説明

有機/無機複合材料およびそれを用いた耐火プレート

【課題】反応性官能基を有するポリマー、オリゴマーまたはコポリマーに十分に分散させた無機粒子を含む耐火複合材料を提供する。
【解決手段】無機粒子もまた、元々または表面修飾後に、有機/無機複合材料を形成するべく有機成分の対応する反応性官能基と反応できる反応性官能基を含む。複合材料が燃焼するあるいは火炎に曝された場合、有機成分は炭化層を形成し、無機粒子は吸収した熱を放射する。無機粒子はまた、無機および有機材料間の反応により、構造の機械特性をも強める。該有機/無機複合材料を含む耐火プレートも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本件出願は、2005年12月26日出願の台湾特許出願94146503号の優先権を主張する、2006年4月26日出願の出願11/410,913号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は優れた耐火性能を示す有機/無機複合材料および該有機/無機複合材料を含む耐火プレートに関する。
【背景技術】
【0003】
耐火あるいは難燃材料は建築材料や装飾材料として利用することができる。台湾特許第583,078号および第397,885号に開示されている建築材料は、主として、例えばパーライト(pearlite)(またはperlite)、MgCl2、MgO、CaCO3またはセメントなどの不燃性無機材料でできている耐火層として機能する積層を含む。また、強固な耐火積層板は、難燃剤、発泡剤および50〜80重量%の無機材料を混合した繊維または不織布よりなる柔軟性のある(flexible)基板から得ることができる。
【0004】
台湾特許第442,549号、第499,469号および第419,514号に開示されている装飾材料としての耐火塗料は、火炎にさらされた場合に発泡し膨張するような、発泡および膨張剤、炭化剤、難燃剤ならびに接着剤の組み合わせを含んでいる。米国特許第5,723,515号は、起泡剤、発泡剤、炭化剤、結合剤、溶剤および顔料を有する流体膨張性ベース材料(fluid intumescent base material)を含み、亀裂や収縮に対する耐性を向上させる難燃性塗料を開示している。米国特許第5,218,027号に開示されている化合物は、コポリマーあるいはターポリマー、低弾性率ポリマー(low modulus polymer)および合成炭化水素エラストマーからなる組成物より製造される。その難燃性添加剤は、組成物の少なくとも1重量%がオルガノポリシロキサンの形態であるという条件で、I族、II族あるいはIII族の金属水酸化物を含む。米国特許第6,262,161号は、火炎や発火源下での性能改善を示す、エチレンおよび/またはアルファオレフィン/ビニルあるいはビニリデンモノマーの充填インターポリマー組成物(filled interpolymer composition)および、それから製造される物品に関するものである。その物品はフィルム、シート、多層構造物、床、壁または天井の被覆物、発泡体、繊維、電子機器、またはワイヤーおよびケーブルアセンブリの形態とすることができる。従来の難燃性ポリマー組成物は、有機ポリマーと無機難燃剤とを物理的に混合することで得られ、一般的にカップリング剤あるいは界面活性剤が無機難燃剤の分散性を改善するため配合される。しかしながら、有機ポリマーは無機成分と反応せず、化学結合の形成によるよく組織された(well-structured)複合材料を形成しないため、従来の難燃性組成物は、火炎あるいは発火源にさらされると、容易に溶解、発火、または火滴(flaming drops)を生じ易い。
【0005】
特に図1のaおよびbに示すように、従来の耐火材料の加熱された領域は、発泡剤、膨張剤および炭化剤が含まれているため急速に炭化し、もとの体積の8〜10倍に膨張する。また一方、図1のcおよびdに示すように、長時間の加熱後、膨張炭化層(あるいは加熱された部分)はわずかに亀裂が入り、剥げ、そのため火炎や熱が直接内部の材料に伝わり、耐火性が無効となってしまう。ゆえに、改善された耐火材が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた耐火性を示す有機/無機複合材料および該有機/無機複合材料を含む耐火プレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来技術における問題に鑑みて、本発明では、反応性官能基を有するポリマー、コポリマーまたはオリゴマーに十分に分散させた種々の無機粒子を含む耐火性複合材料を利用する。無機粒子もまた、元々または表面修飾後に、有機/無機複合材料を形成するべく有機成分の対応する反応性官能基と反応する反応性官能基を含む。有機および無機成分間の反応により、有機ポリマーの機械特性および耐火特性が強化され、かつ向上される。よく組織された複合材料が、化学結合の形成により提供されるので、その表面に形成される炭化層は堅牢となると共に、剥離や亀裂を生ずることなくその構造的完全性を維持し、内部への直接的な熱の伝導を効果的に防ぐことができる。
【0008】
本発明の有機/無機複合材料は、第1の反応性官能基を有するポリマー、コポリマーまたはオリゴマー;および第2の反応性官能基を有する無機粒子を含み、第1および第2の反応性官能基間の反応により、無機粒子がポリマー、コポリマーまたはオリゴマーに化学結合する。
【0009】
本発明はさらに、開示した複合材料を含む耐火プレートを提供する。
【0010】
添付の図面を参照して、以下の実施形態において詳細な説明がなされる。
【0011】
本発明は、次の詳細な説明および実施例を添付の図面を参照して読むことにより、より完全に理解され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次の記載は本発明を実施する上での最良の形態である。この記載は、本発明の一般的な原理を説明することを目的になされるものであり、限定的な意味にとられるべきではない。本発明の範囲は添付した特許請求の範囲を参考にすることにより最良に判断される。
【0013】
有機/無機複合材料が燃焼する、あるいは火炎に曝されると、その有機成分は炭化層を形成し、かつその無機粒子は吸収した熱を放射する。無機粒子はまた、無機および有機材料間の反応を通し、構造の機械特性を強化し、これにより、表面に形成される炭化層が堅牢になると共に、亀裂や剥離を生ずることなくその構造的完全性を維持し、内部への直接的な熱の伝導を効果的に防ぐことができる。耐火材料は単なる難燃剤というだけではなく、内部の材料をも保護する。その結果、耐火能力の持続時間は著しく改善される。
