説明

木材硬質加工装置

【課題】 この発明は、軟質な木材の丸太を蒸気加圧処理で圧縮変形して曲げ強度の高い木材に加工処理する木材硬質加工装置に関する。
【解決手段】蒸気・加圧装置が、該蒸気・加圧装置のハウジング内に高温蒸気を供給する高温蒸気供給手段と、上記ハウジング内で同一径の円柱状の丸太を挟圧するローリング式プレス装置とを有しており、該ローリング式プレス装置が加圧手段と移動手段とを有し丸太を回転しながら加圧する上下一対の圧力盤を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軟質な木材であっても蒸気加圧処理して曲げ強度を高めた硬質な木材に加工することができる木材硬質加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は弾性と粘性が共存しているので、高温高圧プレス成形装置を用いて、水蒸気により軟化され、その後圧縮変形を与えられ、再度、高圧水蒸気処理することによりその形状が固定される圧縮成形加工が行われている。
例えば特開平5−50409号で一例を示す木材の処理方法および装置では、内部に高温、かつ、高圧の水蒸気と高周波が供給される高温高圧容器と、この高温高圧容器内にプレス金型を適宜に対向配置し、この対向配置する少なくとも一方のプレス金型を適宜の手段で駆動して木材を圧縮成形するプレス機とからなり、木材を高温高圧容器内で水蒸気と高周波により急速に加熱軟化させた後、プレス機で圧縮成形して固定化するようにした構成が開示されている。
しかし、沖縄、九州やその他の西日本地方などの高温地域での成長の早い杉や檜の間伐材などでは、芯の間隔が広く、そのため材質がやわらかくて強度的にも弱いため、従来のような圧縮成形加工では十分な硬化ができず、木造建築構築資材として使用することができなかった。
【特許文献1】特開平5−50409号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、
軟質な木材からなる丸太を蒸気加圧処理により、丸太を圧縮変形して曲げ強度の高い木材に加工処理することができる木材硬質加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、課題を解決するために、請求項1の発明では、
木材を蒸気・加圧装置により蒸気で蒸しながら加圧する木材硬質加工装置において、
蒸気・加圧装置が、該蒸気・加圧装置のハウジング内に高温蒸気を供給する高温蒸気供給手段と、上記ハウジング内で同一径の円柱状の丸太を挟圧するローリング式プレス装置とを有しており、
該ローリング式プレス装置が、
前記ハウジング内に設けられた上下一対の圧力盤と、
該上下一対の圧力盤の上下の間隔を調整して同一径の円柱状の丸太を挟圧する加圧手段と、
前記丸太を挟圧した状態で前記上下一対の圧力盤を平行を維持しながらそれぞれ逆方向に移動させて前記丸太を回転させる移動手段と、
ハウジング内を常温に戻す空冷手段とを備えていることを特徴とする。
また、請求項2の発明では、
前記蒸気・加圧装置のハウジング内に低温蒸気を供給する低温蒸気手段を備えており、高温蒸気で蒸されると共に加圧処理された丸太を常温に戻してから低温蒸気で蒸すことを特徴とする。
請求項3の発明では、
前記蒸気・加圧装置と別体に低温蒸気を供給する低温蒸気装置を備えてなることを特徴とする。
更に、請求項4の発明では、
木材を蒸気・加圧装置により蒸気で蒸しながら加圧する木材硬質加工装置において、
蒸気・加圧装置が、該蒸気・加圧装置のハウジング内に高温蒸気および加圧を供給する高温蒸気・加圧供給手段と、上記ハウジング内で円柱状の丸太を収納する複数の二重莢単管と、ハウジング内を常温に戻す空冷手段とを有しており、
前記二重莢単管が、ステンレス製メッシュからなる内管にステンレス鋼板からなる外管が嵌合した構成からなっており、内管と処理用丸太との径方向の間隔が約5cm未満に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明では、材質がやわらかく強度的にも弱い木材であっても、外周全面に亘って均一な圧縮変形と固化を同時に行い、木材の硬度や強度を高めることができる。
これは、木目と木目の間の木質を蒸しながら締め付けてタンパク質で構成された多糖化のセルロースを熱と圧力による圧縮によって硬直させ、また木目の間隔を狭めて曲げに対しての強度を高めることができる。
