木質パネルの取付構造
【課題】調湿性能をさらに向上できる木質パネルの取付構造を提供する。
【解決手段】本発明は、屋内壁面Wから離間した状態で屋内壁面Wに沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造を対象とする。隣り合う木質パネル1,1間に隙間が形成されるとともに、その隙間が木質パネル1の表面側および裏面側間を連通する通気路4として構成される。通気路4は、パネル表面側に開口する表面側開口部41と、パネル裏面側に開口する裏面側開口部43と、表面側開口部および裏面側開口部間を連通する主要部42とを有する。表面側開口部41が裏面側開口部43に対し木質パネル1の並列方向に位置をずらせて配置され、通気路4の主要部42が、表面側開口部41側から裏面側開口部43側に向かうに従って屋内壁面Wに近づくように傾斜している。
【解決手段】本発明は、屋内壁面Wから離間した状態で屋内壁面Wに沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造を対象とする。隣り合う木質パネル1,1間に隙間が形成されるとともに、その隙間が木質パネル1の表面側および裏面側間を連通する通気路4として構成される。通気路4は、パネル表面側に開口する表面側開口部41と、パネル裏面側に開口する裏面側開口部43と、表面側開口部および裏面側開口部間を連通する主要部42とを有する。表面側開口部41が裏面側開口部43に対し木質パネル1の並列方向に位置をずらせて配置され、通気路4の主要部42が、表面側開口部41側から裏面側開口部43側に向かうに従って屋内壁面Wに近づくように傾斜している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般家屋等の屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造およびその構造に適用可能な木質パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅における室内の壁面構造としては、壁面に壁紙を貼り付けたり、木質パネル(化粧パネル)を複数並べて貼り付けたものが周知である。
【0003】
特許文献1に示すように、木質パネルを用いるものは、木材自身が保有する湿度調整機能(調湿機能)によって、快適な居住環境を得ることができる。
【0004】
また特許文献2には、木質パネルが屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に沿って複数並べて施工された木質パネルの取付構造が開示されている。さらにこの取付構造においては、隣り合う木質パネル間に隙間を形成し、その隙間を介して、室内の空気が木質パネルの裏面側にも流通するように構成している。これにより、木質パネルの裏面側にも屋内空気を十分に接触させるようにして、調湿性能を一層向上させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−27033号
【特許文献2】特開2011−6868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、木質パネルの取付構造の技術分野においては、調湿性能をさらに向上させることができる技術の開発が望まれるところである。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、調湿性能をさらに向上させることができる木質パネルの取付構造およびその構造に適用可能な木質パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造であって、
隣り合う木質パネル間に隙間が形成されるとともに、その隙間が木質パネルの表面側および裏面側間を連通する通気路として構成され、
前記通気路は、パネル表面側に開口する表面側開口部と、パネル裏面側に開口する裏面側開口部と、前記表面側開口部および前記裏面側開口部間を連通する主要部と、を有し、
前記表面側開口部が、前記裏面側開口部に対し、木質パネルの並列方向に位置をずらせて配置され、
前記通気路の主要部が、前記表面側開口部側から前記裏面側開口部側に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜していることを特徴とする木質パネルの取付構造。
【0010】
[2]隣り合う木質パネルの対向縁部のうち一方側の木質パネルにおける対向縁部の表面側に、他方側の木質パネルに向けて延びる上あご片が設けられるとともに、他方側の木質パネルにおける対向縁部の裏面側に、一方側の木質パネルに向けて延びる下あご片が設けられ、
前記上あご片の裏側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面から遠ざかるように傾斜する裏側傾斜面が設けられるとともに、前記下あご片の表側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜する表側傾斜面が設けられ、
前記通気路の主要部が、前記上あご片の裏側傾斜面と、前記下あご片の表側傾斜面との間の隙間によって形成される前項1に記載の木質パネルの取付構造。
【0011】
[3]木質パネルは、帯板形状を有し、
木質パネルがその長さ方向を水平方向に配置した状態で上下方向に並んで配置され、
上下方向に隣り合う木質パネル間に前記通気路が形成される前項1または2に記載の木質パネルの取付構造。
【0012】
[4]木質パネルを屋内壁面に取り付けるための取付具を備え、
前記取付具は、屋内壁面に設置される壁面設置体と、その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを有し、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成された前項1〜3のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【0013】
[4a]前記パネル間設置体は、正面視において横方向を短径方向、縦方向を長径方向とする略長方形に形成されている前項4に記載の木質パネルの取付構造。
【0014】
[5]隣り合う他の木質パネルに対して縁部同士を対向させて、屋内壁面に沿って複数並べて施工される木質パネルであって、
両側縁部のうち一方側の縁部における表面側に、側方に向けて延びる上あご片が設けられるとともに、他方側の縁部における裏面側に、側方に向けて延びる下あご片が設けられ、
前記上あご片の裏側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面から遠ざかるように傾斜する裏側傾斜面が設けられるとともに、前記下あご片の表側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜する表側傾斜面が設けられたことを特徴とする木質パネル。
【発明の効果】
【0015】
発明[1]の木質パネルの取付構造によれば、木質パネルを壁面から離間した状態でかつ隣り合う木質パネル間に隙間を形成した状態に配置しているため、屋内空気が木質パネルの表裏間でスムーズに往来するようになり、木質パネルの屋内空気との接触面積を大きく確保することができる。従って、木質パネルによる屋内空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、室内の調湿性能を向上させることができる。その上さらに、隣り合う木質パネル間の隙間によって形成される通気路のうち主要部を傾斜させているため、空気が通気路内をより一層スムーズに流通するようになり、調湿性能をより一層向上させることができる。
【0016】
発明[2]の木質パネルの取付構造によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0017】
発明[3]の木質パネルの取付構造によれば、帯板状の木質パネルが上下方向に沿って並列に複数配置されるため、意匠性の高い壁面構造を形成することができる。
【0018】
発明[4]の木質パネルの取付構造によれば、、パネル間の間隔が広くなるパネル間隔離形態と、狭くなるパネル間近接形態とのいずれの形態でも施工できるため、所望の形態での施工が可能となり、汎用性を向上させることができる。
【0019】
発明[5]の木質パネルを用いれば、上記発明[1]の取付構造を確実に実現することができ、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1はこの発明の実施形態である木質パネルの取付構造が適用された室内の壁面構造を示す正面図である。
【図2】図2は実施形態の壁面構造を示す側面断面図である。
【図3A】図3Aはパネル間近接形態が採用された実施形態の壁面構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図3B】図3Bは図3Aの分解断面図である。
【図3C】図3Cは実施形態の壁面構造においてパネル間の通気路周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4A】図4Aはパネル間隔離形態が採用された実施形態の壁面構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4B】図4Bは図4Aの分解断面図である。
【図5】図5は実施形態に適用された取付具を示す斜視図である。
【図6A】図6Aは実施形態に適用された取付具を縦方向から見た状態での断面図である。
【図6B】図6Bは実施形態の取付具を横方向から見た状態での断面図である。
【図6C】図6Cは実施形態の取付具を示す正面断面図である。
【図7】図7は実施形態に適用された取付具を示す図であって、同図(a)は正面図、同図(b)は縦方向の端面図、同図(c)は裏面図、同図(d)は横方向の端面図である。
【図8】図8は実施形態に適用された木質パネルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1はこの発明の実施形態である木質パネルの取付構造が適用された室内の壁面構造を示す正面図、図2は側面断面図である。
【0022】
両図に示すように、この壁面構造は、一般住宅における室内の壁面(屋内壁面)Wに、多数の木質パネル1が取付具5を介して取り付けられている。なお以下の説明においては、室内側から壁面Wに近づいていく方向を、裏面側方向(後側方向)とし、その逆方向、つまり壁面Wから遠ざかっていく方向を、表面側方向(前側方向)として説明する。
【0023】
壁面Wは、例えば間柱や胴縁の室内側に、多数の合板が面状に並べて貼り付けられるとともに、その合板上に、多数の石膏ボードが面状に並べて貼り付けられて構成されている。
【0024】
木質パネル1は、所定の長さを有する帯板状の形状を有している。この木質パネル1は、例えば複数の木材片を接着剤を用いて再構成して作製された集成材等を加工することよって形成されている。
【0025】
図3B、図3Cおよび図8等に示すように、木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2は、その裏面側が切り欠かれることによって、表面側に上あご片21が一側方(下方)に突出するように形成されている。上あご片21の裏側の面は、上あご片21の先端側から基端側に向かうに従って、裏面側(壁面側)に近づくように傾斜する裏側傾斜面22として形成されている。
【0026】
木質パネル1の一側縁部2には、上あご片21よりも裏面側(壁面側)に、パネル長さ方向に連続して延びる切込溝24が形成されるとともに、切込溝24よりも裏面側(壁面側)に、後述する取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部25が形成されている。さらにその嵌合凸部25の先端面と裏面との間には、面取り部26が形成されている。
