説明

材料供給装置およびその装置による材料供給方法

【課題】棄て打ち量の低減が図れる材料供給装置およびその装置の材料供給方法を実現する。
【解決手段】シリンジ20には、複数の材料を吐出する複数の吐出口24と、この吐出口24のそれぞれに通ずる経路を開閉する弁機構30とが設けられ、弁機構30は、吐出口24に通ずる経路を開閉する弁体31と所定の締切圧で押圧するバネ部材32とからなり、弁体31、バネ部材32は、吐出口24の内周に配設されるとともに、シリンジ20内の棄て打ちを行うときに、一つの弁機構30を開弁させるように制御される。これにより、棄て打ち量の低減が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の材料を混合して製品に供給する材料供給装置およびその装置による材料供給方法に関するものであり。特に、混合された材料の棄て打ち量の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の材料供給装置として、例えば、図7に示すように、2液の材料をシリンジ200内で混合しながら製品1に塗布する装置100が知られている。この装置では、材料が貯えられている貯蔵容器130とシリンジ200とを配管110で繋ぐとともに、その配管110に貯蔵容器130からシリンジ200に材料を圧送するポンプ120を設けている。
【0003】
例えば、2液の材料に主剤と硬化剤とを用い、シリンジ200によって混合された2液の材料を製品1に塗布する場合には、制御装置150によってそれぞれのポンプ120を作動して貯蔵容器130から主剤と硬化剤とをシリンジ200内に吐出させている。そして、シリンジ200内で主剤と硬化剤とを混合させた後、製品1に塗布するように構成している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記構成による材料供給装置100では、休憩などで装置100の塗布工程が止まった場合、シリンジ200内に吐出された主剤と硬化剤とが反応してシリンジ200が詰まる問題がある。
【0005】
そのために、材料供給装置100を停止する場合には、主剤と硬化剤とがゲル化する前に、吐出された主剤と硬化剤とを排出する棄て打ちを行うことが必要となる。つまり、混合された材料の棄て打ち量が増加する問題がある。
【0006】
また、同じ装置で使用する材料に変更がある場合には、シリンジ200内に吐出された材料を含め、それぞれの配管110およびポンプ120内の材料を入れ替えるための棄て打ち作業が伴う。これにより、材料の棄て打ち量が増加する問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、棄て打ち量の低減が図れる材料供給装置およびその装置の材料供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項7に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、内部に少なくとも2種類の吐出された材料を混合するシリンジ(20)と、貯蔵容器からシリンジ(20)に材料を圧送する圧送手段(12)とを備え、混合された材料をワークに供給する材料供給装置において、
シリンジ(20)には、複数の材料を吐出する複数の吐出口(24)と、吐出口(24)のそれぞれに通ずる経路を開閉する弁機構(30)とが設けられ、
弁機構(30)は、吐出口(24)の近傍に配設され、かつシリンジ(20)内の棄て打ちを行うときに、一つの弁機構(30)を開弁させるように制御されることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、吐出口(24)の近傍に弁機構(30)を配設することで、弁機構(30)以降、およびシリンジ(20)内の混合された材料の棄て打ちを行えば良いので、棄て打ち量が最も低減される。さらに、他の吐出口(24)から吐出された材料が弁機構(30)に吐出されることはない。
【0010】
また、一つの材料でシリンジ(20)内の混合された材料の棄て打ちを行うことができるので、もう一方の材料は弁機構(30)で閉弁状態を確保することで、もう一方の材料の棄て打ち量の低減が図れる。
【0011】
