説明

木材の乾燥方法

【課題】 高含水率である針葉樹の乾燥方法を提供する。
【解決手段】 乾燥室内に堆積した針葉樹からなる被乾燥製材を、材温および含水率に基づいて、該乾燥室内の乾球温度および湿球温度を所定値に保つことによって乾燥する木材の乾燥方法において、初期昇温工程、高温セット工程、加熱停止工程に続いて、加熱工程を行い、目標とする材中含水率に到達するまで、加熱停止工程あるいは加熱停止工程に引き続く加熱工程を一組とする工程を繰り返すことを特徴とする。
前記各工程を移行する指標が、平均含水率測定ポイントにおける含水率であること、前記平均含水率測定ポイントが、材表面から35mmであること、また、木材の両木口端面とその四辺を筒体で覆い乾燥するであること、が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱、土台、ハリ、ケタ等の建築構造材に使用される木材、特には、杉、カラマツ等の針葉樹の乾燥方法及び乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用構造材として製材品を使用する場合に、建築物の構造安全性を担保するために、公共建築物では含水率20%以下と規定されている(非特許文献1参照)。
このため、建築用構造材として用いられる木材は、伐採後、十分乾燥したものを用いる必要があるが、自然乾燥では時間が掛かり過ぎることから、含水率の多い未乾燥製材品を規定含水率(20%以下)まで低下させるために、乾燥期間を短縮するべく、通常、乾燥機を用いて未乾燥製材品に含まれる水分を強制的に蒸発させることによって、人工乾燥することが一般的である。
乾燥機を用いて乾燥させると、乾燥の進行につれ木材の表層部は速やかに乾燥され、表層部の含水率が減少して木材内部への熱伝導が悪くなる。このため乾燥を急ぐと、木材の表層部と内部とで収縮に大きな差を生じ亀裂を生じる。
【0003】
亀裂が生じないように、木材の芯部を含水率18%程度まで人工乾燥(強制乾燥)させるには、およそ25日以上を要しており、乾燥施設等の設備償却コスト、その他の乾燥コストを合わせると莫大な経費を必要とし、高価なものとなる。そのため、安価な輸入外材に対抗するため、10日程度の乾燥にとどめ、表面から深さ10〜15mm 程度の表層部の含水率を20%程度に、芯部で40〜60%程度に乾燥して、市場に人工乾燥材として出荷されているものも見受けられる。
また、木材に予め切込みを入れ、乾燥を容易とする方法が一部地域で採用されているが、この方法は、建築構造材として使用する箇所が限定されるため、現在ではあまり利用されていない。
【0004】
人工乾燥によって木材を十分に乾燥すると黒く変色(乾燥焼け)することが多く、この面からも多くは、外観を重視して、表面乾燥のみの不十分な乾燥状態で出荷されている。このような不十分な乾燥ではクレームの発生につながりかねず、このため大手の住宅メーカーでは、一部に鉄骨を使用したり、あるいは価格が高くても集成材(積層材)を使用したりしている。
人工乾燥方式においては、乾燥室内の温度と湿度の制御を、加熱、蒸射(蒸気噴射)、さらに給気及び排気を調節して行い、110℃以上での第1工程から、次第に乾燥温度を下げながら第2,第3工程を行うものがある(特許文献1参照)。特許文献1に示されるものにおいては、各工程の移行の判断は、深さを変えてあけられた複数のモニター用木材の穴に、温度センサーと含水率センサーを差し込み、連続的に測定して得られる情報に基づいてなされる。
【0005】
しかしながら、この方法は、含水率が木材によってバラツキがあるため、工程の確実な移行判断を行うには、モニターする木材の数を増やし、情報量を多くする必要がある。このため、センサーのセットが煩雑であり、かつセンサー情報を常時看視している必要がある、等の問題がある。