【0014】
本発明において、元々または表面修飾後に反応性官能基を有する無機粒子は、ポリマー、モノマー、オリゴマー、プレポリマーまたはコポリマーなどの有機成分によく分散すると共に反応し、耐火および機械特性を高める。一般的に有機/無機複合材料は、10〜90重量%の有機成分および90〜10重量%の無機粒子を含み得る。有機/無機複合材料は、好ましくは30〜70重量%の有機成分および70〜30重量%の無機粒子を含み、より好ましくは40〜60重量%の有機成分および60〜40重量%の無機粒子を含む。
【0015】
得られる複合材料における有機成分には、ポリマー、コポリマーまたはオリゴマーが含まれ得る。本発明の目的で、「ポリマー」または「コポリマー」という用語は、数平均分子量が1500から100000ダルトンを超える範囲の化合物を意味し、一方「オリゴマー」は数平均分子量200〜1499ダルトンの範囲の化合物を意味する。
【0016】
有機/無機複合材料において、有機成分と無機粒子は、対応する反応性官能基の反応によって化学的に結合する。有機成分と無機粒子の反応性官能基には、−OH、−COOH、−NCO、−NH3、−NH2、−NHおよびエポキシ基が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、−COOHまたは−NCO基を有する有機成分(例えば有機酸または反応性ポリウレタン)は、−OH基を有する無機粒子(例えば、金属水酸化物)と反応させるために用いることができる。さらに、エポキシ基を有する有機成分は、−NH2基を有する無機粒子と反応させるために用いることができる。あるいは、−OH基を有する有機成分(例えば、ポリビニルアルコール)は、−COOHまたは−NCO基を有する無機粒子と反応させることができ、さらに、−NH2基を有する有機成分はエポキシ基を有する無機粒子と反応させることができる。
【0017】
本発明での使用に適した有機成分には、上述の反応性官能基を含む任意のモノマー、オリゴマー、モノポリマー、コポリマーまたはプレポリマーが含まれる。反応性官能基はポリマーの骨格または側鎖にあってもよい。好ましい有機成分には、ポリ有機酸(polyorganic acid)、ポリウレタン、エポキシ、ポリオレフィンおよびポリアミンが含まれる。ポリ有機酸には、ポリ(エチレン−アクリル酸)およびポリ(アクリル酸−マレイン酸)などのカルボン酸またはスルホン酸を含むモノポリマーまたはコポリマーが含まれる。エポキシの具体例としては、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジピン酸塩、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル樹脂、ポリフェノールエポキシ樹脂のグリシジルエーテルが含まれる。使用に適したポリアミン類には、ポリアミンおよびポリイミドがある。ポリアミンの具体例としては、ナイロン6((NH(CH25CO)n)、ナイロン66((NH(CH26−NH−CO(CH24CO)n)、およびナイロン12((NH(CH211CO)n)がある。ポリイミドには、4,4-オキシジアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、または2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどのジアミンが含まれ、かつ、ジアミンと、オキシジフタル酸無水物、ピロメリト酸二無水物あるいはベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの二無水物とを合成させたポリイミドも含まれる。使用に適したポリオレフィンには、オレフィンモノマーと上述の反応性官能基を有するモノマーとのコポリマーが含まれる。有機成分には、先に説明したポリマーのモノマー、オリゴマー、コポリマーおよびプレポリマーも含まれることに留意すべきである。さらに、有機成分は、単独で、あるいは2種またはそれ以上を混合して使用することが可能である。
【0018】
本発明での使用に適した無機粒子は、有機成分の官能基と反応することができる対応する官能基を元々または表面修飾後に備えたものである。好ましい無機粒子には、水酸化物、窒化物、酸化物、炭化物、金属塩および無機層状材料が含まれる。水酸化物には、Al(OH)3またはMg(OH)2などの金属水酸化物が含まれる。窒化物には、例えばBNやSi34が含まれる。炭化物には、例えばSiCが含まれる。金属塩には、例えばCaCO3が含まれる。無機層状材料には、例えば粘土、タルクおよび層状重水酸化物(LDH)が含まれ、このうち粘土はスメクタイト粘土、バーミキュライト、ハロイサイト、セリサイト、サポナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、雲母またはヘクトライトとすることが可能である。無機粒子は2種あるいはそれ以上を混合して使用してもよい。例えば、反応性官能基を有する粘土は、金属水酸化物と組み合わせて使用できる。好適な無機粒子としては、ミクロサイズ粒子とナノサイズ粒子がある。粒径が小さいほど単位重量当たりの表面積は大きいことから、直径1〜100nmのナノサイズ粒子が特に好ましい。
【0019】
有機成分と無機粒子は、共有結合あるいはイオン結合が形成されるように、直接混合し反応させることができる、あるいは反応を種々の溶媒(例えば、水、エタノールまたはメチルエチルケトン)中で行うことができる。反応温度は一般に室温から約150℃までであり、反応時間は、用いる出発物質によって10分から数日の間で変わる。図3は有機ポリマー/無機粒子複合材料のプロセスを説明するフローチャートである。図3に示すように、主鎖に反応性官能基(例えばR−COOH、式中、Rは炭素鎖を表す)を含む有機ポリマーを溶媒(例えば水、アルコールまたはMEK)と混合する。続いて、対応する反応性官能基(例えばM−OH、式中、Mは金属を表す)を有する無機粒子をポリマー溶液に加え、その混合物を70〜90℃にて20分から数時間、反応が完結するまで攪拌する。ポリマーのR−COOHと無機粒子のM−OH間の反応によってR−COO-+のスラリーが形成される(式中、Rは炭素鎖を表し、Mは金属を表す)。このスラリーをテフロン(登録商標)シート上に塗布した後、高温でそのスラリー層を乾燥および成形することにより、複合体試料層(composite sample layer)を得ることができる。試料層は複合材料の有機/無機の系に応じて硬くあるいは柔軟にすることができる。
