説明

木造建築の柱脚接合金具

【課題】本発明は、木造建築物の軸組構法における、ラ−メン構法の柱脚部の接合金具を提供すること。
【解決手段】柱と基礎の接合金具であって、升形状の底面がベ−スプレ−ト2で、鉛直板面の中心部において、ボルト貫通孔5と板面の内側にナット6を設けた側面板3に形成された下部金具1に、コ字形状断面の弁当箱蓋状のフランジ面にボルト貫通孔15を設けた取付け板13と、前記弁当箱蓋状のウェブ面の中央部に有するスリットに、平面視十字状に板を組合わせて直立した上部の一部の板に、ドリフトピン用の貫通孔17を設けて形成されている心棒14を挿入し、前記ウェブ面と一体化し形成された上面プレ−ト12とで構成された上部金具11を重合し、前記の側面板3と、前記の取付け板13がボルト16で連結されることを特徴とする木造建築の柱脚接合金具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の軸組構法における、ラ−メン構法の柱脚接合金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の木造住宅等の軸組構法は、まず、柱と梁で軸組を構成し、それに壁や床を取り付けて行く構法である。柱には「通し柱」と「管柱」があり、柱の構造的な役割は、通し柱、管柱ともに垂直荷重を支持し、耐力壁として外周に作用する圧縮力や引張力に抵抗し、また、風圧力(水平力)を受ける外壁面での変形を防ぐことである。
【0003】
近年、住宅用の木質ラ−メン構法が注目され、車庫一体型の住宅や店舗兼用住宅、さらに、一般の住宅でも、大きなスパン、大きな開口のものが求められている。従来の木造建築物では、柱は、建物基礎上に横設された土台の上に立設されているのが一般的である。この構成では、柱脚部分に十分な強度が得られないため、ラ−メン構法では、柱脚部分の曲げ応力が伝達できるように直接基礎に載置している。例えば、一般的には、図7に示す方法で行われている。即ち、事前に基礎33に固定されているアンカ−ボルト42に、柱脚金具40のベ−スプレ−ト41に設けているボルト貫通孔(図面を省略している)を挿通し、ナット6でアンカ−ボルト42を緊結し、基礎33に柱脚金具40を固定する。次に、重機を使用して、柱脚金具40の上部プレ−トに付設している取付けプレ−ト43に、柱30の下端部に形成されているスリット31を差し込み、柱の下部面に有するドリフトピン穴45からドリフトピン32を打ち込むことで、ドリフトピン32が取付けプレ−ト43に施されたドリフトピン孔44に挿嵌され、取付けプレ−ト43が柱30に結合し、柱脚金具40を介して柱30と基礎33が一体化されている。一方、事前に工場内で柱脚金具を柱下端部に取付けて出荷する場合もあるが、その際は、現場で重機を使用して、柱下端に装着しているベ−スプレ−トのボルト貫通孔に、アンカ−ボルトを挿通して、ナットで緊結し柱と基礎を一体化している。しかし、アンカ−ボルトのズレ補正の関係から、柱脚金具が改造される場合もあり、また、重機の待機時間が長くなり、品質管理上、実施されるのは少ないのが現状である。
【0004】
また、特開2002−115339号(第1公知例)では、基礎に植設されたアンカ−ボルトにベ−スプレ−トのボルト挿通穴を挿通させて基礎に載置し、アンカ−ボルトに螺合させたナットをレンチなどを利用して締め付けることにより、基礎に固定することができる。そして、柱の下端部に形成されたスリットを取付プレ−トに差し込み、柱を支持プレ−トに支持させた後、柱の下端部において、スリットに直交して一面から対向する他面にかけて貫通して形成されたピン挿通穴を取付プレ−トのピン挿通穴に合わせ、柱のピン挿通穴および取付プレ−トのピン挿通穴にそれぞれドリフトピンを打ち込むことにより、柱を固定金具に接合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−115339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7に示す一般的な柱脚接合方法と、第1公知例の固定金具の施行方法は、基礎に、柱脚金具(固定金具)をアンカ−ボルト・ナットで緊結し固定した後、重機を使用して、柱脚金具(固定金具)と柱の接続を行う方法である。すなわち、柱脚金具(固定金具)に柱を接合する場合は、重機で柱を吊りながら、柱脚金具(固定金具)の取付けプレ−トに、柱下端に施されている溝幅の小さい(取付けプレ−トよりわずかに大きい)スリット31を差し込み、柱の出入り、建て入り(垂直)の調整を行い、柱を仮固定し、ドリフトピンを打ち込みながら、柱を固定する方法である。したがって、柱の建方(組立て)と寸法調整に要する時間は、作業者の熟練度により変わり、施工精度も安定しない。また、重機を長時間拘束するため、工期的にも、経済的にも、効率的な工法とは言い難い施行方法である。
