説明

有益な膣微生物叢の発生および増殖を促進することを目的とする組成物

グルコ-オリゴ糖(GOS)、フルクト-オリゴ糖(FOS)、ガラクト-オリゴ糖、およびそれらの混合物を含んでなる医薬組成物および皮膚科学組成物、および大豆(Glycine max)抽出物、クローバー(Trifolium sp.)抽出物およびそれらの混合物から選択されるイソフラボン含有植物抽出物。有益な膣微生物叢の発生および増殖を促進することを目的とする膣細菌性膣炎の治療および/または膣粘膜の治療のための使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、有益な膣微生物叢の発生および増殖を促進することを目的とする皮膚科学または医薬組成物に関する。
【0002】
健康な女性では、尿生殖器の微生物叢は、ほぼ50種類の様々な微生物から構成されている。これらの微生物の中で、この母集団の95%は様々な乳酸桿菌株からなっている。これらの乳酸桿菌は、過酸化水素産生、乳酸産生、バクテリオシン産生、および病原体の付着および膨張抑制など様々な機構による病原体からの防御的役割を演じている。例えば、Gardnerella vaginalis、Prevotella bivia、Neisseria gonorrhoeaeおよびCandida albicansのような膣微生物叢の多くの病原体の増殖は、乳酸桿菌によって抑制される。膣に固有の乳酸桿菌は、特に Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jenseniiおよびLactobacillus vaginalisである。
【0003】
よって、正常な膣微生物叢は、主として粘膜の表面に保護用バイオフィルムを形成する乳酸桿菌から構成されている。これらの乳酸桿菌は、潜在的病原体など多数の他の種と共存している。この平衡の喪失は、膣pHの増加および乳酸桿菌の減少により病原体が発育できるようになることによって膣症を誘発する要因となる可能性がある。これらの不均衡は、特に閉経後の女性に見られるが、これに限られない。
【0004】
抗生物質療法は、膣微生物叢の不均衡の治療に一般に用いられる治療法の一つである。しかしながら、この療法は、抗生物質治療の一般的な欠点を有し、有効性が次第に小さくなることが分かっている。更に、この療法は、病原性微生物叢の除去を目的としているが、それは正常な微生物叢まで破壊する。
【0005】
既に市場に出回っている、有益な膣微生物叢の発生および増殖を促進することを目的とする膣粘膜保護用の製品は、有効性が不十分である。
【0006】
本発明は、グルコ-オリゴ糖(GOS)およびフルクト-オリゴ糖(FOS)から選択されるプレバイオティクスオリゴ糖と特に大豆およびクローバー抽出物から選択されるイソフラボン含有植物抽出物との組合せが、膣微生物叢の有益な乳酸桿菌の増殖に相乗効果を有することを予期しない方法で示すものである。GOS自身は、乳酸桿菌の増殖にプレバイオティクス効果を有する。この結果は予想されるものであり、当該技術分野の状態に既に報告されている。しかしながら、驚くべきことには、このプレバイオティクス効果は、イソフラボンを含有する植物抽出物の存在下で改良されるのである。例えば、クローバー抽出物は、乳酸桿菌の増殖とグルコース消費を増加させる。この結果は予期しないものであり、イソフラボン含有植物抽出物はホルモン様効果が知られておりかつ特に閉経後の女性のエストロゲン不足を補うのに用いられているからである。イソフラボンを含有するこれらの植物抽出物の乳酸桿菌増殖に対する直接効果は、以前は全く報告されたことがなかった。
【0007】
Database WPI XP-002514149という文献には、女性の骨粗鬆症の予防のためのFOS/GOSと大豆抽出物を含む組成物が記載されている。この文献には、閉経期の膣粘膜に対する影響の治療および予防または細菌性膣炎の治療および予防のためのこれらの組成物の使用は記載されていない。その上、この文献には、クローバー抽出物を含む組成物は記載されていない。
【0008】
FR 2 874 825号公報には、膣微生物叢にとって有益なプレバイオティクスオリゴ糖の使用が記載されている。プレバイオティクスオリゴ糖は、有益な内在性の膣細菌株の増殖を促進する能力により選択される。この文献には、オリゴ糖とイソフラボン含有植物抽出物とを両方とも含む組成物は記載されていない。
【0009】
