説明

有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置

【課題】有線ページングシステムの複合ケーブルにおいて、検出用の専用線を設けることなく短絡や断線による複合ケーブルの異常の検出が可能な複合ケーブルの異常検出装置を提供する。
【解決手段】主装置1と複数の端末3とが複数の対線からなる複合ケーブル2で接続され、複合ケーブル3が主装置1と端末3のそれぞれでトランス14,33を介して他の対線231と絶縁されている1対の線21を含む有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置において、他の対線23と絶縁されている1対の線21のいずれかの線または両線と、他の対線23のいずれかの線231との間に検査信号19を印可する印可回路を設けるとともに、印可された検査信号19を検出して検査結果信号110を出力する検査結果信号出力回路18を備えたことを特徴とする有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主装置の放送用の増幅器が絶縁トランスを介して複合ケーブルに接続されるとともに、この複合ケーブルに複数の端末のスピーカがマッチングトランスを介して接続されている有線ページングシステムの短絡や断線による複合ケーブルの異常検出装置に関する
【背景技術】
【0002】
工場内などの構内有線放送システムに適用されている有線ページングシステムは、警報やメッセージのスピーカからの放送あるいは各所に設置された端末間の緊急通信手段として、対象者に確実に情報を伝達することが重要である。そのためには複合ケーブルの短絡や断線の事故を的確に検出して、事故ケーブルを除去することが必要となる。
【0003】
従来の有線ページングシステムの事故検出方式として、例えば特許文献1に「有線ページングシステムにおけるスピーカブランチ配線の断線検出方式」が開示されている。この特許文献1に開示されている断線検出方式は、主装置からスピーカブランチ配線を介して複数の端末へ検査信号を送出し、端末でスピーカブランチ配線へ接続された検査信号検出回路にて検出後、各々予め決められた発生タイミングで応答信号としてワンショットパルスを発生させ、別の線で主装置へ返信することで断線を検出し、スピーカブランチ配線へ重畳する検査信号は音声として聞き取りにくい低周波周波数であり、応答信号のワンショットパルスの発生タイミングで端末を区別するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−260408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に示される応答信号は、事故検出用に専用線が必要となる。しかしながら、既設のケーブルの事故検出を行う場合には、事故検出用の専用線や事故検出用に既設ケーブルの空き回線があるとは限らない。
【0006】
そこで、本発明は、有線ページングシステムの複合ケーブルにおいて、検出用の専用線を設けることなく短絡や断線による複合ケーブルの異常の検出が可能な複合ケーブルの異常検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有線ページングシステムにおいて、主装置から放送用の増幅器が絶縁トランスを介して複合ケーブルに接続され、複数の端末においてもマッチングトランスを介してスピーカが接続されていることに着目し、放送用の対線は主装置にて絶縁トランスで端末においてはマッチングトランスで主装置側の回路と端末側の回路と絶縁されていることから、複合ケーブルの他の線と放送用の対線とは絶縁されていることになり、その間に信号を印可しても他回路への影響はない、という知見に基づいて発明されたものである。
【0008】
請求項1の発明は、主装置と複数の端末とが複数の対線からなる複合ケーブルで接続され、前記複合ケーブルが主装置と端末のそれぞれでトランスを介して他の対線と絶縁されている1対の線を含む有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置において、前記他の対線と絶縁されている1対の線のいずれかの線または両線と、前記他の対線のいずれかの線との間に検査信号を印可する印可回路を設けるとともに、印可された前記検査信号を検出して検査結果信号を出力する検査結果信号出力回路を備えたことを特徴とする有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置である。
【0009】
請求項2の発明は、前記1対の線が主装置の放送用の増幅器と端末のスピーカとを増幅器用絶縁トランスとスピーカ用マッチングトランスを介して接続する音声信号用対線であり、前記端末には、前記音声信号配信対線で送信される検査信号を検出する検査信号検出回路と、検査信号検出回路の検出に応答する応答信号を発生する応答信号発生回路を備え、前記主装置には、応答信号発生回路からの応答信号が端末から音声信号用対線と他の対線のいずれかの線との間に送出されて入力される応答信号を検出して検査結果信号を出力する応答信号検出回路を備えていることを特徴とする請求項1に記載の有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置である。
【0010】
請求項3の発明は、検査信号が印可された前記検査信号を前記他の対線と絶縁されている1対の線のいずれかの線または両線と、前記他の対線のいずれかの線との間の電流を検出する電流変成器と、検出された電流から短絡電流を検出して検査結果信号を出力する短絡電流検出回路を備えたたことを特徴とする請求項1に記載の有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置である。
【0011】
請求項4の発明は、前記検査信号を前記他の対線と絶縁されている1対の線のいずれかの線または両線と、前記他の対線のいずれかの線との間に印可する印加回路が端末に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置である。
【0012】
