説明

有機ELディスプレイパネル修正設備及び修正方法

【課題】本発明は、微小な欠陥を検出することができ、または/及び画素修復の成功率が高く、或いは/並びに自動化が容易で生産性の高い有機ELディスプレイパネル修正設備及び修正方法を提供することにある微小な欠陥を検出でき、欠陥修復成功率や設備安定性が高く、パラメータ設定が容易で量産性の高い有機ELディスプレイパネル修正設備を提供する。
【解決手段】本発明は、有機EL膜による画素が形成されたマザー基板上の前記画素の欠陥をレーザ光を照射して修正する際に、前記欠陥の位置情報と大きさに基づいて前記レーザ光を透過させる光透過パターンを有するホトマスクを介して前記欠陥の位置に照射することを第1の特徴とする。また、非点灯不良画素の画像と正常画素との画像を比較して非点灯不良画素内の前記欠陥の位置と大きさを検出することを第2の特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイパネルの黒点などの欠陥を修正する有機ELディスプレイパネル修正設備及び修正方法に適用する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイパネルは液晶パネルに比べて表色範囲が広い、輝度が高い、応答が速い、視野角が広いといった優れた表示性能に加え、消費電力が低く薄型軽量化が図り易いために、携帯電話やDSC(デジタルスチルカメラ)、PMP(ポータブルマルチメディアプレイヤー)といった2〜4インチクラスの小型パネル分野で急速に普及拡大が進みつつある。一方、近年、ノートPC、モニタ、大型TVといった大型パネルを必要とするデジタル製品への応用展開の機運が高まり、ディスプレイ関連学会や展示会ではアクティブ型の大型有機ELディスプレイパネルの試作発表が相次ぎ、Yang Wan Kim et. al., SID ’09 Digest, p.85 (2009) )(非特許文献1)の報告に見られるように最大対角40インチの有機ELディスプレイパネルの試作品が発表されるに至った。しかしながら、今後の量産化に際しては幾つかのハードルがあり、なかでも大型化に伴う歩留まり低下が大きな懸念事項として顕在化しつつある。すなわち、パネル面積が大きくなればパネル単価は高くなる一方で欠陥確率が増大して歩留まりが低減するため、パネル製造事業では大きな損失原因となる。このため、Tsujimura et. al., IDW’08 Proceedings p. 145(2008) )(非特許文献2)の報告でも指摘しているように、欠陥による歩留まり低減を克服するために、大型パネルにおいては小型パネルとは異なった高歩留まり戦略が重要となる。その解決策の重要なアプローチの一つとして、欠陥を修正して不良パネルを良品パネルとする工業的に合理的な修正技術が強く求められている。
【0003】
アクティブ型有機ELディスプレイパネルの製造工程は、一般的に図1に示すようにマザー基板上に薄膜TFTを形成するバックプレーン工程、有機EL薄膜層、上部電極層、下部電極層、バリア層等を形成する有機EL膜形成工程、水分や活性酸素による寿命低下を抑制する為に、前記工程でTFTと有機EL素子が作りこまれたマザー基板をカバーガラスで機密封止する封止工程、パネル単位に切断する切断工程、パネルの良不良を判定する点灯検査工程、外付けLSIを搭載する実装工程、LSI搭載後のパネル良否を判定する最終点灯検査工程、とから構成される。これらの工程の中で、バックプレーン工程と有機EL膜形成工程は、液晶のTFT工程と同様に異物起因の欠陥で表示不良を引き起こすポテンシャルが非常に高い。特に、有機EL膜形成工程では、有機EL発光層の総膜厚は100nm前後と非常に薄く、上部電極と下部電極の間に有機EL薄膜層の厚さを超える導電性異物が存在すると、上下電極が電気的に短絡して通電しても点灯しない欠陥画素となる。
有機ELディスプレイパネルの欠陥画素の修正技術としては、これまで特許文献1、2に記載の技術が知られている。
【0004】
特許文献1記載の技術によれば、単純マトリクス駆動するパッシブ型有機ELディスプレイパネルで、欠陥画素に対応する金属電極から、短絡等の発生領域をレーザで除去することにより、金属電極と透明電極の間の短絡が解消され、部分的に除去された金属電極と透明電極の間の有機発光層が発光可能となる為、欠陥画素が修復される。
【0005】
特許文献2では、有機発光層とこれを挟む上下の電極からなる有機EL表示装置において、有機EL膜が発光するか否を検査し、発光しない場合に透明電極側から異物を検出し、この異物を囲む帯状の領域を透明電極側からレーザ照射することにより、対向する不透明電極薄膜を帯状に除去することで上下電極の短絡を解消する欠陥画素修復方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-118684号公報
