説明

有機EL装置及び有機EL装置の製造方法

【課題】従来の有機EL装置では、輝度ムラが発生することがある。
【解決手段】互いに対向する一対の電極と、前記一対の電極間に介在し、発光層を含む有機層と、を有し、前記有機層は、平面視で前記発光層から光が射出される領域である表示領域の周縁側における厚みよりも中央側における厚みの方が厚くなっていることを特徴とする有機EL装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置及び有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光層を含む有機層が一対の電極間に介在し、一対の電極間に電圧を印加することによって発光層を発光させることができる有機EL(Electro Luminescence)装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−227129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、有機EL装置は、発光層を含む有機層が面状に配置されることにより、パネルの状態に構成されていることが多い。パネル状の有機EL装置では、一対の電極間に電圧を印加すると、有機層が面状に配置された発光領域から光が面状に射出される。パネル状の有機EL装置を複数の画素に区画して画素ごとに発光を制御すれば、発光領域に画像を表示することができる。
ところで、有機EL装置では、発光層は、発光にともなって発熱する。一般的に、面状の発熱体では、発熱体の周縁部と周縁部よりも内側とを比較すると内側の方に熱がこもりやすい。このため、パネル状の有機EL装置では、発光領域の周縁部よりも内側の方が温度が高くなりやすい。
【0005】
ここで、有機層は、温度の変化にともなって電気抵抗が変化する性質を有している。電気抵抗が変化すると、有機層に流れる電流が変化するため、輝度が変化する。
つまり、従来の有機EL装置では、発光にともなって発光領域に温度分布が生じることがあるので、輝度ムラが発生することがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0007】
[適用例1]互いに対向する一対の電極と、前記一対の電極間に介在し、発光層を含む有機層と、を有し、前記有機層は、平面視で前記発光層から光が射出される領域である発光領域の周縁側における厚みよりも中央側における厚みの方が厚くなっていることを特徴とする有機EL装置。
【0008】
適用例1の有機EL装置は、互いに対向する一対の電極と、発光層を含む有機層とを有している。有機層は、一対の電極間に介在しており、平面視で発光層から光が射出される領域である発光領域の周縁側における厚みよりも、中央側における厚みの方が厚くなっている。
ここで、有機EL装置における有機層は、温度上昇にともなって電気抵抗が下がる特性を有している。このため、発光層の発光にともなう発熱によって発光領域の周縁側よりも発光領域の中央側の方が温度が高くなったときに、発光領域の中央側における有機層の電気抵抗の低下量が、周縁側における有機層の電気抵抗の低下量よりも多くなる。
適用例1の有機EL装置では、発光領域の中央側における有機層の厚みが周縁側における有機層の厚みよりも厚いので、発光領域の周縁側よりも中央側の方が温度が高くなったときに、中央側の有機層の電気抵抗と周縁側の有機層の電気抵抗とがそろいやすくなる。従って、発光領域の周縁側と中央側とで温度差が生じても、発光領域の周縁側と中央側とのそれぞれの有機層における電流がそろいやすくなるので、発光領域の周縁側と中央側との間で輝度がそろいやすくなる。
【0009】
[適用例2]上記の有機EL装置であって、前記発光領域が複数の画素に区画されており、前記有機層は、前記発光領域の周縁側の前記画素における厚みよりも、前記発光領域の中央側の前記画素における厚みの方が厚くなっていることを特徴とする有機EL装置。
【0010】
適用例2では、発光領域が複数の画素に区画されているので、画素ごとに発光層の発光を制御することによって発光領域に画像を表示することができる。
そして、有機層は、発光領域の周縁側の画素における厚みよりも、発光領域の中央側の画素における厚みの方が厚くなっている。このため、発光領域の周縁側よりも中央側の方が温度が高くなったときに、中央側の画素における有機層の電気抵抗と周縁側の画素における有機層の電気抵抗とがそろいやすくなる。従って、発光領域の周縁側と中央側とで温度差が生じても、発光領域の周縁側における画素と中央側における画素とのそれぞれの有機層における電流がそろいやすくなる。この結果、発光領域の周縁側における画素と中央側における画素との間で輝度がそろいやすくなる。
【0011】
[適用例3]上記の有機EL装置であって、前記有機層は、正孔輸送層を有しており、前記中央側の画素における前記有機層の厚みは、前記正孔輸送層の厚みが前記周縁側の画素における前記正孔輸送層の厚みよりも厚く構成されていることによって、前記周縁側の画素における前記有機層の厚みよりも厚くなっていることを特徴とする有機EL装置。
【0012】
適用例3では、有機層が正孔輸送層を有している。そして、中央側の画素における有機層の厚みは、正孔輸送層の厚みが周縁側の画素における正孔輸送層の厚みよりも厚く構成されていることによって、周縁側の画素における有機層の厚みよりも厚くなっている。これにより、中央側の画素における有機層の厚みを周縁側の画素における有機層の厚みよりも厚くしつつ、中央側の画素と周縁側の画素との間で発光層の厚みをそろえやすくすることができる。この結果、発光層からの光の色を中央側の画素と周縁側の画素との間で合わせやすくすることができる。
【0013】
