説明

木質系材料薄板の炭化方法及び該方法により得られた炭化物

【課題】木質系材料薄板の厚さが約1mm以下になると、それを酸素遮断雰囲気或いは低酸素雰囲気で加熱炭化すると、炭化された薄板にクラックや割れ、凹凸、反り等が発生し、厚さが小さくなるほど顕著になる。これらの現象の発生を防止し、0.1〜0.2mm程度のいわゆる薄経木でも平坦に炭化できる炭化方法を提供すること。
【解決手段】間隔Aを有して配置された2枚の耐熱性平板の間に、厚さBを有する木質系材料薄板を配置し、A−Bが約0.2mm以下になるように保たれた状態で、酸素遮断雰囲気或いは低酸素雰囲気で加熱炭化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質系材料薄板を炭化する際に、炭化物にクラックや割れ、しわや凹凸が発生せず、また反りも殆ど発生しない炭化方法、及び該方法により得られた炭化物に関する。
【背景技術】
【0002】
木質系材料、例えば、木材を酸素遮断雰囲気或いは低酸素雰囲気において約300℃以上の温度で、自由状態で炭化すると、木材の炭化物が得られる。木材の炭化物の代表として、木炭について説明する。木炭の長さ方向(木の長さ方向、軸方向ともいわれる、或いは道管や仮道管の方向とも呼ばれる)とそれに直交する面(木の年輪が同心円状に見える面、木口面と呼ばれる)を観察すると、長さ方向にクラックや割れが生じているのが一般的である。また、長さ方向に直交する面内においてもクラックや割れが生じているのが一般的である。これらの方向以外の方向にもクラックや割れが生じていることがある。
【0003】
木炭の場合と同様に、一般に木材の板や角材を炭化すると、クラックや割れが発生する以外に、長さ方向において反ったり、長さ方向と直交する面(断面)において、元の形状が歪んでいるのが一般的である。板の厚さが比較的小さく、しかも幅よりかなり小さい場合は、断面の形状変化は殆ど問題がなく、反りが問題であることが多い。例えば、板厚が2mmで幅が20mm、長さが100mmの板を炭化すると、断面の形状変化はあまり大きくないが、長さ方向において弧状に反ることが多い。
【0004】
厚さが約1mmより小さい単板になると、状況は全く違ってくることが分かった。例えば、図3の写真のように、左から厚さが0.15mm程度のいわゆる薄経木、0.25mmのカンナくず、0.45mmのカンナくず、1mmの厚経木を自由状態で炭化すると、厚さが小さくなるほど、反り、ねじれ、波状の凹凸が顕著に発生することが認められる。図4は、厚さが約0.17mm、サイズが約150×130mmのエゾ松製薄経木を400℃で、自由状態で炭化した場合の外観を示す写真である。激しくうねりやしわ(凹凸)が発生しているのが分かる。凹凸の発生状況は、薄経木の保管状態や木目の出来具合により千差万別である。経木の厚さが0.3mm〜0.5mmになっても傾向は殆ど同じである。薄経木の炭化物をリチウムイオン電池やキャパシタのセパレータ或いは導電性炭化物として利用しようとする場合、このように不規則に変形していたのでは使用することが困難である。
【0005】
従来、針葉樹の木炭を広葉樹の木炭(例えば備長炭)のように、硬くて火持ちのよい木炭にするために、針葉樹を加圧圧縮して広葉樹のような緻密な構造にしてから炭化することが知られている。しかし、木材の炭化処理中に木材を加圧することは知られていない。本発明者は高温炭化処理中に、木質系材料薄板を一定の条件下で加圧することにより、クラックや割れが発生せず、うねりやしわ(凹凸)及び反りも発生しないことを発見し本発明に到達した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−285127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、木質系材料の薄板を酸素遮断雰囲気或いは低酸素雰囲気において高温で焼成して炭化物薄板を得る方法において、得られる炭化物薄板にうねりやしわ(しわ状の凹凸と表現することもできる)及び反りが発生せず、更にクラックや割れが発生しない方法及び該方法により得られた炭化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、間隔Aを有して配置された2枚の耐熱性平板の間に、木質系材料薄板をn枚(nは1又はそれ以上の自然数、n枚の炭化中の厚さをBとする)配置した状態で、該n枚の薄板を酸素遮断雰囲気或いは低酸素雰囲気で高温で焼成して炭化する方法において、焼成中にA−Bが0乃至約0.2mmの範囲に保たれるように前記2枚の耐熱性平板の間隔を保持することにより達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法により得られた炭化物薄板には、クラックや割れが無く、うねりやしわも無く、更に反りも殆ど発生していない。従って、本発明方法により得られた炭化物薄板は多くの用途に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の実施形態を示す側面図である。
