説明

望ましくない内部歪を有するポリマーの形成を音響分析によってモニターする方法

【課題】望ましくない内部機械的歪を有するポリマーの形成をモニターする方法。
【解決手段】前記のポリマーの形成によって生じる音響出力を機器に取付けた一つまたは複数の音響センサーで検出する。この方法を実施する装置は音響出力を電気信号またはデジタル信号に変える、機器に取り付けられた一つまたは複数の音響センサーと、上記共鳴圧電気変換器に結合された、濾波・演算増幅器を有する調整装置(任意)と、上記調整装置に結合された、少なくとも一つの調整可能な閾値レベルを有する装置(任意)(調整装置がこの調整可能な閾値レベルを有していない場合)と、少なくとも一つの調整可能な閾値レベルを有する、上記調整装置に接続されたパルス計数器(任意)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、望ましくない機械的内部歪(internal mechanical strain)を有するポリマーの形成をモニターする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械的内部歪を有するポリマーの例はポップコーンポリマーである。ポップコーンポリマーは任意の種類の有機材料、特にオレフィンおよびジエンを含むオレフィン系不飽和モノマーから形成されるということは知られており、特に成り易いのは共役ジエン、例えばブタジエンおよびイソプレンと、ビニル化合物、例えばスチレンおよびアクリレートである。
ポップコーンポリマーとよばれるのはトウモロコシに似ているためで、このポリマーはスポンジポリマー、粒状(granular)ポリマー、カリフラワーポリマー、結節(nodular)ポリマー、フレーク(fluffy)ポリマー、球芽状(proliferous)ポリマー、皮殻状 crusty)ポリマーともよはれる。
ポップコーン・ポリマーは自発的なモノマー重合で生じると考えられ、液相でも気相でも生じ、モノマーの使用またはハンドリングの任意の段階、例えば回収、分離、製造、精製、貯蔵、その他で生じる。特に、モノマー濃度が高くなると形成され易くなる。
【0003】
多くのオレフィン系不飽和有機モノマー、例えばスチレン(ジビニールベンゼンのような痕跡量の不純物を含む)や、共役二重結合を有するジエン類、例えば1,3-ブタジエンまたはイソプレンはそのモノマーの貯蔵時および運送時や、回収または後加工時に望ましくないポップコーンポリマーが自発的に形成される傾向がある。一般に、このポップコーンポリマーは極めて架橋した不溶性材料であり、タンク、パイプ、装置および反応装置の壁面上にカリフラワー構造状の発泡した皮状(crusty)ポリマー粒子を形成する。
【0004】
ポップコーンポリマーは、モノマーに作用する種々のファクター、例えば酸素、熱、錆、さらには既に存在しているポップコーン・ポリマー粒子(ポップコーンポリマーの形成に触媒作用を有する)の作用で生じる。特に、一種以上の開始剤、例えば有機材料中の水、酸素、過酸化水素の存在がポップコーン・ポリマーの「結晶核(シード)」の形成になることは明らかである。この結晶核ができると、それ自体が重合を持続させ、他の開始剤および/または架橋剤を必要としないで、その後の重合サイトとなる。一つの特定機構としては成長するポリマーの表面を介してモノマーが拡散し、その中央でポリマーに付加されることが考えられる。この理由から、この種の重合は「逆(from the inside out)」に起こる重合と言われる。その結果、モノマーがポリマー相中に取り込まれ続け、ポップコーンポリマーが形成されることになる。このモノマーの連続的な取り込みに架橋が加って高い内部機械的歪が生じる。ポリマーが壊れ、新たなポップコーンポリマーの結晶核ができる理由はこの歪で説明できる。結果的に固いポリマー状汚染物(foulant)が生じる。これを放置しておくと機器および安全性に重大な影響が生じる。
【0005】
ポップコーンポリマーの形成が特に問題となるのは、それが系中に一端できると失活耐性(resistance to deactivation)が極端になることである。結晶核の一部が加工装置やハンドリング機器に付着すると、それを機械的手段で除去することは簡単にはできず、大抵の溶剤には不溶であるので、通常の溶剤を用いて洗浄して取ることは実質的に不可能である。また、機器および貯蔵装置を完全に洗浄したとしても、ポップコーンポリマーの残渣粒子が残り、望ましくないポリマーの成長が促進される。機器中に残った痕跡量の粒子はモノマーが存在しなくても長期間生き残り、モノマーがそれと接触した途端にポップコーンポリマーの重合を開始する。
【0006】
ポップコーンポリマーの形成は共役ジエンモノマー、例えば1,3-ブタジエンまたはイソプレンの場合に特に重大である。すなわち、ポップコーン重合が起こるとパイプおよび反応装置が閉塞し、タンクの内容物が全て重合し、タンクが破裂する結果になる。