WO93/00067号公報には、オリゴ糖を含む化粧組成物が記載されている。これらの組成物は、有益な内在性微生物叢の発生に好ましい環境を保持している。このような組成物の例としては、液体石鹸、シャンプー、ボディーミルク、フェースクリーム、並びに膣ゲルが挙げられる。しかしながら、WO93/00067号公報には、オリゴ糖とイソフラボン含有植物抽出物とを両方とも含む組成物は記載されていない。
【0010】
Rousseau et al.の文献(Anaerobe, 11: 145-153, 2005)には、膣の乳酸桿菌および病原性微生物に対するある種のオリゴ糖のプレバイオティクス効果が記載されている。この文献には、イソフラボン含有植物抽出物からなる組成物は記載されていない。
【0011】
WO2004/084832号公報には、Fo-Ti、エストロゲン型の効果を有するムラサキツメクサまたは大豆抽出物を含む組成物が記載されている。これらの組成物は、特に閉経期におけるエストロゲンの減少に関連した影響の治療に特に適している。しかしながら、この文献には、GOSおよびFOSをも含む組成物は記載されていない。
【0012】
EP-A-1 348 439号公報には、イソフラボンおよびオジギソウの抽出物を含む膣の衛生用組成物が記載されている。この文献には、オリゴ糖をも含む組成物は記載されていない。
【0013】
Database WPI XP-002517089の文献には、大豆イソフラボンの抽出方法が記載されている。次に、これらのイソフラボンを、閉経後の女性ののぼせおよび膣症の治療、循環器疾患の予防、並びに癌の予防に用いることができる。この文献には、オリゴ糖をも含む組成物は記載されていない。
【0014】
従って、膣組成物における植物抽出物の使用に関する当技術分野の状態は、クローバーまたは大豆抽出物と組み合わせたときのオリゴ糖のプレバイオティクス効果の改良を示してはいない。
【0015】
本明細書では、GOSとFOSから選択されるプレバイオティクスオリゴ糖と、特に大豆およびクローバー抽出物から選択されるイソフラボン含有植物抽出物との組合せが、膣微生物叢の有益な乳酸桿菌に対するプレバイオティクス効果を増加させることが実証されている。
【0016】
これらの組成物は、細菌性膣炎、カンジダ症、または真菌症に続く不均衡のような膣微生物叢の不均衡の治療に特に適している。このような膣微生物叢の不均衡は、閉経によって促進される可能性がある。
【0017】
膣症、カンジダ症および真菌症は、通常は抗生物質によって治療される。抗生物質治療に続いて、本発明の組成物は、有益な膣微生物叢の回復と膣の生理学的pHの回復を促進する。
【0018】
本発明は、本発明の組成物の非治療的使用にも関する。本発明の組成物は、有益な膣微生物叢を保持し、かつ膣の生理学的pHを保持するため、毎日の膣のケアまたは衛生に用いることができる。
【0019】
本発明は、
グルコ-オリゴ糖(GOS)、フルクト-オリゴ糖(FOS)、およびそれらの混合物から選択されるプレバイオティクス、および
少なくとも2、5、10、15、20、30、40、50または100ppmのイソフラボンを含有する植物抽出物
を含んでなる組成物に関する。
【0020】
本発明は、
グルコ-オリゴ糖(GOS)、フルクト-オリゴ糖(FOS)、およびそれらの混合物から選択されるプレバイオティクス、および
少なくとも2、5、10、15、20、30、40、50または100ppmのホルモノネチン、ビオカニンA、ゲニステイン、ダイゼイン、ゲニスチン、ダイジンおよび/またはエクオールを含有する植物抽出物
を含んでなる組成物に関する。
【0021】
本発明は、
グルコ-オリゴ糖(GOS)、フルクト-オリゴ糖(FOS)、およびそれらの混合物から選択されるプレバイオティクス、および
少なくとも2、5、10、15、20、30、40、50または100ppmのダイゼイン、ゲニステイン、および/またはホルモノネチンを含有する植物抽出物
を含んでなる組成物に関する。
【0022】
本発明は、
グルコ-オリゴ糖(GOS)、フルクト-オリゴ糖(FOS)、およびそれらの混合物から選択されるプレバイオティクス、および
大豆(Glycine max)抽出物、クローバー(Trifolium sp.)抽出物、およびそれらの混合物から選択されるイソフラボン含有植物抽出物
を含んでなる組成物に関する。
【0023】
本発明は、更に詳細には、膣微生物叢の不均衡を予防および治療するための組成物に関する。
【0024】
本発明は、更に詳細には、細菌性膣炎、膣カンジダ症および膣真菌症の予防および治療用の組成物に関する。
【0025】
好ましくは、これらの組成物は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%のプレバイオティクスと、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%または10%のイソフラボン含有植物抽出物を含む。