【特許文献2】特開2005-276600号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yang Wan Kim et. al., SID ’09 Digest, p.85 (2009)
【非特許文献2】Tsujimura et. al., IDW’08 Proceedings p. 145(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在量産されている携帯電話等の製品は、2〜3インチ程度とパネルサイズが小さいために画素修復をしなくとも歩留まりが確保されるので大きな問題とはなっていないが、上記のごとく、今後量産化が始まる大画面有機ELディスプレイパネルに対しては、生産性の高い新しい欠陥画素修復手段が求められている。
【0009】
生産性の高い欠陥画素修復手段を実現するためのキーポイントとしては、欠陥の原因となる異物の大きさが非常に微小であっても高い確率で検出することができることと、修復成功率が高く、インライン完全自動化に対応できる安定な欠陥修復手段を見出すことが課題となる。前述したように、有機EL発光層の総膜厚は100nm前後非常に薄く、従って欠陥原因となる異物は100nm程度の非常に微小な大きさのものも問題となり、異物を検出する観察系としては、この大きさに対応できる高感度な手段が求められる。また、特にトップエミッション構造の有機ELデバイスでは、有機EL発光層の下層にTFTパターンが形成される場合が多いので、微小異物はこのパターンの影響で検出しにくくなる。レーザ照射による画素修復では、除去すべき異物の大きさ、形状、材質の違いによってエネルギー吸収の違いが生じて除去性に大きなばらつきが生じ、欠陥画素修復の成功率が低減する課題がある。異物の大きさ毎にビーム径を変化させる方法や、ビームを走査して所望の形状に除去する方法は、複雑な手順が必要となり、設備のインライン完全自動化には大きな障害となってなる。そこで、工業的に合理的な欠陥画素修復手段を得るためには、微小な欠陥を検出でき、欠陥修復成功率や安定性が高く、パラメータ設定が容易で量産性の高い欠陥画素修復設備が強く求められている。
【0010】
本発明の目的は、微小な欠陥を検出することができ、または/及び画素修復の成功率が高く、或いは/並びに自動化が容易で生産性の高い有機ELディスプレイパネル修正設備及び修正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するために、有機EL素子による画素が形成されたマザー基板上の前記画素の欠陥をレーザ光を照射して修正する際に、前記欠陥の位置情報と大きさに基づいて前記レーザ光を透過させる光透過パターンを有するホトマスクを介して前記欠陥の位置に照射すること第1の特徴とする。
【0012】
本発明の第1の特徴によれば、検出された異物の不良画素内の位置と大きさに基づいて、ホトマスクの透過パターンによって確実に黒点などの欠陥を修正することができる。
【0013】
また、本発明は、上記の目的を達成するために、第1の特徴に加え、非点灯不良画素の画像と正常画素との画像を比較して非点灯不良画素内の前記欠陥の位置と大きさを検出することを第2の特徴とする。
本発明の第2の特徴によれば、本発明による修正設備の観察系における微小な欠陥の検出は、非点灯不良画素の画像と隣接する同色の正常画素の画像の差画像を取ることにより、バックグラウンド信号が消去されて例えば異物のコントラストを向上させることができる。また、トップエミッション構造のように、有機発光層の下層にTFTパターンがあっても差画像ではこれらが消去されて異物のみ強調されるので検出が容易になる。検出された異物は、不良画素内の位置と大きさを測定することができるので、位置情報と大きさ情報を取得することができ、また、大きさ情報はレーザ照射の際のパラメータとして大きさ別に分類してデータストアする。
【0014】
さらに、本発明は、上記の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記光透過パターンは前記欠陥の周囲を囲んで帯状に除去できるパターンであることを第3の特徴とする。
本発明の第3の特徴によれば、欠陥の周囲を帯状に囲む光透過パターンが設けられたホトマスクを介してレーザ照射することで欠陥修復成功率を向上することができる。前述のように、異物を含んだ領域をレーザ除去しようとすると、除去すべき異物の大きさ、形状、材質の違いによってエネルギー吸収の違いが生じて除去性に大きなばらつきが生じ、欠陥画素修復の成功率が低減する。異物にレーザ光をあてず、その周辺を除去すれば電気的短絡状況を解消できるので画素は修復する。そこで、欠陥の周囲を囲んで帯状に除去できる光透過パターンのレーザ光を照射すれば、常に同質の物質を除去することができるので異物の物性に影響を受けることが無い。また、ホトマスクで帯状に除去できる光透過パターンでビームを生成すれば、異物径によってレーザ光の大きさや強度を調整する必要が無く、またレーザ光を異物の周りにスキャンする複雑さが解消される。