また、高温蒸気処理に加えて低温蒸気処理により二度蒸しすれば、極めて軟質な木材であっても戻りが生じない一層確実な硬質加工を実現しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明では、木材の蒸気・加圧装置が、丸太を高温蒸気処理し、上下の圧力盤で加圧しながら回転することで丸太を均一に圧縮変形することで軟質の木材の硬度や強度を高めるという目的を実現した。
以下に、この考案の木材硬質加工装置の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0007】
本実施例の木材硬質加工装置1は、図1に示すように、裁断・切削機11、12と蒸気・加圧装置2と、単板製造機21とを有している。
【0008】
[裁断・切削装置]
西日本産の杉(檜でもよい)の生木を、規格寸法に裁断機11で裁断する。
この裁断された生木を、切削機12で、上下同径寸法の円柱状の丸太となるように削り揃える。
【0009】
[蒸気・加圧装置]
蒸気・加圧装置2は、図2に示すように、ハッチを有するハウジング10内に高温蒸気を噴霧させる高温蒸気供給手段としてスチーム管3およびこれに接続されたボイラー装置7と、ハウジング10内で前記丸太をローリングしながら加圧するローリング式プレス装置4と、ハウジング10内の圧力を調整する圧力調整弁5と、これらを制御する自動制御盤6とを有している。
【0010】
[スチーム管]
スチーム管3は、多数の噴霧孔を有するパイプであって、図示例の場合、ハウジング10の下方に配置されており、別体のボイラー装置7と接続されている。
そして、ボイラー装置7から供給される水蒸気をハウジング10内に噴霧しうるようになっている。
【0011】
[ローリング式プレス装置]
ローリング式プレス装置4は、図3(a)〜(c)に示すように、多段に設けられて上下一対になるプレート状の圧力盤4a、4bを複数組有している。
一対の圧力盤4a、4bは、加圧手段41によって上段の圧力盤4aと下段の圧力盤4bとが上下の間隔を狭めるようになっており、進退動手段45によって上段の圧力盤4aと下段の圧力盤4bとが逆向きに移動するようになっている。
【0012】
本実施例では、加圧手段41は一例として、上段の圧力盤4aを下段の圧力盤4bへ向かって押し下げるシリンダからなっている。
また、進退動手段45の一例として、上段の圧力盤4aは前記シリンダ41の基端をランナー(摺動子)46に連結し、水平に延びてハウジング内に固定された上段ガイドレール47に沿って前記ランナー46を図中左右に進退動するようになっており、下段の圧力盤4bはこれに連結されたアーム42の基端をランナー48に連結し、水平に延びてハウジング内に固定された下段ガイドレール49に沿って前記ランナー48を上段ガイドレール47のランナー46とは逆方向に進退動するようになっている。
【0013】
上記一対の圧力盤4a、4bの表面、即ち丸太との接触面は、丸太Wが上下の圧力盤4a、4bに挾まれた状態で、上下の圧力盤4a、4bが左右反対方向に平行に移動する際に、前記丸太Wが圧力盤4a、4bと接する表面に対して平行に転がるように、圧力盤の表面は、図示しないが1〜2mm以内の幅の溝をつけた凹凸面構造となっている。
上記凹凸面は、扁平な面に溝を設けた形状、等間隔に多数の小さな円形や任意の幾何形状の凸部を設けた形状など、丸太に回転可能な摩擦力を付与するための公知の形状を用いることができる。
【0014】
そして、上段の圧力盤4aと下段の圧力盤4bの間に切削された丸太Wが挿入され、加圧手段41により上段の圧力盤4aが下降して下段の圧力盤4bと共に丸太Wを挟み所定の力で丸太Wを挟圧する(図3(a)参照)。
次いで、上段の圧力盤4aと下段の圧力盤4bとが左右逆方向に水平に移動することで、丸太Wは摩擦力によってトルクが生じて回転する(図3(b)(c)参照)。
【0015】
回転により丸太Wは締め付けられて圧縮されるので、加圧手段41で更に大きい加圧力を丸太Wに加えながら丸太Wを回転させて圧縮させる。
前記丸太Wは正逆回転を繰り返すことで、端面を除く全部の外周面が上下の圧縮盤4a、4bにより均等に挟圧されて圧縮される。
【0016】
[圧力調整弁]
圧力調整弁5は、ハウジング10内に上記スチーム管3から水蒸気が供給された際に、ハウジング10内の圧力が標準大気圧を維持するように調整するための安全弁からなっている。