請求項5の発明は、前記検査信号の周波数帯域が可聴周波数以外であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置である。
【0013】
請求項6の発明は、前記検査信号の周波数が商用周波数以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により事故検出用に空き回線のない有線ページングシステムの複合ケーブルについて、検出用の専用線を設けることなく、既設のケーブルを利用して複合ケーブルの短絡や断線による複合ケーブルの異常を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】有線ページングシステムを示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態のブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明が適用される有線ページングシステムは、図1に示すように、主装置1、端末3、主装置1と端末3とを接続する複合ケーブル2からなり、主装置1の放送用の増幅器12が増幅器用絶縁トランス14を介して複合ケーブル2に接続されるとともに、この複合ケーブル2に端末3のスピーカ34がマッチングトランス33を介して接続されている。
【0017】
主装置1に入力される音声信号15は、増幅器12で増幅され、増幅器用絶縁トランス14を介して複合ケーブル2の音声信号配線対線21により端末3に送信され、スピーカ用マッチングトランス33を介してスピーカ34から放送される。
【0018】
主装置1の増幅器12や別回路13の電力は電源11から供給される。端末3の電力は主装置1の電源11から電源用対線23にて端末電源31に供給され、DC/DC変換されて端末の別回路32へ供給される。
【0019】
主装置1や端末3には放送機能と別の制御機能や会話機能があり、別回路13や端末別回路32が別回路用対線22で接続されている。ここで別回路13や端末別回路32、別回路用対線22は複数存在する回路を総称している。また、端末3も複数存在し、それに伴い音声信号用対線21や別回路用対線22や電源用対線23は分岐され各端末3に接続されている。
【0020】
更に電源11は主装置1以外の複数の他主装置へも電源を供給している。
【実施例1】
【0021】
本実施例は、図1に示す有線ページングシステムにおいて、検査信号を音声信号用対線21に送出し、端末3で検査信号を検出し、その応答信号を主装置1で検出して音声信号用対線の短絡や断線による複合ケーブルの異常を検出する例である。
【0022】
図2において、検査信号19が主装置1の音声信号15と検査信号19の切替回路16に入力され、増幅器12で増幅され、増幅器用絶縁トランス14を介して音声信号用対線21により端末3に送信される。
【0023】
端末3では検査信号19がスピーカ用マッチングトランス33を介して検査信号検出回路35に送信される。検査信号検出回路35での検出結果は、検査信号検出回路35に接続された応答信号発生回路36に送られ、応答信号発生回路36では検出結果に基づいて応答信号が発生し、信号用絶縁トランス37を介して主装置1へ返信される。
【0024】
信号用絶縁トランス37の2次側の一方は、主装置1側の増幅器用絶縁トランス14と端末3側のスピーカ用マッチングトランス33とにより主装置1と端末3の各回路および複合ケーブル2の他の各線と絶縁された音声信号用対線21に接続され、他方は電源用対線23の電源用グランド線231に接続されている。
【0025】
音声信号用対線21と電源用グランド線231の間に送信され、主装置1へ返信された応答信号は、音声信号用対線21と電源用グランド線231に接続された信号用絶縁トランス17を介して検査結果信号出力回路18へ送られる。検査結果信号出力回路(応答信号検出回路18)では、応答信号の検出の有無により音声信号用対線21の短絡断線の検査結果信号110を発生させる。応答信号が検出された場合には事故はなく、未検出の場合には短絡や断線が発生していると判定される。
【0026】
また,応答信号に端末固有の例えば周波数や発生タイミングを割り振ることで、応答信号検出回路18がここでは記載していないが、周波数分別器やタイミング計測機能を有し端末固有の信号の未検出で異常の発生した複合ケーブル2を特定可能である。
【0027】
音声信号用対線21は他の線と絶縁されており、双方の線の間を応答信号の伝送路とすることで空き回線がなくても複合ケーブルの断線や短絡を検出する機能を構築することができる。これによりページングに使用される音声信号用対線の異常の検出が可能となる。
【0028】
本実施例において使用する検査信号の帯域は、複合ケーブルの長距離の敷設に伴う線間の静電容量の影響を低減するために低周波域が好ましい。またページングで使用する音声帯域への影響や商用周波数が雑音となることを考慮して、検査信号は商用周波数以下の10Hzとする。
【実施例2】
【0029】
本実施例は、検査信号を印可する線間の短絡による複合ケーブルの異常を検出する実施例で、線間の抵抗の低下により発生する信号の電流を検出する例である。
【0030】
図3において、主装置1へ検査信号19が入力され、検査信号用増幅器111で増幅されて検査信号増幅用絶縁トランス112へ送られ、検査信号増幅用絶縁トランス112の2次側で音声信号用対線21と電源用グランド線231との間に印加される。
【0031】
音声信号用対線21は他の線と絶縁されており、通常は信号の戻りの回路が形成されていないために検査信号の電流は流れることはない。そこで、検査信号の電流を検査信号増幅用絶縁トランス112の2次側で電流変成器113により計測し、検査結果信号出力回路(短絡電流検出回路114)で検査信号の電流の検出の有無で検査結果信号110を出力する。
【0032】
本実施例で検出する事故は音声信号用対線21と電源用グランド線231間の短絡である。電源用グランド線231は電源11に接続されており、電源11を介して主装置1の全ての回路や端末電源31および端末の全ての回路とも接続されているため、電源用対線23と音声信号用対線21、別回路用対線22との短絡が検出可能である。