【0015】
また、本発明は、上記の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記光透過パターンは前記欠陥より大きな径の透過パターンであることを第4の特徴とする。
本発明の第4の特徴によれば、異物などの欠陥の径を十分に上回る大きなビームの照射を用い、異物の大きさ情報に従って、異物径より大きく且つ除去範囲を小さくできるホトマスクパターンを用い、これを介して異物位置にレーザ照射することで画素を修復することができる。この時、予めビーム内強度均一性を高めておいたレーザ光を用いることで、常に均一性の高いレーザ光を照射することができるので、除去安定性を高くできる。また、ビーム径を必要最小限にすることにより、加工部面積を抑えることができ、回復後の画素の輝度低減を抑えることができる。
【0016】
さらに、本発明は、上記の目的を達成するために、第3または第4の特徴に加え、前記ホトマスクは大きさを変えた前記透過パターンを複数個有し、前記欠陥の大きさに合わせて前記透過パターンを選択することを第5の特徴とする。
また、本発明は、上記の目的を達成するために、第3または第4の特徴に加え、前記ホトマスクは前記透過パターンの大きさを変えて複数個有し、前記欠陥の大きさに合わせて前記ホトマスクを選択することを第6の特徴とする。
【0017】
本発明の第5または第6の特徴によれば、異物の大きさ情報に従って、異物径より大きく且つ除去範囲を小さくできるホトマスクパターンを選択し、これを介して異物位置にレーザ照射することで欠陥を修正することができる。照射径を小さく抑えることにより、加工部面積を抑えることができ、回復後の画素の輝度低減を抑えることができる。
また、本発明の第3の特徴と本発明の第5または第6の特徴によれば、光透過パターンが欠陥の周囲を囲んで帯状に除去できる光透過パターンであって、該光透過パターンの大きさを変えて複数個設けたホトマスクを具備し、欠陥の大きさに合わせて除去領域を最小現にする光透過パターンを選択してレーザ照射する機構とすることで、レーザ照射に要する時間を短縮することができる。即ち、観察系の異物情報によって、複数儲けた光透過パターンの中から最適なものを選択し、異物直上にホトマスクを移動させてレーザ照射するため設備動作が少ない。従って、画素修復時間が短縮でき、生産性が向上する。特に多数の画素を修復しなければならない修正設備では処理時間の短縮が不可欠で、本発明による修正設備はこの点に有効な構成になっているのでインライン化に有利である。
【0018】
さらに、本発明は、上記の目的を達成するために、第3乃至第4のいずれかの特徴に加え、前記マザー基板を保持するステージと前記レーザ照射系及び前記観察系とを内部に有する構造体を具備し、前記構造体の内部を水分除去機構又は不活性乾燥ガスによって低湿度に制御することを第7の特徴とする。
本発明の第7の特徴によれば、有機ELディスプレイパネルの発光寿命確保をすることができる。
【0019】
また、本発明は、上記の目的を達成するために、第3乃至第4のいずれかの特徴に加え、前記マザー基板を保持するステージを内部に載置する構造体を具備し、前記レーザ光照射するレーザ発振器は前記構造体の外に設けられ、前記構造体に設けられた透過窓を介して前記レーザ光を照射することを第8の特徴とする。
【0020】
最後に、本発明は、上記の目的を達成するために、第3乃至第4のいずれかの特徴に加え、前記マザー基板を保持するステージを内部に載置する構造体を具備し、前記観察系は前記構造体の外に設けられ、前記構造体に設けられた透過窓を介して前記欠陥の位置と大きさを検出することを第9の特徴とする。
本発明の第8または第9の特徴によれば、不活性乾燥ガスの使用量低減や結露点管理の為に、内容積を低減した構造とすることができる。即ち、基板を保持するステージは、水分除去機構又は不活性乾燥ガスによって低湿度に制御された構造体の中にあり、該構造体には検査に必要な光やレーザを透過するガラス製の窓が設けられ、画素内欠陥の観察系、修正用レーザ光照射系が該構造体の外にあって、前記ガラス製の窓を介して修正する有機ELディスプレイパネル修正設備とすることで、不活性乾燥ガスを必要とする内容積を著しく低減することができる。