【0007】
特許文献1(米国特許第5,072,064号明細書)には第IV族元素とこの第IV族元素に結合した少なくとも一つの水素とを有する化合物で処理することによってポップコーンポリマーの成長を阻害することが記載されている。この化合物はポップコーンポリマーが形成される有機材料と混合するか、その有機材料の回収系、使用系または貯蔵系に添加することができる。
【0008】
特許文献2(米国特許公開第2001-005248 A1号明細書)には、ポップコーンポリマーが形成され易いオレフィン系不飽和有機化合物から成る不安定な材料のポップコーンポリマー成長を阻止する方法が記載されている。この方法では式:ROHの脂肪族アルコールの有効量を上記材料に加える(ここで、Rは直鎖、分岐鎖または環式のC3〜C20−アルキルまたはアルキレン基であり、アルキレン基は第2の水酸基を有している)。
【0009】
特許文献3〜7にも同様な安定方法が記載されている。しかし、これらの安定化剤を添加してもモノマーが滞留するか、低速で循環する場所でのポップコーン重合を十分には防ぐことはできない。そうした場所の例はマンホール、熱交換器のシェル側、安全弁に至るパイプのデッドスペース(脚部)および貯蔵装置である。これらの機器および貯蔵装置の閉塞や破損を防ぐためにはこれら機器および装置を所定期限内に洗浄する必要がある。
【0010】
特許文献8(米国特許第US 5,734,098号明細書)にはエチレンプラント、ブタジエンプラント、イソプレンプラント等の軽質炭化水素の回収中に蒸留塔およびその付随設備(例えば熱交換器やリボイラ等の機器)が反応性ブタジエンのようなオレフィンの熱重合および/または酸化重合によって汚染されるということが記載されている。ポップコーンポリマーのような汚染物の形成を検出するために、タワーの所定トレイの下側の蒸気空間中に厚さ剪断モード共鳴装置(thickness-shear mode resonators)を設置するか、プローブを用いることができる。厚さ剪断モード共鳴装置はタワー、例えば主精留塔、脱プロパン塔、脱ブタン塔およびブタジエン精製塔の蒸気スペース中に配置できる。この厚さ剪断モード共鳴装置はその上に沈着する気相中の粘弾性ポリマーの形成に敏感で、ポップコーンポリマーの厚さを測定すると思われる。しかし、冷却水によって生じる汚染物とは違って、ポップコーンポリマーでは一定の厚さにはならないため、この方法は効率的に機能しない。
【0011】
ポップコーンの重合時には、内部機械的歪を有する全てのポリマーと同様に、音響出力(アコースティックエミッション、acoustic emission)があり、それをマイクロホンのような音響センサーで検出できるということが分かっている。この方法の利点は、音響センサーがポップコーンと直接接触しないため、望ましくないポリマーが形成される空間、例えばマンホール、熱交換体のシェル、パイプ、蒸留塔または貯蔵設備の外部に取付けできる点にある。従って、オペレータが早期に発見でき、設備の一部が完全に閉塞する前にポップコーンポリマーを除去できるという利点がある。
【0012】
プロセスのモニターに音響出力を利用する公知の技術の目的は重合のモニターである。この目的は本発明とのは正反対である。
【0013】
特許文献9(ドイツ国特許第DD 241480合公報)には酢酸ビニールの乳化重合プロセスが記載され、この重合で生じる音響出力を基礎振動数が100kHz〜1MHzの変換器(トランスデューサ)で記録し、重合を続ける。この乳化重合でのポリマーは粒子の形をしており、音響出力は液体中の粒子の運動で生じる。これはポリマー内部の歪やポリマーの切断で生じる音響出力ではない。
【0014】
非特許文献1(F. Ferrer, E. Schille, D. Verardo and J. Goudiakas、Journal of Materials Science, Volume 37, Number 13 / July, 2002 Pages 2707-2712, Springer Netherlands)には、加熱した濃縮塩化マグネシウム媒体中で316Lステンレスを静的にU−ベント(U-bend)テストする時の応力腐食クラックの検出における音響出力感度に関する記載がある。
【0015】
特許文献10(英国特許第GB 2038851号公報)には音響原理を使用した塩化ビニールと他のモノマーの重合の連続測定方法、装置が記載されている。重合媒体中に位置させた音響変換器は重合媒体中の化学的および物理的な相互作用に起因する音のエネルギーに応答する。変換信号は走査音導波管に音響的にカップリングされ、得られた電気信号はワイヤを介してスペクトル分析装置へ送られ、特定の重合プロセスの指数が得られる。導波管およびセンサーは重合媒体中に位置している。圧電気ツイン(piezoelectric twine)が信号を出す。この乳化重合ではポリマーは粒子の形をしており、液体中での粒子の運動が音響出力が発生する。ピエゾセラミックツインの電気端子は例えば演算増幅器(preamplifier)を介して選択的マイクロボルト計または減衰計(decrementmeter)の同期検出器に接続される。重合系は反応装置空間中でパルス流をしているので、走査音波ガイドを主としてそのパルス流の振動数の減衰振動中で振動させ、その振動数の対数減少を重合生成物の粘度と相関させる。本発明では音響センサーを重合媒体中で振動させないので上記の減衰振動は見られない。