より進んだものとして、乾燥室内の温度及び湿度の制御下に該乾燥室内に収容した木材を乾燥する木材の乾燥方法において、乾燥中における木材内部の温度及び含水率を連続的に又は断続的に測定し、測定して得られる木材内部の温度及び含水率の情報に基づいて、前記乾燥室内の温度及び湿度を制御する木材乾燥により、乾燥材の材面割れを抑制でき、材色の暗色化を抑制でき、しかも乾燥材の内部割れを抑制する木材乾燥方法が提供されている(特許文献2参照)。
【0006】
従来の木材乾燥方法によると、乾燥初期段階における高温処理による高温セット法による乾燥材の表面の割れは減少しているが、ひき割類(柱角、平角等)の内部芯材部における放射状の割れの発生が見られ、内部割れによる建築構造の接合における接合強度を低下せしめている。また材色の暗色化の抑制において、桟木の位置における部分的な材色の違いが乾燥材の仕上げ後も削減されずに残っている。
さらに、乾燥機の運転を連続して行うために電力消費量及び燃料消費量が多く、省エネルギー化・二酸化炭素の削減に関する社会的なニーズの面でも改善が求められている。
【0007】
【特許文献1】特許第3361312号
【特許文献2】特許公開2001−287206
【非特許文献1】公共住宅建設工事共通仕様書解説書259頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高含水率である針葉樹の未乾燥製材品(ひき角類)を規定含水率(20%以下)まで均質に低下させることにより、亀裂を生じさせずに、短期間に芯部まで充分に乾燥させることで、加熱蒸気量の削減等、省エネルギーを計ることができ、かつ、桟木跡の材色違いを仕上げ加工で削除できる木材の乾燥方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の木材の乾燥方法は、乾燥室内に堆積した針葉樹からなる被乾燥製材を、材温および含水率に基づいて、該乾燥室内の乾球温度および湿球温度を所定値に保つことによって乾燥する木材の乾燥方法において、初期昇温工程、高温セット工程、加熱停止工程に続いて、加熱工程を行い、目標とする材中含水率に到達するまで、加熱停止工程あるいは加熱停止工程に引き続く加熱工程を一組とする工程を繰り返すことを特徴とする。
前記各工程を移行する指標が、平均含水率測定ポイントにおける含水率であること、前記平均含水率測定ポイントが、材表面から35mmであること、また、木材の両木口端面とその四辺を筒体で覆い乾燥するであること、が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の木材の乾燥方法によれば、短期間に、芯部まで充分に乾燥させることができるため、従来の乾燥機に比べて、乾燥機の回転効率を上げることができ、また、加熱工程と加熱停止工程とを交互に繰り返すことによって、電力消費量および燃料消費量を大幅に削減することができるので、極めて乾燥コストを低減することができる。さらに、表層部から芯部まで含水率が一様で、内部まで亀裂のない商品価値の極めて高い木材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、乾燥加熱工程を単に継続するよりも、途中に加熱停止工程を挟むことの方が、省エネルギーを計ることができると同時に乾燥時間も短縮できることを見出したことに基づいてなされたものである。
具体的には、高温の蒸気を噴射し、乾燥室内を100℃近くに上げる第1の工程(昇温加湿工程)の後に、加熱ヒーターで木材を100℃以上の温度に加熱する工程(高温セット工程)を所定の指標が得られるまで継続し、さらに、乾燥室内を60〜100℃に下げ、該低温で保持する工程(加熱停止工程)を行い、さらに加熱工程を行い、必要に応じて加熱停止工程と加熱工程とを繰り返すことに特徴がある。
以下に、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の乾燥装置の概略を示す説明図である。
【0012】