【0027】
なお上あご片21の先端面および嵌合凸部25の先端面は、壁面Wに対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な平坦面に形成されている。
【0028】
さらに本実施形態において、木質パネル1の一側縁部2は、上あご片21および嵌合凸部25を含むものである。さらに本実施形態において、一側縁部2の表面側は、上あご片21を含むものであり、一側縁部2の裏面側は、嵌合凸部25を含むものである。
【0029】
木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3は、その表面側が切り欠かれることによって、裏面側に下あご片31が他側方(上方)に突出するように形成されている。下あご片31の表側の面は、下あご片31の基端側から先端側に向かうに従って、裏面側(壁面側)に近づくように傾斜する表側傾斜面32として形成されている。この表側傾斜面32は、上記上あご片21の裏面側傾斜面22に対応して形成されており、後述するように、両傾斜面22,32間によって通気路4の主要部42が形成される。
【0030】
下あご片31の先端面には、パネル長さ方向に連続する切込溝34が形成され、下あご片31における切込溝34よりも裏面側の部分が、後に詳述するように取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部35として構成されている。さらに下あご片31の先端面と裏面との間には、面取り部36が形成されている。
【0031】
また木質パネル1の他側縁部における下あご片31よりも表面側には、壁面Wに対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な上あご対向面33が形成されている。
【0032】
なお下あご片31の先端面は、壁面に対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な平坦面に形成される。
【0033】
さらに本実施形態において、木質パネル1の他側縁部3は、下あご片31および上あご対向面33を含むものである。さらに本実施形態において、他側縁部3の表面側は、上あご対向面によって構成されるとともに、他側縁部3の裏面側は、嵌合凸部35を含む下あご片31によって構成されている。
【0034】
一方図5〜7に示すように、取付具5は、壁面Wに設置される壁面設置体6と、壁面設置体6の前面側(表面側)に一体に形成され、かつ隣り合う木質パネル1,1間に配置されるパネル間設置体7とを備えている。この取付具5は、例えばポリプロピレン(PP)等の硬質合成樹脂の一体成形品(射出成形品)によって構成されている。
【0035】
壁面設置体6は、図7(a)に示す正面視において上下方向に対応する横方向D1が、同図の左右方向に対応する縦方向D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0036】
またパネル間設置体7は、同図の正面視において、壁面設置体6に対しサイズが小さい略相似形に形成されている。すなわちパネル間設置体7は、横方向(図7(a)の上下方向)D1が、縦方向(同図の左右方向)D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0037】
さらにパネル間設置体7の前端(表面側)外周には、溝壁部75が外径方向に突出するように形成されている。
【0038】
これにより、壁面設置体6と溝壁部75との間において、パネル間設置体7の横方向両側(図7(a)の上下両側)に、横方向両側に開放された第1嵌合溝71,71がそれぞれ形成されるとともに、パネル間設置体7の縦方向両側(同図の左右両側)に、縦方向両側に開放された第2嵌合溝72,72がそれぞれ形成される。
【0039】
また各嵌合溝71,72は、開口部の幅が、その溝底の幅よりも大きく形成されており、木質パネル1の嵌合凸部25,35をスムーズに嵌合できるようになっている。
【0040】
図5および図6C等に示すように、第1嵌合溝71の溝底面における中間部には切欠部711が形成されて、溝底面における切欠部711を除いた両側の領域が、木質パネル1における嵌合凸部25,35の先端面に接触するパネル接触面712,712として構成されている。このように本実施形態において、第2嵌合溝72は、溝底面全域の面積に比べて、パネル接触面712の面積が小さく設定されている。これは、後に詳述するように、パネル施工後に木質パネル1が不用意に浮き上がるのを防止するためである。
【0041】
また第2嵌合溝72は、その溝底面の全域が、木質パネル1における嵌合凸部25,36の先端面に接触するパネル接触面722として構成されている。
【0042】
なお、本実施形態において、第1嵌合溝71のパネル接触面712,712の面積と、第2嵌合溝72のパネル接触面722の面積とは、ほぼ等しく設定されている。
【0043】
ここで本実施形態においては、図6A,Bに示すように、第1嵌合溝71,71における互いの底壁面間の寸法、詳細には、一方の嵌合溝71のパネル設置面712と、他方の嵌合溝71のパネル設置面712との間の寸法は、パネル間設置体7の横方向D1の寸法H1に相当することなる。さらに第2嵌合溝72,72における底壁面間の寸法は、パネル間設置体7の縦方向D2の寸法H2に相当することになる。
【0044】
また本発明においては、壁面Wに対し直交し、かつパネル間設置体7の中心(例えば、正面視において、パネル間設置体7における短径方向の中心線と長径方向の中心線とが交差する点、外接円中心、内接中心等)を通過する線分が、軸心として構成され、その軸心に対し直交する方向が径方向として構成されるものである。
【0045】
さらに本実施形態においては、横方向D1が短径方向として構成されるとともに、縦方向D2が長径方向として構成されている。言うまでもなく、横方向D1は、縦方向D2に対し正面視の状態で90°の角度に設定されている。
【0046】
また本実施形態において、横方向D1および縦方向D2は、共に径方向を構成するものである。
【0047】
図5〜7に示すように、取付具5の壁面設置体6は、後面側(裏面側)が開放された中空構造によって構成されている。
【0048】
この取付具5の前部には、前面側に開放され、かつ軸心に沿って裏面側に延びるビス取付用筒状凹部51が形成されている。さらにそのビス取付用筒状凹部51の底壁には、ビス挿通用筒状部52が軸心に沿って裏面側に延びるように形成されている。そしてビス挿通用筒状部52の表面側開口部がビス取付用筒状凹部51内に連通されるとともに、ビス挿通用筒状部52の裏面側開口部が、取付具5の裏面側に開放されている。
【0049】
なお本実施形態においては、必要に応じて、ビス取付用筒状凹部51およびビス挿通筒状部52を総称して、ビス取付孔51,52と称する。
【0050】
また本実施形態においては、第1,第2嵌合溝71,72が、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3を支持するための第1,第2パネル支持部として構成されている。
【0051】
本実施形態においては、各木質パネル1が左右方向(水平方向)に沿って配置された状態で、上下方向に並列に複数並べて配置されるようにして、壁面Wに施工されるものであり、後に詳述するように各木質パネル1の上下両側縁部2,3が、その両側縁部2,3に沿って所定の間隔おきに配置された複数の取付具5を介して、壁面Wに支持固定されるものである。
【0052】
さらに本実施形態において、各木質パネル1は、その一側縁部2側が下方側に配置されるとともに、他側縁部3側が上方に配置されるように施工される。従って本実施形態においては、必要に応じて、木質パネル1の「一側縁部2」を「下側縁部2」と称し、「他側縁部3」を「上側縁部3」と称する。
【0053】
なお、本実施形態において、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3は、上下に隣り合う木質パネル1,1のうち、上側の木質パネル1における一側縁部(下側縁部)2と、下側の木質パネル1における他側縁部(上側縁部)3によって構成されるものである。
【0054】
本実施形態では、木質パネル1を施工するに際して、木質パネル1を、上下に隣り合うパネル間に小さめの隙間が形成されるパネル間近接形態と、大きめの隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態においても施工できるようになっている。
【0055】
まず始めにパネル間近接形態で施工する場合について説明する。
【0056】
図3A,3Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の横方向D1が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付用筒状凹部51に挿入し、さらにビス55の軸部をビス挿通用筒状部52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、横方向両側の第1嵌合溝71,71が上下両側に配置されるとともに、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が左右両側に配置される。
【0057】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第1嵌合溝71内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0058】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の横方向一方側(下側)の第1嵌合溝71を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の横方向D1が上下方向に沿って配置される。
【0059】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面Wに沿わせるように配置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0060】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0061】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の横方向D1を上下方向に一致させるように配置し、横方向下側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようする。
【0062】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wにおけるパネル取付予定部全域に、木質パネル1が取り付けられて、施工作業が完了する。
【0063】
このようにパネル間近接形態によって施工された壁面構造においては、上下に隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における横方向両側の第1嵌合溝71,71に支持される。この状態において、パネル間設置体7の横方向寸法H1は短く設定されているため、上下の木質パネル1,1が近接した状態に配置されて、対向縁部2,3間に狭い隙間が形成される。この隙間は、木質パネル1の表裏間を連通する通気路4として機能する。さらにこの通気路4は、表面側開口部41、主要部42および裏面側開口部43の3つの部分によって構成されている。
【0064】
