説明

木造住宅の外壁構造、外壁工法、及び、既存外壁のリフォーム方法

【課題】外壁面材による耐震性能の向上を効果的に実現し、また、モルタル外壁などの塗り壁の内側に土壁を有する外壁構造において、外壁面材に変更するリフォームにおいても、耐震性能の観点などから効果的に外壁面材を導入することを可能とするための技術について提案する。
【解決手段】建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱3Aに対し、外壁面材7Aが止め具4Aによって止め付けられる、木造住宅の外壁構造10とする。また、間柱3Aは、見付幅3Wが見込幅3Dよりも大きく設定されることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁を構成するための外壁構造、及び、外壁工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窯業系サイディングなどの外壁面材により建物の耐震性能を向上させるための技術が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
そして、外壁面材の止め付けの形態は、図7(a)に示すごとく、柱91や間柱92の間に横方向の胴縁93を止め付けるとともに、この胴縁93に対して外壁面材90がビス94などの止め具にて固定されるものが知られている。また、このような外壁面材の留め付けの形態は、室内の湿気の排気や、雨水の排出のために、通気胴縁を用いる構造においても採用されるものである。
【0004】
また、図7(b)に示すごとく、従来の間柱92においては、断面寸法の見付幅92Wは、見込幅92Dの1/3程度(3分の1程度)とされており、特許文献1の段落0064、及び、図の14に開示される仕様においても、間柱の見付幅を30mmとするとともに、見込幅は105mmとしているものである。
【0005】
このように見付幅が見込幅よりも小さくされるのは、従来では、間柱は、外壁、内壁およびその下地を保持するために用いるもので、細かく柱を設置したのではかなりのコストアップになるため、柱に代わって柱よりも細い材を使用し、方向としては、柱と間柱の室内面及び室外面を一致させるため、つまりは、柱と間柱の見込幅を同一とするためである。即ち、間柱については、必然的に、見付幅が見込幅よりも小さく設定されるのであった。
【0006】
さらに、図8(a)に示すごとく、築年数の多い古い木造住宅においては、モルタル外壁95(外装)などの塗り壁の内側に、貫と小舞からなる下地に土を塗った土壁96を設けた構成が知られている。この土壁96の室内側面は内装壁としても機能するものである。そして、このような構成の外壁のリフォームにおいては、モルタル外壁95を撤去するとともに、図8(b)に示すごとく、既存の間柱98に胴縁93を取り付け、この胴縁93に外壁面材90を止め付けることが行われる。若しくは、土壁96も撤去して、柱97と略同一の見込幅の間柱を設置することで、図7(a)(b)と同等の構造とすることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−231765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図7(a)(b)に示す従来の外壁面材90の止め付けの形態では、外壁面材90が胴縁93に対してのみ止め付けられる構造となっており、間柱92に直接的に止め付けられているものではないため、建物の耐震性能にかかわる構造躯体への力の伝達を考えると、胴縁93に加わった力は、距離のある柱に伝わる構造となっている。このため、外壁面材90が発揮し得る耐震性能を、水平面内方向の地震力や、水平面外方向の風圧力に対して効果的に発揮させることについては、その効果を低減させてしまう構造となっている。
【0009】
また、仮に、図7(a)(b)に示す構成において、外壁面材90が胴縁93のみならず、間柱92にも直接的に止め付けられた場合に、どれだけ耐震性能を向上させることができるかについては、検討がなされていなかった。
【0010】
さらに、図8(b)に示すごとく、築年数の長い古い木造住宅において、上述したようなリフォームの形態の場合についても、外壁面材90が胴縁93に対してのみ止め付けられる構造となるため、図7(a)(b)の構造の場合と同様なものとなる。また、図8の構成において、土壁96を撤去して図7(a)(b)と同等の構造とする場合には、土壁96の撤去作業はもちろんのこと、内装のやり直しも生じることになってしまう。