【0007】
本発明の解決すべき課題は、木造建築物の軸組構法におけるラ−メン構法での基礎と柱の接合部において、寸法調整機能が高く、作業性に優れ、経済的な、柱脚部の接合金具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、柱脚金具を、ベ−スプレ−トを含めた升形状の下部金具、または、ベ−スプレ−トに角パイプが付設した形状の下部金具と、柱の下端にセットした弁当箱蓋状の上部金具に分けて構成し、基礎に、アンカ−ボルトを介し固定されている下部金具の垂直面板と、柱下端に付設している上部金具の垂直面板を重合し、ボルトとナットで接合し、基礎と柱を接続する方法である。その要旨とするところは以下の通りである。
【0009】
(1)木造建築物の軸組構法における柱と基礎の接合金具であって、鋼板片を升形状に折曲げて、基礎に当接する底面板に、アンカ−ボルト用の複数のボルト貫通孔を設けたベ−スプレ−トと、前記底面板の四方から上向きに鉛直に延出する板面の中心部において、ボルト貫通孔と板面の内側にナットを設けた側面板とで構成されている下部金具に、鋼板片を折曲げて、断面をコ字形状の弁当箱蓋状に形成し、前記弁当箱蓋状のフランジ面の各面の中心部にボルト貫通孔を設けた取付け板と、前記弁当箱蓋状のウェブ面の中心部に、平面視十字状のスリットを施して、平面視十字状に板を組合わせて直立した上部の一部の板に、ドリフトピン用の貫通孔を設けて形成されている心棒を、前記スリットに挿入し、前記ウェブ面と一体化し形成された上面プレ−トとで構成された上部金具を重合し、前記の側面板と、前記の取付け板がボルトで連結されることを特徴とする木造建築の柱脚接合金具。
【0010】
(2)木造建築物の軸組構法における柱と基礎の接合金具であって、四角形の鋼板片の対角線方向角隅部に、アンカ−ボルト用のボルト貫通孔を設けたベ−スプレ−トと、前記ベ−スプレ−トの中央部近傍に平面視略ロ字状の直立板を付設し、前記各直立板面の中心部において、ボルト貫通孔と板面の内側にナットを設けた側面板とで構成されている下部金具に、鋼板片を折曲げて、断面をコ字形状の弁当箱蓋状に形成し、前記弁当箱蓋状のフランジ面の各面の中心部にボルト貫通孔を設けた取付け板と、前記弁当箱蓋状のウェブ面の中心部に、平面視十字状のスリットを施して、平面視十字状に板を組合わせて直立した上部の一部の板に、ドリフトピン用の貫通孔を設けて形成されている心棒を、前記スリットに挿入し、前記ウェブ面と一体化し形成された上面プレ−トとで構成された上部金具を重合し、前記の側面板と、前記の取付け板がボルトで連結されることを特徴とする木造建築の柱脚接合金具。
【発明の効果】
【0011】
(A)本発明に係る木造建築の柱脚接合金具によれば、在来の柱脚金具の一般的な施行方法は、先ず基礎に、柱脚金具(固定金具)をアンカ−ボルトとナットで緊結し固定する。次に、重機を使用して、柱を吊り込み、柱脚金具(固定金具)に有する取付プレ−トに、柱の下端部に形成されたスリットを差し込み、ドリフトピンで柱を固定する方法である。本発明の施行方法は、重機を使用して、基礎に固定されている下部金具に、工場で柱にセットされた上部金具を重合し、ボルトとナットで緊結する施行方法であるが、一般的な在来方法と比較して、現場でのドリフトピン打ち込み作業が省略される。また、現場接合での、下部金具と上部金具の材料を同質の鋼板を使用することで、施行精度も安定し、寸法調整機能が高くなり、大幅な重機使用の削減で、工期の短縮と経済効果が得られる。
【0012】
(B)本発明に係る木造建築の柱脚接合金具によれば、在来の一般的な柱脚金具は、門型ラ−メン(一方向ラ−メン)として開発されたものが大半である。本発明の柱脚金具は、純ラ−メン(二方向ラ−メン、X、Y方向)を考慮した考案であり、極めて実用性が高く、高性能の柱脚接合手段を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る木造建築の柱脚接合金具の第1の実施例を示す説明図であり、(a)は模式図、(b)は柱脚接合金具の分解斜視図である。
