説明

木製防火ドアー

【課題】主要構成材料が木材及び木質材料からなり、国土交通省の定める特定防火設備の基準を十分クリアーする性能を持ち、低コストで量産可能なフラッシュ構造の軽量な木製防火ドアーを提供することを目的とする。
【解決手段】芯材2によって骨組み構造が形成されるフラッシュ構造の木製防火ドアー10であって、前記骨組みの所定の空間に、ハニカム状のコア材7が充填され、該コア材の表面及び裏面に和紙6が貼り付けられ、前記両側の和紙の表面にファイバーボード3が貼り付けられ、該ファイバーボードの表面に合板4が貼り付けられ、該合板の表面に和紙5が貼り付けられ、該和紙の表面に仕上げ材1が貼り付けられており、前記コア材、和紙、ファイバーボード、合板及び仕上げ材がいずれもホウ素系化合物を含浸させることにより難燃化処理されていることを特徴とする木製防火ドアー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フラッシュ構造の木製防火ドアーに関する。
【背景技術】
【0002】
防火ドアーは、平成2年までは鋼製しか認められなかったが、法改正により木製または木質素材であっても建築基準法に定める燃焼試験の基準に合格すれば防火戸として認められることとなった。
【0003】
そこで、色々な木製防火戸が開発されているが、それらの多くは木製と称していても、その実態は木材または木質素材のみで構成されているわけではなく、鋼板や石膏ボード等の無機質ボードとの複合製品(ハイブリッド)が殆どである。その理由は木材または木質材だけでは防火ドアーに要求される防火性能を満たすことが出来ないことによる。
【0004】
そこで例えば、特許文献1には主に木質材料を用い、所定の耐火性能を有する木製防火扉に関する技術が開示されている。以下に、この木製防火扉について述べる。
【0005】
図3は、この木製防火扉の概略斜視図である。図3に示すように木製防火扉60は、複数の桐部材21〜23を積層した桐積層板24と、その四方に設けられた補強部材25とからなる芯材と、芯材の表面に接合された化粧合板30とを具備する。
【0006】
桐積層板24は、木目方向(繊維方向)が長手方向に一致した桐部材21、22との間に、桐部材21、22の木目方向と直交する方向である桐部材23を挟持して積層した3層クロス張り構造である。なお、この桐積層板24を構成する桐部材21〜23は、それぞれ所定の大きさに形成されたものであってもよいし、短い寸法のものを複数枚継ぎ合わせたものであってもよい。このように桐部材21〜23の木目方向が略直交するようにクロス張りすることによって形成された桐積層板24は効果的に反りの発生を防止することができる。
【0007】
また、桐積層板24の上下左右の端面には、桐材より堅い木材、例えば合成合板からなる補強部材25が設けられている。このように、桐積層板24の四方を補強部材25で囲って芯材としたので、反りをより確実に防止することができる。なお、補強部材25の厚さ(扉の面方向の寸法)は、木製防火扉の防火性能によって異なるが、60分防火試験を満足するためには、150mm厚程度のものが必要となる。
【0008】
さらに、本木製防火扉60においては、補強部材25の扉端面側の表面には、発泡材40が長手方向に亘って埋め込まれるように設けられており、発泡材40を覆うように補強部材25の扉端面側表面には大手材又は横手材となる化粧材50が設けられている。
【0009】
ここで、発泡材40としては、例えば、230℃程度で厚さ方向に10倍程度に膨張するグラファイト系発泡材を用いればよく、これにより間口との隙間を完全に塞ぐことができ、煙の流れを防止すると共に延焼を防止することができる。
【0010】
また、化粧合板30は、芯材の表面に接合されており、本木製防火扉では、厚さ4mmの化粧合板を用いられている。このような芯材と化粧合板30との間には、本木製防火扉では、両面に耐火接着剤からなる耐火接着剤層を有する少なくとも1枚の紙からなる燃焼遅延部材100が設けられている。
【特許文献1】特開2005−2661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記木製防火扉では、所定の耐火性能が得られたとしても依然としてその重量が扉としては軽いものとは言えなかった。また、使用されている桐材は高価であり生産量も限られるので量産には適さない材料である。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、主要構成材料が木材及び木質材料からなり、国土交通省の定める特定防火設備の基準を十分クリアーする性能を持ち、低コストで量産可能なフラッシュ構造の軽量な木製防火ドアーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の目的を達成するため、以下(1)〜(5)の構成を備えるものである。
