説明

木屑ピットの粉塵飛散抑止装置

【課題】 木屑等のバイオマス燃料を集積する木屑ピット内で、バイオマス燃料から塵埃や粉塵の発生を抑制する木屑ピットの粉塵飛散抑止装置を提供する。
【解決手段】 運搬車両2により搬送された木屑等のバイオマス燃料は、木屑ピット10の受入口1bからホッパー1c内を受入コンベヤ3に投下されて搬送され、シュート部1dから燃料給送コンベヤ4に落下する。このとき、ホッパー1c内にシャワーノズル13から散水する。木屑ピット10には天井部に設置した送風機12から外気が導入されて加圧されており、燃料給送コンベヤ4により搬送されるバイオマス燃料の表面が送風による圧力で押さえつけられるから、粉塵等の飛散が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バイオマスボイラーの主燃料とされている木屑を運搬車両等から受け入れて保管する木屑ピットにおいて、木屑の粉塵が飛散することを抑制して、木屑ピット内の環境を改善する木屑ピットの粉塵飛散抑止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
循環型社会の形成のための資源の有効利用や、地球温暖化防止等の自然環境破壊等の抑止の観点から、近年では、木片や樹皮等の有機性資源、すなわちバイオマスを主燃料としたバイオマスボイラーが多く利用されてきている。製紙工場では、紙の製造に樹木が用いられることから、特に木片や樹皮等の木屑を主燃料としたバイオマスボイラーが利用されており、燃料となる木屑等を木屑ピットに受け入れて、この木屑ピットからバイオマスボイラーに供給するようにしている。
【0003】
図3は木屑ピット1の構造を説明する概略図で、この木屑ピット1は地下に設置されている。地上部分には木屑等のバイオマス燃料を受け入れるために、バイオマス燃料を搬送する運搬車両2の載置台1aが設置されており、この載置台1aが木屑ピット1の受入口1bに臨んでいる。この受入口1bはホッパー1cに設けられており、運搬車両2で搬送されたバイオマス燃料はこのホッパー1cに投下される。前記受入口1bの下方には、投下されたバイオマス燃料を所定の位置まで搬送するための受入コンベヤ3が配設されている。この受入コンベヤ3は、ホッパー1cのシュート部1dに臨ませてあり、このシュート部1dの下部にはカバー部1eが設けられている。このカバー部1eによって木屑ピット1の底部の架台コンクリート部1fの上面に設置された燃料給送コンベヤ4の一部が覆われており、シュート部1dを通ったバイオマス燃料はこの燃料給送コンベヤ4にカバー部1eで覆われた位置に落下することになる。
【0004】
前記燃料給送コンベヤ4の先端は、木屑ピット1の側部に配設されたバケットコンベヤ等の鉛直給送コンベヤ5のケーシングの一部に設けられたシュート部5aに臨ませてある。燃料給送コンベヤ4で搬送されたバイオマス燃料はシュート部5aから鉛直給送コンベヤ5のケーシングに投入され、該鉛直給送コンベヤ5によって上方に搬送され、バイオマスボイラーの燃料供給口から投入されることになる。
【0005】
バイオマス燃料は、受入口1bから前記受入コンベヤ3上に投下され、前記シュート部1dを通って燃料給送コンベヤ4に落下するため、その衝撃等によって木屑ダスト等の粉塵が飛散することになる。前記カバー部1eの出口側は開放されているため、飛散した粉塵がカバー部1eの出口から木屑ピット1内に飛び出して、木屑ピット1内の全体に飛散してしまうおそれがある。飛散した粉塵は木屑ピット1内に堆積し、燃料給送コンベヤ5の駆動モータ等の発熱により粉塵に引火しては不都合であるから、粉塵が堆積することがないように定期的にあるいは不定期に木屑ピット1内を清掃する必要がある。この清掃作業は、作業時の粉塵の飛散が甚だしく作業環境が劣悪なため、防塵服や防塵マスク等の重装備で行う必要があり、煩雑な作業であると共に、重労働でもあった。
【0006】