さらに、同じ材料供給装置で異なる材料を供給する場合には、複数の吐出口(24)を設けることにより、ワークに応じた適宜の材料のみを供給することができるため、旧使用の材料の入れ替え作業をスムーズに切り替えることができる。また、異なる一つの材料による棄て打ちを連続的に行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、シリンジ(20)内の混合通路に、突き出された筒状の複数の突出部材(23)が設けられ、吐出口(24)は、複数の突出部材(23)の側端面および外周面に形成され、弁機構(30)は、突出部材(23)の内周に配設されることを特徴としている。この発明によれば、筒状の突出部材(23)を設けることで、他の突出部材(23)から吐出された材料が突出部材(23)内に混入することはない。また、具体的には、弁機構(30)が吐出口(24)の近傍に配設することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、弁機構(30)は、吐出口(24)に通ずる経路を開閉する弁体(31)と、この弁体(31)に所定の締切圧で押圧するバネ部材(32)とからなっており、弁体(31)およびバネ部材(32)は、突出部材(23)の内周に配設されることを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、吐出口(24)に通ずる経路を開閉する動力をポンプ(12)の圧力を用いることができる。これにより、弁機構(30)が簡素な構造で構成することができる。また、弁体(31)とバネ部材(32)とを突出部材(23)の内周に配設されることにより、弁機構(30)を最も吐出口(24)に近い部位に配設することができる。
【0015】
さらに、突出部材(23)の内周に弁機構(30)を配設することで、ひとつの弁機構(30)から圧送手段(12)の所定の圧力でシリンジ(20)内に材料が供給されたときに、その圧力は、他の弁機構(30)の弁部に対し、閉塞する方向に働くため、他の突出部材(23)から吐出された材料が弁機構(30)近傍に吐出されることはない。
【0016】
請求項4に記載の発明では、シリンジ(20)内の混合通路に突き出された筒状の複数の突出部材(23)が設けられ、吐出口(24)は、複数の突出部材(23)の側端面および外周面に形成され、弁機構(30)は、吐出口(24)に通ずる経路を開閉する電磁弁(30)であって、電磁弁(30)は、突出部材(23)の接続口近傍に配設されることを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、吐出口(24)に通ずる経路を電磁弁(30)で構成しても良い。但し、この場合には、電磁弁(30)の開閉制御するための制御装置および電磁弁(30)のを作動させるための電源を必要とする。
【0018】
請求項5に記載の発明では、シリンジ(20)内の混合通路に突き出された筒状の複数の突出部材(23)が設けられ、吐出口(24)は、複数の突出部材(23)の側端面および外周面に形成され、弁機構(30)は、吐出口(24)に通ずる経路を開閉する開閉部材(30)であって、この開閉部材(30)は、突出部材(23)の接続口近傍に配設されることを特徴としている。
【0019】
この発明によれば、開閉部材(30)として、例えば、配管を潰すクリップなどを用いることで、弁機構(30)が簡素な構造で構成することができるとともに、吐出されたシリンジ(20)内の材料に吐出前の材料が混合されることがない。
【0020】
請求項6に記載の発明では、内部に少なくとも2種類の吐出された材料を混合するシリンジ(20)と、貯蔵容器からシリンジ(20)に材料を圧送する圧送手段(12)とを備え、混合された材料をワークに供給する材料供給装置による材料供給方法であって、
シリンジ(20)には、複数の材料を吐出する複数の吐出口(24)と、吐出口(24)のそれぞれに通ずる経路を開閉する弁機構(30)とが設けられ、2種類の材料の混合を行うときには、2種類の材料に応じた弁機構(30)を開弁させてシリンジ(20)内に吐出させ、シリンジ(20)内の棄て打ちを行うときには、一つの弁機構(30)を開弁させてシリンジ(20)内に吐出させることを特徴としている。
【0021】
この発明によれば、一つの材料でシリンジ(20)内の混合された材料の棄て打ちを行うことができるので、もう一方の材料は弁機構(30)で閉弁状態を確保することで、もう一方の材料の棄て打ち量の低減が図れる。
【0022】
さらに、同じ材料供給装置で異なる材料を供給する場合には、複数の吐出口(24)を設けることにより、ワークに応じた適宜の材料のみを供給することができるため、旧使用の材料の入れ替え作業をスムーズに切り替えることができる。また、異なる一つの材料による棄て打ちを連続的に行うことができる。
【0023】