【0011】
そこで、本発明は以上の問題に鑑み、外壁面材による耐震性能の向上を効果的に実現し、また、モルタル外壁などの塗り壁の内側に土壁を有する外壁構造において、外壁面材に変更するリフォームにおいても、耐震性能の観点などから効果的に外壁面材を導入することを可能とするための技術について提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、請求項1に記載のごとく、
建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱に対し、外壁面材が止め具によって止め付けられる、木造住宅の外壁構造とするものである。
【0014】
また、請求項2に記載のごとく、
前記間柱が配置される箇所に、
左右に隣り合う前記外壁面材の継目部が配置されるようになっており、
前記各外壁面材が、前記止め具によって、それぞれ、前記間柱に対して固定されることで、両外壁面材が間柱を介して一体化されるものである。
【0015】
また、請求項3に記載のごとく、
前記間柱は、見付幅が見込幅よりも大きく設定される、こととするものである。
【0016】
また、請求項4に記載のごとく、
上下の梁材の間に間柱を設ける工程と、
前記間柱の室外側に胴縁を止め付ける工程と、
前記胴縁の室外側に外壁面材を配置して、前記外壁面材を前記間柱に対して止め付ける工程と、を有し、
前記間柱は、見付幅が見付幅よりも大きく設定される、外壁工法とするものである。
【0017】
また、請求項5に記載のごとく、
既存外壁を撤去して新たな外壁面材を設置する、既存外壁のリフォーム方法であって、
前記既存外壁を撤去する工程と、
前記内壁の室外側に間柱を配置する工程と、
前記間柱に対して外壁面材を止め付ける工程と、を有し、
前記間柱は、見付幅が見付幅よりも大きく設定される、既存外壁のリフォーム方法とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
即ち、請求項1に記載の発明においては、
外壁面材が建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱に対して直接的に止め付けられる構成となり、外壁面材が発揮し得る耐震性能を、水平面内方向の地震力や、水平面外方向の風圧力に対して効果的に発揮させることが可能となる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明においては、
外壁面材の継目部(縦目地部)においても、各外壁面材が建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱に対して直接的に止め付けられて一体化した構成となり、外壁面材が発揮し得る耐震性能を、水平面内方向の地震力や、水平面外方向の風圧力に対して効果的に発揮させることが可能となる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明においては、
見付幅を見込幅よりも大きく設定することによれば、逆の設定の場合と比較して、外壁面材の水平面内方向の力に対する断面二次モーメントを大きくすることが可能となる。これにより、外壁面材に水平面内方向の力地震力が作用して、この力が間柱に作用した場合であっても、間柱のたわみ量を抑えることが可能となり、間柱と外壁面材が発揮する耐震性能の相乗効果によって、外壁構造の耐震性能を効果的に向上することが可能となる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明においては、
外壁面材が建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱に対して直接的に止め付けられる構成となり、外壁面材が発揮し得る耐震性能を、水平面内方向の地震力や、水平面外方向の風圧力に対して効果的に発揮させることが可能となる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明においては、