【0026】
好ましくは、これらの組成物は、少なくとも0.5%〜7%のプレバイオティクスと0.5%〜5%のイソフラボン含有植物抽出物を含む。
【0027】
有利には、イソフラボンは、ホルモノネチン、ビオカニンA、ゲニステイン、ダイゼイン、ゲニスチン、ダイジン、エクオールおよびそれらの混合物から選択される。
【0028】
有利な実施態様では、植物抽出物は、大豆(Glycine max)抽出物、クローバー(Trifolium sp.)抽出物、およびそれらの混合物から選択される。
【0029】
好ましくは、植物抽出物は、品種Trifolium subterraneum L.、Trifolium repens L.およびTrifolium pratense L.から選択されるクローバー抽出物である。
【0030】
更に好ましくは、植物抽出物は、少なくともゲニステイン、ダイゼインおよびホルモノネチンを含有するTrifolium pratense L.の抽出物である。
【0031】
本発明の一つの実施態様では、プレバイオティクスは、重合度が少なくとも4であるα- l,6/α-l,4 GOSを含んでなる。
【0032】
もう一つの実施態様では、プレバイオティクスは、重合度が4、5および6であるFOSの混合物から構成されるFOSを含む。
【0033】
組成物は、膣に使用するための膣ゲル、石鹸、スプレーまたはクリームの形態とすることができる。
【0034】
更に、本発明は、膣の衛生およびケアのための組成物の使用にも関する。詳細には、本発明は、プレバイオティクスとイソフラボン含有植物抽出物を含んでなる組成物の局所的膣使用における膣の衛生およびケアのための非治療的使用に関する。
【0035】
更に、本発明は、有益な膣微生物叢を保持し、および/または膣pHをほぼ4.5の生理学的pHに保持するための、これらの組成物の非治療的使用に関する。
【0036】
本発明は、
グルコ-オリゴ糖(GOS)、フルクト-オリゴ糖(FOS)、およびそれらの混合物から選択されるプレバイオティクス、および
イソフラボンを含有する植物抽出物
を含んでなる皮膚科学または医薬組成物に関する。
【0037】
プレバイオティクスは、一般的には約2〜20個の糖単位からなる短鎖のオリゴ糖またはポリサッカリドである。これらは、1または限定数の細菌の増殖および/または代謝活性を選択的に刺激することによって健康に有益な作用を発揮する消化されない化合物である。本発明の組成物において選択されるプレバイオティクスは、膣に存在しかつ有益な細菌の増殖を刺激する1または限定数のこれらの有益な細菌の選択的基質として作用する。本発明の組成物に用いられるプレバイオティクスは、更に詳細には、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus aciduphilus、Lactobacillus inersおよびLactobacillus vaginalisを標的とする。
【0038】
最も商業上利用可能なプレバイオティクスは、オリゴ糖、天然のまたは(化学またはバイオテクノロジー)合成によって得られる植物母体の抽出物である。グルコ-オリゴ糖(GOS)、フルクト-オリゴ糖(FOS)、ガラクト-オリゴ糖などのようなプレバイオティクスの潜在能力を有する様々な種類のオリゴ糖である。膣のプレバイオティクスオリゴ糖は、腸のプレバイオティクスオリゴ糖とは異なる。実際に、腸は、オリゴ糖を分解しそうな多数の酵素を含んでいる。オリゴ糖は、酵素攻撃に耐えることができるようにする長く複雑な化学構造を持っていなければならない。逆に、酵素の束縛がない膣では、プレバイオティクスオリゴ糖は短めの比較的単純な構造を有している。
【0039】
FOSは、フルクトース分子からなる短鎖のフルクト-オリゴ糖であり、(FOSの起源に準じて)一端にグルコース分子を含むことができる。FOSは、タマネギ、トマト、アーティチョーク、バナナ、キクイモ、アスパラガス、ニラネギ、小麦、ライ麦およびニンニクのような一定数の植物に天然状態で存在する。
【0040】
FOSは、2つの異なる方法によって工業的に生産することができる:
チコリーイヌリンの加水分解によるRaftilose(登録商標)FOS(Orafti,ベルギー)。この種のFOSには、他の生産者がいる;
酵素合成によるActilight(登録商標)FOS(Beghin Meiji,フランス)。
【0041】
Actilight(登録商標)FOSは、下記の機構:
【化1】