【0016】
特許文献11(国際特許第WO 03 051929号公報)には少なくとも一つの可変系を測定し、データを濾波し、時間系を復調し、反応装置の連続性を表す信号を計算することによって商業的な気相流動層反応器の連続性を評価する方法が記載されている。可変系は音響出力、圧力差、ベッドの全重量/容積比、流動床濃度、静電圧および反応装置の壁温度を含む。この気相重合ではポリマーは粒子または粉末の形をしており、ポリマーの内部歪や破断によって生じる音響とは無関係である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,072,064号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2001-005248 A1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,348,598号明細書
【特許文献4】米国特許第6,495,065号明細書
【特許文献5】米国特許公開第2004-001916号明細書
【特許文献6】米国特許公開第2004-0267078号明細書
【特許文献7】米国特許公開第2005-0004413号明細書
【特許文献8】米国特許第US 5,734,098号明細書
【特許文献9】ドイツ国特許第DD 241480号公報
【特許文献10】英国特許第GB 2038851号公報
【特許文献11】国際特許第WO 03 051929号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】F. Ferrer, E. Schille, D. Verardo and J. Goudiakas、Journal of Materials Science, Volume 37, Number 13 / July, 2002 Pages 2707-2712, Springer Netherlands
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、望ましくない機械的内部歪を有するポリマーの形成をモニターする方法と装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記のポリマーの形成によって生じる音響出力(acoustic emission)を機器の一部に取付けた一つまたは複数の音響センサーで検出することを特徴とする方法に関するものである。
音響センサーは望ましくないポリマーの形成が生じる容器の外側に位置しているのが好ましい。音響センサーを例えばサーモウェル(thermowell、glove thinger)中に位置させることができる。
望ましくないポリマーの形成が生じる容器の内側に音響センサーを位置決めしても本発明の範囲を逸脱するものではないが、その場合には技術的に問題が起こる場合もある。
本発明の一つの実施例では、内部機械的歪を有するポリマーは架橋したポリマーである。本発明の一つの実施例での内部機械的歪を有するポリマーはポップコーンポリマーである。
本発明はさらに、上記方法を実施するための装置にも関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
内部機械的歪を有するポリマーを作るために重合で使用するモノマーは一般にビニルモノマーであるが、一種のビニルモノマーだけでなく、少なくとも2種のビニルモノマーの混合物でもよい。そうしたビニルモノマーにはα、β−不飽和カルボン酸およびそのエステル、エチレン、プロピレン、1,3-ブタジエン、イソプレン、ジメチル-2,3-ブタ−1,3-ジエン、クロロプレン、ブロモプレン、スチレン、ジビニールベンゼン、痕跡量のジビニールベンゼンを含むスチレン、ビニールトルエン、塩化ビニール等ある。