乾燥装置内には、台車1上に積載された木材2を収容する乾燥室3が区画して設けられ、その上部のダクト内に循環送風ファン4と加熱ヒーター5が設けられている。その他に、蒸射手段として加湿装置(図示を省略)から蒸気を乾燥室内に供給するスチーミングパイプ6、調湿手段として乾燥機室内の湿度を調整する完全飽和蒸気発生装置(図示を省略)、給排気手段として吸気路7と給気ファン8、及び排気路9と排気ファン(図示を省略)が配設されている。
被乾燥製材品である木材2(例えば、針葉樹のひき角類(柱類、平角類)を台車1上に積載する。積載は、桟木(例えば、一辺30mmの角材)(図示を省略)を介して相互に50mm程度の間隔を保たせて多数段堆積させる。桟木を介し、また並列に作成された空隙は、乾燥室内に導入される高温蒸気や冷却空気を効率的に循環させることができる。
【0013】
乾燥機には、給気ファン8を通して外気が吸入され、湯気発生装置(調湿手段)10から水分が補給され、加熱ヒーター5で所要温度に加熱された高温蒸気を循環送風ファン4を介して乾燥機内に送風循環させて、桟木及び並列に間隙を空けて配列堆積された未乾燥製材品の各々外周に添って強制循環させ(流線a)、乾燥機内の乾球温度および湿球温度に基づいてコントロールしながら、材温を高める。
乾燥機内を循環する空気の湿度を調整するために、スチーミングパイプ6が設けられる。
乾燥機内を循環した高温高湿空気は、排気路9を通して乾燥機外へ排気される(流線b)。必要に応じて、排気路内に排気ファンを設けることができる。
【0014】
被乾燥製材品2のいくつか(試験材として、堆積1ブロックに3本程度適宜分散配置される)には、材中の所要箇所に所定の深さ(例えば、20mm、35mm、60mm≒材芯)に、温度センサー11及び含水率センサー12を1組として各々の位置に埋め込み配置し、被乾燥製材品中の材温・含水率を計測する(図2)。材温・含水率の計測は常時リアルタイム計測であることが好ましいが、随時ないし間歇的な計測でも差し支えない。計測結果は記録されておくことが好ましい。計測データは乾燥機の制御装置に連結させ、所定の計測値にしたがって乾燥機の装置を制御部分に連結させ、稼動・停止することにより乾燥機室内の乾球温度・湿球温度を制御し、材中の温度、含水率及び平衡含水率を制御することが好ましい。
【0015】
試験材における温水センサー・含水率センサーの埋め込み位置は、図3に示すように、木口から被乾燥木材の辺(長辺)長さ以上の位置に芯部含水率測定用センサーを設け、被乾燥木材の辺(長辺)長さ以上の位置離して、深さの異なる含水率測定用センサーを設ける。図3では、センサー深さ35mmの平均含水率測定用センサー、センサー深さ20mmの表面含水率測定用センサーを設ける例が示されている。
次に、本発明の木材乾燥工程について説明する。
【0016】
[初期昇温工程]
まず、乾燥機に、温度130〜170℃に加熱加湿された高温蒸気を噴射し、循環送風ファン4を回転させ、乾燥機内に送風循環させて、桟木及び並列に間隙を空けて配列堆積された未乾燥製材品の各々外周に添って循環させ、乾球温度95〜98℃、湿球温度95〜98℃の乾燥機内条件を維持させながら、材温を95〜98℃まで上昇させる。その際、材温・含水率を、例えば20mmポイント(表面測定ポイント)、35mmポイント(平均含水率測定ポイント)、60mmポイント(芯部測定ポイント)において材温・含水率を計測し、60mmポイントが制御温湿度の95〜98℃に、ほぼ到達するまで行う。実際には、60mmポイントの材温が制御温湿度に到達してから任意の一定時間、例えば2〜4時間、保持する。
【0017】
[高温セット工程]
次いで、乾燥機内の乾球温度を120℃まで急激に上昇させる。そして、湿球温度を100℃に保持させ、乾球温度120℃と湿球温度100℃を継続的に保持した乾燥機内条件で熱風循環させ、乾球湿球温度差20℃程度にセットして、その状態を継続する。この間、材温を100〜105℃に継続して保持する。平衡含水率4.5%近傍に乾燥機内条件を保持する。