請求項7に記載の発明では、シリンジ(20)内の棄て打ちを行うときには、混合された材料が硬化する硬化時間に基づいた棄て打ち許容時間内に行うことを特徴としている。この発明によれば、棄て打ちのタイミングは硬化時間に基づいて決めることができるため、的確な棄て打ちを行うことができる。
【0024】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態における材料供給装置を図1ないし図4に基づいて説明する。本実施形態の材料供給装置は複数(本例では4種類)の材料がシリンジ20に供給可能に構成している。
【0026】
図1はシリンジ20の全体構成を示す模式図である。図2は材料供給装置10の全体構成を示す模式図であり、図3は図1に示すA−A断面図である。また、図4は2液の材料が混合される接着剤の硬化時間と棄て打ち時間との関係を示す特性図である。
【0027】
まず、本実施形態の材料供給装置10は、図2に示すように、2種類(例えば、4種類)以上の材料を混合するシリンジ20、それぞれの材料が貯蔵される貯蔵容器13、シリンジ20と貯蔵容器13とを接続する供給配管11、シリンジ20に貯蔵容器13内の材料を圧送する圧送手段であるポンプ12、そのポンプ12を制御する制御手段である制御装置15、および材料供給装置本体2から構成される。
【0028】
ここで、供給配管11、ポンプ12および貯蔵容器13は、本実施形態では使用する材料に応じて複数(例えば、4個)設けられている。なお、供給配管11は、シリンジ20の供給口26とポンプ12の吐出口(図示せず)、およびポンプ12の吸入口(図示せず)と貯蔵容器13の吐出口(図示せず)との間を接続する配管であって、小径の金属もしくは樹脂製のチューブで形成されている。
【0029】
材料供給装置本体2は、ワークである製品1にシリンジ20で混合された材料を塗布する作業盤でありシリンジ20が配設されている。本実施形態のシリンジ20は、図1および図3に示すように、シリンジ本体21と、その上方に吐出口24を有する突出部材23と、下端に塗布口25と、シリンジ本体21内側に配設されるミキシング部材22とから構成される。
【0030】
シリンジ本体21は、内容量が10cc〜30cc程度の筒状のミキシング容器であって、全体形状が略円筒状に形成されている。上端には後述する回転軸(図示せず)が貫通する貫通穴(図示せず)が形成されている。上方には後述する複数の突出部材23が一体的に形成され、下方端には塗布口25が一体的に形成される。
【0031】
そして、突出部材23から塗布口25に至る内容量が小さくなるように小径の筒状に形成している。つまり、全体形状を略円筒状に形成することで小容量のシリンジ本体21が形成できる。
【0032】
ミキシング部材22は、回転軸(図示せず)、ミキシング翼(図示せず)およびミキシングモータ(図示せず)から一体的に構成されて、シリンジ本体21の軸心上に垂直方向に配設される。そして、ミキシング軸(図示せず)の上端に連結されたミキシングモータ(図示せず)の作動によって、回転軸(図示せず)およびミキシング翼(図示せず)が回転されることで、上方の吐出口24から吐出された材料を混合し、その混合された材料を下方の塗布口25に導いている。
【0033】
ここで、ミキシング翼(図示せず)は、上方から吐出される材料をゆっくりと下方に導くように回転軸(図示せず)に対して螺旋状に形成されている。併せて、ミキシングモータ(図示せず)の回転も制御装置15によってゆっくりと回転するように制御されている。
【0034】
塗布口25は、シリンジ20の下端に形成された排出口であって、シリンジ本体21に一体的に形成されるとともに、ミキシング部材22によって混合された材料が製品1に塗布するように形成される。
【0035】
突出部材23は、シリンジ本体21の円周方向に対して4等分の等間隔の位置にそれぞれが軸心に対して対向するように形成される。具体的には、シリンジ本体21の外周枠の内周より軸心に向けて突き出すように略円筒状の複数の突出部材23を形成している。
【0036】
そして、シリンジ本体21内に突き出した円筒状の一端面および外周には吐出口24が開口するように形成されている。ここで、吐出口24は、少なくとも一端面および外周の下方側に小径に分けて数個形成することが望ましい。
【0037】
これによれば、後述する弁機構30が開弁したときに、吐出口24から吐出する材料がシリンジ本体21の下方側に向けて吐出できる。つまり、シリンジ本体21内の混合通路に向けてポンプ12で圧送された材料を吐出することができる。さらに、シリンジ本体21内に突き出した円筒状の一端面および外周に吐出口24を形成することにより、他の突出部材23の吐出口24から吐出された材料が吐出口24の内周に吐出されて混ざることがない。