【0014】
(1)芯材によって骨組み構造が形成されるフラッシュ構造の木製防火ドアーであって、
前記骨組みの所定の空間に、ハニカム状のコア材が充填され、該コア材の表面及び裏面に和紙が貼り付けられ、前記両側の和紙の表面にファイバーボードが貼り付けられ、該ファイバーボードの表面に合板が貼り付けられ、該合板の表面に和紙が貼り付けられ、該和紙の表面に仕上げ材が貼り付けられており、
前記コア材、和紙、ファイバーボード、合板及び仕上げ材がいずれもホウ素系化合物を含浸させることにより難燃化処理されていることを特徴とする木製防火ドアー。
【0015】
(2)前記コア材が、ペーパーコアであることを特徴とする前記(1)記載の木製防火ドアー。
【0016】
(3)前記ホウ素系化合物による難燃化処理が、ホウ素またはホウ酸による難燃化処理であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の木製防火ドアー。
【0017】
(4)前記和紙が洋紙であるか、またはこれを有しないことを特徴とする前記(1)または(2)記載の木製防火ドアー。
【0018】
(5)前記仕上げ材が、前記難燃化処理がなされていないオレフィンシート、または前記難燃化処理がなされた天然木挽き板か天然木突き板であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の木製防火ドアー。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成を有することで、フラッシュ構造でありながら防火性能に優れた軽量な木製防火ドアーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0021】
図1は本発明の木製防火ドアーの縦断面図である。また、図2は本防火ドアーの基本構造を示す図である。
【0022】
本願の防火ドアーの骨組み構造は、図1、図2に示されるように芯材2によって形成され、芯材間に形成される空間はコア材7によって充填されている。このコア材7の外側は、まず和紙6によってサンドイッチされ、更にその外側はファイバーボード3、合板4で覆われている。この合板の外側は、更に和紙5で被覆された後、仕上げ材1を貼り付け本実施例の木製防火ドアーは完成する。
【0023】
以下に、上記構成部材の具体的な材料、材質について以下に述べる。
【0024】
芯材5は難燃処理した杉集成材であり、一定の強度が確保できれば他の樹種でも、またLVL(Laminated Veneer Lumber)等でもよい。仕上げ材1はオレフィンシートであるが、天然木挽き板や天然木突き板等でも塗装でもよい。また、仕上げ材1がオレフィンシートの場合には難燃処理は要しない。和紙5,6は難燃処理した和紙以外の洋紙に換えてもよく、またこれを省略してもよい。また、最内層の和紙6は場合によっては省略してもよい。合板4は難燃処理したラワン合板である。ファイバーボード3は難燃処理したインシュレーションボードであり、コア材7は難燃処理したハニカム状ペーパーコアである。このハニカムの大きさによって、性能評価試験における耐火時間が変動する。
【0025】
次に、本実施例の木製防火ドアーの製作手順を以下に説明する。
【0026】
まず、各材料の難燃処理を行う。難燃処理剤としては本実施例の木製防火ドアーの場合はホウ素系薬剤を使用したが、他の薬剤、例えば燐酸系薬剤等でもよい。
【0027】
薬剤処理の方法は、芯材と枠材については、防腐、防虫処理等に広く用いられる加圧・減圧の注入法でよい。注入後所定の含水率まで乾燥させる。
【0028】
芯材以外の薬剤処理方法は単に薬剤槽に材料を投入して浸漬させるだけでよい。この場合も、浸漬後所定の含水率まで乾燥させる。
【0029】
次に、芯材を図2のように組み立て格子の間に難燃処理したコア材を充填した後、図1の順番に従ってドアー板の材料を貼り付けるが、ドアー板合板を貼った段階で接着を強固にするためプレスする。より強固にするためプレス後にドアー板合板の上からステープルを打ち込んで固定してもよい。更に、ドアー和紙を貼り付け、最後に表面材を貼り付ける。各材料の貼り付けには、耐火性のイソシアネート系接着剤を使用する。