(上記式中、nは、好ましくは3、4または5である)
に従って、サッカロースおよび酵素であるβ-フルクトシルトランスフェラーゼから産生される。
【0042】
フルクトシル-トランスフェラーゼは、Aspergillus nigerまたはAureobasidium pullulansによって産生される。n分子のサッカロースから、サッカロース、グルコースおよびフルクト-オリゴ糖の混合物が得られる。次に、Actilight(登録商標)FOSをクロマトグラフィーによって精製する。
【0043】
Actilight(登録商標)FOSは、グルコース、フルクトースおよびサッカロースの平均割合が5%であり、6までの重合度を含む。
【化2】

【0044】
GOSは、α1-6結合したグルコース単位の鎖からなる短鎖のグルコ-オリゴ糖であり、α1-2、α1-3、α1-4結合を含むこともできる。
【0045】
α1-6 GOSは、α1-6結合によって互いに連結したグルコース単位の鎖からなる線状のグルコ-オリゴ糖である。これは、グルコース、メチル=α-グルコシド、イソマルトースまたはマルトースであることができる受容体への供与体であるサッカロースから出発する酵素的トランスグルコシル化反応によって得られる。受容体がマルトース(α1-4結合したグルコース)である場合には、α1-6/α1-4 GOSの酵素的合成が起こる。
【0046】
GOSは、小さなグルカンである。それらは、グルカン-サッカラーゼファミリーの酵素によって触媒されるトランスグルコシル化反応によって合成される。これらの酵素は、供与体基質からその還元末端の受容体生成物へグルコシル単位の転移を確実に行う。このようにして生成したオリゴ糖は、次に基質となり、より高重合度のオリゴ糖を生じる。グルカン-サッカラーゼは、限定数の供与体基質(一般的にはサッカロース)を受け取るが、可変数の受容体生成物(例えば、グルコースまたはマルトース)は受け取らない。
【0047】
異なる特異性を有しかつ様々な種類のグリコシド結合(α-(l-2)、α-(1-3)、α-(l-4)、α-(1-6))の形成を触媒する極めて多様なグルカン-サッカラーゼがある。この反応の収率は、[供与体]/[受容体]比および培地における総糖含量に大きく依存している。反応速度は受容体の種類によって変化し、例えば、受容体としてマルトースを用いる合成はグルコースを用いるより効率的である。
【0048】
【化3】

【0049】
この酵素反応は、Leuconostoc mesenteroides NRRL B-512 (F.)のグルカン-サッカラーゼによって触媒される。
【0050】
α-l,6/α-l,4 GOSは、オリゴ糖の混合物である。この混合物は、重合度が11までのオリゴ糖からなる。
【0051】
【表1】

