説明

木質パネルおよび当該木質パネルの製造方法

【課題】耐久性の向上と強度の向上とを両立させ、雨水や日射による劣化および風荷重による曲げ破壊や反りを回避し、仮囲いに利用できる木質パネルを提供すること。
【解決手段】繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板にフェノール樹脂を含浸させるとともに、加熱プレスすることにより形成された樹脂強化部を表層に配置することによって、耐久性と強度とが向上し、仮囲いに利用できるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設期間中、建設現場と外部とを遮断するために現場周囲に設置される仮囲いに利用できる木質パネルおよび当該木質パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設現場などの仮囲いには、厚み1.2mmから1.6mm、幅500〜540mm、高さ2000〜4000mmの鋼製のパネルが用いられており、木質パネルはほとんど利用されていない。
【0003】
木質パネルは、スギなどの地域材の有効利用、鋼製のパネルの代替によるCO2削減など多くのメリットがあるが、雨水や日射による劣化(耐久性)や風荷重による曲げ破壊や反りなどの課題があった。特に、活用が強く求められているスギは軟質のため、大きな課題となっていた。
【0004】
ところで、木質パネルの耐久性処理としては、樹脂の含浸、表面への塗布に関して様々な材料、積層方法が提案・工夫されている(たとえば、特許文献1〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−229307号公報
【特許文献2】特開2002−256684号公報
【特許文献3】特開2002−19026号公報
【特許文献4】特開平9−327803号公報
【特許文献5】特開平9−60437号公報
【特許文献6】特開平6−134707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、対象が木製玄関ドアや床材であり、耐久性の向上と強度の向上の両立を図ったものは提案されていない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐久性の向上と強度の向上とを両立させ、雨水や日射による劣化および風荷重による曲げ破壊や反りを回避し、仮囲いに利用できる木質パネルおよび当該木質パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板に合成樹脂を含浸させたことを特徴とする。含浸させる合成樹脂は、たとえば、取扱性やコストの面からフェノール樹脂が好ましいが、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など含浸性と硬化性の良好な樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂は、水溶性であっても油溶性であってもよい。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、加熱プレスすることにより形成された樹脂強化部を表層に設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記単板がスギの単板であることを特徴とする。
【0011】
本発明は、繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板に合成樹脂を含浸させることを特徴とする。含浸させる合成樹脂は、たとえば、取扱性やコストの面からフェノール樹脂が好ましいが、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など含浸性と硬化性の良好な樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂は、水溶性であっても油溶性であってもよい。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、合成樹脂を含浸させた単板積層材あるいは合板を加熱プレスすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる木質パネルは、単板積層材あるいは合板に合成樹脂を含浸させることにより、耐久性と強度とを向上させたので、仮囲いに利用できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である木質パネルを利用した仮囲いを建設現場側から見た図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態である木質パネルの性能を定性的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる木質パネルおよび当該木質パネルの製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態である木質パネルを利用した仮囲いを建設現場側から見た図である。本発明の実施の形態である木質パネル1は、建設期間中、建設現場と外部とを遮断するために現場周囲に設置する仮囲いに利用されるものであって、図1に示すように、現場側に架設した単管2をパネル支持材とし、隙間なく貼設される。貼設にあたり、木質パネル間の隙間をなくし、組立構造を安定化するために木質パネルの側面に実矧ぎ加工がされてもよい。
【0017】
建設現場の周囲に設置する仮囲いに利用される木質パネル1は、高さが2000〜4000mm(3000mmのものが多い)と大型となるため、繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材(LVL(Laminated Veneer Lumber))あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板に合成樹脂を含浸させたものが用いられる。含浸させる合成樹脂は、たとえば、取扱性やコストの面からフェノール樹脂が好ましいが、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など含浸性と硬化性の良好な樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂は、水溶性であっても油溶性であってもよい。
【0018】
単板積層材および合板は、乾燥単板を用いることにより含水率が均一化され、同時に節などの欠点部分も分散されるため、寸法の安定性と精度に優れており、さらに、合成樹脂を含浸させることにより、耐久性と強度を向上させている。
【0019】
ここで用いられる単板の厚みは、3.2mm程度であり、単板積層材あるいは合板における単板の積層枚数は、木質パネル1の曲げに対する強度・剛性、重量(20kg以下が好ましい)などから7〜10枚となり、木質パネル1の厚みは、20〜30mmとなる。
【0020】
さらに、合成樹脂を含浸させた単板積層材あるいは合板を加熱プレスすることにより、木質パネル1の表層に樹脂強化部(図示せず)を設けることが好ましい。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態である木質パネルの性能を定性的に示した図である。図2に示すように、スギ合板にフェノール樹脂を含浸させた木質パネル1は、少ないコストで耐久性および強度・剛性が向上する一方、フェノール樹脂を含浸させたスギ合板を加熱プレス(圧縮率:10〜20%)することにより、表層に樹脂強化部を設けた木質パネル1は、単板積層材あるいは合板にフェノール樹脂を含浸させた木質パネル1よりもコストがかかるものの、耐久性および強度・剛性がさらに向上する。
【0022】
上述した実施の形態である木質パネルは、単板積層材あるいは合板(無処理)よりも耐久性および強度・剛性が向上するので、建設現場の周囲に設置する仮囲いに利用できる。
【0023】
そして、本実施の形態である木質パネルを仮囲いに利用すれば、地域材を有効利用でき、CO2の削減に資することができる。更に、単板をスギの単板とすれば、花粉症の対策にもなる。
【0024】
また、本実施の形態である木質パネル1を仮囲いに利用すれば、都市建設現場のイメージアップにも資することになる。
【符号の説明】
【0025】
1 木質パネル
2 単管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板に合成樹脂を含浸させたことを特徴とする木質パネル。
【請求項2】
加熱プレスすることにより形成された樹脂強化部を表層に設けたことを特徴とする請求項1に記載の木質パネル。
【請求項3】
前記単板がスギの単板であることを特徴とする請求項1または2に記載の木質パネル。
【請求項4】
繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板に合成樹脂を含浸させることを特徴とする木質パネルの製造方法。
【請求項5】
合成樹脂を含浸させた単板積層材あるいは合板を加熱プレスすることを特徴とする請求項4に記載の木質パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−173193(P2010−173193A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18768(P2009−18768)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願「経済産業省中部経済産業局 平成20年度地域イノベーション創出研究開発事業(革新的加工技術による高機能ハイブリット木質部材の実用化)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】