説明

材料の交流磁化量を測定する装置および生体分子を検出する方法

【課題】サンプル中の生体分子の量を測定するための方法を提供する。
【解決手段】この方法は、磁性ナノ粒子を有する溶液を提供することと;溶液中の磁性ナノ粒子の表面にバイオプローブ分子を塗布することと;混合周波数(γf1+βf2)で溶液の第1交流磁化量を測定することと(γまたはβは、それぞれゼロより大きい整数);検出すべき生体分子を含んだサンプルを溶液に添加して、サンプル中の生体分子をナノ粒子に塗布されたバイオプローブ分子と複合させることと;サンプルを添加して培養した後に、混合周波数(γf1+βf2)で溶液の第2交流磁化量を測定し、第1交流磁化量と第2交流磁化量の間の混合周波数(γf1+βf2)の交流磁化量の減少を獲得して、生体分子の量を決定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性流体の磁化量(magnetization)の測定に関するものであり、特に、材料の交流磁化量を測定する装置および生体分子を検出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性流体は、溶剤に分散された磁性ナノ粒子を有するコロイド溶液である。磁性ナノ粒子の材料は、通常、強磁性である。そのため、それぞれの磁性ナノ粒子は、永久磁気モーメントを有する。溶剤中の磁性ナノ粒子を安定して分散させるために、磁性ナノ粒子は、界面活性剤で覆われている。例えば、界面活性剤に親水性有機材料を使用して、水溶液に磁性ナノ粒子を分散させることができる。界面活性剤とナノスケールのサイズを利用して、磁性ナノ粒子を溶剤中に個別に分散することができる。個々の磁性ナノ粒子は、熱エネルギーによって、ブラウン運動(Brownian motion)を起こす。それぞれの磁性ナノ粒子は、強磁性、つまり、永久磁気モーメントを有するが、磁性ナノ粒子の磁気モーメントの方向は、ゼロ磁場の液体中で等方性を持つため、液体中の磁性ナノ粒子の合成磁気モーメントは、ゼロ磁場においてゼロである。しかしながら、磁性流体に磁場が印加された時、各磁性ナノ粒子の磁気モーメントは、印加された磁場の方向に合わせられる傾向がある。印加された磁場をH、温度をTとした場合の磁性流体の合成磁気モーメント(以下、磁化量と称す)Mに対する理論的分析を、ランジュバン関数(Langevin function)で表すことができる。
【数1】

【0003】
式(1)において、Mo=Nmは飽和磁化量を示し、Nは磁性ナノ粒子の合計数、mは磁性粒子の平均磁気モーメントであり、xは以下のように表される。
【数2】

ここで、Hは印加された磁場、kBはボルツマン定数(Boltzmann constant)、moは自由空間の透磁率、Tは測定温度を示す。
【0004】
式(1)および式(2)に基づくと、指定温度Tの時、磁性流体の磁化量Mは、磁場Hの強度が増加するとともに単調に増加し、その後、高い磁場Hの場合に飽和値に達する。この飽和磁化量は、式(1)のMoである。印加された磁場Hが除去された時、つまり、H=0の時、磁性流体の磁化量は消失する。印加された磁場を抑制した時の磁性流体の逆方向のゼロ磁化は、液体中でブラウン運動を起こしている個々の磁性ナノ粒子の磁気モーメントの方向のランダム化によるものである。この特徴を超常磁性(superparamagnetism)という。
【0005】
いくつかのガウス(Gauss)にある弱磁場で、室温(Tが約300K)の場合、xは大体10-3から10-2まである。そのため、式(1)のMは、テイラー展開(Taylor expansion)を用いてxがゼロで展開することができ、以下のように表される。
【数3】

ここで、M(n)は、x=0の時のx に対するMの第n階微分を示す。式(3)の右手側の偶数階微分はゼロになり、M(1)=0.32、M(3)=−0.12である。式(3)は、以下のように表すことができる。
【数4】

【0006】
式(4)の右手側のO5は、momH/kBTの5乗を示す。印加された磁場が交流(AC)によって生成され、周波数をfoとする場合、Mはαfo(αは正の奇数)の周波数で非ゼロ成分(non-zero component)を示す。したがって、周波数foを有する弱交流磁場における磁性流体の磁化量は、foだけでなくαfoの周波数も有する。
【0007】
式(1)または(4)において、Moは、個々の磁性ナノ粒子の合計数Nに比例し、印加された交流磁場に反応する。そのため、指定された磁性流体の容量および周波数foを有する固定された弱磁場において、個々の磁性ナノ粒子の合計数Nが減少した時、磁化量Mのスペクトルのαfo成分の振幅は減少する。液体中のある反応によって磁性ナノ粒子を群生させるか、または大きくすることによって、印加された交流磁場に反応する個々の磁性ナノ粒子の合計数Nを減少させることができる。ある反応とは、例えば、液体中のバイオプローブ(bio-probe)とバイオターゲット(bio-target)の結合でもよい。この場合、バイオプローブは、界面活性剤に結合することによって、個々の磁性ナノ粒子に塗布される。そのため、磁性ナノ粒子は、生体機能を有するようになり、複合されたバイオターゲット(conjugated bio-target)で結合することができる。
【0008】