尚、本発明と関連する非点灯不良画素の位置を検出する手段の例としては、マザー基板上の有機ELディスプレイパネルに対し、バックプレーン工程で各パネルに給電する点灯検査専用配線及び電極を設け、このマザー基板に対して専用プローバを用いて給電して全画素を発光させ、非点灯画素を検出する方法があげられる。最終パネル形態が樹脂封止構造やカラーフィルタを組み合わせた構造であっても画素欠陥を修復することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、微小な欠陥を検出することができ、または/及び画素修復の成功率が高く、或いは/並びに自動化が容易で生産性の高い有機ELディスプレイパネル修正設備及び修正方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】アクティブ型有機ELディスプレイパネルの製造工程の例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態である修正設備の構成を示す図である。
【図3】修正すべき画素と画素周辺の拡大図である。
【図4】ホトマスクを用いた画素内ショート修復を示す図である。
【図5】欠陥修正処理前後の画素の状況を示す図である。
【図6】不活性乾燥ガスを満たす空間を低減する修正装置の例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面に従って説明する。しかしながら、かかる実施の形態が本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0024】
図2は本発明の実施形態である有機ELディスプレイパネル修正設備の構成を示す図である。欠陥修正の手順は以下の通りである。即ち、点灯検査設備(図示せず)で抽出した欠陥画素の座標データから、欠陥画素がレーザ照射系の真下に位置するようにステージ321によってマザー基板320を移動する。欠陥画素内の異物の位置検出は、観察系450で撮像した画素の画像から検出し、レーザ照射系460でレーザ照射する。なお、レーザ照射系460を欠陥画素の位置に移動させてもよく、既知の光学手段により光路を走査してもよい。
【0025】
有機ELディスプレイパネル修正設備の構成について説明する。光源417から出射され投影光420はコリメートレンズ416によってコリメート光とし、ハーフミラー412、410をへてマザー基板320に投影される。基板からの反射光をハーフミラー410によって導き、結像レンズ415をへて撮像素子413でマザー基板320上の画素画像を撮像する。画像は画像処理部414によって処理され、異物の大きさと位置を算出してマスクステージ408上に置かれたホトマスク407を異物の位置まで精密に移動する。
レーザ発振器400から照射されたレーザ光401をビームエキスパンダ402で所定のビーム径に広げ、ホモジナイザ403 でレーザ照射領域全面でのレーザ強度の均一性を確保する。整形したレーザ光をマスクステージ408上に設置されたホトマスク407を通過させ、さらに結像レンズ409と対物レンズ414を通過させた後、基板ステージ321に載置されたマザー基板320上の修正箇所にレーザ照射する。
【0026】
結像レンズ409と対物レンズ411はホトマスク407の像をマザー基板320上に投影するように配置されており、結像レンズ409と対物レンズ411の焦点距離の比倍の大きさでマザー基板320上にマスク像を投影する。この光学系構成により、ホトマスク407の透過部分を縮小した領域にレーザ光照射することができる。
【0027】
照射するレーザ光の波長は、200〜1100nmの範囲から選択できる。典型的な波長としては266nm、532nm、1064nm等の波長があげられるが、有機発光層の光吸収特性に合わせて選択する。
図3は修正すべき画素と画素周辺の拡大図を示している。一つの画素は赤のサブ画素501R、緑のサブ画素501G、青のサブ画素501Bの3つサブ画素から成り立っており、大きさ形状は同じ場合や異なる場合がある。非点灯欠陥サブ画素内にある異物の検出は、正常なサブ画素と欠陥サブ画素の差画像をとることにより、異物のコントラストを上げることができる。これにより、100nmオーダからサブミクロンオーダの異物の位置検出ができる。例えば、欠陥画素500Rと隣接する同じ色の正常画素501Rの差画像をとることにより微小異物502を明瞭な像で検出することができるので、微小異物の画素内位置を検出することができる。
【0028】