コンベヤにより搬送される被搬送物から塵埃等が飛散することを防止する装置として、例えば、特許文献1には、ベルト上の荷をその中央部に規制するスカート部材を下端がベルト表面から適宜離間するように設け、そのスカート部材に、ベルトとの隙間に流体を吹き出して上記中央部とスカート部材の外方とを遮断する吹出手段が設けられたベルトコンベヤのスカート構造が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、衝撃式破砕機の投入口に気密に連設され、搬入ベルトコンベヤの一端部が挿入された投入シュートと、上記破砕機の排出口に気密に連設された排出シュートと、排出シュートの出口の下方に一端部を臨ませて配設された搬出ベルトコンベヤと、排出シュートの出口と気密に連通され、搬出ベルトコンベヤの一端部のキャリア側を所要長さに亘って気密に覆うフードとを備える破砕設備において、フードにおける搬出ベルトコンベヤの他端側の上部にダクト連結室を設け、ダクト連結室と前記投入シュートとを空気ダクトで連通し、ダクト連結室より上流側のフードの天井に、フード内を搬出ベルトコンベヤの搬送方向と直角に仕切る少なくとも3枚のノレンを搬送方向へ適宜に離隔して垂下した破砕装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、一端に粉塵吸引口から粉塵を含んだ空気を吸引するために開口された粉塵吸引口を備えた吸入管と、前記吸入管の他端に連結され、前記粉塵を水で湿潤させるために複数の空間に区画され、底部に水が満たされた隔壁部と、前記隔壁部に堆積し湿潤した前記粉塵を排出するための排出口と、前記吸入管から空気を吸い込むための送風ファンとからなる湿式集塵機であって、ベルトコンベア上に設置された湿式集塵機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−319018号
【特許文献2】特開2001−121025号
【特許文献3】特開2001−327825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した特許文献1〜3に開示された塵埃等の飛散防止装置は、コンベアで搬送される被搬送物からの塵埃や粉塵等の飛散を防止するものである。このため、コンベヤのスカート部やフード部内から粉塵等を周囲の環境に飛散させないようにしたものである。
【0011】
しかしながら、バイオマス燃料等の木屑ピットでは、運搬車両等から木屑等を投下させるため、燃料給送コンベヤ上に落下する際に発生する大量の木屑ダストなどの粉塵が飛散する。この粉塵等は燃料給送コンベヤで搬送中にも飛散している。また、燃料給送コンベアにバイオマス燃料中の鉄分を除去するための磁選機が設置してあり、燃料給送コンベヤの全域をカバー部で覆うことができず、該燃料給送コンベヤの一部が露呈しているから、この露呈した部分から粉塵等は木屑ピット内に飛散することになる。また、燃料給送コンベヤで搬送中にバイオマス燃料が脱落する際にも、粉塵が飛散することがある。
【0012】
飛散した粉塵を除去する方法として、バグフィルターによる集塵機の設置を試みたが、フィルターの目詰まりが頻繁に生じてしまい、十分な集塵効果を発揮できなかった。また、燃料給送コンベヤの側部に木屑の脱落防止板を設置したが、木屑の吹き出しや飛び出しを確実に防止することができなかった。
【0013】
そこで、この発明は、バイオマス燃料等を投入して落下させる集積室などのように塵埃や粉塵等が飛散する環境において、粉塵等が飛散することを極力抑制する木屑ピットの粉塵飛散抑止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明にかかる木屑ピットの粉塵飛散抑止装置は、木屑等を上部の投入口から投入して、投入された木屑等を給送コンベヤで次工程へ給送する処理が行われる木屑ピット内で、投入された木屑から発生する粉塵等が飛散することを防止する木屑ピットの粉塵飛散抑止装置において、前記木屑ピット内を加圧する加圧手段を設けたことを特徴としている。
【0015】
前記加圧手段により木屑ピット内が加圧されると、木屑ピット内が正圧になる。これにより投入されて落下することにより生じる圧力(落下圧)が抑制されることになり、投入された木屑等から生じた粉塵等が飛散することを抑制する。
【0016】
また、請求項2の発明に係る木屑ピットの粉塵飛散抑止装置は、前記加圧手段が送風機であり、この送風機により外気を木屑ピットに供給するようにしたことを特徴としている。
【0017】
前記木屑ピット内に木屑等が落下する際に生じ圧力は微少であるから、木屑ピット内をこの圧力に対抗する大きさの正圧にすればよく、送風機により木屑ピット内に送風することで十分である。このため、加圧手段として送風機を用いるようにしたものである。送風機は外気を導入するように設置することが好ましく、木屑ピットの壁部に設けてもよいが、天井部に設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかる木屑ピットの粉塵飛散抑止装置によれば、木屑ピット内を加圧するようにしたことにより、木屑等が投入された際に木屑ピット内に生じる圧力の増加に対抗する。このため、木屑等から生じる粉塵等が飛散しようとしても加圧されることによって、飛散が抑制される。このため、木屑ピット内の清掃作業回数を減じることができ、また、防塵服等の装備を厳重にすることなく木屑ピット内での作業を行うことができる。しかも、清掃作業の回数が減じられることにより、木屑ピットの停止時間を削減して、運転効率が向上する。