例えば、抗体は、バイオプローブとして作用し、液体中の個々の磁性ナノ粒子に塗布される。これらの生体機能を有する磁性ナノ粒子は、複合抗原(conjugated antigen)と結合することができる。個々の磁性ナノ粒子における抗原と抗体の結合によって、磁性ナノ粒子は群生するか、または大きくなる。それによって、個々の磁性ナノ粒子の合計数Nは、ある固定された周波数の印加された交流磁場に反応して、確かに減少する。そのため、磁性ナノ粒子がバイオターゲットと結合した時、生体機能を有する磁性流体の磁化量Mのαfo成分の振幅が減少することが推測される。また、さらに多くの磁性ナノ粒子がバイオターゲットと結合した時、振幅の減少はさらに強まる。そのため、バイオターゲットの量は、生体機能を有する磁性流体の磁化量Mのαfo成分における減少を測定することによって、決定することができる。これは、IMR(immunomagnetic reduction)のような生物検定技術に用いる基本的メカニズムである。
【0009】
サンプルの交流磁化量を測定するために、従来の装置をいくつか提供する。図1は、交流磁場で磁性流体の磁化量を測定する従来の構造を概略的に示したものである。励磁ソレノイド(excitation solenoid)102は、交流電流発生装置100によって周波数foで駆動されて、交流磁場を生成する。ピックアップソレノイド(pick-up solenoid)104は、励磁ソレノイド102内に同軸に設けられる。ピックアップソレノイド104は、磁力計(magnetometer)型を参照する。磁性流体108は、ピックアップソレノイド104内に配置される。コイル106は、ソレノイド102および104によって形成される。交流電流発生装置100は、周波数foで交流電流をコイル106のソレノイド106に印加する。磁場の変化によって、コイル106のピックアップソレノイド104が感応して、交流電圧を出力する。しかしながら、交流電圧の出力は、磁性流体108に関係する。周波数foの交流磁場が印加された時、磁性流体108が感応して、様々な周波数αfo(α=1、3、5、…n)で交流磁化量を生成する。交流磁化量は、コイル106のピックアップソレノイド104で検出され、磁化量から電圧に信号を変換する。そのため、周波数αfoの交流電圧は、コイル106のピックアップソレノイド104から電子回路110に出力される。電子回路110は、様々な周波成分に対して電圧信号を処理し、ターゲット周波数αToを有する成分の数量を獲得する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図1に示す測定の構造には、欠点がある。第一に、磁性流体によって生成された磁化量の他に、周囲の信号もピックアップソレノイドによって検出される。第二に、励磁ソレノイド102で生成された(foの)交流磁場も探測される。そのため、ピックアップソレノイド104が出力したfoの感応電圧は、他の周波数の感応電圧よりもはるかに大きい。電子回路110は、通常、アンプユニット(amplifying unit)を有し、αToで電圧信号を増幅して、高感度検出を達成する。アンプユニットは、入力電圧に対して高レベルの制限を有するオペアンプ(operation amplifier)である。オペアンプは、入力電圧が高すぎると、正確に動作することができない。αToの入力電圧が増幅されると、foの入力電圧も増幅される。オペアンプの高レベル制限によって、αToの電圧信号の増幅が制限され、総入力電圧をオペアンプの高レベル制限よりも低く保持する。第三に、ピックアップソレノイド104からfoの入力電圧が出力された時、電子回路の副高調波効果によって、fo、2fo、3fo-、4fo、5fo、…等の周波数の出力電圧が出力される。これらのマイナス要因は、電子回路から出力されるαToの合成出力電圧が、電子回路の周囲の信号、励起場、および副高調波信号に起因するために生じる。そのため、αToの最終出力電圧は、信頼できないか、あるいは間違ってさえいる。
【0011】
図1の欠点を克服するため、磁性流体の感応交流磁化量を測定する別の従来の設計を提供する。図2は、交流磁場で磁性流体の磁化量を測定する従来の構造を概略的に示したものである。図2において、ピックアップソレノイド120は、上部と下部の2つの部分を有する。これらの2つの部分にあるコイルは、反対方向につながり、直列に接続される。磁性流体108は、2つの部分のうちの1つ(例えば、上部)に配置される。そのため、これら2つの部分によって、周囲の信号が同時に検出される。電圧は、これら2つの部分の出力リード線から感応することができ、互いに取り消される。また、励磁ソレノイド102内のピックアップソレノイド120の位置を適切に設置させることによって、グラジオメータ(gradiometer)型のピックアップソレノイド120において、励磁ソレノイド102によって生成されたfoの交流磁場の感応電圧が、取り消される。実際のケースでは、励磁ソレノイド102内のピックアップソレノイド120の位置を合わせることによって、foの感応電圧を完全に取り消すことは不可能である。しかし、電子回路へのfoの入力電圧は、図1に比べ、図2の測定構造で大幅に減らすことができる。これは、グラジオメータ型のピックアップソレノイドを使用した時に、電子回路の増幅を大幅に増やすことができることを意味する。しかしながら、上述したように、foの入力電圧の存在は、出力に対して副高調波信号も発生させる。そのため、サンプルからのターゲット周波数αToの信号は、通常、不必要な成分を有する。
【0012】
