説明

有機ELパネル用基板の検査方法及び有機EL装置の製造方法

【課題】接続配線が形成された基板の状態で金属電極の短絡不良の検査をすることができる有機ELパネル用基板の検査方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる有機ELパネル用基板100の検査方法の一態様は、透明基板101上に形成された複数の陰極108と、複数の陰極108の各々と接続された陰極用エージング配線104とを有する有機ELパネル用基板100の検査方法であって、透明基板101に光を照射し、透明基板101からの透過光により陰極108間の短絡を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)パネル用基板の検査方法及び有機EL装置の製造方法に関し、特に、金属電極間の短絡を検査する有機ELパネル用基板の検査方法及びこれを用いた有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置に用いられる有機ELパネルは、ガラス基板上に設けられた陽極と当該陽極に対向して設けられた陰極との間に、有機発光層を含む有機EL層が挟持されてなる有機EL素子を備えている。陽極からは正孔が、陰極からは電子がそれぞれ有機EL層に注入されて再結合し、その際に生ずるエネルギーにより有機EL層に含まれる有機発光層の分子が励起される。このようにして励起された分子が基底状態に戻る際のエネルギーが光として放出されて発光現象が生じる。
【0003】
このような有機ELパネルの製造時に、陽極と陰極との間に配置されている有機EL層に異物が混入したり、陽極に突起が生じて突起が有機EL層に侵入したりすることにより、欠陥部が生じることがある。この欠陥部に電荷が集中すると、陽極と陰極との短絡が生じ、素子特性の劣化や非発光にいたるという問題がある。このような問題を解決するために、あらかじめ、異物が混入している欠陥部にパルス状の逆バイアス電圧を印加し、欠陥部を不導体化するエージング処理を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記のようなエージング処理を効率的に実行するために、複数の有機ELパネルが形成されるマザー基板上に、複数の有機ELパネルの陽極同士、陰極同士をそれぞれ接続するエージング配線を形成し、複数の有機ELパネルに一括してエージング処理用の電圧を供給する方法が用いられている。エージング処理後は、基板を切断し、エージング配線と陽極、陰極とを分離している。
【特許文献1】特開2005−173299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のエージング方法において、マザー基板の状態ではエージング配線により全ての陽極、陰極がそれぞれ接続されているため、陰極の短絡不良は検出することができなかった。したがって、陰極の短絡不良の検査は、基板を切断した後に駆動回路などを実装した有機ELパネル状態としてから、点灯検査を行っていた。このため、製造損失が大きくなるという問題があり、上述のような不良を製造工程の早い段階に発見することが求められている。
【0006】
また、陰極の短絡不良は、隔壁の欠損などにより発生することが多い。このような隔壁の欠損は、隔壁を形成するためのマスクの欠陥に起因して発生することがある。この場合、異なる基板上の同一箇所に連続して短絡不良が発生することとなる。このような短絡不良の発見が遅れると、大量の不良パネルの発生につながってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、接続配線が形成された基板の状態で金属電極の短絡不良の検査をすることができる有機ELパネル用基板の検査方法及び有機EL装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様にかかる有機ELパネル用基板の検査方法は、基板上に形成された複数の金属電極と、前記複数の金属電極の各々と接続された接続電極とを有する有機ELパネル用基板の検査方法であって、前記基板に光を照射し、前記基板からの透過光により前記金属電極間の短絡を検査する。これにより、金属電極が接続電極により接続された状態であっても、簡便に金属電極の短絡検査を行うことができる。
【0009】
本発明の第2の態様にかかる有機ELパネル用基板の検査方法は、前記基板上に前記複数の金属電極間に形成された隔壁をさらに有し、前記金属電極と前記隔壁との間から透過する透過光により前記金属電極間の短絡を検査する。本発明は、このような場合に特に有効である。
【0010】