α、β-不飽和カルボン酸およびそのエステルの例としてはアクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、グリシジルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、アリルアクリレート、t-ブチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、メタアクリル酸、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、n-ブチルメタアクリレート、i-ブチルメタアクリレート、ステアリルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、グリシジルメタアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ベンジルメタアクリレート、アリルメタクリレート、t-ブチルメタアクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、フェニルメタアクリレート、クロトン酸、メチルクロトネート、エチルクロトネート、イタコン酸、ジメチルイタコネート、メチルα-ヒドロキシエチルアクリレート、エチルα-ヒドロキシエチルアクリレートを挙げることができる。また、ケトン、例えばメチルビニールケトンおよびアクリロニトリルのようなニトリルを挙げることもできる。本発明がこれらに限定されるものではないことは明らかである。
【0022】
本発明の特定実施例のモノマーは架橋ポリマーとなるモノマーである。本発明は特にポップコーンポリマーとなるモノマーに関するものである。ポップコーンポリマーとなるモノマーの例としては1,3-ブタジエン、イソプレン、ジメチル-2,3-ブタ-1,3-ジエン、クロロプレン、ブロモプレン、不純物含有スチレン、ジビニールベンゼンおよび痕跡量のジビニールベンゼンを含むスチレンが挙げられる。
【0023】
ポリマー中にモノマーが連続的に取り込まれ、架橋することによって大きな内部機械的歪が生じる。ポリマーが壊れ、例えばポップコーンポリマー結晶核によって新しいポリマー結晶核が生れる理由はこの歪で説明できる。ポリマーが突然に破断・破損するとポリマー中および機器の金属構造物中に発破(shot、ショット、衝撃音)が生じる。本発明は内部機械的歪を有するポリマーのこの特定の性質を利用してポリマーの活性度 (activity) を測定する。
【0024】
機器の一部(例えばマンホール)に取付けた音響センサーは音響出力を電気信号またはデジタル信号に変換する。たいていの場合、この音響出力は超音波である。この信号をフィルタリング手段に接続して機器の通常のノイズを弁別するのが好ましい。上記信号を振動数、エネルギーレベル(デシベル(dB)で測定)、振幅を表示するために手段に送るのが好ましい。音響センサーは任意の手段、例えば、磁石を用いて機器の一部に取り付けることができる。音響センサーは内部機械的歪を有するポリマーが生じる可能性のある機器の全ての部分に取り付けるのが好ましい。ブタジエンプラントではドイツ(D-82057)、ミュンヘンのVallen-Systeme Gmbh社がVallen systemeタイプAMSY4の商標で市販のマイクロホンをマンホールに取り付けて使用した。一つの実施例での捕捉閾値レンジは30〜50dBで、好ましくは約40dBである。
【0025】
一つの実施例では全ての音響センサーを上記の機器の通常のノイズを弁別するフィルタリング手段と、振動数、エネルギーレベルおよび振幅を表示する手段とに接続する。各測定値は機器のその部分に取付けた音響センサーで測定した以前の測定値の典型的な記録と比較される。この典型的な記録の一つは内部機械的歪を有するポリマーの形成があった場合の記録であり、他の一つは内部機械的歪を有するポリマーの形成がなかった場合の記録である。上記のフィルタリング、測定値の表示および以前の記録との比較はコンピュータで行うのが好ましい。好ましい実施例では上記コンピュータによってプラント制御室中でアラームを出すようにしてある。従って、オペレータは内部機械的歪を有するポリマーが形成されつつあることが分かり、キャパシティを減らすか、および/または、ポリマーが存在する機器の上記部分をクリーニングするかを決定することができる。
【0026】
一つの好ましい実施例では、音響センサーは振動数レンジを選択するためのフィルタリング手段を有する共鳴圧電変換器(resonant piezoelectric transducer)である。内部機械的歪を有するポリマーが形成されるとショット(発破)が生じ、このショットは上記の共鳴圧電変換器によって信号に変換される。共鳴圧電変換器の使用温度は200℃までであるのが好ましい。
【0027】
共鳴圧電変換器はフィルタリング(濾波)手段と演算増幅器(operational preamplifier)とを有する調整装置に接続されているのが好ましい。フィルタリング手段は特定のポリマーの形成を特徴付ける振動数レンジを選択する。この振動数レンジを機器(例えばカラムまたは熱交換器)の一部または機器の各種部分の種々の位置で記録した信号と比較することで当業者は簡単に見付けることができる。必要に応じて機器のその部分の通常のノイズを考慮することができる。ブタジエンの場合の振動数レンジは10〜100kHzであり、大抵は約40kHzである。フィルタリング手段からの出力信号は減衰振動である。
【0028】
