説明

有限要素解析法におけるスポット溶接部破壊判定方法

【課題】構造体におけるそれぞれのスポット溶接部を、構造体の有限要素解析法モデルにおいて少なくとも1つのソリッド要素のクラスターによって表わす。
【解決手段】それぞれのスポット溶接部は、2つのパーツを一体に結合するよう用いられる。2つパーツのそれぞれは、概して、多数の二次元シェル要素として表わされ、すなわちモデル化される。スポット溶接部と2つのパーツとの間の結合接続をそれぞれのパーツ内に任意に配置できるので、2つのパーツを表すシェル要素を空間に配置する必要はない。スポット溶接部が2つのシェル要素(つまりそれぞれのパーツから一箇所)を結合できるよう、2つのシェル要素が互いにともにオーバーラップしていなければならないことだけが必要とされる。スポット溶接部破壊基準が、スポット溶接部・シェル要素サイズ・スポット溶接部位置影響度スケール係数と、歪みレート効果と、に作用する剪断応力および軸方向応力を含むスポット溶接部破壊を判定するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、構造体(例えば車、飛行機)のコンピュータ支援工学解析に関し、特に、有限要素解析法におけるスポット溶接部破壊判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有限要素解析法(FEA)は、三次元非線形構造設計および解析など複雑なシステムに関連するエンジニアリング問題をモデル化し解決するために産業において広く用いられる、コンピュータによって実現される方法である。FEAのその名前は、検討される対象の幾何学的配置を指定する方法に由来する。現代のデジタルコンピュータの出現により、FEAは、FEAソフトウェアとして実行されている。基本的に、FEAソフトウェアには、幾何学的な説明のモデルと、そのモデル内の各点における関連する材料特性とが、提供される。このモデルにおいて、解析されるシステムの幾何学的配置は、要素と呼ばれる種々のサイズのソリッド(中実体)、シェル(殻体)およびビーム(梁体)によって表わされる。要素の頂点をノードという。モデルは、材料特性に関連する材料名が割り当てられた有限数の要素から構成される。モデルは、このように、解析される対象がそのすぐまわりの環境と共に占めている物理的空間を表わす。そして、FEAソフトウェアは、それぞれのタイプの材料特性(例えば応力−歪み構造方程式、ヤング率、ポアソン比、熱導電性)が作表されている表を参照する。さらに、対象の境界での条件(つまり負荷、物理的制約など)が指定される。こうして、対象とその環境のモデルとが生成される。
【0003】
FEAは、車両の空力性能と構造的保全性との両方を最適化するために、自動車メーカーでますます一般的になりつつある。同様に、航空機メーカーは、第1プロトタイプが開発されるはるか前に、FEAによって、飛行機性能を予測している。一般的なFEAのタスクの1つが、車の破砕などの衝突イベントをシミュレートすることである。耐衝撃性シミュレーションに関連する問題は、構造体において2つのパーツ(たとえば、シートメタル)を接続するよう用いられる溶接部を適切にシミュレートすることである。
【0004】
スポット溶接は、種々のシートメタル製品を溶接するために用いられる抵抗溶接の一種である。典型的に、シートの厚さは0.5〜3.0mm範囲にある。そのプロセスは、2つの成形された銅合金電極を用いて、溶接電流を小さい「スポット」へ集中し、同時にシートを一体にクランプする。スポット溶接の最も一般的な用途のうちの1つは自動車製造産業での応用であって、シートメタルを溶接して車を形成するようほとんどすべての過程に用いられる。
【0005】
典型的な車において、約4,000〜8,000のスポット溶接により300〜600のボデイパーツを接続して、車両構造を形成する。車両全体の正確なシミュレーションのためには、それらのスポット溶接を正確にモデル化しなければならない。スポット溶接部は典型的には2〜3センチメートル間隔で配置され、また、それぞれのスポット溶接部は4〜9ミリメートル(mm)の直径を有する。従来から、スポット溶接部のそれぞれは、FEAにおいて非常に短いビーム要素(例えば1〜2ミリメートルの長さ)によってモデル化されていた。例えば、1990年代には、スポット溶接部を、スポット溶接部パーツのノードの位置がスポット溶接部の物理的な位置にあるという条件の2ノード剛体を用いてモデル化していた。この従来技術のアプローチは、ノード点を高精度に溶接位置に適切に配置するという手間のために、FEAモデルを生成する際に大変な作業を必要としていた。現代のコンピュータの進歩とともに、車両を表わす有限要素モデルは大規模になった(例えば4,000,000を超える要素がサイズで2〜4mmで変化する)。そのため、スポット溶接部のまわりの要素のサイズが、スポット溶接部直径より小さくなった。ビーム要素を用いてスポット溶接部を表すことはもはや適当ではなく、かわりにソリッド要素(中実要素)が用いられている。ある場合には、スポット溶接部が1つを超えるソリッド要素を用いてモデル化されている。さらに、車耐衝撃性シミュレーションにおいては、スポット溶接部破壊を考慮し判定する必要がある。ビーム要素に対するスポット溶接部破壊判定方法はよく確立されている。しかしながら、この方法は、ソリッド要素において用いられる従来の材料破壊方法と整合しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、どのタイプの要素がスポット溶接部を表わすために用いられるかに関わらず、有限要素解析法におけるスポット溶接部破壊を判定する改良方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このセクションは、本発明のいくつかの面を要約するためのものであり、また、いくつかの好ましい態様を簡潔に取り上げるものである。このセクションにおいては簡略化あるいは省略が、要約およびタイトルと同様に、セクションの目的を分かりにくくしないようになされる場合がある。そのような簡略化あるいは省略は、本発明の範囲の制限を意図するものではない。
【0008】
本発明は、自動車など構造体の有限要素解析法におけるスポット溶接部破壊を判定するシステム、方法およびソフトウェア製品を開示する。本発明の一の面では、構造体におけるそれぞれのスポット溶接部が、構造体の有限要素解析法モデルにおいて少なくとも1つのソリッド要素のクラスターによって表わされる。それぞれのスポット溶接部は、2つのパーツ(例えばシートメタルパーツ)を一体に結合するよう用いられる。2つパーツのそれぞれは、概して、多数の二次元シェル要素として表わされる、すなわちはモデル化される。スポット溶接部と2つのパーツとの間の結合接続をそれぞれのパーツ内に任意に配置できるので、2つのパーツを表すシェル要素を空間的に整列させる必要はない。スポット溶接部が2つのシェル要素(つまりそれぞれのパーツから一つずつ)を一体に結合できるよう、2つのシェル要素が互いにオーバーラップしていなければならないことだけが必要とされる。
【0009】
本発明の他の面では、スポット溶接部破壊基準が、スポット溶接部スケール係数、シェル要素サイズスケール係数およびスポット溶接部位置影響度スケール係数と、歪みレート効果と、に作用する剪断応力および軸方向応力を含むスポット溶接部破壊を判定するために用いられる。ここで用いられる破壊基準は、スポット溶接ナゲットのまわりのシートメタルが破壊あるいは破断する「プラグ破断」モードに対するものである。
【0010】
さらに他の面においては、たとえそれぞれのクラスターが1つを超えるソリッド要素を含んでいる場合であっても、本発明はそれぞれのクラスターを全体として扱うように構成される。それぞれのクラスターについては、1セットの剪断応力合力および軸方向応力合力が、時間進行(time−marching)シミュレーションのそれぞれの解法(solution)サイクルにおいて演算される。剪断応力合力および軸方向応力合力は、スポット溶接部破壊基準を用いてチェックされる。
【0011】
本発明の他の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照した以下の実施形態の詳細な説明を考察することで明らかになるであろう。
【0012】
本発明のこれらおよび他の特徴、アスペクトおよび利点は、以下の説明、添付したクレームおよび以下の添付図面との関連から一層よく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、構造体における2つのシートメタルパーツを接続するよう用いられるスポット溶接部のグループの平面図である。
【図1B】図1Bは、図1Aのスポット溶接部の1つを代表する側面図である。
【図2A】図2Aは、図1A乃至図1Bの構造体の有限要素解析法モデルの平面図である。