【0017】
[ボイラー装置]
ボイラー装置7は、燃料を燃焼させて得た熱を水に伝えて水蒸気に換え、前記スチーム管3に供給する熱源機であり、図示例では圧縮装置2と別体に設けたが、圧縮装置2と一体に設けられるものであってもよい。
【0018】
[排気部]
排気部8は、空冷手段の一例であって、前記ボイラー装置7からハウジング10内に供給された水蒸気を排出すると共に、外気を導入してハウジング10内が常温となるまで換気するもので、単なる開閉可能な窓や前記ハッチであってもよいし、ファンを設けて強制排気してもよい。
【0019】
[自動制御盤]
自動制御盤9は、コンピュータ構成からなって後述の使用法に従ってスチーム管3およびボイラー装置7と、ローリング式プレス装置4とを自動制御する処理部9aと、操作パネルに設けられて作動状態を外部表示するモニター部9bと、作動データや履歴を記録する記録装置9cと操作スイッチ9dとを有している。
【0020】
[単板製造機]
単板製造機21は、蒸気・加圧装置2で加工処理された丸太Wをカッターで剥いで、角材や単板に製造する装置である。
上記丸太Wから裁断された角材は二通りに選別ができる。
一は角材の芯が丸太の芯を中心にした「芯もち」であって、丸太一本から一本の角材や単板しか採れない。
【0021】
二は丸太Wから複数本採る「ヘタ」であって、木目が半円形のものや斜め縦に並んだもの、縦水平に並んだものなどであり、複数の角材やフローリング材などの単板が採れる。
なお、角材ないし単板は用途に応じて任意の厚みに設定することができ、またフローリング材などに用いる板材の場合は更に厚みを薄く設定することができ、木材の種類や用途に応じて適宜寸法とすることができる。
【0022】
[使用法]
以下に、木材硬質加工装置1の使用法について説明する(図4参照)。
軟質材の杉や檜の生木を、裁断機11で、例えば20,000mm間隔に切断する。
次いで、切断した生木を切削機12で、直径を揃えて、上下同径寸法の円柱状に削り揃えた丸太Wにする。
【0023】
前記丸太Wを蒸気・加圧装置2のハウジング10内に搬入する。
即ち、ハウジング10内のローリング式プレス装置4に設けられた上下一対の圧力盤4a、4bの間に、丸太Wをほぼ均等に並べて挟み入れる。
ここで上下の圧力盤4a、4bは平行面を形成しており、その間に並べる丸太Wは同一直径のものを揃える。
【0024】
前記ボイラー装置7からスチーム管3を通って高温蒸気をハウジング10内に供給し、丸太を蒸す。
ここで高温蒸気の設定条件の目安としては以下の通りである。
丸太の直径が、100mm以上200mm以下の場合、設定温度は110℃で、乾燥処理時間は約2時間である。
丸太の直径が、201mm以上400mm以下の場合、設定温度は115℃で、乾燥処理時間は約3時間である。
丸太の直径が、401mm以上600mm以下の場合、設定温度は120℃で、乾燥処理時間は約4時間である。
丸太の直径が、601mm以上の場合、設定温度は130℃で、乾燥処理時間は約5時間である。
【0025】
次いで、ローリング式プレス装置4を作動し、上下の圧力盤4a、4bが上下の間隔を狭めて一定の圧力をかけて挟圧し(図3(a)参照)、丸太Wを挾んだ上下の圧力盤4a、4bがゆっくりとそれぞれが反対方向となるように進退動する。
即ち、上の圧力盤4aが左に進むと下の圧力盤4bが右に進み(図3(b)参照)、上の圧力盤4aが右に退くと下の圧力盤4bが左に退く(図3(c)参照)。
これにより上下の圧力盤4a、4bに挟まれた丸太Wには、回転力が伝達されてローリングし、これと同時に、上下の圧力盤4a、4bの間隔が狭まって丸太Wを徐々に締め付ける。
【0026】
このように丸太Wが蒸されながら丸太の外周面の全面に均一な押圧力が作用して徐々に締め付けられ所定の加圧力が加えられることで、丸太Wの年輪(木目)と年輪(木目)の間のタンパク質で構成された多糖化のセルロースを熱と圧力による圧縮によって硬直させ、木目の間隔を狭めることで、丸太Wの強度を増加させることができる。
【0027】
ここで丸太への加圧力の設定条件の目安としては以下の通りである。
丸太の直径が、100mm以上200mm以下の場合、設定圧力は0〜10Paで、加圧処理時間は乾燥処理時間と同じ約2時間である。
丸太の直径が、201mm以上400mm以下の場合、設定圧力は20Paで、加圧処理時間は乾燥処理時間と同じ約3時間である。