材中の材温が100〜105℃に保持され、高含水率状態で保持されるため木材成分である木繊維、へミセルロース、リグニン等は可塑化され柔軟な状態を保持しながら表層硬化が行われるために表面割れの発生を抑制し、防止する。
【0018】
高温セット工程(前期)において、材温の上昇に従い、木繊維の間隙に含まれる自由水は膨張し、材中で内部圧力を高め、同時に材外周部分において自由水の蒸発とともに木繊維の間隙相互において収縮が生ずる(図4(c))。
高温セット(後期)において、外周部分に於ける水分の蒸発が進行し、木材を主として構成する木繊維の間隙に充填していた自由水は蒸発し、材表層は収縮し、表面硬化し、表層含水率が低下しても表面割れを発生することのない状態となり、高温セット工程が終了する(図4(c))。
【0019】
高温セット工程の終了は、35mmポイント(平均含水率測定用ポイント)の材温センサーによる材温が105℃を上限として、且つ材温が102〜103℃以上の範囲において加熱停止する。このように35mmポイントの材温が105℃上限として乾燥機内の温度制御することにより表面割れの発生を防止する。
本発明者は、35mmポイントの材温が105℃以上に上昇すると割れが顕著に発生することを新たに知見した。
[第1加熱停止工程]
このとき、材中の材温測定センサー35mmポイントの材温が105℃になった時点で、循環送風ポンプ4による加熱熱風の強制循環を停止し、乾燥機内をの無風状態にする。無風状態に放置することにより、乾燥機内の乾球温度85℃程度及び湿球温度80℃まで降下させ、維持する。
この状態を維持することによって、乾燥機内において材温測定センサー35mmポイントでの材温を80℃にまで低下させる。平衡含水率11%〜12%で乾燥機内条件を維持する。
【0020】
第1加熱停止工程では、乾燥機内の乾球温度を80℃まで効果的に下降させることが可能であり、従来の技術による乾燥機中の温度を自動制御するシステムにより継続的に100℃以下に下降させることに対比して、短時間に所定の状態に保持することが可能であり、且つ、この加熱停止により、燃料消費量及び電力消費量を削減することが可能となる。
第1加熱停止工程において、乾球湿球温度差は4℃となり、平衡含水率を12%近傍において保持させ、材中の含水率センサー20mmポイント、35mmポイント、60mmポイントでの含水率差を縮小し、材内部の蒸気圧による材芯部分から周辺部分への内圧を縮小する。この第1加熱停止工程により初期内部割れの発生を効果的に抑制・防止することになり、乾球温度80℃に下降するまで継続する。
【0021】
[第1加熱工程]
第1加熱停止工程で乾球温度80℃及び湿球温度75℃(近傍)に至った時点で、第1加熱工程に自動的に移行する。乾燥機中の温度を上昇させ、急激に乾球温度120℃、湿球温度100℃まで上昇させ、保持させる。
第1加熱工程において、材温測定センサー20mmポイントでの材温は、100〜108℃程度にまで上昇し、35mmポイント材温は、100〜104℃まで上昇し、60mmポイント(芯部測定用ポイント)での材温は、100〜101℃に保持される。この工程における乾球湿球温度差は20℃近傍であり、平衡含水率4.6℃に保持される。
【0022】
この第1加熱工程における材中の含水率は、材温測定センサー20mmポイント(表面測定用ポイント)で40%から25%に下降し、材温測定センサー35mmポイント(平均含水率測定用ポイント)で55%から35%に下降し、材温測定センサー60mmポイント(芯部測定用ポイント)で70%から45%に下降する。材温測定センサー20mmポイントでは繊維飽和点30%以下の含水率に下降し、木繊維に含まれていた水分が蒸発し、材の収縮するが35mmポイント及び60mmポイントでは繊維飽和点以上に含水率が高いため、木繊維収縮は全体として発生していない。しかし、材の周辺部から芯材部に向けて材温及び含水率等の各測定値差において傾斜が緩やかであるために内部割れの発生が認められない。