[適用例4]互いに対向する一対の電極と、前記一対の電極間に介在し、発光層を含む有機層と、を有する有機EL装置の製造方法であって、前記有機層を、平面視で前記発光層から光が射出される領域である発光領域の周縁側における厚みよりも中央側における厚みを厚くして形成する工程を有することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0014】
適用例4の製造方法にかかる有機EL装置は、互いに対向する一対の電極と、発光層を含む有機層とを有している。有機層は、一対の電極間に介在している。
そして、適用例4の有機EL装置の製造方法には、有機層を、発光領域の周縁側における厚みよりも中央側における厚みを厚くして形成する工程が含まれている。発光領域は、平面視で発光層から光が射出される領域である。
ここで、有機EL装置における有機層は、温度上昇にともなって電気抵抗が下がる特性を有している。このため、発光層の発光にともなう発熱によって発光領域の周縁側よりも発光領域の中央側の方が温度が高くなったときに、発光領域の中央側における有機層の電気抵抗の低下量が、周縁側における有機層の電気抵抗の低下量よりも多くなる。
適用例4の有機EL装置の製造方法では、有機層を形成する工程で、発光領域の中央側における有機層の厚みを周縁側における有機層の厚みよりも厚くするので、発光領域の周縁側よりも中央側の方が温度が高くなったときに、中央側の有機層の電気抵抗と周縁側の有機層の電気抵抗とをそろえやすくすることができる。このため、発光領域の周縁側と中央側とで温度差が生じても、発光領域の周縁側と中央側とのそれぞれの有機層における電流をそろえやすくすることができる。
適用例4によれば、発光領域の周縁側と中央側との間で輝度をそろえやすくすることができる有機EL装置が提供され得る。
【0015】
[適用例5]上記の有機EL装置の製造方法であって、前記発光領域が複数の画素に区画されており、前記有機層を形成する工程では、前記発光領域の周縁側の前記画素における前記有機層の厚みよりも、前記発光領域の中央側の前記画素における前記有機層の厚みを厚くすることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0016】
適用例5の製造方法にかかる有機EL装置は、発光領域が複数の画素に区画されているので、画素ごとに発光層の発光を制御することによって発光領域に画像を表示することができる。
そして、適用例5では、有機層を形成する工程において、発光領域の周縁側の画素における有機層の厚みよりも、発光領域の中央側の画素における有機層の厚みを厚くするので、発光領域の周縁側よりも中央側の方が温度が高くなったときに、中央側の画素における有機層の電気抵抗と周縁側の画素における有機層の電気抵抗とをそろえやすくすることができる。このため、発光領域の周縁側と中央側とで温度差が生じても、発光領域の周縁側と中央側とのそれぞれの有機層における電流をそろえやすくすることができる。
適用例5によれば、発光領域の周縁側における画素と中央側における画素との間で輝度をそろえやすくすることができる有機EL装置が提供され得る。
【0017】
[適用例6]上記の有機EL装置の製造方法であって、前記有機層を形成する工程で前記中央側の画素における前記有機層の厚みを前記周縁側の画素における前記有機層の厚みよりも厚くする比率は、前記一対の電極間に電圧を印加したときの前記発光領域の温度分布と、前記有機層の材料における温度に対する電気抵抗の変化とに基づいて設定されることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0018】
適用例6では、中央側の画素における有機層の厚みを周縁側の画素における有機層の厚みよりも厚くする比率が、一対の電極間に電圧を印加したときの発光領域の温度分布と、有機層の材料における温度に対する電気抵抗の変化とに基づいて設定される。このため、発光領域の周縁側よりも中央側の方が温度が高くなったときに、中央側の画素における有機層の電気抵抗と周縁側の画素における有機層の電気抵抗とを一層そろえやすくすることができる。従って、発光領域の周縁側と中央側とで温度差が生じても、発光領域の周縁側と中央側とのそれぞれの有機層における電流を一層そろえやすくすることができる。
適用例6によれば、発光領域の周縁側における画素と中央側における画素との間で輝度を一層そろえやすくすることができる有機EL装置が提供され得る。
【0019】
[適用例7]上記の有機EL装置の製造方法であって、前記有機層は、正孔輸送層を有しており、前記有機層を形成する工程では、前記周縁側の画素における前記正孔輸送層の厚みよりも前記中央側の画素における前記正孔輸送層の厚みを厚くすることで、前記周縁側の画素における前記有機層の厚みよりも、前記中央側の画素における前記有機層の厚みを厚くすることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0020】
適用例7の製造方法にかかる有機EL装置は、有機層が正孔輸送層を有している。
そして、適用例7では、有機層を形成する工程において、周縁側の画素における正孔輸送層の厚みよりも中央側の画素における正孔輸送層の厚みを厚くすることで、周縁側の画素における有機層の厚みよりも、中央側の画素における有機層の厚みを厚くする。これにより、中央側の画素における有機層の厚みを周縁側の画素における有機層の厚みよりも厚くしつつ、中央側の画素と周縁側の画素との間で発光層の厚みをそろえやすくすることができる。
適用例7によれば、発光層からの光の色を中央側の画素と周縁側の画素との間で合わせやすくすることができる有機EL装置が提供され得る。
【0021】
[適用例8]上記の有機EL装置の製造方法であって、前記有機層を形成する工程では、前記有機層を構成する材料をインクジェット法で各前記画素に配置することによって、前記有機層を形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0022】