本発明の第3の態様にかかる有機ELパネル用基板の検査方法は、前記基板に光を照射し、前記基板の透過像を撮像して画像処理を行い、前記金属電極間の短絡を検査する。これにより、微細な短絡不良であっても検出可能である。
【0011】
本発明の第4の態様にかかる有機EL装置の製造方法は、基板上に複数の金属電極と、前記複数の金属電極の各々と接続された接続電極を形成し、前記接続電極を用いてエージング処理を行い、前記基板に光を照射して、前記基板からの透過光により前記金属電極間の短絡を検査し、前記エージング処理及び前記検査後に前記基板を切断し、前記接続電極と前記金属電極とを分離する。これにより、信頼性の高い有機ELパネルを製造することができる。
【0012】
本発明の第5の態様にかかる有機EL装置の製造方法は、前記基板上に隔壁を形成し、前記隔壁が形成された前記基板上の略全面に前記金属電極の材料を形成することにより、前記金属電極を分離形成し、前記金属電極と前記隔壁との間から透過する透過光により前記金属電極間の短絡を検査する。本発明は、このような場合に、特に有効である。
【0013】
本発明の第6の態様にかかる有機EL装置の製造方法は、隔壁形成用マスクを用いて前記基板上に隔壁を形成し、前記金属電極間の短絡を検査し、前記金属電極の短絡不良があった場合には、前記隔壁マスクを交換又は修復して次の基板上に隔壁を形成する。これにより、効率よく有機EL装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接続配線が形成された基板の状態で金属電極の短絡不良の検査をすることができる有機ELパネル用基板の検査方法及び有機EL装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態にかかる有機ELパネル用基板の検査方法について説明する。まず、本発明の検査対象物である有機ELパネル用基板について、図1を参照して説明する。図1は、有機ELパネル用基板の一般的な構成を示す図である。図1に示すように、有機ELパネル用基板100は、透明基板101上に、有機EL表示パネル102、陽極用エージング配線103、陰極用エージング配線104、陽極補助配線110、陰極補助配線111などが形成された構成を有している。透明基板101は、ガラスなどからなる透明な矩形状の平板部材である。1枚の透明基板101上には、複数の有機EL表示パネル102が形成されている。ここでは、12個の有機EL表示パネル102が形成されている。ここでは、有機ELパネルの一例として、有機EL表示パネルについて説明するが、本発明は、例示する構成の有機EL表示パネルに限定するものではない。有機EL表示パネル102は、陽極補助配線110、陰極補助配線111を介して、陽極用エージング配線103、陰極用エージング配線104にそれぞれ接続されている。
【0016】
ここで、図2及び図3を参照して、本実施の形態にかかる1つの有機EL表示パネル102の構成について説明する。図2及び図3は、本実施の形態にかかる有機EL表示パネル102の構成の一例を示す図である。図2に示すように、有機EL表示パネル102は、透明基板101、陽極105、絶縁層106、有機EL層107、陰極108、封止基板109、陽極補助配線110、陰極補助配線111、隔壁112、捕水材113、シール材114を有している。なお、図2における断面図は、図3の透明基板101に封止基板109を貼り合わせた後のA−A断面図である。なお、図2及び図3において、図の簡略化のため、適宜省略がなされている。
【0017】
陽極105は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明性導電材料からなり、透明基板101上に形成されている。図2に示すように、複数の陽極105は、一定間隔を隔ててそれぞれ平行に形成されている。また、透明基板101上には、それぞれの陽極105に延設された陽極補助配線110が設けられる。また、透明基板101上には、後述するそれぞれの陰極108に接続された陰極補助配線111が設けられる。陰極補助配線111は陰極108に対応して形成され、陽極105に対し垂直方向に形成される。陽極補助配線110、陰極補助配線111などは、接続部の低抵抗化のために金属材料から形成される。
【0018】
陽極105、陽極補助配線110、陰極補助配線111が形成された透明基板101上には、絶縁層106が形成される。絶縁層106は、陽極105と後述する陰極108との絶縁性を確保するために設けられる。絶縁層106は、ポリイミドなどの絶縁材料からなる。図3に示すように、絶縁層106には、陽極105と後述する陰極108との交差位置、すなわち画素となる位置に対応して開口部115が設けられている。つまり、絶縁層106は、有機EL層107と陽極105とが接触する開口部115を画定する役割を果たしている。