【0052】
【化4】

【0053】
本発明の組成物で用いることができるプレバイオティクスの中で、EP-B-O 591 443号公報に記載のオリゴ糖、特に重合度が少なくとも4のα1-2/α1-6 GOSを更に詳細に引用することができる。もう一つの好ましいプレバイオティクスは、DP3の Actilight(登録商標)FOSである。
【0054】
本発明の好ましい実施態様では、組成物は、膣微生物叢の特異的プレバイオティクスの混合物を含む。
【0055】
本発明の組成物は、更にエストロゲンに類似した空間構造を有する植物抽出物イソフラボンを含む。フィトエストロゲンの効果は知られており、それらは、膣細胞学、栄養価値および膣粘膜の水和を改良し、膣微生物叢の増殖条件を一層好ましくする。驚くべきことには、これらのイソフラボンは、膣微生物叢の増殖に直接的効果も有する。
【0056】
植物フィトエストロゲンの多数の既知供給源の中では、大豆(Glycine max)抽出物、クローバー(Trifolium sp.)抽出物およびそれらの混合物が特に好ましい。植物抽出物は、典型的には、グリセロールコーティングされたグリコール性、水性または乾燥形態であるか、または超臨界CO2中にある。
【0057】
これらの植物抽出物は、少なくとも2、5、10、15、20、30、40、50または100ppmのイソフラボン、好ましくは2〜20ppmのイソフラボンを含んでなる。
【0058】
好ましくは、イソフラボンは、ホルモノネチン、ビオカニンA、ゲニステイン、ダイゼイン、ゲニスチン、ダイジン、エクオール、およびそれらの混合物から選択される。更に好ましくは、植物抽出物は、ダイゼイン、ゲニステインおよびホルモノネチンを含有する。
【0059】
イソフラボンを十分な量で含有する植物抽出物は、当業者に周知の手法に従って調製される。これらの抽出物は、クローバーまたは大豆から有利に調製される。これらの抽出物は市販されており、そのような一例は、Sedermaから発売されているSterocare(登録商標)クローバー抽出物である。
【0060】
好ましい態様では、本発明の組成物は、少なくとも2ppmのダイゼイン、少なくとも11ppmのゲニステインおよび少なくとも9ppmのホルモノネチンを含有するクローバーTrifolium pratense L.の抽出物を包含する。
【0061】
組成物は、更に少なくとも1種類の天然植物、無機または合成起源のゲル化剤を含むことができ、これは水と接触して荷電のないチキソトロピー性の親水コロイドゲルを形成する。例としては、アクリル酸のポリマー誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンゴム、グアールガム、ガラクトマンナン、スクシノグリカン、κまたはιカラギーナン、ベントナイト、ヘクトライト、およびケイ酸マグネシウムが挙げられる。ゲル化剤は、最終組成物で0.5〜5%である。
【0062】
組成物は、更にモノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールモノプロパンジオール、ブチレングリコール、またはヘキシレングリコールのようなグリコールを含むことができる。これは、総組成物の1%〜80%の比率で、好ましくは3%〜10%の比率で組成物に加えることができる。
【0063】
本発明の組成物は、更に乳酸、クエン酸、ソルビン酸、安息香酸、サリチル酸、酒石酸、グリコール酸などの有機酸塩の形態での1〜4種類の静真菌剤および静菌剤からなる防腐剤系を含むことができる。それらは、総組成物の0.1〜2%の比率で組成物に加えることができる。
【0064】
有利には、組成物は、クエン酸、乳酸、グリコール酸、塩化水素酸またはホウ酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、サイクリックAMP、トリエタノールアミン、トロメタミン、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸/クエン酸塩緩衝液などのような製剤を生理学的pHとするためのpH調節剤を含む。pH調節剤、最終組成物の0.05%〜5%、具体的には最終組成物の0.05%〜1%の比率で組成物に加える。
【0065】
組成物は、更に
皮膚軟化剤、水和活性成分、皮膚バリヤー再構築剤、刺激防止剤、鎮静剤のような皮膚科学に典型的に用いられる活性成分、
抗生物質、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、高炎症薬などのような補足的治療作用を有する活性成分
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含むことができる。
【0066】
本発明の組成物は、局所、経口または膣投与に適する様々な製剤の形態に処方することができる。
【0067】
好ましい実施態様によれば、様々な製剤が局所使用に適しており、クリーム、エマルション、ミルク、ポマード、ローション、油、水性または水-アルコールまたはグリコール溶液、粉末、スプレー、ゼリー、ゲル、ヒドロゲル、または外部使用のための任意の他の生成物が挙げられる。