【0038】
そして、この突出部材23の外方側、つまり、シリンジ本体21の外方に突出する筒部には、供給配管11を接続する供給口26が開口するように形成されている。そして、この供給口26と吐出口24とを繋ぐ経路に弁機構30を配設している。言い換えれば、吐出口24の内周には、供給口26から吐出口24に通ずる経路を開閉するための弁機構30が配設されている。
【0039】
その弁機構30は、供給口26の上流側に配設されるポンプ12が作動したときに弁部が開弁し、ポンプ12が停止したときに弁部が閉弁するように構成されている。具体的には、弁機構30は、吐出口24に通ずる経路を開閉するための弁体31と、この弁体31に所定の締切圧で押圧するバネ部材32とから構成される。
【0040】
より具体的には、弁体31を円錐状もしくはテーパー状に形成するとともに、供給口26と吐出口24とを繋ぐ経路に供給口26よりも吐出口24の内周を拡径するように円錐状もしくはテーパー状で繋ぐように形成する。
【0041】
言い換えれば、吐出口24の内周の径を供給口26の径よりも大きくして、上記弁体31が嵌め合うように円錐状もしくはテーパー状で繋ぐ。そして、この円錐状もしくはテーパー状の部位に弁体を配設するとともに、弁体31を押圧するためのバネ部材32を弁体31の背面と突出部材23の一端との間に配設する。
【0042】
これによれば、バネ部材32は、所定の締切圧で弁体31を押圧することで弁部が閉弁される。そして、ポンプ12が作動しているときには、ポンプ12の動作圧によってバネ部材32が縮んで弁部が開弁される。これにより、本実施形態の弁機構30はポンプ12の動作圧によって吐出口24に通ずる経路を開閉することができる。
【0043】
また、以上の構成によれば、弁機構30の弁部を吐出口24の近傍に設けることができるとともに、吐出口24を突出部材23の突き出された一端面および外周に形成し、さらにその吐出口24の内周に弁機構30を配設することで、ひとつの弁機構30からポンプ12の所定の圧力でシリンジ20内に材料が供給されたとき、その圧力は、他の弁機構30の弁部に対し、閉塞する方向に働くため、他の突出部材23から吐出された材料が弁機構30近傍に吐出されることはない。
【0044】
制御装置15は、図示しないそれぞれのスイッチの操作に基づいてポンプ12とミキシングモータ(図示せず)とを制御するように構成されている。
【0045】
ところで、本実施形態の突出部材23および供給口26は、突出部材23がシリンジ本体21の内側に突き出すように形成され、供給口26がシリンジ本体21の外方に突き出すように形成されているが、これに限らず、突出部材23と供給口26とを別体で一体的に形成してシリンジ本体21の外周枠を貫くように突出部材23と供給口26とを配設させてシリンジ本体21に一体的に構成しても良い。
【0046】
なお、本実施形態では、突出部材23と供給口26とをシリンジ本体21の円周方向に4個形成したが、この数に限らず、4個以上形成しても良い。また、突出部材23を略円筒状に形成したが、断面が略円形に限定せず、略楕円形、矩形もしくは多角形など筒状であれば良い。
【0047】
次に、以上の構成による材料供給装置を用いた材料供給方法について説明する。主剤と硬化剤もしくは触媒を混合して硬化させる接着工程における材料供給方法を説明する。まず、材料供給装置本体2に製品1を設置する。そして、図示しないミキサ−スイッチを操作することでミキシングモータ(図示せず)が所定の回転数で駆動する。これにより、ミキシング部材22が回転する。
【0048】
そして、複数の貯蔵容器14うち、主剤と硬化剤もしくは触媒とを貯蔵した貯蔵容器14を選択するとともに、この貯蔵容器14に接続されたポンプ12を駆動するための図示しないポンプスイッチを操作する。これにより、作動されたポンプ12に接続される供給配管11内の動作圧が上昇する。従って、弁機構30の弁体31にポンプ12の動作圧が作用することになる。
【0049】
そして、ポンプ12の動作圧に対してバネ部材32の締切圧が小さいため、弁部が開弁するとともに吐出口24に材料が供給される。そして、それぞれの吐出口24より材料がシリンジ本体21内に吐出される。つまり、吐出口24からそれぞれの材料がミキシング部材22に吐出され、ミキシング部材22によって混合されながら塗布口25に導かれる。
【0050】
そして、塗布口25から混合された2種類の材料が製品1に塗布される。そして、製品1に塗布された材料は硬化時間を経て硬化する。以上の作動によって接着工程が行われる。ところで、休憩などによって材料供給装置本体2およびポンプ12を停止させると、弁機構30は動作圧よりも締切圧が大きいため弁部が開弁する。これにより、吐出口24への材料の供給が停止される。