【0020】
本発明の有機/無機複合材料は種々の方法により耐火プレート、フレークまたはフィルムに成形できる。「耐火プレート」という用語が、簡潔とする目的で本明細書全体を通し用いられるが、当然のことながら、それには厚さ0.5mm未満のフィルム、厚さ0.5から2mmのフレーク、または厚さ2mmを超えるプレートが含まれるということに留意されたい。好適な成形方法としては、従来の圧縮成形、射出成形、押し出し成形、カレンダー成形などが挙げられる。試料は成形するまでオーブン乾燥するか、あるいは室温におくことができる。
【0021】
本発明の耐火プレートは、耐火性を改善するために接着剤または機械的手段(例えば、ネジ、釘またはクランプ)で可燃性あるいは引火性物体の表面に取り付けることができる。さらに、耐火プレートは、他の可燃性あるいは引火性プレートと共にあるいはそれらを用いずに、多層構造に加工することができる。本発明の有機/無機複合材料が燃焼するかあるいは火炎に曝された場合、ポリマーは炭化層を形成し、かつ無機粒子は吸収した熱を放射する。無機粒子はさらに、無機および有機材料間の反応によって構造の機械特性を強化するため、これによって形成される炭化層が堅牢となると共に、剥離や亀裂を生じることなしにその構造的完全性を維持し、内部への直接的な熱の伝導を有効に阻止できるようになる。耐火プレートは難燃性であるだけでなく、内部材料を保護するものでもある。その結果、耐火性が著しく延長する。好ましい実施形態において、耐火プレートは1000から1200℃の火炎温度で3分より長く耐えることができる。有機成分と無機粒子は化学的に結合するため(従来の物理的に混合された製品に比べ)、本発明の耐火複合材料は、火炎または発火源に曝されても溶解、発火せず、または火滴を生じない。
【0022】
本発明の耐火プレートは広範な用途がある。例えば、耐火性スペーサプレートあるいは耐火壁紙に適している。さらに、柔軟性のある耐火プレートに加工することもできる。従って、当業者は、特定の用途に応じ各種添加剤を加えることが可能である。例えば、メラミンリン酸塩(melamine phosphates)、赤燐およびリンベースの難燃剤などの難燃剤が、難燃性を向上させるために含まれていてもよい。シラン(例えばTEOSまたはTEVS)あるいはシロキサンが、構造的完全性を高めるためおよび硬化を促進するために含まれていてもよい。ガラス砂およびガラス繊維が、耐熱性の向上と構造的完全性の強化のために含まれていてもよい。これら添加物の量は一般的に有機/無機複合材料100重量部に対し0.1から20重量部である。
【実施例】
【0023】
耐火複合材料の実施例
実施例1
R−COOHを含むポリ(エチレン−アクリル酸)を水に溶解または分散させた。続いて反応性官能基M−OHを有する無機粒子Al(OH)3をポリマー溶液に加え、その混合物を70〜90℃で20分撹拌した。テフロン(登録商標)シート上に厚さ1mmの混合物のスラリーを塗布してから、オーブンに入れ60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で30分、140℃で30分、160℃で30分、180℃で30分乾燥し、最後に200℃で240分間成形した。
【0024】
図4に示すように、試料層20をテフロン(登録商標)シート(図示せず)から外し、A4用紙10上に置いた。ブタンガストーチ30により火炎温度1000〜1200℃(火炎40)で試料層20表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表1にまとめる。30、60および120秒の加熱後にA4用紙に焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後ではわずかに焦げた。
【0025】
この実施例によると、強化された試料層、すなわち、物理的な混合によってではなく、ポリ(エチレン−アクリル酸)のR−COOHとAl(OH)3のM−OHが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0026】
実施例2
R−COOHを含むポリ(エチレン−アクリル酸)を水に溶解または分散させた。続いて反応性官能基M−OHを有する無機粒子Mg(OH)2をポリマー溶液に加え、その混合物を70〜90℃にて20分撹拌した。テフロン(登録商標)シート上に厚さ1mmの混合物のスラリーを塗布してから、オーブンに入れ60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で30分、140℃で30分、160℃で30分、180℃で30分乾燥し、最後に200℃で240分間成形した。
【0027】
図4に示すように、試料層20をテフロン(登録商標)シート(図示せず)から外し、A4用紙10上に置いた。ブタンガストーチ30により火炎温度1000〜1200℃(火炎40)で試料層20表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表1にまとめる。30、60および120秒の加熱後にA4用紙に焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後ではわずかに焦げた。
【0028】
この実施例によると、強化された試料層により、すなわち、物理的な混合によってではなく、ポリ(エチレン−アクリル酸)のR−COOHとMg(OH)2のM−OHが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0029】
実施例3
R−COOHを含むポリ(アクリル酸−マレイン酸)を水に溶解または分散させた。続いて反応性官能基M−OHを有する無機粒子Al(OH)3をポリマー溶液に加え、その混合物を70〜90℃で20分撹拌した。テフロン(登録商標)シート上に厚さ1mmの混合物のスラリーを塗布してから、オーブンに入れ、60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で30分、140℃で30分、160℃で30分、180℃で30分乾燥し、最後に200℃で240分間成形した。