図4はホトマスクを用いた画素内ショート修復の1例を示す図である。遮光部601とリング状の複数の開口部602を有するホトマスク407を、異物検出の位置情報に従って異物130上に移動し、レーザ照射することによって欠陥画素330内の異物周辺を囲むように対応する第2電極膜104、バリア膜103や有機発光膜120を除去してショート状態を解消する。異物を含む径のレーザ光を照射して異物を除去することによってショート状態を解消することも可能であるが、異物130は第2電極膜104、バリア膜103や有機発光膜120の光吸収特性や物性が異なることから、除去に必要なエネルギー量が異物の種類や大きさ毎に異なる。このために除去性のマージンが狭まって除去成功率が低下するが、異物の周辺を囲むようにレーザ照射すると常に同一性状の物質を除去することになるので、除去性のマージンが広がる。開口部のリングの径は画素の輝度低減が許容される面積を上限として、異物の系よりも十分大きくなるように予め設定しておくことができる。また、ホトマスク407に示すように、リング径の異なった複数のパターンを用意しておき、観察系450(図2参照)の異物情報に基づいて、異物より大きく且つ除去面積が最小になるように、異物の大きさに合わせて使い分けることができる。これにより、修復画素の輝度低減を最小に押さえることができる。異物を囲むように周辺を除去するレーザの照射方法としては、ここに示すホトマスクによる方法が、処理時間が短く、修復歩留まりが優れ、安定性に優れる。即ち、ビーム生成条件は予め決められており、ホトマスク移動時間が処理時間の殆どを占めるので、高速処理できる。
【0029】
図5は欠陥修正処理前後の画素の状況を示す図である。欠陥画素500Rの異物502にレーザ照射してショート状態を解消し、点灯を回復した画素510Rではレーザ照射部520は非発光部となる。この部分の面積が残余の発光部に比べて小さければ、パネル全体を点灯した際には人間の目にはほとんど視認されない。正常画素501Rと点灯を回復した画素510Rの輝度比は発光部面積に比例するので、非発光部、即ちホトマスク407のリング状の開口部602の径は、設計者の非発光許容率から規定することができる。例えば、200μmx80μmの発光面積で非発光許容率が5%であれば、最大16μmの径が許容できる。有機EL膜形成工程で問題となる異物径は100nmオーダから大きくても数ミクロンオーダなので、位置合わせズレ等の精度を考慮してもマージン幅広くレーザ加工することができる。
また、画素内に除去すべき複数の欠陥候補がある場合は、非発光許容面積の範囲内で、複数の欠陥を修正することができる。
【0030】
以上の実施例では、図1に示す工程でマザー基板の状態で欠陥を検出し修正する例を説明したが、有機ELディスプレイパネルの構造によっては図1に示すようにパネル単位で実施しても良い。
【実施例2】
【0031】
有機ELディスプレイパネルの発光寿命確保の為に、本発明の実施形態による修正設備内は乾燥窒素ガス等の不活性乾燥ガスによって露点-70℃以下管理するが、露点管理の容易性や不活性乾燥ガスの消費節減の為に、修正設備内の空間を最小限に低減することが望ましい。本願発明による修正設備は光学を応用した設備なので、ガラス板を窓として用いた匡体構造をとり、観察系450(図2参照)やレーザ照射系820をガラス板の外に配置することで不活性乾燥ガスの空間を大きく低減することができる。
図6は不活性乾燥ガスを満たす空間811を低減する修正装置の例を示す図である。レーザ修正装置815のステージ812、マザー基板320は、トランスファチャンバー816と連結し、ガラス窓810を備えた構造体813の中にあり、観察系やレーザ照射系820はガラス窓の外にあってマザー基板上欠陥画素の異物よる修正を行う。以上の設備構成により、不活性乾燥ガスで満たす空間811を大きく低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明による有機ELディスプレイパネル修正設備では、微小な欠陥を検出することができ、画素修復の成功率が高く、自動化が容易で生産性の高い有機ELディスプレイパネルの修正設備を提供することができるので、今後普及が予想される大型有機ELディスプレイパネルの歩留まり向上に大きく寄与することができる。
【符号の説明】
【0033】
103:バリア膜 104:第2電極
105、107:絶縁膜 106:第1電極
110:TFT素子 120:有機発光膜
130:異物 301:パネル領域
302:表示部領域 303:ゲートLSI搭載領域
304:ソースLSI搭載領域 320:マザー基板
321:ステージ 400:レーザ発振器
401:レーザ光 402:ビームエキスパンダ
403:ホモジナイザ 407:ホトマスク
408:マスクステージ 409:結像レンズ
410、412:ハーフミラー 411:対物レンズ
413:撮像素子 414:画像処理部
415:結像レンズ 416:コリメートレンズ
417:光源 420:投影光
450:観察系 460:レーザ照射系
500R:欠陥画素 501R:赤のサブ画素
501G:緑のサブ画素 501B:青のサブ画素
502:異物 510R:点灯を回復した画素
520:レーザ照射部520 600:レーザ除去部
601:遮光部 602:開口部
810:ガラス窓 811:不活性乾燥ガスで満たす空間
812:ステージ 813:構造体