【0051】
ところが、ポンプ12を停止させたときに、ミキシングモータ(図示せず)を停止させて放置させておくと、シリンジ本体21内に吐出された2種類の材料によってゲル化が進行してシリンジ本体21内で硬化してしまう。
【0052】
そこで、本実施形態では、ポンプ12を停止させた後に棄て打ちを行うようにしている。つまり、2種類の材料のうち、いずれか一方の材料をシリンジ本体21内に吐出させて混合された2種類の材料を押し出すことを行っている。言い換えれば、シリンジ本体21内に1種類の材料で満たすようにして混合された2種類の材料を外部に棄てる処理を棄て打ちと称している。
【0053】
この棄て打ちを行った後に、ミキシングモータ(図示せず)を停止させて休憩に入るようにしている。ここで、棄て打ちを行うタイミングについて図4に基づいて説明する。図4は接着剤の硬化時間(時間)と棄て打ち時間(分)との関係を示す特性図である。
【0054】
例えば、室温短時間硬化型の接着剤では、図4に示すように、接着剤の硬化時間(時間)と棄て打ち時間(分)との関係が、硬化時間が短いほど棄て打ち時間(分)が短くなる特性を備えている。
【0055】
従って、硬化時間が短い接着剤ほど短い周期の棄て打ちが必要となるとともに棄て打ちによる棄て打ち量が増加する問題がある。そこで、本実施形態のように、弁機構30を吐出口24の近傍に設けることで、弁機構30以降塗布口25までの内容積を小さくすることで棄て打ち量の低減が図れる。
【0056】
ところで、本実施形態では、突出部材23と供給口26とを複数形成している。つまり、製品1によっては、接着剤を塗布するときに、使用する材料が異なる場合があるため、工程内を流動する製品1に応じて、対応する材料に切り替えることが可能なように構成されている。
【0057】
言い換えれば、同一の材料供給装置本体2で異なる材料を塗布することができる。この場合には、今まで塗布した材料を異なる材料に変えるときには、次の材料のうちいずれか一方の材料をシリンジ本体21内に吐出させる棄て打ちを行った後に、所定の材料をシリンジ本体21内に吐出させて製品1に塗布すれば良い。
【0058】
これにより、同一の材料供給装置本体2で次の工程の材料をスムーズに切り替えることができるとともに、所定の接着剤を製品1に塗布することができる。
【0059】
また、一ラインで複数の製品1が流動する場合、途中から同一の材料供給装置本体2を用いて塗布する材料を変更することが容易にできる。なお、本実施形態では、突出部材23と供給口26とをシリンジ本体21の円周方向に等間隔に開けて形成したが、これに限らず、シリンジ本体21の垂直方向にオフセットさせて複数個形成すると良い。
【0060】
以上の第1実施形態による材料供給装置によれば、シリンジ20には、複数の材料を吐出する複数の吐出口24と、この吐出口24のそれぞれに通ずる経路を開閉する弁機構30とが設けられ、この弁機構30は、吐出口24の近傍に配設され、かつシリンジ20内の棄て打ちを行うときに、一つの弁機構30を開弁させるように制御される。
【0061】
これによれば、吐出口24の近傍に弁機構30を配設することで、弁機構30以降、およびシリンジ20内の混合された材料の棄て打ちを行えば良いので、棄て打ち量が最も低減される。さらに、他の吐出口24から吐出された材料が弁機構30に吐出されることはない。
【0062】
また、一つの材料でシリンジ20内の混合された材料の棄て打ちを行うことができるので、もう一方の材料は弁機構30で閉弁状態を確保することで、もう一方の材料の棄て打ち量の低減が図れる。
【0063】
さらに、同じ材料供給装置本体2で異なる材料を供給する場合には、複数の吐出口24を設けることにより、製品1に応じた適宜の材料のみを供給することができるため、旧使用の材料の入れ替え作業をスムーズに切り替えることができる。また、異なる一つの材料による棄て打ちを連続的に行うことができる。
【0064】
また、シリンジ本体21内の混合通路に突き出された筒状の複数の突出部材23が設けられ、吐出口24は、複数の突出部材23の側端面および外周面に形成され、弁機構30は、突出部材23の内周に配設される。
【0065】
これにより、シリンジ本体21内に突き出す筒状の突出部材23を設けることで、他の突出部材23から吐出された材料が突出部材23内に混入することはない。また、具体的には、弁機構30が吐出口24の近傍に配設することができる。
【0066】