【図2B】図2Bは、接続されたシェル要素の一方に対するスポット溶接部の例示的な位置を示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施形態にかかる、有限要素解析法におけるスポット溶接部を表すために用いられる例示的なビーム要素を示す図である。
【図3B】図3Bは、本発明の他の実施形態にかかる、有限要素解析法におけるスポット溶接部を表すために用いられる例示的なソリッド要素を示す図である。
【図4】図4は、それぞれが本発明の1つの実施形態にかかるスポット溶接部を表わすために用いることができる4つの異なるソリッド要素クラスターの平面図を示す図である。
【図5A】図5Aは、スポット溶接部における反対の張力を示す図である。
【図5B】図5Bは、スポット溶接部における剪断力を示す図である。
【図6A】図6Aは、本発明の実施形態にかかる、スポット溶接部破壊を判定するための、スポット溶接部の反対の張力に対する有限要素メッシュサイズ効果を示すX−Yチャートである。
【図6B】図6Bは、本発明の実施形態にかかる、スポット溶接部破壊を判定するための、スポット溶接部の剪断力に対する有限要素メッシュサイズ効果を示すX−Yチャートである。
【図6C】図6Cは、本発明の一の実施形態にかかる、スポット溶接部破壊を判定するための、接続されたシェル要素に対するスポット溶接部位置を示すX−Yチャートである。
【図6D】図6Dは、本発明の一の実施形態にかかる、スポット溶接部破壊を判定するための、接続されたシェル要素に対するスポット溶接部位置を示すX−Yチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施形態にかかる、1つ以上のソリッド要素のクラスターを用いてスポット溶接部が表わされるすなわちモデル化される場合の、有限要素解析法におけるスポット溶接部破壊を判定する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施形態が構築された演算デバイスの主要なコンポーネントを示す機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の説明に役立てるために、ここで開示される全体にわたっていくつかの用語を定義する必要があると思われる。以下の定義は、実施形態にかかる本発明を理解し記述することに役立たせるものであることを述べておくべきであろう。定義は、実施形態に関していくつかの制限を含むように見えるかもしれないが、ここで使われる用語の実際の意味は、この実施形態を十分に越えた当業者には公知の適用範囲を有する。
【0015】
FEAは、有限要素解析法(Finite Element Analysis)の意である。
【0016】
暗黙的FEAあるいは解法はKu=Fをいう。ここで、Kは有効剛性マトリクス(effective stiffness matrix)であり、uは未知の変位配列(unknown displacement array)であり、Fは有効負荷配列(effective loads array)である。Fは右側負荷配列(right hand side loads array)であり、Kは左側剛性マトリクス(left hand side stiffness matrix)である。解法は、剛性度、質量および減衰の関数である有効剛性マトリクスの因数分解を用いて、全体的なレベルで行なわれる。1つの例示的な解法方法は、ニューマーク時間積分法(Newmark time integration scheme)である。
【0017】
明示的FEAはMa=Fをいう。ここで、「M」は対角的質量配列(diagonal mass array)であり、「a」は未知のノードの加速配列(unknown nodal acceleration array)であり、「F」は有効負荷配列である。解法は、マトリックスの因数分解を用いずに要素レベルで実行することができる。1つの例示的な解法方法は、中心差分法(central difference method)と呼ばれるものである。
【0018】
時間進行シミュレーションあるいは時間領域解析は、時間領域における工学解析シミュレーション、例えば時間領域における有限要素解析法を用いた車耐衝撃性のシミュレーションをいう。
【0019】
ビーム要素は、2つの端部ノードによって定義された一次元の有限要素をいう。ビームが歪み力の下にある場合、ビームには、軸方向応力と、断面にわたって変化する3つの剪断応力と、をもつ。ビームの軸方向の歪みは、ビームの軸方向における伸張の量として定義される。例えば、ビームが軸方向引っ張り力によって元の長さLから延びた長さ(L+δ)へ伸張される場合、軸方向の歪みεは、単位長当たり合計の伸長δとして定義される(つまりε=δ/L)。
【0020】
シェル要素は、エリア、例えば三角形の要素、四辺形の要素などによって定義された二次元の要素をいう。
【0021】
ソリッド要素は、三次元の体積的な有限要素、例えば4つのノードの四面体の要素、8つのノードの六面体の要素などをいう。
【0022】
歪みは、サンプルすなわち試料の変形を測定した無次元の量をいう。
【0023】
ノードの歪みは、構造体を表すすなわちモデル化する有限要素(例えばシェル要素)のそれぞれのノードにおける歪みをいう。
【0024】
塑性歪みは、試料すなわちサンプルから負荷を取り去った後回復できない歪みをいう。
【0025】
塑性ノード歪みεpは有限要素(例えばシェル要素)のノードにおける塑性歪みをいう。
【0026】
本発明の実施形態を、図1A乃至図8を参照してここに説明する。しかしながら、これらの図を参照してここで与える詳細な説明は例示の目的であって発明がこれらの限定的な実施形態を越えて広がっていることは、当業者には容易に理解されよう。
【0027】
まず図1Aを参照して、2つのパーツを接続するために多数のスポット溶接部を用いている例示的な構造体100の平面図を示す。構造体100は、多数のスポット溶接部110a〜nによって接続される第1パーツ(例えばトッププレート122)と第2パーツ(例えばボトムプレート124)とを有する。図1Bは、スポット溶接部を代表する1つの典型的なスポット部110と、構造体100の接続されたトッププレート122およびボトムプレート124と、の側面図を示す。例示が複雑になることを回避するために、比較的簡単な例示的構造体100を用いる。本発明は、自動車、飛行機など複雑な構造体に適用できる。
【0028】
図1の構造体100の例示的な有限要素モデルを、図2Aに示す。トッププレート122を、複数のシェル要素を備える第1有限要素メッシュ222によって表わす。また、ボトムプレート124を、第2有限要素メッシュ224によって表わす。スポット溶接部110a〜nのそれぞれは、2つのパーツを一体に結合する固有のスポット溶接部要素210(2つを図2に示す)によって表わされる。接続されたシェル要素に対してクラスターを配置できる場所は制限されない。図2Bは、スポット溶接部242を有する例示的なシェル要素240を示す。スポット溶接部242の位置をシェル要素240のコーナー(角)あるいはエッジ(辺)に配置する必要はない。接続されたシェル要素内のスポット溶接部接続の位置を追跡するために、1セットの要素パラメータ座標(s,t)が、すべてのスポット溶接部を有するそれぞれの接続されたシェル要素に用いられる。言いかえれば、スポット溶接部のそれぞれの端部は、接続されたシェル要素のパラメータ座標に関係している。
【0029】
スポット溶接部要素210を、図3Aに示すビーム要素302、あるいは図3Bにおける少なくとも1つのソリッド要素304のクラスターのいずれかとすることができる。本発明は、どの要素が選択されているかに関わらずスポット溶接部破壊を判定する方法を含んでいる。
【0030】
スポット溶接部110がビーム要素によってモデル化されるすなわち表わされる場合、それは1対1の関係である。ビーム要素の2つの端部が、2つのパーツを結合するスポット溶接部の2つの端部に対応する。例えば、スポット溶接部110の2つの端部は、トッププレート122およびボトムプレート124である。
【0031】
スポット溶接部が少なくとも1つのソリッド要素のクラスターによって表わされる場合、多くの選択がある。最も一般的な選択を図4に示す。図4は、4つの例示的なオプションの平面図を示している。第1オプション422は、1要素クラスターである。第2オプション424、第3オプション426および第4オプション428は、それぞれ、4要素クラスター、8要素クラスターおよび16要素クラスターである。これらの例示的なクラスターのそれぞれは、2つの接続されたパーツ(つまりトッププレート122およびボトムプレート124)の2つのシェル要素を接続する1レイヤの要素から成る。本発明の一の面においては、ソリッド要素のクラスターによって表わされるすなわちモデル化される場合、スポット溶接部の面積(概ね円形)が保存される。例えば、第1オプション422の面積(正方形の面積)は、対応するスポット溶接部の面積と等しく設定される。第1オプション422が正方形の形状を備える場合。それぞれの辺の長さは