外壁面材が建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱に対して直接的に止め付けられる構成となり、外壁面材が発揮し得る耐震性能を、水平面内方向の地震力や、水平面外方向の風圧力に対して効果的に発揮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る外壁構造の全体的な構成を示した図。
【図2】(a)は本発明の一実施形態に係る外壁構造の水平断面図。(b)は間柱への外壁面材の止め付けについて説明する図。
【図3】(a)は本発明の一実施形態に係る外壁構造の正面図。(b)は従来の外壁構造の例について示す正面図。
【図4】本発明の実施例における構成について示す図。
【図5】比較例における構成について示す図。
【図6】外装をリフォームする際に本発明を適用する例について示す図。
【図7】(a)は従来の外壁面材の止め付けについて説明する図。(b)は外壁面材が間柱に止め付けられていない従来構成例について示す図。
【図8】(a)は室内側に土壁が配置される従来例について示す図。(b)は(a)の構成において外壁面材を使ったリフォームの形態について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施形態にかかる木造住宅の外壁構造10について示す図である。
図1に示すごとく、上下において梁材1A・1Bが横設され、この梁材1A・1Bの間に柱2A・2Bが上下方向に配設される。また、柱2A・2Bの間には、上下方向に間柱3A・3B・3Cが配設される。なお、図1に示す構成が建物の一階部分に配置される場合には、梁材1Bは土台として機能するものであって、梁材の用語には土台を含むものとする。
【0026】
また、図1に示すごとく、以上に述べた梁材1A・1B、柱2A・2B、間柱3A・3B・3Cの室外側に、これらの部材を覆うように透湿防水シート5が張設される。そして、この透湿防水シート5の室外側に、胴縁6・6・・・(横胴縁)が配設され、この胴縁6・6・・・が柱2A・2Bや間柱3A・3B・3Cなどに対して止め付けられる。
【0027】
また、図1に示すごとく、胴縁6・6・・・の室外側に、外壁面材7A・7Bが配設される。この外壁面材が、間柱3A・3B・3Cに対して止め付けられる。なお、外壁面材としては、窯業系サイディング、セラミック系サイディング、金属系サイディング、ALC板などの面材が適用し得るものであり、機械的強度に関しては、JIS A5422で規定されている曲げ強度690N以上であるものが好ましい。
【0028】
また、図1に示すごとく、間柱3A・3B・3Cの上下端部は、それぞれ、梁材1A・1Bに固定されることになっている。これにより、間柱3A・3B・3Cが、建物の耐震性能にかかわる構造躯体である梁1A・1Bに対し、スムーズに力が伝達できるようになっている。換言すれば、間柱3A・3B・3Cが建物の強度の向上に貢献し、耐震性能にかかわる部材として機能し得るものとなっている。
【0029】
また、図2(a)(b)に示すごとく、間柱3Aに対し、胴縁6が止め具8によって止め付けられている。さらに、間柱3Aに対し、外壁面材7Aが止め具4Aによって止め付けられている。止め具4Aは、胴縁6を通過して間柱3Aに到達するようになっており、これにより、外壁面材7Aは胴縁6に対しても止め付けられることになっている。つまり、外壁面材7Aは、胴縁6、及び、間柱3Aの両方に対して止め付けられるようになっている。なお、止め具4A・8については、ビス状のものとすることや、釘状のものとすることができる。
【0030】
そして、図2(a)(b)に示す構成では、外壁面材7A・7Bが建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱3Aに対して直接的に止め付けられる構成となり、間柱3Aと胴縁6と隣り合う2枚の外壁面材7A・7Bが一体化することで、外壁面材7A・7Bが発揮し得る耐震性能を、水平面内方向の地震力や、水平面外方向の風圧力に対して効果的に発揮させることが可能となる。
【0031】