【0030】
本実施例の木製防火ドアーを国土交通省指定の検査機関で性能評価試験を受けた結果、建築基準法に定める「防火設備」の要求耐火時間20分を超える33分の耐火時間を実現した。これにより、今後、薬剤処理の際の薬剤濃度や各部材の寸法を変化させることにより、本実施例の木製防火ドアーは建築基準法に定める「特定防火設備」の要求耐火時間60分をもクリアーできる見通しを得た。
【0031】
[薬剤含浸技術]
木材及び木質材料はその性質上燃えやすいという欠点をもち、この欠点をカバーするための不燃化、難燃化の研究や工夫は古くからなされてきた。その方法として薬剤を木材や木質材料に含浸させる方法がありその薬剤も種々試みられてきたが技術、実用の両面で確立された方法は未だ無いのが実情である。薬剤のなかでもホウ素、ホウ酸等のホウ酸化合物についてはその防火剤としての性質が古くから知られていたが、水に対する溶解度が低く、水溶液にして木材に含浸させることが困難であった。
【0032】
しかし、最近になって研究が進み、水に対する溶解度を高めることが可能とされるようになった(特開2005−112700)。本発明も木材及び木質材料にホウ素系化合物を高濃度に含浸させる技術が基本となっている。この技術的な根拠は、特開2005−288956、特開2007−90839に開示されているものである。
【0033】
本発明の木製防火戸は鋼製や無機質ボードとの複合製品(ハイブリッド)に比べ以下のような特長を持つ。
【0034】
木材と木質素材で構成されたフラッシュ構造により軽量である。例えば、本実施例のドアーの外形寸法が高さ2200mm×幅840mm×厚さ40mmの場合、その重量は30〜40Kgとなる。難燃処理されたハニカム状ペーパーコアにより火災の際に戸の裏面温度の急上昇が見られず人命の安全が確保される。また、軽量であるが防火性能に優れ、十分に国土交通省の基準を満足することができる。更に、表面材を選ばず天然木挽き板や天然木突き板、オレフィンシート等なんでも可であり塗装も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例の木製防火ドアーの内部構造を示す縦断面図
【図2】実施例の木製防火ドアーの骨組み構造を示す図
【図3】従来の木製防火扉の内部構造を示す図
【符号の説明】
【0036】
1 仕上げ材
2 芯材
3 ファイバーボード
4 合板
5,6 和紙
7 コア材
10 木製防火ドアー
20 芯材
21,22,23 桐部材
24 桐積層板
25 補強部材
30 化粧合板
40 発泡材
50 化粧板
60 木製防火扉
100 燃焼遅延部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材によって骨組み構造が形成されるフラッシュ構造の木製防火ドアーであって、
前記骨組みの所定の空間に、ハニカム状のコア材が充填され、該コア材の表面及び裏面に和紙が貼り付けられ、前記両側の和紙の表面にファイバーボードが貼り付けられ、該ファイバーボードの表面に合板が貼り付けられ、該合板の表面に和紙が貼り付けられ、該和紙の表面に仕上げ材が貼り付けられており、
前記コア材、和紙、ファイバーボード、合板及び仕上げ材がいずれもホウ素系化合物を含浸させることにより難燃化処理されていることを特徴とする木製防火ドアー。
【請求項2】
前記コア材が、ペーパーコアであることを特徴とする請求項1記載の木製防火ドアー。
【請求項3】
前記ホウ素系化合物による難燃化処理が、ホウ素またはホウ酸による難燃化処理であることを特徴とする請求項1または2記載の木製防火ドアー。
【請求項4】
前記和紙が洋紙であるか、またはこれを有しないことを特徴とする請求項1または2記載の木製防火ドアー。
【請求項5】
前記仕上げ材が、前記難燃化処理がなされていないオレフィンシート、または前記難燃化処理がなされた天然木挽き板か天然木突き板であることを特徴とする請求項1または2記載の木製防火ドアー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−106553(P2010−106553A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279680(P2008−279680)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(508325706)株式会社協林 (2)
【Fターム(参考)】