【0023】
[第2加熱停止工程]
第1加熱工程において、材温測定センサー35mmポイントでの材温102℃から上限105℃に達した時点で循環送風ファンを停止し、第2加熱停止工程に移行する。
第2加熱停止工程において、乾球温度は120℃から80℃に下降し、湿球温度は100℃から75℃まで下降し、乾球湿球温度差20℃で平衡含水率は4.5%から、乾球湿球温度差4.0℃で平衡含水率は12.8%に緩やかに移動する。
第2加熱停止工程において、乾球温度は80℃まで下降し、35mmポイントでの材温は95℃近傍に保持され、含水率は40%に向けて下降する。
第1加熱工程から第2加熱停止工程にかけて各含水率センサーの測定ポイントにおける含水率は緩やかな下降曲線を描いて含水率を下降させ、材芯の内部割れを発生しないために、各測定ポイントに於ける含水率差を縮小しながら所定の含水率に達するように制御することができる。
【0024】
[第2加熱工程]
乾球温度80℃及び湿球温度75℃近傍において第2加熱工程に自動的に移行し、乾燥機中の温度を上昇させ、急激に乾球温度120℃、湿球温度100℃まで上昇させ、保持させる。
第2加熱工程において、測定センサー20mmポイントでの材温は、100℃から108℃程度まで上昇し、測定センサー35mmポイントでの材温は、100℃から104℃まで上昇し、60mmポイントでの材温は、100℃から101℃に保持される。この工程における乾球湿球温度差は20℃近傍であり、平衡含水率4.6%に保持される。
【0025】
第2加熱工程における材中の含水率は、20mmポイントで45%から30%に下降し、35mmポイントで40%から23%に下降し、60mmポイントで45%から30%に下降する。この含水率変化において、各測定ポイントにおける含水率差は各々10%から5%近傍に縮小するとともに、各含水率測定ポイントの内部応力の差を縮小するために、内部割れの発生を抑制し、防止する。
[第3加熱停止工程]
第2加熱工程において、35mmポイントの材温が102℃から105℃に達した時点で循環送風ファンを停止し、第3加熱停止工程に移行する。
第3加熱停止工程において、乾球温度は12℃から80℃に下降し、湿球温度は100℃から75℃まで下降し、乾球湿球温度差20℃で平衡含水率は4.5%から、乾球湿球温度差4.0℃で平衡含水率は12.8%に緩やかに移動する。
第3加熱停止工程において、乾球温度は80℃まで下降し、35mmポイントの材温は95℃近傍に保持され、含水率は25%から20%に向けて下降する。
【0026】
[第3加熱工程]
乾球温度80℃及び湿球温度75℃(近傍)において、第3加熱工程に自動的に移行し、乾燥機中の温度を上昇させ、急激に乾球温度120℃、湿球温度100℃まで上昇させ、保持させる。
第3加熱工程において、20mmポイントでの材温は100℃から108℃程度まで上昇し、35mmポイントでの材温は100℃から104℃まで上昇し、60mmポイントでの材温は100℃から101℃に保持される。
この工程における乾球湿球温度差は20℃近傍であり、平衡含水率4.6%に保持される。
【0027】
第3加熱工程における材中の含水率は20mmポイントで20%から12%に下降し、35mmポイントで30%から18%に下降し、60mmポイントで30%から20%に下降する。この含水率変化において各測定ポイントにおける含水率差は、各々10%から5%近傍に縮小するとともに、各含水率測定ポイントの内部応力の差を縮小するために内部割れの発生を抑制し、防止する。
[第4加熱停止工程]
第3加熱工程において、35mmポイントでの材温が102℃から上限105℃に達した時点で循環送風ファンを停止し、第4加熱停止工程に移行する。
【0028】