【図2】本発明に係る木造建築の柱脚接合金具の第1の実施例を示す説明図であり、(a)は柱脚接合金具の縦断面図、(b)はA方向からの平断面図、(c)はB方向からの平断面図である。
【図3】本発明に係る下部金具の第1の実施例を示す説明図であり、(a)は下部金具の斜視図、(b)は下部金具の展開図である。
【図4】本発明に係る上部金具の実施例を示す説明図であり、(a)は上部金具の斜視図、(b)は心棒の斜視図、(c)は上面プレ−トの展開図である。
【図5】本発明に係る木造建築の柱脚接合金具の第2の実施例を示す説明図であり、(a)は模式図、(b)は柱脚接合金具の分解斜視図である。
【図6】本発明に係る下部金具の第2の実施例を示す斜視図である。
【図7】従来技術に係る木造建築の木質ラ−メン構法の柱脚接合金具の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図7に基づいて、本発明に係る木造建築の柱脚接合金具の2通りの実施形態例を説明する。
(実施例1)
図1は本発明に係る木造建築の柱脚接合金具の第1の実施例を示す説明図であり、(a)は模式図、(b)は分解斜視図である。この例において、下部金具1,ベ−スプレ−ト2,側面板3,アンカ−ボルト用のボルト貫通孔4,ボルト貫通孔5,ナット6,上部金具11,上面プレ−ト12,取付け板13、心棒14、羽子板プレ−ト14a、リブ14b、ボルト貫通孔15,ボルト16,ドリフトピン用の孔17,スリット18,柱30、柱のスリット31,ドリフトピン32,および基礎33から構成される。以下、これに沿って説明する。
【0015】
まず、柱脚接合金具の概要について説明する。図1に示すように、本発明の柱脚接合金具は、下部金具1と上部金具11とを重合して形成されている。上部金具11は、下部金具1の箱型外形よりもわずかに大きな寸法で形成されており、接合方法は、下部金具1に上部金具11を被せて、下部金具1の側面板3に設けたボルト貫通孔5と、上部金具11の取付け板13に設けたボルト貫通孔15の孔を合わせ、挿通したボルト16と、下部金具1の側面板3の内部に固着しているナット6で緊結する方法である。
【0016】
次に、下部金具1について説明する。下部金具1は、図1に示すように、基礎33に当接する底板に複数のアンカ−ボルト用のボルト貫通孔4を設けたベ−スプレ−ト2と、ベ−スプレ−ト2の四方を直角に折曲げ直立した板の中心に、ボルト貫通孔5を施しナット6を設けた側面板3とで形成されている。下部金具1の加工は、図3(b)に示す板取りで、一枚の鋼板からプレス加工で折曲げて、組立を行うことができる。例えば、まず、折曲げ加工の前に、略十字状に加工された鋼板に、アンカ−ボルト用の貫通孔4と、側面板3の中心部にボルト貫通孔5の孔加工を施し、その後、AB,CDを支点として、お互い内側に対峙するように直角に折曲げる。その際、AC、BDを支点として同時に内側に直角に折曲げて、升形状に形成している。続いて、図3(a)に示すように、升形状の内側から、側面板3に設けているボルト貫通孔5の中心に、ナット6の中心を合わせて、溶接等でナットを固定している。なお、柱脚部の曲げ応力による変形防止のため、側面板3の両端(升形状の四隅)の鉛直部を溶接する場合もある。
【0017】
次いで、上部金具11について説明する。上部金具11は、図1に示すように、柱30に大半が内蔵されている心棒14を付設した上面プレ−ト12と、取付け板13とで形成されている。上部金具11の弁当箱蓋状の内形寸法は、下部金具1の升形状の外形寸法よりわずかに大きな寸法に設定しており、このような上部金具11の弁当箱蓋状の加工は、図4(c)に示す板取りで、一枚の鋼板からプレス加工で折曲げて、組立を行うことができる。例えば、まず、折曲げ加工の前に、略十字状に加工された鋼板の中心部に、心棒14の板厚と幅よりもわずかに大きな寸法で、十字状のスリット18を施し、次に、取付け板13に該当する板の中心部にボルト貫通孔15の孔加工を行っている。その後、AB,CDを支点として、外側に直角に折曲げ(コ字形状の断面でウェブが上面になる形状)を行うが、その際、同時にAC、BDを支点にして外側に折り曲げ、弁当箱蓋形状に形成している。なお、柱脚部の曲げ応力による変形防止のため、取付け板13の両端(弁当箱蓋形状の四隅)の鉛直部を溶接する場合もある。
