説明

木製容器の製造方法

【課題】損傷を最小限に抑えつつ箍が外れたりずれたりすることのない木製容器を容易に製造することができる木製容器の製造方法を提供する。
【解決手段】木片を用いて外周側面がテーパ状をなした筒状の容器本体2を形成し、外周側面に凹部4を周設し、外周側面における凹部4より上方に箍を載置し、外周側面に載置された箍5の上端面5aに割りスリット22を備えた筒状の押し込み治具20の下端面20aを当接させ、押し込み治具20を下方に押圧して箍5を凹部4の位置に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木製容器の製造方法に関し、特に、外周側面がテーパ状をなした筒状の容器本体に箍を取り付けた木製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
桶や樽などの外周側面がテーパ状をなした筒状の容器本体に箍を取り付けて木製容器を製造するには、筒状に形成した容器本体の外周側面に箍を載置した後、箍をハンマーなどにより殴打して箍を所定位置まで押し下げて容器本体の外周側面に取り付けている。このような方法であると、箍の取付を行うためには熟練を要するとともに多くの労力が必要となる。
【0003】
そこで、リング状の締め輪の一部を欠切して開口し、締め輪の外周に所要高さの縦骨を放射状に、かつ、上方へ広径状に傾斜させて所要数周設し、縦骨の上端には締め輪の径より大径にして、かつ、締め輪の開口部と同一位相を一部開口した補強輪の開口端に一体にした治具を用いて、容器本体の外周側面に箍を取り付ける方法が知られている。
【0004】
この方法は、容器本体の外周側面に載置した箍の上端面に締め輪を当接させ、補強輪をプレス機によって下方に押圧することで容器本体の外周側面に箍を取り付けるものであり、短時間に箍を容器本体に取り付けることができる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0005】
ところで、木材は水分の吸収や乾燥によって膨張や収縮を繰り返すことから、木材を使用した木製容器であると容器本体が変形しやすく、箍が外れたり位置ずれが生じたりすることがある。
【0006】
これに対して、容器本体の外周側面に凹部を周設し、容器本体を中心方向に向けて圧縮している状態で箍を凹部の位置で容器本体に取り付ける方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−194703号公報
【特許文献2】特許4335972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1のように治具をプレス機によって下方に押圧することで容器本体の外周側面に箍を取り付ける方法では、所定の取付位置より更に下方へ箍を押し込んでしまうと、箍による容器本体の締め付け力が強くなりすぎて容器本体を損傷することがある。そのためプレス機の操作によって箍を取り付ける位置を正確に調整しなければならず、作業者の熟練を要する問題がある。
【0009】
また、上記特許文献2のように容器本体を中心方向に向けて圧縮している状態で箍を取り付ける上記の方法では、容器本体の外径が箍の内径より十分小さくなるまで容器本体を圧縮しなけれは箍を凹部に取り付けることができず、そのため、容器本体に対して大きな圧縮力を与える必要があり、容器本体を損傷しやすいという問題がある。
【0010】
本発明は、上記の問題を考慮してなされたものであり、損傷を最小限に抑えつつ箍が外れたりずれたりすることのない木製容器を容易に製造することができる木製容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る木製容器の製造方法は、木片を用いて外周側面がテーパ状をなした筒状の容器本体を形成し、前記外周側面に凹部を周設し、前記外周側面における前記凹部より上方に箍を載置し、前記外周側面に載置された前記箍の上端面に割りスリットを備えた筒状の押し込み治具の下端面を当接させ、前記押し込み治具を下方に押圧して前記箍を前記凹部の位置に取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る木製容器の製造方法では、損傷を最小限に抑えつつ箍が外れたりずれたりすることのない木製容器を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造される木製容器の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る製造方法を示すフロー図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態は、木製容器1として図1に例示するような桶を製造する方法について説明する。この木製容器1は、複数の木片を用いて外周側面がテーパ状をなした筒状に形成された容器本体2と、容器本体2の小径側端部2aの内側に嵌め入れられた底板3と、容器本体2の外周側面に周方向全周にわたって設けられた凹部4の位置に取り付けられたリング状の箍5とを備える。
【0016】