上記調整装置は少なくとも一つの調整可能な閾値レベル、好ましくは複数のカスケード状の閾値レベルを有するユニット(またはユニットを含む装置)に接続されているのが好ましい。各ポリマーおよび各機器の各部分の減衰振動の形は当業者が実験によって簡単に決定でき、それに基づいて一つ以上の閾値レベルにセットし、調節することができる。例としては3つのレベルに固定できる。レベル1が一番高く、レベル2はそれより低く、レベル3はレベル2より低い。例えば、レベル1より上に2つの振動があり、レベル2(かつレベル1より下)に1つの振動を有し、レベル3(かつレベル2より下)に2つの振動を有するような減衰振動である。これが上記ポリマーが形成された時の1つのショットに対応する。
【0029】
調整装置には必要に応じてパルス計数器を接続し、閾値レベルを越えた振動を1パルスとして数える。閾値レベルを越えた全てのパルスの数を表示および/または記録する。必要な場合には、振動が閾値レベルを超えている時間を計測する。また、必要に応じて振動が閾値レベルを超えている時間をセット時間と比較する。これらのデータの解析で上記ポリマーの形成をより良く予測することができる。
【0030】
測定値の表示およびデータの解析はコンピュータで行うのが好ましい。好ましい実施例では上記コンピュータがプラントの制御室内で警報を出し、それによって内部機械的歪を有するポリマーが形成されつつあることをオペレータに知らせることができる。オペレータはキャパシティを減らすか、および/または、上記ポリマーができた機器の部分をクリーニング(清掃)するかを決定できる。
【0031】
ブタジエンの場合、フィルタリング後に捕捉された信号は下記で特徴付けられる:
(1)SN比は1.2〜100、大抵は1.5〜10、最も多くは2〜4、
(2)振動数セントロイドは80〜350kHz、
(3)機器の音響特性に関連した緩和までの持続時間は5000μs以下、好ましくは4000μs以下、より好ましくは3500μs以下、さらに好ましくは2000〜3500μsの間、
(4)破断ポップコーンポリマーが存在したときに誘発されて出るショットの数は400以下、好ましくは300以下、さらに好ましくは200以下、より好ましくは50〜200の間、
(5)実際の音響エネルギーの範囲は10e.u〜10E5 e.u(1e.u=1E-18J)
【0032】
ポリマーが破断した時のショット数については、1つのショットで破断するのではなく、地震のように破壊ラインに沿って破壊がポリマーに沿って連鎖状に伝搬する引張強度と同様である。
【0033】
本発明はさらに、上記方法を実施するための装置にも関するものである。本発明装置は下記から成る:
(1)音響出力を電気信号またはデジタル信号に変える、機器に取付けた一つまたは複数の音響センサー、
(2)振動数、エネルギーレベルおよび振幅を表示する手段に接続された、上記信号をフィルタリングして上記機器の通常のノイズを弁別する手段、
(3)機器の上記部分に取付けた音響センサーからの測定値を以前の典型的な記録と比較する手段(この記録の一つは内部機械的歪を有するポリマーが形成されたときの記録であり、他の一つは内部機械的歪のないポリマーが形成されたときの記録である)
【0034】
例えは、ブタジエンプラントでは音響センサーはポップコーンポリマーができる機器の各種の部分に取り付ける。その音響センサーをフィルタリング手段、表示手段および測定値を以前の典型的な記録と比較する手段に接続する。これらの手段は制御室中に置く。
【0035】
本発明方法を実施するための本発明の好ましい実施例の装置は下記から成る:
(1)機器の一部に取付けた共鳴圧電変換器、
(2)上記共鳴圧電気変換器に結合された、濾波・演算増幅器を有する、必要に応じて用いられる調整装置、
(3)上記調整装置に結合された、少なくとも一つの調整可能な閾値レベルを有する、必要に応じて用いられる装置(調整装置がこの調整可能な閾値レベルを有していない場合)、
(4)少なくとも一つの調整可能な閾値レベルを有する、上記調整装置に接続された必要に応じて用いられるパルス計数器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
望ましくない内部機械的歪を有するポリマーが形成されたことをモニターする方法において、
前記のポリマーの形成によって生じる音響出力(acoustic emission)を機器の一部に取り付けた一つまたは複数の音響センサーで検出することを特徴とする方法。
【請求項2】
機器の一部に取り付けた各音響センサーが音響を電気信号またはデジタル信号に変える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記の信号が機器の通常のノイズを弁別するフィルタ手段と、振動数、エネルギーレベルおよび振幅を表示する手段とに接続されている請求項2に記載の方法。
【請求項4】