【0019】
また、図3に示すように、絶縁層106上には、隔壁112が形成される。隔壁112は、分離された陰極108を形成するため、陰極108を蒸着などにより形成する前に所望のパターンに形成される。本実施の形態においては、陽極105に対し垂直に、陰極108に対して平行に設けられる。陰極108の分離をより確実なものとするため、隔壁112は逆テーパ構造を有している。すなわち、透明基板101から離れるにつれて、断面が広がるように形成される。隔壁112としては、例えば、高さが3μm、上面の幅が15μm、下面の幅が10μmとすることができる。
【0020】
有機EL層107は、前述した陽極105、絶縁層106、隔壁112の上に、所定の大きさで配置される。有機EL層107としては、図示しない正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層を順次積層した構成を有している。
【0021】
陰極108は、光透過性を有しないアルミニウムなどの導電性金属材料からなる金属電極である。陰極108は、有機EL層107上に設けられる。陰極108は、隔壁112によって分離されるため、隔壁112の間に配設される。したがって、陰極108は陽極105に対して垂直に設けられる。陽極105と陰極108とが交差する位置が画素となる。1つの画素に対応する1つの有機EL素子は、透明基板101上に順次積層された陽極105、有機EL層107、陰極108を備える。複数の画素から構成される領域が、表示領域116となる。また、隔壁112の上にも陰極108の導電性金属材料が配置されている。したがって、図2中上側から見ると陰極108により一面覆われている。
【0022】
なお、ここではカラーフィルタの図示をしていないが、フルカラーの表示装置の場合、カラーフィルタを設けてもよい。
【0023】
封止基板109は、パネル中に水分や酸素を遮断する役割を担っている。封止基板109としては、ガラス、アクリル系樹脂などの透明なものを使用することができる。封止基板109の画素に対向する面上には、捕水材113を配置するための凹部117が形成されている。
【0024】
封止基板109と透明基板101とは、光硬化型のシール材114を介して固着されている。シール材114としては、水分などの透過性の低い紫外線硬化型のエポキシ系シール材などを用いることができる。シール材114は、表示領域116を囲むように形成されている。シール材114は、封止基板109と透明基板101とを固着し、表示領域116を含む空間を封止する。すなわち、有機EL素子は、透明基板101、封止基板109、シール材114とで形成される気密空間に配置される。
【0025】
気密空間内には、画素などへの水分や酸素の影響を抑制し、安定した発光特性を維持するための捕水材113が設けられている。捕水材113は、封止基板109上の、有機EL素子と対向する面に形成された凹部117に設けられている。捕水材113としては、無機系の乾燥剤や、水分と反応性の高い有機金属化合物を膜状にしたもの、フッ素系オイルからなる不活性液体中に固体の吸湿剤を混合したものなどを用いることができる。捕水材113としては、透明なものが好ましい。
【0026】
図1に示すように、各有機EL表示パネル102における陽極105は、陽極補助配線110を介して、陽極用エージング配線103に接続される。従って、すべての有機EL表示パネル102における各陽極105に、陽極用エージング配線103から同じエージング電圧を供給することができる。また、各有機EL素子における各陰極108は、陰極補助配線111を介して陰極用エージング配線104に接続される。従って、すべての有機EL表示パネル102における各陰極108に、陰極用エージング配線104から同じエージング電圧を供給することができる。
【0027】
ここで、上記の有機ELパネル用基板100に設けられた陰極108の短絡不良の検査方法及び有機EL表示装置の製造方法について、図4を参照して説明する。図4に示すように、まず、陽極105を形成する(ステップS11)。具体的には、まず透明基板101上にスパッタ法などを用いてITOを成膜する。そして、感光性樹脂をITO上に塗布し、露光、現像、エッチングをしてパターニングを行う。これにより、透明基板101上に複数の陽極105が形成される。
【0028】