以上のように、従来の設計は、磁性流体の交流磁化量を測定することができるが、ターゲット周波数が基底周波数foの倍数であるαToに制限されるため、結果として、αToの出力電圧を信頼することができず、その設計も制限される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、サンプル中の生体分子の量を測定するための方法を提供する。この方法は、磁性ナノ粒子を有する溶液を提供することと;溶液中の磁性ナノ粒子の表面にバイオプローブ分子を塗布することと;混合周波数(γf1+βf2)で溶液の第1交流磁化量を測定することと(ここで、γまたはβは、それぞれゼロより大きい整数である);検出すべき生体分子を含んだサンプルを溶液に添加して、サンプル中の生体分子をナノ粒子に塗布されたバイオプローブ分子と複合させることと;サンプルを添加して培養した後に、混合周波数(γf1+βf2)で溶液の第2交流磁化量を測定し、混合周波数(γf1+βf2)で第1交流磁化量と第2交流磁化量の間における交流磁化量の減少を獲得して、生体分子の量を決定することを含む。
【0014】
本発明は、また、混合周波数で交流磁化量を測定するための装置を提供する。この装置は、少なくとも周波数f1を有する第1交流電流および周波数f2を有する第2交流電流を生成する交流生成ユニットを含む。同軸ソレノイドユニットは、第1交流電流および第2交流電流によって駆動され、第1磁場および第2磁場を生成する。グラジオメータ型のピックアップソレノイドは、同軸ソレノイドユニット内に配置され、このピックアップソレノイド内にサンプルを配置して、サンプルの交流磁化量を検出する。f1およびf2の様々な周波数の組合せに対応して、複数の周波数成分信号を出力する。信号処理回路は、様々な周波数成分を含んだ信号を受信して、その信号を処理し、ターゲット周波数(γT1+βT2)でサンプルの交流磁化量を獲得する。ここで、γTおよびβTは、正の整数であり、周波数f1および周波数f2は、第1交流電流および第2交流電流によってそれぞれ生成された2つの異なる周波数である。
【0015】
本発明は、また、交流磁化量の減少と生体分子の濃度の間の関係を確立するための方法を提供する。交流磁化量の減少は、既知の濃度を有する生体分子を測定したサンプルに添加する前と後の、サンプルの交流磁化率の差異である。この方法は、複数のサンプルを準備することを含み、各サンプルは、バイオプローブ分子を塗布した複数の磁性ナノ粒子の溶液を含むとともに、生体分子濃度を有しており、それぞれのサンプルが異なる生体分子濃度を有する。各サンプルに対し、交流磁化量の減少を測定する。交流磁化量の減少のデータは、ロジスティック関数であるシグモイド関数(Sigmoid function)にフィッティング(fitting)することによって、以下の式(5)で表される。
【数5】

ここで、IMRは、百分率で示した交流磁化量の減少であり、φは、各サンプル中の生体分子濃度であり、A、B、φ oおよびρは、フィッティング曲線を得るためのフィッティングパラメータである。測定すべきサンプルのIMRを測定して、式(5)のフィッティング曲線を用いてターゲット生体分子濃度を獲得する。
【0016】
本発明は、サンプル中の磁性ナノ粒子と生体分子の間の反応を観測するための方法を提供する。この方法は、磁性ナノ粒子を有する溶液を提供することと;溶液中の磁性ナノ粒子の表面にバイオプローブ分子を塗布することと;培養時間に測定すべき生体分子を含んだサンプルを添加することと;時間関数により混合周波数(γf1+βf2)で溶液の交流磁化量を測定することとを含む(ここで、γおよびβは、それぞれゼロより大きい整数、f1およびf2は2つの異なる周波数)。交流磁化量は、初期状態と反応完了状態では安定しているが、初期状態と反応完了状態の間で差がある。
【発明の効果】
【0017】
したがって、本発明は、混合周波数でも低ノイズでサンプル中の生体分子の測定をより正確に行うことができる。また、本発明が提供する磁化量の減少と生体分子の濃度の関係を確立する方法により、サンプル中の生体分子の濃度を容易に決定することができる。さらに、本発明は、サンプル中のバイオプローブと生体分子の関係を観測するための方法も提供する。
【0018】
本発明の上記及び他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】交流磁場で磁性流体の磁化量を測定する従来の構造を概略的に示したものである。
【図2】交流磁場で磁性流体の磁化量を測定する従来の構造を概略的に示したものである。
【図3】本発明の実施形態に係る交流磁場で磁性流体の磁化量を測定する構造を概略的に示したものである。
【図4】本発明の実施形態に係る磁性流体の磁化量を測定するための回路ブロック図を概略的に示したものである。
【図5】測定するサンプル中の磁化量と濃度の関係を概略的に示したものである。
【図6】本発明の実施形態に係るバイオプローブで塗布された磁性ナノ粒子と測定する生体分子の間の反応メカニズム(reaction mechanism)を概略的に示したものである。
【図7】本発明の実施形態に係るバイオプローブで塗布された磁性ナノ粒子の構造を概略的に示したものである。
【図8】本発明の実施形態に係る時間に基づき変化する磁化量で示される反応を概略的に示したものである。
【図9】本発明の実施形態に係るウィルスの濃度に対するIMR(%)の行為を概略的に示したものである。