具体的に説明すると、図3A、3Cの側面断面視(パネル長さ方向に直交する平面で切断した際の断面視)の状態において、表面側開口部41は、上側木質パネル1の上あご片21の先端面と、下側木質パネル1の上あご対向面33との間の隙間によって構成され、壁面Wに対し垂直に延びるように配置される。主要部42は、上側木質パネル1の裏側傾斜面22と、下側木質パネル1の表側傾斜面32との間の隙間によって構成され、かつ壁面Wに対し傾斜するように配置される。裏面側開口部43は、上側木質パネル1の嵌合凸部25の先端面と、下側木質パネル1の嵌合凸部35の先端面との間の隙間によって構成され、壁面Wに対し垂直に延びるように配置される。
【0065】
本実施形態において、図3A、3Cの側面断面視の状態では、通気路4における表面開口部41および主要部42間のコーナー部と、主要部42および裏面側開口部43間のコーナー部とは共に、直角を超える鈍角のコーナー部に形成されている。従って通気路4は、コーナー部の曲りが小さい滑らかな通気路4に形成されている。
【0066】
ここで、上下に隣合う木質パネル1,1のうち、一方側(上側)の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における上あご片21は、既述したように、他方側(下側)の木質パネル1に向けて他側方(下方)に突出するように形成されるとともに、他方側(上側)の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3における下あご片31は、一方側(上側)の木質パネル1に向けて一側方(上方)に突出するように形成されている。そして、通気路4における表面側開口部41は、上あご片21の先端側(下あご片31の基端側)に配置されるとともに、裏面側開口部43は、上あご片21の基端側(下あご片31の先端側)に配置されている。つまり、本実施形態においては、表面側開口部41が、裏面側開口部43に対して、木質パネル1の並列方向(上下方向)に位置をずらせて配置されている。
【0067】
このパネル間近接形態において、上あご片21の先端面と、上あご対向面33との間の隙間(表面側開口部41の幅)寸法は、2mm程度に設定されている。
【0068】
なおこのパネル間近接形態において、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0069】
一方、パネル間に大きめの隙間が形成されるパネル間隔離形態で施工する場合、以下に説明するように、上記のパネル間近接形態の場合と比較して、各取付具5を軸心回りに90°回転させた状態にして施工するものである。
【0070】
すなわち図4A,4Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の下側縁部2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の縦方向D2が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付孔51,52に挿通して、壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が上下両側に配置されるとともに、横方向両側の第1嵌合溝71,71が左右両側に配置される。
【0071】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第2嵌合溝72内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0072】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の縦方向一方側(下側)の第2嵌合溝72を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の縦方向D2が上下方向に沿って配置される。
【0073】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面に設置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0074】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0075】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の縦方向D2を上下方向に一致させるように配置し、縦方向下側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようにする。
【0076】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wにおけるパネル取付予定部全域に、木質パネル1が取り付けられて、施工作業が完了する。
【0077】
なお言うまでもなく、本発明において、施工手順は、上記のものに限定されるものではなく、どのような手順で施工するようにしても良い。
【0078】
このようにパネル間隔離形態によって施工された壁面構造においては、上下に隣合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における縦方向両側の第2嵌合溝72,72に支持される。この状態において、パネル間設置体7の縦方向寸法H2は長く設定されているため、上下の木質パネル1,1が大きく離間した状態に配置されて、対向縁部2,3間に、パネル表裏間を連通する通気路4として機能する大きめの隙間が形成される。
【0079】
すなわち図4Aの断面視状態において、対向縁部2,3間に、上あご片21の先端面および上あご対向面33間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し垂直に延びる表面側開口部41と、裏側傾斜面および表側傾斜面32間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し傾斜する主要部42と、嵌合凸部25,36間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し垂直に延びる裏面側開口部43とを備えた通気路4が形成されている。
【0080】
さらに通気路4は、上記と同様、表面側開口部41、主要部42および裏面側開口部43の各間のコーナー部が、直角を超える鈍角に形成されることにより、コーナー部の曲りが小さい滑らかな通路に形成されている。
【0081】
このパネル間隔離形態において、上あご片21の先端面と、上あご対向面33との間の隙間(表面側開口部41の幅)寸法は、10mm程度に設定されている。
【0082】
なおこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、表面側開口部41が、裏面側開口部43に対して、木質パネル1の並列方向(上下方向)に位置をずらせて配置されている。
【0083】
さらにパネル間隔離形態においても、上記と同様に、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0084】
以上のように、本実施形態の木質パネルの取付構造によれば、室内の調湿性能を向上させることができる。すなわち木質材は、その表裏両面、左右両側端面および上下両側端面を含む全周面(周囲6面)から、水分(湿気成分)を吸収したり、放出することにより、周辺の湿度を適正に調整するものであるため、木質パネル1の全周面のうち、室内の空気(雰囲気)との接触する面積が大きくなるほど、吸放湿量を多くでき、調湿性能を向上させることができる。
【0085】
そこで本実施形態においては、木質パネル1を壁面Wから離間した状態に配置するものであるため、木質パネル1の表裏両面を共に室内空気に接触させることができ、木質パネル1の全周面における室内空気(屋内空気)との接触面積を大きく確保することができる。このため各木質パネル1による室内空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、室内の調湿性能を十分に確保できて、快適な居住空間を確保することができる。
【0086】
しかも本実施形態においては、隣り合う木質パネル1,1間に、パネル裏面に通じる通気路(隙間)4を形成しているため、その通気路4を通って、室内の空気が、パネル裏面側と表面側との間で循環し易くなり、パネル裏面や周辺部での吸放湿をより確実に行うことができ、より一層調湿性能を向上させることができる。
【0087】
特にパネル間隔離形態においては、通気路4の幅を広くできるため、パネル表裏間での空気の往来がスムーズに行われ、パネル裏面等での吸放湿をより一層確実に行うことができ、より一層確実に調湿性能を向上させることができる。
【0088】
その上さらに、本実施形態においては、通気路4の主要部42を、表面側開口部41側から裏面側開口部43に向かうに従って、裏面側に近づくように傾斜させているため、パネル表面側から表面側開口部41に流入する空気は、主要部42を抵抗無くスムーズに流通してパネル裏面側に導かれるとともに、パネル裏面側から裏面側開口部43に流入する空気は、通気路4の主要部42を抵抗無くスムーズに流通してパネル表面側へと導かれる。従って、パネル表裏間での空気の往来(循環)をより一層スムーズに行うことができ、調湿津性能を一層向上させることができる。
【0089】
なお本実施形態では、隣り合う木質パネル1,1において、上側の木質パネル1の下側縁部2における上あご片21が、下側の木質パネル1の下あご片31における表面側に配置されるため、パネル表面側からパネル間の隙間(通気路4)を通して壁面Wが視認されるような不具合を確実に防止することができる。
【0090】
また本実施形態においては、パネル間に小さめの隙間が形成されるパネル間近接形態と、大きめの隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態でも施工できるようにしているため、居住者等のユーザーは、施工場所や施工目的に応じて、上記2つの形態の中から、好ましい形態を選択することができる。例えばリビングルーム等の場所では、パネル間近接形態で施工することによって、パネル間の隙間が小さくて意匠性の高い壁面構造を形成できる一方、寝室等の場所では、パネル間隔離形態で施工することによって、調湿性能が非常に優れた壁面構造を形成できて、快適な居住空間を得ることができる。このようにユーザーのニーズ等に合わせて、調湿性能を重視したり、意匠性を重視した壁面構造を形成することが可能であり、選択肢が増えて、汎用性を向上させることができ、高い商品価値を得ることができる。
【0091】
さらに本実施形態では、パネル間近接形態およびパネル間隔離形態のいずれにおいても1種類の取付具5によって施工できるようにしているため、部品点数の削減によって、コストを削減できる上、部品(取付具5)の種類を間違えたりするようなミスが生じるのも確実に防止でき、パネル施工作業を簡単に行うことができる。
【0092】
また本実施形態においては、取付具5における第1嵌合溝71の溝底に切欠部711を形成して、木質パネル1の縁部と実際に接触するパネル接触面712の面積を小さく形成しているため、施工後に、吸湿等によって木質パネル1が延びたとしても、木質パネル1が屋内側に浮き上がるのを防止することができる。すなわち、木質パネル1を第1嵌合溝71に嵌め込んで取付具5に支持した場合、木質パネル1における第1嵌合溝71の底面との接触面積が小さいため、木質パネル1が延びた際の応力が、木質パネル1の取付具5との接触部に局所的に作用し、その接触部が圧壊変形する。これにより、木質パネル1が表面側に不用意に膨れ上がるような浮き上がり変形を防止することができ、良好な美観を維持することができる。
【0093】