【0030】
図4に示すように、試料層20をテフロン(登録商標)シート(図示せず)から外し、A4用紙10上に置いた。ブタンガストーチ30により火炎温度1000〜1200℃(火炎40)で試料層20表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表1にまとめる。30、60および120秒の加熱後にA4用紙に焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後ではわずかに焦げた。
【0031】
この実施例によると、強化された試料層により、すなわち、物理的な混合によってではなく、ポリ(アクリル酸−マレイン酸)のR−COOHとAl(OH)3のM−OHが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火能力の持続時間は3分を超えた。
【0032】
実施例4
R−NCOを含むポリウレタンをヘキサンに溶解または分散させた。続いて反応性官能基M−OHを有する無機粒子Al(OH)3をポリマー溶液に加え、その混合物を室温にて20分撹拌した。テフロン(登録商標)シート上に厚さ1mmの混合物のスラリーを塗布してからオーブンに入れ、60℃にて120分間成形した。
【0033】
図4に示すように、試料層20をテフロン(登録商標)シート(図示せず)から外し、A4用紙10上に置いた。ブタンガストーチ30により火炎温度1000〜1200℃(火炎40)で試料層20表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表1にまとめる。30、60および120秒の加熱後にA4用紙に焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後ではわずかに焦げた。
【0034】
この実施例によると、強化された試料層により、すなわち、物理的な混合によってではなく、ポリウレタンのR−NCOとAl(OH)3のM−OHが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0035】
比較例1
R−COOHを含むポリ(エチレン−アクリル酸)を水に溶解または分散させた。続いて修飾されていない無機粒子SiO2をポリマー溶液に加え、その混合物を70〜90℃で20分撹拌した。テフロン(登録商標)シート上に厚さ1mmの混合物のスラリーを塗布してから、オーブンに入れ、60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で30分、140℃で30分、160℃で30分、180℃で30分乾燥し、最後に200℃で240分間成形した。
【0036】
図4に示すように、試料層20をテフロン(登録商標)シート(図示せず)から外し、A4用紙10上に置いた。ブタンガストーチ30により火炎温度1000〜1200℃(火炎40)で試料層20表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表1にまとめる。火炎が試料層の表面に接触すると、複合材料は数秒間で急速に融解し、その後30秒間で不規則に炭化した。その不均一な炭化物は、亀裂の形成により構造的完全性を失った。A4用紙は30秒の加熱後わずかに焦げ、60秒の加熱後に焦げた。最終的には120秒の加熱後、紙基材は大部分に亀裂が生じたため燃焼した。
【0037】
この比較例によると、ポリ(エチレン−アクリル酸)のR−COOHと修飾されていないSiO2が反応せず、化学結合の形成によるよく組織された複合材料が形成されなかったために、耐火持続時間は2分未満であった。
【0038】
比較例2
R−COOHを含むポリ(アクリル酸−マレイン酸)を水に溶解または分散させた。続いて修飾されていない無機粒子Al23をポリマー溶液に加え、その混合物を70〜90℃で20分間撹拌した。テフロン(登録商標)シート上に厚さ1mmの混合物のスラリーを塗布してから、オーブンに入れ、60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で30分、140℃で30分、160℃で30分、180℃で30分乾燥し、最後に200℃にて240分間成形した。
【0039】
図4に示すように、試料層20をテフロン(登録商標)シート(図示せず)から外し、A4用紙10上に置いた。ブタンガストーチ30により火炎温度1000〜1200℃(火炎40)で試料層20表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表1にまとめる。火炎が試料層の表面に接触すると複合材料は数秒間で急速に融解し、その後30秒間で不規則に炭化した。その不均一な炭化物は、亀裂の形成により構造的完全性を失った。A4用紙は30秒の加熱後わずかに焦げ、60秒の加熱後に焦げた。最終的には120秒の加熱後、紙基材は大部分に亀裂が生じたため燃焼した。
【0040】
この比較例によると、ポリ(アクリル酸−マレイン酸)のR−COOHと修飾されていないAl23が反応せず、化学結合の形成によるよく組織された複合材料が形成されなかったために、耐火持続時間は2分未満であった。
【0041】
比較例3
R−NCOを含むポリウレタンをヘキサンに溶解または分散させた。続いて修飾されていない無機粒子SiO2をポリマー溶液に加え、その混合物を室温で20分撹拌した。テフロン(登録商標)シート上に厚さ1mmの混合物のスラリーを塗布してから、オーブンに入れ、60℃で120分間成形した。
【0042】
図4に示すように、試料層20をテフロン(登録商標)シート(図示せず)から外し、A4用紙10上に置いた。ブタンガストーチ30により、火炎温度1000〜1200℃(火炎40)で、試料層20表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表1にまとめる。火炎が試料層の表面に接触すると、複合材料は数秒間で急速に融解し、その後30秒間で不規則に炭化した。その不均一な炭化物は、亀裂の形成により構造的完全性を失った。A4用紙は30秒から60秒の加熱後にわずかに焦げ、120秒の加熱後に焦げた。最終的には180秒の加熱後に、紙基材は大部分に亀裂が生じたため燃焼した。
【0043】
この比較例によると、ポリウレタンのR−NCOと修飾されていないSiO2が反応せず、化学結合の形成によるよく組織された複合材料が形成されなかったために、耐火持続時間は約2分であった。