【図10】本発明の実施形態に係る生体分子の濃度に対する正規化IMRnor(%)の行為を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、混合周波数で交流磁化量を測定する方法および装置を提供し、様々な応用例を提供する。いくつかの実施例を提供して本発明を説明するが、本発明は提供した実施例のみに限られるものではない。
【0021】
交流磁化量を測定する従来の設計を考慮して、励起場および電子回路の副高調波信号(sub-harmonic signals)から周波数αT0の最終出力電圧への影響をさらに減らすため、本発明は、混合周波励起(mixed-frequency excitation)技術および電子回路の補償メカニズムの使用を提案する。
【0022】
混合周波励起のため、印加された磁場に2つ以上の周波数を使用する。実際は、2つの異なる周波数を有する少なくとも2つの磁場を同時に適用する。例えば、図3は、本発明の実施形態に係る交流磁場で磁性流体の磁化量を測定する構造を概略的に示したものである。図3において、2つの周波数から混合周波励起を生成する例を示す。この状況において、同軸に並んだ2つの励磁ソレノイド204、206がある。2つの励磁ソレノイド204、206は、駆動ユニットとして交流電流発生装置200、202によってそれぞれ駆動される。2つの交流電流発生装置200、202は、異なる周波数f1およびf2を有する電流をこれら2つの励磁ソレノイド204、206に別々に提供する。そのため、式(4)のHは、H1+H2に置き換えることができ、H1=H1ocos(2πf1t)、H2=H2ocos(2πf2t)、およびf1≠f2である。式(4)は、以下のように表される。
【数6】

【0023】
式(6)は、Mが周波数αf1、αf2およびγf1+βf2を有する成分の組合せであるということを示す(αは正の奇数、βおよびγは非ゼロ整数)。ピックアップソレノイド208および磁性流体212は、例えば、図1のピックアップソレノイド104および磁性流体108に類似してもよい。コイル210は、ソレノイド204、206、208によって形成される。周波数f1およびf2の奇数の副高調波の他に、f1およびf2の線型結合のような周波数を有する成分が、混合周波励起における磁性流体の磁化量に関係する。基底周波数f1およびf2が線型独立の場合、コイル210からの出力信号の混合周波成分は、これらの成分が電子回路214で増幅された時に、電子回路214の副高調波効果によって妨害されない。また、f1およびf2を適切に選択することによって、ターゲット周波数γT1+βT2は、一般に使用される電気通信や商用電力システム等から離れることができる。そのため、磁性流体の磁化量が混合周波数で励起された時、γT1+βT2の成分に対して環境からの影響を減らすことができる。
【0024】
通常、γf1+βf2の成分の振幅は、αf1およびαf2の振幅よりもはるかに弱い(α=1、2、3、…n)。そのため、電子回路214は、γf1+βf2の成分の信号を増幅できる設計にする必要がある。しかしながら、上述したように、副高周波成分(すなわちαf1およびαf2)は、電子回路214のアンプを操作する入力信号が高レベルの制限を有するために、電子回路に対する増幅の性能が悪くなる。そのため、電子回路214は、αf1およびαf2の成分を取り消す補償メカニズムを有する。
【0025】
図4において、ここで設計された電子回路のブロック図を示す。図4の電子回路は、実際には、交流電流発生装置を起動させる回路も含む。周波数f1およびf2をそれぞれ有するトリガー信号は、デジタル信号処理(digital signal processing, DSP)によって生成される。この信号はデジタルで、デジタルアナログ変換器(digital-to-analog converter, DAC)252によって、アナログに変換される。アナログトリガー信号f1およびf2によって、交流電流発生装置200および202は、パワーアンプ254を介して、周波数f1を有する交流電流を励磁ソレノイド1(204)に提供し、周波数f2を有する交流電流を励磁ソレノイド2(206)に提供することができる。グラジオメータ型のピックアップソレノイド208からの出力信号は、周波数αf1、αf2およびγf1+βf2で構成される。これらの成分の全ては、電子回路214のフィルタリング/増幅/補償によって処理され、混合周波数γT1+βT2のターゲット成分を生成する(γTおよびβTは正の整数)。一般的には、異なるγTおよびβTを選択して混合周波数を獲得することで、異なる信号の強度を得ることができる。混合周波数γT1+βT2は一般条件で、γTおよびβTの量は設計上の選択である。
【0026】
図4は、本発明の実施形態に係る磁性流体の磁化量を測定するための回路ブロック図を概略的に示したものである。図4において、図3の装置を電子ブロック図で示す。図3の電子回路214は、デジタル信号処理ユニット250と、アンプ262、270、280と、フィルタ264、272、274、282と、アナログデジタル変換器(analog-to-digital converter, ADC)266、276、284と、デジタルアナログ変換器(digital-to-analog converter, DAC)268、278とを有する回路260を備え、少なくとも1つの段階を形成して、フィルタリング、増幅、補償の機能を実行する。本実施例においては、n段階の信号処理を行う。実際には、nは2から500までであってもよい。それぞれのフィルタリング/増幅/補償する部分は、1から1000までの増幅率を有する(1は、アンプが使用されないことを意味する)。各ユニットは、アンプと、中心周波数がターゲット周波数であるバンドパスフィルタとを有する。