さらに第2嵌合溝72は、溝長さが短いため、切欠部等を形成しなくとも、溝底の面積は小さいものである。このため、木質パネル1を第2嵌合溝72に嵌め込んで取付具5に支持した場合においても、木質パネル1における取付具5との接触面積は小さくなっている。従って、木質パネル1が吸湿によって延びたとしても、上記と同様に、接触部に応力が集中してその接触部が圧壊変形することにより、木質パネル1が前方(表面側)に浮き上がるという不具合を確実に防止することができる。
【0094】
なお、本実施形態において、第1嵌合溝71の底面における木質パネル1との接触面積と、第2嵌合溝72の底面における木質パネル1との接触面積とが等しくなるように形成している。このため、第1嵌合溝71に木質パネル1を嵌合した状態(パネル間近接形態)と、第2嵌合溝72に木質パネル1を嵌合した状態(パネル間離間形態)とのいずれの状態であっても、木質パネル1の浮き上がりを同様に抑制することができる。
【0095】
また本実施形態においては、取付具5における嵌合溝71,72の開口端部の幅を、奥部(底部)の幅よりも大きく形成しているため、各嵌合溝71,72に木質パネル1の縁部を簡単かつスムーズに嵌め込むことができ、パネル施工作業を効率良く行うことができる。
【0096】
しかも本実施形態においては、木質パネル1の縁部における嵌合凸部25,35の先端面と裏面との間に、面取り部26,36を形成しているため、木質パネル1の縁部(嵌合凸部25,35)を、取付具5の嵌合溝71,72内により一層簡単かつスムーズに嵌め込むことができ、パネル施工作業をより一層効率良く行うことができる。
【0097】
また本実施形態においては、木質パネル1の構成材料として、杉や檜を用いることによって、より一層調湿性能を向上させることができる。すなわち杉や檜は、針葉樹材で比重が小さく、木材の中でも、湿気成分の吸放出機能が大きいため、上記の調湿性能をより向上させることができる。
【0098】
さらに本実施形態において、例えば、木質パネル1の表面や裏面に溝や凸筋等の凹凸形状を形成することによって、木質パネル1の外表面積をさらに増大させることができ、調湿性能を一層向上させることができる。
【0099】
ところで、本実施形態のパネル取付構造が適用された壁面構造において、液晶テレビ、プラズマテレビ、リアプロジェクションテレビ、有機ELテレビ、FEDテレビ等の薄型テレビのディスプレイパネルを壁掛け状態で取り付けるような場合や、AVシステムのスピーカーを壁掛け状態で取り付けるような場合には、木質パネルと壁面との間の空間(隙間)にテレビ用やスピーカー用等の電気配線を敷設することができる。これにより、スペースの有効利用を図りつつ、配線を隠蔽できて、美観を向上できる上さらに、配線を自在に張りめぐらせることができて、汎用性を向上させることができる。
【0100】
さらに壁掛けされた薄型テレビ等の電気製品の関連機器例えば、テレビチューナー、HDDレコーダー、ステレオチューナー、ステレオアンプ等を木質パネルと壁面との間の空間に収容することも可能であり、それによって、より一層、スペースの有効利用およびデザイン性の向上を図ることができる。
【0101】
なお上記実施形態においては、通気路4の主要部42が断面視で略直線状に形成されているが、それだけに限られず、本発明においては、通気路の主要部が、曲率半径が大きい曲線状に形成されるようにしても良い。例えば、上あご片の裏側傾斜面や下あご片の表側傾斜面を湾曲面に形成して、通気路の主要部を断面円弧状や緩やかな波状に形成するようにしても良い。
【0102】
さらに本発明においては、通気路の主要部における表面側端部が、裏面側端部に対し、表面側(室内側)に配置していれば良く、通気路の主要部の一部に、パネル並列方向(壁面)に対し傾斜していない部分が含まれていても良い。換言すれば、上あご片の裏側傾斜面の先端が、基端よりも表面側(屋内側)に配置されるとともに、下あご片の表側傾斜面の先端が、基端よりも裏面側(屋内壁面側)に配置されていれば良く、表面側傾斜面および裏面側傾斜面の一部に、傾斜していない部分が含まれていても良い。
【0103】
さらに本発明においては、裏面側傾斜面は、上あご片の裏側の面における少なくとも一部に設けられていれば良く、同様に、表面側傾斜面は、下あご片の表側の面における少なくと一部に設けられていれば良い。
【0104】
また上記実施形態においては、木質パネル1として帯板形状のものを用いているが、それだけに限られず、本発明において、木質パネルの形状は特に限定されるものではなく、正方形や長方形等の四角形状のもの、四角形以外の多角形状のもの、異形状のものを用いても良い。さらに異なる大きさの木質パネルを複合して用いるようにしても良い。
【0105】
また上記実施形態においては、ひとつの壁面を仕上げるに際して、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とのいずれか一方のみで施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、ひとつの壁面に対し、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とを併用して施工するようにしても良い。例えば木質パネルを1枚毎にパネル間近接形態とパネル間隔離形態とで交互に施工することにより、2枚毎にパネル間に隙間が形成されるように施工しても良い。さらに多数のパネル間のうち、ランダムな位置のパネル間に大きめの隙間を形成するようにしても良い。
【0106】
また上記実施形態において、パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部を離間させるようにしているが、それだけに限られず、本発明において、パネル間近接形態で、隣り合う木質パネルの対向縁部を接触させるようにしても良い。
【0107】
さらに上記実施形態においては、木質パネルを、その上あご片が形成される側の縁部(一側縁部)を上側して施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、上あご片が形成される側の縁部(一側縁部)を下側して施工するようにしても良い。
【0108】
また上記実施形態においては、帯板形状の木質パネル1を水平方向(左右方向)に沿わせた状態で、上下方向に並列に並べて複数配置するように施工する場合を例に挙げて説明したが、本発明において、木質パネルの配列方向は限定されるものではない。例えば本発明において、帯板形状の木質パネル垂直方向(上下方向)に沿わせて配置した状態で、横方向に並列に並べて複数配置するように施工しても良い。この場合、木質パネルの並列方向(並び方向)は水平方向(左右方向)となる。
【0109】
また上記実施形態においては、パネル間設置体として、正面視四角形状(長方形)のものを用いているが、それだけに限られず、本発明においては、他の形状、例えば5角形以上の多角形のものを用いても良い。
【0110】
また本発明において、一径方向とは、径方向のいずれか一つの方向であり、他の径方向とは一径方向に対し直交し、かつ径方向のいずれか一つの方向である。
【0111】
また上記実施形態においては、木質パネルとして、集成材を用いるようにしているが、本発明において、木質パネルの素材は特に限定されるものではなく、無垢材等を用いても良く、要は木質系の素材であればどのような素材を用いても良い。
【0112】
さらに本発明において、木質パネルは、部分的に、合成樹脂や合成ゴム等の非木質系の部材が含まれていても良い。
【0113】
また取付具の素材はPPだけに限られず、取付具を、他の合成樹脂や、合成樹脂以外の素材、例えば金属等によって構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0114】
この発明の木質パネルの取付構造は、屋内の壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される壁面構造に利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1:木質パネル
2:一側縁部(下側縁部、対向縁部)
21:上あご片
22:裏側傾斜面
3:他側縁部(上側縁部、対向縁部)
31:下あご片
32:表側傾斜面
4:通気路(隙間)
41:表面側開口部
42:主要部
43:裏面側開口部
5:取付具
6:壁面設置体
7:パネル間設置体
D1:横方向(短径方向)
D2:縦方向(長径方向)
H1:横方向寸法
H2:縦方向寸法
W:壁面(屋内壁面)
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般家屋等の屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造およびその構造に適用可能な木質パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅における室内の壁面構造としては、壁面に壁紙を貼り付けたり、木質パネル(化粧パネル)を複数並べて貼り付けたものが周知である。
【0003】
特許文献1に示すように、木質パネルを用いるものは、木材自身が保有する湿度調整機能(調湿機能)によって、快適な居住環境を得ることができる。
【0004】
また特許文献2には、木質パネルが屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に沿って複数並べて施工された木質パネルの取付構造が開示されている。さらにこの取付構造においては、隣り合う木質パネル間に隙間を形成し、その隙間を介して、室内の空気が木質パネルの裏面側にも流通するように構成している。これにより、木質パネルの裏面側にも屋内空気を十分に接触させるようにして、調湿性能を一層向上させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−27033号
【特許文献2】特開2011−6868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、木質パネルの取付構造の技術分野においては、調湿性能をさらに向上させることができる技術の開発が望まれるところである。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、調湿性能をさらに向上させることができる木質パネルの取付構造およびその構造に適用可能な木質パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造であって、
隣り合う木質パネル間に隙間が形成されるとともに、その隙間が木質パネルの表面側および裏面側間を連通する通気路として構成され、
前記通気路は、パネル表面側に開口する表面側開口部と、パネル裏面側に開口する裏面側開口部と、前記表面側開口部および前記裏面側開口部間を連通する主要部と、を有し、
前記表面側開口部が、前記裏面側開口部に対し、木質パネルの並列方向に位置をずらせて配置され、
前記通気路の主要部が、前記表面側開口部側から前記裏面側開口部側に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜していることを特徴とする木質パネルの取付構造。
【0010】
[2]隣り合う木質パネルの対向縁部のうち一方側の木質パネルにおける対向縁部の表面側に、他方側の木質パネルに向けて延びる上あご片が設けられるとともに、他方側の木質パネルにおける対向縁部の裏面側に、一方側の木質パネルに向けて延びる下あご片が設けられ、
前記上あご片の裏側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面から遠ざかるように傾斜する裏側傾斜面が設けられるとともに、前記下あご片の表側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜する表側傾斜面が設けられ、
前記通気路の主要部が、前記上あご片の裏側傾斜面と、前記下あご片の表側傾斜面との間の隙間によって形成される前項1に記載の木質パネルの取付構造。