次に、陽極補助配線110、陽極用エージング配線103、陰極補助配線111及び陰極用エージング配線104を形成する(ステップS12)。具体的には、陽極105の上に補助配線材料としてAl又はAl合金などの低抵抗な金属材料を成膜する。また、下地との密着性向上や、腐食防止などの観点からAl膜の下層又は上層にTiNやCrなどのバリア層を形成して、補助配線を多層構造体としてもよい。そして、フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程により、補助配線材料をパターニングする。これにより、陽極補助配線110、陽極用エージング配線103、陰極補助配線111及び陰極用エージング配線104が形成される。なお、ステップ12により陽極補助配線110などを形成した後に、ステップ11により陽極105を形成してもよい。
【0029】
次に、絶縁膜材料を塗布し露光、現像を行って開口部115を有する絶縁膜116を形成する(ステップS13)。さらに、隔壁112を形成する(ステップS14)。具体的には、スピンコート法などにより、隔壁材料を成膜する。隔壁材料としては、感光性ノボラック樹脂、感光性アクリル樹脂などを用いることができる。その後、隔壁材料を隔壁形成用マスクを用いて露光、現像することによりパターニングを行う。これにより、隔壁112が形成される。隔壁112は、図3に示すように陰極108と平行になるように形成される。上述のように、逆テーパ構造を得るためには、ネガタイプの感光性樹脂を用いることが好ましい。ネガタイプの感光性樹脂を用いると、露光工程において、隔壁112の透明基板101側ほど光反応が不十分となり逆テーパ構造を容易に形成できる。
【0030】
逆テーパ構造の隔壁112を設けることにより、後述する陰極108の形成時に陰極108同士を空間的に分離することができる。なお、後述するステップS15の前に、開口部により露出するITOの表面改質を行うために、酸素プラズマ又は紫外線を照射する工程を加えてもよい。
【0031】
次に、上述した有機EL層107を形成する各層を順次積層する(ステップS15)。具体的には、有機EL層107をマスク蒸着する。これにより、有機EL層107が絶縁層106の開口部115において、陽極105と接する。また、図2に示すように、この有機EL層107は隔壁112の上にも形成される。なお、有機EL層107は上記の方法以外の方法で形成することも可能である。
【0032】
その後、有機EL層107上の略全面に陰極108を形成する(ステップS16)。具体的には、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理的気相成長法(PVD)によりAlなどの光透過性を有しない導電性金属材料を成膜する。このとき、隔壁112が陰極108を分離することにより、隔壁112間にストライプ状にパターニングされた陰極108が形成される。また、陰極108は陰極補助配線111に接続される。図2に示すように、導電性金属材料は隔壁112の上にも蒸着される。なお、有機EL層107に対するダメージを低減するため、蒸着によって陰極108を形成することが好ましい。以上の工程により、陽極105と陰極108との間に挟持された有機EL層107を備える有機EL素子が形成される。
【0033】
有機EL素子形成工程が終了すると、透明基板101上に形成された複数の有機EL素子における各陽極105が陽極補助配線110を介して陽極用エージング配線103に接続され、複数の有機EL素子における各陰極108が陰極補助配線111を介して陰極用エージング配線104に接続される。
【0034】
次に、有機EL素子を封止するための封止基板109を製造する工程について説明する。まず、封止基板109上に捕水材を収容するための凹部117を形成する(ステップS17)。凹部117は、図1に示すように透明基板101上に設けられた有機EL素子と対向する位置に設ける。凹部117は、例えば、エッチングやサンドブラストにより形成する。
【0035】
そして、封止基板109の凹部117が設けられている面側に、図1に示すようにシール材114を塗布する(ステップ18)。シール材114は、凹部117を囲むように塗布する。すなわち、シール材114は、凹部117の外側の凸部に設けられる。シール材114は陽極補助配線110及び陰極補助配線111を横切るように形成する。また、陽極補助配線110及び陰極補助配線111の端部がシール材114の外側に配置されるようにシール材114を形成する。後述する実装工程で、各配線のシール材114の外側まで延設された部分に、外部の駆動回路が接続される。
【0036】
そして、ペースト状の捕水材113を塗布ノズルによって塗布する(ステップS19)。以上の工程により、封止基板109を製造することができる。