適用例8では、有機層を形成する工程において、有機層を構成する材料をインクジェット法で各画素に配置することによって有機層を形成するので、中央側の画素に配置する材料を周縁側の画素に配置する材料よりも多くすることによって、中央側の画素における有機層の厚みを周縁側の画素における有機層の厚みよりも厚くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施形態について、有機EL装置を利用した表示装置を例に、図面を参照しながら説明する。
実施形態における表示装置1は、図1に示すように、表示面3を有している。
【0024】
ここで、表示装置1には、複数の画素5が設定されている。複数の画素5は、表示領域7内で、図中のX方向及びY方向に配列しており、X方向を行方向とし、Y方向を列方向とするマトリクスMを構成している。表示装置1は、複数の画素5から選択的に表示面3を介して表示装置1の外に光を射出することで、表示面3に画像を表示することができる。なお、表示領域7とは、画像が表示され得る領域である。図1では、構成をわかりやすく示すため、画素5が誇張され、且つ画素5の個数が減じられている。
【0025】
表示装置1は、図1中のA−A線における断面図である図2に示すように、素子基板11と、封止基板13とを有している。
素子基板11には、表示面3側すなわち封止基板13側に、複数の画素5のそれぞれに対応して、後述するスイッチング素子などが設けられている。
【0026】
封止基板13は、素子基板11よりも表示面3側で素子基板11に対向し、且つ素子基板11との間に隙間を有した状態で設けられている。封止基板13には、表示装置1における表示面3の裏面に相当する面である底面15側すなわち素子基板11側に、後述する吸湿剤などが設けられている。
素子基板11と封止基板13との間は、表示装置1の周縁よりも内側で表示領域7を囲むシール材17によって封止されている。
【0027】
ここで、表示装置1に設定されている複数の画素5は、それぞれ、表示面3から射出する光の色が、図3に示すように、赤系(R)、緑系(G)及び青系(B)のうちの1つに設定されている。つまり、マトリクスMを構成する複数の画素5は、Rの光を射出する画素5rと、Gの光を射出する画素5gと、Bの光を射出する画素5bとを含んでいる。
なお、以下においては、画素5という表記と、画素5r、5g及び5bという表記とが、適宜、使いわけられる。
【0028】
ここで、Rの色は、純粋な赤の色相に限定されず、橙等を含む。Gの色は、純粋な緑の色相に限定されず、青緑や黄緑を含む。Bの色は、純粋な青の色相に限定されず、青紫や青緑等を含む。他の観点から、Rの色を呈する光は、光の波長のピークが、可視光領域で570nm以上の範囲にある光であると定義され得る。また、Gの色を呈する光は、光の波長のピークが500nm〜565nmの範囲にある光であると定義され得る。Bの色を呈する光は、光の波長のピークが415nm〜495nmの範囲にある光であると定義され得る。
【0029】
マトリクスMでは、Y方向に沿って並ぶ複数の画素5が、1つの画素列18を構成している。また、X方向に沿って並ぶ複数の画素5が、1つの画素行19を構成している。1つの画素列18内の各画素5は、光の色がR、G及びBのうちの1つに設定されている。つまり、マトリクスMは、複数の画素5rがY方向に配列した画素列18rと、複数の画素5gがY方向に配列した画素列18gと、複数の画素5bがY方向に配列した画素列18bとを有している。そして、表示装置1では、画素列18r、画素列18g及び画素列18bが、この順でX方向に沿って反復して並んでいる。
なお、以下においては、画素列18という表記と、画素列18r、画素列18g及び画素列18bという表記とが、適宜、使いわけられる。
【0030】
表示装置1は、回路構成を示す図である図4に示すように、画素5ごとに、TFT(Thin Film Transistor)素子21と、TFT素子23と、保持容量25と、画素電極27と、有機層29と、共通電極31とを有している。
また、表示装置1は、走査線駆動回路33と、データ線駆動回路35と、複数の走査線37と、複数のデータ線38と、複数の電源線39とを有している。
【0031】
複数の走査線37は、それぞれ走査線駆動回路33につながっており、Y方向に互いに間隔をあけた状態でX方向に延びている。
複数のデータ線38は、それぞれデータ線駆動回路35につながっており、X方向に互いに間隔をあけた状態でY方向に延びている。
複数の電源線39は、X方向に互いに間隔をあけた状態で、且つ各電源線39と各データ線38とがX方向に間隔をあけた状態でY方向に延びている。
【0032】
各画素5は、各走査線37と各データ線38との交差に対応して設定されている。各走査線37は、図3に示す各画素行19に対応している。各データ線38及び各電源線39は、それぞれ、図3に示す各画素列18に対応している。
図4に示す各TFT素子21のゲート電極は、対応する各走査線37に電気的につながっている。各TFT素子21のソース電極は、対応する各データ線38に電気的につながっている。TFT素子21のドレイン電極は、TFT素子23のゲート電極及び保持容量25の一方の電極に電気的につながっている。
【0033】
保持容量25の他方の電極と、TFT素子23のソース電極は、それぞれ、対応する各電源線39に電気的につながっている。
各TFT素子23のドレイン電極は、各画素電極27に電気的につながっている。各画素電極27と共通電極31とは、画素電極27を陽極とし、共通電極31を陰極とする一対の電極を構成している。
ここで、共通電極31は、マトリクスMを構成する複数の画素5間にわたって一連した状態で設けられており、複数の画素5間にわたって共通して機能する。
各画素電極27と共通電極31との間に介在する有機層29は、有機材料で構成されており、発光層を含んだ構成を有している。
【0034】