【0044】
比較例4
R−OHを含むポリ(ビニルアルコール)を水に溶解または分散させた。続いて無機粒子Al(OH)3をポリマー溶液に加え、その混合物を70〜90℃で20分撹拌した。テフロン(登録商標)シート上に厚さ1mmの混合物のスラリーを塗布してから、オーブンに入れ、60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で30分、140℃で30分、160℃で30分、180℃で30分乾燥し、最後に200℃で240分間成形した。
【0045】
図4に示すように、試料層20をテフロン(登録商標)シート(図示せず)から外し、A4用紙10上に置いた。ブタンガストーチ30により火炎温度1000〜1200℃(火炎40)で試料層20表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表1にまとめる。火炎が試料層の表面に接触すると、複合材料は数秒間で急速に融解し、その後30秒間で不規則に炭化した。その不均一な炭化物は、亀裂の形成によりその構造的完全性を失った。A4用紙は30秒の加熱後にわずかに焦げ、60秒の加熱後に焦げた。最終的には120秒の加熱後に、紙基材は大部分に亀裂が生じたため燃焼した。
【0046】
この比較例によると、ポリ(ビニルアルコール)のR−OHとAl(OH)3のM−OHが反応せず、化学結合の形成によるよく組織された複合材料が形成されなかったために、耐火持続時間は2分未満であった。
【0047】
有機ポリマーと無機粒子の対応する反応性官能基間の化学結合により、表面上に形成された炭化層は、優れた構造的完全性を伴って堅牢となり、容易に割れたり剥離したりすることなく、内部への直接的な熱伝達が効果的に防がれるようになる。該耐火材料は難燃性であるだけでなく、内部構造をも保護する。その結果、耐火性が著しく延長する。
【0048】
【表1】

【0049】
耐火プレートの実施例
実施例5
10gのポリ(エチレン−アクリル酸)を反応容器に入れ、80〜120℃で予熱して溶かしてから、300rpmで撹拌した。10.8gの脱イオン水と10.8gのアンモニア水を反応容器に加え、10分撹拌後に白色のエマルジョンを得た。続いて、10gの水酸化アルミニウム粉末を反応容器に加え、10分撹拌後白色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込んでから、オーブンに入れ60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で30分、140℃で30分、160℃で30分、180℃で30分乾燥し、最後に200℃で240分間成形した。
【0050】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。30、60および120秒の加熱後のA4用紙上には焦げは観察されなかったが、180秒の加熱ではわずかに焦げた。
【0051】
この実施例によると、強化された試料層により、すなわち、物理的な混合によってではなく、ポリ(エチレン−アクリル酸)のR−COOHとAl(OH)3のM−OHが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0052】
実施例6
10gのポリ(エチレン−アクリル酸)を反応容器に入れ、80〜120℃で予熱して溶かしてから、300rpmで撹拌した。続いて、10gの水酸化アルミニウム粉末を反応容器に加え、10分撹拌後白色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込んでから、オーブンに入れ、60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で30分、140℃で30分、160℃で30分、180℃で30分乾燥し、最後に200℃で240分間成形した。
【0053】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。30、60および120秒の加熱後のA4用紙には焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後ではわずかに焦げていた。
【0054】
この実施例によると、強化された試料層により、すなわち、物理的な混合によってではなく、ポリ(エチレン−アクリル酸)の−COOHとAl(OH)3の−OHが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0055】
実施例7
20gのポリ(アクリル酸−マレイン酸)(固形分50wt%)を反応容器に入れ、80〜90℃に予熱してから、300rpmで撹拌した。反応容器に10gのアンモニア水を加え10分間撹拌した。続いて10gの水酸化アルミニウム粉末を反応容器に加え、10分撹拌後に黄色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込んでから、オーブンに入れ、60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で30分、140℃で30分、160℃で30分、180℃で30分乾燥し、最後に200℃で240分間成形した。
【0056】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。30、60および120秒の加熱後のA4用紙上には焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後ではわずかに焦げた。
【0057】
この実施例によると、強化された試料層により、すなわち、物理的な混合によってではなく、ポリ(アクリル酸−マレイン酸)の−COOHとAl(OH)3の−OHが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0058】
実施例8
8%の反応性イソシアネート基を含む50gの反応性ポリウレタンを反応容器に入れ、300rpmで撹拌した。続いて50gの水酸化アルミニウム粉末を反応容器に加え、5分撹拌後に白色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込んでから、室温で24時間乾燥した。
