得る方法や、類似の方法等を用いて下記中間(2)を得る方法を用いて、以下のスキームのように合成できる。
【0070】
【化21】

【0071】
本発明において、一般式(1)で表される化合物は、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に含有されてもよい。一般式(1)で表される化合物の導入層としては、発光層、発光層と陰極との間の層、発光層と陽極との間の層のいずれか、若しくは複数に含有されるのが好ましく、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有されるのがより好ましく、発光層、電子輸送層、電子注入層のいずれかに含有されることが更に好ましい。
本発明では、高温駆動後の発光効率の低下をより抑えるために、一般式(1)で表される化合物を発光層、発光層と陰極との間で発光層に隣接する有機層(発光層に隣接する陰極側の層)、及び発光層側で陰極に隣接する電子注入層のいずれかに含有されることが好ましく、発光層及び発光層に隣接する陰極側の層のいずれかに含有されることがより好ましく、発光層に含有されることが更に好ましい。また、一般式(1)で表される化合物を発光層及び発光層に隣接する陰極側の層の両層に含有させてもよい。
【0072】
一般式(1)で表される化合物を発光層中に含有させる場合、本発明の一般式(1)で表される化合物は発光層の全質量に対して0.1〜99質量%含ませることが好ましく、1〜97質量%含ませることがより好ましく、10〜96質量%含ませることが更に好ましい。一般式(1)で表される化合物を発光層以外の層に更に含有させる場合は、該発光層以外の層の全質量に対して70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0073】
〔一般式(1)で表される電荷輸送材料〕
本発明は、上記一般式(1)で表される電荷輸送材料にも関する。
【0074】
〔本発明の一般式(1)で表される化合物及び電荷輸送材料の用途〕
本発明の一般式(1)で表される化合物及び電荷輸送材料は、電子写真、有機トランジスタ、有機光電変換素子(エネルギー変換用途、センサー用途等)、有機電界発光素子等の有機エレクトロニクス素子に好ましく用いることができ、有機電界発光素子に用いるのが特に好ましい。
【0075】
〔一般式(1)で表される化合物を含有する組成物〕
本発明は一般式(1)で表される化合物(電荷輸送材料)を含む組成物にも関する。本発明の組成物において、一般式(1)で表される化合物の含有量は、組成物中の全固形分に対して30〜99質量%であることが好ましく、50〜97質量%であることがより好ましく、70〜96質量%であることが更に好ましい。本発明の組成物における他に含有しても良い成分としては、有機物でも無機物でもよく、有機物としては、後述するホスト材料、蛍光発光材料、燐光発光材料、炭化水素材料として挙げた材料が適用でき、好ましくはホスト材料、燐光発光材料、炭化水素材料である。
本発明の組成物は蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等の湿式製膜法により有機電界発光素子の有機層を形成することができる。
【0076】
〔一般式(1)で表される化合物を含有する膜〕
本発明は一般式(1)で表される電荷輸送材料を含有する薄膜にも関する。本発明の膜(薄膜)は、本発明の組成物を用いて蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等の湿式製膜法により形成することができる。薄膜の膜厚は用途によっていかなる厚みでもよいが、好ましくは0.1nm〜1mmであり、より好ましくは0.5nm〜1μmであり、更に好ましくは1nm〜200nmであり、特に好ましくは1nm〜100nmである。
【0077】
〔有機電界発光素子〕
本発明の有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記発光層に燐光発光材料を少なくとも一種含み、かつ、前記少なくとも一層の有機層のいずれか少なくとも一層に本発明の一般式(1)で表される化合物を含む。
発光素子の性質上、一対の電極である陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
有機層としては、発光層以外に、正孔注入層、正孔輸送層、ブロック層(正孔ブロック層、励起子ブロック層など)、電子輸送層などが挙げられる。これらの有機層は、それぞれ複数層設けてもよく、複数層設ける場合には同一の材料で形成してもよいし、層毎に異なる材料で形成してもよい。
図1に、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示す。図1の有機電界発光素子10は、基板2上に、一対の電極(陽極3と陰極9)の間に発光層6を含む有機層を有する。有機層としては、陽極側3から正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0078】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記半透明電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記半透明電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0079】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0080】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0081】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0082】
(有機層の形成)
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法等の溶液塗布法のいずれによっても好適に形成することができる。
【0083】
(発光層)
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。本発明の有機電界発光素子における発光層は、少なくとも一種の燐光発光材料を含有する。
【0084】
(発光材料)
本発明では、発光層に含有される少なくとも一種の燐光発光材料に加えて、発光材料として、蛍光発光材料や、発光層に含有される燐光発光材料とは異なる燐光発光材料を用いることができる。
これら蛍光発光材料や燐光発光材料については、例えば、特開2008−270736号公報の段落番号[0100]〜[0164]、特開2007−266458号公報の段落番号[0088]〜[0090]に詳述されており、これら公報の記載の事項を本発明に適用することができる。
【0085】
本発明に使用できる燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光材料としては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体等の燐光発光性金属錯体化合物が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、Ir錯体、Pt錯体が特に好ましく、Ir錯体が最も好ましい。
これら燐光発光性金属錯体化合物は、発光層において、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物と共に含有されるのが好ましい。
【0086】
本発明における発光層に含有される燐光発光材料としては、以下に示す一般式(T−1)で表されるイリジウム錯体、又は以下の一般式(C−1)で表される白金錯体を用いることが好ましい。
【0087】
〔一般式(T−1)で表される化合物〕
一般式(T−1)で表される化合物について説明する。
【0088】
【化22】

【0089】
(一般式(T−1)中、RT3’、RT3、RT4、RT5及びRT6は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。
T3、RT4、RT5及びRT6は隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基を有していてもよい。
T3’とRT6は、−C(R−C(R−、−CR=CR−、−C(R−、−O−、−NR−、−O−C(R−、−NR−C(R−及び−N=CR−から選択される連結基によって連結されて環を形成してもよく、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、更に置換基を有していてもよい。
環Qは窒素を1つ以上含む5員又は6員の芳香族複素環又は縮合芳香族複素環である。
(X−Y)は、補助配位子を表す。mは1〜3の整数を表す。nは0〜2の整数を表す。m+n=3である。)
【0090】
T3’、RT3、RT4、RT5及びRT6が表す置換基としては、それぞれ独立に前記置換基群Aを挙げることができ、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−CO、−C(O)R、−N(R、−NO、−OR、フッ素原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Tを有していてもよい。
【0091】
アルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、後述の置換基Tを挙げることができる。RT3’、RT3、RT4、RT5、RT6で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基、t−ブチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、後述の置換基Tを挙げることができる。RT3’、RT3、RT4、RT5、RT6で表されるシクロアルキル基として、好ましくは環員数4〜7のシクロアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数5〜6のシクロアルキル基であり、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
T3’、RT3、RT4、RT5、RT6で表されるアルケニル基としては好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、1−プロペニル、1−イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
T3’、RT3、RT4、RT5、RT6で表されるアルキニル基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばエチニル、プロパルギル、1−プロピニル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
【0092】
T3’、RT3、RT4、RT5、RT6で表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0093】
T3’、RT3、RT4、RT5、RT6で表されるヘテロアリール基としては、好ましくは、炭素数5〜8のヘテロアリール基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンズオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、チアゾリニル基、スルホラニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピリドインドリル基などが挙げられる。好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、チエニル基であり、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジニル基である。
【0094】
T3’、RT3、RT4、RT5及びRT6として好ましくは、水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ペルフルオロアルキル基、ジアルキルアミノ基、フッ素原子、アリール基、ヘテロアリール基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、アリール基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。置換基Tとしては、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子、シアノ基、ジアルキルアミノ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0095】
T3、RT4、RT5及びRT6は隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、RT3、RT4が互いに結合して縮合4〜7員環を形成することが好ましい。該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基を有していてもよく、好ましくは置換基Tを有していてもよい。形成されるシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールの定義及び好ましい範囲はRT3’、RT3、RT4、RT5、RT6で定義したシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基と同じである。
【0096】
環Qが表す芳香族複素環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、等が挙げられる。好ましくはピリジン環、ピラジン環であり、より好ましくはピリジン環である。
【0097】
環Qが表す縮合芳香族複素環としては、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環等が挙げられる。好ましくはキノリン環、イソキノリン環であり、より好ましくはキノリン環である。
【0098】
mは1〜3であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。すなわち、nは0又は1であることが好ましい。錯体中の配位子の種類は1又は2種類から構成されることが好ましく、更に好ましくは1種類である。錯体分子内に反応性基を導入する際には合成容易性という観点から配位子が2種類からなることも好ましい。
【0099】
一般式(T−1)で表される金属錯体は、一般式(T−1)における下記一般式(T−1−A)で表される配位子若しくはその互変異性体と、(X−Y)で表される配位子若しくはその互変異性体との組み合わせを含んで構成されるか、該金属錯体の配位子の全てが下記一般式(T−1−A)で表される配位子又はその互変異性体のみで構成されていてもよい。
【0100】
【化23】