丸太の直径が、401mm以上600mm以下の場合、設定圧力は30Paで、加圧処理時間は乾燥処理時間と同じ約4時間である。
丸太の直径が、601mm以上の場合、設定圧力は30〜50Paで、加圧処理時間は乾燥処理時間と同じ約5時間である。
ここで前記設定圧力は、0から徐々に加圧するもので、乾燥処理時間の中で均等な割合で徐々に加圧を進めて、処理時間の最終時の近くで設定圧力がMAX値となるように設定される。
【0028】
その後、ハウジング10内の温度が徐々に常温に戻される。
そして、丸太Wを挾んでいた上下の圧力盤4a、4bの上下の間隔が広がり、前記丸太Wの締付がゆるむので、上下の圧力盤4a、4bから処理後の丸太Wを抜き取り、図示しない台車に乗せてハウジング10の外へと搬送する。
【0029】
丸太Wの温度が40〜60℃程度に下がってから、ハウジング20のハッチを開き、台車から丸太Wを下ろして単板製造機21に移す。
上記丸太Wは、単板製造機21のカッターにより、容易に単板に加工される。
これにより、全方位協力耐震構造の合板用の単板が得られる。
【0030】
[強度比較測定値表]
杉材の丸太についてFFTアナライザーを用いた加工処理前と加工処理後の丸太のヤング係数(曲げ)の測定結果は以下の通りである。
試験材料は、南東北産(白石)の杉丸太(直径500mm、長さ2000mm)南向間伐材(収縮平均率=10%)、圧縮所要時間約5時間
[ヤング係数表(tf7/cm)]
試験丸太杉材1 加圧処理前52.91 加圧処理後78.15
試験丸太杉材2 加圧処理前45.54 加圧処理後75.29
試験丸太杉材3 加圧処理前47.63 加圧処理後76.37
試験丸太杉材4 加圧処理前51.48 加圧処理後78.23
試験丸太杉材5 加圧処理前49.23 加圧処理後76.86
加圧処理前平均値49.358 加圧処理後平均値76.98
これによって、軟質な杉材であっても、木材総覧(全国木材共同組合連合会)による一般的な杉の曲げヤング係数の平均値の上限である75を超えて硬質であることが確認できた。
【実施例2】
【0031】
上記実施例では、蒸気・加圧装置2で加工処理された丸太Wを単板製造機21で角材や単板にする場合を例示したが、その間に低温蒸気(真空蒸気)装置20内に入れて、2度蒸しする工程を加えた木材硬質加工装置1の実施例2を示す(図5および図6参照)
【0032】
[低温蒸気装置]
低温蒸気(真空蒸気)装置20は、本実施例では、真空状態で、低温(40〜95℃)により前記丸太を蒸す装置であり、丸太Wの二度蒸しに使用される。
この低温蒸気装置20は、前記ハウジング10内に設けられて、前記圧力盤で挟持された丸太を低温蒸気で蒸すものであってもよいし、あるいは外部に別体に設けられるものであってもよい。
【0033】
[使用法]
本実施例2では、図6に示すように、ローリング式プレス装置4を作動し、丸太Wを高温蒸気で蒸し、上下の圧力盤4a、4bで丸太Wを加圧し圧縮するまでは、同一である。
その後、ハウジング10内の温度が徐々に常温に戻される。
前記処理後の丸太Wは一旦、常温に戻されてから、次に、低温蒸気(真空蒸気)装置20内に入れて、低温(40〜95℃)で蒸される。
【0034】
このように丸太Wを高温と低温で2度蒸しすることにより、先に高温で締められた丸太Wの径が低温蒸気で蒸されるため、元の径に戻ることが防止され、また、単板への切削加工がしやすくなる。
上記丸太Wは、単板製造機21のカッターにより、単板に加工され、前記実施例1と同様に処理される。
本実施例2で得られた丸太についてFFTアナライザーを用いた加工処理前と加工処理後の丸太のヤング係数(曲げ)の測定を行ったが、前記実施例1と同様の結果が得られ、一般的な杉の曲げヤング係数の平均値の上限である75を超えて硬質であることが確認できた。
【0035】
上記実施例1および2で得られた単板を用いた応用品としての合板の特徴は以下の通りである。
(1)「内・外壁材」 曲げ・引っ張り・強度が高まり反りによる狂いはなくなる。また密度が厚くなり断熱劾果が高まり保温材にもなる。
(2)「天井板」 曲げ・引っ張り強度が高まり、天井板が反りによる狂いがなくなる。
(3)「フローリング材」 表面が堅く少々の物を落としても傷が付きにくい。
(4)「集成材」 柱・梁・桁・(ピアノ線入り柱・梁・等々〉
(5)「建具・家具材」 反りの狂いの発生しにくい強化材料となる。
【0036】