815:レーザ修正装置 816:トランスファチャンバー
820:レーザ発振器 821:レーザ光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子による画素が形成されたマザー基板上の前記画素の欠陥をレーザ光を照射して修正する有機ELディスプレイパネル修正設備において、
前記欠陥の位置情報と大きさに基づいて前記レーザ光を透過させる光透過パターンを有するホトマスクを介して前記欠陥の位置に照射するレーザ照射系を有すること特徴とする有機ELディスプレイパネル修正設備。
【請求項2】
非点灯不良画素の画像と正常画素との画像を比較して非点灯不良画素内の前記欠陥の位置と大きさを検出する観察系を有することを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイパネル修正設備。
【請求項3】
前記光透過パターンは前記欠陥の周囲を囲んで帯状に除去できるパターンであることを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイパネル修正設備。
【請求項4】
前記光透過パターンは前記欠陥より大きな径の透過パターンであることを特徴とする請求項1に記載の有機ELディスプレイパネル修正設備。
【請求項5】
前記透過パターンの大きさの異なる複数個有する前記ホトマスクを有し、前記欠陥の大きさに合わせて前記透過パターンを選択する選択手段を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の有機ELディスプレイパネル修正設備。
【請求項6】
前記透過パターンの大きさを変えた前記ホトマスクを複数有し、前記欠陥を大きさに合わせて前記ホトマスクを選択する選択手段を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の有機ELディスプレイパネル修正設備。
【請求項7】
前記マザー基板を保持するステージと前記レーザ照射系及び前記観察系とを内部に有する構造体を具備し、前記構造体の内部を水分除去機構又は不活性乾燥ガスによって低湿度に制御する制御手段を有することを特徴とする請求第1項乃至第4項のいずかに記載の有機ELディスプレイパネル修正設備。
【請求項8】
前記マザー基板を保持するステージを内部に載置する構造体を具備し、前記レーザ光照射するレーザ発振器は前記構造体の外に設けられ、前記構造体に設けられた透過窓を介して前記レーザ光を照射することを特徴とする請求第1項乃至第4項のいずかに記載の有機ELディスプレイパネル修正設備。
【請求項9】
前記マザー基板を保持するステージを内部に載置する構造体を具備し、前記観察系は前記構造体の外に設けられ、前記構造体に設けられた透過窓を介して前記欠陥の位置と大きさを検出することを特徴とする請求第2項に記載の有機ELディスプレイパネル修正設備。
【請求項10】
有機EL素子による画素が形成されたマザー基板上の前記画素の欠陥をレーザ光を照射して修正する有機ELディスプレイパネル修正方法において、
前記欠陥の位置情報と大きさに基づいて前記レーザ光を透過させる光透過パターンを有するホトマスクを介して前記欠陥の位置に照射することを特徴とする有機ELディスプレイパネル修正方法。
【請求項11】
非点灯不良画素の画像と正常画素との画像を比較して非点灯不良画素内の前記欠陥の位置と大きさを検出することを特徴とする請求項10に記載の有機ELディスプレイパネル修正方法。
【請求項12】
前記光透過パターンは前記欠陥の周囲を囲んで帯状に除去できるパターンであることを特徴とする請求項10に記載の有機ELディスプレイパネル修正方法。
【請求項13】
前記光透過パターンは前記物欠陥より大きな径を有する透過パターンであることを特徴とする請求項10に記載の有機ELディスプレイパネル修正方法。
【請求項14】
前記ホトマスクは大きさを変えた前記透過パターンを複数個有し、前記欠陥の大きさに合わせて前記透過パターンを選択することを特徴とする請求項12または請求項13に記載の有機ELディスプレイパネル修正方法。
【請求項15】
前記透過パターンの大きさの異なる前記ホトマスクを複数個有し、前記欠陥を大きさに合わせて前記ホトマスクを選択することを特徴とする請求項12または請求項13に記載の有機ELディスプレイパネル修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−134490(P2011−134490A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291185(P2009−291185)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】