TFT素子21は、このTFT素子21につながる走査線37に走査信号が供給されるとON状態となる。このとき、このTFT素子21につながるデータ線38からデータ信号が供給され、TFT素子23がON状態になる。TFT素子23のゲート電位は、データ信号の電位が保持容量25に一定の期間だけ保持されることによって、一定の期間だけ保持される。これにより、TFT素子23のON状態が一定の期間だけ保持される。
【0035】
TFT素子23のON状態が保持されているときに、TFT素子23のゲート電位に応じた電流が、電源線39から画素電極27と有機層29を経て共通電極31に流れる。そして、有機層29に含まれる発光層が、有機層29を流れる電流量に応じた輝度で発光する。表示装置1は、有機層29に含まれる発光層が発光し、発光層からの光が封止基板13を介して表示面3から射出されるトップエミッション型の有機EL装置の1つである。
【0036】
ここで、素子基板11及び封止基板13のそれぞれの構成について、詳細を説明する。
素子基板11は、図3中のC−C線における断面図である図5に示すように、第1基板41を有している。なお、図5では、構成をわかりやすく示すため、TFT素子21及び保持容量25並びにデータ線38が省略されている。
第1基板41は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料で構成されており、表示面3側に向けられた第1面42aと、底面15側に向けられた第2面42bとを有している。
【0037】
第1基板41の第1面42aには、ゲート絶縁膜43が設けられている。ゲート絶縁膜43の表示面3側には、絶縁膜45が設けられている。絶縁膜45の表示面3側には、絶縁膜47が設けられている。
また、第1基板41の第1面42aには、各画素5のTFT素子23に対応して、半導体層51が設けられている。半導体層51は、ゲート絶縁膜43によって表示面3側から覆われている。なお、ゲート絶縁膜43の材料としては、例えば酸化シリコンなどの材料が採用され得る。
【0038】
ゲート絶縁膜43の表示面3側には、平面視で半導体層51に重なる領域にゲート電極53が設けられている。ゲート電極53の材料としては、例えば、モリブデン、タングステン、クロムなどの金属や、これらを含む合金などが採用され得る。ゲート電極53は、絶縁膜45によって表示面3側から覆われている。
【0039】
絶縁膜45の表示面3側には、平面視で半導体層51のソース領域(図示せず)に重なる領域にソース電極55が設けられている。ソース電極55は、絶縁膜45及びゲート絶縁膜43に設けられたコンタクトホール57を介して半導体層51のソース領域(図示せず)につながっている。ソース電極55の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、クロムなどの金属や、これらを含む合金などが採用され得る。ソース電極55は、絶縁膜47によって表示面3側から覆われている。
【0040】
絶縁膜47の表示面3側には、画素電極27が設けられている。画素電極27は、絶縁膜47、絶縁膜45及びゲート絶縁膜43に設けられたコンタクトホール59を介して半導体層51のドレイン領域(図示せず)につながっている。画素電極27の材料としては、例えば、銀、アルミニウム、銅などの光反射性を有する金属や、これらを含む合金などが採用され得る。なお、絶縁膜45及び47の材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、アクリル系の樹脂などの材料が採用され得る。
【0041】
隣り合う画素電極27同士の間には、各画素5を区画する絶縁膜61が領域62にわたって設けられている。絶縁膜61は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、アクリル系の樹脂などの光透過性を有する材料で構成されており、平面視で格子状に設けられている。絶縁膜61は、表示領域7にわたって設けられている。このため、表示領域7は、絶縁膜61によって複数の画素5の領域に区画されている。なお、各画素電極27は、絶縁膜61によって囲まれた各画素5の領域に平面視で重なっている。
【0042】
絶縁膜61の表示面3側には、各画素5の領域を囲むバンク63が設けられている。バンク63は、例えばアクリル樹脂などの有機材料で構成されており、平面視で格子状に設けられている。
画素電極27の表示面3側には、バンク63に囲まれた領域内に、有機層29が設けられている。
【0043】
有機層29は、各画素5に対応して設けられており、正孔注入層65と、正孔輸送層67と、発光層69とを有している。
正孔注入層65は、有機材料で構成されており、平面視で絶縁膜61によって囲まれた領域内で、画素電極27の表示面3側に設けられている。
正孔注入層65の材料としては、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体と、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等との混合物が採用され得る。正孔注入層65の材料としては、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやこれらの誘導体なども採用され得る。
【0044】
正孔輸送層67は、有機材料で構成されており、平面視でバンク63によって囲まれた領域内で、正孔注入層65の表示面3側に設けられている。
正孔輸送層67の材料としては、例えば、下記化合物1として示されるTFBなどのトリフェニルアミン系ポリマーを含んだ構成が採用され得る。
【0045】
【化1】

【0046】
発光層69は、有機材料で構成されており、平面視でバンク63によって囲まれた領域内で、正孔輸送層67の表示面3側に設けられている。