第4加熱停止工程において、乾球温度は120℃から80℃に下降し、湿球温度は100℃から75℃まで下降し、乾球湿球温度差20℃で平衡含水率は4.5%から、乾球湿球温度差4.0℃で平衡含水率は12.8%に緩やかに移動する。
第4加熱停止工程において、乾球温度は80℃まで下降し、35mmポイントの材温は95℃近傍に保持され、含水率は18%から15%に向けて下降する。
第3加熱工程及び第4加熱停止工程において、材中含水率が各含水率測定ポイントにおいて20%を下回った時点で、被乾燥製材品の乾燥工程を終了する。
【0029】
以上に説明した本発明の杉を例とした未乾燥製材品の乾燥方法において、乾燥機の加熱蒸気環境に12時間の温度上昇期間(初期昇温工程)の後、高温セット工程で平衡含水率4.1%に16時間ほど保持し、次いで第1加熱停止工程で平衡含水率11.0〜12.0%に7時間ほど保持し、第1加熱工程で平衡含水率4.1%に12時間ほど保持し、第2加熱停止工程で平衡含水率11.0〜12.0%に7時間ほど保持し、第2加熱工程で平衡含水率4.1%に12時間ほど保持し、第3加熱停止工程で平衡含水率11.0〜12.0%に7時間ほど保持し、第4加熱工程において平衡含水率4.1%に3時間ほど保持し、乾燥機内の平衡含水率を間欠的に変化させて針葉樹製材品に含まれる水分を蒸発させ、乾燥工程を終了させることが本発明の特徴である。
なお、木材の種類や、伐採後の経過等に違いがある場合には、第1加熱工程以降、いずれかの工程中に材中含水率が各含水率測定ポイントにおいて20%を下回った時点で、乾燥工程を終了するものとする。
【実施例】
【0030】
以下、図を参照して、本発明の実施例を説明する。
[実施例1]
図1に示す乾燥機を用い、杉の角柱116mm×116mm×3.0mm、500本を用意した。
図3に示すように、材温及び含水率測定用センサーを設置するため、角柱6本を選択し、角柱の小口端部から1.5mの位置に、直径3mm、材辺部から20mm、35mm、60mmの深さ位置に測定センサーを埋め込むための測定穴を開設し、温度センサー及び含水率センサーを設置する。各測定穴にはセンサーを埋め込み、乾燥機外の制御装置に接続し、自動計測方式による計測結果を用いて、乾燥機に接続された各機器を自動制御した。
【0031】
角柱を台車1に乗せ、一辺30mmの桟木を介して堆積し、また角柱は約20mm間隔で間隙を介して並列に並べて5段を1ブロックとし、ブロック間に一辺90mmの桟木を介して2ブロック重ねた。
未乾燥製材品を堆積した台車を乾燥機に格納し、以下の手順により乾燥を行った。
乾燥機の吸気路7から外気を吸入し、湯気発生装置10・加熱ヒーター5を作動させ、循環送風ファン4を回転させ、必要に応じてスチーミングパイプ6から温度150℃の高温蒸気を噴射し、乾燥機内に送風循環させて、桟木及び並列に間隙を構成する未乾燥製材品の各々外周に添って強制循環させ、乾球温度95℃から98℃、湿球温度95〜98℃を保って未乾燥製材品の材温を20mmポイント、35mmポイント、60mmポイントにおいて材温98℃まで上昇させた(初期昇温工程)。
【0032】
次いで、加熱ヒーター5を調整して、乾球温度を120℃になるまで急激に上昇させ、その温度を継続し、その間、湿球温度を100℃に保持させ、乾球温度120℃と湿球温度100℃を継続的に保持した乾燥機内条件で熱風循環させ、材温センサー20mmポイント、35mmポイント、60mmポイントにおいて材温を100〜105℃の範囲内に収まるようにコントロールしながら加熱を継続した(高温セット工程)。
材中の材温測定センサー35mmポイント(平均含水率測定用ポイント)の材温が105℃になった時点で循環送風ポンプによる熱風の強制循環を停止し、乾燥機内を無風状態にした。
無風状態に放置することにより、乾球温度85℃程度及び湿球温度80℃まで下降させた。平衡含水率11%〜12%で乾燥機内条件を維持する。この間、乾燥機内において材温測定センサー35mmポイントでの材温を80℃以上に維持されているように監視した(第1加熱停止工程)。