上記実施例に示したように、木種の生産地(育成地)によって特に沖縄や九州など高温地方の杉や檜は成長が早いだけ軟質で本州の材木と比較すると木質が必要以上に、やわらかく特に曲げの強度が明らかに差が大きく家屋の建築資材としては使用しにくいものが、前記構成により年輪(木目)と年輪(本目)の間隔を狭め木質の密度を高めることで曲げの強度の大幅な向上を図ることが確認できた。
【0037】
また、前記のようにして得られた単板を5枚一体に重ね合わせて全方位強力耐震構造合板を製造することができる。
即ち、上記合板は、1層目に縦木目の前記単板を用い、2層目を右に45度傾斜する斜め木目の前記単板を用い、3層目に横木目の前記単板を用い、4層目に左に45度傾斜する斜め木目の前記単板を用い、5層目に縦木目の前記単板を用いて構成される。
そして、前記5層の各単板に接着剤の一例としてボンドが塗布され、加圧装置の容量に合わせて合板の枚数を重ね、約30Paの加重をかけて前記ボンドが乾燥するまで加圧装置にかけておくことで、全方位強力耐震構造合板が得られる。
【実施例3】
【0038】
前記実施例では、蒸気・加圧装置2として、ローリング式プレス装置を用いた場合を例示したが、二重莢単管51を有する蒸気・加圧真空窯50を用いてもよい。
この蒸気・加圧真空窯50は、図7に示すように略円筒形からなっており、内部に支持手段55によって略等間隔に保持された複数(図示例では9つ)の二重莢単管51を内蔵している。
【0039】
二重莢単管51は、図8に示すように、ステンレス製のメッシュからなる筒(莢管)の内管52の外側にステンレス鋼板からなる外管53が外嵌した構成からなっている。
この二重莢単管51は、後述のように、内部に収納する丸太W’との間隔Lの長さが重要となる。
即ち、二重莢単管51(内管52)内に収納する加工処理用の丸太W’(本実施例では丸太の外皮を剥いだ生杉丸太または板材でもよい)が、直径が約30cm以内、長さが約4m以内の場合に、二重莢単管51の開口の直径は、前記丸太W’の太さの余裕をみて35cm以内に設定する必要がある。
【0040】
蒸気・加圧真空窯50は、図9に示すように、ハッチHを有するハウジング50A内に高温蒸気を噴霧させる高温蒸気供給手段としてスチーム管63およびこれに接続されたボイラー装置67と、加圧供給手段としての加圧管用の空気ノズル62と、二重莢単管51を載置する台車60と、台車走行用のレール61と、ハウジング50A内の圧力を調整する圧力調整弁65と、これらを制御する自動制御盤69とを有している。
【0041】
ここで、前記ボイラー装置67によるスチーム管63からの蒸気による蒸気・加圧真空窯50内の上昇温度はマックスで120℃に設定されている。
同様に、加圧管用の空気ノズル62による加圧はマックスで30気圧に設定されている。
【0042】
蒸気・加圧真空窯50の使用法は、二重莢単管51の内管52内に杉の丸太W’を挿入する。
挿入後に、ハッチHを閉じて蒸気・加圧真空窯50を密封し、前記スチーム管63からの蒸気で蒸して徐々に窯内の温度を上昇させ、同時に空気ノズル62により加圧を加える。
【0043】
本実施例では、蒸気温度が100℃以上に達してから約30分間(木質によって適宜増減しうる)加熱および加圧し、終了後に、前記窯の中の温度が安全な温度(火傷防止温度)まで下げた後に、前記ハッチHを開き、台車60を外に出して、硬化処理完了された丸太W’を二重莢単管51からとりだす。
【0044】
上記処理により、蒸気に蒸されながら徐々に加圧された杉の丸太W’の内面の年輪の木目と木目の間にセルロースで構成された細胞がつぶされ年輪と年輪の間隔が狭まれ硬質化される。
本実施例3で得られた丸太についてFFTアナライザーを用いた加工処理前と加工処理後の丸太のヤング係数(曲げ)の測定を行ったが、前記実施例1、2と同様の結果が得られ、一般的な杉の曲げヤング係数の平均値の上限である75を超えて硬質であることが確認できた。
【0045】
また、これにより硬化処理完了された丸太W’は、二重莢単管51を使用せずに蒸気・加圧真空窯50で処理した場合に比べて、節々の凹凸が少なくなり、また丸太W’の左右の曲がり少なく、更に、木目と木目の間が均等に圧縮されるという効果を奏することができる。
【0046】
但し、上記効果は、杉の丸太W’と内管52との間隔Lを5cm未満とすることで実現され、前記間隔Lが5cm以上開くと、上記の効果が得られなくなることが実験上、確認された。