【0059】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。30、60および120秒の加熱後のA4用紙上には焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後ではわずかに焦げていた。
【0060】
この実施例によると、強化された試料層により、すなわち、物理的な混合によってではなく、反応性ポリウレタンの−NCOとAl(OH)3の−OHが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0061】
実施例9
8%の反応性イソシアネート基を含む50gの反応性ポリウレタンを反応容器に入れ、300rpmで撹拌した。続いて45gの水酸化マグネシウム粉末と−OH基を含む5gの修飾されたナノクレイ(サザンクレイプロダクト(Southern Clay Product)社製、Cloisite30B)を反応容器に加え、5分撹拌後に白色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込んでから、室温で24時間乾燥した。
【0062】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。30、60および120秒の加熱後のA4用紙上には焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後ではわずかに焦げた。
【0063】
この実施例によると、強化された試料層により、すなわち、物理的な混合によってではなく、反応性ポリウレタンの−NCOとMg(OH)3およびナノクレイの−OHとが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0064】
実施例10
図5を参照にすると、実施例9の耐火プレート20をA4用紙10上に置き、ブタンガストーチ30により火炎温度1000〜1200℃(火炎40)で耐火プレートの表面に対し180秒間、A4用紙10の裏面に温度上昇をモニターするための温度検出器50の熱電対60を接触させながら、燃焼試験を行った。厚さ2mmの市販の膨張型耐火プレート(YUNG CHI PAINT & VARNISH MFG. CO.,LTD製、FM−900)について同じ燃焼試験を行った。図6に示すように、市販の膨張型耐火プレート下方の温度は急速に上昇し、60秒の加熱後に200℃になった。それと比較して、実施例5の耐火プレート下方の温度はゆっくり上昇し、100秒間かけて200℃になった。
【0065】
この実施例によると、強化された試料層により、つまり、物理的な混合によってではなく、反応性ポリウレタンの−NCOとMg(OH)3およびナノクレイの−OHとが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間が顕著に改善された。
【0066】
実施例11
7.6%の反応性イソシアネート基を含む50gの反応性ポリウレタンを反応容器に入れ、300rpmで撹拌した。続いて、表面に−OH官能基を有する、修飾された二酸化チタン粉末50gを反応容器に加え、5分撹拌後に白色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込み、室温で24時間乾燥し、最後にオーブンで80℃、24時間成形した。
【0067】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。30、60および120秒の加熱後のA4用紙上には焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後はわずかに焦げていた。
【0068】
この実施例によると、強化された試料層により、つまり、物理的な混合によってではなく、反応性ポリウレタンの−NCOと修飾されたTiO2の−OHとが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0069】
実施例12
7.6%の反応性イソシアネート基を含む40gの反応性ポリウレタンを反応容器に入れ、300rpmで撹拌した。表面に−OH官能基を有する、修飾された二酸化チタン粉末50gを反応容器に加え、3分間撹拌した。続いて、10gのPPG400(ポリプロピレングリコール:Mw=400)を反応容器に加え、2分撹拌後、白色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込み、室温で24時間乾燥し、最後にオーブンで80℃にて24時間成形した。
【0070】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。そのプレートは優れた柔軟性を有し、曲率半径約3cmであった。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。30、60および120秒の加熱後のA4用紙上に焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後はわずかに焦げていた。
【0071】
この実施例によると、強化された試料層により、つまり、物理的な混合によってではなく、反応性ポリウレタンの−NCOと修飾されたTiO2の−OHとが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0072】
実施例13
8%の反応性イソシアネート基を含む40gの反応性ポリウレタンを反応容器に入れ、300rpmで撹拌した。続いて、表面に−OH官能基を有する、修飾された二酸化チタン粉末45gと、−OH基を含む修飾されたナノクレイ(サザンクレイプロダクト社製、Cloisite30B)5gとを反応容器に加え、3分間撹拌した。次に、10gのPPG400(ポリプロピレングリコール:Mw=400)を反応容器に加え、2分撹拌後、薄黄色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込み、室温で24時間乾燥し、最後にオーブンで80℃にて24時間成形した。
【0073】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。プレートは優れた柔軟性を有し、曲率半径約3cmであった。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。30、60および120秒の加熱後のA4用紙上には焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後はわずかに焦げていた。