【0018】
続いて、図4(b)に示すように、羽子板形状に加工された鋼板片14aの所定の位置に、ドリフトピン用の孔17の加工を施し、羽子板プレ−ト14aの下部において、羽子板プレ−ト14aに交差してリブ14bを付設し、心棒14を形成している。次に、図4(c)に示すように、上面プレ−ト12に施されているスリット18に、心棒14を挿入して、図2(a)に示すような位置で、上面プレ−ト12に心棒14を仮固定して、心棒14と上面プレ−ト12を溶接で固定している。なお、心棒14の下端の位置は、柱が受ける鉛直荷重の柱脚に流れる力の一部が、直接基礎に伝達できるように、当接するベ−スプレ−ト2の上面の位置にしている。
【0019】
柱脚接合金具の結合形態について説明する。図1に示すように、基礎33に植設されたアンカ−ボルト(図面は省略している)で固定されている下部金具1に、上部から、柱30にセットされている上部金具11を被せるように建て込み、次に、下部金具1の側面板3に設けたボルト貫通孔5と、上部金具11の取付け板13に設けたボルト貫通孔15の孔を合わせて、横からボルト16を、前記の孔に挿入し、側面板3に固着しているナット6に螺合し緊結して、下部金具1と上部金具11を結合している。
【0020】
施行方法を説明する。まず、工場内において、図1に示すように、柱30の下端部に施されたスリット31に、上部金具11の心棒14を挿入して、羽子板プレ−ト14aに直交した柱面よりドリフトピン32を打ち込み、柱30に羽子板プレ−ト14aを固定し、柱30に上部金具11が結合されている。次に、建設現場において、図1に示すように、基礎33に固定されているアンカ−ボルト(図面は省略している)に、下部金具1のベ−スプレ−ト2に有するボルト貫通孔4を挿通し、ナット6でアンカ−ボルトを緊結し、基礎33に下部金具1を固定している。次いで、基礎33にアンカ−ボルトを介して固定されている下部金具1に、工場で上部金具11がセットされている柱30を、重機を使用して上部から被せることで、下部金具1の側面板3と上部金具11の取付け板13が重合する。続いて、側面板3の内側に固着しているナット6に、ボルト16を螺合させ、レンチ等で緊結することで、下部金具1と上部金具11が結合される。すなわち、基礎と柱の接合において、寸法調整機能が高く、作業性に優れた柱脚部の接合金具を提供することができる。
【0021】
上述した金具類の材質は、一般構造用圧延鋼材(SS400)を代表として示したが、本発明ではこれに限ることなく、機能的に満足すべき強度が得られることができれば、公知
の材質で良い。例えば、鋳物、アルキャスト等を挙げることができる。なお、当該金具のサイズは、設計時の諸条件により決められるが、プレ−トの厚さは4.5〜9.0mm程度で、下部金具と上部金具を組合わせて、幅は150〜210mm程度、高さは360〜500mm程度である。
【0022】
(実施例2)
図5は本発明に係る木造建築の柱脚接合金具の第2の実施例を示す説明図であり、(a)は模式図、(b)は分解斜視図である。この例において、ナット6,上部金具11,上面プレ−ト12,取付け板13、心棒14、羽子板プレ−ト14a、リブ14b、ボルト貫通孔15,ボルト16,ドリフトピン用の孔17,スリット18,下部金具21,ベ−スプレ−ト22,側面板23,アンカ−ボルト24,座金25,アンカ−ボルト用のボルト貫通孔26,ボルト貫通孔27,柱30、柱のスリット31,ドリフトピン32,および基礎33から構成される。以下、これに沿って説明する。
【0023】
まず、柱脚接合金具の概要について説明する。図5に示すように、本発明の柱脚接合金具は、上部金具11と下部金具21とを重合して形成されている。上部金具11は、下部金具21の箱型外形よりもわずかに大きな寸法で形成されており、接合方法は、下部金具21に上部金具11を被せて、下部金具21の側面板23に設けたボルト貫通孔27と、上部金具11の取付け板13に設けたボルト貫通孔15の孔を合わせ、挿通したボルト16と、下部金具21の側面板23の内部に固着しているナット6で緊結する方法である。
【0024】