【0037】
その後、透明基板101と封止基板109とを貼り合わせる(ステップ20)。透明基板101と封止基板109とを位置合わせした後に、両基板を加圧し、シール材114にUV光を照射する。これにより、シール材114が硬化して、透明基板101と封止基板109とを接着することができる。そして、2枚の基板とシール材により形成された封止空間内に乾燥窒素ガスと微量の酸素ガスを封入する。これにより、透明基板101上に複数の有機EL表示パネル102が形成される。
【0038】
また、ステップS20の貼り合わせ工程を真空中で行なうようにしてもよい。これにより、有機EL素子を大気に曝すことなく封止することができる。よって、有機EL素子の水分などによる劣化を防ぐことができる。具体的には、捕水材113が設けられた透明基板101を大気に曝すことなく、貼り合わせ用の真空チャンバーに搬送する。また、封止基板109も、貼り合わせ用の真空チャンバーに搬送して貼り合わせを行なう。これにより、有機EL層107の形成工程から貼り合わせ工程の間の全期間を、透明基板101が真空中で処理される。よって、水分などによる劣化を防ぐことができる。
【0039】
次に、透明基板101上に形成された複数の有機EL表示パネル102に寿命エージング処理と短絡エージング処理とを行う(ステップ21)。具体的には、まず、上述の複数の有機EL表示パネル102が形成された透明基板101を複数まとめてカセットに入れ、陽極用エージング配線103及び陰極用エージング配線104にエージング処理用の電圧印加装置を接続する。
【0040】
その後、透明基板101をカセットに入れた状態で、透明基板101の周囲温度を室温以上、好ましくは80℃以上の高温に設定したオーブンに投入する。高温でエージング処理を行うことによって、短い時間で所望の輝度低下をさせることができる。エージング処理を行う際の温度は、有機EL素子が変質しない範囲で、できるだけ高い温度にすることが好ましい。高温にしても、円偏光板などの光学フィルムを貼り付ける光学フィルム貼着工程より前の工程での処理であるから、光学フィルムに熱による悪影響を与えることはない。
【0041】
短絡エージング処理では、実際の駆動電圧よりも大きい逆バイアス電圧を印加する。すなわち、陽極105が−、陰極108が+となる電圧を印加する。このとき、陽極105と陰極108との電圧が、通常の駆動時の電圧よりも大きくなるように設定する。逆バイアス電圧は、パルス波形として印加される。短絡エージング処理により、陽極105と陰極108とが短絡した欠陥部を、破壊し除去する。
【0042】
その後、寿命エージング処理を行う。寿命エージング処理では、より短い時間で所望の輝度低下をさせるために、エージング処理での各画素の輝度が、有機EL表示装置として定格の表示動作をしているときの輝度よりも高くなるように条件を設定する。例えば、有機EL表示装置としての輝度仕様が200cd/mであれば、400cd/mで発光するようにエージング電圧を印加する。有機EL表示装置としての輝度仕様に対して2倍の高輝度で発光させることによって、有機EL表示装置としての輝度仕様でエージング処理を行う場合に比べて、約半分の時間で寿命エージング処理工程が完了する。
【0043】
そして、これらのエージング処理を行った後に、複数の有機EL表示パネル102に陽極用エージング配線103及び陰極用エージング配線104が接続された状態のまま、陰極108の短絡不良の検査を行う(ステップS22)。陰極108の短絡不良検査においては、まず、有機ELパネル用基板100に光を照射する。本実施の形態においては、図2に示す封止基板109側から光を照射するが、どちら側から照射しても構わない。
【0044】
そして、有機ELパネル用基板100の光照射側と反対側から、目視により各有機EL表示パネル102全体の短絡不良の検査を行う。本実施の形態においては、図2に示す透明基板101側から目視を行う。すなわち、有機ELパネル用基板100を透過した透過光により検査を行う。このとき、陰極108は光透過性を有しないため、陰極108が配置されている部分は暗く見える。また、陰極108の材料である導電性金属材料は隔壁112上にも設けられている。このため、隔壁112上に対応する位置も暗く見える。また、隔壁112上の導電性金属材料の端部の位置と陰極108の端部の位置とは略一致している。
【0045】