Rの画素5rに対応する発光層69の材料としては、例えば、下記化合物2として示されるCN−PPVが採用され得る。
【0047】
【化2】

【0048】
Gの画素5gに対応する発光層69の材料としては、例えば、下記化合物3として示されるF8BTと、上記化合物1として示されるTFBとを、1:1で混合したものが採用され得る。
【0049】
【化3】

【0050】
Bの画素5bに対応する発光層69の材料としては、例えば、下記化合物4として示されるF8(ポリジオクチルフルオレン)が採用され得る。
【0051】
【化4】

【0052】
有機層29の表示面3側には、図5に示すように、共通電極31が設けられている。共通電極31は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の光透過性を有する材料で構成され、有機層29及びバンク63を表示面3側から複数の画素5間にわたって覆っている。
なお、表示装置1では、各画素5の領域は、平面視で画素電極27と有機層29と共通電極31とが重なる領域であると定義され得る。
【0053】
封止基板13は、第2基板71を有している。第2基板71は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料で構成されており、表示面3側に向けられた外向面72aと、底面15側に向けられた対向面72bとを有している。第2基板71の対向面72bには、吸湿剤73が設けられている。
上記の構成を有する封止基板13は、対向面72bが第1基板41の第1面42aに向けられ、且つ吸湿剤73と共通電極31との間に隙間があけられた状態で、図2に示すシール材17を介して素子基板11に貼り付けられている。
【0054】
ここで、表示装置1では、図1に示す表示領域7の周縁側に位置する画素5fと、画素5fよりも中央側に位置する画素5cとで、有機層29の厚みが異なっている。画素5cにおける有機層29の厚みDcは、図6に示すように、画素5fにおける有機層29の厚みDfよりも厚い。
表示装置1では、画素5cにおける正孔輸送層67の厚みHcを画素5fにおける正孔輸送層67の厚みHfよりも厚くすることによって、画素5cにおける有機層29の厚みDcが画素5fにおける有機層29の厚みDfよりも厚く構成されている。
【0055】
表示装置1では、有機層29の厚みは、図7に示すように、図1に示す表示領域7の中央部Cpを通る線に沿って切断したときの断面において、表示領域7の各縁部から中央部Cpに向かうにつれて厚くなっている。
図7に示す有機層29の厚みの分布は、表示領域7内の複数の画素5を発光状態としたときの表示装置1の温度分布と、有機層29の材料における電気抵抗の温度特性とに基づいて設定されている。
【0056】
ここで、表示装置1の製造方法について説明する。
表示装置1の製造方法は、素子基板11を製造する工程と、封止基板13を製造する工程と、表示装置1を組み立てる工程とに大別される。
素子基板11を製造する工程では、図8(a)に示すように、まず、第1基板41の第1面42aに駆動素子層81を形成する。この駆動素子層81には、前述したTFT素子21、TFT素子23、保持容量25、画素電極27、ゲート絶縁膜43、絶縁膜45、絶縁膜47などが含まれている。
【0057】
次いで、図8(b)に示すように、平面視で画素電極27の周縁及び絶縁膜47に重なる領域(図5に示す領域62)に絶縁膜61を形成する。
次いで、図8(c)に示すように、平面視で絶縁膜61に重なる領域にバンク63を形成する。
次いで、画素電極27をO2プラズマ処理などで活性化させてから、バンク63の表面にCF4プラズマ処理などで撥液性を付与する。
【0058】
次いで、図9(a)に示すように、絶縁膜61によって囲まれた各画素5の領域内に後述する液滴吐出ヘッド83から、正孔注入層65を構成する材料が含まれた液状体65aを液滴65bとして吐出することで、各画素5の領域内に液状体65aを配置する。
なお、液滴吐出ヘッド83から液状体65aなどを液滴65bとして吐出する技術は、インクジェット技術と呼ばれる。そして、インクジェット技術を活用して液状体65aなどを所定の位置に配置する方法は、インクジェット法と呼ばれる。
【0059】
ここで、液滴吐出ヘッド83の構成について説明する。
液滴吐出ヘッド83は、斜視図である図10に示すように、ノズルプレート85と、振動板87と、複数の圧電素子89と、複数の隔壁部91とを有している。ノズルプレート85には、液状体を液滴93として吐出する複数個のノズル95が、図中X'方向に沿って所定間隔で形成されている。また、振動板87には、図示しない外部タンクから供給される液状体の受け口となる孔97が形成されている。
【0060】
複数の隔壁部91は、X'方向に沿って所定間隔で並び、ノズルプレート85と振動板87とに挟まれている。また、ノズルプレート85と振動板87との間には、孔97に連通し、孔97を介して液状体が充填される液たまり99が形成されている。そして、X'方向に隣り合う隔壁部91同士間には、供給路101を介して液たまり99に連通するキャビティ103が形成されている。なお、各ノズル95は、各キャビティ103に連通している。
上記の構成を有する液滴吐出ヘッド83は、圧電素子89が駆動されると、キャビティ103内の液状体を、各ノズル95から液滴93として吐出する。
【0061】
各画素5の領域内に配置された液状体65aを乾燥させてから焼成を行うことによって、図9(b)に示す正孔注入層65が形成され得る。なお、正孔注入層65を構成する材料が含まれた液状体65aは、PEDOTとPSSとの混合物を、溶媒に溶解させた構成が採用され得る。溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコールや、ノルマルブタノールなどが採用され得る。また、液状体65aの焼成条件は、環境温度が約200℃で、保持時間が約10分間である。
【0062】