【0027】
デジタル信号処理ユニット250は、高調波周波数f1およびf2を設計上の選択毎に基底周波数として提供する。周波数f1およびf2は、デジタルアナログ変換器252によってアナログ信号に変換され、交流電流発生装置200および202を制御するようパワーアンプ254を通知して、交流電流を生成する。その結果、2つの励磁ソレノイド204および206は、異なる基底周波数f1およびf2を有する交流電流によって駆動される。磁性流体を有するピックアップソレノイド208は、周波数αf1、αf2およびγf1+βf2の様々な共振成分を有する信号スペクトラムを含む。α、βおよびγは正の整数であり、その1つの成分であるγT1+βT2がターゲット周波数として得られ、増幅される。
【0028】
ピックアップソレノイド208からのαf1、αf2およびγf1+βf2の成分の信号は、第1段階のアンプ(AMP1)262に入力される。これらの成分の全てが増幅される。しかしながら、ターゲット周波数γT1+βT2付近にある中心フィルタリング周波数を有するフィルタ1 264は、他の信号の成分をフィルタリングする。第1アナログデジタル変換器1A 266は、アナログ信号をデジタル信号に変換し、αf1およびαf2、特に、中心周波数γT1+βT2付近のαf1およびαf2の振幅および位相を探し出すために、デジタル信号処理ユニット250に入力される。αf1およびαf2の成分を補償(またはオフセット)するために、デジタル信号処理ユニット250は、αf1およびαf2の逆位相信号を生成して、デジタルアナログ変換器1B 268によって、増幅された信号のαf1およびαf2の成分を取り消す。第1段階の出力信号およびデジタルアナログ変換器1B 268のαf1およびαf2の逆位相信号は、第2段階アンプ270に出力される。この逆位相信号は、例えば、反転位相でもよく、これによって、周波数γT1+βT2を有するターゲット信号成分以外の他の信号を抑制する。そのため、他の成分に対するγT1+βT2の相対振幅が増加する。その結果、αf1およびαf2の振幅は大幅に増幅されず、補償プロセスによって減少さえする。さらに、電子回路の副高調波効果も抑制される。そのため、第1段階のユニットからの出力信号の総強度を、第2段階アンプ270のオペアンプの高レベル制限より低く保持することができる。直列したフィルタリング/増幅/補償ユニットを使用することによって、ターゲット周波数γT1+βT2の成分を大幅に増幅することができる。αf1、αf2およびγf1+βf2の全ての成分の最終出力信号は、アナログデジタル変換器nA 284によってデジタル信号処理ユニット250に導かれる。γT1+βT2のターゲット成分の振幅は、デジタル信号処理ユニット250で分析され、出力される。
【0029】
ここで、混合周波励起およびフィルタリング/増幅/補償電子回路の実施可能性を示す例を挙げる。本実施例において、検出すべきサンプルは、Fe34磁性流体を塗布した水性のデキストランであり、図7において説明する。Fe34以外にも、MnFe24、CoFe24、Fe23、…等の他の材料を磁性流体に使用してもよい。タンパク質A、タンパク質G等の他の親水性材料を用いて、磁性ナノ粒子の表面に塗布されたデキストランを置き換えてもよい。本実施例において、磁性流体における磁性ナノ粒子の平均径は、56nmである。注意すべきこととして、磁性ナノ粒子の平均径は、56nmのみに限定されない。一般的に、磁性ナノ粒子の平均径は、5nmから500nmの範囲である。周波数f1およびf2は、例えば、10Hzから106Hzの間で変化することができる。γT1+βT2のターゲット成分の出力振幅は、ゼロから0.3emu/gまでの様々な濃度、あるいは更に高い濃度の磁性流体に対して、図4のフィルタリング/増幅/補償電子回路を使用することによって、測定される。
【0030】
図5は、測定するサンプル中の磁化量と濃度の関係を概略的に示したものである。ゼロから0.3emu/gまでの様々な濃度の磁性流体を、図3の装置で測定する。注意すべきこととして、検出時の磁性流体の最高濃度は、0.3emu/gに限定されない。濃度が高ければ高いほど、より多くの個々の磁性ナノ粒子が磁性流体に存在する。磁性流体の濃度がリニア関係で増加すると、γT1+βT2のターゲット成分の磁化量MTも増加することが予測される。
【0031】
図4の回路構造を有する図3の装置は、IMRによる生体分子の測定等の様々な応用を有する。図5の結果で立証されたように、磁性流体の濃度、すなわち、液体中の個々の磁性ナノ粒子の数が減少するにつれて、MTは小さくなる。本発明の装置は、磁性流体の磁化量を正確に測定して、その変化を観察する。この特性を利用することによって、液体中の生体分子を検出する方法を開発することができる。このような方法では、抗体のようなバイオプローブが磁性ナノ粒子に塗布される。
【0032】