【0074】
この実施例によると、強化された試料層により、つまり、物理的な混合によってではなく、反応性ポリウレタンの−NCOとナノクレイおよび修飾されたTiO2の−OHとが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続時間は3分を超えた。
【0075】
実施例14
20gの3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオンカーバイド(Union Carbide)社製、E4221エポキシ樹脂)を反応容器に入れ、300rpmで撹拌してから、硬化剤としてMeHHPA(ヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸無水物)を過剰量(8g、等量比E4221/MeHHPA=1/1.14)と、触媒としてBDMA(N,N−ジメチルベンジルアミン)0.1gとを加えた。5分撹拌後、48.1gの水酸化アルミニウム粉末を反応容器に加え、10分の撹拌後白色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmおよび100×100×4mmのテフロン(登録商標)型に流し込み、120℃にて1時間乾燥した。
【0076】
厚さ2mmおよび4mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。厚さ2mmの成形プレートについては、30および60秒の加熱後にA4用紙に焦げは観察されなかったが、120秒の加熱後はわずかに焦げ、さらに180秒の加熱後には焦げた。厚さ4mmの成形プレートについては、30、60秒および120秒の加熱後にA4用紙に焦げは観察されなかったが、180秒の加熱後はわずかに焦げていた。
【0077】
この実施例によると、強化された試料層により、つまり、物理的な混合によってではなく、エポキシ樹脂の無水基(anhydride groups)(過剰MeHHPA由来)とAl(OH)3の−OH基とが反応して化学結合が形成されたことにより、耐火持続期間は3分を超えた。
【0078】
比較例5
8%の反応性イソシアネート基を含む50gの反応性ポリウレタンを反応容器に入れ、300rpmで撹拌した。続いて、50gの修飾されていない二酸化ケイ素粉末を反応容器に加え、5分撹拌後に白色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込んでから、室温で24時間乾燥し、最後にオーブンで80℃にて24時間成形した。
【0079】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。火炎が試料層の表面に接触すると、複合材料は数秒間で急速に融解し、その後30秒間で不規則に炭化した。不均一な炭化物は、亀裂の形成によりその構造的完全性を失った。A4用紙は30秒の加熱後わずかに焦げ、60秒の加熱後に焦げた。最終的には120秒の加熱後に、用紙は大部分に亀裂が生じたために燃焼した。
【0080】
この比較例によると、修飾されていないSiO2表面とポリウレタンの−NCOとが反応できずに化学結合の形成によるよく組織された複合材料が形成され得なかったため、プレートは1000〜1200℃の火炎温度に耐えることができなかった。
【0081】
比較例6
反応性イソシアネート基を含まない50gのポリウレタンを反応容器に入れ、300rpmで撹拌した。続いて、50gの水酸化アルミニウム粉末を反応容器に加え、5分撹拌後に白色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込んでから、オーブンにて60℃で120分、80℃で120分、100℃で120分乾燥し、最後に120℃で360分間成形した。
【0082】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。火炎が試料層の表面に接触すると、複合材料は数秒間で急速に融解し、その後30秒間で不規則に炭化した。不均一な炭化物は、亀裂の形成によりその構造的完全性を失った。A4用紙は30秒の加熱後に焦げた。最終的には60秒の加熱後に、用紙は大部分に亀裂が生じたために燃焼した。
【0083】
この比較例によると、ポリウレタンが水酸化アルミニウムの−OHと反応する反応性官能基を持たないために化学結合の形成によるよく組織された複合材料が形成されなかったことから、プレートは1000〜1200℃の火炎温度に耐えることができなかった。
【0084】
比較例7
−OH基を含むポリ(ビニルアルコール)50gを水に溶かしてから、300rpmで撹拌した。続いて、50gの水酸化アルミニウム粉末をポリ(ビニルアルコール)に加え、70〜90℃にて20分撹拌した後白色のスラリーを得た。そのスラリーを100×100×2mmのテフロン(登録商標)型に流し込んでから、オーブンに入れ60℃で60分、80℃で60分、100℃で60分、120℃で30分、140℃で30分、160℃で30分、180℃で30分間乾燥し、最後に200℃で240分間成形した。
【0085】
厚さ2mmの成形プレートをテフロン(登録商標)型から外し、A4用紙上に置いた。ブタンガストーチにより火炎温度1000〜1200℃で耐火プレートの表面に対し30秒から3分間燃焼試験を行った。A4用紙の燃焼現象の結果を表2にまとめる。火炎が試料層の表面に接触すると、複合材料は数秒間で急速に融解し、その後30秒間で不規則に炭化した。不均一な炭化物は、亀裂の形成によりその構造的完全性を失った。A4用紙は30秒の加熱後にわずかに焦げ、60秒の加熱後に焦げた。最終的には120秒の加熱後、用紙は大部分に亀裂が生じたために燃焼した。
【0086】
この比較例によると、水酸化アルミニウムの−OH基とポリ(ビニルアルコール)の−OHとが反応できずに化学結合の形成によるよく組織された複合材料が形成され得なかったため、1000〜1200℃の火炎温度に耐えることができなかった。
【0087】
【表2】

【0088】
本発明を実施例の方式により、および好ましい実施形態の点から記載したが、本発明はこれらに限定はされないと解されるべきである。反対に、(当業者に明らかであるような)各種変更および類似のアレンジをカバーすることが意図されている。したがって、添付の特許請求の範囲は、かかる各種変更および類似のアレンジが全て包含されるように、最も広い意味に解釈されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】燃焼試験を行った従来の膨張型耐火材料を示す。