【0068】
本発明は、更に上記で定義した通りのプレバイオティクスとイソフラボン含有植物抽出物、並びに適当な薬学担体を含んでなる医薬組成物に関する。
【0069】
経口投与のための本発明の医薬組成物では、活性成分は、単位投薬形態で伝統的な薬学支持物と混合して投与することができる。適当な単位投薬形態としては、錠剤、ゼラチンカプセル、粉末、顆粒、および経口溶液または懸濁液のような経口経路による形態が挙げられる。
【0070】
錠剤形態の固形組成物を調製するときには、主要活性成分をゼラチン、澱粉、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴムなどのような薬学担体と混合する。錠剤はサッカロースまたは他の適当な材料でコーティングすることができ、または延長または遅延活性を有しかつ所定量の活性成分を連続的に放出するような方法で処理することができる。
【0071】
ゼラチンカプセルの製剤は、活性成分を希釈剤と混合することによって、および得られた混合物を軟質または硬質ゼラチンカプセルに注ぎ入れることによって得られる。
【0072】
シロップまたはエリキシル形態の製剤は、活性成分を甘味料、防腐剤、並びに香味料および適当な着色料と共に含むことができる。
【0073】
水分散性粉末または顆粒は、活性成分を分散または湿潤剤または懸濁剤、並びにフレーバー中和剤または甘味料と混合して含むことができる。
【0074】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、膣で局所使用のためのゲル、ゼリー、石鹸、スプレーまたはクリームの形態で提供される。
【0075】
本発明の組成物は、更に詳細には膣微生物叢の不均衡の治療および予防、特に細菌性膣炎、膣カンジダ症および膣真菌症の予防および治療に適している。
【0076】
閉経の粘膜に対する影響は、更に詳細にはこれらの膣微生物叢の不均衡の発育を促進する可能性がある。
【0077】
「膣症」または「細菌性膣炎」とは、膣の微生物叢の不均衡を意味する。これは、乳酸桿菌が消失して、Gardnerella vaginalisのような嫌気性細菌が増殖することを特徴としている。これは、デーデルライン桿菌の保護効果の消失を伴う膣微生物叢の不均衡を示唆している。
【0078】
「膣微生物叢の不均衡」とは、任意の乳酸桿菌の欠損、特にLactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus inersまたはLactobacillus vaginalisの欠損を意味する。
【0079】
「膣カンジダ症」とは、カンジダ属の酵母によって引き起こされる膣微生物叢の不均衡または膣感染症を意味する。
【0080】
「膣真菌症」とは、より一般的には真菌によって引き起こされる膣微生物叢の不均衡を意味する。
【0081】
更に、本発明は、個体に本発明の組成物の有効量を投与することを含んでなる、膣微生物叢の不均衡の治療方法にも関する。
【0082】
更に、本発明は、個体に本発明の組成物の有効量を投与することを含んでなる、細菌性膣炎、膣カンジダ症および膣真菌症の不均衡の治療方法にも関する。
【0083】
更に、本発明は、膣微生物叢の不均衡の治療および予防、更に詳細には細菌性膣炎、膣カンジダ症および膣真菌症の治療および予防のための薬剤を製造するための、これらの組成物の1つの使用にも関する。
【0084】
更に、本発明は、膣粘膜への閉経の影響を治療および予防するための薬剤を製造するためのこれらの組成物の1つの使用にも関する。
【0085】
更に、本発明は、膣微生物叢の不均衡の治療および予防、更に詳細には、細菌性膣炎、膣カンジダ症および膣真菌症の治療および予防のための薬剤を製造するための、上記で定義した通りのプレバイオティクスとイソフラボン含有植物抽出物の使用にも関する。
【0086】
更に、本発明は、膣粘膜への閉経の影響を治療および予防するための薬剤を製造するための上記で定義した通りのプレバイオティクスとイソフラボン含有植物抽出物の使用にも関する。
【0087】
更に、本発明は、膣の衛生および膣のケアのための皮膚科学組成物にも関する。本発明の組成物は、閉経後の女性の膣衛生およびケアに特に適している。
【0088】
皮膚科での使用に関しては、組成物は、局所投与に適する製剤の形態に処方されることが有利である。
【0089】
本発明は、特に閉経後の女性についての膣衛生および膣ケアの方法にも関する。
【0090】
更に、本発明は、膣ケアおよび衛生のための本発明の組成物の非治療的使用にも関する。詳細には、本発明は、膣での局所使用における膣衛生およびケアのためのプレバイオティクスとイソフラボン含有植物抽出物とを含んでなる組成物の非治療的使用に関する。
【0091】
更に、本発明は、有益な膣微生物叢を保持しおよび/または膣pHを約4.5の生理学的pHに保持するための、これらの組成物の非治療的使用にも関する。
【実施例】
【0092】
実施例1:膣ゼリー
【表2】