【0011】
[3]木質パネルは、帯板形状を有し、
木質パネルがその長さ方向を水平方向に配置した状態で上下方向に並んで配置され、
上下方向に隣り合う木質パネル間に前記通気路が形成される前項1または2に記載の木質パネルの取付構造。
【0012】
[4]木質パネルを屋内壁面に取り付けるための取付具を備え、
前記取付具は、屋内壁面に設置される壁面設置体と、その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを有し、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成された前項1〜3のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【0013】
[4a]前記パネル間設置体は、正面視において横方向を短径方向、縦方向を長径方向とする略長方形に形成されている前項4に記載の木質パネルの取付構造。
【0014】
[5]隣り合う他の木質パネルに対して縁部同士を対向させて、屋内壁面に沿って複数並べて施工される木質パネルであって、
両側縁部のうち一方側の縁部における表面側に、側方に向けて延びる上あご片が設けられるとともに、他方側の縁部における裏面側に、側方に向けて延びる下あご片が設けられ、
前記上あご片の裏側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面から遠ざかるように傾斜する裏側傾斜面が設けられるとともに、前記下あご片の表側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜する表側傾斜面が設けられたことを特徴とする木質パネル。
【発明の効果】
【0015】
発明[1]の木質パネルの取付構造によれば、木質パネルを壁面から離間した状態でかつ隣り合う木質パネル間に隙間を形成した状態に配置しているため、屋内空気が木質パネルの表裏間でスムーズに往来するようになり、木質パネルの屋内空気との接触面積を大きく確保することができる。従って、木質パネルによる屋内空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、室内の調湿性能を向上させることができる。その上さらに、隣り合う木質パネル間の隙間によって形成される通気路のうち主要部を傾斜させているため、空気が通気路内をより一層スムーズに流通するようになり、調湿性能をより一層向上させることができる。
【0016】
発明[2]の木質パネルの取付構造によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0017】
発明[3]の木質パネルの取付構造によれば、帯板状の木質パネルが上下方向に沿って並列に複数配置されるため、意匠性の高い壁面構造を形成することができる。
【0018】
発明[4]の木質パネルの取付構造によれば、、パネル間の間隔が広くなるパネル間隔離形態と、狭くなるパネル間近接形態とのいずれの形態でも施工できるため、所望の形態での施工が可能となり、汎用性を向上させることができる。
【0019】
発明[5]の木質パネルを用いれば、上記発明[1]の取付構造を確実に実現することができ、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1はこの発明の実施形態である木質パネルの取付構造が適用された室内の壁面構造を示す正面図である。
【図2】図2は実施形態の壁面構造を示す側面断面図である。
【図3A】図3Aはパネル間近接形態が採用された実施形態の壁面構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図3B】図3Bは図3Aの分解断面図である。
【図3C】図3Cは実施形態の壁面構造においてパネル間の通気路周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4A】図4Aはパネル間隔離形態が採用された実施形態の壁面構造における取付具周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4B】図4Bは図4Aの分解断面図である。
【図5】図5は実施形態に適用された取付具を示す斜視図である。
【図6A】図6Aは実施形態に適用された取付具を縦方向から見た状態での断面図である。
【図6B】図6Bは実施形態の取付具を横方向から見た状態での断面図である。
【図6C】図6Cは実施形態の取付具を示す正面断面図である。
【図7】図7は実施形態に適用された取付具を示す図であって、同図(a)は正面図、同図(b)は縦方向の端面図、同図(c)は裏面図、同図(d)は横方向の端面図である。
【図8】図8は実施形態に適用された木質パネルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1はこの発明の実施形態である木質パネルの取付構造が適用された室内の壁面構造を示す正面図、図2は側面断面図である。
【0022】
両図に示すように、この壁面構造は、一般住宅における室内の壁面(屋内壁面)Wに、多数の木質パネル1が取付具5を介して取り付けられている。なお以下の説明においては、室内側から壁面Wに近づいていく方向を、裏面側方向(後側方向)とし、その逆方向、つまり壁面Wから遠ざかっていく方向を、表面側方向(前側方向)として説明する。
【0023】
壁面Wは、例えば間柱や胴縁の室内側に、多数の合板が面状に並べて貼り付けられるとともに、その合板上に、多数の石膏ボードが面状に並べて貼り付けられて構成されている。
【0024】
木質パネル1は、所定の長さを有する帯板状の形状を有している。この木質パネル1は、例えば複数の木材片を接着剤を用いて再構成して作製された集成材等を加工することよって形成されている。
【0025】
図3B、図3Cおよび図8等に示すように、木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2は、その裏面側が切り欠かれることによって、表面側に上あご片21が一側方(下方)に突出するように形成されている。上あご片21の裏側の面は、上あご片21の先端側から基端側に向かうに従って、裏面側(壁面側)に近づくように傾斜する裏側傾斜面22として形成されている。
【0026】
木質パネル1の一側縁部2には、上あご片21よりも裏面側(壁面側)に、パネル長さ方向に連続して延びる切込溝24が形成されるとともに、切込溝24よりも裏面側(壁面側)に、後述する取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部25が形成されている。さらにその嵌合凸部25の先端面と裏面との間には、面取り部26が形成されている。
【0027】
なお上あご片21の先端面および嵌合凸部25の先端面は、壁面Wに対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な平坦面に形成されている。
【0028】
さらに本実施形態において、木質パネル1の一側縁部2は、上あご片21および嵌合凸部25を含むものである。さらに本実施形態において、一側縁部2の表面側は、上あご片21を含むものであり、一側縁部2の裏面側は、嵌合凸部25を含むものである。
【0029】
木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3は、その表面側が切り欠かれることによって、裏面側に下あご片31が他側方(上方)に突出するように形成されている。下あご片31の表側の面は、下あご片31の基端側から先端側に向かうに従って、裏面側(壁面側)に近づくように傾斜する表側傾斜面32として形成されている。この表側傾斜面32は、上記上あご片21の裏面側傾斜面22に対応して形成されており、後述するように、両傾斜面22,32間によって通気路4の主要部42が形成される。
【0030】
下あご片31の先端面には、パネル長さ方向に連続する切込溝34が形成され、下あご片31における切込溝34よりも裏面側の部分が、後に詳述するように取付具5の嵌合溝71,72に嵌合可能な嵌合凸部35として構成されている。さらに下あご片31の先端面と裏面との間には、面取り部36が形成されている。
【0031】
また木質パネル1の他側縁部における下あご片31よりも表面側には、壁面Wに対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な上あご対向面33が形成されている。
【0032】
なお下あご片31の先端面は、壁面に対し直交し、かつパネル長さ方向に平行な平坦面に形成される。
【0033】
さらに本実施形態において、木質パネル1の他側縁部3は、下あご片31および上あご対向面33を含むものである。さらに本実施形態において、他側縁部3の表面側は、上あご対向面によって構成されるとともに、他側縁部3の裏面側は、嵌合凸部35を含む下あご片31によって構成されている。
【0034】
一方図5〜7に示すように、取付具5は、壁面Wに設置される壁面設置体6と、壁面設置体6の前面側(表面側)に一体に形成され、かつ隣り合う木質パネル1,1間に配置されるパネル間設置体7とを備えている。この取付具5は、例えばポリプロピレン(PP)等の硬質合成樹脂の一体成形品(射出成形品)によって構成されている。
【0035】
壁面設置体6は、図7(a)に示す正面視において上下方向に対応する横方向D1が、同図の左右方向に対応する縦方向D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0036】
またパネル間設置体7は、同図の正面視において、壁面設置体6に対しサイズが小さい略相似形に形成されている。すなわちパネル間設置体7は、横方向(図7(a)の上下方向)D1が、縦方向(同図の左右方向)D2に対し短く形成された長方形の形状を有している。
【0037】
さらにパネル間設置体7の前端(表面側)外周には、溝壁部75が外径方向に突出するように形成されている。
【0038】
これにより、壁面設置体6と溝壁部75との間において、パネル間設置体7の横方向両側(図7(a)の上下両側)に、横方向両側に開放された第1嵌合溝71,71がそれぞれ形成されるとともに、パネル間設置体7の縦方向両側(同図の左右両側)に、縦方向両側に開放された第2嵌合溝72,72がそれぞれ形成される。
【0039】
また各嵌合溝71,72は、開口部の幅が、その溝底の幅よりも大きく形成されており、木質パネル1の嵌合凸部25,35をスムーズに嵌合できるようになっている。
【0040】
図5および図6C等に示すように、第1嵌合溝71の溝底面における中間部には切欠部711が形成されて、溝底面における切欠部711を除いた両側の領域が、木質パネル1における嵌合凸部25,35の先端面に接触するパネル接触面712,712として構成されている。このように本実施形態において、第2嵌合溝72は、溝底面全域の面積に比べて、パネル接触面712の面積が小さく設定されている。これは、後に詳述するように、パネル施工後に木質パネル1が不用意に浮き上がるのを防止するためである。
【0041】
また第2嵌合溝72は、その溝底面の全域が、木質パネル1における嵌合凸部25,36の先端面に接触するパネル接触面722として構成されている。
【0042】
なお、本実施形態において、第1嵌合溝71のパネル接触面712,712の面積と、第2嵌合溝72のパネル接触面722の面積とは、ほぼ等しく設定されている。
【0043】
ここで本実施形態においては、図6A,Bに示すように、第1嵌合溝71,71における互いの底壁面間の寸法、詳細には、一方の嵌合溝71のパネル設置面712と、他方の嵌合溝71のパネル設置面712との間の寸法は、パネル間設置体7の横方向D1の寸法H1に相当することなる。さらに第2嵌合溝72,72における底壁面間の寸法は、パネル間設置体7の縦方向D2の寸法H2に相当することになる。
