説明

木材の多機能処理装置及び処理方法

【課題】
木材の処理装置及びその処理方法に関するもので、木材の蒸煮処理と注入処理及び/又は乾燥処理を同一装置で行うことができる木材の多機能処理装置と乾燥処理の高速化及び高品質処理方法を提供する。
【解決手段】蒸気を循環させる送風機と蒸気を加熱する加熱器を内設した圧力容器に、ボイラーと空気圧縮機と真空ポンプ及び薬液供給装置とを設けて多機能を有する装置とした。蒸煮処理は圧力容器に飽和蒸気を供給し、蒸気圧の変動と減圧を用いて行い、乾燥処理は過熱蒸気を循環させることにより、乾燥時間の短縮と木材に割れの少ない乾燥を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木材の有効利用を図ることを目的とする木材の処理装置及びその処理装置を用いた木材の蒸煮、注入、乾燥法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材に薬剤や樹脂を含む溶液(以下薬液という)を注入して木材の防腐、不燃、WPC処理等を行う場合、従来は効率よく注入できるように木材を蒸煮処理及び爆砕処理した後、薬液を注入処理し、その後圧力容器から処理木材を取り出して、別の乾燥機に収納して乾燥処理をしている。
【0003】
即ち、注入処理と乾燥処理をそれぞれ別の専用装置で処理しているので、木材の出し入れに手間が掛かると共に設備費が高価になり、その上広い設備場所が必要となる。
【0004】
また木材の乾燥機は蒸気式乾燥機を代表として多くの種類が現在使用されているが、乾燥の高速化と高品質化が大きな課題となっている。スーパー蒸気を利用した加圧流動減圧乾燥法等も試みられているがエネルギー消費が多く実用化されていない。
【特許文献1】 特開平5−237812
【特許文献2】 特開昭56−68780
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常木材は含水率20%以下に乾燥して使用されるが、本発明は蒸煮と注入処理及び/又は乾燥処理を同一装置で行うことができる木材の多機能処理装置と処理方法を提供する。
【0006】
また薬液注入後の木材は乾燥処理がより困難となるので、圧力容器の中で湿度条件を制御した過熱蒸気を活用し、乾燥の高速化と割れの生じない乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多機能処理装置は、蒸気を循環させる送風機と蒸気を加熱する加熱器を内設した圧力容器と、該圧力容器に飽和水蒸気を供給するボイラーと、圧力容器に圧縮空気を供給する空気圧縮機と、圧力容器内を減圧にする真空ポンプと、木材に注入する薬液を圧力容器に圧送する薬液供給装置とを備え、前記圧力容器内には木材を収納して、該木材の蒸煮、注入、乾燥処理を同一容器内で行う制御手段を備えている。
【0008】
請求項2の圧力容器は円筒横型で開閉蓋を有し、圧力容器内は処理室と循環路に区分する仕切板と、仕切板の開口部に設けた蒸気を強制循環させる送風機と、循環路には蒸気を加熱する加熱器を設置した構成から成る乾燥処理の機能を有している。加熱器は循環路に設置するだけでなく圧力容器の外面にジャケットを設けて加熱することもできる。
【0009】
請求項3の多機能処理方法は、木材を収納した圧力容器に飽和蒸気を供給し、蒸気圧の変動と減圧を用いて木材の蒸煮処理を行い、その後薬液を圧力容器内に圧送して、木材への注入処理を施し、該薬液抜き後に圧力容器内を減圧にすると共に過熱蒸気を循環させて木材の乾燥処理を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、同一装置で蒸煮処理と注入処理及び/又は乾燥処理を行うことができるので、作業効率が向上すると共に設備費用が安価になり、設置場所も小さくなる。
【0011】
また、木材中の樹脂及びヤニ等の乾燥阻害物を除去する蒸煮処理と過熱蒸気による乾燥処理を併用することにより、乾燥時間を短縮し省エネルギーが可能となる。乾燥処理では、空気の無い蒸気だけの雰囲気の中で乾燥するため酸化による木材の変色が少なくなると共に過熱蒸気の中では乾燥による収縮応力が低減するため表面、内部ともに割れなく乾燥することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
日本工業規格の木材の加圧式防腐処理方法(JIS A−9002)に記載されている注入処理装置の注薬缶(本発明では圧力容器という)の内部を部分改造するだけで本発明の蒸煮.注入.乾燥の連続処理が可能となる。
【0013】
即ち、圧力容器に飽和蒸気を供給するノズルと開閉弁を取り付け、圧力容器の内部には蒸気を加熱する加熱器と過熱蒸気を循環させる送風機と仕切板を設置するだけでよい。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の多機能処理装置のフローチャート図である。
図2は実施例1の圧力容器の断面図を示す。
【0015】
圧力容器1は開閉蓋2を備えた円筒横型タンクで構成されており、圧力容器内部は仕切板3で処理室4と循環路5に区分されている。処理室4には被処理物である木材Wを収納し、循環路5には加熱器6が設置されている。仕切板3の開口部7には蒸気を循環する送風機8が設置されている。
【0016】
薬液供給装置9は薬液を入れる貯蔵槽10と貯蔵槽内の薬液を圧力容器1に供給する加圧ポンプ11とを有している。
次にこの多機能処理装置の処理方法について説明する。
【0017】