【図2】図2は本発明の簡便な実施形態を示す側面図である。
【図3】図3は4種の薄板が従来の方法で300℃で炭化された場合に、変形した様子を示す写真である。
【図4】図4は従来の方法で薄経木が400℃で炭化された場合に、多数の凹凸発生した状況を示す写真である。
【図5】図5は間隔Dが約0.5mm、炭化温度が300℃で炭化された薄経木の、本発明との比較のための写真である。
【図6】図6は間隔Dが約0.3mm、炭化温度が300℃で炭化された薄経木の、本発明との比較のための写真である。
【図7】図7は本発明により間隔Dが約0.2mm、炭化温度が300℃で炭化された薄経木の写真である。
【図8】図8は本発明により間隔Dが約0.04mm、炭化温度が850℃で炭化された薄経木の写真である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の課題を解決するための実施形態を示す説明図で、水平に置かれた耐熱性平板1の上に、厚さBを有する木質系材料薄板3が載せられている。木質系材料薄板3に近接して耐熱性平板2が配置されている。平板1は例えば図示されていない水平な台の上に置かれている。4は平板2の取り付け部材或いは支持部材であり、接合、融着、ネジ止め等により平板2に固定されている耐熱性部材である。5は指示部材4を調整機構6に連結している耐熱性の例えば金属、セラミック等の棒状の連結部材である。調整機構6は図示されていない炭化炉の外部に配置されている。耐熱性平板1と2の間隔をAで示した。平板1と2は同一形状、同一材質でも、違っていても構わない。平板1或いは2の具体例としては、金属板(特にステンレス板が優れている)、セラミック板、石英ガラス板等で、その表面が平滑なものが望ましい。耐熱性平板1と2の、木質系材料薄板3と接触する面が汚れていると、加熱炭化中に木質系材料薄板3がその部分に固着し、その結果収縮が妨げられてクラックが生ずる恐れがあるので、耐熱性平板1と2の表面は、平滑であるだけでなく清潔でなければならない。平板2と木質系材料薄板3との間隔をDとする。図1では木質系材料薄板3が完全に平坦であるとして描かれているが、実際には生の状態の木質系材料薄板3はわずかに反ったり、わずかな凹凸が有るのが普通なので、間隔Dを平板状部材2と木質系材料薄板3との間隔とするよりは、D=A−Bとするのがよい。間隔Dは約0.2mm以下の範囲が適当であることが分かった。木質系材料薄板3の厚さBは、焼成中に熱収縮により少し小さくなるので、間隔Dはそれを考慮した値である。一般に木質系材料は、高温焼成炭化中に元の厚さの70〜80%に収縮することが知られている。また、炭化温度により収縮量が変化することも知られている。例えば、300℃で炭化した場合は90%に、500℃で炭化した場合は80%に、800℃で炭化した場合は75%にというように変化するので、炭化中の温度に応じてBを知ることができる。間隔Dの調整は、調整機構6により実施される。調整機構6にはカム機構、ネジ機構、その他の適当な手段により、平板2を上下させる機構が内蔵されている。調整機構6には、調整機構6を下降させて間隔Dがゼロになった際、平板2を木質系材料薄板3に押し付けて加圧する機構も含まれている。例えば、バネ機構が内蔵されており、平板2が木質系材料薄板3に接したら、そこからバネが作動し、平板2をバネの力で木質系材料薄板3に押し付けることができる。図1では木質系材料薄板3、平板1及び2が水平に配置されているが、垂直或いは斜めに配置することもできる。
【0012】
図5は間隔Dが0.5mm、図6は間隔Dが0.3mm、図7は間隔Dが0.2mmで、炭化温度が約300℃の場合の薄経木の炭化後の写真である。図5ではしわ、凹凸がかなり激しく発生しているが、図6では大幅に軽減したが、まだ少し認められる。図7では反りは残るが、しわ、凹凸は皆無である。反りは加熱時間を充分に長くするか、加熱温度を高くすれば解消されることが確認された。図7の場合は300℃で6時間であるが、これを10〜12時間にすれば、反りは無くなる。温度を500〜600℃にすれば、30分でも反りは発生しない。一部に凹凸のように見える部分があるが、これは元の薄経木に発生している不均一な部分である。これらの結果から、Dの上限が約0.2mmと決定された。Dはゼロに限りなく近いことが望ましい。D=0であっても構わないが、この場合は木質系材料薄板に過剰な力が加わらないようにする必要がある。過剰な力が加わると、木質系材料薄板が自由に熱収縮できなくなり、その結果クラックや割れが発生することがある。