【0101】
(一般式(T−1−A)中、RT3’、RT3、RT4、RT5、RT6及びQは、一般式(T−1)における、RT3’、RT3、RT4、RT5、RT6及びQと同義である。*はイリジウムへの配位位置を表す。)
【0102】
更に従来公知の金属錯体形成に用いられる、所謂配位子として当該業者が周知の配位子(配位化合物ともいう)を必要に応じて(X−Y)で表される配位子として有していてもよい。
【0103】
従来公知の金属錯体に用いられる配位子としては、種々の公知の配位子があるが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社 H.Yersin著 1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社 山本明夫著 1982年発行等に記載の配位子(例えば、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロアリール配位子(例えば、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)が挙げられる。(X−Y)で表される配位子として好ましくは、ジケトン類あるいはピコリン酸誘導体であり、錯体の安定性と高い発光効率が得られる観点から以下に示されるアセチルアセトネート(acac)であることが最も好ましい。
【0104】
【化24】

【0105】
*はイリジウムへの配位位置を表す。
以下に、(X−Y)で表される配位子の例を具体的に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0106】
【化25】

【0107】
上記(X−Y)で表される配位子の例において、*は一般式(T−1)におけるイリジウムへの配位位置を表す。Rx、Ry及びRzはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。該置換基としては前記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。好ましくは、Rx、Rzはそれぞれ独立にアルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、フッ素原子、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくはメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、フェニル基である。Ryは好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基のいずれかである。これら配位子は素子中で電荷を輸送したり励起によって電子が集中する部位ではないと考えられるため、Rx、Ry、Rzは化学的に安定な置換基であれば良く、本発明の効果にも影響を及ぼさない。
錯体合成が容易であるため好ましくは(I−1)、(I−4)、(I−5)であり、最も好ましくは(I−1)である。これらの配位子を有する錯体は、対応する配位子前駆体を用いることで公知の合成例と同様に合成できる。例えば国際公開2009−073245号46ページに記載の方法と同様に、市販のジフルオロアセチルアセトンを用いて以下に示す方法で合成する事ができる。
【0108】
【化26】

【0109】
また、配位子として一般式(I‐15)に示すモノアニオン性配位子を用いる事もできる。
【0110】
【化27】

【0111】
一般式(I‐15)におけるRT7〜RT10は、一般式(T−1)におけるRT3〜RT6と同義であり、好ましい範囲も同様である。RT7’〜R T10’は、RT3’と同義であり、好ましい範囲もRT3’と同様である。*はイリジウムへの配位位置を表す。
【0112】
前記一般式(T−1)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(T−2)で表される化合物である。
【0113】
【化28】

【0114】
(一般式(T−2)中、RT3’〜RT6’及びRT3〜RT6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−CO、−C(O)R、−N(R、−NO、−OR、フッ素原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Tを有していてもよい。
T3、RT4、RT5及びRT6は隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は更に置換基Tを有していてもよい。
T3’とRT6は、−C(R−C(R−、−CR=CR−、−C(R−、−O−、−NR−、−O−C(R−、−NR−C(R−及び−N=CR−から選択される連結基によって連結されて環を形成してもよい。
はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Tを有していてもよい。
置換基Tはそれぞれ独立に、フッ素原子、−R’、−OR’、−N(R’)、−SR’、−C(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)N(R’)、−CN、−NO、−SO、−SOR’、−SOR’、又は−SOR’を表し、R’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、配位子を表す。mは1〜3の整数、nは0〜2の整数を表す。m+nは3である。)
【0115】
一般式(T−2)におけるRT3’、RT3〜RT6、(X−Y)、m及びnの好ましい範囲は、一般式(T−1)におけるRT3’、RT3〜RT6、(X−Y)、m及びnの好ましい範囲と同様である。
T4’は水素原子、アルキル基、アリール基、フッ素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
T5’及びRT6’は水素原子を表すか、又は互いに結合して縮合4〜7員環式基を形成することが好ましく、該縮合4〜7員環式基は、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであることがより好ましく、アリールであることが更に好ましい。
T4’〜R T6’における置換基Tとしてはアルキル基、アルコキシ基、フッ素原子、シアノ基、アルキルアミノ基、ジアリールアミノ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0116】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい形態の一つは、一般式(T−2)においてRT3’、RT4’、RT5’、RT6’、RT3、RT4、RT5及びRT6のうち、隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合環を形成しない場合である。
【0117】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい形態の一つは、下記一般式(T−3)で表される場合である。
【0118】
【化29】

【0119】
一般式(T−3)におけるRT3’〜R T6’、RT3〜RT6は、一般式(T−2)におけるRT3’〜RT6’、RT3〜RT6と同義であり、好ましい範囲も同様である。
T3は2を表す。
T7〜RT10は、RT3〜RT6と同義であり、好ましい範囲も同様である。RT7’〜R T10’は、RT3’〜RT6’と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0120】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(T−4)で表される化合物である。
【0121】
【化30】

【0122】
一般式(T−4)におけるRT3’〜RT7’、RT3〜RT6、(X−Y)、m及びnは、一般式(T−2)におけるRT3’〜RT6’、RT3〜RT6、(X−Y)、m及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。RT3’〜RT7’及びRT3〜RT6のうち、0〜2つがアルキル基又はフェニル基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましく、RT3’〜RT6’及びRT3〜RT6のうち、1つ又は2つがアルキル基で残りが全て水素原子である場合が更に好ましい。
【0123】
前記一般式(T−2)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(T−5)で表される化合物である。
【0124】
【化31】

【0125】
一般式(T−5)におけるRT3’〜RT7’、RT3〜RT6、(X−Y)、m及びnは、一般式(T−2)におけるRT3’〜RT6’、RT3〜RT6、(X−Y)、m及びnと同義であり、好ましいものも同様である。
【0126】
一般式(T−1)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(T−6)で表される場合である。
【0127】
【化32】

【0128】
一般式(T−6)中、R1a〜R1iの定義や好ましい範囲は一般式(T−1)におけるRT3〜RT6におけるものと同様である。またR1a〜R1iのうち、0〜2つがアルキル基又はアリール基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましい。(X−Y)、m及びnの定義や好ましい範囲は一般式(T−1)における(X−Y)、m、及びnと同様である。
【0129】
一般式(T−1)で表される化合物の好ましい具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0130】
【化33】

【0131】
【化34】

【0132】
上記一般式(T−1)で表される化合物として例示した化合物は、特開2009−99783号公報に記載の方法や、米国特許7279232号等に記載の種々の方法で合成できる。合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0133】
一般式(T−1)で表される化合物は、発光層に含有されるが、その用途が限定されることはなく、更に有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。
【0134】
イリジウム錯体として、一般式(T−1)で表される化合物以外に、下記一般式(T−7)で表される化合物や、カルベンを配位子として有するものも好ましく用いることができる。
【0135】
【化35】

【0136】
一般式(T−7)中、RT11〜RT17は、一般式(T−2)におけるRT3〜RT6と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、(X−Y)、n、及びmは一般式(T−2)における(X−Y)、n、及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0137】
これらの好ましい具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0138】
【化36】

【0139】
発光層中の発光材料は、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜40質量%含有されることがより好ましい。
【0140】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0141】
本発明の素子における発光層は、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよい。また、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
【0142】
本発明において、一般式(T−1)で表される化合物は、発光効率、及び耐久性(特に高温度駆動時の耐久性)を向上させる観点から、発光層に含まれるが、その用途が限定されることはなく、有機層内の発光層に加えていずれの層に含有されてもよい。一般式(T−1)で表される化合物の導入層としては、発光層以外に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有されるのが好ましい。
【0143】
〔一般式(1)で表される化合物と一般式(T−1)で表される化合物とを含有する組成物〕
本発明は前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(T−1)で表される化合物とを含有する組成物にも関する。
本発明の組成物における一般式(1)で表される化合物の含有量は50〜99質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。
本発明の組成物における一般式(T−1)で表される化合物の含有量は1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
本発明の組成物における他に含有しても良い成分としては、有機物でも無機物でもよく、有機物としては、後述するホスト材料、蛍光発光材料、燐光発光材料として挙げた材料が適用できる。
本発明の組成物は蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等により有機電界発光素子の有機層を形成することができる。
【0144】
次に一般式(C−1)について説明する。
【0145】
【化37】