【0033】
検査信号増幅器111を電源11から絶縁された直流電源印可回路とし、電流変成器113を直流検出可能なホール素子とすることで検査信号増幅器用絶縁トランス112を不要とすることも可能である。
【実施例3】
【0034】
本実施例は、端末が検査信号を印加する印可回路を具備するとともに、主装置が検査信号の受信回路を具備し、端末固有の検査信号の有無を確認することで複合ケーブルの短絡断線を検出する例である。
【0035】
図4において、端末3に検査信号発生装置38が配置され、検査信号発生装置38に接続された信号用絶縁トランス37の2次側が音声信号用対線21と電源用グランド線231とに接続され、その間に検査信号が印加される。
【0036】
検査信号は、主装置1で信号用絶縁トランス17を介して検査結果信号出力回路(検査信号検出回路115)で信号の有無を検出し、検査結果信号110を送出する。
【0037】
図2では検査信号を主装置1から送信するためには増幅器12を介し、ある程度の電力の消費を伴う。しかし、本実施例の場合には、音声信号用対線21と電源用グランド線231とは絶縁されているので、信号の印加には電力の消費は伴わない。そのため常時や定期での信号印加は容易である。
【0038】
また、検査信号に端末固有の例えば周波数や発生タイミングを割り振ることで、検査信号検出回路115がここでは記載していないが、周波数分別器やタイミング計測機能を有し端末固有の信号の未検出で異常の発生した複合ケーブル2を特定可能である。
【0039】
音声信号用対線21は他の線と絶縁されており、双方の線の間を検査信号の伝送路とすることで空き回線がなくても短絡断線検出の機能を構築することができる。これによりページングに使用される音声信号用対線の断線や短絡による複合ケーブルの異常が検出可能となる。
【0040】
実施例1、2、3から異常ケーブルの特定と除去および異常ケーブルが接続された主装置1の特定による切離しにより電源11が電力供給している複数の他主装置を健全に運用することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1:主装置
2:複合ケーブル
3:端末
11:電源
12:増幅器
13:別回路
14:増幅器用絶縁トランス
15:音声信号
16:切替回路
17:信号用絶縁トランス
18:応答信号検出回路
19:検査信号
21:音声信号配線対線
22:別回路用対線
23:電源用対線
31:端末電源
32:端末別回路
33:スピーカ用マッチングトランス
34:スピーカ
35:検査信号検出回路
36:応答信号発生回路
37:信号用絶縁トランス
38:検査信号発生回路
110:検査結果信号
111:検査信号用増幅器
112:検査信号増幅用絶縁トランス
113:電流変成器
114:短絡電流検出回路
115:検査信号検出回路
231:電源用グランド線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主装置と複数の端末とが複数の対線からなる複合ケーブルで接続され、前記複合ケーブルが主装置と端末のそれぞれでトランスを介して他の対線と絶縁されている1対の線を含む有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置において、
前記他の対線と絶縁されている1対の線のいずれかの線または両線と、前記他の対線のいずれかの線との間に検査信号を印可する印可回路を設けるとともに、
印可された前記検査信号を検出して検査結果信号を出力する検査結果信号出力回路を備えたことを特徴とする有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置。
【請求項2】
前記1対の線が主装置の放送用の増幅器と端末のスピーカとを増幅器用絶縁トランスとスピーカ用マッチングトランスを介して接続する音声信号用対線であり、
前記端末には、前記音声信号用対線で送信される検査信号を検出する検査信号検出回路と、検査信号検出回路の検出に応答する応答信号を発生する応答信号発生回路を備え、
前記主装置には、応答信号発生回路からの応答信号が端末から音声信号用対線と他の対線のいずれかの線との間に送出されて入力される応答信号を検出して検査結果信号を出力する応答信号検出回路を備えていることを特徴とする請求項1に記載の有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置。
【請求項3】
検査信号が印可された前記検査信号を前記他の対線と絶縁されている1対の線のいずれかの線または両線と、前記他の対線のいずれかの線との間の電流を検出する電流変成器と、検出された電流から短絡電流を検出して検査結果信号を出力する短絡電流検出回路を備えたことを特徴とする請求項1に記載の有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置。
【請求項4】
前記検査信号を前記他の対線と絶縁されている1対の線のいずれかの線または両線と、前記他の対線のいずれかの線との間に印可する印加回路が端末に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置。
【請求項5】
前記検査信号の周波数帯域が可聴周波数以外であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置。
【請求項6】
前記検査信号の周波数が直流を含め商用周波数以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載有線ページングシステムの複合ケーブルの異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−109716(P2012−109716A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255799(P2010−255799)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000164391)九電テクノシステムズ株式会社 (15)
【Fターム(参考)】