となる。ここで、dはスポット溶接部の直径である。例示的なスポット溶接部の平面図を図5Bに示す。
【0032】
衝撃解析(例えば車耐衝撃性)の非線形時間進行シミュレーションを行なう場合、1つ以上の有限要素によって表わされるコンポーネントが破壊状態に達したか否かを判定することが重要である。スポット溶接部については、2つのタイプの破壊モードがある。1つは、スポット溶接ナゲットあるいはプラグのまわりのシートメタルが破断あるいは破壊する「プラグ破断破壊」という。もう1つは、スポット溶接部自体が破壊する「ナゲット破壊あるいは破断」という。本発明の用途のため、破壊の「プラグ破断」モードのみをチェックする。「プラグ破断」破壊を判定するために、ビーム理論に基づいたスポット溶接部破壊基準を用いる。例えば、スポット溶接部の例示的な破壊基準は以下の通りである。
【0033】
【数1】

【0034】
【数2a】

【0035】
【数2b】

【0036】
【数3a】

【0037】
【数3b】

【0038】
【数3c】

【0039】
【数3d】

【0040】
ただし、σrrおよびτは、それぞれスポット溶接部の軸方向応力および剪断応力であり、

は、それぞれ、歪みレート効果(例えば、Cowper−Symondsモデルに基づく)を含む張力および剪断歪みにおけるスポット溶接部破断応力あるいは破壊応力であり、

は、試料試験によって決定される張力および剪断歪みにおける、静的なスポット溶接部破断あるいは破壊応力であり、C,pは、試料試験において得られる静的な破断応力を計るために用いられるCowper−Symondsモデルの材料依存歪みレートパラメータであり、