【0146】
(一般式(C−1)中、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立に、Ptに配位する配位子を表す。L、L及びLはそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表す。)
【0147】
一般式(C−1)について説明する。
、Q、Q及びQはそれぞれ独立にPtに配位する配位子を表す。この時、Q、Q、Q及びQとPtの結合は、共有結合、イオン結合、配位結合などいずれであってもよい。Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が好ましく、Q、Q、Q及びQ中のPtに結合する原子の内、少なくとも1つが炭素原子であることが好ましく、2つが炭素原子であることがより好ましく、2つが炭素原子で、2つが窒素原子であることが特に好ましい。
【0148】
炭素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、アニオン性の配位子でも中性の配位子でもよく、アニオン性の配位子としてはビニル配位子、芳香族炭化水素環配位子(例えばベンゼン配位子、ナフタレン配位子、アントラセン配位子、フェナントレン配位子など)、ヘテロ環配位子(例えばフラン配位子、チオフェン配位子、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子及び、それらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。中性の配位子としてはカルベン配位子が挙げられる。
【0149】
窒素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としては含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサゾール配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えばキノリン配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))、アミン配位子、ニトリル配位子、イミン配位子が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アミノ配位子、イミノ配位子、含窒素芳香族ヘテロ環配位子(ピロール配位子、イミダゾール配位子、トリアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(例えはインドール配位子、ベンゾイミダゾール配位子など))が挙げられる。
【0150】
酸素原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはエーテル配位子、ケトン配位子、エステル配位子、アミド配位子、含酸素ヘテロ環配位子(フラン配位子、オキサゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾオキサゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子などが挙げられる。
【0151】
硫黄原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはチオエーテル配位子、チオケトン配位子、チオエステル配位子、チオアミド配位子、含硫黄ヘテロ環配位子(チオフェン配位子、チアゾール配位子及びそれらを含む縮環体(ベンゾチアゾール配位子など))が挙げられる。アニオン性の配位子としては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子などが挙げられる。
【0152】
リン原子でPtに結合するQ、Q、Q及びQとしては、中性の配位子でもアニオン性の配位子でもよく、中性の配位子としてはホスフィン配位子、リン酸エステル配位子、亜リン酸エステル配位子、含リンヘテロ環配位子(ホスフィニン配位子など)が挙げられ、アニオン性の配位子としては、ホスフィノ配位子、ホスフィニル配位子、ホスホリル配位子などが挙げられる。
【0153】
、Q、Q及びQで表される基は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していても良い(QとQが連結した場合、環状四座配位子のPt錯体になる)。
【0154】
、Q、Q及びQで表される基として好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、より好ましくは、炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子、アリールオキシ配位子であり、更に好ましくは炭素原子でPtに結合する芳香族炭化水素環配位子、炭素原子でPtに結合する芳香族ヘテロ環配位子、窒素原子でPtに結合する含窒素芳香族ヘテロ環配位子、アシルオキシ配位子である。
【0155】
、L及びLは、単結合又は二価の連結基を表す。L、L及びLで表される二価の連結基としては、アルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレンなど)、アリーレン基(フェニレン、ナフタレンジイル)、ヘテロアリーレン基(ピリジンジイル、チオフェンジイルなど)、イミノ基(−NR−)(フェニルイミノ基など)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、ホスフィニデン基(−PR−)(フェニルホスフィニデン基など)、シリレン基(−SiR’−)(ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基など)、又はこれらを組み合わせたものが挙げられる。ここで、R及びR’としてはアルキル基、アリール基等が挙げられる。これらの連結基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。
錯体の安定性及び発光量子収率の観点から、L、L及びLとして好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、イミノ基、オキシ基、チオ基、シリレン基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、イミノ基であり、更に好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基であり、更に好ましくは、単結合、メチレン基、フェニレン基であり、更に好ましくは単結合、ジ置換のメチレン基であり、更に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジイソブチルメチレン基、ジベンジルメチレン基、エチルメチルメチレン基、メチルプロピルメチレン基、イソブチルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基、フルオレンジイル基、フルオロメチルメチレン基であり、特に好ましくは単結合、ジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキサンジイル基である。
【0156】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましくは下記一般式(C−2)で表される白金錯体である。
【0157】
【化38】

【0158】
一般式(C−2)中、L21は単結合又は二価の連結基を表す。A21、A22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。Z21、Z22はそれぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24はそれぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。
【0159】
一般式(C−2)について説明する。
21は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0160】
21、A22はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。A21、A22の内、少なくとも一方は炭素原子であることが好ましく、A21、A22が共に炭素原子であることが、錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点から好ましい。
【0161】
21、Z22は、それぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z21、Z22で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点から、Z21、Z22で表される環として好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、より好ましくはピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、更に好ましくはピリジン環、ピラゾール環であり、特に好ましくはピリジン環である。
【0162】
前記Z21、Z22で表される含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。炭素上の置換基として好ましくはアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子である。置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、短波長化させる場合には電子供与性基、フッ素原子、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フッ素原子、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また長波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばシアノ基、ペルフルオロアルキル基などが選択される。窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0163】
23、Z24は、それぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。Z23、Z24で表される含窒素芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点からZ23、Z24で表される環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環であり、更に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。
【0164】
前記Z23、Z24で表されるベンゼン環、含窒素芳香族ヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。炭素上の置換基として好ましくはアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子である。置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、長波長化させる場合には電子供与性基、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また短波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばフッ素原子、シアノ基、ペルフルオロアルキル基などが選択される。窒素原子上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
【0165】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−3)で表される白金錯体である。
【0166】
【化39】

【0167】
一般式(C−3)中、A301〜A313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L31は単結合又は二価の連結基を表す。
【0168】
一般式(C−3)について説明する。
31は一般式(C−2)におけるL21と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
301〜A306はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A301〜A306として好ましくはC−Rであり、R同士が互いに連結して環を形成していてもよい。A301〜A306がC−Rである場合に、A302、A305のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子であり、特に好ましく水素原子、フッ素原子であり、A301、A303、A304、A306のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子であり、特に好ましく水素原子である。
307、A308、A309及びA310は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A307、A308、A309及びA310がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して縮環構造を形成してもよい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A308が窒素原子であることが好ましい。
【0169】
上記の如くA307〜A310を選択した場合、2つの炭素原子とA307、A308、A309及びA310から形成される6員環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環が挙げられ、より好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、特に好ましくはピリジン環である。前記6員環が、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環(特に好ましくはピリジン環)であることにより、ベンゼン環と比較して、金属−炭素結合を形成する位置に存在する水素原子の酸性度が向上する為、より金属錯体を形成しやすくなり有利である。
【0170】
311、A312及びA313は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。A311、A312及びA313がC−Rである場合に、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、フッ素原子、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して、縮環構造を形成してもよい。
311、A312及びA313と1つの窒素原子及び1つの炭素原子とで形成される5員環としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、より好ましくは、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環であり、更に好ましくはピロール環、ピラゾール環である。前記5員環が、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環(更に好ましくはピロール環、ピラゾール環)であることにより、金属錯体の安定性が向上するため、有利である。
【0171】
一般式(C−2)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−4)で表される白金錯体である。
【0172】
【化40】

【0173】
一般式(C−4)中、A401〜A414はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L41は単結合又は二価の連結基を表す。
【0174】
一般式(C−4)について説明する。
401〜A414はそれぞれ独立にC−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。A401〜A406及びL41は、前記一般式(C−3)におけるA301〜A306及びL31と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0175】
407〜A414としては、A407〜A410とA411〜A414のそれぞれにおいて、窒素原子の数は、0〜2が好ましく、0〜1がより好ましい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A408、A412が窒素原子であることが好ましく、A408とA412が共に窒素原子であることが更に好ましい。
407〜A414がC−Rを表す場合に、A408、A412のRとして好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、ペルフルオロアルキル基、アルキル基、アリール基、フッ素原子、シアノ基であり、特に好ましくは、水素原子、ペルフルオロアルキル基、シアノ基である。A407、A409、A411、A413の表すRとして好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、シアノ基であり、より好ましくは水素原子、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、シアノ基であり、特に好ましく水素原子、フッ素原子である。A410、A414の表すRとして好ましくは水素原子、フッ素原子であり、より好ましくは水素原子である。A407〜A409、A411〜A413のいずれかがC−Rを表す場合に、R同士が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0176】
一般式(C−1)で表される白金錯体のうち、より好ましい別の態様は下記一般式(C−5)で表される白金錯体である。
【0177】
【化41】