次いで、図9(b)に示すように、バンク63によって囲まれた領域内に液滴吐出ヘッド83から、正孔輸送層67を構成する材料が含まれた液状体67aを液滴67bとして吐出することで、バンク63によって囲まれた領域内に液状体67aを配置する。このとき、正孔注入層65は、液状体67aによって覆われる。なお、液状体67aは、TFBを溶媒に溶解させた構成が採用され得る。
次いで、液状体67aを乾燥させてから焼成を行うことによって、図9(c)に示す正孔輸送層67が形成され得る。液状体67aの焼成条件は、環境温度が約200℃で、保持時間が約10分間である。
【0063】
ここで、画素5ごとに配置される液状体67aの量又は濃度の設定方法について説明する。
画素5ごとに配置される液状体67aの量又は濃度は、表示領域7内の複数の画素5の発光層69を発光させたときの表示装置1の温度分布と、有機層29における電気抵抗の温度特性とに基づいて設定される。
【0064】
液状体67aの量又は濃度の設定方法では、有機層29の厚みがマトリクスMを構成する複数の画素5間で略均一の厚みD1である表示装置を用いて、表示領域7内の温度分布を測定する。このとき、マトリクスMを構成する複数の画素5の発光層69を発光させた状態で所定期間を経過した後に表示領域7内の温度分布を測定する。温度分布を測定する機器としては、サーモグラフなどが採用され得る。
ここで、温度分布が測定される表示装置では、各画素5における有機層29の厚みD1に占める正孔輸送層67の厚みが、マトリクスMを構成する複数の画素5間で略均一の厚みH1に設定される。
【0065】
各画素5における有機層29が厚みD1に設定された表示装置では、表示領域7は、図11に示すように、表示領域7の各縁部から中央部Cpに向かうにつれて温度Tが高くなる温度分布を有する。
【0066】
表示領域7内の温度分布の測定とは別に、有機層29の電気抵抗の温度による変化(電気抵抗の温度特性)を測定しておく。このとき、有機層29における電気抵抗の温度特性は、有機層29の厚みD1を基準に、厚みD1よりも厚いD2,D3,・・・,の複数の厚みに対する温度特性も測定しておく。なお、有機層29の厚みD2やD3(D1<D2<D3)は、正孔輸送層67の厚みを厚みH1よりも厚い厚みH2,H3(H1<H2<H3)とすることによって設定される。つまり、有機層29の厚みD2やD3は、正孔輸送層67が厚みH2,H3に設定されることによって調整される。
【0067】
有機層29の電気抵抗の温度特性は、図12に示すように、温度が上昇するにつれて電気抵抗が低くなる特性を有している。
ここで、図11に示す温度分布において中央部Cpの温度がT3であり、縁部の温度がT1であり、中央部Cp及び縁部間の位置Btの温度がT2(T1<T2<T3)であったとする。また、図12に示す温度特性において、有機層29の厚みがD1であり、且つ温度TがT1のときの電気抵抗KがK1であったとする。
【0068】
このとき、温度TがT3のときに電気抵抗KがK1となる有機層29の厚みをD3として中央部Cpの画素5に設定すれば、縁部と中央部Cpとで電気抵抗Kをそろえることができる。同様に、温度TがT2のときに電気抵抗KがK1となる有機層29の厚みをD2として位置Btの画素5に設定すれば、縁部と位置Btとで電気抵抗Kをそろえることができる。これにより、表示装置1が図11に示す温度分布を有しているときに、縁部と位置Btと中央部Cpとの間で電気抵抗Kをそろえることができる。
【0069】
縁部と位置Btと中央部Cpとの間で電気抵抗Kがそろえば、縁部、位置Bt及び中央部Cpのそれぞれの有機層29を流れる電流の量を、縁部と位置Btと中央部Cpとの間でそろう。従って、表示装置1が図11に示す温度分布を有しているときに、縁部、位置Bt及び中央部Cpのそれぞれの部位における画素5の輝度が、縁部と位置Btと中央部Cpとの間でそろう。
同様に、他の各画素5に対しても各温度における電気抵抗KがK1となる有機層29の厚みを設定すれば、各画素5での輝度をマトリクスMを構成する複数の画素5間でそろえることができる。
【0070】
上記の方法により、各画素5における有機層29の厚みが設定される。そして、各画素5に設定された有機層29の厚みに応じて、画素5ごとにバンク63で囲まれた領域内に配置する液状体67a(図9(b))の量が設定される。これは、画素5ごとに設定された液状体67aの量に応じて液滴吐出ヘッド83から吐出する液滴67bの量や、液滴67bの数を増やすことによって実現され得る。
このように、液状体67aの量を変えることによって有機層29の厚みを変化させることができる。しかしながら、有機層29の厚みを変化させる方法は、これに限定されない。有機層29の厚みは、例えば、液状体67aの濃度を変えることによっても変化し得る。つまり、有機層29の厚みに応じて液状体67aにおける溶媒の割合を変える方法も採用され得る。この方法では、有機層29の厚みを厚くしたい場合には、液状体67aの濃度が高くすなわち液状体67aにおける溶媒の割合が低く設定される。
【0071】
正孔輸送層67の形成に次いで、図9(c)に示すように、バンク63によって囲まれた各領域内に、発光層69を構成する材料が含まれた液状体69aを配置する。液状体69aは、液滴吐出ヘッド83から液状体69aを液滴69bとして吐出することによって配置される。このとき、正孔輸送層67は、液状体69aによって覆われる。なお、液状体69aは、画素5r、5g及び5bのそれぞれに対応する材料を溶媒に溶解させた構成が採用され得る。
【0072】
画素5rに対応する液状体69aとしては、CN−PPVを溶媒に溶解させた構成が採用され得る。画素5gに対応する液状体69aとしては、F8BTとTFBとを1:1で混合したものを溶媒に溶解させた構成が採用され得る。画素5bに対応する液状体69aとしては、F8を溶媒に溶解させた構成が採用され得る。