図6は、本発明の実施形態に係るバイオプローブで塗布された磁性ナノ粒子と測定する生体分子の間の反応メカニズムを概略的に示したものである。したがって、磁性ナノ粒子は、本質的に生体機能を有し、ターゲット生体分子と結合することができる。この結合によって、個々の生体機能を有する磁性ナノ粒子の一部は、物理的に大きくなるか、または群生する。図6(A)において、塗布された抗体を有する磁性ナノ粒子が検出すべき生体分子と反応しない時、磁化量は初期状態MT,oである。この磁性ナノ粒子は小さく、回転しやすい。しかしながら、図6(B)において、ナノ粒子がターゲット生体粒子と反応した場合、いくつかの磁性ナノ粒子は大きくなるか、または群生する。この状況において、生体機能を有する磁性ナノ粒子が磁性流体のターゲット生体分子と結合した時、サンプルの磁化量MT,φは、初期状態MT,oの磁化量よりも小さくなると想定される。これは、IMRのような測定法を実行するメカニズムである。
【0033】
生体機能を有する磁性ナノ粒子とターゲット生体分子の結合によって生じたMTの減少を示す例を挙げる。図7は、本発明の実施形態に係るバイオプローブで塗布された磁性ナノ粒子の構造を概略的に示したものである。図7において、単一の磁性ナノ粒子は、例えば、Fe34でもよい。磁性ナノ粒子をデキストランで塗布し、それからバイオプローブ(または抗体)で塗布する。本実施例では、例えば、ポリクローナル抗体(polyclonal antibody)H1N2を使用する。ポリクローナル抗体の他に、モノクローナル(monoclonal antibody)抗体をバイオプローブに使用してもよい。H1N2は、豚インフルエンザ(swine-influenza)ウィルスの1つであり、含量を検出されるものである生体分子として本例に使用する。ターゲット生体分子H1N2を検出するために、濃度0.02emu/gの磁性試剤40‐μl(すなわち、抗H1N2の生体機能を有する磁性ナノ粒子を有する磁性流体)を60‐μlのH1N2溶液と混合する。本実施例における濃度は、0.032HAU/50‐μlである。混合した後、図3および図4に概略的に示した装置を使用して、磁性試剤とH1N2溶液の混合液の時間依存性(time-dependence)MTを検出する。図8は、本発明の実施形態に係る時間関数により磁化量で示される反応を概略的に示したものである。図8において、丸い点は、培養前の磁性試剤とH1N2溶液の混合液のMTを示す。点は、適時に安定状態で分布している。培養前のMTは、MT,oで示される。例えば、2時間で収集したデータに対して時間平均値を出す。MT,oは、ターゲット混合周波数γT1+βT2で66.18と測定される。十字の点は、生体機能を有する磁性ナノ粒子をターゲット生体分子H1N2と結合する過程に対応する。例えば22℃の室温で結合/培養した後、MT,fは、磁性試剤とH1N2溶液の混合液が培養されて四角い点で示したような別の安定状態に達した後のデータに対する平均のMTを示す。十字の点は、遷移状態を示す。図6で説明したように、磁化量MT,fは、十分な培養時間の後に小さくなる。注意すべきこととして、培養時間は、通常、バイオプローブの品質と培養温度による。培養温度は、例えば、18℃から45℃までであり、培養時間は、例えば、1分から5時間である。培養温度が上がると、培養時間は減少すると予測される。MT,fについて、四角い点の時間平均値は、64.54である。MTの大幅な減少は、生体機能を有する磁性ナノ粒子と生体分子H1N2の接合を証明する。さらに、IMR信号は、以下の式を用いて、2.48%と算出される。
【数7】

数回の試験によって、測定値および標準偏差は、それぞれ2.48%および0.09%である。この結果は、本発明の推論を立証する。
【0034】
更なる研究において、生体分子の各種濃度をIMR(%)で測定した。図9は、本発明の実施形態に係るウィルスの濃度に対するIMR(%)の行為を概略的に示したものである。図9において、IMRとターゲット生体分子の濃度の関係を調べる。本実施例において、ウィルスは、例えば、H1N2である。3×10-4HAU/50‐μlよりも小さい濃度では、IMR信号は検出装置のノイズレベルに近い。H1N2の濃度が3×10-4HAU/50‐μlよりも大きい時、IMR信号は、H1N2の濃度の増加とともに指数的に増加して、高濃度においてほぼ飽和値に達する。本発明からわかるように、図9におけるIMRとターゲット生体分子H1N2の濃度φの関係は、シグモイド関数によって、以下の式(8)で表される。
【数8】

ここで、図(8)のパラメーターAは、この測定のノイズレベルに対応し、Bは、高濃度のターゲット生体分子の飽和IMR信号を示す。図9のデータポイントを式(8)にフィッティングすると、A、B、φoおよびρは、それぞれ1.06、3.65、0.024および0.64になる。図9の相関係数R2は、0.997である。したがって、検出すべき生体分子の濃度φの関数で示されるIMRの測定数量はとても高く、式(8)で適切に定義される。
【0035】
IMR‐φo曲線の式(8)で表される対数の行為(logistic behavior)は、H1N2だけでなく、他の種類の生体分子に対しても見られる。生体分子には、例えば、タンパク質、ウィルス、核酸(nuclei acid)、更には化学薬品も含まれる。もちろん、A、B、φoおよびρは、異なる種類のターゲット生体分子によって変わってもよい。しかしながら、本発明の研究に基づくと、異なる生体分子または化学薬品の関係IMR‐φoに関するユニバーサル曲線は、IMRを(IMR−A)/(B−A)に、φをφ/φoに縮尺することによって、様々なサンプルを式(8)の同じ曲線に示すことができ、さらに、式(9)で表される。