は、塑性歪みレートであり、Nrrスポット溶接部の軸方向力合力であり、Nrs,Nrtは、それぞれ、r方向およびt方向における剪断歪み力の合力であり、Mrrスポット溶接部の張力の合力であり、Mrs,Mrtは、それぞれ、スポット溶接部の「s」軸および「t」軸に関するモーメント合力であり、Aは、スポット溶接部の面積であり、Zは、スポット溶接部の断面弾性係数であり、dは、スポット溶接部の直径であり、αは、1つのデフォルト値を有するユーザ定義のスケール係数である。
【0041】
スポット溶接部は、数式(1)が満たされる場合に、破断されると判定する。塑性歪みレートは、接続されたシェル要素のそれぞれから決定される。パラメータC,pは、材料に依存する。破壊基準は、スポット溶接部のそれぞれの端部(つまりクラスターのそれぞれの表面)に対して独立に演算される。数式(2a),(2b)は、衝突イベント(つまり自動車衝突)におけるエネルギー吸収の点から材料特性変化を説明するための補正である。材料特性(例えば応力−歪み特性)は、歪みレートに影響されやすい。したがって、試料試験において得られた破壊あるいは破断応力などの特性は、動的効果(つまり歪みレート効果)を反映するよう、変更するすなわちスケールする必要がある。Cowper−Symondsモデル(例えば、方程式(2a),(2b))において、車あるいは車両衝突の歪みレートの範囲は、毎秒0.1〜100である。パラメータC,pは、材料に依存し、また、既知の方法例えば最小二乗法適合度(least squares fit)を用いて実験データから決定可能である。
【0042】
図5Aは、接続されたトッププレート522およびボトムプレート524を有するスポット溶接部510の側面図におけるスポット溶接部張力すなわち軸方向応力σrr532を示す。スポット溶接部剪断応力τ534を、図5Bにおけるスポット溶接部の平面図において示す。数式(3a〜3d)において用いられる座標系(r,s,t)は、r軸501(つまりスポット溶接部の軸方向)と、s軸502およびt軸503(つまりスポット溶接部の2つの径方向)と、で示される。また、例示的な円形状スポット溶接部の直径d515を、図5Bに示す。スポット溶接部の面積Aは、数式(3c)を用いて演算することができる。力の合力542はスポット溶接部510に作用する全軸方向力である。また、モーメント合力544は全モーメントである。力の合力542およびモーメント合力544を、既知の方法を用いて導出でき、例えば、スポット溶接部510の周辺に沿って軸方向応力532を積分することによって、力の合力542が得られるであろう。モーメント合力544は、中心からスポット溶接部510の周辺へのモーメントの腕を用いて演算することができる。スポット溶接部510が1つの要素(例えば図3Aのビーム302あるいは図4のソリッド要素422)を用いてモデル化されている場合、力の合力542およびモーメント合力544は単純明快である。複数のソリッド要素(例えば、図4のクラスター424,426,428)を用いてモデル化されたスポット溶接部では、力の合力542およびモーメント合力544は、クラスターにおける要素のすべてからの成分を含める必要がある。
【0043】
スポット溶接部510と接続されたプレート(つまりトッププレート522およびボトムプレート524)とに作用する力の合力542およびモーメント合力544がプレートの降伏応力を超えた場合、塑性歪み552が起こることになる。これらの塑性歪み552は、時間進行シミュレーションのそれぞれの解法サイクルにおいて演算される。
【0044】
数式(1)は、理論上、スポット溶接部破壊を判定するのに十分であるが、実験データは、有限要素解析法を用いたスポット溶接部破壊の予測は少なくとも2つの要因に影響を受けやすいことを示している。第1の要因は、接続されたシェル要素上のスポット溶接部の位置(つまり、図2Bに示したシェル要素上のスポット溶接部の(s,t)座標)である。第2は、スポット溶接部に接続されたシェル要素の物理的なサイズである。これら2つの影響しやすい係数の割合を示すために、スポット溶接部破壊基準を以下のようにさらなるスケールを含むように書く。
【0045】
【数4】