【0178】
一般式(C−5)中、L51は単結合又は二価の連結基を表す。A51はそれぞれ独立に炭素原子又は窒素原子を表す。Z51、Z52はそれぞれ独立に含窒素芳香族ヘテロ環を表す。Z53はそれぞれ独立にベンゼン環又は芳香族ヘテロ環を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。
【0179】
一般式(C−5)について説明する。
51は、前記一般式(C−1)中のLと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0180】
51は炭素原子又は窒素原子を表す。錯体の安定性の観点及び錯体の発光量子収率の観点からA51は炭素原子であることが好ましい。
【0181】
51、Z52は、それぞれ前記一般式(C−2)におけるZ21、Z22と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Z53は、前記一般式(C−2)におけるZ23と同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0182】
YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。非環状配位子とはPtに結合する原子が配位子の状態で環を形成していないものである。Y中のPtに結合する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子、酸素原子がより好ましく、酸素原子が最も好ましい。炭素原子でPtに結合するYとしてはビニル配位子が挙げられる。窒素原子でPtに結合するYとしてはアミノ配位子、イミノ配位子が挙げられる。酸素原子でPtに結合するYとしては、アルコキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、アシルオキシ配位子、シリルオキシ配位子、カルボキシル配位子、リン酸配位子、スルホン酸配位子などが挙げられる。硫黄原子でPtに結合するYとしては、アルキルメルカプト配位子、アリールメルカプト配位子、ヘテロアリールメルカプト配位子、チオカルボン酸配位子などが挙げられる。
Yで表される配位子は、置換基を有していてもよく、置換基としては前記置換基群Aとして挙げたものが適宜適用できる。また置換基同士が連結していてもよい。
【0183】
Yで表される配位子として好ましくは酸素原子でPtに結合する配位子であり、より好ましくはアシルオキシ配位子、アルキルオキシ配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ配位子、シリルオキシ配位子であり、更に好ましくはアシルオキシ配位子である。
【0184】
一般式(C−5)で表される白金錯体のうち、より好ましい態様の一つは下記一般式(C−6)で表される白金錯体である。
【0185】
【化42】

【0186】
一般式(C−6)中、A601〜A610は、それぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。L61は単結合又は二価の連結基を表す。YはPtに結合するアニオン性の非環状配位子である。
【0187】
一般式(C−6)について説明する。
61は、前記一般式(C−5)中のL51と同義であり、また好ましい範囲も同様である。A601〜A610は一般式(C−3)におけるA301〜A310と同義であり、また好ましい範囲も同様である。Yは一般式(C−5)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0188】
一般式(C−1)で表される白金錯体として具体的には、特開2005−310733号公報の段落番号[0143]〜[0152]、[0157]〜[0158]、[0162]〜[0168]に記載の化合物、特開2006−256999号公報の段落番号[0065]〜[0083]に記載の化合物、特開2006−93542号公報の段落番号[0065]〜[0090]に記載の化合物、特開2007−73891号公報の段落番号[0063]〜[0071]に記載の化合物、特開2007−324309号公報の段落番号[0079]〜[0083]に記載の化合物、特開2006−93542号公報の段落番号[0065]〜[0090]に記載の化合物、特開2007−96255号公報の段落番号[0055]〜[0071]に記載の化合物、特開2006−313796号公報の[0043]〜[0046]が挙げられる。より具体的には、以下に例示する白金錯体が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0189】
【化43】

【0190】
【化44】

【0191】
【化45】

【0192】
一般式(C−1)で表される白金錯体化合物は、例えば、Journal of Organic Chemistry 53,786,(1988)、G.R. Newkome et al.)の、789頁、左段53行〜右段7行に記載の方法、790頁、左段18行〜38行に記載の方法、790頁、右段19行〜30行に記載の方法及びその組み合わせ、Chemische Berichte 113, 2749(1980)、H.Lexyほか)の、2752頁、26行〜35行に記載の方法等、種々の手法で合成できる。
例えば、配位子、又はその解離体と金属化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、若しくは、溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、若しくは、塩基非存在下、室温以下、若しくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0193】
本発明の発光層における一般式(C−1)で表される化合物の含有量は発光層中1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましい。
【0194】
(ホスト材料)
ホスト材料とは、発光層において主に電荷の注入、輸送を担う化合物であり、また、それ自体は実質的に発光しない化合物のことである。ここで「実質的に発光しない」とは、該実質的に発光しない化合物からの発光量が好ましくは素子全体での全発光量の5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下であることを言う。
ホスト材料としては、本発明の一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
【0195】
その他の本発明に用いることのできるホスト材料としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)等を挙げることができる。
【0196】
本発明において、併用することができるホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料であっても、電子輸送性ホスト材料であってもよいが、正孔輸送性ホスト材料を用いることができる。
本発明において、前記発光層が、ホスト材料を含むことが好ましい。前記ホスト材料は下記一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物であることが好ましい。
本発明においては、発光層に一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物の少なくとも1つ以上を含むことがより好ましい。
【0197】
本発明において、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物が発光層に含有される場合、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物は発光層中に30〜100質量%含まれることが好ましく、40〜100質量%含まれることが好ましく、50〜100質量%含まれることが特に好ましい。また、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、上記の範囲で含有することが好ましい。
【0198】
一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物は、いずれかの有機層に、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0199】
【化46】

【0200】
(一般式(4−1)及び(4−2)中、d、eは0〜3の整数を表し、少なくとも一方は1以上である。fは1〜4の整数を表す。R’はそれぞれ独立に置換基を表し、d、e、fが2以上である場合R’は互いに異なっていても同じでも良い。また、R’の少なくとも1つは下記一般式(5)で表されるカルバゾール基を表す。)
【0201】
【化47】

【0202】
(一般式(5)中、R’はそれぞれ独立に置換基を表す。gは0〜8の整数を表す。)
【0203】
R’はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、又は一般式(5)で表される置換基である。R’が一般式(5)を表さない場合、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
【0204】
R’はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
gは0〜8の整数を表し、電荷輸送を担うカルバゾール骨格を遮蔽しすぎない観点から0〜4が好ましい。また、合成容易さの観点から、カルバゾールが置換基を有する場合、窒素原子に対し、対称になるように置換基を持つものが好ましい。
【0205】
一般式(4−1)において、電荷輸送能を保持する観点で、dとeの和は2以上であることが好ましい。また、他方のベンゼン環に対しR’がメタで置換することが好ましい。その理由として、オルト置換では隣り合う置換基の立体障害が大きいため結合が開裂しやすく、耐久性が低くなる。また、パラ置換では分子形状が剛直な棒状へと近づき、結晶化しやすくなるため高温条件での素子劣化が起こりやすくなる。具体的には以下の構造で表される化合物であることが好ましい。
【0206】
【化48】

【0207】
一般式(4−2)において、電荷輸送能を保持する観点で、fは2以上であることが好ましい。fが2又は3の場合、同様の観点からR’が互いにメタで置換することが好ましい。具体的には以下の構造で表される化合物であることが好ましい。
【0208】
【化49】

【0209】
一般式(4−1)及び(4−2)が水素原子を有する場合、水素の同位体(重水素原子等)も含む。この場合化合物中の全ての水素原子が水素同位体に置き換わっていてもよく、また一部が水素同位体を含む化合物である混合物でもよい。好ましくは一般式(5)におけるR’が重水素によって置換されたものであり、特に好ましくは以下の構造が挙げられる。
【0210】
【化50】

【0211】
更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0212】
一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。最も一般的には、カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。また、mCPなどのいくつかの化合物は市販されているものを好適に用いることができる。
【0213】
本発明において、一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、800以下であることが特に好ましい。また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、300以上が特に好ましい。
【0214】
一般式(4−1)及び(4−2)は、以下に示す構造若しくはその水素原子が1つ以上重水素原子で置換された化合物であることが好ましい。以下に示す構造中のR’は、前記一般式(5)におけるR’と同義であり、R’は前記一般式(4−1)におけるR’と同義である。
【0215】
【化51】