【数9】

【0036】
式(9)において、正規化IMR(IMRnorと示す)は、正規化濃度Фの関数であり、パラメーターA、Bおよびφoを含まない。一般形式に当てはまる唯一のパラメーターは、ρである。図10は、本発明の実施形態に係る生体分子の濃度に対する正規化IMRnor(%)の行為を概略的に示したものである。図10において、いくつかのサンプルを測定して、図9のような曲線を得る。結果は、様々な生体分子を測定するユニバーサル曲線を示す。図10のy軸に傾いたIMRnor(%)は、百分率の単位で(IMR−A)/(B−A)である。図10の各種生体分子の測定に関するパラメーターA、B、φoおよびρを、表1に示す。
【表1】

【0037】
言いかえると、式(9)は、様々な生物分子を描写するための一般曲線でもよい。実際の応用では、例えば、図3および図4に示した装置によって、特殊な生体分子のサンプルに対するIMRを測定することができる。その後、式(8)または式(9)および用意された表に基づいて、検出すべき生体分子の濃度φを得ることができる。バイオプローブの提供者は、式(8)または式(9)に基づいて、パラメーターテーブルを用意することができるため、使用者は、IMR数量を測定することによって、生体分子の濃度を簡単に測定することができる。測定する装置は、例えば、混合周波数で交流磁場を生成するソレノイドを有する図3および図4の装置でもよい。しかしながら、IMR数量は、ソレノイドベースに限らず、他の方法で測定してもよい。本発明において、IMRの測定は、図3および図4の装置のみに限定されない。
【0038】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【符号の説明】
【0039】
100、200、202 交流電流発生装置
102、104、120、204、206、208 ソレノイド
108、212 磁性流体
110、214 電子回路
106、210 コイル
254 パワーアンプ
250 デジタル信号処理ユニット
260 回路
266、276、284 アナログデジタル変換器
252、268、278 デジタルアナログ変換器
262、270、280 アンプ
264、272、274、282 フィルタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の生体分子の量を測定するための方法であって、
磁性ナノ粒子を有する溶液を提供することと、
前記溶液中の前記磁性ナノ粒子の表面にバイオプローブ分子を塗布することと、
混合磁場の混合周波数(γf1+βf2)(ここで、γおよびβは正の整数であり、f1およびf2は前記混合磁場を生成するための2つの変化磁場の2つの異なる周波数である)で前記溶液の第1交流磁化量を測定することと、
検出すべき前記生体分子を含んだ前記サンプルを前記溶液に添加して、前記サンプル中の前記生体分子を前記磁性ナノ粒子に塗布された前記バイオプローブ分子と複合させることと、
培養時間に培養温度で前記溶液の培養を行うことと、
前記サンプルを添加して培養した後に、前記混合磁場の前記混合周波数(γf1+βf2)で前記溶液の第2交流磁化量を測定し、前記混合周波数(γf1+βf2)で前記第1交流磁化量と前記第2交流磁化量の間の交流磁化量の減少を獲得して、前記生体分子の量を決定することと
を含む方法。
【請求項2】
前記磁性ナノ粒子の成分が、Fe34、MnFe24、CoFe24またはFe23である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記磁性ナノ粒子の直径が、約5nmから約500nmの間である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記培養時間が、1分から5時間の間である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記培養時間中の培養温度が、18℃から45℃の間である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記バイオプローブ分子が、ポリクローナルまたはモノクローナル型を含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
混合周波数で交流磁化量を測定するための装置であって、
少なくとも周波数f1を有する第1交流電流および周波数f2を有する第2交流電流を生成する交流生成ユニットと、
前記第1交流電流および前記第2交流電流によって駆動され、第1磁場および第2磁場を生成する同軸ソレノイドユニットと、
前記同軸ソレノイドユニット内に配置され、中にサンプルを配置して前記サンプルの交流磁化量を検出するとともに、f1およびf2の様々な周波数の組合せに対応して、複数の周波数成分信号を出力するピックアップソレノイドと、
前記周波数成分信号を受信して、前記周波数成分信号を処理し、ターゲット周波数(γT1+βT2)(ここで、γTおよびβTは正の整数であり、前記周波数f1および前記周波数f2は2つの異なる周波数である)で前記サンプルの前記交流磁化量を獲得する信号処理回路と
を含む装置。
【請求項8】
前記周波数f1および前記周波数f2が、101Hzから106Hzの範囲にある請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記ピックアップソレノイドが、磁力計またはグラジオメータ型である請求項7記載の装置。