また、図2(a)(b)に示すごとく、間柱3Aは、その水平断面の寸法において、見付幅3Wは、隣り合う2枚の外壁面材7A・7Bを一体化して機能させるために、外壁面材7A・7Bとその止め具4A・4Bを取付ける場合に必要な端空き距離MAと、胴縁6の必要端空き距離MB(木材の場合は最低でも5mm以上)の和の2倍以上の寸法とされることが好ましい。また、見付幅3Wは、見込幅3Dよりも大きく設定され、好ましくは、前記見付幅3Wは、見込幅3Dの4倍以下とされ、後述するように、実験をした例では、約3.9倍(105mm/27mm=3.88・・・)とされる。なお、間柱の見付幅とは、室外側において間柱をその正面から眺めたときの前方の面(室外側に向かう面)の幅のことをいい、間柱の見込幅とは、室外側において間柱をその正面から眺めたときの奥行き幅のことをいうものである。また、梁等の横架材への間柱6の止めつけは、N75の釘2本を斜め釘仕様で止める以上の引抜き耐力で止めつける方法で実施する必要がある。
【0032】
このように、見付幅3Wを見込幅3Dよりも大きく設定し、例えば、見付幅3Wを見込幅3Dの約4倍とすることによれば、逆の設定の場合、即ち、見込幅3Dを見付幅3Wよりも小さくする場合と比較して、外壁面材7Aの水平面内方向の力に対する断面二次モーメントを大きくすることが可能となる。これにより、外壁面材7Aに水平面内方向の力(地震力)が作用して、この力が間柱3Aに作用した場合であっても、間柱3Aのたわみ量を抑えることが可能となり、間柱3Aと外壁面材7Aが発揮する耐震性能の相乗効果によって、外壁構造の耐震性能を効果的に向上することが可能となる。
【0033】
もしくは、図2(a)(b)に示すごとく、間柱3Aの水平断面の寸法において、間柱3Aの見付幅3Wは、柱2Aの見付幅2Wと略同一とされる。このように、見付幅3Wを柱2Aの見付幅2Wと略同一とすることによって、見付幅3Wを見込幅3Dよりも大きく設定することとしてもよい。
【0034】
なお、後述するように、上記の倍率(見付幅3Wの見込幅3Dに対する倍率)を約3.9倍とすることによれば、倍率を約0.26(2.57)とする比較例と比較して、1.09倍の壁強さ倍率を得ることが実証されている。また、図7(a)(b)に示す従来の形態では、見付幅92Wが見込幅92Dよりも小さく設定されていたところ、同一断面積の間柱を配置する場合において、図2(b)に示すように、見付幅3Wを見込幅3Dよりも大きく設定することで、外壁面材7Aの水平面内方向の力(地震力)に対する断面二次モーメントを、図7(a)(b)に示す従来のものよりも確保できることは確実である。
【0035】
従って、上記の倍率の下限については、全ての倍率についてその効果を実証したものではないが、経済的観点からは、少なくとも2倍以上が望ましく、十分な効果(耐震性能の向上)を確保できることになる。また、上記の倍率の上限については、特に限定されるものではないが、あまり見込幅3Dが薄くなると間柱が面外座屈によって破損することもあり、また、間柱として利用される材料の流通の観点、さらには、規格品の採用などの観点から、4倍以内のものとすることが好ましい。
【0036】
また、図2(a)(b)に示すごとく、本実施例においては、間柱3Aが配置される箇所に、左右に隣り合う外壁面材7A・7Bの継目部9(縦目地部)が配置されるようになっており、各外壁面材7A・7Bが、止め具4A・4Bによって、それぞれ、間柱3Aに対して固定されるようになっている。
【0037】
これにより、外壁面材7A・7Bの継目部9(縦目地部)において、各外壁面材7A・7Bが建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱3Aに対して直接的に止め付けられる構成となり、外壁面材7A・7Bが発揮し得る耐震性能を、水平面内方向の地震力や、水平面外方向の風圧力に対して効果的に発揮させることが可能となる。
【0038】
また、図2(a)(b)に示すごとく、間柱3Aの見付幅3Wは、外壁面材7A・7Bとその止め具4A・4Bを取付ける場合に必要な端空き距離MAと胴縁6の必要端空き距離MB(木材の場合は最低でも5mm以上)の和の2倍以上の寸法とされることが好ましい。一般的に外壁面材7A・7Bがサイディングのような無機材の場合は、必要端空き距離MAは25mm〜40mm程度あり、有機材であれば15mm〜30mm程度であり、また、間柱3Aの見付幅3Wは無機材系で60mm以上、有機材系で40mm以上が望ましい。
【0039】
なお、間柱3Aの見付幅3Wの上限については、柱2Aの幅MCと同寸以内とすることが経済的にも性能的にも望ましい。
【0040】
以上が本発明の実施の形態である。
即ち、図1及び図2(a)(b)に示される外壁構造10のように、建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱3Aに対し、外壁面材7Aが止め具4Aによって止め付けられる、木造住宅の外壁構造10とするものである。