【0046】
ただし、STは軸方向応力要素サイズ影響度スケール係数602であり、SSは剪断応力要素サイズ影響度スケール係数604であり、SOはスポット溶接部がシェル要素に接続されている異なる位置に対する位置影響度スケール係数606A〜606Bである。
【0047】
メッシュサイズ影響度については、クロステンション(cross tension)すなわち軸方向応力影響度スケール係数602の例示的なセットを、図6Aに、本発明の一の実施形態にかかる種々のサイズのシェル要素(つまり有限要素メッシュのサイズ)に対して示す。同様に、剪断応力影響度係数604の例示的なセットを、図6Bに、種々のサイズのシェル要素に対して示す。図6A乃至図6Bにおいては、2つのセットのデータがある。1つは、静的な軸方向の力および剪断力であり、他の1つは動的なそれである。一の実施形態においては、平均値を用いることができる。他の実施形態においては、それらのうちの1つを、シミュレーションにおける力の性質に応じて用いることができる。両方のセットのデータは、10×10mmシェル要素を基準に調整される。言いかえれば、10×10mmシェル要素に対するスケール係数は1.0であり、また、他のサイズの要素は図6A乃至図6Bにおけるデータに応じて調整する必要がある。
【0048】
位置影響度スケール係数については、図6Cに、要素の中心からエッジへの方向における種々の位置に対する、例示的なセットの位置影響度スケール係数606Aを示す。図6Dは、要素の中心からコーナーへの方向における種々の位置に対する、他の例示的なセットの位置影響度スケール係数606Bを示す。図6C乃至図6Dにおいて2セットのデータを示す。1つは、スポット溶接部が同じ相対位置で接続された要素(両方として表示)のものである。また、他の1つは、スポット溶接部が異なる相対位置で接続された要素(一方として表示)のものである。
【0049】
図7は、本発明の一の実施形態にかかる、内部にスポット溶接接続を含んでいる構造体の有限要素解析法におけるスポット溶接部破壊を判定する例示的なプロセスを示すフローチャート700である。プロセス700はソフトウェアにより実行でき、他の図面と組み合わせて理解することができる。
【0050】
プロセス700は、ステップ702において構造体の1つ以上のスポット溶接部定義を受け取ることによってスタートする。例えば、自動車におけるそれぞれのスポット溶接部の位置(location)および向き(orientation)である。さらに、それぞれのスポット溶接部に対する2つの接続されたパーツの情報も受け取る。受け取ったスポット溶接部定義が、有限要素解析法ソフトウェアモジュール(以下に図8を参照して詳細な説明において説明するコンピュータのメモリにロードされる)へ周知の方法で直接的あるいは間接的に提供される。例示的なよく知られている方法は、グラフィックユーザーインターフェースを有するプリプロセッシング(pre−processing)ソフトウェアモジュールを利用するものである。他のよく知られている方法は、有限要素解析法(FEA)ソフトウェアモジュールの予め定義された入力フォーマットに応じて、受け取ったスポット溶接部定義を手入力するものである。
【0051】
次に、ステップ704においては、それぞれのスポット溶接部は、受け取ったスポット溶接部定義を用いて1つのビーム要素あるいは少なくとも1つのソリッド要素のクラスターのいずれかによって表わされる。これは、一般的に、ユーザ(つまり自動車衝突シミュレーションを行なう技術者)からの暗黙的あるいは明示的な指示により、プリプロセッシングソフトウェアモジュールあるいはFEAソフトウェアモジュールによって、行なわれる。クラスターに1を超えるソリッド要素がある場合、関連付けられたソリッド要素が、スポット溶接部識別符号(スポット溶接部ID)によってマークで関連付けられたソリッド要素などの既知の手法で、ともにグループ化される。関連付けられたソリッド要素のグループ化は、今後の計算(例えばスポット溶接部のいずれかの端部における力・モーメント合力の計算)を適切に保証することができる。その後、ステップ706において、それぞれのスポット溶接部と関連する情報が、FEAソフトウェアモジュールにおいて初期化される。初期化された情報は、接続されたシェル要素(例えば、他と重複しないシェル要素の番号すなわちID)と、材料歪みレート効果パラメータ(例えばパラメータC,p)と、FEAメッシュサイズと、スポット溶接部の2つの端部において接続されたシェル要素におけるスポット溶接部パラメータ座標と、を含んでいる。
【0052】
材料歪みレートパラメータC,pが、スポット溶接部の一方の端部のそれぞれのノードにおいて割り当てられ、次に、単純なあるいは加重平均など既知の手法を用いて、1つの数に変換される。材料歪みレートパラメータC,pは、スポット溶接部の対応する端部において接続されたシートメタルパーツ(シェル要素によって表わす)に基づく。例えば、図4においては、1つのソリッド要素422のクラスターは、それぞれの端部の4つのノードから成る。1つの方法は、4つのノードにおけるC,pを演算し、スポット溶接部破壊の判定におけるスポット溶接部に対する1つのセットのC,pを見出すよう単純平均を用いるものである。クラスターの4つのノードを、それぞれの要素が異なる材質を表しておりしたがってそれぞれがC,pの異なる値を有する4つの異なるシェル要素に配置することができる。他の実施例においては、8つのソリッド要素426のより複雑なクラスターに対して、C,pの演算には12のノードが含まれる。12セットのC,pの単純平均を用いる代わりに、外側のノードおよび内側のノードに、加重平均計算のための異なる加重係数を割り当ることもできる。
【0053】
ステップ708において初期化され入力された情報を用いて、スポット溶接部位置およびメッシュサイズ影響度スケール係数(例えば数式(4)のSO,ST,SS)を、ユーザによって予め定義された実験的な表あるいはチャート、例えば図6A乃至6Dに示すX−Yチャートから決定することができる。
【0054】
入力と初期化が完了した後、FEAソフトウェアモジュールは、ステップ710において、関心のある衝突イベント(例えば自動車衝突あるいは車両衝突)の時間進行シミュレーションを開始する。時間進行シミュレーションは、通常、初期解法サイクル(つまり、時間t=0の解法サイクルに対応)においてスタートする。時間進行シミュレーションあるいは時間領域シミュレーションは、よく知られているプロシージャの1つ、例えば明示的な非線形有限要素解析法において行なわれる。ステップ712においては、クラスターが1つを超えるソリッド要素を備える場合、力の合力およびモーメント合力がすべてのスポット溶接部のそれぞれの端部において演算される。1つの要素(ビームあるいはソリッド)だけがある場合、力の合力およびモーメント合力はそれぞれの解法サイクルの終わりにおいて直接利用可能である。その後、力の合力およびモーメント合力は、軸方向応力および剪断応力に変換される。塑性歪みレート計算に関しては、それぞれのスポット溶接部ノードにおいて、塑性歪みレートを以下のように計算できる。
【0055】
【数5】