【請求項10】
前記ピックアップソレノイドが、前記同軸ソレノイドユニットに同軸である請求項7記載の装置。
【請求項11】
前記信号処理回路が、
デジタル信号処理ユニットと、
直列に接続されるn段階のアンプおよびフィルタであり、nが少なくとも2である、前記n段階のアンプうちの第1アンプが前記ピックアップソレノイドに接続されて前記周波数成分信号を受信し、前記フィルタが前記ターゲット周波数を有する成分をフィルタリングする、n段階のアンプおよびフィルタと、
前記フィルタと前記デジタル信号処理ユニットの間にそれぞれ接続され、前記デジタル信号処理ユニットに対して前記フィルタの出力信号をデジタル量に変換する複数のアナログデジタル変換器と、
前記デジタル信号処理ユニットから前記アンプにそれぞれ接続された複数のデジタルアナログ変換器と
を備え、前記デジタル信号処理ユニットが、抑制信号を生成して前記接続されたアンプにフィードバックされ、前記抑制信号が前記ターゲット周波数以外での一つ前の段階の前記フィルタからの出力信号の一部を抑制する請求項7記載の装置。
【請求項12】
前記フィルタの中心周波数が、混合周波数の中の前記ターゲット周波数にある請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記デジタル信号処理ユニットから生成された前記抑制信号が、前記同軸ソレノイドによって生成された高調波周波数の信号および電子回路によって感応された副高調波周波数の信号を取り消すためのものである請求項11記載の装置。
【請求項14】
交流磁化量の減少と生体分子の濃度の間の関係を建立するための方法において、前記交流磁化量の減少が、既知の濃度を有する前記生体分子を測定したサンプルに添加して培養する前と後の、前記サンプルの交流磁化率の差異であって、前記方法が、
複数のサンプルを準備し、そのうちそれぞれのサンプルがバイオプローブ分子を塗布した複数の磁性ナノ粒子を有する溶液を含むとともに、生体分子濃度を有し、それぞれのサンプルが異なる生体分子濃度を有することと、
前記各サンプルに対して交流磁化量の減少を測定することと、
前記交流磁化量の減少のデータをロジスティック関数であるシグモイド関数
【数1】

(ここで、IMRは百分率で示した前記交流磁化量の減少であり、φは各サンプル中の前記生体分子濃度であり、A、B、φ oおよびρはフィッティング曲線を得るためのフィッティングパラメータである)でフィッティングすることと、
測定すべきサンプルに対する交流磁化量の減少IMRを測定するとともに、前記シグモイド関数の前記フィッティング曲線を用いてターゲット生体分子濃度を獲得することと
を含む方法。
【請求項15】
交流磁化量の減少を測定するとは、
時間関数により混合周波数(γf1+βf2)(ここで、γおよびβはそれぞれゼロよりも大きい整数であり、f1およびf2は前記交流磁場の2つの基底周波数である)を有する交流磁場を印加することと、
前記時間のフレームにおける前記交流磁化量の分布に対して、初期領域と反応完了領域を決定することと、
前記初期領域および前記反応完了領域の前記交流磁化率の差異を算定することと
を含む請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記混合周波数(γf1+βf2)を有する前記交流磁場が、同軸の第1ソレノイドおよび第2ソレノイドを駆動することによって提供され、前記第1ソレノイドが前記基底周波数f1を有し、前記第2ソレノイドが前記基底周波数f2を有する請求項15記載の方法。
【請求項17】
サンプル中のバイオプローブと生体分子の間の反応を観測するための方法であって、
磁性ナノ粒子を有する溶液を提供することと、
前記溶液中の前記磁性ナノ粒子の表面にバイオプローブ分子を塗布することと、
培養時間に測定すべき前記生体分子を含んだサンプルを前記溶液に添加することと、
時間関数により混合周波数(γf1+βf2)(ここで、γおよびβはそれぞれゼロより大きい整数であり、f1およびf2は2つの異なる周波数である)で前記溶液の交流磁化量を測定することと
を含み、前記交流磁化量が、初期状態と反応完了状態では安定しているが、前記初期状態と前記反応完了状態の間で差がある方法。
【請求項18】
前記磁性ナノ粒子が、Fe34、MnFe24、CoFe24またはFe23である請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記磁性ナノ粒子の直径が、約5nmから約500nmの間である請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記交流磁化量に対する周波数の範囲が、約101Hzから約106Hzまでである請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−204101(P2010−204101A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−43213(P2010−43213)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(508298732)
【出願人】(509178703)
【出願人】(508298754)
【出願人】(508298776)
【Fターム(参考)】