【0019】
請求項2の発明に係る木屑ピットの粉塵飛散抑止装置によれば、加圧手段に送風機を用いることができ、簡単な設備を既存の木屑ピットに設置するだけでよく、容易に既存の木屑ピットを改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る粉塵飛散抑止装置を備えた木屑ピットの概略構造を説明する図である。
【図2】木屑ピット内に設置されている木屑等を搬送する径路を示す概略の斜視図である。
【図3】従来の木屑ピットの概略構造を説明する図で、図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る木屑ピット10の粉塵飛散抑止装置を具体的に説明する。なお、図3に示した従来の木屑ピット1に関して同一の部分については同一の符号を付してある。
【0022】
図1に示すように、木屑ピット10の天井部には加圧手段としての送風機12が設置されており、外気を木屑ピット10内に導入するようにしてある。なお、この送風機12の設置位置は、天井部に限らず、木屑ピット10の壁部その他であっても構わず、外気を木屑ピット10内に導入できるようにすることが好ましい。この送風機12は、後述するように、木屑ピット10内を加圧できればよく、加圧する手段であれば送風機12に限らない。例えば、コンプレッサの圧縮空気を木屑ピット10に導入するようにしても構わず、このような場合には天井部等のように外気の導入を要することがないので、圧縮空気の供給用配管を配設してコンプレッサに接続させてあればよい。
【0023】
また、前記ホッパー1cの上部にはホッパー1c内に散水するためのシャワーノズル13が配設されている。
【0024】
木屑ピット10には、運搬車両2によって搬送された木屑等のバイオマス燃料の受入口1bが設けられており、この受入口1bを臨んで運搬車両2の載置台1aが設置されている。この載置台1aは運搬車両2を載置させた状態で傾斜した状態まで揺動し、運搬車両2に積載されたバイオマス燃料は受入口1bから投下される。受入口1bは前記ホッパー1cの壁部が開口されて形成されており、受入口1bの下方には受入コンベヤ3が設置されている。この受入コンベヤ3の先端は、シュート部1dの上部に臨ませてある。シュート部1dの下部にはカバー部1eが接続されており、このカバー部1eで燃料給送コンベヤ4の一部が覆われている。また、このカバー部1eは、図2に示すように、該燃料給送コンベヤ4の下流側の端部が開放されており、この開口部1gにゴム等の可撓性を有する素材によるノレン14が設けられており、該ノレン14によりカバー部1eの開口部1gが閉じられている。燃料給送コンベヤ4により木屑等のバイオマス燃料が搬送される際には、このノレン14が適宜に撓むことによって、開口部1gを通過することができるようにしてある。
【0025】
前記燃料給送コンベヤ4は前記カバー部1eを下位側として傾斜して設置されている。この燃料給送コンベヤ4にはベルトコンベヤが用いられ、図2に示すように、燃料給送コンベヤ4の幅方向に3本のガイドローラ4a、4b、4cが配されて、中央のガイドローラ4bは長手方向をほぼ水平に、両側のガイドローラ4a、4cは、それぞれ中央側を下位側として長手方向に沿って傾斜させてある。このため、これらガイドローラ4a、4b、4cに案内されるコンベヤベルト4dは、図2に示すように、幅方向の中央部が下に凸となって湾曲した状態となるようにしてある。燃料給送コンベヤ4の先端はバケットコンベヤ等の鉛直給送コンベヤ5のシュート部5aに挿入されており、燃料給送コンベヤ4で搬送されたバイオマス燃料はこの鉛直給送コンベヤ5に移載され、該鉛直給送コンベヤ5によって所望の位置まで搬送されることになる。
【0026】
以上により構成されたこの発明に係る木屑ピットの粉塵飛散抑止装置の作用を、以下に説明する。
【0027】
前記送風機12を駆動して外気を木屑ピット10内に導入している。これにより、木屑ピット10内は大気圧よりも高い圧力となって正圧にある状態となっている。