【0056】
ただし、εp(n)は、先の解法サイクル(n)のノードの塑性歪みであり、εp(n+1)は、現在の解法サイクル(n+1)のノードの塑性歪みであり、Δtは、先の解法サイクル(n)と現在の解法サイクル(n+1)との間の時間インクリメントである。その後、ノードの塑性歪み(例えば図5Aの塑性歪み522)が、今後の演算(つまり次の解法サイクル)のために記憶される。
【0057】
その後、それぞれのスポット溶接部の軸方向・剪断応力(つまり、σrr,τ )が計算され、そして、スポット溶接部破壊がステップ714において数式(4)を用いて判定される。スポット溶接部は、破壊したあるいは破断したと判断されると、それに応じて、排除される。ステップ716において、シミュレーション時間「t」が、次の解法サイクルのために時間インクリメントΔtだけインクリメントされる。テスト718においては、時間進行シミュレーションが終了したか否かが判定される(例えば、所定のトータルシミュレーション時間と照合してチェックする)。「no」の場合、プロセス700は、テスト718が「yes」になるまで時間進行シミュレーションの他の解法サイクルを行なうステップ712に戻る。テスト718が「yes」になるとプロセス700は終了する。
【0058】
本発明の一の面によれば、スポット溶接部がビーム要素あるいはソリッド要素のクラスターによってモデル化されていても、プロセス700は、スポット溶接部破壊を同じく判定できる。利点の1つは、スポット溶接部をビーム要素とソリッド要素のクラスターと組み合わせてモデル化できることにある。より詳細な結果が必要とされるこうしたスポット溶接部のみが、ソリッド要素を用いてモデル化される。
【0059】
一の側面において、本発明は、ここで説明した機能性を実行可能な1つ以上のコンピュータシステムに対してなされたものである。コンピュータシステム800の一例を図8に示す。コンピュータシステム800は、プロセッサ804などの1つ以上のプロセッサを有する。プロセッサ804はコンピュータシステム内部通信バス802に接続されている。種々のソフトウェアの実施形態を、この例示的なコンピュータシステムの点から説明する。この説明を読むと、いかにして、他のコンピュータシステムおよび/またはコンピュータアーキテクチャーを用いて、本発明を実行するかが、関連する技術分野に習熟している者には明らかになるであろう。
【0060】
コンピュータシステム800は、また、メインメモリ808、好ましくはランダムアクセスメモリ(RAM)を有しており、また二次メモリ810を有していてもよい。二次メモリ810は、例えば、1つ以上のハードディスクドライブ812、および/またはフレキシブルディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブなどに代表される1つ以上のリムーバブルストレージドライブ814を有することができる。リムーバブルストレージドライブ814は、よく知られている方法でリムーバブルストレージユニット818からを情報を読み取り、および/またはリムーバブルストレージユニット818に情報を書き込む。リムーバブルストレージユニット818は、リムーバブルストレージドライブ814によって読み取り・書き込みされるフレキシブルディスク、磁気テープ、光ディスクなどを表わす。以下にわかるように、リムーバブルストレージユニット818は、コンピューターソフトウェアおよび/またはデータを内部に記憶しているコンピュータ可読媒体を有している。
【0061】
別の実施形態において、二次メモリ810は、コンピュータプログラムあるいは他の命令をコンピュータシステム800にロードすることを可能にする他の同様な手段を有することもできる。そのような手段は、例えば、リムーバブルストレージユニット822およびインターフェース820を有することができる。そのようなものの例は、プログラムカートリッジおよびカートリッジのインターフェース(ビデオゲーム機に見られるようなものなど)、リムーバブルメモリチップ(消去可能プログラマブルROM(EPROM)、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュメモリ、あるいはPROMなど)およびそれらに対応するソケットと、ソフトウェアおよびデータをリムーバブルストレージユニット822からコンピュータシステム800に転送さすることを可能にする他のリムーバブルストレージユニット822およびインターフェース820と、が含まれうる。一般に、コンピュータシステム800は、プロセススケジューリング、メモリ管理、ネットワーク管理およびI/Oサービスなどのタスクを行なうオペレーティングシステム(OS)ソフトウェアによって、制御され連係される。
【0062】
通信インターフェース824も、また、バス802に接続することができる。通信用インターフェース824は、ソフトウェアおよびデータをコンピュータシステム800と外部装置との間で転送することを可能にする。通信インターフェース824の例には、モデム、ネットワークインターフェイス(イーサネット(登録商標)・カードなど)、コミュニケーションポート、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)スロットおよびカードなど、が含まれうる。
【0063】
コンピュータ800は、特定の通信手続(つまりプロトコル)を実行してデータを送受信する。一般的なプロトコルのうちの1つは、インターネットにおいて一般に用いられているTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)である。一般に、通信インターフェース824は、データファイルをデータネットワーク上で伝送される小さいパケットへ分割し、あるいは受信したパケットを元のデータファイルへと組み立てる(再構築する)、いわゆるパケットのアセンブル・リアセンブル管理を行う。さらに、通信用インターフェース824は、正しい宛先に届くようそれぞれのパケットのアドレス部分に対処し、あるいはコンピュータ800が宛先となっているパケットを他に向かわせることなく確実に受信する。この書類において、「コンピュータプログラム媒体」および「コンピュータ可読媒体」という用語は、リムーバブルストレージドライブ814および/またはハードディスクドライブ812に組み込まれたハードディスクなどの媒体を通常意味して用いられている。これらのコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム800にソフトウェアを提供する手段である。本発明は、このようなコンピュータプログラム製品に対してなされたものである。
【0064】
コンピュータシステム800は、また、コンピュータシステム800にモニタ、キーボード、マウス、プリンタ、スキャナ、プロッタなどとアクセスさせるための入出力(I/O)インターフェース830を有していてもよい。
【0065】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジックともいう)は、メインメモリ808および/または二次メモリ810にアプリケーションモジュール806として記憶される。コンピュータプログラムを、また、通信インターフェース824を介して受け取ることもできる。このようなコンピュータプログラムは、実行された時、コンピュータプログラムによって、コンピュータシステム800がここに説明した本発明の特徴を実行することが可能になる。詳細には、コンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、プロセッサ804が本発明の特徴を実行することが可能になる。したがって、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム800のコントローラを表わしている。
【0066】
ソフトウェアを用いて発明が実行されるある実施形態において、当該ソフトウェアは、コンピュータプログラム製品に記憶され、あるいは、リムーバブルストレージドライブ814、ハードドライブ812あるいは通信インターフェース824を用いて、コンピュータシステム800へとロードされる。アプリケーションモジュール806は、プロセッサ804によって実行された時、アプリケーションモジュール806によって、プロセッサ804がここに説明した本発明の機能を実行する。