【0033】
乾球温度80℃及び湿球温度75℃近傍において、材温測定センサー35mmポイントでの材温が80℃にまで低下した時点で、第1加熱工程に自動的に移行し、乾燥機中の温度を上昇させ、急激に乾球温度120℃、湿球温度100℃まで上昇させ、保持させた(第1加熱工程)。
第1加熱工程において、材温測定センサー35mmポイントの材温が105℃に達した時点で循環送風ファンを停止し、第2加熱停止工程に移行した(第2加熱停止工程)。
第1加熱停止工程と同様に、乾球温度80℃及び湿球温度75℃近傍において、材温測定センサー35mmポイントでの材温が80℃にまで低下した時点で、第2加熱工程に自動的に移行し、乾燥機中の温度を上昇させ、急激に乾球温度120℃、湿球温度100℃まで上昇させ、保持させた(第2加熱工程)。
【0034】
第1加熱工程と同様に、第2加熱工程において、35mmポイントでの材温が105℃に達した時点で循環送風ファンを停止し、第3加熱停止工程に移行させた(第3加熱停止工程)。
第1加熱停止工程、第2加熱停止工程と同様に、乾燥温度80℃及び湿球温度75℃近傍において、材温測定センサー35mmポイントでの材温が80℃にまで低下した時点で、第3加熱工程に自動的に移行し、乾燥機中の温度を上昇させ、急激に乾球温度120℃、湿球温度100℃まで上昇させ、保持させた(第3加熱工程)。
第1加熱停止工程、第2加熱停止工程と同様に、第3加熱工程において、35mmポイントでの材温が105℃に達した時点で循環送風ファンを停止し、第4加熱停止工程に移行した(第4加熱停止工程)。
第4加熱停止工程において、材中含水率が各含水率測定ポイントにおいて20%を下回ったので、被乾燥製材品の乾燥工程を終了した。
以上の工程・経過を図5に示す。
【0035】
本実施例1においては、乾燥機の加熱蒸気環境に10時間の初期昇温工程の後、高温セット工程で平衡含水率4.1%に18時間ほど保持し、次いで第1加熱停止工程で平衡含水率11.0〜12.0%に8時間ほど保持し、第1加熱工程で平衡含水率4.1%に12時間ほど保持し、第2加熱停止工程で平衡含水率11.0〜12.0%に8時間ほど保持し、第2加熱工程で平衡含水率4.1%に12時間ほど保持し、第3加熱停止工程で平衡含水率11.0〜12.0%に8時間ほど保持し、第3加熱工程で平衡含水率4%に12時間ほど保持し、第4加熱停止工程において平衡含水率4%に6時間ほど保持したことになり、トータルの乾燥所要時間は、第4加熱停止工程後の乾燥機からの搬出までの時間を含めて、82時間であった。
【0036】
[実施例2]
図1に示す乾燥機を用い、カラマツの角柱115mm×115mm×3.0mm、500本を用意し、実施例1に準じて乾燥を行った。
図3に示すように、材温及び含水率測定用センサーを設置するため、角柱6本を選択し、角柱の小口端部から1.5mの位置に、直径3mm、材辺部から20mm、35mm、55mmの深さ位置に測定センサーを埋め込むための測定穴を開設した。
実施例2における乾燥工程経過グラフを図6に示す。
実施例2においては、第1加熱工程中に材中含水率が各含水率測定ポイントにおいて20%を下回ったので、被乾燥製材品の乾燥工程を終了した。
【0037】
本実施例2においては、乾燥機の加熱蒸気環境に10時間の初期昇温工程の後、高温セット工程で平衡含水率4.1%に18時間ほど保持し、次いで第1加熱停止工程で平衡含水率11.0〜12.0%に8時間ほど保持したことになり、トータルの乾燥所要時間は、第1加熱工程後の乾燥機からの搬出までの時間を含めて、46時間であった。
【0038】
本発明においては、材中の材温及び含水率測定センサー35mmポイントにおける含水率を指標として制御することで、材中の含水率測定センサーポイントにおける各含水率差を縮小することで、材表面の割れ及び材内部の芯割れを抑制し、防止することで高品質な乾燥製材品が得られた。