しかしながら、陰極108は、隔壁112により上下に空間的に分離されている。本実施の形態においては、隔壁112の高さが3μmであるため、陰極108と隔壁112上の導電性金属材料とは上下に3μm離れて形成されている。また、隔壁112は、上面の幅が15μm、下面の幅が10μmの逆テーパ状であるため、陰極108は隔壁112から離れて形成されている。したがって、有機ELパネル用基板100の封止基板109側から光を照射すると、隔壁112上の導電性金属材料の端部と陰極108の端部の位置が略一致していても、光の回折現象により、隔壁112と陰極108との間隙から光が漏れる。陰極108が隔壁112により正常に分離形成されている部分においては、図5に示すように、隔壁112に対応する部分の両側にライン状につながった光が視認されることとなる。
【0046】
一方、陰極108が隔壁112により正常に分離形成されておらず、陰極108の短絡不良が発生している部分においては、隔壁112上の導電性金属材料と隣接する2つの陰極108とがつながっている。この場合、陰極108の短絡不良箇所においては、光抜けが発生しない。このため、図6に示すように、隔壁112に対応する部分の両側に視認されるライン状の光の一部が遮断され暗く見える。これにより、隣接する2つの陰極108が短絡している短絡不良118を検出することができる。なお、この隔壁112の両側に視認される光のラインのうち、一方のみが暗く見える場合には、隣接する陰極108が短絡してはいないので、短絡不良は発生していないこととなる。
【0047】
このように、各有機EL表示パネル102に切断する前に、陽極用エージング配線103及び陰極用エージング配線104により全ての陽極105同士、陰極108がつながったままの状態で、陰極108の短絡不良118を簡便に検出することができる。これにより、従来は駆動回路などを実装した状態で行っていた陰極108の短絡不良の検査を、製造工程の早い段階で実現することができる。このため、不要な部材数や不要なパネル処理数を低減させることができ、製造損失を抑制することができる。
【0048】
また、陰極108の短絡不良は、隔壁112の欠損などにより発生することが多い。このような隔壁112の欠損は、隔壁112を形成するためのマスクの欠陥に起因して発生することがある。この場合、異なる透明基板101上の同一箇所に連続して短絡不良118が発生することとなる。したがって、このような陰極108の短絡不良118が検出された場合、隔壁形成用のマスクを交換又は修復して、次の透明基板101上に隔壁112を形成する。このように、本発明によれば、陰極108の短絡不良118を早期に発見することができるため、大量の不良パネルの発生を抑制することができる。
【0049】
また、短絡不良箇所が微細であり、目視では検出できない場合には、顕微鏡により透過像を撮像し、画像処理により拡大して目視により検査を行うことも可能である。これにより、より精度よく短絡不良の検出を行うことができる。また、光抜けしない部分を自動的に感知し、短絡不良を検出する構成とすることも可能である。
【0050】
なお、このとき、エージング処理において形成された修復痕の数をカウントしても良い。すなわち、有機ELパネル用基板100に光を照射し、透過光により輝点の数をカウントする。エージング処理において形成される修復痕は、異物等が混入している欠陥部にパルス状の逆バイアス電圧を印加し、欠陥部を不導体化している。このため、正常にエージングが行われた部分は黒点となり、エージング処理が正常に行われなかった部分は輝点となって視認される。この輝点の数が、許容範囲内であれば良品と判定し、許容範囲外であれば不良品とし判定する。例えば、1枚の有機ELパネル用基板100内に形成されている4隅の有機EL表示パネル102の所定の領域に対して、ルーペを用いて目視により輝点数の検査を行うことができる。
【0051】
そして、陰極108の短絡不良及び輝点不良が発生している有機EL表示パネル102にはマーキングをし、透明基板101を有機EL表示パネル102ごとに切断分離する(ステップS23)。このとき、有機EL表示パネル102を囲むように、切断線を設定する。例えば、陽極補助配線110及び陰極補助配線111上にかかるように切断線を設定することができる。この切断線に沿って透明基板101を切断して複数の有機EL表示パネル102に分離する。これにより、有機EL表示パネル102と陽極用エージング配線103、陰極用エージング配線104とが分離される。したがって、有機EL表示パネル102内の各陽極105及び各陰極108がそれぞれ分離される。
【0052】
その後、実装工程(ステップS24)で、反射防止のために円偏光板などの光学フィルムを良品の有機EL表示パネル102に貼着し、駆動回路などの周辺回路を各有機EL表示パネルに実装して有機EL表示装置を得る。そして、個々に分断された有機EL表示パネル102の外観及び点灯検査を行う(ステップS25)。このとき、上述の短絡検査では検出できなかった不良の検査を行う。