次に、上部金具11について説明する。上部金具11は、図5に示すように、柱30に大半が内蔵されている心棒14を付設した上面プレ−ト12と、取付け板13とで形成されている。上部金具11の弁当箱蓋状の内形寸法は、下部金具21の升形状の外形寸法よりわずかに大きな寸法に設定しており、このような上部金具11の弁当箱蓋状の加工は、図4(c)に示す板取りで、一枚の鋼板からプレス加工で折曲げて、組立を行うことができる。例えば、まず、折曲げ加工の前に、略十字状に加工された鋼板の中心部に、心棒14の板厚と幅よりもわずかに大きな寸法で、十字状のスリット18を施し、次に、取付け板13に該当する板の中心部にボルト貫通孔15の孔加工を行っている。その後、AB,CDを支点として、外側に直角に折曲げ(コ字形状の断面でウェブが上面になる形状)を行うが、その際、同時にAC、BDを支点にして外側に折り曲げ、弁当箱蓋形状に形成している。なお、柱脚部の曲げ応力による変形防止のため、取付け板13の両端(弁当箱蓋形状の四隅)の鉛直部を溶接する場合もある。
【0025】
続いて、図4(b)に示すように、羽子板形状に加工された鋼板片14aの所定の位置に、ドリフトピン用の孔17の加工を施し、羽子板プレ−ト14aの下部において、羽子板プレ−ト14aに交差してリブ14bを付設し、心棒14を形成している。次に、図4(c)に示すように、上面プレ−ト12に施されているスリット18に、心棒14を挿入する。その際、心棒14の下端の位置は、柱が受ける鉛直荷重の柱脚に流れる力の一部が、直接基礎に伝達できるように、当接するベ−スプレ−ト22の上面の位置にしている。心棒14が仮固定された後、上面プレ−ト12に接触する心棒14の周囲を溶接で固定している。
【0026】
次いで、下部金具21について説明する。下部金具21は、図5と図6に示すように、基礎33に当接する四角形の鋼板片に、複数のアンカ−ボルト用のボルト貫通孔26を設けたベ−スプレ−ト22と、ベ−スプレ−ト22の中央に、四方を直立した板面の中心に、ボルト貫通孔27を施しナット6を設けた側面板23とで形成されている。下部金具21の加工は、図6に示すように、四角形の鋼板片と、帯鋼板をL状に折曲げて形成する側面板23で組立を行うことが可能である。例えば、まず、折曲げ加工の前に、四角形の鋼板片に、アンカ−ボルト用の複数のボルト貫通孔26と、帯鋼板に、複数のボルト貫通孔27の孔加工を施し、その後、図6に示すように、四角形の鋼板片に孔加工を施したベ−スブレ−ト22に、帯鋼板がL形状に加工され、所定の位置にボルト貫通孔27とナットを設けている側面板23を当設して、その当設箇所の四方の周囲と、側面板23の接合部(2ケ所)に溶接が施されている。
【0027】
柱脚接合金具の結合形態について説明する。図5に示すように、基礎33に植設されたアンカ−ボルト24で固定されている下部金具21に、上部から、柱30にセットされている上部金具11を被せるように建て込み、次に、下部金具21の側面板23に設けたボルト貫通孔27と、上部金具11の取付け板13に設けたボルト貫通孔15の孔を合わせて、横からボルト16を、前記の孔に挿入し、側面板23に固着しているナット6に螺合し緊結して、下部金具21と上部金具11を結合している。なお、大規模な建築物で大きな曲げ等の伝達が必要な場合は、ベ−スプレ−ト22と上部金具11が当接しているベ−スプレ−ト22と、取付け板13の下端の周囲に、すみ肉溶接を行うことができる。
【0028】
施行方法を説明する。まず、工場内において、図5に示すように、柱30の下端部に施されたスリット31に、上部金具11の心棒14を挿入して、羽子板プレ−ト14aに直交した柱面よりドリフトピン32を打ち込み、柱30に羽子板プレ−ト14aを固定し、柱30に上部金具11が結合されている。次に、建設現場において、図5と図6に示すように、基礎33に固定されているアンカ−ボルト24に、下部金具21のベ−スプレ−ト22に有するアンカ−ボルト用のボルト貫通孔26と座金25を挿通し、ナット6でアンカ−ボルト24を緊結し、基礎33に下部金具21を固定している。次いで、基礎33にアンカ−ボルト24を介して固定されている下部金具21に、工場で上部金具11がセットされている柱30を、重機を使用して上部から被せることで、下部金具21の側面板23と上部金具11の取付け板13が重合する。続いて、側面板23の内側に固着しているナット6に、ボルト16を螺合させ、レンチ等で緊結することで、下部金具21と上部金具11が結合される。また、設計上高い強度が必要となる場合は、ベ−スプレ−ト22に当接している、取付け板13の下端をすみ肉溶接することも可能である。すなわち、基礎と柱の接合において、寸法調整機能が高く、剛性の高い、作業性に優れた柱脚部の接合金具を提供することができる。