【0041】
また、図1及び図2(a)(b)に示される外壁工法として、上下の梁材1A・1Bの間に間柱3A・3B・3Cを設ける工程と、前記間柱3A・3B・3Cの室外側に胴縁6を止め付ける工程と、前記胴縁6の室外側に外壁面材7A・7Bを配置して、前記外壁面材7A・7Bを前記間柱3A・3B・3Cに対して止め付ける工程と、を含む構成とするものである。
【0042】
そして、図2(a)(b)に示すように、外壁面材7Aが建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱3Aに対して直接的に止め付けられる構成となり、外壁面材7Aが発揮し得る耐震性能を、水平面内方向の地震力や、水平面外方向の風圧力に対して効果的に発揮させることが可能となる。なお、本明細書において、「直接的に止め付けられる」とは、止め付けるための止め具4Aが、外壁面材7Aと間柱3Aの両方にじかに係わっている状態をいうものである。図2(b)の状態では、間柱3Aと外壁面材7Aの間に胴縁6が存在するが、この場合であっても、止め具4Aは、外壁面材7Aと間柱3Aの両方にじかに係わっているものである。
【0043】
また、図3(a)に示すように、本発明の実施形態によれば、外壁面材7A・7Bの継目部9(縦目地部)において、各外壁面材7A・7Bが建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱3Aに対して直接的に止め付けられる構成となり、地震などによって水平面内方向の力Pが作用した場合においても、2枚の外壁面材7A・7Bが1本の間柱3Aで接合されている構成となるため、外壁面材7A・7B同士のズレを抑える効果や、間柱3Aの変形を抑える効果も得ることが可能となる。さらに、2枚の外壁面材7A・7Bが胴縁6によっても接合されている構成となるため、外壁面材7A・7B同士のズレを抑える効果や、胴縁6の変形を抑える効果も得ることが可能となる。このように、本発明の実施形態によれば、2枚のサイディング(外壁面材)が1本間柱でジョイントされる構成が実現され得る。
【0044】
これに対し、図3(b)に示す従来例の場合では、2枚の外壁面材90A・90Bは胴縁93によってのみ接合される関係となっており、間柱92は接合に関与することがないため、仮に胴縁93が変形しただけでも外壁面材90A・90Bのズレが生じることになってしまうことになる。このように、従来例においては、2枚のサイディング(外壁面材)が1本間柱でジョイントされることはなく、胴縁のみによりジョイントされる構成となるのである。なお、胴縁93(横胴縁)は一般的に、幅が細く薄い部材にて構成されるため、ある一定の力Pが作用した際には、容易に変形してしまうものとも考えられる。
【0045】
以上のことから、図3(a)の構成によれば、図3(b)の従来の構成と比較して、耐震性能を向上させることが可能となる。
【0046】
<実施例と比較例>
次に、本発明の構成を適用した実施例と、比較例を用いて、本発明の構成による効果を説明する。主要な条件は次の通りである。
【0047】
(1)仕様
試験は実施例、比較例の仕様について行った。以下に主要な仕様について説明する。図4、図5に仕様の概要を示した。
・上梁21:断面105mm×180mm、長さ2730mm:樹種=米松(共通仕様)
・土台22:断面105mm×105mm、長さ2730mm:樹種=すぎ(共通仕様)
・上梁と土台の間隔:2594mm(共通仕様)
・柱23:断面105mm×105mm、長さ2594mm:樹種=すぎ(共通仕様)
・間柱24:断面105mm×27mm、長さ2594mm:樹種=すぎ(実施例)
・間柱25:断面27mm×105mm、長さ2594mm:樹種=すぎ(比較例)
・各間柱の上梁・土台への止めつけ:N75のくぎ2本 斜め打ち仕様
・柱、及び間柱の間隔455mm(共通仕様)
・胴縁26:18mm×50mm針葉樹構造用合板(共通仕様)
・胴縁の間隔:303mm(共通仕様)
・胴縁の止め付け:CN65くぎ:303mmピッチ
・外壁面材27:窯業サイディング:厚18mm×幅455mm×長さ2730mm(JISA5422品)
・外壁面材止め付け:ステンレス専用ビス:トラス頭付きφ5.0mm、L=50mm:4周どめ、縦方向303mmピッチ、上下端部の横方向150mmピッチ