【0044】
また本発明においては、壁面Wに対し直交し、かつパネル間設置体7の中心(例えば、正面視において、パネル間設置体7における短径方向の中心線と長径方向の中心線とが交差する点、外接円中心、内接中心等)を通過する線分が、軸心として構成され、その軸心に対し直交する方向が径方向として構成されるものである。
【0045】
さらに本実施形態においては、横方向D1が短径方向として構成されるとともに、縦方向D2が長径方向として構成されている。言うまでもなく、横方向D1は、縦方向D2に対し正面視の状態で90°の角度に設定されている。
【0046】
また本実施形態において、横方向D1および縦方向D2は、共に径方向を構成するものである。
【0047】
図5〜7に示すように、取付具5の壁面設置体6は、後面側(裏面側)が開放された中空構造によって構成されている。
【0048】
この取付具5の前部には、前面側に開放され、かつ軸心に沿って裏面側に延びるビス取付用筒状凹部51が形成されている。さらにそのビス取付用筒状凹部51の底壁には、ビス挿通用筒状部52が軸心に沿って裏面側に延びるように形成されている。そしてビス挿通用筒状部52の表面側開口部がビス取付用筒状凹部51内に連通されるとともに、ビス挿通用筒状部52の裏面側開口部が、取付具5の裏面側に開放されている。
【0049】
なお本実施形態においては、必要に応じて、ビス取付用筒状凹部51およびビス挿通筒状部52を総称して、ビス取付孔51,52と称する。
【0050】
また本実施形態においては、第1,第2嵌合溝71,72が、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3を支持するための第1,第2パネル支持部として構成されている。
【0051】
本実施形態においては、各木質パネル1が左右方向(水平方向)に沿って配置された状態で、上下方向に並列に複数並べて配置されるようにして、壁面Wに施工されるものであり、後に詳述するように各木質パネル1の上下両側縁部2,3が、その両側縁部2,3に沿って所定の間隔おきに配置された複数の取付具5を介して、壁面Wに支持固定されるものである。
【0052】
さらに本実施形態において、各木質パネル1は、その一側縁部2側が下方側に配置されるとともに、他側縁部3側が上方に配置されるように施工される。従って本実施形態においては、必要に応じて、木質パネル1の「一側縁部2」を「下側縁部2」と称し、「他側縁部3」を「上側縁部3」と称する。
【0053】
なお、本実施形態において、隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3は、上下に隣り合う木質パネル1,1のうち、上側の木質パネル1における一側縁部(下側縁部)2と、下側の木質パネル1における他側縁部(上側縁部)3によって構成されるものである。
【0054】
本実施形態では、木質パネル1を施工するに際して、木質パネル1を、上下に隣り合うパネル間に小さめの隙間が形成されるパネル間近接形態と、大きめの隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態においても施工できるようになっている。
【0055】
まず始めにパネル間近接形態で施工する場合について説明する。
【0056】
図3A,3Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の横方向D1が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付用筒状凹部51に挿入し、さらにビス55の軸部をビス挿通用筒状部52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、横方向両側の第1嵌合溝71,71が上下両側に配置されるとともに、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が左右両側に配置される。
【0057】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第1嵌合溝71内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0058】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の横方向一方側(下側)の第1嵌合溝71を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の横方向D1が上下方向に沿って配置される。
【0059】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面Wに沿わせるように配置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0060】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0061】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の横方向D1を上下方向に一致させるように配置し、横方向下側の第1嵌合溝71内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようする。
【0062】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wにおけるパネル取付予定部全域に、木質パネル1が取り付けられて、施工作業が完了する。
【0063】
このようにパネル間近接形態によって施工された壁面構造においては、上下に隣り合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における横方向両側の第1嵌合溝71,71に支持される。この状態において、パネル間設置体7の横方向寸法H1は短く設定されているため、上下の木質パネル1,1が近接した状態に配置されて、対向縁部2,3間に狭い隙間が形成される。この隙間は、木質パネル1の表裏間を連通する通気路4として機能する。さらにこの通気路4は、表面側開口部41、主要部42および裏面側開口部43の3つの部分によって構成されている。
【0064】
具体的に説明すると、図3A、3Cの側面断面視(パネル長さ方向に直交する平面で切断した際の断面視)の状態において、表面側開口部41は、上側木質パネル1の上あご片21の先端面と、下側木質パネル1の上あご対向面33との間の隙間によって構成され、壁面Wに対し垂直に延びるように配置される。主要部42は、上側木質パネル1の裏側傾斜面22と、下側木質パネル1の表側傾斜面32との間の隙間によって構成され、かつ壁面Wに対し傾斜するように配置される。裏面側開口部43は、上側木質パネル1の嵌合凸部25の先端面と、下側木質パネル1の嵌合凸部35の先端面との間の隙間によって構成され、壁面Wに対し垂直に延びるように配置される。
【0065】
本実施形態において、図3A、3Cの側面断面視の状態では、通気路4における表面開口部41および主要部42間のコーナー部と、主要部42および裏面側開口部43間のコーナー部とは共に、直角を超える鈍角のコーナー部に形成されている。従って通気路4は、コーナー部の曲りが小さい滑らかな通気路4に形成されている。
【0066】
ここで、上下に隣合う木質パネル1,1のうち、一方側(上側)の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における上あご片21は、既述したように、他方側(下側)の木質パネル1に向けて他側方(下方)に突出するように形成されるとともに、他方側(上側)の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3における下あご片31は、一方側(上側)の木質パネル1に向けて一側方(上方)に突出するように形成されている。そして、通気路4における表面側開口部41は、上あご片21の先端側(下あご片31の基端側)に配置されるとともに、裏面側開口部43は、上あご片21の基端側(下あご片31の先端側)に配置されている。つまり、本実施形態においては、表面側開口部41が、裏面側開口部43に対して、木質パネル1の並列方向(上下方向)に位置をずらせて配置されている。
【0067】
このパネル間近接形態において、上あご片21の先端面と、上あご対向面33との間の隙間(表面側開口部41の幅)寸法は、2mm程度に設定されている。
【0068】
なおこのパネル間近接形態において、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0069】
一方、パネル間に大きめの隙間が形成されるパネル間隔離形態で施工する場合、以下に説明するように、上記のパネル間近接形態の場合と比較して、各取付具5を軸心回りに90°回転させた状態にして施工するものである。
【0070】
すなわち図4A,4Bに示すように、壁面Wにおける1段目の木質パネル1の下側縁部2を固定する位置に、複数の取付具5を左右方向(水平方向)に沿って適当な間隔おきに取り付ける。このとき各取付具5は、そのパネル間設置体7の縦方向D2が上下方向(パネル並列方向)に一致するようにして、壁面設置体6の裏面側を壁面Wに設置し、その状態で、ビス55を取付具5の前面側からビス取付孔51,52に挿通して、壁面Wにねじ込むことにより、各取付具5を壁面Wにそれぞれ固定する。この状態では、縦方向両側の第2嵌合溝72,72が上下両側に配置されるとともに、横方向両側の第1嵌合溝71,71が左右両側に配置される。
【0071】
こうして固定された各取付具5におけるパネル間設置体7の上側の第2嵌合溝72内に、1段目の木質パネル1の一側縁部(下側縁部)2における嵌合凸部25をそれぞれ嵌合し、これにより木質パネル1の下側縁部2を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0072】
次に、1段目の木質パネル1の他側縁部(上側縁部)3に、その上側縁部3に沿って所定の間隔おきに複数の取付具5を設置する。つまり木質パネル1の上側縁部3における嵌合凸部35に、取付具5におけるパネル間設置体7の縦方向一方側(下側)の第2嵌合溝72を外嵌する。このとき、各取付具5は、上記と同様に、パネル間設置体7の縦方向D2が上下方向に沿って配置される。
【0073】
そして各取付具5の壁面設置体6を壁面に設置した状態で、取付具5の表面側からビス55を、ビス取付孔51,52に挿通して壁面Wにねじ込むことにより、取付具5を壁面Wに固定する。こうして1段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。
【0074】
続いて、1段目の木質パネル1の上側縁部3を支持する複数の取付具5における上側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の下側縁部2を上記と同様に差し込んで、壁面Wに支持する。
【0075】
さらに2段目の木質パネル1の上側縁部3を、複数の取付具5を介して壁面Wに支持する。このときも上記と同様に、取付具5は、パネル間設置体7の縦方向D2を上下方向に一致させるように配置し、縦方向下側の第2嵌合溝72内に、2段目の木質パネル1の上側縁部3を嵌め込むようにする。
【0076】
以下同様にして、複数の取付具5および木質パネル1を順次施工することによって、壁面Wにおけるパネル取付予定部全域に、木質パネル1が取り付けられて、施工作業が完了する。
【0077】
なお言うまでもなく、本発明において、施工手順は、上記のものに限定されるものではなく、どのような手順で施工するようにしても良い。
【0078】