【0013】
図2は本発明の簡便な実施形態を示す説明図の側面図で、平板状部材1と2は図1の場合と同様のものである。7は平板状部材1と2の一端部間に配置されたスペーサであり、8はその反対側の端部間に配置されたスペーサである。スペーサ7と8の厚さは、平板1と2の間隔と同じである。この場合、間隔Aはスペーサ7と8により形成されているのである。スペーサ7と8の厚さは、焼成の過程で木質系材料薄板3が自由に収縮できるように、木質系材料薄板3の厚さより少し大きめに設定されている。スペーサ7と8は同一形状、同一材質のものでもよい。図2の方法では、木質系材料薄板と平板状部材との間に常に微小な間隙があるので、木質系材料薄板に荷重が加わることが無く、また木質系材料薄板から発生するガスを逃がすことができるというメリットもある。
【0014】
スペーサ7と8が、金属板、ガラス板、セラミック板等で構成される場合、焼成中にその厚さは殆ど変化しないが、木質系材料薄板3の厚さは元の厚さの約80%前後に収縮するのが普通である。従って、スペーサとして木質系材料薄板3と同様に焼成中に厚さが小さくなるものが一層優れている。例えば、炭化しようとしている木質系材料薄板3と同一のものと、それに加えて薄い紙を重ねてスペーサとすることにより、間隔Dを薄い紙の厚さと同じにすることができる。紙の代わりに非常に薄い経木を用いることもできる。紙としてはコピー用紙、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、新聞紙、和紙、その他類似の薄い紙類があげられる。スペーサ7、8を配置する代わりに、耐熱性平板1又は2の四隅或いは端部にスペーサの厚さと同じ高さの突起を設けてもよい。図1の方法においてもスペーサを使用することができる。スペーサを使用すれば、間隔調整機構は平板2が常にスペーサに突き当たるように単純に加圧すればよいので、機構が簡単になる。
【0015】
以上の説明は木質系材料薄板が1枚の場合についてであるが、木質系材料薄板が複数枚になっても、本発明方法を適用することができる。本発明において木質系材料薄板を複数枚重ねて炭化する場合、同一種類の木質系材料薄板のみを重ねる必要はなく、異種の木質系材料薄板を組み合わせて重ねてもよい。例えば、薄経木とコピー用紙、コピー用紙と新聞用紙のように組み合わせてもよい。更に、同種の木質系材料薄板であっても、厚さが異なるものを複数枚組み合わせてもよい。
【0016】
本発明において木質系材料薄板とは、木材単体の薄板の他に、紙類(ティッシュペーパー、トイレットペーパー、コピー用紙、新聞用紙、便箋用紙、和紙、その他)、ファイバーボードの薄板、薄板合板、木材単体の薄板に樹脂を含浸したもの等があげられる。本発明方法を主に木質系材料の薄板に適用する場合について説明したが、10mm前後の厚い部材にも適用できる。
【実施例1】
【0017】
炭化炉内の水平な台の上に置かれた厚さ5mm、サイズ130×110mmの陶板の上に、厚さ0.17mm、サイズ100mm角のエゾ松製薄経木を載せ、その左右に約5mmの距離を保って100×10mmサイズ、厚さ0.2mmのステンレス製ストライプをスペーサとして配置した。その上から厚さ約2.3mm、サイズ約130×110mmのガラス板を載せた。次に厚さ3mm、サイズ100mm角のステンレス板の中央に面に垂直にステンレスパイプ(内径10mm、肉厚約1.8mm、長さ20mm、側面に穴径2mmのねじ穴が設けられている)状の受け部を溶接したものを、受け部を上にして上記のガラス板の上に載せた。次いで炭化炉の天井に設けられた穴からステンレスパイプ(外形10mm、肉厚1mm、長さ400mm)を差し込み、パイプの一端をステンレス板に溶接された受け部に嵌め、ねじ止めした。炭化炉から出ているステンレスパイプの他端には、重りをのせたり、ばね圧をかけたりできるが、本実施例ではすでに十分な荷重がステンレスストライプにかかっているので、これ以上の加圧はしなかった。炭化炉には扉の周囲に隙間があるので、上記の陶板、ガラス板、ステンレス板等を含む系をアルミ箔で包み、なるべく空気が遮断されるようにした。更に炭化炉の隙間をアルミ箔で塞ぎ、空気遮断雰囲気とした。この状態で室温から約300℃まで一定の速度で約30分で上昇させ、その後約2時間300℃に保持した後、毎分230℃の速度で500℃まで上昇させ、約30分500℃に保持した後、自然放置して冷却させた。冷却後、炭化薄経木を観察したところ、凹凸や反りもなく、クラックや割れも発生していなかった。全炭化工程を通してDは0.1mm以下であった。