【0093】
Sterocare(登録商標)の濃度は、0.5〜3%で変化することもできる。処方の残りは、変化しないままである。ゲル処方物には、脂肪性薬剤を加える。
【0094】
Sterocare(登録商標)は、2ppmのダイゼイン、11ppmのゲニステインおよび9ppmのホルモノネチンを含んでなる。
【0095】
実施例2:プラシーボゲル処方
【表3】

【0096】
これは、GOSとSterocare(登録商標)を含まない同じ処方である。
【0097】
実施例3:ウォッシングフォーム(または身体用衛生ゲル)
【表4】

【0098】
GOSおよびムラサキツメクサの濃度は、0.5〜1.5%の間で変化することができる。
【0099】
実施例4:ゼラチンカプセル
プレバイオティクスオリゴ糖(GOSおよび/またはFOS)、
イソフラボン(クローバーおよび/または大豆)、
賦形剤: ラクトース一水和物、ジャガイモ澱粉、グルタミン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ゼラチンカプセル殻(E171二酸化チタン、ゼラチン)。
【0100】
実施例5:クリーム
プレバイオティクスオリゴ糖(GOSおよび/またはFOS)、
イソフラボン(クローバーおよび/または大豆)、
賦形剤: ワセリン、非イオン性の乳化性ワックス/セトマクロゴール1000、流動パラフィン、グリシン、ソルビン酸、水酸化ナトリウム濃縮溶液 qsp pH 4〜5、精製水。
【0101】
実施例6
2株の乳酸桿菌BLL 2005および2008(プロバイオティック活性に関して2種類の最も重要な菌株)を選択し、1)乳酸桿菌の万能基質であるグルコース単独、およびグルコース + Sterocare(登録商標)(1.5%および3%)、および2)GOS単独、およびGOS + Sterocare(登録商標)(1.5%および3%)を試験した。
【0102】
いずれの場合にも、Sterocare(登録商標)は、乳酸桿菌による基質消費を増加し、従ってそれらの増殖を増加することを観察している(図1)。
【0103】
実施例7:乳酸菌の経時的増殖:膣衛生ゲルの存在下または非存在下での増殖
初期糖濃度5 g/l、2%接種。
実施例1および2の活性処方およびプラシーボ処方の膣衛生ゲルを用いた。
【0104】
【表5】

【0105】
上記および図2に提示した結果は、活性ゲルは菌株を増殖させることができるが、プラシーボの場合は増殖させることができないことを明確に示している。
【0106】
実施例8:治療済みおよび未治療女性におけるヌージェントスコアと膣pHの比較
プロトコル
細菌性膣炎に罹り、抗生物質治療を受けたことがある2群の女性の治療。第1群は活性生成物の投与を受け、第2(プラシーボ)群はプレバイオティクスおよびクローバー抽出物を含まない生成物の投与を受ける。
【0107】
治療は、生成物(プレバイオティクスとイソフラボンを含むもの、およびプラシーボ)を1回/日投与することからなる。生成物は、5% GOSと2%イソフラボン含有植物抽出物とを含む使い捨て可能な単回用量管の形態で提供される(膣ゼリー、実施例1)。
【0108】
治療は、毎日、8日間行う。
【0109】
D0では、膣試料を採取して膣pHを測定する婦人科医による聴診を受ける。
【0110】
D8に、2回目の予約、および膣試料およびpH測定。
【0111】
このようにして、D0およびD8に、ヌージェントスコアおよびpHを測定し、スコアとpHを同一群内で比較し、かつ2群の被験者を比較する。
【0112】
ヌージェントスコアの分析
ヌージェントスコアの目的:
膣微生物叢の量の測定、
正常な膣微生物叢、中間の膣微生物叢(膣症に発展する可能性がある)、および膣症を区別。
【0113】
【表6】

【0114】
8日後:
治療群は、治療の8日後には、総ての被験者について正常な膣微生物叢の回復を示す。
【0115】
プラシーボ群は、8日後には、一層ランダム分散を示し、中間の微生物叢を特徴とする個体では33%であり、膣症を特徴とする個体では11%である。
【0116】
【表7】

【0117】
ヌージェントスコアのより大きな変動性が、プラシーボ群対活性群で見られる。標準偏差は、プラシーボ母集団では実に2.5倍高い。
【0118】
【表8】

【0119】
治療により、ヌージェントスコアは安定化して、8日後には3を下回った。
被験者の75%は、スコアが≦1である。
被験者の12.5%は、スコアが=2である。
個体の12.5%は、スコアが5〜3である。
【0120】
結論:
この試料に基づけば、治療は活性群に有意な効果を有し、正常な膣微生物叢を一層速やかに回復した。
【0121】
プラシーボ群の個体の11%は、8日後に膣症を再発した。
【0122】
膣pHの分析
膣粘膜の生理学的pHは酸性であり、約4.5である。
【0123】
膣症は、高めのpHを特徴としている。
【0124】
【表9】

【0125】
8日後:
活性群の被験者の膣pHは、治療の8日後には減少傾向を示すが、プラシーボ群の被験者では、反対の効果が示されている。
【0126】
【表10】