【0067】
所望のタスクを実現するために、I/Oインターフェース830を介したユーザ入力によって、あるいは、よることなしに、1つ以上のプロセッサ806によって実行することができる1つ以上のアプリケーションモジュール804を、メインメモリ808に、ロードすることもできる。動作においては、少なくとも1つのプロセッサ804がアプリケーションモジュール806のうち1つが実行されると、結果が演算されて二次メモリ810(つまりハードディスクドライブ812)に記憶される。有限要素解析法(例えば車耐衝撃性、スポット溶接部の破壊)の状況は、テキストあるいはグラフィック表現ので、I/Oインターフェース830を介してユーザに報告される。
【0068】
本発明を具体的な実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態は単に例示的なものであって、本発明を限定するものではない。具体的に開示した例示的な実施形態に対する種々の変形あるいは変更が当業者には思いつくであろう。例えば、スポット溶接部位置およびメッシュサイズ影響度スケール係数を、初期化ステージにおいて一回だけ計算する変化のない数として示し、説明した。しかし、これらのスケール係数を、異なる要件に対するそれぞれの解法サイクルにおいて決定することもできる。さらに、有限要素解析法を自動車衝突シミュレーションとして示し、説明したが、他のタイプの衝突イベント例えば金属形成をまた適用することもできる。つまり、本発明の範囲は、ここに開示した具体的な例示的実施形態に限定されるのではなく、当業者が容易に思いつくあらゆる変形は、本願の精神および認識範囲内および添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
100 構造体
110 スポット部
122 トッププレート
124 ボトムプレート
210 スポット溶接部要素
222 第1有限要素メッシュ
224 第2有限要素メッシュ
240 シェル要素
242 スポット溶接部接続
302 ビーム要素
304 ソリッド要素
422 1要素クラスター
424 4要素クラスター
426 8要素クラスター
428 16要素クラスター
510 スポット溶接部
515 直径
522 トッププレート
524 ボトムプレート
532 スポット溶接部張力
534 スポット溶接部剪断応力
542 力の合力
544 モーメント合力
800 コンピュータシステム
802 バス
804 プロセッサ
806 アプリケーションモジュール
808 インメモリ
810 二次メモリ
812 ハードディスクドライブ
814 リムーバブルストレージドライブ
818 リムーバブルストレージユニット
820 インターフェース
822 リムーバブルストレージユニット
824 通信インターフェース
830 I/Oインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のスポット溶接部を有する構造体設計のための構造体衝突イベントの時間進行シミュレーションにおいてスポット溶接部破壊を判定する方法であって、
構造体における1つ以上のスポット溶接部定義を受けるステップであって、スポット溶接部定義のそれぞれがスポット溶接部と及びスポット溶接部によって接続されている第1および第2パーツ部分とを含んでいるステップと、
スポット溶接部を表わす少なくとも1つのソリッド要素のクラスターと、第1パーツを表わす複数の第1シェル要素と、第2パーツを表わす複数の第2シェル要素と、を有する構造体の有限要素解析法モデルを生成するステップであって、前記クラスターは第1および第2端部を有しており、第1端部はそれぞれが第1シェル要素の対応する1つに接続している複数のノードを有しており、第2端部はそれぞれが第2シェル要素の対応する1つに接続している複数のノードを有しているステップと、
第1および第2端部のそれぞれの端部の全体的な軸方向応力スケール係数および全体的な剪断応力影響度スケール係数を決定するステップと、
第1および第2端部の前記それぞれの端部の全体的な位置影響度スケール係数を決定するステップと、
時間進行シミュレーションの現在の解法サイクルにおける前記それぞれの端部における力の合力およびモーメント合力を演算するステップと、
時間進行シミュレーションの現在の解法サイクルにおいて計算された塑性歪みと、先の解法サイクルにおいて記憶された塑性歪みを用いて、前記それぞれの端部における全体的な塑性歪みレートを演算するステップと、
現在の解法サイクルにおける前記それぞれの端部におけるスポット溶接部破壊基準をチェックするステップであって、スポット溶接部破壊基準が演算された力・モーメント合力と、塑性歪みレートと、全体的な軸方向応力・全体的な剪断応力・全体的な位置影響度スケール係数と、の関数であるステップと、
スポット溶接部破壊基準がクラスターの第1および第2端部のいずれかの端部におけるスポット溶接部の破壊あるいは破断を示す場合、時間進行シミュレーションの以降の解法サイクルに対して有限要素解析法モデルからそのクラスターを排除するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、有限要素解析法モデルが、耐衝撃性解析において自動車を表わすよう構成されている方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記それぞれの端部の全体的な軸方向応力スケール係数および全体的な剪断応力影響度スケール係数を決定するステップは、
前記それぞれの端部のノードのそれぞれの複数の個々の軸方向応力影響度スケール係数および複数の個々の剪断応力影響度スケール係数を決定するステップと、
前記それぞれの端部における個々の軸方向応力影響度スケール係数のすべてを平均することによって全体的な軸方向応力影響度スケール係数を導出するステップと、
前記それぞれの端部における個々の剪断応力影響度スケール係数のすべてを平均することによって全体的な剪断応力影響度スケール係数を導出するステップと、
をさらに備えている方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、個々の軸方向応力影響度スケール係数および剪断影響度スケール係数のそれぞれが、前記それぞれの端部においてノードのうちの前記それぞれのノードに接続されるシェル要素のうちの1つに対応する異なるシェル要素サイズに相応するよう構成されている方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記それぞれの端部の全体的な位置影響度スケール係数を決定するステップは、
前記それぞれの端部のノードのそれぞれの複数の個々の位置影響度スケール係数を決定するステップと、
前記それぞれの端部における個々の位置影響度スケール係数のすべてを平均することによって全体的な位置影響度スケール係数を導出するステップと、
をさらに備えている方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、個々の位置影響度スケール係数のそれぞれが、前記それぞれの端部においてノードのうちの前記それぞれのノードに接続される第1および第2シェル要素のうちの一方に対応する接続の異なる位置に相応するように構成されている方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、時間進行シミュレーションの1つ以上の結果をグラフィック的に演算デバイスのモニタへ表示して、結果を視覚化可能であり構造体の前記設計のさらなる設計判断を理解可能にするステップをさらに備える方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、力の合力およびモーメント合力を演算するステップが、さらに、クラスターに1つより多いソリッド要素以上がある場合には、
前記1つより多いソリッド要素を他と重複しないスポット溶接部識別符号によりグループ化するステップと、
クラスターにおける前記1つより多いソリッド要素のすべての個々の力とモーメントとを合計することによって力の合力およびモーメント合力を導出するステップと、