【実施例2】
【0018】
厚さ2.7mm、サイズが120×120mmのガラス板の中央部に、市販のトイレットペーパー(厚さ0.11mm、サイズ90×60mm、ダブルタイプ)を置き、その両側に約5mmの間隔をおいて2枚のスペーサを配置した。スペーサとして、薄経木のストライプ(厚さ0.17mm、サイズ10×100mm)を用いた。その上に同寸法のガラス板を載せ、その上に同様にして市販のティッシュペーパー(厚さ0.073mm、サイズ90×60mm)を置き、上記と同様にしてスペーサを配置した。その上から同寸法のガラス板を載せ、市販のコピー用紙(厚さ0.09mm、サイズ90×60mm)を置き、同様にしてその両側に上記と同様のスペーサを配置し、その上に同寸法のガラス板を載せた。これらの3段重ねのセットをアルミ箔でシールした後、炭化炉に入れ、更に炭化炉の隙間をアルミ箔で塞ぎ、空気遮断雰囲気とした。この状態で室温から約300℃まで一定の速度で約30分で上昇させ、その後約6時間300℃に保持した後、自然冷却後、取り出した炭化シートには、クラックや割れが全く無く、凹凸も反りも無かった。全炭化工程を通してDは約0.1mm以下であった。
【実施例3】
【0019】
厚さ2.7mm、サイズ120mm角のガラス板の上に、厚さ0.17mm、サイズ100×90mmのエゾ松製薄経木を載せ、その長辺の左右に約5mmの距離を保って100×10mmサイズの同経木を置き、更にその上に100×10mmサイズの新聞用紙を載せてスペーサとした。これらの上から上記と同寸法のガラス板を重ねて置いた。このセットをアルミ箔でシールした後、実施例2と同様にして300℃で6時間加熱、炭化した。得られた炭化シートにはクラックや割れが無く、また凹凸も無くほぼ平坦であった。この炭化シートを厚さ2.3mm、サイズ125mm角の石英ガラス板の上に置き、炭化シートの両側に上記炭化されたスペーサを約2mm離して置いた。これらの上に同寸法の石英ガラス板を載せた後、このセットを内径約220mmで高さが約180mmのセラミック容器に入れ、密閉性のよいセラミック製の蓋をした。蓋は容器内の圧力が大きくなった際に、その圧力で少し持ち上がり、ガスが逃げられるようになっている。容器内に存在している空気による酸化を防止するため、容器内に酸素除去用の鉄粉を10g散粉した。容器を炭化炉に入れ、毎時230℃の割合で温度を上昇させ、850℃に30分保持した後、室温まで自然冷却した。このようにして得られた炭化シートは、完全に平坦で、凹凸もクラックも無かった。図8はその写真である。炭化工程中、Dは常に0.06mm以下であった。
【実施例4】
【0020】
厚さが約0.17mm、サイズが80×80mmのエゾマツ薄経木を、板目の方向が交互に直交するように30枚重ねてガラス板(厚さ2.7mm、120mm角)の上に載せ、経木の両側に約5mmの間隔をあけて幅約20mm、長さ80mm、厚さ0.17mmのストライプ状経木を31枚をスペーサとして配置した。その上に上記と同寸法のガラス板を載せた。間隔Dは約0.15mmであった。この上に実施例1と同じステンレスパイプ付きステンレス板を載せ、このセットをアルミ箔でシールした。次いで実施例1と同様にしてステンレスパイプを炭化炉の天井から挿入してステンレス板にねじ止めした。炭化炉内には鉄粉を陶器皿に入れて配置した。炭化炉の隙間をアルミ箔でシールした後、ステンレスパイプの他端に2kgの重りを載せ、スペーサにかかる荷重を約360kg/mとした。次いで実施例2と同様にして加熱炭化した。得られた炭化物シートにはクラックや割れが無く、凹凸も発生していなかった。反りも殆ど無かった。炭化工程中、Dは常に0.15mm以下であった。
【実施例5】
【0021】
厚さ2.7mm、サイズ120mm角のガラス板の中央部に厚さ0.09mm、サイズ100mm角のコピー用紙1枚を置き、その上に厚さ0.17mm、サイズ100mm角の薄経木1枚を載せ、その上に同寸法のコピー用紙、同寸法の薄経木の順に交互に合計4枚重ねた。この4枚重ねの両側に、100×10×0.17mmの薄経木2枚と100×10×0.09mmのコピー用紙3枚を重ねたストライプ状のスペーサを配置した。これらの上から上記と同寸法のガラス板を重ね、その上に100×100×3mmのステンレス板をのせ、更にその上に重さ約1kgの鉄ブロックを載せ、スペーサに約132kg/mの荷重がかかるようにした。この状態で実施例2と同様にして300℃で加熱炭化したところ、僅かな反りは有ったが、クラックや割れが無く、凹凸も無い炭化シートが得られた。炭化工程中、Dは常に0.1mm以下であった。