【0216】
以下に、本発明における一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0217】
【化52】

【0218】
【化53】

【0219】
【化54】

【0220】
【化55】

【0221】
【化56】

【0222】
【化57】

【0223】
発光層において、前記ホスト材料の三重項最低励起エネルギー(Tエネルギー)が、前記燐光発光材料のTエネルギーより高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。ホスト材料のTが燐光発光材料のTより0.1eV以上大きいことが好ましく、0.2eV以上大きいことがより好ましく、0.3eV以上大きいことが更に好ましい。
ホスト材料のTが燐光発光材料のTより小さいと発光を消光してしまうためホスト材料には燐光発光材料より大きなTが求められる。また、ホスト材料のTが燐光発光材料より大きい場合でも、両者のT差が小さい場合には一部、燐光発光材料からホスト材料への逆エネルギー移動が起こるため、効率低下や耐久性低下の原因となる。従って、Tが十分に大きく、化学的安定性及びキャリア注入・輸送性の高いホスト材料が求められている。
【0224】
また、本発明におけるホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。発光層に、一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物を含む複数種類のホスト化合物を含む場合、一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物は全ホスト化合物中50質量%以上99質量%以下であることが好ましい。
【0225】
〔一般式(M−1)で表される化合物〕
本発明の有機電界発光素子は、前記一対の電極が陽極を含み、前記発光層と該陽極との間に少なくとも一層の有機層を含むことが好ましく、該有機層に少なくとも一種の下記一般式(M−1)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0226】
一般式(M−1)で表される化合物は発光層と陽極の間の発光層に隣接する有機層に含有されることがより好ましいが、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。本発明にかかる一般式(M−1)で表される化合物の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有することができる。
一般式(M−1)で表される化合物が含有される、発光層と陽極の間の発光層に隣接する有機層は正孔輸送層であることがより好ましい。
【0227】
【化58】

【0228】
一般式(M−1)中、Ar及びArはそれぞれ独立してアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアミノ、アルキルアミノ、モルホリノ、チオモルホリノ、N、O、及びSから選択される1以上のヘテロ原子を含有する5若しくは6員へテロシクロアルキル又はシクロアルキルを表し、更に置換基Zを有していてもよい。またAr及びArは、単結合、アルキレン、若しくはアルケニレン(縮合環の有無を問わない)により互いに結合して、縮合5〜9員環を形成してもよい。
Arはp価のアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアミノを表し、更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)、−CN、−NO、−SO、−SOR”、−SOR”、又は−SOR”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
pは1〜4の整数であり、pが2以上のときAr及びArはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0229】
一般式(M−1)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(M−2)で表される場合である。
【0230】
【化59】

【0231】
一般式(M−2)中、RM1はアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
M2〜RM23はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、シリル基、シアノ基、ニトロ基、又はフッ素原子を表す。
【0232】
一般式(M−2)中、RM1はアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基Zを有していても良い。RM1として好ましくは、アリール基、又はヘテロアリール基であり、より好ましくはアリール基である。RM1のアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、アリール基、アルコキシ基が挙げられ、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアリール基がより好ましく、アルキル基、シアノ基、又はアリール基が更に好ましい。RM1のアリール基は、好ましくは置換基Zを有していてもよいフェニル基であり、より好ましくはアルキル基又はシアノ基を有していてもよいフェニル基である。
【0233】
M2〜RM23はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜24)、シリル基(好ましくは炭素数0〜18)、シアノ基、ニトロ基、又はフッ素原子を表し、これらは前述の置換基Zを有していても良い。
【0234】
M2、RM7、RM8、RM15、RM16及びRM23として好ましくは、水素原子、又は置換基Zを有していても良いアルキル基若しくはアリール基であり、更に好ましくは水素原子である。
M4、RM5、RM11、RM12、RM19及びRM20として好ましくは、水素原子、置換基Zを有していても良いアルキル基若しくはアリール基、又はフッ素原子であり、更に好ましくは水素原子である。
M3、RM6、RM9、RM14、RM17及びRM22として好ましくは、水素原子、置換基Zを有していても良いアルキル基若しくはアリール基、フッ素原子、又はシアノ基であり、より好ましくは水素原子、又は置換基Zを有していても良いアルキル基であり、更に好ましくは水素原子である。
M10、RM13、RM18及びRM21として好ましくは、水素原子、置換基Zを有していても良いアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基若しくはアミノ基、ニトロ基、フッ素原子、又はシアノ基であり、より好ましくは水素原子、置換基Zを有していても良いアルキル基若しくはアリール基、ニトロ基、フッ素原子、又はシアノ基であり、更に好ましくは水素原子、又は置換基Zを有していても良いアルキル基である。アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、フッ素原子が好ましく、置換基Zを有していても良いアルキル基の炭素数は好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。
【0235】
一般式(M−1)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(M−3)で表される場合である。
【0236】
【化60】

【0237】
一般式(M−3)中、RS1〜RS5はそれぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−COR、−C(O)R、−NR、−NO、−OR、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数のRS1〜RS5が存在するとき、それらは互いに結合して環を形成してもよく、更に置換基Zを有していてもよい。
aは0〜4の整数を表し、複数のRS1が存在するとき、それらは同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。b〜eはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、それぞれ複数のRS2〜RS5が存在するとき、それらは同一でも異なっていてもよく、任意の2つが結合し環を形成してもよい。
qは1〜5の整数であり、qが2以上のとき複数のRS1は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0238】
アルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。RS1〜RS5で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基、t−ブチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。RS1〜RS5で表されるシクロアルキル基として、好ましくは環員数4〜7のシクロアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数5〜6のシクロアルキル基であり、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
S1〜RS5で表されるアルケニル基としては好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、1−プロペニル、1−イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
S1〜RS5で表されるアルキニル基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばエチニル、プロパルギル、1−プロピニル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
【0239】
S1〜RS5で表されるペルフルオロアルキル基は、前述のアルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられたものが挙げられる。
【0240】
S1〜RS5で表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0241】
S1〜RS5で表されるヘテロアリール基としては、好ましくは、炭素数5〜8のヘテロアリール基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンズオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、チアゾリニル基、スルホラニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピリドインドリル基などが挙げられる。好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、チエニル基であり、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジニル基である。
【0242】
S1〜RS5として好ましくは、水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ペルフルオロアルキル基、ジアルキルアミノ基、フルオロ基、アリール基、ヘテロアリール基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、フルオロ基、アリール基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。置換基Zとしては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましい。
【0243】
S1〜RS5は任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。形成されるシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールの定義及び好ましい範囲はRS1〜RS5で定義したシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基と同じである。
【0244】
一般式(M−1)で表される化合物を、正孔輸送層中で用いる場合は、一般式(M−1)で表される化合物は50〜100質量%含まれることが好ましく、80〜100質量%含まれることが好ましく、95〜100質量%含まれることが特に好ましい。
また、一般式(M−1)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、上記の範囲で含有することが好ましい。
【0245】
一般式(M−1)で表される化合物は、いずれかの有機層に、一種類のみを含有していてもよく、複数の一般式(M−1)で表される化合物を任意の割合で組み合わせて含有していてもよい。
【0246】
一般式(M−1)で表される化合物を含む正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、該正孔輸送層は発光層に接して設けられている事が好ましい。
該正孔輸送層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0247】
一般式(M−1)で表される化合物の膜状態での最低励起三重項(T)エネルギーは2.52eV(58kcal/mol)以上3.47eV(80kcal/mol)以下であることが好ましく、2.60eV(60kcal/mol)以上3.25eV(75kcal/mol)以下であることがより好ましく、2.69eV(62kcal/mol)以上3.04eV(70kcal/mol)以下であることが更に好ましい
【0248】
一般式(M−1)を構成する水素原子は、水素の同位体(重水素原子等)も含む。この場合化合物中の全ての水素原子が水素同位体に置き換わっていてもよく、また一部が水素同位体を含む化合物である混合物でもよい。
【0249】
一般式(M−1)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。最も一般的には、カルバゾール化合物に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール化合物とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。
【0250】
本発明の一般式(M−1)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、800以下であることが特に好ましい。また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、300以上が特に好ましい。
【0251】
以下に、一般式(M−1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明がこれらに限定されることはない。
【0252】
【化61】