蒸煮処理は飽和蒸気をボイラー12から圧力容器1に蒸気弁13を開けて供給し、設定温度(例えば110℃)の蒸気圧力0.15Mpaと0.13Mpaの温度である106℃の間を変動させて木材の中心温度が100℃以上になると蒸気弁13を閉じ、真空弁14を開けて真空ポンプ15を動かし圧力容器内を減圧にする。減圧下の木材は真空中で蒸発をして、木材の中心温度が80℃以下になると真空ポンプ15を停止し、真空弁14を閉じ、蒸気弁13を開く。前記の飽和蒸気供給から減圧までの工程をくり返し運転することにより、木材中の樹脂やヤニ等が溶出すると共に木材中の水分も蒸発して木材の含水率を均一化し、注入及び乾燥の容易な組織になると共に割れ、収縮、反り等の木材の損傷が減少する。
また、この蒸煮処理により木材中の有効成分を抽出することも可能になり、抽出装置として利用することもできる。
この蒸煮に必要な時間は通常2〜8時間を要する。
【0018】
注入処理は貯蔵槽10の薬液を加圧ポンプ11を動かして、入液弁20を開き圧力容器1に供給する。木材が浸漬するまで薬液を供給した後、入液弁20を閉じ、空気圧縮機17を動かして加圧弁16を開き圧縮空気を圧力容器1に供給して、薬液を木材に加圧注入する。注入が終了した後、入液弁20及び液抜弁18を開き、圧縮空気の圧力で圧力容器内の薬液を貯蔵槽10に返送する。
【0019】
乾燥処理は真空ポンプ15を動かし、真空弁14を開いて圧力容器内を真空にする。その後真空弁14を閉じ、蒸気弁13及び加熱弁19を開き、ボイラー12から飽和蒸気を圧力容器1と加熱器6に供給すると同時に送風機8を回転させる。送風機8は正転.逆転が可能になっており適当な間隔で流れ方向を変えることができる。飽和蒸気は加熱器で加熱されて過熱蒸気となり、処理室4と循環路5を循環流動して木材の乾燥処理をする事ができる。
【0020】
乾燥温度は加熱弁19をオン、オフ作動させて設定した過熱蒸気温度を保持する。過熱蒸気温度は木材の形状や樹種によるが飽和蒸気温度より10℃前後高くすることが好ましい。一方乾燥圧力は設定した圧力スイッチの圧力値で排気弁21をオン、オフ作動させて一定の圧力を保持する。通常は乾燥温度すなわち過熱蒸気温度より低い飽和蒸気圧力に圧力スイッチの圧力を設定して乾燥度に合せて設定圧力を変化させることが好ましい。
尚乾燥温度は高温から低温まで任意の温度を設定して乾燥処理が可能であるが、100℃以下の低温乾燥を行う場合には、真空ポンプ15を動かして圧力容器内を減圧にし、設定した乾燥温度より低い飽和蒸気圧力に圧力スイッチを設定することになる。
【実施例2】
【0021】
図3は実施例2の圧力容器の断面図を示す。
実施例1では送風機8が圧力容器の後部に横置きに設置されているが、実施例2は送風機8の設定位置が圧力容器1の胴部に竪置きになり、循環流れを収納された木材Wの上下方向としている。尚送風機8は複数個あってもよい。
他は実施例1と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の活用例としては、主に建築用木材の加圧注入及び乾燥に利用される。
本発明の処理装置と処理方法を使用することにより、次のような製品を生産する事ができる。
▲1▼防腐、防虫木材
▲2▼不燃木材
▲3▼WPC加工木材
▲4▼割れ、歪みの少ない乾燥木材
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の多機能処理装置のフローチャート図
【図2】実施例1の圧力容器の断面図
【図3】実施例2の圧力容器の断面図
【符号の説明】
【0024】
1:圧力容器
3:仕切板
4:処理室
5:循環路
6:加熱器
7:開口部
8:送風機
9:薬液供給装置
10:貯蔵槽
11:加圧ポンプ
12:ボイラー
15:真空ポンプ
17:空気圧縮機
W:木材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を循環させる送風機と蒸気を加熱する加熱器を内設した圧力容器と、該圧力容器に飽和水蒸気を供給するボイラーと、圧力容器に圧縮空気を供給する空気圧縮機と、圧力容器内を減圧にする真空ポンプと、木材に注入する薬液を圧力容器に圧送する薬液供給装置とを備え、前記圧力容器内には、木材を収納して、該木材の蒸煮、注入、乾燥処理を同一圧力容器内で行う制御手段を備えた木材の多機能処理装置。
【請求項2】
圧力容器は円筒横型で開閉蓋を有し、圧力容器内は処理室と循環路に区別する仕切板と、仕切板の開口部に設けた蒸気を強制循環させる送風機と、循環路には蒸気を加熱する加熱器を設置した構成から成る請求項1記載の木材の多機能処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の木材を収納した圧力容器に飽和蒸気を供給し、蒸気圧の変動と減圧を用いて木材の蒸煮処理を行い、その後薬液を圧力容器内に圧送して、木材への注入処理を施し、該薬液抜き後に圧力容器内を減圧にすると共に過熱蒸気を循環させて木材の乾燥処理を行うことを特徴とする木材の多機能処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−248208(P2006−248208A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112728(P2005−112728)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(597136456)有限会社コウムラテクノ (7)
【Fターム(参考)】