【0127】
【表11】

【0128】
活性群の被験者の86%は、膣pHの安定化または減少を示している。
【0129】
28%は、最終pHが5である。
【0130】
プラシーボ群の被験者の66%は、膣pHの安定化または減少を示しており、この患者の66%では、この最終pHは4.5以上である。
【0131】
結論:
この試料に基づけば、治療は活性群に有意な効果を有し、
pHの生理学的値(4〜4.5)への減少を促進し、
抗生物質治療によって回復した膣の生理学的pHを保持する。
【0132】
プラシーボ群の被験者における膣pHの安定性または減少は、患者の33%のみで生理学的値に到達している。
【0133】
活性群の被験者に対する治療の効果は、微生物叢と膣pHの性質に有意な正の効果を有する。
【0134】
総体的相関が、正常な微生物叢へ向かう傾向と酸性pHへ向かう傾向との間に見られ、「共生」乳酸菌の優勢を反映している。
【0135】
実施例9:イソフラボン分析
この検討の目的は、本発明の組成物を局所投与した後の雌ウサギの血中におけるプレバイオティクスおよびイソフラボンの存在を試験することであった。
【0136】
2羽の雌ウサギ/群に、1日1回ずつ8日間、コントロールゲル(ワセリン)および実施例1のゲル(5% GOSと2%イソフラボン含有植物抽出物とを含むゲル)を膣内に局所投与した。血液試料を、投与の1日前(T0)および投与の終了した1日後(T8)に採取した。
【0137】
HPLCでは、治療群およびコントロール群の血漿中にイソフラボン(ダイゼイン、ゲニステインおよびホルモノネチン)またはGOSの存在を検出することはできなかった。ポジティブコントロールとして、組成物で用いたクローバーの植物抽出物は、2ppmのダイゼイン、11ppmのゲニステインおよび9ppmのホルモノネチンを含んでいる。
【0138】
従って、これらの組成物は局所効果のみを有し、活性成分であるGOSおよびイソフラボンは吸収されず、かつ全身効果を有しない。従って、イソフラボンの効果は、ホルモン様効果ではない。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】Lactobacillus crispatus BLL 2008の増殖
【図2】Lactobacillus crispatus BLL 2005の増殖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膣微生物叢の不均衡の予防および治療のための組成物であって、
グルコ-オリゴ糖(GOS)、フルクト-オリゴ糖(FOS)、およびそれらの混合物から選択されるプレバイオティクス、および
ホルモノネチン、ビオカニンA、ゲニステイン、ダイゼイン、ゲニスチン、ダイジン、エクオールおよびそれらの混合物から選択されるイソフラボンを含有する植物抽出物
を含んでなる、組成物。
【請求項2】
細菌性膣炎、膣カンジダ症および膣真菌症の予防および治療のための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
抗生物質治療後における有益な膣微生物叢の修復のための、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約4.5の膣の生理学的pHの回復のための、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
0.5%〜7%のプレバイオティクスおよび0.5%〜5%のイソフラボン含有植物抽出物を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
植物抽出物が、少なくとも10ppmのイソフラボンを含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
植物抽出物が、大豆(Glycine max)抽出物、クローバー(Trifolium sp.)抽出物およびそれらの混合物から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
植物抽出物が、品種Trifolium subterraneum L.、Trifolium repens L.およびTrifolium pratense L.から選択されるクローバー抽出物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
植物抽出物が、少なくともゲニステイン、ダイゼインおよびホルモノネチンを含有するTrifolium pratense L.の抽出物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
プレバイオティクスが、重合度が少なくとも4であるα-l,6/α-l,4 GOSを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
プレバイオティクスが、重合度が4、5および6であるFOSの混合物から構成されるFOSを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
膣に使用するための膣ゲル、石鹸、スプレーまたはクリームの形態である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
膣の局所使用における膣の衛生およびケアのための、
グルコ-オリゴ糖(GOS)、フルクト-オリゴ糖(FOS)、およびそれらの混合物から選択されるプレバイオティクス、および
ホルモノネチン、ビオカニンA、ゲニステイン、ダイゼイン、ゲニスチン、ダイジン、エクオールおよびそれらの混合物から選択されるイソフラボンを含有する植物抽出物
を含んでなる組成物の非治療的使用。
【請求項14】
有益な膣微生物叢を保持するための、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
膣のpHを約4.5の生理学的pHに保持するための、請求項13または14に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−527315(P2011−527315A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517162(P2011−517162)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058756
【国際公開番号】WO2010/004005
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511007716)
【氏名又は名称原語表記】ALLIOSPHARMA
【Fターム(参考)】