また、弁機構30は、吐出口24に通ずる経路を開閉する弁体31とこの弁体31に所定の締切圧で押圧するバネ部材32とからなっており、弁体31およびバネ部材32は、突出部材23の内周に配設される。
【0067】
これによれば、吐出口24に通ずる経路を開閉する動力をポンプ12の動作圧を用いることができる。これにより、弁機構30が簡素な構造で構成することができる。また、弁体31とバネ部材32とを突出部材23の内周に配設されることにより、弁機構30を最も吐出口24に近い部位に配設することができる。
【0068】
また、シリンジ本体21には、2種類の材料の混合を行うときには、2種類の材料に応じた弁機構30を開弁させてシリンジ本体21内に吐出させ、シリンジ本体21内の棄て打ちを行うときには、一つの弁機構30を開弁させてシリンジ本体21内に吐出させる。
【0069】
これによれば、一つの材料でシリンジ本体21内の混合された材料の棄て打ちを行うことができるので、もう一方の材料は弁機構30で閉弁状態を確保することで、もう一方の材料の棄て打ち量の低減が図れる。
【0070】
さらに、同じ材料供給装置本体2で異なる材料を供給する場合には、複数の吐出口24を設けることにより、製品1に応じた適宜の材料のみを供給することができるため、旧使用の材料の入れ替え作業をスムーズに切り替えることができる。また、異なる一つの材料による棄て打ちを連続的に行うことができる。
【0071】
なお、シリンジ本体21内の棄て打ちを行うときには、混合された材料が硬化する硬化時間に基づいた棄て打ち許容時間内に行うことにより、棄て打ちのタイミングは硬化時間に基づいて決めることができるため、的確な棄て打ちを行うことができる。
【0072】
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、弁機構30を吐出口24に通ずる経路を開閉する弁体31とこの弁体31に所定の締切圧で押圧するバネ部材32とから構成させたが、これに限らず、図5に示すように、供給口26の近傍に吐出口24に通ずる経路を開閉する弁機構である電磁弁30を配設しても良い。
【0073】
ただし、この場合には、電磁弁30を制御するための制御装置15および電磁弁30を作動させるための電源を必要とする。以上の構成によれば、電磁弁30が供給口26の近傍に設けられるため、シリンジ本体21内に突き出す筒状の突出部材23の外形を小径とすることができる。
【0074】
言い換えれば、吐出口24に通ずる経路を小径で形成できることで、他の吐出口24から吐出された材料が吐出口24に通ずる経路に混入されることはない。
【0075】
(第3実施形態)
以上の実施形態の他に、具体的には、図6に示すように、弁機構30として、供給配管11を潰すことでその通路を開閉する開閉部材である配管クリップ30を用いている。より具体的には、供給配管11を柔軟性のある材料で形成して供給口26とポンプ12とを接続する。そして、供給口26の近傍に配管クリップ30を配設する。
【0076】
そして、シリンジ本体21内に材料の供給を停止するときは、配管クリップ30によって供給配管11を潰すように操作して吐出口24に通ずる経路を閉弁する。また、シリンジ本体21内に材料を供給するときは、配管クリップ30を緩める操作を行うことで吐出口24に通ずる経路を開弁する。
【0077】
これによれば、配管クリップ30が供給口26の近傍に設けられるため、シリンジ本体21内に突き出す筒状の突出部材23の外形を小径とすることができる。つまり、吐出口24に通ずる経路を小径で形成できることで、他の吐出口24から吐出された材料が吐出口24に通ずる経路に混入されることはない。さらに、弁機構30を簡素な構造で構成することができる。
【0078】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、シリンジ20に貯蔵容器13内の材料を圧送する圧送手段としてポンプ12を用いたが、これに限らず、工場内に装備されている圧縮空気を用いて貯蔵容器13内の材料をシリンジ20に圧送するように構成しても良い。
【0079】
また、以上の実施形態では、材料を混合するシリンジ20に、接着剤として用いられる主剤と硬化剤との2液の材料を供給するように構成したが、接着剤に限らず、電子材料、医薬品、飲料水、塗料、注型剤、電極材料、絶縁剤、導電剤、有機材料、無機材料として用いられる2液以上の材料を供給するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態におけるシリンジ20の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態における材料供給装置10の全体構成を示す模式図である。