測定値が機器の上記部分に取り付けられた音響センサーの以前の典型的な記録と比較され、その一つの記録は内部機械的歪を有するポリマーの形成がある場合の記録であり、他の一つは内部機械的歪を有するポリマーの形成がない場合の記録である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フィルタリング、測定値の表示および以前の記録との比較をコンピュータで行なう請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
音響センサーが振動数レンジを選択するためのフィルタリング手段を有する共鳴圧電変換器である請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
共鳴圧電変換器がフィルタリング手段と演算増幅器とを有する調整装置に接続されている請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フィルタリング手段が特定ポリマーの形成を特徴付ける振動数レンジを選択する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
フィルタリング手段からの出力信号が減衰振動である請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
調整装置が少なくとも一つの調整可能な閾値レベルを有するユニットに接続されている請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
複数のカスケード状閾値レベルを有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
調整装置にパルス計数器が接続されて、上記振動が閾値レベルを超えた時にパルスがカウントされ、必要な場合には全ての閾値レベル用のパルス数が表示および/または記録され、必要な場合には振動が閾値レベルを超えている時間を測定し、必要な場合には、振動が閾値レベルを超えている継続時間を時間セットと比較する請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
測定値の表示とデータの解析をコンピュータで行う請求項13に記載の方法。
【請求項14】
内部機械的歪を有する上記ポリマーが架橋したポリマーである請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
内部機械的歪を有する上記ポリマーがポップコーンポリマーである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ポップコーンポリマーが1,3-ブタジエン、イソプレン、ジメチル-2,3-ブタ-1,3-ジエン、クロロプレン、ブロモプレン、不純物ジビニールベンゼンおよび痕跡量のジビニールベンゼンを含むスチレンである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
下記(1)〜(3)を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法を実行するための装置:
(1)音響出力を電気信号またはデジタル信号に変える、機器の一部に取付けらた一つまたは複数の音響センサー、
(2)振動数、エネルギーレベルおよび振幅を表示するための手段に連結された、上記機器の通常のノイズを弁別するための上記信号のフィルタリング手段、
(3)機器の上記部分に取付た上記音響センサーからの測定値を以前の典型的な記録と比較する手段(この記録の一つは内部機械的歪を有するポリマーの形成がある時の記録であり、他の一つは内部機械的歪を有するポリマーの形成がない時の記録である)
【請求項18】
下記(1)〜(3)を有する請求項6〜13のいずれか一項に記載の方法を実行するための装置:
(1)機器の一部の部材に取付けられた共鳴圧電気変換器、
(2)上記共鳴圧電気変換器に結合された、濾波・演算増幅器を有する、必要に応じて用いられる調整装置、
(3)上記調整装置に結合された、少なくとも一つの調整可能な閾値レベルを有する、必要に応じて用いられる装置(調整装置がこの調整可能な閾値レベルを有していない場合)、
(4)少なくとも一つの調整可能な閾値レベルを有する、上記調整装置に接続された必要に応じて用いられるパルス計数器。

【公表番号】特表2010−515073(P2010−515073A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544420(P2009−544420)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050141
【国際公開番号】WO2008/084045
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】