また、高温セット工程を経過して加熱停止工程を行うことにより従来高温乾燥方法の場合では連続して乾燥機を運転するため、所定の含水率までの乾燥工程において使用する本間歇乾燥法による電力消費量は、実施例1では450kWHまで低下し、30%程度削減したことになり、実施例2では、850kWHより280kWHまで低下した。
【0039】
さらに、燃料消費量は、従来高温の場合、燃料消費量は71.0L/m3使用したが、本間歇乾燥法による燃料消費量は、実施例1では40.0L/m3にまで低下し、45%程度削減したことになり、実施例2では、25L/m3にまで低下した。
また、乾燥時間は従来高温乾燥の場合、180時間から200時間を必要としたが、本間歇乾燥法の実施例1では80時間程度であり、50〜60%程度に短縮され、実施例2では46時間程度であり、65%程度に短縮され、省エネルギー効果があった。
また、仕上げ加工において桟木の置かれた部分と他の部分との材色の違いが軽微であるため、仕上げ加工により材色の違いを削除することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、短期間で芯部まで充分に乾燥し、亀裂の僅少な、商品価値の極めて高い材木を提供することができるので、製材供給産業分野に寄与する処大である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例で使用した乾燥装置の概略を示す断面図である。
【図2】被乾燥製材品中の材温および含水率を計測するセンサーの装着状態を示す説明図であり、(a)は表面含水率測定用、(b)は平均含水率測定用、(c)は芯部含水率測定用のセンサー装着状態を示す。
【図3】試験材中に材温センサー・含水率センサーを埋め込む位置を説明する説明図である。
【図4】被乾燥製材品における乾燥経過中の木材中の含水率の変化に基づく応力分布を説明する模式図である。
【図5】本発明の実施例1における乾燥操作の経過を示す乾球温度・湿球温度・材温・含水率の計測データのグラフである。
【図6】本発明の実施例2における乾燥操作の経過を示す乾球温度・湿球温度・材温・含水率の計測データのグラフである。
【符号の説明】
【0042】
1:台車
2:木材
3:乾燥室
4:循環送風ファン
5:加熱ヒーター
6:スチーミングパイプ
7:吸気路
8:給気ファン
9:排気路
10:湯気発生装置(調湿手段)
11:温度センサー
12:含水率センサー
a:加熱加湿空気の流線
b:排気される空気の流線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥室内に堆積した針葉樹からなる被乾燥製材を、材温および含水率に基づいて、該乾燥室内の乾球温度および湿球温度を所定値に保つことによって乾燥する木材の乾燥方法において、初期昇温工程、高温セット工程、加熱停止工程に続いて、加熱工程を行い、目標とする材中含水率に到達するまで、加熱停止工程あるいは加熱停止工程に引き続く加熱工程を一組とする工程を繰り返すことを特徴とする木材の乾燥方法。
【請求項2】
前記各工程を移行する指標が、平均含水率測定ポイントにおける含水率である請求項1に記載の木材の乾燥方法。
【請求項3】
前記平均含水率測定ポイントが、材表面から35mmである請求項1又は2に記載の木材の乾燥方法。
【請求項4】
木材の両木口端面とその四辺を筒体で覆い乾燥する請求項1乃至3のいずれかに記載の木材の乾燥方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−22077(P2007−22077A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167941(P2006−167941)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(597093698)株式会社新柴設備 (6)
【Fターム(参考)】