【0029】
上述した金具類の材質は、一般構造用圧延鋼材(SS400)を代表として示したが、本発明ではこれに限ることなく、機能的に満足すべき強度が得られることができれば、公知
の材質で良い。例えば、鋳物等を挙げることができる。なお、当該金具のサイズは、設計時の諸条件により決められるが、プレ−トの厚さは6.0〜16.0mm程度で、下部金具と上部金具を組合わせて、幅は200〜400mm程度、高さは400〜800mm程度である。
【0030】
以上説明したように木造建築の柱脚接合金具の本発明に係るによれば、ラ−メン構法での基礎と柱の接合部において、寸法調整機能が高く、作業性に優れ、経済的な、柱脚部の接合金具を提供するものである。また、大規模な木造の技術が系統立っていない現状に貢献することも可能であり、住宅および建設業界での社会に与える効用は極めて大きい。









【符号の説明】
【0031】
1 下部金具
2 ベ−スプレ−ト
3 側面板
4 アンカ−ボルト用のボルト貫通孔
5 ボルト貫通孔
6 ナット
11 上部金具
12 上面プレ−ト
13 取付け板
14 心棒
14a 羽子板プレ−ト
14b リブ
15 ボルト貫通孔
16 ボルト
17 ドリフトピン用の孔
18 スリット
21 下部金具
22 ベ−スプレ−ト
23 側面板
24 アンカ−ボルト
25 座金
26 アンカ−ボルト用のボルト貫通孔
27 ボルト貫通孔
30 柱
31 柱のスリット
32 ドリフトピン
33 基礎
40 従来の柱脚金具
41 ベ−スプレ−ト
42 アンカ−ボルト
43 従来の取付けプレ−ト
44 ドリフトピン孔
45 ドリフトピン穴









【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の軸組構法における柱と基礎の接合金具であって、鋼板片を升形状に折曲げて、基礎に当接する底面板に、アンカ−ボルト用の複数のボルト貫通孔を設けたベ−スプレ−トと、前記底面板の四方から上向きに鉛直に延出する板面の中心部において、ボルト貫通孔と板面の内側にナットを設けた側面板とで構成されている下部金具に、鋼板片を折曲げて、断面をコ字形状の弁当箱蓋状に形成し、前記弁当箱蓋状のフランジ面の各面の中心部にボルト貫通孔を設けた取付け板と、前記弁当箱蓋状のウェブ面の中心部に、平面視十字状のスリットを施して、平面視十字状に板を組合わせて直立した上部の一部の板に、ドリフトピン用の貫通孔を設けて形成されている心棒を、前記スリットに挿入し、前記ウェブ面と一体化し形成された上面プレ−トとで構成された上部金具を重合し、前記の側面板と、前記の取付け板がボルトで連結されることを特徴とする木造建築の柱脚接合金具。
【請求項2】
木造建築物の軸組構法における柱と基礎の接合金具であって、四角形の鋼板片の対角線方向角隅部に、アンカ−ボルト用のボルト貫通孔を設けたベ−スプレ−トと、前記ベ−スプレ−トの中央部近傍に平面視略ロ字状の直立板を付設し、前記各直立板面の中心部において、ボルト貫通孔と板面の内側にナットを設けた側面板とで構成されている下部金具に、鋼板片を折曲げて、断面をコ字形状の弁当箱蓋状に形成し、前記弁当箱蓋状のフランジ面の各面の中心部にボルト貫通孔を設けた取付け板と、前記弁当箱蓋状のウェブ面の中心部に、平面視十字状のスリットを施して、平面視十字状に板を組合わせて直立した上部の一部の板に、ドリフトピン用の貫通孔を設けて形成されている心棒を、前記スリットに挿入し、前記ウェブ面と一体化し形成された上面プレ−トとで構成された上部金具を重合し、前記の側面板と、前記の取付け板がボルトで連結されることを特徴とする木造建築の柱脚接合金具。




















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−36261(P2013−36261A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174469(P2011−174469)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(506200083)
【Fターム(参考)】