このようにパネル間隔離形態によって施工された壁面構造においては、上下に隣合う木質パネル1,1の対向縁部2,3が、取付具5のパネル間設置体7における縦方向両側の第2嵌合溝72,72に支持される。この状態において、パネル間設置体7の縦方向寸法H2は長く設定されているため、上下の木質パネル1,1が大きく離間した状態に配置されて、対向縁部2,3間に、パネル表裏間を連通する通気路4として機能する大きめの隙間が形成される。
【0079】
すなわち図4Aの断面視状態において、対向縁部2,3間に、上あご片21の先端面および上あご対向面33間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し垂直に延びる表面側開口部41と、裏側傾斜面および表側傾斜面32間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し傾斜する主要部42と、嵌合凸部25,36間の隙間に形成され、かつ壁面Wに対し垂直に延びる裏面側開口部43とを備えた通気路4が形成されている。
【0080】
さらに通気路4は、上記と同様、表面側開口部41、主要部42および裏面側開口部43の各間のコーナー部が、直角を超える鈍角に形成されることにより、コーナー部の曲りが小さい滑らかな通路に形成されている。
【0081】
このパネル間隔離形態において、上あご片21の先端面と、上あご対向面33との間の隙間(表面側開口部41の幅)寸法は、10mm程度に設定されている。
【0082】
なおこのパネル間隔離形態においても、上記と同様に、表面側開口部41が、裏面側開口部43に対して、木質パネル1の並列方向(上下方向)に位置をずらせて配置されている。
【0083】
さらにパネル間隔離形態においても、上記と同様に、取付具5の壁面設置体6は、木質パネル1を支持するパネル間設置体7と壁面Wとの間に介在されることにより、木質パネル1を壁面Wに対し離間した状態に保持するためのスペーサーとして機能する。
【0084】
以上のように、本実施形態の木質パネルの取付構造によれば、室内の調湿性能を向上させることができる。すなわち木質材は、その表裏両面、左右両側端面および上下両側端面を含む全周面(周囲6面)から、水分(湿気成分)を吸収したり、放出することにより、周辺の湿度を適正に調整するものであるため、木質パネル1の全周面のうち、室内の空気(雰囲気)との接触する面積が大きくなるほど、吸放湿量を多くでき、調湿性能を向上させることができる。
【0085】
そこで本実施形態においては、木質パネル1を壁面Wから離間した状態に配置するものであるため、木質パネル1の表裏両面を共に室内空気に接触させることができ、木質パネル1の全周面における室内空気(屋内空気)との接触面積を大きく確保することができる。このため各木質パネル1による室内空気に対する吸放湿を十分に行うことができ、室内の調湿性能を十分に確保できて、快適な居住空間を確保することができる。
【0086】
しかも本実施形態においては、隣り合う木質パネル1,1間に、パネル裏面に通じる通気路(隙間)4を形成しているため、その通気路4を通って、室内の空気が、パネル裏面側と表面側との間で循環し易くなり、パネル裏面や周辺部での吸放湿をより確実に行うことができ、より一層調湿性能を向上させることができる。
【0087】
特にパネル間隔離形態においては、通気路4の幅を広くできるため、パネル表裏間での空気の往来がスムーズに行われ、パネル裏面等での吸放湿をより一層確実に行うことができ、より一層確実に調湿性能を向上させることができる。
【0088】
その上さらに、本実施形態においては、通気路4の主要部42を、表面側開口部41側から裏面側開口部43に向かうに従って、裏面側に近づくように傾斜させているため、パネル表面側から表面側開口部41に流入する空気は、主要部42を抵抗無くスムーズに流通してパネル裏面側に導かれるとともに、パネル裏面側から裏面側開口部43に流入する空気は、通気路4の主要部42を抵抗無くスムーズに流通してパネル表面側へと導かれる。従って、パネル表裏間での空気の往来(循環)をより一層スムーズに行うことができ、調湿津性能を一層向上させることができる。
【0089】
なお本実施形態では、隣り合う木質パネル1,1において、上側の木質パネル1の下側縁部2における上あご片21が、下側の木質パネル1の下あご片31における表面側に配置されるため、パネル表面側からパネル間の隙間(通気路4)を通して壁面Wが視認されるような不具合を確実に防止することができる。
【0090】
また本実施形態においては、パネル間に小さめの隙間が形成されるパネル間近接形態と、大きめの隙間が形成されるパネル間隔離形態とのいずれの形態でも施工できるようにしているため、居住者等のユーザーは、施工場所や施工目的に応じて、上記2つの形態の中から、好ましい形態を選択することができる。例えばリビングルーム等の場所では、パネル間近接形態で施工することによって、パネル間の隙間が小さくて意匠性の高い壁面構造を形成できる一方、寝室等の場所では、パネル間隔離形態で施工することによって、調湿性能が非常に優れた壁面構造を形成できて、快適な居住空間を得ることができる。このようにユーザーのニーズ等に合わせて、調湿性能を重視したり、意匠性を重視した壁面構造を形成することが可能であり、選択肢が増えて、汎用性を向上させることができ、高い商品価値を得ることができる。
【0091】
さらに本実施形態では、パネル間近接形態およびパネル間隔離形態のいずれにおいても1種類の取付具5によって施工できるようにしているため、部品点数の削減によって、コストを削減できる上、部品(取付具5)の種類を間違えたりするようなミスが生じるのも確実に防止でき、パネル施工作業を簡単に行うことができる。
【0092】
また本実施形態においては、取付具5における第1嵌合溝71の溝底に切欠部711を形成して、木質パネル1の縁部と実際に接触するパネル接触面712の面積を小さく形成しているため、施工後に、吸湿等によって木質パネル1が延びたとしても、木質パネル1が屋内側に浮き上がるのを防止することができる。すなわち、木質パネル1を第1嵌合溝71に嵌め込んで取付具5に支持した場合、木質パネル1における第1嵌合溝71の底面との接触面積が小さいため、木質パネル1が延びた際の応力が、木質パネル1の取付具5との接触部に局所的に作用し、その接触部が圧壊変形する。これにより、木質パネル1が表面側に不用意に膨れ上がるような浮き上がり変形を防止することができ、良好な美観を維持することができる。
【0093】
さらに第2嵌合溝72は、溝長さが短いため、切欠部等を形成しなくとも、溝底の面積は小さいものである。このため、木質パネル1を第2嵌合溝72に嵌め込んで取付具5に支持した場合においても、木質パネル1における取付具5との接触面積は小さくなっている。従って、木質パネル1が吸湿によって延びたとしても、上記と同様に、接触部に応力が集中してその接触部が圧壊変形することにより、木質パネル1が前方(表面側)に浮き上がるという不具合を確実に防止することができる。
【0094】
なお、本実施形態において、第1嵌合溝71の底面における木質パネル1との接触面積と、第2嵌合溝72の底面における木質パネル1との接触面積とが等しくなるように形成している。このため、第1嵌合溝71に木質パネル1を嵌合した状態(パネル間近接形態)と、第2嵌合溝72に木質パネル1を嵌合した状態(パネル間離間形態)とのいずれの状態であっても、木質パネル1の浮き上がりを同様に抑制することができる。
【0095】
また本実施形態においては、取付具5における嵌合溝71,72の開口端部の幅を、奥部(底部)の幅よりも大きく形成しているため、各嵌合溝71,72に木質パネル1の縁部を簡単かつスムーズに嵌め込むことができ、パネル施工作業を効率良く行うことができる。
【0096】
しかも本実施形態においては、木質パネル1の縁部における嵌合凸部25,35の先端面と裏面との間に、面取り部26,36を形成しているため、木質パネル1の縁部(嵌合凸部25,35)を、取付具5の嵌合溝71,72内により一層簡単かつスムーズに嵌め込むことができ、パネル施工作業をより一層効率良く行うことができる。
【0097】
また本実施形態においては、木質パネル1の構成材料として、杉や檜を用いることによって、より一層調湿性能を向上させることができる。すなわち杉や檜は、針葉樹材で比重が小さく、木材の中でも、湿気成分の吸放出機能が大きいため、上記の調湿性能をより向上させることができる。
【0098】
さらに本実施形態において、例えば、木質パネル1の表面や裏面に溝や凸筋等の凹凸形状を形成することによって、木質パネル1の外表面積をさらに増大させることができ、調湿性能を一層向上させることができる。
【0099】
ところで、本実施形態のパネル取付構造が適用された壁面構造において、液晶テレビ、プラズマテレビ、リアプロジェクションテレビ、有機ELテレビ、FEDテレビ等の薄型テレビのディスプレイパネルを壁掛け状態で取り付けるような場合や、AVシステムのスピーカーを壁掛け状態で取り付けるような場合には、木質パネルと壁面との間の空間(隙間)にテレビ用やスピーカー用等の電気配線を敷設することができる。これにより、スペースの有効利用を図りつつ、配線を隠蔽できて、美観を向上できる上さらに、配線を自在に張りめぐらせることができて、汎用性を向上させることができる。
【0100】
さらに壁掛けされた薄型テレビ等の電気製品の関連機器例えば、テレビチューナー、HDDレコーダー、ステレオチューナー、ステレオアンプ等を木質パネルと壁面との間の空間に収容することも可能であり、それによって、より一層、スペースの有効利用およびデザイン性の向上を図ることができる。
【0101】
なお上記実施形態においては、通気路4の主要部42が断面視で略直線状に形成されているが、それだけに限られず、本発明においては、通気路の主要部が、曲率半径が大きい曲線状に形成されるようにしても良い。例えば、上あご片の裏側傾斜面や下あご片の表側傾斜面を湾曲面に形成して、通気路の主要部を断面円弧状や緩やかな波状に形成するようにしても良い。
【0102】
さらに本発明においては、通気路の主要部における表面側端部が、裏面側端部に対し、表面側(室内側)に配置していれば良く、通気路の主要部の一部に、パネル並列方向(壁面)に対し傾斜していない部分が含まれていても良い。換言すれば、上あご片の裏側傾斜面の先端が、基端よりも表面側(屋内側)に配置されるとともに、下あご片の表側傾斜面の先端が、基端よりも裏面側(屋内壁面側)に配置されていれば良く、表面側傾斜面および裏面側傾斜面の一部に、傾斜していない部分が含まれていても良い。
【0103】
さらに本発明においては、裏面側傾斜面は、上あご片の裏側の面における少なくとも一部に設けられていれば良く、同様に、表面側傾斜面は、下あご片の表側の面における少なくと一部に設けられていれば良い。
【0104】
また上記実施形態においては、木質パネル1として帯板形状のものを用いているが、それだけに限られず、本発明において、木質パネルの形状は特に限定されるものではなく、正方形や長方形等の四角形状のもの、四角形以外の多角形状のもの、異形状のものを用いても良い。さらに異なる大きさの木質パネルを複合して用いるようにしても良い。
【0105】
また上記実施形態においては、ひとつの壁面を仕上げるに際して、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とのいずれか一方のみで施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、ひとつの壁面に対し、パネル間近接形態と、パネル間隔離形態とを併用して施工するようにしても良い。例えば木質パネルを1枚毎にパネル間近接形態とパネル間隔離形態とで交互に施工することにより、2枚毎にパネル間に隙間が形成されるように施工しても良い。さらに多数のパネル間のうち、ランダムな位置のパネル間に大きめの隙間を形成するようにしても良い。
【0106】