【0253】
【化62】

【0254】
【化63】

【0255】
【化64】

【0256】
【化65】

【0257】
〔芳香族炭化水素化合物〕
本発明の有機電界発光素子は、前記一対の電極が陰極を含み、前記発光層と該陰極との間に少なくとも一層の有機層を含むことが好ましく、該有機層に芳香族炭化水素化合物を含有することが好ましい。
芳香族炭化水素化合物は、発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層に含有されることがより好ましいが、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。本発明にかかる芳香族炭化水素化合物の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有することができる。
芳香族炭化水素化合物が含有される、発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層は電荷ブロック層又は電子輸送層であることが好ましく、電子輸送層であることがより好ましい。
【0258】
芳香族炭化水素化合物は合成容易さの観点から炭素原子と水素原子のみからなることが好ましい。
芳香族炭化水素化合物を発光層以外の層に含有させる場合は、70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。芳香族炭化水素化合物を発光層に含有させる場合は、発光層の全質量に対して0.1〜99質量%含ませることが好ましく、1〜95質量%含ませることがより好ましく、10〜95質量%含ませることがより好ましい。
炭素原子と水素原子のみからなり、分子量が400〜1200の範囲にあり、総炭素数13〜22の縮合多環骨格を有する炭化水素化合物を用いることが好ましい。総炭素数13〜22の縮合多環骨格としては、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレンのいずれかであることが好ましく、Tの観点からフルオレン、トリフェニレン、フェナントレンがより好ましく、化合物の安定性、電荷注入・輸送性の観点からトリフェニレンが更に好ましく、一般式(Tp−1)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0259】
一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は、分子量が400〜1200の範囲であることが好ましく、より好ましくは400〜1000であり、更に好ましくは400〜800である。分子量が400以上であれば良質なアモルファス薄膜が形成でき、分子量が1200以下であると溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正の面で好ましい。
【0260】
一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物はその用途が限定されることはなく、発光層に隣接する有機層だけでなく有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。
【0261】
【化66】

【0262】
(一般式(Tp−1)において、R12〜R23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基を表す。ただし、R12〜R23が全て水素原子になることはない。)
【0263】
12〜R23が表すアルキル基としては、置換基若しくは無置換の、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、又はtert−ブチル基である。
【0264】
12〜R23として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基(これらは更にアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基であることが更に好ましい。
フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基(これらは更にアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、ベンゼン環であることが特に好ましい。
【0265】
一般式(Tp−1)におけるアリール環の総数は2〜8個であることが好ましく、3〜5個であることが好ましい。この範囲とすることで、良質なアモルファス薄膜が形成でき、溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正が良好になる。
【0266】
12〜R23は、それぞれ独立に、総炭素数が20〜50であることが好ましく、総炭素数が20〜36であることがより好ましい。この範囲とすることで、良質なアモルファス薄膜が形成でき、溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正が良好になる。
【0267】
本発明の一の態様において、前記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は下記一般式(Tp−2)で表される炭化水素化合物であることが好ましい。
【0268】
【化67】

【0269】
(一般式(Tp−2)中、複数のArは同一であり、アルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基を表す。)
【0270】
Arが表すアルキル基及びアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基としては、R12〜R23で挙げたものと同義であり、好ましいものも同様である。
【0271】
本発明の他の態様において、前記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は、下記一般式(Tp−3)で表される炭化水素化合物であることが好ましい。
【0272】
【化68】

【0273】
(一般式(Tp−3)中、Lはアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基又はこれらを組み合わせて成るn価の連結基を表す。nは1〜6の整数を表す。)
【0274】
Lが表すn価の連結基を形成するアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基としては、R12〜R23で挙げたものと同義である。
Lとして好ましくは、アルキル基又はベンゼン環で置換されていてもよいベンゼン環、フルオレン環、又はこれらを組み合わせて成るn価の連結基である。
以下にLの好ましい具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。なお具体例中*でトリフェニレン環と結合する。
【0275】
【化69】

【0276】
nは1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
【0277】
本発明の他の態様において、前記一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物は、下記一般式(Tp−4)で表される炭化水素化合物であることが好ましい。
【0278】
【化70】

【0279】
(一般式(Tp−4)において、複数存在する場合のArは同一であり、Arはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基で置換、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。p、及びqはそれぞれ独立に0又は1を表すが、pとqが同時に0になることはない。p、及びqが0を表す場合、Arは水素原子を表す。)
【0280】
Arとして好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基を組み合わせてなる基であり、より好ましくは、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリフェニレニル基を組み合わせてなる基である。
Arは、メタ位が炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、又はこれらを組み合わせてなる基で置換されたベンゼン環であることが特に好ましい。
【0281】
本発明にかかる炭化水素化合物を有機電界発光素子の発光層のホスト材料や発光層に隣接する層の電荷輸送材料として使用する場合、発光材料より薄膜状態でのエネルギーギャップ(発光材料が燐光発光材料の場合には、薄膜状態での最低励起三重項(T)エネルギー)が大きいと、発光がクエンチしてしまうことを防ぎ、効率向上に有利である。一方、化合物の化学的安定性の観点からは、エネルギーギャップ及びTエネルギーは大き過ぎない方が好ましい。一般式(Tp−1)で表される炭化水素化合物の膜状態でのTエネルギーは、52kcal/mol以上80kcal/mol以下であることが好ましく、55kcal/mol以上68kcal/mol)以下であることがより好ましく、58kcal/mol以上63kcal/mol以下であることが更に好ましい。特に、発光材料として燐光発光材料を用いる場合には、Tエネルギーが上記範囲となることが好ましい。
【0282】
エネルギーは、前述の一般式(1)の説明における方法と同様の方法により求めることができる。
【0283】
有機電界発光素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、本発明にかかる炭化水素化合物のガラス転移温度(Tg)は80℃以上400℃以下であることが好ましく、100℃以上400℃以下であることがより好ましく、120℃以上400℃以下であることが更に好ましい。
【0284】
以下に、本発明にかかる炭化水素化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0285】
【化71】

【0286】
【化72】

【0287】
上記本発明にかかる炭化水素化合物として例示した化合物は、国際公開第05/013388号パンフレット、国際公開第06/130598号パンフレット、国際公開第09/021107号パンフレット、US2009/0009065、国際公開第09/008311号パンフレット及び国際公開第04/018587号パンフレットに記載の方法で合成できる。
合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0288】
〔一般式(O−1)で表される化合物〕
本発明の発光素子は、発光層と陰極との間に少なくとも一層の有機層を含むことが好ましく、該有機層に少なくとも一種の下記一般式(O−1)で表される化合物を含有することが素子の効率や駆動電圧の観点から好ましい。以下に、一般式(O−1)について説明する。
【0289】
【化73】

【0290】
(一般式(O−1)中、RO1は、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。AO1〜AO4はそれぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、複数のRは同じでも異なっていても良い。LO1は、アリール環又はヘテロアリール環からなる二価〜六価の連結基を表す。nO1は2〜6の整数を表す。)
【0291】
O1は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基Z’を有していても良い。RO1として好ましくはアリール基、又はヘテロアリール基であり、より好ましくはアリール基である。RO1のアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基又はシアノ基が挙げられ、アルキル基又はアリール基がより好ましく、アリール基が更に好ましい。RO1のアリール基が複数の置換基を有する場合、該複数の置換基は互いに結合して5又は6員環を形成していても良い。RO1のアリール基は、好ましくは置換基Z’を有していても良いフェニル基であり、より好ましくはアルキル基又はアリール基が置換していてもよいフェニル基であり、更に好ましくは無置換のフェニル基又は2−フェニルフェニル基である。
【0292】
O1〜AO4はそれぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。AO1〜AO4のうち、0〜2つが窒素原子であるのが好ましく、0又は1つが窒素原子であるのがより好ましい。AO1〜AO4の全てがC−Rであるか、又はAO1が窒素原子で、AO2〜AO4がC−Rであるのが好ましく、AO1が窒素原子で、AO2〜AO4がC−Rであるのがより好ましく、AO1が窒素原子で、AO2〜AO4がC−Rであり、Rが全て水素原子であるのが更に好ましい。
【0293】
は水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基Z’を有していても良い。また複数のRは同じでも異なっていても良い。
として好ましくは水素原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0294】
O1は、アリール環(好ましくは炭素数6〜30)又はヘテロアリール環(好ましくは炭素数4〜12)からなる二価〜六価の連結基を表す。LO1として好ましくは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アリールトリイル基、又はヘテロアリールトリイル基であり、より好ましくはフェニレン基、ビフェニレン基、又はベンゼントリイル基であり、更に好ましくはビフェニレン基、又はベンゼントリイル基である。LO1は前述の置換基Z’を有していても良く、置換基を有する場合の置換基としてはアルキル基、アリール基、又はシアノ基が好ましい。LO1の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0295】
【化74】