次に、このような木製容器1を製造する方法について、図2及び図3を参照して説明する。
【0017】
木製容器1を製造するには、まず、所定形状に木片を切り出し、その後、接着剤や合釘を用いて周方向に隣接する板片同士が密着するように複数の木片を組み付けて外周側面がテーパ状をなした筒状の容器本体2を作製する(ステップS1)。
【0018】
そして、例えば機械加工によって筒状に容器本体2の外周側面に周方向全周にわたって凹部4を周設した後(ステップS2)、図3(a)のように容器本体2の小径側端部2aを上方に向けてプレス機の台座10に載置する(ステップS3)。
【0019】
次いで、プレス機の台座10に載置した容器本体2の小径側端部2aからリング状の箍5を挿通して、容器本体2の外周側面に箍5を載置する。ここで、箍5の内径が容器本体2に設けられた凹部4の位置の外径より小さいため、箍5を容器本体2の外周側面に載置すると、図3(b)に示すように容器本体2の外周側面における凹部4より上方に箍5が載置される(ステップS4)。
【0020】
次いで、図3(c)に示すように容器本体2の外周側面に載置された箍5の上端面5aに割りスリット22を備えた筒状の押し込み治具20の下端面20aを当接させた後、不図示の駆動源に取り付けられ上下動可能に設けられたプレス機の押圧板12によって、押し込み治具20を下方に押圧する(ステップS5)。
【0021】
このように押圧板12が押し込み治具20を下方に押圧することで、箍5は押し込み治具20によって下方に押圧され、容器本体2の外径が箍5の内径と等しくなるまで、箍5が容器本体2を径方向内方に加圧して縮径させながら下方へ移動する。
【0022】
そして、図3(d)に示すように箍5が容器本体2の外周側面に設けられた凹部4の位置まで到達すると、箍5が凹部4に嵌り込むことで凹部4の位置に取り付けられる(ステップS6)。この時、上記のように箍5の内径が凹部4の外径より小さいため、箍5が容器本体2を締めつける。
【0023】
なお、図1に例示する木製容器1のように、容器本体2の外周側面に箍5を取り付けるための凹部4を2箇所設ける場合、まず、上記したステップS1〜ステップS6を行って容器本体2の外周側面に1箇所目の凹部4を設け、その凹部4に箍5を取り付けた後、再び、上記したステップS2〜S6を繰り返すことで2箇所目の凹部4に箍5を取り付けることができる。
【0024】
そして、容器本体2の外周側面に設けた凹部4への箍5の取付が終了すると、容器本体2に底板3を圧入することで容器本体2に底板3を取り付ける(ステップS7)。
【0025】
以上のように、本実施形態の製造方法では、容器本体2の外周側面に設けられた凹部4の位置に箍5が取り付けられているため、箍5が木片の水分吸収や乾燥によって容器本体が変形することがあっても、箍が外れたり位置ずれが生じたりすることがない。
【0026】
また、本実施形態の製造方法では、箍5の上端面5aに当接する押し込み治具をプレス機によって押圧することで、短時間かつ簡単に箍5を凹部4の位置に取り付けることができる。しかも、箍5が容器本体2の外周側面に設けられた凹部4の位置に到達すると、箍5が凹部4に嵌り込み、箍5が所定の取付位置に到達したことを作業者が容易に把握することができるため、作業者の熟練を要することなく簡単に箍5を容器本体2の所定位置に取り付けることができ、歩留まりの改善及び量産化が極めて容易となる。
【0027】
更にまた、本実施形態の製造方法では、箍5を凹部4の位置に取り付ける際に、容器本体2は、その外径が箍5の内径と等しくなるまでしか圧縮されず箍5の内径より小さくなるまで圧縮されることがない。そのため、容器本体2に対して縮径方向に作用する圧縮力(負荷力)を必要最小限に抑えて容器本体2の損傷を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0028】
1…木製容器 2…容器本体 2a…小径側端部
3…底板 4…凹部 5…箍
5a…上端面 10…台座 12…押圧板
20…押し込み治具 20a…下端面 22…スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木片を用いて外周側面がテーパ状をなした筒状の容器本体を形成し、
前記外周側面に凹部を周設し、
前記外周側面における前記凹部より上方に箍を載置し、
前記外周側面に載置された前記箍の上端面に割りスリットを備えた筒状の押し込み治具の下端面を当接させ、前記押し込み治具を下方に押圧して前記箍を前記凹部の位置に取り付けることを特徴とする木製容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−91450(P2012−91450A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242270(P2010−242270)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(399033566)ダイワ産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】