次いで、液状体67aを乾燥させてから焼成を行うことによって、図5に示す発光層69が形成され得る。液状体69aの焼成条件は、環境温度が約130℃で、保持時間が約30分間である。
【0073】
次いで、スパッタリング技術などを活用してITO等の膜を形成してから、この膜をフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術などを活用してパターニングすることにより、図5に示す共通電極31が形成され得る。これにより、素子基板11が製造され得る。
【0074】
次に、封止基板13を製造する工程について説明する。
封止基板13を製造する工程では、図5に示すように、第2基板71の対向面72bに吸湿剤73を設けることによって封止基板13が製造され得る。
なお、素子基板11を製造する工程と、封止基板13を製造する工程とは、いずれが先でも後でもかまわない。
【0075】
表示装置1を組み立てる工程では、図2に示すように、素子基板11及び封止基板13をシール材17を介して接合する。
このとき、素子基板11及び封止基板13は、図5に示すように、第1基板41の第1面42aと、第2基板71の対向面72bとが向き合った状態で、且つ吸湿剤73と共通電極31との間に隙間があけられた状態で接合される。これにより、表示装置1が製造され得る。
【0076】
なお、表示装置1において、画素電極27及び共通電極31が一対の電極に対応し、表示領域7が発光領域に対応している。
表示装置1では、表示領域7が複数の画素5に区画されているので、画素5ごとに有機層29への電圧の印加を制御することによって表示面3に画像を表示することができる。
【0077】
また、表示装置1では、有機層29は、表示領域7の周縁側の画素5における厚みよりも、表示領域7の中央側の画素5における厚みの方が厚くなっている。このため、表示領域7の周縁側よりも中央側の方が温度が高くなったときに、中央側の画素5における有機層29の電気抵抗と周縁側の画素5における有機層29の電気抵抗とがそろいやすくなる。従って、表示領域7の周縁側と中央側とで温度差が生じても、表示領域7の周縁側における画素5と中央側における画素5とのそれぞれの有機層29における電流がそろいやすくなる。この結果、表示領域7の周縁側における画素5と中央側における画素5との間で輝度がそろいやすくなる。
【0078】
また、表示装置1では、有機層29に正孔輸送層67が含まれている。そして、表示領域7の中央側の画素5における正孔輸送層67の厚みは、周縁側の画素5における正孔輸送層67の厚みよりも厚くされている。これにより、表示領域7の中央側の画素5における有機層29が、周縁側の画素5における有機層29の厚みよりも厚く構成されている。
【0079】
ここで、有機EL装置では、発光層69の厚みが複数の画素5間で異なると、発光層69からの光の色がこれらの複数の画素5間で異なってしまうことがある。これに対し、表示装置1では、正孔輸送層67の厚みを調整することによって有機層29の厚みが調整されているので、発光層69からの光の色が複数の画素5間でそろいやすい。
従って、表示装置1では、表示領域7の中央側の画素5における有機層29の厚みを周縁側の画素5における有機層29の厚みよりも厚くしつつ、発光層69からの光の色を中央側の画素5と周縁側の画素5との間で合わせやすくすることができる。
【0080】
また、表示装置1では、各画素5における有機層29の厚みが、複数の画素5の発光層69を発光させたときの表示領域7の温度分布と、有機層29の電気抵抗の温度特性とに基づいて設定される。
表示領域7の温度分布は、表示領域7の大きさ、画素5の大きさ、画素5の数などによって表示装置1の機種ごとに異なることが考えられる。従って、各画素5における有機層29の厚みを表示装置1の機種ごとに、表示領域7の温度分布と、有機層29の電気抵抗の温度特性とに基づいて設定すれば、機種ごとに複数の画素5間で輝度をそろえやすくすることができる。
【0081】
また、表示装置1では、正孔輸送層67を形成する工程において、液状体67aをインクジェット法で画素5ごとに配置する。このため、画素5ごとに液状体67aの量や濃度を変えることができる。従って、表示装置1では、表示領域7の中央側の画素5に配置する液状体67aを周縁側の画素5に配置する液状体67aよりも多くすることによって、中央側の画素5における有機層29の厚みを周縁側の画素5における有機層29の厚みよりも厚くすることができる。
また、表示装置1では、表示領域7の中央側の画素5に配置する液状体67aの濃度を周縁側の画素5に配置する液状体67aの濃度よりも高くすることによって、中央側の画素5における有機層29の厚みを周縁側の画素5における有機層29の厚みよりも厚くすることができる。
【0082】
なお、表示装置1では、発光層69からの光を封止基板13を介して表示面3から射出するトップエミッション型の有機EL装置を例に説明したが、有機EL装置はこれに限定されない。有機EL装置は、発光層69からの光を素子基板11を介して底面15から射出するボトムエミッション型も採用され得る。
【0083】
また、表示装置1では、正孔輸送層67の厚みを調整することによって有機層29の厚みが調整されている場合を例に説明したが、有機層29の厚みの調整はこれに限定されない。有機層29の厚みは、正孔注入層65又は発光層69の厚みを調整することによって調整されていてもよく、正孔注入層65、正孔輸送層67及び発光層69のうちの2つ以上が調整されることによって調整されていてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、複数の画素5が設定された表示装置1を例に説明したが、実施の形態はこれに限定されず、表示領域7にわたって一連した有機層29を、表示領域7にわたって一連した一対の電極間に介在させた照明装置などの形態もある。このような照明装置は、例えば液晶表示装置などの光源に好適である。