図10は実施例3の木材硬質加工処理の手順を示すブロック図であり、前記実施例1に準じるので、同一構成についてはその説明を省略する。
この場合、実施例2と同様に2度蒸しする工程を加えてもよい。
【0047】
なお、前記各実施例での加工処理の設定条件は一例であって、杉や檜の植林地における気象条件や、自然環境または山並みの傾斜地か否か、東西南北の向き、日照時間、雨量、風などの様々な条件によって木質の硬さや色素などに差異が生じるので、それらに応じて、実験的に最適値に調整することが望ましい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1の木材硬質加工装置を示すブロック図である。
【図2】蒸気・加圧装置の実施例を示す模式図である。
【図3】ローリング式プレス装置の作動を示す模式図であって(a)は丸太を装着する状態を示す図、(b)丸太を回転しながら加圧する状態の図、(c)同反対方向に回転しながら加圧する状態の図である。
【図4】同加工処理のプロセスを示すフローチャートである。
【図5】実施例2の木材硬質加工装置を示すブロック図である。
【図6】同加工処理のプロセスを示すフローチャートである。
【図7】実施例3の蒸気・加圧真空窯の内部を示す説明図である。
【図8】二重莢単管の断面図である。
【図9】蒸気・加圧真空窯の側面から見た説明図である。
【図10】実施例3の加工処理のプロセスを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 木材硬質加工装置
2 蒸気・加圧装置
3 スチーム管
4 ローリング式プレス装置
4a、4b 圧力盤
5 圧力調整弁
6 自動制御盤
7 ボイラー装置
8 排気部
9 自動制御盤
9a 処理部
9b モニター部
9c 記録装置
9d 操作スイッチ
10 ハウジング
11 裁断機
12 切削機
20 低温蒸気装置
21 単板製造機
W、W’丸太
50 蒸気・加圧真空窯
51 二重莢単管
52 内管
53 外管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を蒸気・加圧装置により蒸気で蒸しながら加圧する木材硬質加工装置において、
蒸気・加圧装置が、該蒸気・加圧装置のハウジング内に高温蒸気を供給する高温蒸気供給手段と、上記ハウジング内で同一径の円柱状の丸太を挟圧するローリング式プレス装置とを有しており、
該ローリング式プレス装置が、
前記ハウジング内に設けられた上下一対の圧力盤と、
該上下一対の圧力盤の上下の間隔を調整して同一径の円柱状の丸太を挟圧する加圧手段と、
前記丸太を挟圧した状態で前記上下一対の圧力盤を平行を維持しながらそれぞれ逆方向に移動させて前記丸太を回転させる移動手段と、
ハウジング内を常温に戻す空冷手段とを備えていることを特徴とする木材硬質加工装置。
【請求項2】
蒸気・加圧装置のハウジング内に低温蒸気を供給する低温蒸気手段を備えており、高温蒸気で蒸されると共に加圧処理された丸太を常温に戻してから低温蒸気で蒸すことを特徴とする請求項1に記載の木材硬質加工装置。
【請求項3】
蒸気・加圧装置と別体に低温蒸気を供給する低温蒸気装置を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の木材硬質加工装置。
【請求項4】
木材を蒸気・加圧装置により蒸気で蒸しながら加圧する木材硬質加工装置において、
蒸気・加圧装置が、該蒸気・加圧装置のハウジング内に高温蒸気および加圧を供給する高温蒸気・加圧供給手段と、
上記ハウジング内で円柱状の丸太を収納する複数の二重莢単管と、
ハウジング内を常温に戻す空冷手段とを有しており、
前記二重莢単管が、ステンレス製メッシュからなる内管にステンレス鋼板からなる外管が嵌合した構成からなっており、
内管と処理用丸太との径方向の間隔が約5cm未満に設定されていることを特徴とする木材硬質加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−58500(P2010−58500A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182908(P2009−182908)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(509239543)
【Fターム(参考)】