【0296】
O1は2〜6の整数を表し、好ましくは2〜4の整数であり、より好ましくは2又は3である。nO1は、素子効率の観点では最も好ましくは3であり、素子の耐久性の観点では最も好ましくは2である。
一般式(O−1)で表される化合物は、より好ましくは下記一般式(O−2)で表される化合物である。
【0297】
【化75】

【0298】
(一般式(O−2)中、RO1はアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。RO2〜RO4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。AO1〜AO4はそれぞれ独立に、C−R又は窒素原子を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、複数のRは同じでも異なっていても良い。)
【0299】
O1及びAO1〜AO4は、前記一般式(O−1)中のRO1及びAO1〜AO4と同義であり、またそれらの好ましい範囲も同様である。
02〜R04はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30)、又はヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜12)を表し、これらは前述の置換基Z’を有していても良い。R02〜R04として好ましくは水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、より好ましくは水素原子、又はアリール基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0300】
前記一般式(O−1)で表される化合物は、高温保存時の安定性、高温駆動時、駆動時の発熱に対して安定して動作させる観点から、ガラス転移温度(Tg)は100℃〜300℃であることが好ましく、120℃〜300℃であることがより好ましく、120℃〜300℃であることが更に好ましく、140℃〜300℃であることが更により好ましい。
【0301】
一般式(O−1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0302】
【化76】

【0303】
【化77】

【0304】
前記一般式(O−1)で表される化合物は、特開2001−335776号に記載の方法で合成可能である。合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶、再沈殿などによる精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により有機不純物を分離できるだけではなく、無機塩や残留溶媒、水分等を効果的に取り除くことが可能である。
【0305】
本発明の発光素子において、一般式(O−1)で表される化合物は発光層と陰極との間の有機層に含有されるが、発光層に隣接する陰極側の層に含有されることが好ましい。
【0306】
(電荷輸送層)
電荷輸送層とは、有機電界発光素子に電圧を印加した際に電荷移動が起こる層をいう。
具体的には正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層又は電子注入層が挙げられる。好ましくは、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層である。塗布法により形成される電荷輸送層が正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層又は発光層であれば、低コストかつ高効率な有機電界発光素子の製造が可能となる。また、電荷輸送層として、より好ましくは、正孔注入層、正孔輸送層又は電子ブロック層である。
【0307】
(正孔注入層、正孔輸送層)
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0165〕〜〔0167〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0308】
正孔注入層には電子受容性ドーパントを含有することが好ましい。正孔注入層に電子受容性ドーパントを含有することにより、正孔注入性が向上し、駆動電圧が低下する、効率が向上するなどの効果がある。電子受容性ドーパントとは、ドープされる材料から電子を引き抜き、ラジカルカチオンを発生させることが可能な材料であれば有機材料、無機材料のうちいかなるものでもよいが、例えば、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F−TCNQ)、酸化モリブデンなどが挙げられる。
【0309】
正孔注入層中の電子受容性ドーパントは、正孔注入層を形成する全化合物質量に対して、0.01質量%〜50質量%含有されることが好ましく、0.1質量%〜40質量%含有されることがより好ましく、0.2質量%〜30質量%含有されることがより好ましい。
【0310】
(電子注入層、電子輸送層)
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子輸送材料として、本発明の一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物を用いることができる。その他の材料としては、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0311】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0312】
電子注入層には電子供与性ドーパントを含有することが好ましい。電子注入層に電子供与性ドーパントを含有させることにより、電子注入性が向上し、駆動電圧が低下する、効率が向上するなどの効果がある。電子供与性ドーパントとは、ドープされる材料に電子を与え、ラジカルアニオンを発生させることが可能な材料であれば有機材料、無機材料のうちいかなるものでもよいが、例えば、テトラチアフルバレン(TTF)、テトラチアナフタセン(TTT)、ビス−[1,3 ジエチル−2−メチル−1,2−ジヒドロベンズイミダゾリル]などのジヒドロイミダゾール化合物、リチウム、セシウムなどが挙げられる。
【0313】
電子注入層中の電子供与性ドーパントは、電子注入層を形成する全化合物質量に対して、0.01質量%〜50質量%含有されることが好ましく、0.1質量%〜40質量%含有されることがより好ましく、0.5質量%〜30質量%含有されることがより好ましい。
【0314】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum (III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(Balqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、本発明の化合物等が挙げられる。本発明において、正孔ブロック層は実際に正孔をブロックする機能に限定せず、発光層の励起子が電子輸送層に拡散させない、若しくはエネルギー移動消光をブロックする機能を有していてもよい。本発明の化合物は正孔ブロック層としても好ましく適用できる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0315】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0316】
(保護層)
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0317】
(封止容器)
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0318】
(駆動)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0319】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、7%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、12%以上が更に好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの300〜400cd/m付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0320】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、30%以上であることが好ましく、50%以上が更に好ましく、70%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0321】
(本発明の素子の用途)
本発明の素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0322】
(発光装置)
次に、図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。図2の発光装置20は、基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器16等により構成されている。
【0323】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0324】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0325】
(照明装置)
次に、図3を参照して本発明の照明装置について説明する。
図3は、本発明の照明装置の一例を概略的に示した断面図である。本発明の照明装置40は、図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。
光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0326】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0327】
1.合成例(合成例1)化合物(1−4)の合成
【0328】
【化78】

【0329】
2L3つ口フラスコに窒素雰囲気下にてm−ブロモベンゼンチオール50g、エタノール300mlを入れ、氷浴に浸し撹拌した。そこへ28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液51gを滴下し、続いて2−クロロ−シクロヘキサノン32mlをエタノール50mlで希釈した溶液をゆっくり滴下した。4時間撹拌後、蒸留水600mlを加え、3日間放置した。得られた油状沈殿物をピペットで採取し、酢酸エチル/ヘキサン=1/4を溶離液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体(1−1)を含む油状物47gを得た。
500mlの3つ口フラスコに窒素雰囲気下にて中間体(1−1)を含む油状物34g、ポリリン酸75gを入れ、130℃のオイルバスに浸し4時間撹拌した。室温に戻し、蒸留水300mlを加えた。生成した沈殿物をヘキサンを溶離液とするシリカゲルカラムシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体(1−2)を含む油状物6gを得た。
【0330】
300mlの3つ口フラスコに窒素雰囲気下にて中間体(1−2)を含む油状物6g、トルエン30mlを入れ撹拌した。そこへ、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン10.2gを添加し、110℃のオイルバスに浸し5時間撹拌した。室温に戻し、水酸化ナトリウム5gを含む水溶液100ml、1mоl/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液68mlを加えて暫く撹拌し、沈殿物を吸引濾過した。得られた濾物をヘキサンを溶離液とするシリカゲルカラムシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体(1−3)を含む白色固体5gを得た。
300mlの3つ口フラスコに窒素雰囲気下にて中間体(1−3)を含む白色固体5g、酢酸カリウム4.29g、ビスピナコラートジボロン5.79g、ジメチルスルホキシド50mlを入れ、真空ラインを用いて脱気を施し、続いて窒素置換した。そこへ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン錯体(1:1)0.47gを加え、90℃のオイルバスに浸し4時間撹拌した。室温に戻し、蒸留水200mlを加え撹拌し、得られた沈殿物を吸引ろ過にてろ別した。得られた濾物をヘキサンを溶離液とするシリカゲルカラムシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体(1−4)を含む白色固体5gを得た。
【0331】
300mlの3つ口フラスコに1−ブロモ−3−ヨードベンゼン7.66g、炭酸ナトリウム5.74g、ジメトキシエタン10ml、蒸留水10mlを加え、真空ラインを用いて脱気を施し、続いて窒素置換した。トリフェニルホスフィン0.71g、中間体(1−4)を含む白色固体4.2g、酢酸パラジウム0.16gを添加し、100℃のオイルバスに浸して5時間加熱還流させた。室温に戻し、析出した沈殿物を吸引ろ過で濾別し、トルエン/ヘキサン=1/9を溶離液とするシリカゲルカラムシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体(1−5)2gを得た。
100mlの3つ口フラスコに窒素雰囲気下にて中間体(1−5)2g、酢酸カリウム1.33g、ビスピナコラートジボロン1.8g、ジメチルスルホキシド20mlを入れ、真空ラインを用いて脱気を施し、続いて窒素置換した。そこへ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン錯体(1:1)0.144gを加え、90℃のオイルバスに浸し4時間撹拌した。室温に戻し、蒸留水80mlを加え撹拌し、得られた沈殿物を吸引ろ過にてろ別した。得られた濾物をトルエン/ヘキサン=1/1及びトルエンのみを溶離液とするシリカゲルカラムシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体(1−6)1.5gを得た。
【0332】
100mlの3つ口フラスコに中間体(1−6)1.5g、テトラヒドロフラン15ml、蒸留水15mlを入れ、真空ラインを用いて脱気を施し、続いて窒素置換した。続いて、炭酸カリウム1.34g、3、3’−ジブロモビフェニル0.5gを加え、撹拌しながらテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.187gを加え、80℃のオイルバスに浸して5時間加熱還流させた。室温に戻し、生成した沈殿物を吸引濾過にて濾別し、少量のテトラヒドロフランで洗浄した。得られた濾物をテトラヒドロフラン100mlに溶解させ、更にトルエン200mlを加えた。テトラヒドロフランを減圧留去して得られた沈殿物を吸引濾過にて濾別し、トルエンで洗浄した。得られた濾物をアセトン100mlに分散させ、1時間加熱還流させた後室温に戻した。得られた沈殿物を吸引濾過にて濾別し、アセトンで洗浄し乾燥を施すことで白色固体0.7gを得た。これを昇華精製し、化合物(1−4)0.53gを得た。化合物の同定は400MHz H−NMRにて行った。H-NMRデータを図4に示した。
【0333】
他の一般式(1)で表される化合物についても、同様にして合成した。
【0334】
化合物(1−4)と同様の方法で、化合物(1−1)〜化合物(1−3)、化合物(1−44)、化合物(1−49)、化合物(1−66)、化合物(1−67)、化合物(1−69)を合成した。一部の化合物についてはスキームを示す。
【0335】
【化79】