【図3】図1に示すA−A断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における2液の材料が混合される接着剤の硬化時間と棄て打ち時間との関係を示す特性図である。
【図5】本発明の第2実施形態におけるシリンジ20の全体構成を示す模式図である。
【図6】本発明の第3実施形態におけるシリンジ20の全体構成を示す模式図である。
【図7】従来技術における材料供給装置10の全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0081】
12…ポンプ(圧送手段)
20…シリンジ
23…突出部材
24…吐出口
30…弁機構、電磁弁、配管クリップ(開閉部材)
31…弁体
32…バネ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に少なくとも2種類の吐出された材料を混合するシリンジ(20)と、貯蔵容器から前記シリンジ(20)に材料を圧送する圧送手段(12)とを備え、混合された材料をワークに供給する材料供給装置において、
前記シリンジ(20)には、複数の材料を吐出する複数の吐出口(24)と、前記吐出口(24)のそれぞれに通ずる経路を開閉する弁機構(30)とが設けられ、
前記弁機構(30)は、前記吐出口(24)の近傍に配設され、かつ前記シリンジ(20)内の棄て打ちを行うときに、一つの前記弁機構(30)を開弁させるように制御されることを特徴とする材料供給装置。
【請求項2】
前記シリンジ(20)内の混合通路に、突き出された筒状の複数の突出部材(23)が設けられ、
前記吐出口(24)は、前記複数の突出部材(23)の側端面および外周面に形成され、
前記弁機構(30)は、前記突出部材(23)の内周に配設されることを特徴とする請求項1に材料供給装置。
【請求項3】
前記弁機構(30)は、前記吐出口(24)に通ずる経路を開閉する弁体(31)と、前記弁体(31)に所定の締切圧で押圧するバネ部材(32)とからなっており、
前記弁体(31)および前記バネ部材(32)は、前記突出部材(23)の内周に配設されることを特徴とする請求項2に材料供給装置。
【請求項4】
前記シリンジ(20)内の混合通路に突き出された筒状の複数の突出部材(23)が設けられ、
前記吐出口(24)は、前記複数の突出部材(23)の側端面および外周面に形成され、
前記弁機構(30)は、前記吐出口(24)に通ずる経路を開閉する電磁弁(30)であって、
前記電磁弁(30)は、突出部材(23)の接続口近傍に配設されることを特徴とする請求項1に記載の材料供給装置。
【請求項5】
前記シリンジ(20)内の混合通路に突き出された筒状の複数の突出部材(23)が設けられ、
前記吐出口(24)は、前記複数の突出部材(23)の側端面および外周面に形成され、
前記弁機構(30)は、前記吐出口(24)に通ずる経路を開閉する開閉部材(30)であって、
開閉部材(30)は、突出部材(23)の接続口近傍に配設されることを特徴とする請求項1に記載の材料供給装置。
【請求項6】
内部に少なくとも2種類の吐出された材料を混合するシリンジ(20)と、貯蔵容器から前記シリンジ(20)に材料を圧送する圧送手段(12)とを備え、混合された材料をワークに供給する材料供給装置による材料供給方法であって、
前記シリンジ(20)には、複数の材料を吐出する複数の吐出口(24)と、前記吐出口(24)のそれぞれに通ずる経路を開閉する弁機構(30)とが設けられ、
2種類の材料の混合を行うときには、2種類の材料に応じた前記弁機構(30)を開弁させて前記シリンジ(20)内に吐出させ、
前記シリンジ(20)内の棄て打ちを行うときには、一つの前記弁機構(30)を開弁させて前記シリンジ(20)内に吐出させることを特徴とする材料供給装置による材料供給方法。
【請求項7】
前記シリンジ(20)内の棄て打ちを行うときには、混合された材料が硬化する硬化時間に基づいた棄て打ち許容時間内に行うことを特徴とする請求項6に記載の材料供給装置による材料供給方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−326002(P2007−326002A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157832(P2006−157832)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】