・外壁面材の張り方:4枚を縦張り(外壁面材の長手方向が鉛直方向となるように配置)にて配列
【0048】
また、以下に実施例、比較例の仕様の概要を示す。
【表1】

【0049】
また、実施例は、図1における構成を想定した例である(湿防水シートを除く。)。
また、比較例は、実施例の間柱24の向きを変えることで、見込幅が見付幅よりも大きくなる間柱25を配置したものである。
【0050】
(2)試験条件
評価試験は、財団法人日本住宅・木材技術センターが定める「木造耐力壁及びその倍率の試験・評価業務方法書」に記載される試験方法に準拠して、壁の面内剪断試験を実施した。試験体幅柱間は1820mmとし、柱脚固定式として実施した。
【0051】
(3)試験結果
表2に試験結果を示す。
また、参考値は、実施例の値を比較例で除した値であって、比較例と比較して実施例がどれだけ耐震性能(壁強さ倍率)が向上したものであるかを示す指標である。
【表2】

【0052】
(4)評価
評価は「壁強さ倍率」を得ることで行った。
「壁強さ倍率」は、財団法人建築防災協会の「木造住宅の耐震診断と補強設計」に準拠される壁強さ倍率とした。詳しくは、壁倍率評価に使用する4つの耐力(降伏耐力Py、終局耐力Pu、最大耐力Pmax、特定変形時の耐力)のうち終局耐力Puを用いることにより得た。詳しくは、実験で得られたPuを用いて、0.2×(2μ−1)1/2×Puを算出し、これを試験体(外壁面材)の幅で除した値を「壁強さ倍率」とした。ここで、「μ」は塑性率を表し、上記実験においてせん断変形角と荷重との関係から得られる値である。
【0053】
表2における実施例を比較例で除した参考値から判るように、間柱の設置の方法を変えるとともに、間柱に外壁面材を固定することによって、高い壁強さ倍率が得られることが確認できた。具体的には、壁強さ倍率においては、約10%の数値増加が確認された。
【0054】
<他の実施の形態>
以上のように、実施例によれば、高い耐震性能(壁強さ倍率)を得ることができる。そして、この実施例の形態は、既存の木造住宅について、外壁構造をリフォームする際にも適用することができる。
【0055】
特に、図6(a)(b)(c)に示すごとく、モルタル外壁などの塗壁から構成される既存外壁31の室内側に土壁などの内壁32を有する構成を、外壁面材41A・41Bを用いてリフォーム(改装)する場合において、図6(b)に示すごとく、既存外壁31と既存間柱33を撤去するとともに、新たな間柱34を、上述の実施形態と同様に見付幅が見込幅よりも大きくなるような形態で設置し、さらに、図6(c)に示すごとく、この間柱34に対し胴縁35を止め具36にて止め付け、さらに、間柱34に対して外壁面材41A・41Bを止め具37にて止め付けることにより、上述した実施例と同様の構成とすることができる。
【0056】
以上のように、既存外壁31の室内側に内壁32を有する構成において、前記既存外壁31を撤去して新たな外壁面材41A・41Bを設置する、外壁のリフォーム方法であって、前記既存外壁31を撤去する工程と、前記内壁32の室外側に間柱34を配置する工程と、前記間柱34に対して外壁面材41A・41Bを止め付ける工程と、を有し、前記間柱34は、見付幅が見付幅よりも大きく設定されることとするものである。
【0057】
そして、このようなリフォームの形態では、貫や小舞からなる下地に土を塗った土壁にて構成される内壁32を撤去することなく、外壁面材41A・41Bを用いた外壁構造を導入することができる。このように、内壁を撤去することなくリフォームが可能となるので、作業手間が削減されることはもちろんのこと、内装などについては全く手を加えることなく、外壁の改装を行うことが可能となり、低コストでのリフォームや、改装工期の短縮化を図ることが可能となる。
【0058】
なお、図6(a)に示す構成において、リフォームの対象となり得る既存外壁31については、主にモルタル壁が考えられ、また、内壁32については、貫や小舞を下地とする土壁のほか、サイディング、金属板といったものも考えられる。
【0059】
なお、以上に説明した実施の形態においては、外壁面材については、従来は、一般的に、JISA5422の規格で曲げ破壊荷重690N以上とされていたものを、曲げ破壊荷重900Nの以上ものとすることが好ましい。
【0060】
同様に、外壁面材を止め付けるビスについては、従来は、φ(直径)2.3mm〜2.9mm程度であって、長さ40mm〜50mm未満としていたものを、φ(直径)5.0mm以上、長さ50mm以上のものを利用することが好ましい。