【0053】
以上説明したように、本発明では、複数の有機EL表示パネル102が形成された有機ELパネル用基板100において、各有機EL表示パネル102の陽極105同士、及び陰極108同士がエージング配線により接続された状態で、陰極108の短絡不良を簡便に検出することができる。
【0054】
なお、本実施の形態においては、陰極108を光透過性を有しない導電性金属材料により形成した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、陽極105を光透過性を有しない導電性金属材料で形成した場合には、陽極105の短絡不良の検査に対しても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態にかかる有機ELパネル用基板の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる有機EL表示パネルの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる有機EL表示パネルの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる有機EL表示パネルの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態にかかる有機EL表示パネルの正常部分の透過像を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる有機EL表示パネルの不良部分の透過像を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
100 有機EL表示装置用基板
101 透明基板
102 有機EL表示パネル
103 陽極用エージング配線
104 陰極用エージング配線
105 陽極
106 絶縁層
107 有機EL層
108 陰極
109 封止基板
110 陽極補助配線
111 陰極補助配線
112 隔壁
113 捕水材
114 シール材
115 開口部
116 表示領域
117 凹部
118 短絡不良

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された複数の金属電極と、前記複数の金属電極の各々と接続された接続電極とを有する有機ELパネル用基板の検査方法であって、
前記基板に光を照射し、
前記基板からの透過光により前記金属電極間の短絡を検査する有機ELパネル用基板の検査方法。
【請求項2】
前記基板上に前記複数の金属電極間に形成された隔壁をさらに有し、
前記金属電極と前記隔壁との間から透過する透過光により前記金属電極間の短絡を検査する請求項1に記載の有機ELパネル用基板の検査方法。
【請求項3】
前記基板に光を照射し、前記基板の透過像を撮像して画像処理を行い、前記金属電極間の短絡を検査する請求項1又は2に記載の有機ELパネル用基板の検査方法。
【請求項4】
基板上に複数の金属電極と、前記複数の金属電極の各々と接続された接続電極を形成し、
前記接続電極を用いてエージング処理を行い、
前記基板に光を照射して、前記基板からの透過光により前記金属電極間の短絡を検査し、
前記エージング処理及び前記検査後に前記基板を切断し、前記接続電極と前記金属電極とを分離する有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
前記基板上に隔壁を形成し、
前記隔壁が形成された前記基板上の略全面に前記金属電極の材料を形成することにより、前記金属電極を分離形成し、
前記金属電極と前記隔壁との間から透過する透過光により前記金属電極間の短絡を検査する請求項4に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
隔壁形成用マスクを用いて前記基板上に隔壁を形成し、
前記金属電極間の短絡を検査し、
前記金属電極の短絡不良があった場合には、前記隔壁マスクを交換又は修復して次の基板上に隔壁を形成する請求項5に記載の有機EL装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−149406(P2007−149406A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339646(P2005−339646)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】