【図2】燃焼試験を行った本発明の有機ポリマー/無機粒子複合材料を示す。
【図3】有機ポリマー/無機粒子複合材料の合成プロセスを説明するフローチャートである。
【図4】有機ポリマー/無機粒子複合材料の試料に対する燃焼試験を説明する概略図である。
【図5】実施例10におけるA4用紙の温度測定を説明する概略図である。
【図6】加熱時間の関数としてA4用紙の裏面温度を示す図であり、実施例9の耐火プレートと市販の耐火塗装材料が比較される。
【符号の説明】
【0090】
10 A4用紙
20 試料層
30 ブタンガストーチ
40 火炎
50 温度検出器
60 熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の反応性官能基を有するポリマー、コポリマーまたはオリゴマー;および
第2の反応性官能基を有する無機粒子を含み、
該第1および第2の反応性官能基間の反応により、該無機粒子が該ポリマー、コポリマーまたはオリゴマーに化学結合する有機/無機複合材料。
【請求項2】
10〜90重量%の前記ポリマー、コポリマーまたはオリゴマーと、90〜10重量%の前記無機粒子とを含む請求項1記載の有機/無機複合材料。
【請求項3】
30〜70重量%の前記ポリマー、コポリマーまたはオリゴマーと、70〜30重量%の前記無機粒子とを含む請求項1記載の有機/無機複合材料。
【請求項4】
前記第1および第2の反応性官能基には、それぞれ−OH、−COOH、−NCO、−NH3、−NH2、−NHまたはエポキシ基が含まれる請求項1記載の有機/無機複合材料。
【請求項5】
前記有機成分には、ポリ酸、ポリウレタン、エポキシ、ポリオレフィンまたはポリアミンが含まれる請求項1記載の有機/無機複合材料。
【請求項6】
前記無機粒子には、水酸化物、窒化物、酸化物、炭化物、金属塩または無機層状材料が含まれる請求項1記載の有機/無機複合材料。
【請求項7】
前記水酸化物には金属水酸化物が含まれる請求項6記載の有機/無機複合材料。
【請求項8】
前記金属水酸化物にはAl(OH)3またはMg(OH)2が含まれる請求項7記載の有機/無機複合材料。
【請求項9】
前記窒化物にはBNまたはSi34が含まれる請求項6記載の有機/無機複合材料。
【請求項10】
前記酸化物にはSiO2、TiO2またはZnOが含まれる請求項6記載の有機/無機複合材料。
【請求項11】
前記炭化物にはSiCが含まれる請求項6記載の有機/無機複合材料。
【請求項12】
前記金属塩にはCaCO3が含まれる請求項6記載の有機/無機複合材料。
【請求項13】
前記無機層状材料には粘土、タルクまたは層状重水酸化物(LDH)が含まれる請求項6記載の有機/無機複合材料。
【請求項14】
1000および1200℃の間の火炎温度に3分より長く耐えることができる請求項1記載の有機/無機複合材料。
【請求項15】
第1の反応性官能基を有するポリマー、コポリマーまたはオリゴマー;および
第2の反応性官能基を有する無機粒子を含む有機/無機複合材料を含み、
該第1および第2の反応性官能基間の反応により、該無機粒子が該ポリマー、コポリマーまたはオリゴマーに化学結合する耐火プレート。
【請求項16】
前記有機/無機複合材料が、10〜90重量%の前記有機成分および90〜10重量%の前記無機粒子を含む請求項15記載の耐火プレート。
【請求項17】
前記有機/無機複合材料が、30〜70重量%の前記有機成分、および70〜30重量%の前記無機粒子を含む請求項15記載の耐火プレート。
【請求項18】
前記第1および第2の反応性官能基には、それぞれ−OH、−COOH、−NCO、−NH3、−NH2、−NHまたはエポキシ基が含まれる請求項15記載の耐火プレート。
【請求項19】
前記有機成分には、ポリ酸、ポリウレタン、エポキシ、ポリオレフィンまたはポリアミンが含まれる請求項15記載の耐火プレート。
【請求項20】
前記無機粒子には、水酸化物、窒化物、酸化物、炭化物、金属塩または無機層状材料が含まれる請求項15記載の耐火プレート。
【請求項21】
前記水酸化物には金属水酸化物が含まれる請求項20記載の耐火プレート。
【請求項22】
前記金属水酸化物にはAl(OH)3またはMg(OH)2が含まれる請求項21記載の耐火プレート。
【請求項23】
前記窒化物にはBNまたはSi34が含まれる請求項20記載の耐火プレート。
【請求項24】
前記酸化物にはSiO2、TiO2またはZnOが含まれる請求項20記載の耐火プレート。
【請求項25】
前記炭化物にはSiCが含まれる請求項20記載の耐火プレート。
【請求項26】
前記金属塩にはCaCO3が含まれる請求項20記載の耐火プレート。
【請求項27】
前記無機層状材料には粘土、タルクまたは層状重水酸化物(LDH)が含まれる請求項20記載の耐火プレート。
【請求項28】
添加剤をさらに含む請求項15記載の耐火プレート。
【請求項29】
前記添加剤には難燃剤、シラン、シロキサン、ガラス砂またはガラス繊維が含まれる請求項28記載の耐火プレート。
【請求項30】
厚さが0.5mm未満である請求項15記載の耐火プレート。
【請求項31】
厚さ0.5mmおよび2mmの間である請求項15記載の耐火プレート。
【請求項32】
厚さが2mmを超える請求項15記載の耐火プレート。
【請求項33】
多層構造を形成するよう前記有機/無機複合材料上に積層される可燃性または引火性プレートをさらに含む請求項15記載の耐火プレート。
【請求項34】
スペーサ耐火プレートとして利用される請求項15記載の耐火プレート。
【請求項35】
耐火壁紙として利用される請求項15記載の耐火プレート。
【請求項36】
柔軟性のある耐火プレートである請求項15記載の耐火プレート。
【請求項37】
1000および1200℃の間の火炎温度に3分より長く耐えることができる請求項15記載の耐火プレート。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−197704(P2007−197704A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−348594(P2006−348594)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】