【実施例6】
【0022】
厚さ2.7mm、サイズ120mm角のガラス板の中央部に厚さ1mm、サイズ80×80mmの厚経木を置き、その上に同サイズで0.17mmの薄経木を載せた。その両側に100×10×1mmの厚経木ストライプを約2mm離してスペーサの一部として配置した。このストライプの上に100×10×0.17mmの薄経木のストライプを2枚ずつ重ねてスペーサとした。これらの上に同寸法のガラス板を重ね、その上に100×100×3mmのステンレス板をのせ、更にその上に重さ約1.5kgの鉄ブロックを載せ、スペーサに約285kg/mの荷重がかかるようにした。この状態で実施例2と同様にして300℃で加熱炭化したところ、殆ど反りが無く、クラックや割れも無く、凹凸も無い炭化シートが得られた。炭化工程中、Dは常に0.17mm以下であった。
【実施例7】
【0023】
実施例1と同様の装置を用い、厚さ2.3mm、サイズ80×60mmの合板を、実施例1の陶板の中央部にのせ、その上に実施例1と同じ受け部を有する100×100×3mmのステンレス板を、受け部を上にして載せ、炭化炉の天井からステンレスパイプを挿入してステンレス板にねじ止めした。ステンレスパイプの他端には、内径10mm、外径約14mm、長さ10mmのステンレスキャップが被せられている。ステンレス板が合板に丁度接する位置で、炭化炉の外上部に配置された鉄製角材にステンレスパイプ先端のキャップが当接するように配置した。鉄製角材の、ステンレスキャップに当接する位置に、6mmのねじ穴が設けられ、棒状ハンドルの先端に固定された6mmのねじが取り付けられ、ハンドルを回してねじを締めることによりステンレスパイプを押し下げることができる。陶板とステンレス板の間に合板が配置された系を、アルミ箔でシールした後、実施例2と同様にして300℃で8時間加熱炭化の設定で炭化を開始した。加熱温度が上昇するに伴い、合板が熱収縮するので、ハンドルが弱い力で容易に回せるようになる。弱い力でハンドルが回らなくなる位置でハンドルを停止した。温度が300℃に達するまでは約50℃上昇するたびにこの操作を繰り返した。300℃に到達してからは、30分間隔でこの操作を繰り返した。炭化工程中、Dは常に殆どゼロであった。加熱終了、自然冷却後、炭化された合板を確認したところ、全く平坦で凹凸もクラックもない炭化物薄板が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明方法により得られた炭化物薄板には、クラックや割れが無く、うねりやしわも無く、更に反りも殆ど発生しない。また本発明方法により得られた炭化物薄板は、ある程度の可撓性があり、リチウムイオン電池や電気二重層キャパシタのセパレータとして使用可能である。耐熱性のフィルター材料として利用することも可能である。その他、薄板であること、ナノオーダーレベルの微小な孔、窪み等を多数有するので、これらの特徴を利用した用途に供することができる。
【符号の説明】
【0025】
1、2 耐熱性平板
3 木質系材料薄板
4 耐熱性支持部材
5 耐熱性連結部材
6 間隔調整機構
7、8 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔Aを有して配置された2枚の耐熱性平板の間に、木質系材料薄板をn枚(nは1以上の自然数、n枚の焼成炭化中の厚さをBとする)配置した状態で、該n枚の薄板を酸素遮断雰囲気或いは低酸素雰囲気で高温で焼成して炭化する方法において、焼成中にA−Bが約0.2mm以下に保たれるように前記2枚の耐熱性平板の間隔を保持することを特徴とする木質系材料薄板の炭化方法。
【請求項2】
間隔Aが、2枚の耐熱性平板の間に配置されたスペーサによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の木質系材料薄板の炭化方法。
【請求項3】
スペーサが、木質系材料薄板と同程度の熱収縮特性を有することを特徴とする請求項2に記載の木質系材料薄板の炭化方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の方法により得られたことを特徴とする木質系材料薄板の炭化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−40243(P2013−40243A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176539(P2011−176539)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(397003079)
【Fターム(参考)】