を備えている方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記それぞれの端部における全体的な塑性歪みレートを演算するステップが、
前記それぞれの端部のノードのそれぞれの複数の個々の塑性歪みレートを演算するステップと、
前記それぞれの端部における個々の塑性歪みレートのすべてを平均することによって全体的な塑性歪みレートを導出するステップと、
をさらに備えている方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、複数の塑性の個々の歪みレートが、ノードの前記それぞれに接続される第1および第2シェル要素の対応する1つの塑性歪みに基づいている方法。
【請求項11】
コンピュータシステムを制御して、1つ以上のスポット溶接部を有する構造体の設計のための構造体衝突イベントの時間進行シミュレーションにおいてスポット溶接部破壊を判定する命令を有するコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、
構造体における1つ以上のスポット溶接部定義を受けるステップであって、前記スポット溶接部定義のそれぞれがスポット溶接部及びスポット溶接部によって接続されている第1および第2パーツ部分とを含んでいるステップと、
スポット溶接部を表わす少なくとも1つのソリッド要素のクラスターと、第1パーツを表わす複数の第1シェル要素と、第2パーツを表わす複数の第2シェル要素と、を有する構造体の有限要素解析法モデルを生成するステップであって、前記クラスターは第1および第2端部を有しており、第1端部はそれぞれが第1シェル要素の対応する1つに接続している複数のノードを有しており、第2端部はそれぞれが第2シェル要素の対応する1つに接続している複数のノードを有しているステップと、
第1および第2端部のそれぞれの端部の全体的な軸方向応力スケール係数および全体的な剪断応力影響度スケール係数を決定するステップと、
第1および第2端部の前記それぞれの端部の全体的な位置影響度スケール係数を決定するステップと、
現在の解法サイクルにおける前記それぞれの端部における力の合力およびモーメント合力を演算するステップと、
時間進行シミュレーションの現在の解法サイクルにおいて計算された塑性歪みと、先の解法サイクルにおいて記憶された塑性歪みを用いて、前記それぞれの端部における全体的な塑性歪みレートを演算するステップと、
演算された力の合力およびモーメント合力と、塑性歪みレートと、全体的な軸方向応力・全体的な剪断応力・全体的な位置影響度スケール係数と、を用いる、前記それぞれの端部におけるスポット溶接部破壊基準をチェックするステップと、
スポット溶接部破壊基準がクラスターの第1および第2端部のいずれかの端部におけるスポット溶接部の破壊あるいは破断を示す場合、時間進行シミュレーションの今後の解法サイクルに対して有限要素解析法モデルからそのクラスターを排除するステップと、
を備えるコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータ可読媒体であって、第1および第2端部の前記それぞれの端部の全体的な軸方向応力スケール係数および全体的な剪断応力影響度スケール係数を決定する前記ステップが、さらに、
前記それぞれの端部のノードのそれぞれの複数の個々の軸方向応力影響度スケール係数および複数の個々の剪断応力影響度スケール係数を決定するステップと、
前記それぞれの端部における個々の軸方向応力影響度スケール係数のすべてを平均することによって全体的な軸方向応力影響度スケール係数を導出するステップと、
前記それぞれの端部における個々の剪断応力影響度スケール係数のすべてを平均することによって全体的な剪断応力影響度スケール係数を導出するステップと、
を備えているコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
1つ以上のスポット溶接部を有する構造体の設計のための構造体衝突イベントの時間進行シミュレーションにおいてスポット溶接部破壊を判定するシステムであって、
アプリケーションモジュールに対するコンピュータ可読コードを記憶するメインメモリと、
メインメモリに連結される少なくとも1つのプロセッサと、を備えており、前記少なくとも1つのプロセッサがメインメモリにおけるコンピュータ可読コードを実行し、アプリケーションモジュールにオペレーションを行わせるシステムであり、
構造体における1つ以上のスポット溶接部定義を受けるステップであって、前記スポット溶接部定義のそれぞれがスポット溶接部とさらにそれによって接続されている第1および第2パーツとを有しているステップと、
スポット溶接部を表わす少なくとも1つのソリッド要素のクラスターと、第1パーツを表わす複数の第1シェル要素と、第2パーツを表わす複数の第2シェル要素と、を有する構造体の有限要素解析法モデルを生成するステップであって、前記クラスターは第1および第2端部を有しており、第1端部はそれぞれが第1シェル要素の対応する1つに接続している複数のノードを有しており、第2端部はそれぞれが第2シェル要素の対応する1つに接続している複数のノードを含んでいるステップと、
第1および第2端部のそれぞれの端部の全体的な軸方向応力スケール係数および全体的な剪断応力影響度スケール係数を決定するステップと、
第1および第2端部の前記それぞれの端部の全体的な位置影響度スケール係数を決定するステップと、
現在の解法サイクルにおける前記それぞれの端部における力の合力およびモーメント合力を演算するステップと、
時間進行シミュレーションの現在の解法サイクルにおいて計算された塑性歪みと、先の解法サイクルにおいて記憶された塑性歪みを用いて、前記それぞれの端部における全体的な塑性歪みレートを演算するステップと、
演算された力の合力およびモーメント合力と、塑性変形レートと、全体的な軸方向応力・全体的な剪断応力・全体的な位置影響度スケール係数と、を用いる、前記それぞれの端部におけるスポット溶接部破壊基準をチェックするステップと、
スポット溶接部破壊基準がクラスターの第1および第2端部のいずれかの端部におけるスポット溶接部の破壊あるいは破断を示す場合、時間進行シミュレーションの今後の解法サイクルに対して有限要素解析法モデルからそのクラスターを排除するステップと、
を備えているシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、第1および第2端部の前記それぞれの端部の全体的な軸方向応力スケール係数および全体的な剪断応力影響度スケール係数を決定する前記ステップが、さらに、
前記それぞれの端部のノードのそれぞれの複数の個々の軸方向応力影響度スケール係数および複数の個々の剪断応力影響度スケール係数を決定するステップと、
前記それぞれの端部における個々の軸方向応力影響度スケール係数のすべてを平均することによって全体的な軸方向応力影響度スケール係数を導出するステップと、
前記それぞれの端部における個々の剪断応力影響度スケール係数のすべてを平均することによって全体的な剪断応力影響度スケール係数を導出するステップと、
を備えているシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムであって、前記それぞれの端部の全体的な位置影響度スケール係数を決定する前記ステップが、さらに、
前記それぞれの端部のノードのそれぞれの複数の個々の位置影響度スケール係数を決定するステップと、
前記それぞれの端部における個々の位置影響度スケール係数のすべてを平均することによって全体的な位置影響度スケール係数を導出するステップと、
を備えているシステム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−127933(P2010−127933A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263640(P2009−263640)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(509059893)リバーモア ソフトウェア テクノロジー コーポレーション (29)
【Fターム(参考)】