【0085】
上述した表示装置1は、例えば、図13に示す電子機器500の表示部510に適用され得る。この電子機器500は、携帯電話機である。この電子機器500は、操作ボタン511を有している。表示部510は、操作ボタン511で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報について表示を行うことができる。この電子機器500では、表示部510に表示装置1が適用されているので、表示にともなって表示領域7に温度分布が生じても複数の画素5間での輝度ムラが低く抑えられる。
【0086】
なお、電子機器500としては、携帯電話機に限られず、モバイルコンピュータ、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーションシステム用の表示機器などの車載機器、オーディオ機器等の種々の電子機器が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施形態における表示装置を示す平面図。
【図2】図1中のA−A線における断面図。
【図3】本実施形態における複数の画素の一部を示す平面図。
【図4】実施形態における表示装置の回路構成を示す図。
【図5】図3中のC−C線における断面図。
【図6】本実施形態での有機層の厚みを説明する断面図。
【図7】本実施形態での有機層の厚みの分布を示す図。
【図8】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図9】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図10】本実施形態での素子基板の製造工程に適用され得る液滴吐出ヘッドの主要構成を示す斜視図。
【図11】表示領域における温度分布の一例を示す図。
【図12】本実施形態での有機層の電気抵抗の温度特性の一例を示す図。
【図13】本実施形態における表示装置を適用した電子機器の斜視図。
【符号の説明】
【0088】
1…表示装置、3…表示面、5…画素、7…表示領域、11…素子基板、13…封止基板、27…画素電極、29…有機層、31…共通電極、61…絶縁膜、63…バンク、65…正孔注入層、67…正孔輸送層、69…発光層、81…駆動素子層、83…液滴吐出ヘッド、500…電子機器、510…表示部、M…マトリクス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の電極と、
前記一対の電極間に介在し、発光層を含む有機層と、を有し、
前記有機層は、平面視で前記発光層から光が射出される領域である発光領域の周縁側における厚みよりも中央側における厚みの方が厚くなっていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記発光領域が複数の画素に区画されており、
前記有機層は、前記発光領域の周縁側の前記画素における厚みよりも、前記発光領域の中央側の前記画素における厚みの方が厚くなっていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記有機層は、正孔輸送層を有しており、
前記中央側の画素における前記有機層の厚みは、前記正孔輸送層の厚みが前記周縁側の画素における前記正孔輸送層の厚みよりも厚く構成されていることによって、前記周縁側の画素における前記有機層の厚みよりも厚くなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
互いに対向する一対の電極と、前記一対の電極間に介在し、発光層を含む有機層と、を有する有機EL装置の製造方法であって、
前記有機層を、平面視で前記発光層から光が射出される領域である発光領域の周縁側における厚みよりも中央側における厚みを厚くして形成する工程を有することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
前記発光領域が複数の画素に区画されており、
前記有機層を形成する工程では、前記発光領域の周縁側の前記画素における前記有機層の厚みよりも、前記発光領域の中央側の前記画素における前記有機層の厚みを厚くすることを特徴とする請求項4に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
前記有機層を形成する工程で前記中央側の画素における前記有機層の厚みを前記周縁側の画素における前記有機層の厚みよりも厚くする比率は、前記一対の電極間に電圧を印加したときの前記発光領域の温度分布と、前記有機層の材料における温度に対する電気抵抗の変化とに基づいて設定されることを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
前記有機層は、正孔輸送層を有しており、
前記有機層を形成する工程では、前記周縁側の画素における前記正孔輸送層の厚みよりも前記中央側の画素における前記正孔輸送層の厚みを厚くすることで、前記周縁側の画素における前記有機層の厚みよりも、前記中央側の画素における前記有機層の厚みを厚くすることを特徴とする請求項6に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項8】
前記有機層を形成する工程では、前記有機層を構成する材料をインクジェット法で各前記画素に配置することによって、前記有機層を形成することを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−158881(P2009−158881A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338587(P2007−338587)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】