【0028】
運搬車両2より運搬されたバイオマス燃料が受入口1bから投下されると、前記受入コンベヤ3の上に落下し、該受入コンベヤ3によりシュート部1dへ搬送されて、該シュート部1dから前記燃料給送コンベヤ4に落下させられる。このとき、木屑ピット10内が加圧されて正圧に維持されているから、落下するバイオマス燃料に対して受入口1bに向かう風を受けることになり、粉塵等がホッパー1cやシュート部1d内で舞うことがある。このため、前記シャワーノズル14から散水して粉塵等が舞うことを抑制する。
【0029】
バイオマス燃料はシュート部1dから前記燃料給送コンベヤ4に落下する。このとき、前記カバー部1e内で燃料給送コンベヤ4に落下すると共に、前記シャワーノズル13からの散水により、粉塵等の飛散が抑止されている。バイオマス燃料は燃料給送コンベヤ4によって前記鉛直給送コンベヤ5まで搬送され、搬送域の途中では、前記カバー部1eから抜け出ることになる。なお、カバー部1eの出口には前記ノレン14が設けられているからカバー部1e内は閉鎖されているが、該ノレン14は可撓性を備えているため、カバー部1e内は殆ど気密性がない。バイオマス燃料が搬送されてカバー部1eから抜け出る際には、このノレン14が撓んでバイオマス燃料の移送に障害とならない。
【0030】
カバー部1eから抜け出たバイオマス燃料は、木屑ピット10内に開放されることになる。このとき、木屑ピット10内は前記送風機12の送風によって正圧にあるから、燃料給送コンベヤ4上のバイオマス燃料は加圧されて押さえつけられた状態にある。このため、該バイオマス燃料から発生した粉塵等も押さえつけられて飛散することが防止される。このため、燃料給送コンベヤ4による搬送途中でバイオマス燃料や粉塵等が該燃料給送コンベヤ4から脱落することも抑制される。
【0031】
バイオマス燃料は燃料給送コンベヤ4により前記鉛直給送コンベヤ5に搬送されて、シュート部5aから該鉛直給送コンベヤ5に投入され、バイオマスボイラーの燃料投入口等の所望の位置まで搬送されることになる。
【0032】
以上に説明した実施形態では、加圧手段として送風機12を天井部に設置して外気を導入するものとして説明したが、送風機を木屑ピット10内に設置して外気を導入するものでなくても、木屑ピット10内を加圧できるものであれば構わない。しかし、この送風機の送風方向を燃料給送コンベヤ4の搬送径路に向けたり、あるいは木屑ピット10の床面に向けたりする場合にはその風圧で粉塵等を飛散させてしまうおそれがあるから、送風の方向が粉塵等を飛散させることがない方向とする。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明に係る木屑ピットの粉塵飛散抑止装置によれば、バイオマス燃料を集積する木屑ピットにおける粉塵の発生を抑制することに寄与し、新設の木屑ピットは勿論のこと、既存の木屑ピットに簡単な改良を加えるだけでよく、木屑ピットにおける粉塵の飛散防止に適している。
【符号の説明】
【0034】
1a 載置台
1b 受入口
1c ホッパー
1d シュート部
1e カバー部
2 運搬車両
3 受入コンベヤ
4 燃料給送コンベヤ
5 鉛直給送コンベヤ
10 木屑ピット
11 天井部
12 送風機(加圧手段)
13 シャワーノズル
14 ノレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木屑等を上部の投入口から投入して、投入された木屑等を給送コンベヤで次工程へ給送する処理が行われる木屑ピット内で、投入された木屑から発生する粉塵等が飛散することを防止する木屑ピットの粉塵飛散抑止装置において、
前記木屑ピット内を加圧する加圧手段を設けたことを特徴とする木屑ピットの粉塵飛散抑止装置。
【請求項2】
前記加圧手段が送風機であり、この送風機により外気を木屑ピットに供給するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の木屑ピットの粉塵飛散抑止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−195260(P2011−195260A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63394(P2010−63394)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】