【0336】
【化80】

【0337】
以上のように合成し、実施例で使用した化合物を、同じく実施例で使用した比較化合物と共に、以下に示す。
【0338】
【化81】

【0339】
2.素子作製・評価
素子作製に用いた材料は全て昇華精製を行い、高速液体クロマトグラフィー(東ソーTSKgel ODS−100Z)により純度(254nmの吸収強度面積比)が99.1%以上であることを確認した。
【0340】
(実施例1)
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜)上に真空蒸着法にて以下の有機層を順次蒸着した。
第1層:化合物(A) :膜厚10nm
第2層:化合物(B) :膜厚30nm
第3層:化合物(1−1)及び化合物(C)(質量比90:10) :膜厚40nm
第4層:化合物(D) :膜厚40nm
この上に、フッ化リチウム0.1nm及び金属アルミニウム100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
この積層体を、大気に触れさせることなく、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、素子1を得た。
【0341】
(実施例2〜10、比較例1〜5)
素子1の調製において、第3層の化合物(1−1)を、表1に示す一般式(1)で表される化合物及び比較化合物(1)〜比較化合物(5)に置き換える以外は素子1と同様にして、素子2〜10、比較素子1〜5を得た。
【0342】
これらの素子を以下の方法で、効率、耐久性、駆動電圧の観点で評価した結果を表1に示す。
【0343】
(a)効率
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に輝度が1000cd/m付近の外部量子効率を輝度換算法により算出した。
外部量子効率が15%以上である場合を◎、12%以上15%未満である場合を○、10%以上12%未満である場合を△、10%未満である場合を×として、表1に示した。
(b)耐久性
各素子を、室温(20℃)で輝度が5000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させ続け、輝度が4000cd/mになるまでに要した時間を耐久性の指標とした。700時間以上である場合を◎、500時間以上700時間未満である場合を○、300時間以上500時間未満である場合を△、300時間未満である場合を×として、表1に示した。
(c)駆動電圧
各素子を輝度が1000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させる。この時の印加電圧を駆動電圧評価の指標とした。駆動電圧が6V未満である場合を◎、6V以上7V未満である場合を○、7V以上8V未満である場合を△、8V以上である場合を×として、表1に示した。
【0344】
【表1】

【0345】
本発明の化合物を用いることで、高効率であるとともに、低駆動電圧で、かつ、耐久性に優れた素子が得られることが分かった。
【0346】
発光装置、表示装置、照明装置の場合、各画素部で高い電流密度を通じて瞬間的に高輝度発光させる必要があり、本発明の発光素子はそのような場合に発光効率が高くなるように設計されているため、有利に利用することができる。
また、本発明の素子は車載用途などの高温環境で使用する際においても発光効率や耐久性にも優れ、発光装置、表示装置、照明装置に好適である。
【0347】
以下に実施例1〜25及び比較例1〜10で用いた、前掲の化合物及び比較化合物以外の化合物の構造を示す。
【0348】
【化82】

【0349】
【化83】

【0350】
【化84】

【0351】
【化85】

【符号の説明】
【0352】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子(有機EL素子)
11・・・有機層
12・・・保護層
14・・・接着層
16・・・封止容器
20・・・発光装置
30・・・光散乱部材
30A・・・光入射面
30B・・・光出射面
31・・・透明基板
32・・・微粒子
40・・・照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを有する有機電界発光素子であって、前記少なくとも一層の有機層のいずれか少なくとも一層に、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】


(一般式(1)において、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、R111〜R114は、各々独立に、水素原子、アルキル基、フッ素原子、又はシアノ基を表し、R115〜R117は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、nは1以上の整数を表す。R111〜R116の隣り合う2つが互いに結合して芳香族6員環を形成することはない。Laは、n価の芳香族基を表すが、縮合多環芳香族炭化水素基を表すことはない。Laが表す前記n価の芳香族基は更に置換基を有してもよい。
nが2以上であり、Laとして又はLaの一部として、一般式(1)に表記されているジベンゾフラン(Xが酸素原子のとき)又はジベンゾチオフェン(Xが硫黄原子のとき)が同一のベンゼン環に複数個結合する構造を有するとき、該ベンゼン環は、少なくとも一つの水素原子を有する。)
【請求項2】
Laが下記一般式(AR)で表される芳香族基又は一般式(AR)で表される芳香族基の複数が単結合で連結した基を含むn価の芳香族基であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化2】


(Aは、芳香環を形成する=C(R)−又は=N−を表し、Rは置換基を表す。Aとしての窒素原子の数は0〜3個である。なお、Aとして窒素原子を1〜3個有する場合は、複数のRが結合して環構造を形成してもよい。*は結合手を意味する。)
【請求項3】
Laが、前記一般式(AR)で表される芳香族基が2〜10個連結した芳香族基であることを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記発光層にイリジウム錯体を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記イリジウム錯体が、下記一般式(T−1)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【化3】

(一般式(T−1)中、RT3’、RT3、RT4、RT5及びRT6は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。
T3、RT4、RT5及びRT6は隣り合う任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基を有していてもよい。
T3’とRT6は、−C(R−C(R−、−CR=CR−、−C(R−、−O−、−NR−、−O−C(R−、−NR−C(R−及び−N=CR−から選択される連結基によって連結されて環を形成してもよく、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、更に置換基を有していてもよい。
環Qは窒素原子を1つ以上含む5員又は6員の芳香族複素環又は縮合芳香族複素環である。
(X−Y)は、補助配位子を表す。mは、1〜3の整数を表す。nは、0〜2の整数を表す。m+n=3である。)
【請求項6】
一般式(1)で表される化合物。
【化4】


(一般式(1)において、Xは各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、R111〜R114は、各々独立に、水素原子、アルキル基、フッ素原子、又はシアノ基を表し、R115〜R117は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、nは1以上の整数を表す。R111〜R116の隣り合う2つが互いに結合して芳香族6員環を形成することはない。Laは、n価の芳香族基を表すが、縮合多環芳香族炭化水素基を表すことはない。Laが表す前記n価の芳香族基は更に置換基を有してもよい。
nが2以上であり、Laとして又はLaの一部として、一般式(1)に表記されているジベンゾフラン(Xが酸素原子のとき)又はジベンゾチオフェン(Xが硫黄原子のとき)が同一のベンゼン環に複数個結合する構造を有するとき、該ベンゼン環は、少なくとも一つの水素原子を有する。)
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の、前記一般式(1)で表される化合物を含有する膜。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた発光装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた表示装置。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−80063(P2012−80063A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80874(P2011−80874)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】