また上記実施形態において、パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部を離間させるようにしているが、それだけに限られず、本発明において、パネル間近接形態で、隣り合う木質パネルの対向縁部を接触させるようにしても良い。
【0107】
さらに上記実施形態においては、木質パネルを、その上あご片が形成される側の縁部(一側縁部)を上側して施工するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、上あご片が形成される側の縁部(一側縁部)を下側して施工するようにしても良い。
【0108】
また上記実施形態においては、帯板形状の木質パネル1を水平方向(左右方向)に沿わせた状態で、上下方向に並列に並べて複数配置するように施工する場合を例に挙げて説明したが、本発明において、木質パネルの配列方向は限定されるものではない。例えば本発明において、帯板形状の木質パネル垂直方向(上下方向)に沿わせて配置した状態で、横方向に並列に並べて複数配置するように施工しても良い。この場合、木質パネルの並列方向(並び方向)は水平方向(左右方向)となる。
【0109】
また上記実施形態においては、パネル間設置体として、正面視四角形状(長方形)のものを用いているが、それだけに限られず、本発明においては、他の形状、例えば5角形以上の多角形のものを用いても良い。
【0110】
また本発明において、一径方向とは、径方向のいずれか一つの方向であり、他の径方向とは一径方向に対し直交し、かつ径方向のいずれか一つの方向である。
【0111】
また上記実施形態においては、木質パネルとして、集成材を用いるようにしているが、本発明において、木質パネルの素材は特に限定されるものではなく、無垢材等を用いても良く、要は木質系の素材であればどのような素材を用いても良い。
【0112】
さらに本発明において、木質パネルは、部分的に、合成樹脂や合成ゴム等の非木質系の部材が含まれていても良い。
【0113】
また取付具の素材はPPだけに限られず、取付具を、他の合成樹脂や、合成樹脂以外の素材、例えば金属等によって構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0114】
この発明の木質パネルの取付構造は、屋内の壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される壁面構造に利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1:木質パネル
2:一側縁部(下側縁部、対向縁部)
21:上あご片
22:裏側傾斜面
3:他側縁部(上側縁部、対向縁部)
31:下あご片
32:表側傾斜面
4:通気路(隙間)
41:表面側開口部
42:主要部
43:裏面側開口部
5:取付具
6:壁面設置体
7:パネル間設置体
D1:横方向(短径方向)
D2:縦方向(長径方向)
H1:横方向寸法
H2:縦方向寸法
W:壁面(屋内壁面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造であって、
隣り合う木質パネル間に隙間が形成されるとともに、その隙間が木質パネルの表面側および裏面側間を連通する通気路として構成され、
前記通気路は、パネル表面側に開口する表面側開口部と、パネル裏面側に開口する裏面側開口部と、前記表面側開口部および前記裏面側開口部間を連通する主要部と、を有し、
前記表面側開口部が、前記裏面側開口部に対し、木質パネルの並列方向に位置をずらせて配置され、
前記通気路の主要部が、前記表面側開口部側から前記裏面側開口部側に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜していることを特徴とする木質パネルの取付構造。
【請求項2】
隣り合う木質パネルの対向縁部のうち一方側の木質パネルにおける対向縁部の表面側に、他方側の木質パネルに向けて延びる上あご片が設けられるとともに、他方側の木質パネルにおける対向縁部の裏面側に、一方側の木質パネルに向けて延びる下あご片が設けられ、
前記上あご片の裏側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面から遠ざかるように傾斜する裏側傾斜面が設けられるとともに、前記下あご片の表側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜する表側傾斜面が設けられ、
前記通気路の主要部が、前記上あご片の裏側傾斜面と、前記下あご片の表側傾斜面との間の隙間によって形成される請求項1に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項3】
木質パネルは、帯板形状を有し、
木質パネルがその長さ方向を水平方向に配置した状態で上下方向に並んで配置され、
上下方向に隣り合う木質パネル間に前記通気路が形成される請求項1または2に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項4】
木質パネルを屋内壁面に取り付けるための取付具を備え、
前記取付具は、屋内壁面に設置される壁面設置体と、その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを有し、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成された請求項1〜3のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項5】
隣り合う他の木質パネルに対して縁部同士を対向させて、屋内壁面に沿って複数並べて施工される木質パネルであって、
両側縁部のうち一方側の縁部における表面側に、側方に向けて延びる上あご片が設けられるとともに、他方側の縁部における裏面側に、側方に向けて延びる下あご片が設けられ、
前記上あご片の裏側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面から遠ざかるように傾斜する裏側傾斜面が設けられるとともに、前記下あご片の表側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜する表側傾斜面が設けられたことを特徴とする木質パネル。
【請求項1】
屋内壁面から離間した状態で屋内壁面に沿って複数の木質パネルが並べて施工される木質パネルの取付構造であって、
隣り合う木質パネル間に隙間が形成されるとともに、その隙間が木質パネルの表面側および裏面側間を連通する通気路として構成され、
前記通気路は、パネル表面側に開口する表面側開口部と、パネル裏面側に開口する裏面側開口部と、前記表面側開口部および前記裏面側開口部間を連通する主要部と、を有し、
前記表面側開口部が、前記裏面側開口部に対し、木質パネルの並列方向に位置をずらせて配置され、
前記通気路の主要部が、前記表面側開口部側から前記裏面側開口部側に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜していることを特徴とする木質パネルの取付構造。
【請求項2】
隣り合う木質パネルの対向縁部のうち一方側の木質パネルにおける対向縁部の表面側に、他方側の木質パネルに向けて延びる上あご片が設けられるとともに、他方側の木質パネルにおける対向縁部の裏面側に、一方側の木質パネルに向けて延びる下あご片が設けられ、
前記上あご片の裏側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面から遠ざかるように傾斜する裏側傾斜面が設けられるとともに、前記下あご片の表側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜する表側傾斜面が設けられ、
前記通気路の主要部が、前記上あご片の裏側傾斜面と、前記下あご片の表側傾斜面との間の隙間によって形成される請求項1に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項3】
木質パネルは、帯板形状を有し、
木質パネルがその長さ方向を水平方向に配置した状態で上下方向に並んで配置され、
上下方向に隣り合う木質パネル間に前記通気路が形成される請求項1または2に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項4】
木質パネルを屋内壁面に取り付けるための取付具を備え、
前記取付具は、屋内壁面に設置される壁面設置体と、その壁面設置体の表面側に設けられ、かつ隣り合う木質パネル間に配置されるパネル間設置体とを有し、
前記パネル間設置体は、軸心に対し直交する径方向の寸法が、一径方向と、他の径方向とで異なるように形成されるとともに、両径方向のうち、寸法が短い側の径方向が短径方向、長い側の径方向が長径方向として構成され、
前記パネル間設置体をその短径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記短径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間近接形態と、前記パネル間設置体をその長径方向を木質パネルの並列方向に一致させた状態に配置して、前記パネル間設置体の前記長径方向両側に、隣り合う木質パネルの対向縁部をそれぞれ支持するようにしたパネル間隔離形態との間で選択して、木質パネルが屋内壁面に取り付けられるよう構成され、
前記パネル間隔離形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が離間して配置されるとともに、前記パネル間近接形態では、隣り合う木質パネルの対向縁部が、前記パネル間隔離形態の場合と比べて近接して配置されるよう構成された請求項1〜3のいずれか1項に記載の木質パネルの取付構造。
【請求項5】
隣り合う他の木質パネルに対して縁部同士を対向させて、屋内壁面に沿って複数並べて施工される木質パネルであって、
両側縁部のうち一方側の縁部における表面側に、側方に向けて延びる上あご片が設けられるとともに、他方側の縁部における裏面側に、側方に向けて延びる下あご片が設けられ、
前記上あご片の裏側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面から遠ざかるように傾斜する裏側傾斜面が設けられるとともに、前記下あご片の表側の面に、先端に向かうに従って屋内壁面に近づくように傾斜する表側傾斜面が設けられたことを特徴とする木質パネル。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−158921(P2012−158921A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19623(P2011−19623)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2010年11月17日〜2010年11月19日 社団法人日本インテリアファブリックス協会主催の「インテリアトレンドショー(第29回JAPANTEX2010)」に出品
【出願人】(000213769)朝日ウッドテック株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2010年11月17日〜2010年11月19日 社団法人日本インテリアファブリックス協会主催の「インテリアトレンドショー(第29回JAPANTEX2010)」に出品
【出願人】(000213769)朝日ウッドテック株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
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