【0061】
同様に、外壁面材の止め付けは、縦方向については、胴縁の配置と対応させて303mmピッチ以内とし、上下端部に横方向に配列されるものについては、横方向が150mmピッチ以内とすることが好ましい。
【0062】
同様に、胴縁の縦方向の配置間隔は、従来は、一般的に450mm程度とされていたものを、303mm以内とすることが好ましい。
【0063】
同様に、胴縁の止め付けるためのくぎは、従来は、長さ60mm以上とのみ規定していたものを、CN65、CN75などの太め丸くぎであって、より長いものを使用することが好ましい。
【0064】
同様に、胴縁の素材としては、従来の杉やつが等の製材と比較して曲げ剛性の高い構造用合板を使用することが好ましい。
【0065】
以上のように、本発明では、図2(b)に示すごとく、間柱3Aにおいて見付幅3Wが見込幅3Dよりも大きく設定されるものである。これに対し、従来では、一般に、柱と間柱の室内面及び室外面を一致させる、つまりは、柱と間柱の見込幅を同一とし、これに胴縁を取付けて、この胴縁に外壁や内壁を止め付ける形態としていたため、間柱については、必然的に、見付幅が見込幅よりも小さく設定されるものであったのである。
【0066】
また、従来は、間柱の見付幅と見込幅の設定について、外壁面材の止め付けに関し、耐震性能への貢献を考慮していなかったものであるところ、本発明では、間柱の見付幅と見込幅の設定と、外壁面材の間柱への直接的な止め付けによって、間柱と外壁面材が発揮する耐震性能の相乗効果を実現し、外壁構造の耐震性能の効果的な向上を実現するものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の構成は、新築の木造住宅の外壁構造において、耐震性能を確保するために適用できるほか、既存の木造住宅のリフォームにより、耐震性能を向上させる場合についても適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1A 梁材
1B 梁材
2A 柱
2B 柱
3A 間柱
3B 間柱
3D 見込幅
3W 見付幅
4A 止め具
4B 止め具
4W 必要端空寸法
6 胴縁
7A 外壁面材
7B 外壁面材
8 止め具
9 継目部
10 外壁構造


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の耐震性能にかかわる部材として機能し得る間柱に対し、外壁面材が止め具によって止め付けられる、木造住宅の外壁構造。
【請求項2】
前記間柱が配置される箇所に、
左右に隣り合う前記外壁面材の継目部が配置されるようになっており、
前記各外壁面材が、前記止め具によって、それぞれ、前記間柱に対して固定されることで、両外壁面材が間柱を介して一体化される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の木造住宅の外壁構造。
【請求項3】
前記間柱は、見付幅が見込幅よりも大きく設定される、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の木造住宅の外壁構造。
【請求項4】
上下の梁材の間に間柱を設ける工程と、
前記間柱の室外側に胴縁を止め付ける工程と、
前記胴縁の室外側に外壁面材を配置して、前記外壁面材を前記間柱に対して止め付ける工程と、を有し、
前記間柱は、見付幅が見付幅よりも大きく設定される、木造住宅の外壁工法。
【請求項5】
既存外壁を撤去して新たな外壁面材を設置する、既存外壁のリフォーム方法であって、
前記既存外壁を撤去する工程と、
前記内壁の室外側に間柱を配置する工程と、
前記間柱に対して外壁面材を止め付ける工程と、を有し、
前記間柱は、見付幅が見付幅よりも大きく設定される、既存外壁のリフォーム方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−74645(P2011−74645A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226673(P2009−226673)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(305003542)旭トステム外装株式会社 (38)
【Fターム(参考)】